JPH09239082A - 繊維強化樹脂製ゴルフクラブ用シャフト及びその製造方法 - Google Patents

繊維強化樹脂製ゴルフクラブ用シャフト及びその製造方法

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JPH09239082A
JPH09239082A JP8046392A JP4639296A JPH09239082A JP H09239082 A JPH09239082 A JP H09239082A JP 8046392 A JP8046392 A JP 8046392A JP 4639296 A JP4639296 A JP 4639296A JP H09239082 A JPH09239082 A JP H09239082A
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JP
Japan
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shaft
film
tape
fibers
reinforced resin
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JP8046392A
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Shinji Yamamoto
眞司 山本
Tatsuo Nishimoto
達生 西本
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Yokohama Rubber Co Ltd
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Yokohama Rubber Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 シャフト重量を増加させずに、衝撃強度を向
上させることが出来、更に着色したフィルムを使用する
ことで、クラブシャフトの色調を部分的及び段階的に変
化させることが出来る繊維強化樹脂製ゴルフクラブ用シ
ャフトの製造方法を提供することを目的とする。 【解決手段】 炭素繊維強化プラスチック製シートから
成るクラブシャフト本体1のチップ側Xの最外層には、
有機重合体からなるテープ状またはシート状のフィルム
補強層2が巻回積層して一体的に成形されている。前記
クラブシャフト本体1に用いられる補強繊維としては、
従来公知のものが使用可能で、例えば、炭素繊維、ガラ
ス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、アルミナ繊維、炭
化珪素繊維などを例示することができる。好ましくは、
比強度、比弾性率に優れた炭素繊維を用いるのがよい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、繊維強化樹脂製
ゴルフクラブ用シャフト及びその製造方法に係わり、更
に詳しくは炭素繊維強化プラスチックシートを巻回積層
してなるゴルフクラブ用シャフトにおいて、最も衝撃強
度を必要とするチップ側の部分の強度を向上させ、同時
にキックポイントを先端側に移動させ、重心位置を手前
側に移行させることを可能とした繊維強化樹脂製ゴルフ
クラブ用シャフト及びその製造方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】一般に、ゴルフクラブにおけるシャフト
の役割として、シャフト重量を軽量化する事により、同
じ長さでクラブを作成した場合、グリップ部近傍のある
点を支点としたモーメント(スイングバランス、以下
S.B. と言う)を小さくする事が出来、ヘッドスピード
の向上,ボール軌道のコントロール性向上により、飛距
離の増加及び方向性の安定につながるとされていた。ま
た、同じ S.B. とした時、クラブ長さを長くできたり、
ヘッド重量を重く出来るため、飛距離増大の効果が期待
出来る。
【0003】然しながら、シャフトを軽量化させる場
合、強度不足を伴い、これを補うために部分的な補強を
行う必要が有る。特に、クラブヘッドでボールを打つ行
為(インパクト)によって、最も衝撃力を受けるチップ
側(シャフトのヘッドを取付ける側)は、より多くの補
強を必要とし、例えば、チップ側の繊維強化樹脂シート
の積層数を多くする等の設計が行われている。
【0004】しかし、上記のような補強構造とした場
合、シャフトの重心位置はチップ側へ移行し、シャフト
の重量を軽量化してもシャフト単体での S.B. に与える
影響はほとんど小さくする事が出来ず、トータル重量の
軽量化のみで S.B. への効果,ヘッド重量への効果、シ
ャフトの長尺化への効果は期待できないのが現状であっ
た。
【0005】また、チップ側の補強により、補強部分の
剛性が他の部分に比べ高くなり、シャフトの剛性の分布
を示すキックポイント(K.P.) は、バット側(シャフト
のグリップを取付ける側)へ移行し、元調子と言われる
シャフトとなってしまい、シャフトの特性を変化させる
事が困難であった。この様な問題に対し、シャフトを軽
量化し、かつ先調子で従来のシャフト(軽量以外)の重
心位置と同程度とするためには、高強度、低弾性率、低
比重の材料を効率よく用いてチップ側の補強をする必要
がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】ところで、繊維強化樹
脂製ゴルフクラブ用シャフトにおいて、有機重合体から
なるテープ状フィルムを最外層に巻回積層し、一体化し
て成形したゴルフクラブシャフトが提案されている(特
開平3−168168号公報)。然しながら、この有機
重合体からなるテープ状フィルムをシャフトに使用する
場合の効果を確認するため、パイプ状管状体を試作し強
度および曲げ弾性率の測定実検を行った結果、下記の
[表1]に示すように、テープ状フィルム補強材の比率
が増すに従い破壊に至るまでのエネルギーが大きくなる
ため衝撃強度は飛躍的に向上するが、弾性率は炭素繊維
より低いため曲げ強度に関してはほとんど変化しない。
【0007】
【表1】 同時にクラブシャフトとして充分な曲げ硬さ(Flex) を
得るために必要な曲げ弾性率も減少するため、単純に、
全長又は長手方向いずれか一部に当該フィルムを適用す
ると所定の硬さを必要とするゴルフシャフトは仲々得ら
れないという問題があることがわかった。
【0008】なお、この実験に使用したパイプ状管状体
は、クラブシャフトの一部を再現するため、最も内側に
バイアス層:繊維配向角度±40°、一層の肉厚0.09mm各
2層、合計4層、その外側にストレート層・繊維配向角
度0°、一層の肉厚0.12mm、合計2層を構成し、ストレ
ート層の外側に補強層としてCFRP、アラミドフィル
ムをトータルの肉厚が同等(±0.02以下の差)となる
様、比率を変化させて作製したものである。
【0009】アラミドフィルムの肉厚はテープ厚16μ、
幅15mmの巻きピッチ(長さ方向について一定)を変化さ
せる事で調整し、その平均肉厚として計算した値(実測
においても確認)を示したものである。従って、テープ
状フィルムをシャフト全長に用いる場合、曲げ弾性率の
減少を補うためにフィルム補強層以外の層、すなわち、
炭素繊維、ボロン繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ア
ルミナ繊維、炭化珪素繊維、チラノ繊維、アモルファス
繊維、その他金属繊維強化樹脂シートからなる層を増す
か、もしくは、より高弾性の繊維に置き替える必要が有
る。特にテープ状フィルム補強材を強度向上の目的で使
用する場合は、軽量シャフトの場合であり、比弾性率を
考慮すると、高弾性炭素繊維を使用する必要が有る。
【0010】然しながら、前者の場合には、重量増加を
伴い、上記繊維強化樹脂層のみの強度も向上するため、
テープ状フィルムによる補強は必要無くなる。また後者
の場合には、高弾性炭素繊維強化樹脂シートを使用する
ため強度、特に衝撃強度が低下し、テープ状フィルム補
強材による効果を打ち消してしまい、シャフトとしての
強度向上にはつながらず、単にコストを増すだけであ
る。
【0011】また、シャフトとしての品質を安定させ、
塗料をコーティングするために表面を研磨する必要が有
るが、一般に使用される炭素繊維強化樹脂に比べ研磨さ
れにくく、また弾性率も低いため、Flexの調整が困難と
なり、好ましくない。この様に、有機重合体からなるテ
ープ状フィルムを補強材として用いる場合には、衝撃強
度の向上に効果が有るが、クラブシャフト全体に用いる
場合には、上記のような問題があり、従って、ゴルフシ
ャフトとして衝撃強度を必要とするのは、ヘッド部近
傍、つまりシャフトチップ付近のみであり、実使用時に
衝撃的な力が作用しない部分に使用する事は単に重量増
加をするだけである。また、ゴルフシャフトの重要特性
として、キックポイントと重心位置がある。キックポイ
ントは、シャフトチップ側にあるほど、ボールをはね上
げる効果が高く結果として高弾道で飛距離が増大するこ
とが知られている。また、シャフトの重心位置は、シャ
フトバット側すなわち手元側にあるほどプレーヤーがク
ラブを軽く感じ、クラブを振るスイングが早くなること
によりヘッドスピードが高くなり飛距離が増大する。同
時に、軽く感じることによりスイング軌道も安定しボー
ルの方向性が安定するという効果ももたらす。
【0012】しかしながら、特公平6-168168に記載され
た技術では単に有機テープを全長もしくは全長のどこか
一部に巻くことになり、これだけでは上述のキックポイ
ントをチップ側にかつ重心位置をバット側にすることに
よる効果が発揮されない。さらに特公平6-168168で取挙
げている有機重合体のテープを単に巻くだけではたとえ
チップ側に巻いたとしても炭素繊維の弾性率との格差が
少なくキックポイントをチップ側にシフトさせる効果は
小さい。
【0013】テープの材質としてASTM D882 に規定する
方法で測定した引張弾性率が 900kg/mm2 から2000kg/
mm2 のアラミドフィルム(芳香族ポリアミドフィルム)
が好ましい。さらに好ましくは弾性率が1000から1500kg
/mm2 である。この発明は、かかる従来の課題に着目し
て案出されたもので、クラブシャフトに有機重合体から
なるテープ状またはシート状のフィルムを補強材として
用いる場合に、最も衝撃強度を必要とするチップ側の部
分にのみ使用することで、シャフト重量を増加させず
に、しかも衝撃強度を向上させ、キックポイントを低く
(先調子)、かつ手元重心にすることが出来る繊維強化
樹脂製ゴルフクラブ用シャフト及びその製造方法を提供
することを目的とするものである。
【0014】
【課題を解決するための手段】この発明は上記目的を達
成するため、有機重合体からなるテープ状またはシート
状のフィルムを、クラブシャフト本体の最外層に部分的
に巻回積層して一体的に成形して成る繊維強化樹脂製ゴ
ルフクラブ用シャフトであって、前記フィルムによる巻
回補強区間を、クラブシャフト本体のチップ端を0とし
た時、チップ端から始まり、終点が150mm 以上、500mm
以下に設定したことを要旨とするものである。
【0015】前記フィルムの巻回補強区間の最もバット
側の位置からチップ側に50mmの位置において、補強層の
肉厚が0.05mm以下であり、補強区間のチップ端から50mm
の区間においては、テープ状のフィルムによる補強層の
肉厚が0.1mm以上であり、また前記有機重合体が芳香族
ポリアミドであることを要旨とするものである。この発
明は上記のように構成され、有機重合体からなるテープ
状またはシート状のフィルムを、クラブシャフト本体の
最外層に部分的に巻回積層して一体的に成形する繊維強
化樹脂製ゴルフクラブ用シャフトの製造方法であって、
前記フィルムをフィルムによる巻回補強区間が、シャフ
ト本体のチップ端を0とした時、チップ端から始まり、
終点が150mm 以上、500mm 以下に設定することにより、
シャフト重量を増加させずに、しかも衝撃強度を向上さ
せることが出来るものである。
【0016】上記有機重合体からなるテープ状フィルム
を補強材として用いる場合には、衝撃強度の向上に効果
が有るが、クラブシャフト全体に用いる場合には、上記
のような問題があり、従って、ゴルフシャフトとして衝
撃強度を必要とするのは、ヘッド部近傍、つまりシャフ
トチップ付近のみであり、実使用時に衝撃的な力が作用
しない部分に使用する事は単に重量増加をするだけであ
るので、チップ側の一部分に用いることも好ましい。
【0017】また、上記の〔表1〕で示した実験結果の
通り、有機重合体、テープ状補強材の肉厚が増すに従
い、指数的に衝撃強度は向上するが、ゴルフクラブ用シ
ャフトとして必要な衝撃強度〔 IZOD 10[J]以上〕を
効率良く得るためには、ヘッド近傍すなわちシャフトチ
ップ端から50mmの区間では補強層の肉厚が0.1mm以上で
ある事が好ましい。
【0018】更に、有機重合体からなるテープ状フィル
ムを、シャフトの部分的に使用する場合、テープ状フィ
ルムの弾性率が通常の成形時に、ラッピングテープとし
て用いられるポリエステル、ポリプロピレン等の熱収縮
性フィルムに比べ高いため、テーパー状のシャフトに皺
にならないように様密着して巻回積層するためには、巻
回時の張力は少なくとも45[N]以上(厚さ16μ、幅15
mmの場合、厚さ、幅の変化に応じて張力は変える必要が
有る)が必要である。
【0019】即ち、張力は少なくとも45[N]以上の場
合には、伸びが少なく、熱収縮の影響も有、補強区間の
境では繊維補強樹脂層にくい込みが発生したり、繊維の
配向に乱れを生じたりし、局所的に応力集中をまねき、
この部分の強度低下を伴うものである。これは、ある比
率で樹脂を含浸してなる材料において、ローリング時の
圧力を高めたり、ラッピングテープの張力を高くして成
形を行っても妨げる事は無い。
【0020】この様な現象が生じない様、補強区間の境
の部分のピッチを疎にし、しだいに密にする方法があ
り、先行技術にもなされているが、単に疎又は密にする
というだけでは改善されるものでは無い。テープ状フィ
ルム補強材を巻回する場合、この補強層の厚さはフィル
ム厚、テープ幅、巻きピッチにより決定されるが、通常
の炭素繊維強化樹脂とテープ状フィルム補強材では、表
面の易研磨性が大きく異なるため、平滑に研磨するため
には補強区間の境目前後のテーパー(形状)の変化が小
さくなければならず、テーパーの変化が大きいにもかか
わらず、補強区間の境目前後を平滑に研磨した場合、研
磨されやすい炭素繊維強化樹脂層が露出している部分を
必要以上に削り取ってしまい、長繊維を部分的に切断す
る事となり強度低下を伴って致命傷となる。
【0021】通常、ゴルフクラブシャフトのテーパー
は、外径テーパーで6〜15/1000である。このテーパー
部分からテープ状フィルム補強材による補強区間の最も
バット側から50mmの区間において、平滑にかつ、炭素繊
維強化樹脂層の近接部分の研磨量を肉厚で0.02mm以下に
するためにはテーパーの変化を小さくするために最もバ
ット端から50mm位置での補強層の肉厚を0.05mm以下にす
る必要がある。
【0022】また、補強全区間においては、テープ状補
強フィルムが研磨されにくいため、形状変化は小さい方
が好ましく、特にバット側からチップ側にかけてテーパ
ーが減少し、即ち、凹状となる場合は出来る限り、その
変化率を小さくする必要がある。これは、テープの巻ピ
ッチのみならず、補強前の形状によっても調整する事が
可能である。
【0023】テープ状のフィルム補強材を、シャフトチ
ップ側一部分に用いる場合、その効率と成形時に生ずる
欠陥を防止するため、前記条件(境界付近の形状変化補
強全区間での形状変化、チップ端付近の肉厚)を得るた
めには補強区間は150mm 以上必要であり、重量増加、チ
ップ部付近の剛性増加を最小限でとどめるためには補強
区間はチップ側500mm 以下である事が好ましい。
【0024】これらのテープ状フィルム補強材を用いた
場合の成形上の問題点、有効性を考慮し、この発明の実
施形態で示した条件にてシャフトを成形する事により、
以下のようなことが可能となる。 .衝撃強度が最も必要なクラブヘッドホーゼル付近の
強度を向上させることができる(強度分布の最適分配)
(チップから30mm位置で10[J]以上)。 .重量増加を最小限に抑えることが出来る。 .先端部分の補強による剛性増を少なくできる。 .先端部分の補強による重心位置の先端部への移動を
少なく(重心位置の全長比率53%以上)する事が可能と
なる。
【0025】
【発明の実施の形態】以下、添付図面に基づき、この発
明の実施形態を説明する。図1は、この発明を実施した
繊維強化樹脂製ゴルフクラブ用シャフトの正面図を示
し、炭素繊維強化プラスチック製シートから成るクラブ
シャフト本体1のチップ側Xの最外層には、有機重合体
からなるテープ状またはシート状のフィルム補強層2が
巻回積層して一体的に成形されている。
【0026】前記クラブシャフト本体1に用いられる補
強繊維としては、従来公知のものが使用可能で、例え
ば、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊
維、アルミナ繊維、炭化珪素繊維などを例示することが
できる。好ましくは、比強度、比弾性率に優れた炭素繊
維を用いるのがよい。またクラブシャフト本体1のマト
リクス樹脂としては、従来と同様のものが使用でき、例
えば、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂,フェノール樹
脂、ポリウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂や、ポリプロ
ピレン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、ABS
樹脂、ナイロン樹脂などの熱可塑性樹脂を使用すること
ができる。好ましくは、エポキシ樹脂がよい。
【0027】更にクラブシャフト本体1は、補強繊維を
シャフト軸方向に対して傾斜するように配置した複数の
バイアス層と、補強繊維をシャフト軸方向に対して平行
に配置した複数のストレート層とが筒状に一体的に積層
された構成になっている。上記フィルム補強層2は、上
述したように有機重合体から構成され、前記フィルム補
強層2による巻回補強区間Lは、クラブシャフト本体1
のチップ端を0とした時、チップ端から始まり、終点が
150mm 以上、500mm 以下に設定してある。
【0028】前記フィルム補強層2に用いられる有機重
合体としては、例えば、芳香族ポリアミド(アラミ
ド)、ポリイミド、ポリエーテルエーテルケトン、全芳
香族ポリエステル、ポリパラフェニレンベンゾビスオキ
サイド,ポリパラフェニレンベンゾビスチアゾール,ポ
リベンゾイミダゾール等を例示することができる。好ま
しくは、インパクトに対して大きな強度を有する芳香族
ポリアミド(アラミド)が良い。
【0029】このように繊維強化樹脂製のクラブシャフ
ト本体1の外側で、上記のような先端側の範囲に限定し
て、有機重合体からなるフィルム補強層2を設けること
により、打球時の衝撃強度を充分に確保しながら、重量
の増加を有効に抑えることができる。しかも、フィルム
補強層2は、従来のような補強繊維を有する繊維強化樹
脂補強層よりも軽量で、曲げ弾性率が低いため、繊維強
化樹脂補強層を有するクラブシャフトよりもそのシャフ
トの重心位置をグリップ側へ、キックポイントをヘッド
側へ位置させることができる。従って、スイングバラン
スを小さくすることが可能となる。
【0030】また、一般に、ゴルフクラブシャフトは先
端側に向かうに従い、径が細くなる(6〜15/1000のテ
ーパー比率)ように構成され、そのシャフトの外周面は
塗装を施すために研磨されるが、この発明では、チップ
端から150mm 以上となるようにしてフィルム補強層2を
設けるため、衝撃に大きく影響する先端部の樹脂フィル
ム補強層の肉厚を充分に確保しながら、フィルム補強層
2の後端部の肉厚を小さくして、クラブシャフト本体1
との境目における外周面の形状変化を小さくすることが
できる。
【0031】また、更にフィルム補強層2の先端部と後
端部とをその外周面の形状変化が急激になることなく緩
やかに連続変化させることができる。そのため、フィル
ム補強層2は形状変化が大きいと均一に研磨して良好な
研磨面を得ることが困難であるが、この発明は、フィル
ム補強層2の表面の形状変化を小さくしているため、良
好な研磨を行うことができると共に、フィルム補強層2
とクラブシャフト本体1との境目が研磨されなかった
り、或いは研磨されすぎて凹状になるなどの欠陥を生じ
ることなく、クラブシャフト本体1とフィルム補強層2
の外周面に良好な研磨面を容易に形成することが可能で
あり、その結果、常に良好な塗装面に仕上げることがで
きる。
【0032】上記フィルム補強層2を設ける範囲Lが15
0mm よりも小さいと、充分な補強効果を確保しながら良
好な研磨面を得ることが難しく、また、500mm を越える
と、重量の増加を有効に抑えることができない。またこ
の発明では、フィルム補強層2の肉厚として、クラブシ
ャフト本体1の先端から30mmの位置における衝撃強度が
10J以上になるようするのがよい。使用される有機重合
体テープ状フィルムの種類によりその厚さは異なり、適
宜設定されるものであるが、例えば、アラミドフィルム
補強層から構成した場合、クラブシャフト本体1のチッ
プ端から50mmの位置までの間のフィルム補強層2の肉厚
tを0.1mm以上にすることができる。
【0033】上限値としては、クラブシャフト本体1の
軽量化の観点から、0.5mmにするのがよい。50mm以降の
フィルム補強層2の肉厚は、衝撃強度に大きな影響を及
ぼすことがないため、0.1mm未満にすることができる。
また、フィルム補強層2の物性としては、引っ張り強度
が20kg/m2 以上あるものがよい。また、上記フィルム補
強層2は、その後端から先端側に50mmの位置以降の後
端側の肉厚tを0.05mm以下にするのが好ましい。
【0034】これにより、クラブシャフト本体1から樹
脂フィルム補強層2に続く外側面の形状変化を効果的に
小さくすることができるので、そこにおける研磨をより
良好に行うことができる。下限値としては、形成時にフ
ィルム状テープに加えるテンションに耐え得るテープ自
体の肉厚を確保するため、0.01mmとするのがよい。
【0035】また、前記フィルム2の巻回補強区間Lの
最もバット側Yの位置からチップ側Xに50mmの位置にお
いて、図2に示すようにフィルム2の補強層の肉厚tが
0.05mm以下であり、補強区間Lのチップ端から50mmの区
間においては、テープ状のフィルム2による補強層の肉
厚tは0.1mm以上に形成してある。次に、内径:6.0m
m、外径:8.5mmとなる様に、クラブシャフトのヘッド
近傍と同様の構造を成す様に作成したパイプによる実験
例を、上述した[表1]に示す。
【0036】即ち、直径6.0mmのマンドレル(芯金)に
最内層として炭素繊維強化プラスチック製シートからな
るバイアス層(繊維配向角±40°、一層の厚さ0.09mm、
各2層、合計4層)その外側にストレート層(繊維配向
角0°、一層の厚さ0.12mm、2層)を巻き付け、更に外
側に補強層として肉厚が0.64±0.02mmとなる様にCFR
Pおよびアラミドフィルムの比率と変化させて作成した
パイプ(疑似クラブシャフト先端部)の実験例である。
【0037】[表1]で示した実験結果の通り、有機重
合体、テープ状補強材の肉厚が増すに従い、指数的に衝
撃強度は向上するが、ゴルフクラブ用シャフトとして必
要な衝撃強度〔 IZOD 10[J]以上〕を効率良く得るた
めには、ヘッド近傍すなわちシャフトチップ端から50mm
の区間では補強層の肉厚が0.1 mm以上である事が好まし
い。
【0038】更に、有機重合体からなるテープ状のフィ
ルム2を、シャフト本体1の部分的に使用する場合、テ
ープ状のフィルム2の弾性率が通常の成形時に、ラッピ
ングテープとして用いられるポリエステル、ポリプロピ
レン等の熱収縮性フィルムに比べ高いため、テーパー状
のシャフトに皺にならないように様密着して巻回積層す
るためには、巻回時の張力は少なくとも45[N]以上
(厚さ16μ、幅15mmの場合、厚さ、幅の変化に応じて張
力は変える必要が有る)が必要である。
【0039】即ち、張力は少なくとも45[N]以上の場
合には、伸びが少なく、熱収縮の影響も有、補強区間の
境では繊維補強樹脂層にくい込みが発生したり、繊維の
配向に乱れを生じたりし、局所的に応力集中をまねき、
この部分の強度低下を伴う。これは、ある比率で樹脂を
含浸してなる材料において、ローリング時の圧力を高め
たり、ラッピングテープの張力を高くして成形を行って
も妨げる事では無い。
【0040】この様な現象が生じない様、補強区間Lの
境の部分のピッチを疎にし、次第に密にする方法が有、
先行技術にもなされているが、単に疎又は密にするとい
うだけでは改善されるものでは無い。テープ状のフィル
ム2の補強材を巻回する場合、この補強層の厚さはフィ
ルム厚、テープ幅、巻きピッチにより決定されるが、通
常の炭素繊維強化樹脂とテープ状フィルム補強材では、
表面の易研磨性が大きく異なるため、平滑に研磨するた
めには補強区間の境目前後のテーパー(形状)の変化が
小さくなければならず、テーパーの変化が大きいにもか
かわらず、補強区間の境前後を平滑に研磨した場合、研
磨されやすい炭素繊維強化樹脂層が露出している部分を
必要以上削りとっでしまい、長繊維を部分的に切断する
事となり強度低下を伴う。
【0041】通常、ゴルフクラブシャフトのテーパー
は、外径テーパーで6〜15/1000である。このテーパー
部分からテープ状フィルム補強材による補強区間の最も
バット側Yから50mmの区間において、平滑にかつ、炭素
繊維強化樹脂層の近接部分の研磨量を肉厚で0.02mm以下
にするためにはテーパの変化を小さいするために最もバ
ット端から50mm位置での補強層の肉厚を0.05mm以下にす
る必要である。
【0042】また、補強全区間においては、テープ状補
強フィルムが研磨されにくいため、形状変化は小さい方
が好ましく、特にバット側Yからチップ側Xにかけてテ
ーパーが減少し、即ち、凹状となる場合は出来る限り、
その変化率を小さくする必要がある。これは、テープの
巻ピッチのみならず、補強前の形状によっても調整する
事が可能である。
【0043】テープ状のフィルム補強材を、チップ側X
の一部分に用いる場合、その効率と成形時に生ずる欠陥
を防止するため、前記条件(境界付近の形状変化補強全
区間での形状変化、チップ端付近の肉厚)を得るために
は補強区間は150mm 以上必要であり、重量増加、チップ
部付近の剛性増加を最小限でとどめるためには補強区間
はチップ側Xの500mm 以下である事が好ましいのであ
る。次に、下記の〔表2〕に、実際のクラブ用シャフト
を作成した実験の評価結果を示す。
【0044】
【表2】
【0045】従来例1,2はテープ状補強フィルムを用
いずCFRP(炭素繊維強化プラスチック)のみでシャ
フトに必要な強度を有し、出来る限り軽量化したシャフ
トである。比較例1,2および実施例1,2,3は、シ
ャフトのヘッド側の一部分のみをテープ状補強フィルム
(アラミドフィルム)によって補強し、シャフトのヘッ
ド近傍(先端から50mm位置)での強度を同等とするため
に、この位置でのアラミドフィルムの肉厚を0.1mm以上
としたもので、このアラミドフィルムによる補強効果に
より肉厚のCFRP,GFRP等の補強層を少なくし、
また一般的に強度低下を伴う高弾性材料を使用する事が
可能となり、シャフト重量の軽減を図ったものである。
【0046】数値はいずれも従来例を 100もしくは0と
した場合の相対的な指数によって表わされている。実施
例1,2,3はいずれも従来例に比べ重量を軽減し(従
来例2に対し15%以上、従来例1に対し10%以上)、か
つ重心位置をよりグリップ側とし、シャフト単体として
のグリップ側の1点を支点とした際のモーメントも減少
している。また同時にキックポイントもヘッド側に移行
し、従来の軽量シャフトでは成し得なかった物性を得て
いる。
【0047】比較例1は、アラミドフィルムによる補強
範囲が先端から100mm の区間であるめ、先端から50mm位
置でアラミドフィルムの肉厚を0.1mm以上とするため、
補強区間の境界部での形状変化が大きくなってしまい、
通常の研磨方法では良好な外観特性を得る事が出来な
い。また、比較例2では、アラミドフィルムによる補強
範囲が先端から600mm であり、重量軽減、重心位置およ
びキックポイントの移行、加工性の確保のいずれも実現
は出来ているものの、どの値もその効果が減少してお
り、補強区間が500mmを越えると、通常のCFRPに比
べシャフト硬さ(Flex) に影響を与えない事がマイナス
面として現れ、重量増加するだけとなる。
【0048】
【発明の効果】この発明は、上記のように有機重合体か
らなるテープ状またはシート状のフィルムを、シャフト
本体の最外層に部分的に巻回積層して一体的に成形して
成る繊維強化樹脂製ゴルフクラブ用シャフトであって、
前記フィルムによる巻回補強区間を、シャフト本体のチ
ップ端を0とした時、チップ端から始まり、終点が150m
m 以上、500mm 以下に設定したので、以下のような優れ
た効果を奏するものである。 .衝撃強度が最も必要なクラブヘッドホーゼル付近の
強度を向上させることが出来る。即ち、強度分布を最適
分配(チップから30mm位置で10[J]以上)にすること
が出来る。 .重量増加を最小限におさえることが出来る。 .先端部分の補強による剛性増を少なくすることが出
来る。 .先端部分の補強による重心位置の先端部への移動を
少なく(重心位置の全長比率53%以上)する事が可能で
ある。 .ゴルフクラブ用シャフトの長さを短く感じさせた
り、デザイン上差別化を目的とし、色調を部分的または
段階的に変化させる場合にも、上記のような着色した有
機重合体からなるテープ状またはシート状のフィルムを
等ピッチで巻回積層させることにより、容易に成形でき
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明を実施した繊維強化樹脂製ゴルフクラ
ブ用シャフトの正面図である。
【図2】クラブシャフト本体に有機重合体からなるテー
プ状またはシート状のフィルムを巻回積層する部分の一
部拡大断面図である。
【符号の説明】
1 シャフト本体 2 フィルム

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 有機重合体からなるテープ状またはシー
    ト状のフィルムを、クラブシャフト本体の最外層に部分
    的に巻回積層して一体的に成形して成る繊維強化樹脂製
    ゴルフクラブ用シャフトであって、前記フィルムによる
    巻回補強区間を、クラブシャフト本体のチップ端を0と
    した時、チップ端から始まり、終点が150mm 以上、500m
    m 以下に設定したことを特徴とする繊維強化樹脂製ゴル
    フクラブ用シャフト。
  2. 【請求項2】 前記フィルムの巻回補強区間の最もバッ
    ト側の位置からチップ側に50mmの位置において、補強層
    の肉厚が0.05mm以下であり、補強区間のチップ端から50
    mmの区間においては、テープ状のフィルムによる補強層
    の肉厚が0.1mm以上である請求項1に記載の繊維強化樹
    脂製ゴルフシャフト用シャフト。
  3. 【請求項3】 前記有機重合体が芳香族ポリアミドであ
    る請求項1に記載の繊維強化樹脂製ゴルフクラブ用シャ
    フト。
  4. 【請求項4】 有機重合体からなるテープ状またはシー
    ト状のフィルムを、クラブシャフト本体の最外層に部分
    的に巻回積層して一体的に成形する繊維強化樹脂製ゴル
    フクラブ用シャフトの製造方法であって、前記フィルム
    をフィルムによる巻回補強区間が、クラブシャフト本体
    のチップ端を0とした時、チップ端から始まり、終点が
    150mm 以上、500mm 以下に設定することを特徴とする繊
    維強化樹脂製ゴルフクラブ用シャフトの製造方法。
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