JPH09237603A - 位相差電子顕微鏡およびその位相板 - Google Patents

位相差電子顕微鏡およびその位相板

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JPH09237603A
JPH09237603A JP33650796A JP33650796A JPH09237603A JP H09237603 A JPH09237603 A JP H09237603A JP 33650796 A JP33650796 A JP 33650796A JP 33650796 A JP33650796 A JP 33650796A JP H09237603 A JPH09237603 A JP H09237603A
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JP
Japan
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phase plate
phase
electron microscope
conductor
focal plane
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Application number
JP33650796A
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English (en)
Inventor
Takao Matsumoto
隆夫 松元
Nobuyuki Osagabe
信行 長我部
Akira Tonomura
彰 外村
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hitachi Ltd
Original Assignee
Hitachi Ltd
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Publication date
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    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01JELECTRIC DISCHARGE TUBES OR DISCHARGE LAMPS
    • H01J2237/00Discharge tubes exposing object to beam, e.g. for analysis treatment, etching, imaging
    • H01J2237/26Electron or ion microscopes
    • H01J2237/2614Holography or phase contrast, phase related imaging in general, e.g. phase plates

Abstract

(57)【要約】 【課題】 電子顕微鏡の対物レンズ後側焦点面光軸上に
形成される直接波のスポット近傍における真空中の静電
ポテンシャルを外部より制御可能とすること。 【解決手段】 静電ポテンシャルをリング状の電極に外
部から電位を与えることで制御する。この電極の外側を
絶縁体と導電体によってはさみこむことにより、リング
の外側に対して静電ポテンシャルを遮蔽し、リング内部
を通過する電子線にのみ位相変化を与える。 【効果】 位相物体をコントラストをつけて観察ができ
る電子線に対する位相板を備えた位相差電子顕微鏡が実
現される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は電子顕微鏡およびそ
の位相板に係り、吸収コントラストの小さい試料、特に
生物試料などの観察に好適な位相差電子顕微鏡およびそ
の位相板に関する。
【0002】
【従来の技術】光学顕微鏡の分野において、Zernikeに
よる位相差顕微鏡の開発は吸収コントラストの小さい、
例えば生物試料などの観察にとって極めて重要な出来事
であった。位相差コントラストを利用することにより、
それまでは染色しなければ見えなかった生物試料が高い
コントラストで観察できるようになり、位相差顕微鏡が
生物・医学の発展において果たした寄与は計り知れない
ものがある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】電子顕微鏡において
も、吸収コントラストの小さい試料(位相物体)を観察
するために、電子線での位相差顕微鏡の試みがなされて
いるが、現在までのところ良い結果は得られていない。
その原因は電子線に対する有効な位相板がなかったため
である。
【0004】例えば従来、位相差顕微鏡を電子顕微鏡で
実現するために、図11(a)に示すように、厚さがほ
ぼ均一で中心部を切り欠いた導電性の悪い薄膜を使った
位相板12を対物レンズの後側焦点面上に設置して試料
による散乱波にのみ位相変化を与え、コントラストを上
げようとする試みがあった。しかしながらこの構成で
は、薄膜12が電子線の照射によって汚染され、帯電し
てしまい制御できない位相変化が生じてしまうこと、ま
た薄膜12の大きさが試料による散乱波の通過する領域
を広く覆うものであるため、試料による散乱波が薄膜を
通過し、そのために薄膜12の厚さのバラツキ等、試料
による散乱とは無関係なノイズに影響されてしまうなど
の欠点があり、実用化には至っていない。
【0005】また、図11(b)に示すように、内部で
磁束が回転し、外部に漏れないようにした磁性体のリン
グ13内に磁束を閉じこめることによって、AB効果を
利用したベクトルポテンシャルによってリング13の内
外を通る電子線に位相差をつける位相板も提案されてい
る(特開昭60−7048)。この形式による位相板
は、前述の薄膜を使用した形式の位相板と異なり、電子
線がリング13を通過しないので位相変化以外の影響を
受けないという点で優れているが、リング13に閉じこ
める磁束量、すなわち電子線の位相差をちょうどπ/2
にするに必要な大きさの磁束量に調節することが困難で
あり、またリング13外に磁束が漏れていないことが確
実に保証できる製造方法が確立されていないこと、さら
には磁束を閉じこめるためにリングの形状に原理的な制
限が存在するなどの理由で、やはり実用化に至っていな
い。
【0006】他方、図11(c)に示すように、静電ポ
テンシャルを利用した静電位相板もUnwinらによっ
て試みられ、生物試料のコントラストが向上することが
報告されている(例えばA New Electron Microscope Im
aging Method for EnhancingDetail in Thin Biologica
l Specimens Z. Naturforsch 29a (1974) 158-163)。こ
の方法では導電性のよくない材質で作られた細線14を
帯電させて位相変化を与えるのであるが、当然予想され
るように、その帯電量を制御することが極めて困難であ
り、これまた実用化されていない。
【0007】このように、これまでの位相板を実現しよ
うとする試みは、全て失敗に終わっているといってよ
い。
【0008】このように従来の実施例では、 (1)位相変化以外の影響 (2)位相変化量の制御が困難 という問題を同時に解決できなかった。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明の目的は上記した
2つの問題点を同時に解決し、位相物体をコントラスト
をつけて観察ができるような位相板を提供することであ
る。また、この位相板を備えた位相差電子顕微鏡を提供
することである。さらには、この位相板の利用により収
差補正を可能にした位相差電子顕微鏡を提供することで
ある。
【0010】上記(1)の問題に対しては、位相板を、
電子線が全体的に透過するタイプの、例えば、図11
(a)の薄膜のタイプではなく、図11(b)、(c)
のような静電ポテンシャルもしくはベクトルポテンシャ
ルを利用する形式を用いることで解決できるが、上述し
たように磁場の制御よりも静電ポテンシャルの制御の方
が容易であることから静電ポテンシャルを利用する形式
を採用する。さらに従来の静電ポテンシャルによる方式
が外部から制御困難であることによる上記(2)の問題
に対しては微細加工技術を利用して外部から容易に位相
板の静電ポテンシャルを制御できるような構造を構築す
ることにより解決できる。
【0011】
【発明の実施の形態】位相差電子顕微鏡を実現するため
には、光の1/4波長板のように電子線の位相を変える
素子すなわち位相板が必要である。この目的のために本
発明では対物レンズ後側焦点面光軸上に形成される直接
波のスポット近傍の真空中の静電ポテンシャルを外部よ
り制御可能とする構造を有する位相板を提案するととも
に、これを使用した位相差電子顕微鏡を提案する。
【0012】図1(a)に、実施例の一つであるリング
状位相板の外観を示す。本実施例による位相板は、位相
板として機能するリング部分とリング部分から突出した
位相板を取り付けるための支持部分とよりなる。本実施
例の位相板100は、断面構造を図1(b)に、より具
体的な構成を図2に、さらに製造方法の一例を図6にそ
れぞれ示すように、実質的に、層1〜層5の積層体とな
っている。この層1から層5は、各層の具体的な構成は
後述するが、図1(b)で見えているのは、導電体層
1、絶縁体層202、導電体層303、絶縁体層402
および導電体層5である。
【0013】図2を参照して、両側の最外層1と層5は
全体が導電体の層、その内側の2層の層2、層4はリン
グ部分の外側周辺部201、401のみが導電体の層、
他の部分202、402は絶縁体の層とされる。中央の
層3は外側周辺部301が導電体の層、最内周部303
が導電体の層とされ、この両方の導電体層の間にある領
域302が絶縁体層とされる。この中央の層3の導電体
層303の内面部は後述する電極8となり、リングの支
持部分を通して外部に電気的に接続できるようなってい
る。そして、この導電体層303は最内周部に形成され
るから、リング部分の内面では露出しており、電極8と
して機能するものとなる。電極8は、後述するように、
リング内部の静電ポテンシャルを所定の値に制御するた
めの所定の電位が与えられる。すなわち、図1(a)の
左側端部に見えるように、電極のリード線部分101が
絶縁層102を介して導電体103によって取り巻か
れ、図1(a)の中央部に見えるように、電極8の部分
のみがリング内面に露出した構造である。
【0014】このような構造の位相板100を対物レン
ズ後側焦点面光軸上に配置し、電極を取り巻く導電体層
103を接地し、電極の電位を支持部分のリード線部分
101を介して必要な電位に制御する(導電体層103
および電極のリード線部分101を外部に接続して接地
および必要な電位を与える機構については図示を省略し
た)ことによって、電子線が絶縁体に直接触れて帯電さ
せることはなくなり、絶縁体の帯電による問題を解決で
きる。一方、電極のリード線部分101に必要な電位を
与えることで、リング内部の静電ポテンシャルを所定の
値に制御できる。
【0015】両面の導電体層103の静電遮蔽効果によ
り、このリングの外側を通る電子線はリング内面に露出
した電極8による静電ポテンシャルの影響を、実質的な
意味で完全に除去できる。しかし、リングの内側を通る
電子線は外側を通った電子線に対して相対的に電極8に
よる静電ポテンシャルを電子の軌道に沿って積分した量
に比例する位相差を生じる。
【0016】いま軸対称な静電ポテンシャルを仮定し、
位相変化量を定量的に示すと、(数1)となる。
【0017】
【数1】
【0018】ここに、ρ:光軸からの半径、z:光軸上
の座標、ΔΦ(ρ):入射位置ρにおける電子の位相変
化量、e:電子の素電荷、λ:電子のドブロイ波長、V
(ρ,z):軸対称な静電ポテンシャル、E:入射電子
線のエネルギーであり、積分は電子の軌道に沿ってと
る。いま用いる電子線がきわめて高速で、位相板の静電
ポテンシャルが小さければほとんど光軸に平行に入射す
ると考えてよい。一例として、数百kV程度に加速され
た電子を用い、電極8の電位を数V程度とした場合に
は、この近似は十分に成り立つ。
【0019】ここで、本実施例における位相板100の
構造のように、対称軸のまわりを同一電位の電極8で囲
んでおり、かつその電極を接地された別の2つの電極
1、5により両面からはさみこむことにより、電位を与
えた電極8による静電ポテンシャルをリング内部に局所
的に閉じこめている場合には、上式で与えられる積分は
電子の入射位置ρによらず一定の値をとることが示せ
る。すなわち、この場合、3次元の静電ポテンシャルを
電子の入射方向に積分した量が有限の値となり、その量
が二次元のラプラス方程式に従うことになり、与えられ
た幾何学的条件による境界条件を満足するためには位相
板100のリングの内側で一定の値しか許されないので
ある。
【0020】一方、一般に電位を与えられた位相板10
0のリングの外側における上式の積分はリングの距離に
対して対数的に減衰することが示せるが、本発明ではリ
ングの外側の静電ポテンシャルは導電体により遮蔽され
ているので、リングの外側を通過する電子線は位相変化
を受けることはない。
【0021】したがって、位相板100のリングの内側
を通過する電子線はその入射位置によらず外側を通過す
る電子線に比べて相対的に一定の位相変化を受けること
になる。このことから、電極に与えるべき電位を定量的
に見積もることができる。すなわち、(数1)の積分項
は電極に与える電位と電極の厚さの積で見積もることが
できることになり、例えば加速電圧200kVの電子線
を用い、電極8の厚さを250nmにした場合、(数
1)の値がπ/2になるためには、逆算すると電極8の
電位を1Vにすればよいことがわかる。ここでは薄膜が
リング内部になくても静電ポテンシャルの厚みは電子の
入射位置によらず一定に保たれることが重要である。こ
れにより、直接波は真空中を通過できるので従来のよう
な汚染による帯電の問題がない。
【0022】本実施例のように、電子の光軸まわりを入
射電子の加速電圧に比して極めて小さくかつ均一な電位
を与えたリング状の電極で取り囲み、さらにこの電極に
よる静電ポテンシャルがリング内部に局所的になるよう
に2つの別なリング状の接地された電極ではさみこむこ
とにより、リングの内側を通過する電子線はその入射位
置によらず外側を通過する電子線に比べて相対的に一定
の位相変化を与えることが出来ることに着目したこと
は、位相差電子顕微鏡にとって極めて重要なことであ
る。
【0023】さらに、本実施例では、上下方向に中央電
極を中心とした対称な構造とし、リング内部孔径を等し
くしたが、導電体層1、5のリング内部孔径を電極8よ
りも小さくすることにより、リング内面で、電極8の上
下に露出している絶縁層7への電子線の照射を防止し出
来、リング内面に露出している絶縁層7(図2の202
および402が対応する)の無用な帯電を阻止するよう
にすることも有用である。
【0024】さて、本実施例で位相コントラストによっ
て観察できる試料の典型的な大きさdと位相板中央のリ
ングの外径(2r)および対物レンズの焦点距離fのあ
いだには(数2)の関係がある。
【0025】
【数2】
【0026】一例として50kVの電子線(λ=5.4
pm)を用い、かつリング径(2r)を4μm、対物レ
ンズの焦点距離を100mmにした場合、d=250n
m程度の構造を観察することができる。位相板は対物レ
ンズの焦点位置に挿入され、これを連続的に可変とする
ことは困難なので、いくつかの代表的な対物レンズの焦
点距離位置(たとえば10mmと100mmの位置)に
位相板を挿入可能にしておき、見たい試料の大きさによ
って対物レンズの焦点距離を変え、その焦点距離に対応
した位相板を用いることにより、異なった大きさの試料
を観察できる。このとき、対物レンズより下の結像系レ
ンズは連動させて変化させる必要がある。
【0027】また、通常の光学位相差顕微鏡では、直接
波の位相を変えるだけでなく、直接波と散乱波の比を変
えるために薄い金属膜を用いている。これは、散乱波が
弱い試料の場合、散乱波と直接波の干渉によるコントラ
ストが直接波自体の強いバックグラウンドに隠れて観察
が困難になることを防ぐためである。本実施例では、リ
ングの内径を変えることによって直接波と散乱波の比を
変えることができる。すなわち、リングの内径を小さく
するほど位相板を通過できる直接波が減少する。したが
って、リング内径の異なる位相板を4種類程度適当に離
して直列あるいは所定の直径の円周上に配列したものを
移動機構によって切り替えることにより、試料の散乱の
強さに応じて、直接波と散乱波の比を変えて試料を観察
することができるようになる。このように直接波と散乱
波の比を最適にすることにより、観察時における像のコ
ントラストを上げることができる。
【0028】図3に、他の実施例の一つである細線状の
位相板の外観を示す。本実施例による位相板は、位相板
として機能する導電体11が露出した中央部分と導電体
11を絶縁層10で覆うとともにその外周に導電層9を
設けた支持部分とよりなる。支持部分は位相板を取り付
けるためのものであると同時に位相板の露出した導電体
11へのリード線部分でもある。本実施例の位相板は、
先に引用した論文に紹介された、静電ポテンシャルを利
用した位相板(図11(c))と一見類似しているが、
静電ポテンシャルを外部から制御可能としている点にお
いて本質的に異なる。
【0029】露出している導電体11によって創り出さ
れる静電ポテンシャルは近似的に電位露出部分を中心と
した球対称となり、上の実施例で述べたように対物レン
ズ後側焦点面において位置ρに入射した電子の受ける位
相変化を計算すると(数3)
【0030】
【数3】
【0031】となる。ここに、ΔΦ(ρ):入射位置ρ
における電子の位相変化量、ρ0:細線の半径、e:電
子の素電荷、λ:電子のドブロイ波長、V:細線中心部
の静電ポテンシャル、E:入射電子線のエネルギーであ
る。この式がρの対数であることから、ρが小さいとこ
ろでは急激に増加し、あとはほぼ一定とみなせることが
わかる。
【0032】図3の実施例の位相板は図1の実施例のそ
れと異なり、直接波および散乱波の両方にポテンシャル
の影響を及ぼすが、導電体11の電位を制御して、導電
体11によって創り出される静電ポテンシャルを調節す
ることによって近似的に一定の位相差を与えることが可
能である。より詳しく云うと電子顕微鏡では対物レンズ
の球面収差とフォーカスのずれ(デフォーカス量と呼
ぶ)による位相変化も考慮する必要があり、これと上述
した位相板による位相変化量を加え合わせることになる
が、その場合でも対物レンズの球面収差係数に応じた適
当なデフォーカス量を用いることにより、最適な条件に
設定することが可能である。すなわち、広い空間周波数
範囲で位相コントラストを一様に高くすることができ
る。
【0033】さて、以上述べたような位相板を利用する
ことにより、電子顕微鏡に、位相物体(吸収コントラス
トの小さい試料)をコントラストのついた像として観察
する光学位相差顕微鏡と同じ原理が適用できる。これを
次に説明する。
【0034】光および電子線は波としてふるまい、振幅
と位相という2つの量で記述することができ、ベクトル
図により説明される。すなわち、波の振幅をベクトルの
長さ、位相をベクトルの基準線に対する角度として表現
するわけである。
【0035】図4(a)に、吸収のある試料に入射した
波15(ベクトルMA)と試料を透過した波16(ベク
トルMD)とを示す。試料透過波16は入射波15と比
べて位相(角度)も振幅(長さ)も変化しており、その
結果、試料透過波16は入射波15に対して、強度の差
として観察できる。ここで試料透過波16(ベクトルM
D)に注目すると入射波15(ベクトルMA)と符号1
7で示すベクトルAD(=ベクトルMD′)の合成とな
っていることがわかる。このベクトルMD′は試料によ
り散乱された波18を表している。一方、図4(b)に
示したように吸収の小さい試料の場合では、試料透過波
20(ベクトルMD)は入射波19(ベクトルMA)と
比べて位相(角度)は変化しているが振幅(長さ)はほ
とんど変化しない。したがって試料透過波20(ベクト
ルMD)は強度的に入射波19(ベクトルMA)と区別
できず、試料にコントラストがつかないことになる。こ
こで、試料透過波20(ベクトルMD)に注目すると、
これは入射波19(ベクトルMA)と符号21で示すベ
クトルAD(=ベクトルMD′)とのベクトル的な和で
あるが、入射波19(ベクトルMA)に対してほぼ−9
0°(π/2)だけ位相がずれていることがわかる。
今、入射波19(ベクトルMA)の位相を+90°(π
/2)回転させると波23(ベクトルMPh)となる
が、これと散乱波22(ベクトルMD′)を合成した波
24(ベクトルMD″)が試料透過波として観測される
ことになり、これは観測される入射波23(ベクトルM
Ph)に対して強度差があるため試料のコントラストが
つくことになる。以上が位相差顕微鏡の原理である。
【0036】本発明における電子線に対する位相板も、
これと全く同じように入射波の位相をπ/2変化させ、
試料による散乱波はそのまま通過させる働きをする。し
たがってこれを従来の電子顕微鏡の対物レンズの後側焦
点面(対物絞りの位置)上かその極く近傍におくことに
よって位相差電子顕微鏡となり、これにより生物試料の
ような位相物体を高いコントラストで観察できるように
なる。
【0037】次に、本発明による位相板を使用した位相
差電子顕微鏡の実施例を図5により説明する。
【0038】図5は本実施例の光学系の基本構成を示し
たものである。この顕微鏡は電子源25、集光レンズ2
6、試料27、対物レンズ28、拡大レンズ系30、蛍
光スクリーン、または蛍光スクリーンの像を写す撮像装
置と表示装置との観察面31よりなる通常の電子顕微鏡
と類似の基本構成をしている。この対物レンズ28の後
側焦点面近傍のほぼ光軸位置に位相板100を配置す
る。さらに、位相板100の外側導電体は接地され、中
央の電極8へのリード線101には電源40から所定の
電位が与えられる。位相板100は、真空移動機構50
によって容易に電子軌道への出し入れができる構造とさ
れる。これによって、位相板100を電子軌道外に置い
たときは通常の電子顕微鏡として使用でき、図示したよ
うに、位相板100を電子軌道のほぼ光軸位置に置いた
ときは位相差電子顕微鏡として使用される。
【0039】次に、位相差電子顕微鏡としての動作につ
いて述べる。電子源25から出た電子線は集光レンズ2
6を通して試料27に入射する。そして試料(位相物
体)27透過後、入射波と同じ振幅、同じ位相をもつ電
子線32は対物レンズ28を通過後、その後側焦点面に
おいて位相板100の内側を通り、その位相をπ/2+
nπ(n:中央電極の電位および中央電極の厚さで決ま
るが整数となるように調整する)だけ変化させられる。
ここでnを大きくすることは位相板の中央電極に与える
電位を大きくすることに等しく、位相板によるレンズ作
用が無視できるためにはnを小さく保つ必要があるが、
必ずしも0である必要はない。一方、試料(位相物体)
27によって散乱を受け、入射電子線と異なる位相をも
つ電子線33は対物レンズ28を通過後、その後側焦点
面において位相板100の外側を通る。かかる電子線の
光路になるように調整するには、拡大レンズ系30によ
って位相板100の位置する対物レンズ28の後側焦点
面の像を観察面31に結像し回折像を得、位相板100
の位置を自動的に、もしくは手動で調整し、入射電子線
と同じ位相をもつ電子線32が位相板100の内側を通
るようにする。したがって位相板100の位置を調節す
る機構も備えている必要がある。
【0040】次に、これら2つの電子線32、33は拡
大レンズ系30によって試料27の拡大像を観察面31
に形成する。この観察面31では、本発明の原理のとこ
ろで述べたように強度差をもった像、すなわち、大きな
コントラストを有した像として観察することができる。
図5において、試料27および観察面31の右側に模式
的に示した様に、試料自体のコントラストはほとんど無
くても、位相信号で見ると十分なコントラストを持つも
のとして観測が出来る。
【0041】次に、図1に示した実施例の位相板を半導
体製造技術によって製作する一例の概要を図6によって
説明する。図6は図1においてB−Bで示す位置で矢印方
向に見た断面について示すものである。
【0042】図6(A)はシリコン基板62の両面に耐異
方性エッチング膜61、63を蒸着した後耐異方性エッ
チング膜63の上面に導電性膜64、絶縁性膜65およ
び導電性膜66を各々積層し、絶縁性膜65および導電
性膜66をパターニングした状態を示す。この例では、
導電性膜64、絶縁性膜65および導電性膜66の各々
は250nm、100nmおよび250nmである。こ
こで耐異方性エッチング膜61、63は、後述するよう
に、裏面からシリコン基板62の異方性エッチングを行
う際に、窓を形成する目的と表面に形成されている構造
をエッチング液から保護する目的で付けられたものであ
り、酸化シリコン膜(SiO)または窒化シリコン膜(S
iN)などを用いることができる。絶縁性膜65として
は、たとえば、酸化シリコン膜(SiO)または窒化シリ
コン膜(SiN)などを用いることができるが、絶縁の
目的に適いさえすれば、何でも良い。導電性膜64、6
6としては金、白金、タングステン、アルミニウム、チ
タンあるいは窒化チタンなどを用いることができるが、
導体としての目的に適いさえすれば、何でも良い。
【0043】図6(B)は裏面の耐異方性エッチング膜
61にフッ素をベースとした反応性ガスを用いたドライ
エッチングの手法により、異方性エッチング窓67をパ
ターニングした状態を示す。
【0044】図6(C)は上面の導電性膜66の周囲に絶
縁性膜を100nm堆積させた後ドライエッチングの手
法により、パターニングして導電性膜66を絶縁性膜6
8によってカバーした状態を示す。
【0045】図6(D)は絶縁性膜68によって周囲を取
り巻かれた導電性膜66の絶縁性膜68の周囲に、さら
に、導電性膜を250nm堆積させた後ドライエッチン
グの手法により、パターニングして絶縁性膜68を導電
性膜69によってカバーした後、図1のリング中央部に
対応する切り欠きをパターニングして形成した状態を示
す。
【0046】図6(E)は、表面を保護した状態で裏面か
らシリコンの異方性エッチングを行い、シリコンの窓を
開けた後、フッ素をベースとした反応性ガスを用いたド
ライエッチングの手法により、耐異方性エッチング膜6
3を除去した状態を示す。
【0047】かくして、図1に示す位相板が形成される
が、これはこの方法に限らず、任意の製法で良いことは
当然である。なお、図6(D)における導電性膜66が図
2における導電層303に対応し、絶縁性膜68が絶縁
層202、302および402に対応し、導電性膜69
が導電層1、201、301、401および5にそれぞ
れ対応する。
【0048】次に、本発明の位相板によれば、位相板の
電位を任意に制御できるから、収差補正をも簡単にでき
ることを説明する。
【0049】電子顕微鏡では、高分解能である反面、電
子レンズの収差とくに対物レンズの球面収差を補正でき
ない問題がある。凸レンズと凹レンズの組み合わせによ
り収差を補正できる光学レンズと異なり、電子レンズは
原理的に凸レンズ作用しかないからである。この問題を
克服して電子の波長に迫る超高分解能を実現しようとす
る方法として最も有名なのがGaborによるホログラ
フィー法である。Gaborの発明当時は電子線の干渉
性不足のため、実現困難であった電子線ホログラフィー
法は、近年、電界放射型電子銃が実用化され、電子線バ
イプリズムを用いた二光束法により、0.1nmよりも
高い分解能をめざした実験がおこなわれるまでになって
きている(例えばPhys.Rev.Lett.74巻
(1995)399頁)。ところが、このような高分解
能電子線ホログラフィー法において常に問題になるのは
対物レンズの収差を精密に測定する方法がないことであ
る。このような高分解能電子線ホログラフィー法では物
体が電子線に対し弱位相物体とみなせるため、通常の高
分解能電子顕微鏡法において像から元の物体の位相分布
を逆算する場合に収差のパラメータを推定する問題と等
価になる。さて、一般に対物レンズの収差関数は電子線
の波長λ、球面収差係数Cs、デフォーカス量Δ、散乱
角βを用いて(数4)に示すように、
【0050】
【数4】
【0051】対物レンズの球面収差係数とデフォーカス
量という2つのパラメータで表されることが知られてい
る。電子線ホログラフィー法ではこれら2つのパラメー
タの推定値が真に正しいかという疑問には答えることが
できない。一方、高分解能電子顕微鏡法ではデフォーカ
ス量を変化させて撮影した一連の像を撮影し、画像処理
により球面収差を補正することをおこなうが、これも撮
影に用いたデフォーカス量が正しいかどうかについては
答えることができない。電子線ホログラフィー法による
二段階結像法では電子線による結像のあと、光学的な再
生において収差を補正するものであり、像面における電
子波の振幅と位相が同時に記録されているため、どのよ
うにでも補正することが可能であるが、その際、収差関
数が既知であることが大前提である。また(数4)で表
される収差は電子線の干渉性が完全な場合に成り立つい
わゆるコヒーレントな収差であり、実際には電子線の干
渉性が完全でないことに由来する色収差などのいわゆる
インコヒーレントな収差も合わせて考えなければならな
い。
【0052】このように従来、収差については、 (1)二つの独立した収差パラメータ(球面収差係数と
デフォーカス量)の推定が困難である。 (2)推定したパラメータの妥当性が保証されない。 という問題を同時に解決できなかった。
【0053】本発明の位相板によれば、これらの問題は
同時に解決でき、収差を補正した超高分解能像を得るこ
とが可能となる。すなわち、図5で説明したように、対
物レンズ後焦点面光軸上に位相板を配置し、直接波と散
乱波との間に異なった相対的位相差を与えた一連の像を
撮影して、それらからレンズの収差関数を直接評価する
ことをおこなうことで容易に実現できる。
【0054】上述したような位相板を利用した弱位相物
体の超高分解能像の観察は、光学顕微鏡における高精度
位相計測法である縞走査法、ヘテロダイン法、フェーズ
ロック法などと同じ原理が適用できる。これらの手法に
関してはそれぞれApplied Optics 13巻(1974)2693頁、Ap
plied Optics 19巻(1980)154頁、Optical Engineering18
巻(1979)46頁に記載されている。これらを次に説明す
る。以下では簡単のために一次元の記述を用いるが、二
次元の記述はパラメータが増えるのみで一般性を失わな
い。
【0055】縞走査法、ヘテロダイン法、フェーズロッ
ク法では(数5)に示す干渉縞強度
【0056】
【数5】
【0057】から位相φ(x)を精密に計測することを
おこなう。ここで、縞走査法ではΨ(t)として(数
6)
【0058】
【数6】
【0059】を、ヘテロダイン法では(数7)
【0060】
【数7】
【0061】を、また、フェーズロック法では(数8)
【0062】
【数8】
【0063】をそれぞれ導入する。ここで、、I
(x)、a(x)、b(x)は実関数である。各手法で
は計測した干渉縞強度から、a(x)、b(x)を分離
して位相φ(x)を精密に測定することができる。
【0064】これを縞走査法の場合を例に説明する。こ
の場合、干渉縞強度は(数9)
【0065】
【数9】
【0066】で与えられるが、書き直すと(数10)
【0067】
【数10】
【0068】この信号列のl番目のスペクトルは一般に
(数11)
【0069】
【数11】
【0070】で与えられるが、l=1の基本周波数スペ
クトルに注目すると(数12)
【0071】
【数12】
【0072】を得る。したがって、位相φ(x)は、こ
の基本周波数スペクトルから(数13)
【0073】
【数13】
【0074】を計算することによって得られる。ヘテロ
ダイン法とフェーズロック法に関しても、縞走査法と同
様に干渉縞に特定の変調をかけ、位相を精密に計測する
ことができる。
【0075】一方、電子顕微鏡における弱位相物体の結
像では像強度のフーリエ変換T(α)を物体による電子
線の位相変化量φ(x)のフーリエ変換σ(α)と収差
関数χ(α)を用いて(数14)のように表すことがで
きる。
【0076】
【数14】
【0077】ただし、T(α)、σ(α)は一般に複素
数である。ここでαはフーリエ空間における座標を表
す。
【0078】さて、位相板を使うと(数14)において
に(数6)、(数7)および(数8)で表される項を加
えることができ、実部と虚部に分けて書くと(数1
5)、(数16)に示すものとなる。
【0079】
【数15】
【0080】
【数16】
【0081】(数5)と(数15)、(数16)を比較
すると明らかなように、これらの手法によって未知の収
差関数χ(α)を決定できることがわかる。この場合、
球面収差係数とデフォーカスのそれぞれについて決定は
できないが、収差の補正では両者の和およびこれに位相
板自身による寄与を加えた全体の収差を評価できればよ
い。
【0082】次に、収差補正の具体例を図により説明す
る。図7は、図5に示した実施例を基礎に、収差補正を
加味した電子顕微鏡の実施例の構成を示したものであ
る。この実施例で図5に示すものと同じものまたは同等
物には同じ符号を付した。両図を対照して明らかなよう
に、電子線の通路に電子線バイプリズム70が追加さ
れ、観察面31に代えて画像検出装置72が配置されて
いる。バイプリズム70はその位置と加える電圧を制御
可能な電子線バイプリズム制御装置71によって制御さ
れ、画像検出装置72の出力は、画像処理装置74で処
理された後、画像表示装置73により通常の電子顕微鏡
と同様に試料のイメージ画像を表示する。後述するよう
に、電子線バイプリズム制御装置71および画像処理装
置74は、位相板100の移動を制御する移動機構50
および位相板100の電極8の電位を制御する電源40
とともに全体制御器75により総合的に制御される。こ
こで、バイプリズム制御装置71、画像処理装置74お
よび全体制御器75が、それぞれ、いわゆるマイクロコ
ンピュータを内蔵しているもの、あるいは、一つのコン
ピュータの機能が分離して表現されたもののいずれでも
良いことは言うまでもない。
【0083】電子線バイプリズム70は位相板100と
同様に移動機構によって容易に電子軌道への出し入れが
できる構造となっている。電子線バイプリズム70は電
極となるワイヤー701と接地電極702、703とか
ら構成され、拡大レンズ系30の上にあるが、以下に述
べる位相板による位相変化量の較正が必要な場合にのみ
電子線の通路に移動して用いられる。
【0084】さて、収差を補正した像を得る手順を、図
1で示した静電ポテンシャルを利用する位相板を用いた
場合について、図8、図9および図10を用いて説明す
る。まず、処理ステップの全体の流れをフローチャート
として図8に示した。この処理ステップの制御は総合制
御器75により行われる。
【0085】始めに位相板100による位相変化量の較
正をステップ81、82でおこなう。ただし、位相板1
00による位相変化量と位相板に与える電位との間の関
係があらかじめなんらかの方法で既知である場合、操作
者がその旨の設定を総合制御器75に与えているから、
ステップ81の答えはYESであり、ステップ82はパス
されて、次のステップ83に進む。
【0086】位相変化量の較正のステップ82の一例の
詳細をフローチャートとして図9に示した。まず、電子
線バイプリズム70を電子線通路内へ移動する(ステッ
プ91)。ここでレンズ30のレンズ電流を調節し、電
子顕微鏡の焦点を試料27ではなく位相板100に合わ
せる(ステップ92)。この段階では、試料が電子線通路
に無い状態にしておく。電子線バイプリズム70の位置
を調節し、電子線バイプリズム70の電極701に電位
を印加する(ステップ93)ことによって、位相板のリ
ングの内部を通過した電子線120と外部を通過した電
子線110同士の等間隔干渉縞を観察する(ステップ9
4)。この段階では、まだ位相板100による位相変化
量は無であり、リングの内と外で干渉縞は一直線上にな
る。この状態を図10(a)に示す。ここで100で示
す影が位相板100のリング部分に対応するものであ
る。次にステップ95で、位相板100の電位を電源4
0によって調節し、位相板100に電位を印加して干渉
縞を観察していくと、リングの内側の干渉縞は移動を始
め、位相板による位相変化量がちょうど電子線の波長の
半分に相当する値になったとき、図10(b)に130
で示すように、リングの内と外で干渉縞がちょうど半分
の間隔だけずれる。さらに電位を増加していくと再び、
図10(c)に140で示すように、リングの内と外で
干渉縞は一直線上になるが、このとき、位相板100に
よる位相変化量は一波長に相当する。さらに電圧を増加
して、干渉縞が一直線となる電位をいくつか計測するこ
とにより、電子線の一波長分に相当する位相変化量を与
えるのに必要な電位V0を精密に計測することができる
(ステップ96)。この場合、電位は正でも負でもよ
い。正と負とではリングの内側の干渉縞の移動の方向が
逆になるだけで電子線の一波長分に相当する位相変化量
を与えるのに必要な電位の絶対値V0は同じである。位
相板による位相変化量の較正が終了したらレンズ電流を
リセットし(ステップ97)、不要となったバイプリズ
ムを電子線の通路外へ移動させる(ステップ98)。こ
うして、位相変化量の較正が終了する。
【0087】次に、ステップ83で対物レンズ28後方
焦点面に収束した電子線が、ちょうど位相板100のリ
ング中心を通過しているか否かを判定して、電子線が位
相板のリング中心を通過していないときは、位相板10
0の位置合わせが必要と判断し、ステップ84でこれを
おこなう。このステップでは、まず、結像系レンズ30
のレンズ電流を調節して電子顕微鏡の焦点を、対物レン
ズ後方焦点面に挿入した位相板100に合わせる。対物
レンズ28後方焦点面に収束した電子線が、ちょうど位
相板のリング中心を通過するように位相板の位置を移動
する。位置合わせが終わったらレンズ電流を調節して電
子顕微鏡の焦点を試料に合わせる。
【0088】位相板の位置合わせが終了したら、前述し
た収差補正に用いる手法のうちから、一つを選択する
(ステップ85)。以下では縞走査法を選択した場合を
仮定して説明する。縞走査法では全部でM枚(M≧2)
の画像を必要とする。Mをいくらに設定するかは、観察
者が選択可能とするが、通常10から100程度の範囲
とするのが良い。
【0089】さて、電子線の位相変化量と、位相板に与
える電位Vとの間には(数17)
【0090】
【数17】
【0091】の関係がある。ここで、e:電子の素電荷
量、λ:電子線のドブロイ波長、E:電子線のエネルギ
ー、d:位相板の中央電極の厚さである。上述した位相
変化量の較正の記述において電子線の一波長分に相当す
るに与える電位V0がステップ82で得られているので
(数18)に示すように、
【0092】
【数18】
【0093】これから(数19)に示すものとなる。
【0094】
【数19】
【0095】したがって、一般に位相板100に電位V
を与えると(数20)
【0096】
【数20】
【0097】の位相変化量ΔΦとなる。しかるに縞走査
法で与えるn番目の電位V(n)は(数21)となり、
【0098】
【数21】
【0099】結局、(数22)に示すようであればよ
い。
【0100】
【数22】
【0101】あるいは、図6で説明したような、位相板
の製作過程で中央部の電極8の厚さdが精密に制御で
き、知られている場合には(数23)に示すものとな
り、(数24)であればよい。
【0102】
【数23】
【0103】
【数24】
【0104】ステップ86で、(数22)あるいは(数
24)で与えられる電位V(n)を位相板100に与え
たときに得られる画像Q(x,y;n)を画像検出器で
順次検出し、画像処理装置74に記憶する。ここでxと
yは画像の各画素の2次元座標を表す。必要な画像数が
得られたか否かをステップ87で判定し、次のステップ
88で、これら一連の画像の2次元フーリエ変換を計算
し、実部r(ξ,η;n)と虚部i(ξ,η;n)を得
て収差に対応した画像の補正を行い補正画像として表示
する。ここで、ξとηは2次元フーリエ空間の座標であ
る。求める収差関数は(数13)を参照して、(数2
5)または(数26)で求められる。
【0105】
【数25】
【0106】
【数26】
【0107】ここにR(ξ,η;l)とI(ξ,η;
l)とは1次元信号列r(ξ,η;n)とi(ξ,η;
n)のl番目のスペクトルである。以上のようにして、
未知の収差関数を精密に決定することができる。このよ
うにして収差関数を決定されると、収差が既知の条件で
像またはホログラムを撮影し、それから収差を補正した
像を計算することが可能になる。さらに、決定された収
差関数を(数4)で近似することにより球面収差係数と
デフォーカス量を求めることも可能である。
【0108】ここで、実施例として、縞走査法に例をと
り、位相板として図1に示すリング構造のものをとって
説明したが、これは、他の手法による場合でも、位相板
の構造が図3の例の場合でも、同様に行えることは言う
までもない。
【0109】
【発明の効果】本発明によれば、通常の電子顕微鏡に位
相板を付加装置としてつけることにより、光学位相差顕
微鏡と同様、生物試料のような吸収コントラストの小さ
い試料(位相物体)を無染色の状態で大きなコントラス
トを持った像として観察できるための位相板およびこれ
による位相差電子顕微鏡が実現出来る。
【0110】さらに、対物レンズの収差を補正した高分
解能の像を得ることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)は本発明の実施例にかかわる位相板の斜
視図、(b)はそのA−A位置での断面を矢印方向に見
た断面図。
【図2】図1に示す実施例にかかわる位相板の構成をよ
り具体的に説明するために位相板を構成する各層を示す
斜視図。
【図3】本発明の他の実施例にかかわる位相板の斜視
図。
【図4】(a)、(b)は光学位相差顕微鏡の原理を説
明する図。
【図5】本発明による位相差電子顕微鏡の光学系の基本
構成を示す図。
【図6】(A)−(E)は図1に示す本発明の実施例にか
かわる位相板の製作過程の例を説明する概略図。
【図7】図5に示した実施例を基礎に、収差補正を加味
した電子顕微鏡の実施例の構成を示す概略図。
【図8】収差を補正した像を得る手順のステップの全体
構成を図1で示した静電ポテンシャルを利用する位相板
を用いた場合について説明する図。
【図9】図8に示したステップの位相変化量の較正のス
テップを説明する図。
【図10】位相変化量の較正のステップで現れる画像変
化の例を示す図。
【図11】(a)、(b)および(c)は、それぞれ、
従来のタイプの位相板の例を示す図。
【符号の説明】
1,5,201,301,303,401:導電体層、
202,302,402: 絶縁体層、8:電極、9:
導電層、10:絶縁層、11:導電体、、12:薄膜位
相板、13:磁性体のリング位相板、14:細線位相
板、15,19:試料に入射した波、16,20:試料
を透過した波、18,21:散乱された波、25:電子
源、26:集光レンズ、27:試料、28:対物レン
ズ、30:拡大レンズ系、31:観察面、100:位相
板101:リード線、40:電源、50:真空移動機
構、62:シリコン基板、61,63:耐異方性エッチ
ング膜、64:導電性膜、65:絶縁性膜、66:導電
性膜、67:異方性エッチング窓、68:絶縁性膜、6
9:導電性膜、70:電子線バイプリズム、71:電子
線バイプリズム制御装置、72:画像検出装置、73:
画像表示装置、74:画像処理装置、75:全体制御器

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】電子顕微鏡の対物レンズ後側焦点面近傍の
    ほぼ光軸位置に配置されるリング状に形成された位相板
    であって、該焦点面近傍のほぼ光軸位置の直接波のスポ
    ットに対応する電子の通過するリング内面を露出させた
    ほかは絶縁体を介してこれをはさみこんだ導電体で覆わ
    れたリング状の微小電極および該微小電極に外部電位を
    導入するための導電体よりなることを特徴とする位相
    板。
  2. 【請求項2】内径を異にするリングが複数個連携されて
    いる請求項1記載の位相板。
  3. 【請求項3】電子顕微鏡の対物レンズ後側焦点面近傍の
    ほぼ光軸位置に配置される位相板であって、該焦点面近
    傍のほぼ光軸位置の直接波のスポットに対応する電子の
    通過する領域にある部分を露出させたほかは絶縁体を介
    してこれを包み込んだ導電体で覆われた細線の電極より
    なることを特徴とする位相板。
  4. 【請求項4】対物レンズ後側焦点面近傍の光軸上に形成
    される直接波のスポット近傍に配置された位相板を備え
    た位相差電子顕微鏡であって、該位相板は前記焦点面近
    傍のほぼ光軸位置の直接波のスポットに対応する電子の
    通過する部分を露出させたほかは絶縁体を介してこれを
    はさみこんだ導電体で覆われた微小電極および該微小電
    極に外部電位を導入するための導電体よりなり、該電子
    顕微鏡は前記微小電極に外部電位を与えるための電源を
    備えるとともに、前記電極をはさみこんだ導電体を接地
    したことを特徴とする位相差電子顕微鏡。
  5. 【請求項5】対物レンズ後側焦点面近傍の光軸上に形成
    される直接波のスポット近傍に配置された位相板を備え
    た位相差電子顕微鏡であって、該位相板は前記焦点面近
    傍のほぼ光軸位置の直接波のスポットに対応する電子の
    通過するリング内面を露出させたほかは絶縁体を介して
    これをはさみこんだ導電体で覆われたリング状の微小電
    極および該微小電極に外部電位を導入するための導電体
    よりなり、該電子顕微鏡は前記微小電極に外部電位を与
    えるための電源を備えるとともに、前記電極をはさみこ
    んだ導電体を接地したことを特徴とする位相差電子顕微
    鏡。
  6. 【請求項6】前記位相板は内径を異にするリングが複数
    個連携されており、該位相板の一つのリングを選択する
    ための移動機構を備える請求項5記載の位相差電子顕微
    鏡。
  7. 【請求項7】対物レンズ後側焦点面近傍の光軸上に形成
    される直接波のスポット近傍に配置された位相板を備え
    るとともに、その後方にバイプリズムを備えた位相差電
    子顕微鏡であって、該位相板は前記焦点面近傍のほぼ光
    軸位置の直接波のスポットに対応する電子の通過する領
    域にある部分を露出させたほかは絶縁体を介してこれを
    包み込んだ導電体で覆われた電極よりなり、該電子顕微
    鏡は前記電極に外部電位を与えるための電源を備えると
    ともに、前記電極をはさみこんだ導電体を接地され、前
    記バイプリズムは試料の観察に先行して前記位相板の効
    果を評価するために使用されることを特徴とする位相差
    電子顕微鏡。
  8. 【請求項8】前記焦点面近傍のほぼ光軸位置の直接波の
    スポットに対応する電子の通過するリング内面を露出さ
    せたほかは絶縁体を介してこれをはさみこんだ導電体で
    覆われたリング状の微小電極および該微小電極に外部電
    位を導入するための導電体よりなる位相板を使用する請
    求項7記載の位相差電子顕微鏡。
  9. 【請求項9】前記位相板が内径を異にするリングが複数
    個連携されている請求項8記載の位相差電子顕微鏡。
  10. 【請求項10】前記焦点面近傍のほぼ光軸位置の直接波
    のスポットに対応する電子の通過するリング内面を露出
    させたほかは絶縁体を介してこれをはさみこんだ導電体
    で覆われた細線の微小電極および該微小電極に外部電位
    を導入するための導電体よりなる位相板を使用する請求
    項7記載の位相差電子顕微鏡。
  11. 【請求項11】対物レンズ後側焦点面近傍の光軸上に形
    成される直接波のスポット近傍に配置された位相板を備
    えるとともに、その後方にバイプリズムを備えた位相差
    電子顕微鏡であって、該位相板は前記焦点面近傍のほぼ
    光軸位置の直接波のスポットに対応する電子の通過する
    領域にある部分を露出させたほかは絶縁体を介してこれ
    を包み込んだ導電体で覆われた電極よりなり、該電子顕
    微鏡は前記電極に外部電位を与えるための電源を備える
    とともに、前記電極をはさみこんだ導電体を接地され、
    前記バイプリズムは試料の観察に先行して前記位相板の
    効果を評価するために使用され、該評価は観察面に結像
    した回折像を前記バイプリズムに与える電位を変化させ
    た時の像の変化により行われることを特徴とする位相差
    電子顕微鏡。
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Cited By (13)

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