JPH09250419A - 分配型燃料噴射ポンプ - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】 噴射ポンプの体格を拡大することなく燃料圧
送タイミングの調整範囲を拡大し、ポンプハウジングの
損傷を防止する燃料噴射ポンプを提供する。 【解決手段】 タイマハウジング１０１はポンプハウジ
ング４と一体にアルミで形成されており、鉄製のタイマ
ピストン１０２の遅角側のタイマハウジング１０１は袋
穴状に形成されている。インナカムリング２４に設けら
れた係止凸部１１２がボルト１１１に係止されることに
より、インナカムリング２４の最遅角位置が規定され
る。係止凸部１１２がボルト１１１に係止された状態で
は、タイマピストン１０２はタイマハウジング１０１の
遅角側内側壁と当接しないので、プランジャ２０の駆動
反力によりインナカムリング２４とともにタイマピスト
ン１０２が遅角側に押されても、タイマピストン１０２
がタイマハウジング１０１を損傷することを防止でき
る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、内燃機関（以下、
「内燃機関」をエンジンという）のインナカム式燃料噴
射ポンプに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来より、ディーゼルエンジンの燃料噴
射ポンプとしてインナカム式燃料噴射ポンプが知られて
いる。このインナカム式燃料噴射ポンプは、ポンプハウ
ジングの内部に回動可能に収容したインナカムリングの
内周に機関の１／２の回転速度で回転する分配ロータを
設け、この分配ロータの径方向に往復摺動可能に収容さ
れたプランジャをローラおよびシューを介してインナカ
ム内周カム面に押圧している。ポンプハウジングに対し
て分配ロータが回転すると、インナカムリング内周カム
面のカムプロフィールに追従してプランジャが往復運動
を行ない、燃料加圧室に吸入した燃料を加圧し、この加
圧された高圧燃料を圧送および分配している。分配型燃
料噴射ポンプには、インナカムリングの回転角度を調整
するタイマ装置が設けられている。タイマ装置は、タイ
マハウジングに往復移動可能に収容されたタイマピスト
ンを有し、このタイマピストンがインナカムリングと連
結して往復移動することにより、インナカムリングの回
転角度が調整される。インナカムリングの回転角度が変
更されると、プランジャによる燃料の加圧タイミングが
進角側または遅角側に移行するので、エンジン運転状態
に応じて燃料圧送タイミングを制御することができる。
タイマピストンの軸方向両端側のタイマハウジングはカ
バーにより封止されている。

【０００３】近年、排ガス規制の強化により、燃料噴射
ポンプからの燃料圧送タイミングの調整範囲を拡大した
いという要望がある。そのためには、インナカムリン
グ、すなわちタイマピストンの往復移動範囲を拡大する
必要がある。タイマハウジングのタイマピストンの軸方
向両端側をカバーで封止しているものでは、タイマピス
トンの往復移動範囲を拡大しようとするとタイマハウジ
ングの軸長が延び、噴射ポンプの体格が大きくなるとい
う問題がある。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】このような問題を解決
するため、ポンプハウジングと一体にタイマハウジング
を形成し、タイマハウジングの遅角側を袋穴状にしたも
のが知られている。このものでは、カバーに代えてタイ
マハウジングの遅角側を袋穴状に加工して封止すること
により、噴射ポンプの体格を拡大することなくタイマピ
ストンの往復移動範囲を拡大している。

【０００５】しかながら、このようなポンプハウジング
とタイマハウジングとを一体に形成したものでは、通常
ポンプハウジングはアルミ製でありタイマピストンは鉄
製であるため、タイマピストンがタイマハウジングに係
止されることによりタイマピストンの最遅角位置が規定
されると、プランジャがカムプロフィールに沿って往復
移動するときの駆動反力によりタイマピストンがタイマ
ハウジングに押しつけられるため、アルミ製のタイマハ
ウジングが変形または摩耗するという問題がある。

【０００６】本発明はこのような問題を解決するために
なされたものであり、噴射ポンプの体格を拡大すること
なく燃料圧送タイミングの調整範囲を拡大し、ポンプハ
ウジングの損傷を防止する燃料噴射ポンプを提供するこ
とを目的とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】本発明の請求項１記載の
分配型燃料噴射ポンプによると、インナカムリングが遅
角側でポンプハウジングに係止されることにより、タイ
マピストンが遅角側でタイマハウジングの軸方向内側壁
と当接しない構成にすることができるので、カムロフィ
ールに沿ってプランジャが往復移動する際に発生する駆
動反力によりタイマピストンが遅角側に押されても、タ
イマピストンによるタイマハウジングの損傷を防止でき
る。

【０００８】

【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例を図面に基
づいて説明する。本発明の一実施例による分配型燃料噴
射ポンプを図１および図２に示す。図２に示すように、
図示しないエンジンにより駆動される噴射ポンプ１０の
駆動軸１は、ベアリング２およびジャーナル３を介して
ポンプハウジング４に回転可能に支持されている。ベー
ン式フィードポンプ５は駆動軸１とともに回転し、図示
しない燃料タンク、燃料インレット６、吸入口７を介し
て燃料を吸入加圧し、吐出口８から図示しない燃料通路
を介して環状の燃料ギャラリ１４に燃料を送出してい
る。ベーン式フィードポンプ５の吸入口７と吐出口８と
は、吐出圧力が調節されるように図示しない圧力調整弁
を介して接統されている。燃料ギャラリ１４は、シリン
ダ１２の外壁に環状の凹部を設けることにより形成され
ている。符号３１はオーバフローバルブ、符号３２は低
圧室である。

【０００９】分配ヘッド１１の内壁にはシリンダ１２が
固定され、このシリンダ１２の内壁に分配ロータ１３が
回転可能に支持されている。分配ロータ１３は駆動軸１
と軸方向に連結され、駆動軸１とともに回転する。分配
ロータ１３には互いに直交する一対または二対の摺動孔
１３ａが形成され、各摺動孔１３ａを形成する分配ロー
タ１３の内壁にそれぞれ一対のプランジャ２０が油密状
態で摺動可能に支持されており、各プランジャ２０の内
端面と各摺動孔を形成する分配ロータ１３の内壁とによ
り燃料加圧室２１が画成されている。

【００１０】各プランジャ２０の外側端部にはシュー２
２が配設され、各シュー２２にローラ２３が回転自在に
保持されている。ローラ２３の外側には内周面にエンジ
ン気筒数に応じた複数のカム山を有するカム面の形成さ
れたインナカムリング２４が配置されている。分配ロー
タ１３の回転に基づいてローラ２３がインナカムリング
２４内周面のカム面に摺動することにより、ローラ２３
はカム面に沿ってインナカムリング２４の径方向に往復
動し、この往復動がシュー２２を介してプランジャ２０
に伝達される。そしてプランジャ２０が分配ロータ１３
の径方向外側に移動することにより燃料加圧室２１の容
積が増加し、このとき燃料ギャラリ１４と燃料加圧室２
１とが連通していると燃料加圧室２１に燃料が吸入され
る。プランジャ２０が分配ロータ１３の径方向内側に移
動することにより燃料加圧室２１の容積が減少し、燃料
が加圧される。インナカムリング２４は、ポンプハウジ
ング４の内壁に回動可能に支持されており、タイマ装置
１００により回転角度を調節可能である。

【００１１】燃料加圧室２１は連通路１７を介して燃料
通路１５および分配通路１６と連通している。分配通路
１６は、分配ロータ１３の回転に伴いエンジンの気筒数
分だけシリンダ１２に設けられた分配通路２５と連通す
る。分配通路２５は分配ヘッド１１に設けられた分配通
路２６と常に連通しており、分配通路２６からデリバリ
バルブ４０を通って高圧燃料が図示しないインジェクタ
に供給される。

【００１２】溢流弁５０のバルブケーシング５１はポン
プハウジング４に取付けられ、燃料通路１５を開閉する
弁部材はシリンダ１２に設けられた弁座に着座可能であ
る。溢流弁５０は電磁弁であり、通電オフ時、弁部材は
弁座から離座している。溢流弁５０への通電オン時、弁
部材は弁座に着座している。このとき、燃料ギャラリ１
４と燃料加圧室２１とは遮断されている。

【００１３】駆動軸１の外周壁には、所定間隔毎に突起
６１ａを設けたパルサー６１が嵌挿されており、インナ
カムリング２４には突起６１ａの近接または離間をパル
ス信号に変換する回転角センサ６２が固定されている。
つまり、回転角センサ６２が出力するパルス数を計数す
ることにより、インナカムリング２４に対する駆動軸１
の回転角度、すなわちインナカムリング２４に対する分
配ロータ１３の回転角度を検出することができる。

【００１４】オーバフローバルブ７０は、溢流弁５０の
開弁時、燃料ギャラリ１４に連通する通路７１内の溢流
燃料の一部を減圧して燃料タンクに還流するために設け
られている。次に、タイマ装置１００の構成を図１に基
づいて詳細に説明する。タイマ装置１００のタイマハウ
ジング１０１はポンプハウジング４と一体にアルミで形
成されている。タイマハウジング１０１の図１における
左側、つまりタイマピストン１０２の遅角側は袋穴状に
形成されている。タイマピストン１０２の遅角側のタイ
マハウジング１０１を袋穴状に形成したことにより、別
部材のカバーで封止するものに比べ、タイマハウジング
１０１の軸長を延ばさずにタイマピストン１０２の遅角
側への移動可能範囲が拡大している。したがって、イン
ナカムリング２４の遅角側への移動可能範囲が拡大する
ので、燃料圧送タイミングの調整範囲が拡大し自由度が
向上する。タイマハウジング１０１の図１における右
側、つまりタイマピストン１０２の進角側に画成された
低圧室１０５はカバー１０３により封止されている。

【００１５】タイマピストン１０２は鉄製であり、タイ
マハウジング１０１に往復移動可能に収容されている。
圧縮コイルスプリング１０４は低圧室１０５に収容され
ており、タイマピストン１０２を高圧室１０６側に付勢
している。高圧室１０６には、フィードポンプ５で加圧
した高圧燃料が図示しない燃料通路を介して導入されて
おり、図示しない制御弁により高圧室１０６に導入され
る燃料圧力が調整される。タイマピストン１０２は、高
圧室１０６内の燃料圧力から進角側に受ける力と、圧縮
コイルスプリング１０３から遅角側に受ける力との均衡
によりその位置が規定される。

【００１６】タイマピストン１０２に設けられた嵌合凹
部１０２ａにインナカムリング２４の外周壁に設けられ
た嵌合凸部２４ａが嵌合し、タイマピストン１０２の往
復移動にともないインナカムリング２４が回動する。す
ると、プランジャ２０の往復移動タイミングが遅角側ま
たは進化側に移行し、燃料圧送タイミングが調整され
る。

【００１７】係止手段としてのボルト１１１はポンプハ
ウジング４とダブルナットでねじ結合している。インナ
カムリング２４の外周壁には係止凸部１１２が形成され
ており、この係止凸部１１２がボルト１１１に係止され
ることにより、インナカムリング２４の最遅角位置が規
定される。インナムリング２４の最遅角位置はボルト１
１１のねじ込み位置を調整することにより容易に変更す
ることができる。

【００１８】係止凸部１１２がボルト１１１に係止され
た状態では、タイマピストン１０２はタイマハウジング
１０１の遅角側内側壁と当接していない。したがって、
インナカムリング２４のカムロフィールに沿ってプラン
ジャ２０が往復移動する際に発生する駆動反力によりイ
ンナカムリング２４とともにタイマピストン１０２が遅
角側に押されても、タイマピストン１０２が軸方向でタ
イマハウジング１０１と当接しないので、鉄製のタイマ
ピストン１０２がアルミ製のタイマハウジング１０１を
損傷することを防止できる。

【００１９】次に、噴射ポンプ１０の作動について説明
する。 (1) 吸入行程 溢流弁５０への通電オフ時、溢流弁５０の弁部材は弁座
から離座し、燃料ギャラリ１４と燃料通路１５は連通し
ている。このとき、分配ロータ１３の回転にともないプ
ランジャ２０が径方向外側に移動すると、燃料加圧室２
１の容積が増大し燃料加圧室２１の圧力が低下する。す
ると、燃料ギャラリ１４に充填されていた高圧燃料が燃
料通路１５、連通路１７から燃料加圧室２１に吸入され
る。分配通路２５は分配ロータ１３の外周壁により遮断
されている。

【００２０】(2) 圧送行程 ローラ２３がインナカムリング２４のカム山に乗り上げ
る前、または分配ロータ１３がさらに回転し、ローラ２
３がインナムリング２４のカム山に乗り上げプランジャ
２０が径方向内側に移動し始めると、所定のタイミング
で溢流弁５０への通電がオンされる。すると、溢流弁５
０の弁部材が弁座に着座し、燃料ギャラリ１４と燃料通
路１５との連通が遮断され、プランジャ２０の径方向内
側への移動により燃料加圧室２１の燃料が加圧される。
このとき、既に分配通路１６と分配通路２５とは分配ロ
ータ１３の回転により連通しており、燃料加圧室２１の
高圧燃料は、連通路１７、分配通路１６、分配通路２
５、分配通路２６を経てデリバリバルブ４０から図示し
ないインジェクタに供給される。

【００２１】(3) 溢流行程 圧送行程中に溢流弁５０への通電をオフすると、溢流弁
５０の弁部材は弁座から離座し、燃料ギャラリ１４と燃
料通路１５とが連通する。すると、燃料加圧室２１の高
圧燃料は、連通路１７、燃料通路１５から燃料ギャラリ
１４に溢流する。燃料が溢流すると、燃料加圧室２１お
よび分配通路２６の燃料圧力が低下しデリバリバルブ４
０が閉弁することによりインジェクタへの燃料供給が終
了するので燃料噴射が終了する。

【００２２】前述した(1) 吸入行程、(2) 圧送行程、
(3) 溢流行程を繰り返すことにより、高精度な燃料噴射
量および燃料噴射時期制御が行われる。 （第２実施例）本発明の第２実施例を図３に示す。第１
実施例と実質的に同一構成部分には同一符号を付す。

【００２３】ポンプハウジング１２１はアルミで形成さ
れており、タイマハウジング１０１はポンプハウジング
１２１と一体に形成されている。係止手段としてのボル
ト１２３はポンプハウジング１２１とねじ結合してお
り、ボルト１２３の先端部はインナカムリング１２２の
外周壁に形成された凹部としての凹溝１２２ａ内に突出
している。

【００２４】タイマピストン１０２が遅角側に移動しタ
イマハウジング１０１に軸方向で当接する前に凹溝１２
２ａはボルト１２３に係止され、インナカムリング１２
２の最遅角位置が規定される。以上説明した本発明の第
１実施例および第２実施例では、係止手段としてボルト
を用いたが、ポンプハウジングの内壁の一部を突出させ
てこの突出部でインナカムリングを係止し、インナカム
リングの最遅角位置を規定することも可能である。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の第１実施例による分配型燃料噴射ポン
プの縦断面図を示す図２のＩ−Ｉ線断面図である。

【図２】本発明の第１実施例による分配型燃料噴射ポン
プを示す縦断面図である。

【図３】本発明の第２実施例による分配型燃料噴射ポン
プのタイマを含む横断面図である。

【符号の説明】

４ ポンプハウジング ５ ベーン式フィードポンプ １３ 分配ロータ ２０ プランジャ ２１ 燃料加圧室 ２２ シュー ２３ ローラ ２４ インナカムリング ５０ 溢流弁 １００ タイマ装置 １１１ ボルト（係止手段） １１２ 係止凸部 １２１ ポンプハウジング １２２ インナカムリング １２２ａ 凹溝（凹部） １２３ ボルト（係止手段）

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ポンプハウジング内に回動可能に収容さ
   れたインナカムリングのカムプロフィールに応じて往復
   移動するプランジャにより、燃料加圧室に吸入した燃料
   を加圧して圧送および分配する分配型燃料噴射ポンプで
   あって、 前記ポンプハウジングと一体に形成されたタイマハウジ
   ング、および前記タイマハウジングに往復移動可能に収
   容され前記インナカムリングと連結して前記インナカム
   リングの回転角度を制御するタイマピストンを有するタ
   イマ装置と、 前記ポンプハウジングに設けられ、前記インナカムリン
   グを係止して前記インナカムリングの最遅角位置を規定
   する係止手段と、 を備えることを特徴とする分配型燃料噴射ポンプ。
2. 【請求項２】 前記係止手段はボルトであることを特徴
   とする請求項１記載の分配型燃料噴射ポンプ。
3. 【請求項３】 前記インナカムリングの外周壁に係止凸
   部を設け、この係止凸部が前記係止手段に係止されるこ
   とにより前記インナカムリングの最遅角位置を規定する
   ことを特徴とする請求項１または２記載の分配型燃料噴
   射ポンプ。
4. 【請求項４】 前記インナカムリングの外周壁に凹部を
   設け、この凹部が前記係止手段に係止されることにより
   前記インナカムリングの最遅角位置を規定することを特
   徴とする請求項１または２記載の分配型燃料噴射ポン
   プ。