JPH09234370A - 重質油類水素化分解用触媒 - Google Patents

重質油類水素化分解用触媒

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JPH09234370A
JPH09234370A JP8042860A JP4286096A JPH09234370A JP H09234370 A JPH09234370 A JP H09234370A JP 8042860 A JP8042860 A JP 8042860A JP 4286096 A JP4286096 A JP 4286096A JP H09234370 A JPH09234370 A JP H09234370A
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hydrocracking
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heavy oil
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秀次 福山
Yuzuru Yanagisawa
譲 柳沢
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Koa Oil Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 担持の各工程の省略が図れ、触媒としての使
用量が削減され、生成物の性状の改善が図れる特定の性
状を有する重質油類水素化分解用触媒を提供する。 【解決手段】 下記のAなる特定の性状を有する重質油
類水素化分解用活性炭素と下記Bの中から選択された少
なくとも1種の鉄化合物とが単に混合されてなる重質油
類水素化分解用触媒。 A:(1)MCH転化率が40%以上85%以下であり、
(2)その比表面積が800 〜1000m2/gであり、
(3)その細孔容積が0.7 〜1.4 cm3/gであり、
(4)かつ、20〜500 Åであるメソポアの占める容積が
70%以上であり、(5)その平均細孔直径が30〜60Åで
ある B:硫化鉄、天然パイライト、酸化鉄

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、特定の性状を有す
る重質油類水素化分解用活性炭素と鉄化合物とが単に混
合されてなることを特徴とする重質油類水素化分解用触
媒に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、世界的な石油事情として製品の軽
質化傾向があり、有用な軽質留分を取り去った後の、常
圧蒸留残油、減圧蒸留残油、接触分解残油等の残油等あ
るいはオイルサンド油、石炭液化油等の重質油等につい
ては、資源の有効利用の点から、これら残油等および重
質油等を水素化分解してさらに有用な中間留分に転化す
ることの重要性が益々増加してきている。上記常圧蒸留
残油、減圧蒸留残油、接触分解残油等の残油等あるいは
オイルサンド油、石炭液化油等の重質油等は、硫黄分や
金属類の不純物またレジン分やアスファルテン分さらに
は残留炭素分等の劣質成分が多く含まれているため、こ
れら残油等や重質油等に対して充分な活性を示し、コー
クの生成が少なく、中間留分として有用な生成油の液収
率が高く、また、触媒使用量の削減を図ることのできる
水素化分解用触媒の開発が待たれていた。上記残油等や
重質油等を水素化分解するための触媒としては、例え
ば、特公平6−96710号、特開平6−165935
号等が提案されている。特公平6−96710号は、酸
化鉄、高炉ダスト、原油のガス化処理からの灰、鉄を含
有する天然の無機鉱物、すす、石炭又は褐炭からの活性
コークス、ラテライト、及びリモナイトよりなる群から
選ばれた1個以上の成分を重質油等に添加し水素化転換
を行うに際し、添加する上記成分を微粒子と粗大粒子の
2種の粒子サイズに厳格に分画し、さらに、微粒子と各
々の使用割合を厳格に制御して作用させることにより、
水素化転換反応を阻害する泡形成を減少させようとする
ものである。そして、この泡形成を減少する作用は、粗
大粒子が寄与すること、また、粗大粒子として使用する
石炭、褐炭からの活性コークス等は、比較的小さい活性
成分か不活性成分を使用することも開示されている。し
かし、この技術は、水素化転換反応を阻害する泡形成を
減少させようとするのを目的としており、本発明の目的
である添加率の上昇に従い多量に発生するコークを抑制
することとは目的を異にする。本発明者らの知見では、
添加物の粒度分画とその使用割合を制御するだけでは高
転化率において生成する多量のコークを抑制するのは極
めて困難であると思料する。
【0003】先に本願出願人の一部は、接触水素化分解
プロセスに属する技術の改良の一つとして、重質油類水
素化分解用触媒およびその触媒を用いた水素化分解法を
特開平6−165935号にて提案した。金属が担持さ
れた該提案の触媒は、炭素担体に脱水素能をもたせ、ア
スファルテンやプレアスファルテンのコーク前駆体から
脱水素した水素が該担体上を移動し、水素化能を有する
金属上で炭化水素を水素化する逆スピルオーバー効果を
有するものであった。該触媒を使用する特長としては、
以下が挙げられる。 (1)水素消費量が少ないこと、(2)触媒を処理すべ
き原料に対し10wt%程度用いれば、コークは発生する
が、その生成量が少ないことなお、実施圧力は、約70kg
/cm2G、使用する触媒の量としては、処理すべき原料に
対し10wt%であることが、該提案の実施例4に開示さ
れている。
【0004】該提案の触媒は、灰分が3重量%未満の褐
炭を炭酸ガス気流中で400 〜800 ℃にて乾留して得られ
た乾留炭を、さらに、炭酸ガスもしくは炭酸ガス、水蒸
気共存下で600 〜900 ℃にて活性化させて得られた炭素
担体に周期律表VIII族より選ばれた1ないし1以上の金
属を担持させた後、水素にて還元し、次いで硫化処理を
して得られものであった。特に、活性化は、炭酸ガスで
800 〜900 ℃で処理されるのが効果的である、とされ、
該提案の触媒の物性の一例として該提案の実施例1にて
下記が挙げられている。 比表面積 840 m2/g 細孔容積 0.18cm3/g MCH転化率 70.7% メソポアの占める容積 30% 平均細孔直径 25Å なお、MCH転化率の定義に関しては、後で詳述する。
また、該炭素担体としては、灰分が3重量%未満の好ま
しい褐炭としてヤルーン炭(Yallourn)および3重量
%未満に脱灰したモーエル炭(Morwell)があげられてい
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従来の技術には、以下
に記載するなお改善すべき課題があった。 (1)先に提案の触媒は、金属を担持して用いられる。
従って、炭素担体をある濃度の金属イオンを含む水溶液
に浸し、さらに、乾燥するという金属を担持する工程が
必要であった。 (2)先に提案の触媒は、金属を担持させた後、水素に
て還元し、次いで硫化処理する工程が必要であった。 (3)触媒として使用される量が、処理すべき重質炭化
水素原料に対し10wt%必要であり、その使用量の削減
が求められている。 (4)生成物の性状の改善が求められている。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、後述に定
義されるMCH転化率が高い炭素担体が必ずしも良い重
質油類水素化分解用炭素担体であるとは言えず、中程度
のMCH転化率があればよくかつ、比表面積、細孔容
積、メソポアーの占める容積、平均細孔直径の最適範囲
を持つ炭素担体が有効であるという知見を得た。また、
同一圧力下、例えば、100 kg/cm2Gで鉄化合物のみで石
油系重質炭化水素類の接触水素化分解試験を行うと、後
述の比較例3−1〜比較例3−3に示すように、ある転
化率まではコークの生成を抑制するが、ある転化率を越
えるとコークの生成抑制能が低下するという知見も得
た。更に、これらの知見に基づき特定の性状を有す重質
油類水素化分解用炭素担体(以下、重質油類水素化分解
用活性炭素と称す)と鉄化合物とを単に混合して用いる
と、ある転化率を越えてもコーク生成の抑制ができ、か
つ、生成物の性状が向上することを見いだした。上記知
見に基づき試行錯誤を繰り返した結果、本発明の重質油
類水素化分解用触媒に至った。本発明は、上記課題であ
る各工程の省略が図れ、触媒としての使用量が削減さ
れ、生成物の性状の改善が図れる特定の性状を持った重
質油素類水素化分解用活性炭素と鉄化合物が単に混合さ
れてなる重質油類水素化分解用触媒を提案するものであ
る。
【0007】即ち本発明は、下記のAなる特定の性状を
有する重質油類水素化分解用活性炭素と下記Bの中から
選択された少なくとも1種の鉄化合物とが単に混合され
てなることを特徴とする重質油類水素化分解用触媒であ
る。 A:(1)MCH転化率が40%以上85%以下であり、
(2)その比表面積が800 〜1000m2/gであり、
(3)その細孔容積が0.7 〜1.4 cm3/gであり、
(4)かつ、20〜500 Åであるメソポアの占める容積が
70%以上であり、(5)その平均細孔直径が30〜60Åで
ある B:硫化鉄、天然パイライト、酸化鉄 本発明は、重質油類原料に対し1.0 wt%以上5.0 wt
%以下から選択される特定の性状を有する重質油類水素
化分解用活性炭素と重質油類原料に対し鉄として0.25w
t%以上3.0 wt%以下から選択される鉄化合物とから
なる上記重質油類水素化分解用触媒を含む。尚、本発明
では、上記活性炭素と鉄化合物は、バインダーを用いて
造粒したり、担持することなく単に混合され重質油類原
料と混合状態で使用されるものである。即ち、本発明で
言う「単に混合されてなる状態」とは、触媒成分が非担
持状態で存在することを意味し、具体的には上記活性炭
素と鉄化合物との間に物理的ないし化学的結合が実質的
に存在せずに双方が重質油類原料中において分散状態で
存在することを意味する。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明で用いる重質油類として
は、石油系の常圧蒸留残油、減圧蒸留残油、接触分解残
油、減圧重質残油、また、石炭液化油、オイルサンド
油、オイルシェール油、ビスブレーキング油等が挙げら
れ、アスファルテンや残留炭素を有する劣質な重質油類
である。本発明の特定の性状を有す活性炭素の原料とし
ては、褐炭が用いられる。褐炭としてヤルーン炭(Yall
ourn)、3重量%未満に脱灰したモーエル炭(Morwel
l)等があげられる。これらを350 〜840 μmにふるい分
け、下記の賦活流体で処理した。上記褐炭から本発明の
特定の性状を有す重質油類水素化分解用活性炭素(以
下、単に特定の性状を有す活性炭素と称す)を製造する
方法として、一般に、ロータリー・キルンを用いる方法
や流動層を用いて賦活する方法が知られている。ここで
は、その代表例として、水蒸気、水蒸気と空気の混合流
体により該褐炭を市販のロータリー・キルンを用い賦活
する方法について説明するが、水蒸気と空気と二酸化炭
素の混合流体(以下、酸化性ガスと称す)を用いても良
いのは言うまでもない。
【0009】第一に賦活用流体として水蒸気を用いる場
合には、まず、褐炭の所定量をキルン内に充填し、水蒸
気流通下600 ℃で1時間保持する。例えば、褐炭の充填
量190 gに対し水蒸気は、3.5 〜12g/minの割合で流通
され、水蒸気流通下600 ℃で1時間保持される。この時
間は、該褐炭中に含有される水分や揮発分を追い出すた
めのものであり、特に制限される時間ではない。ロータ
リー・キルンの温度が安定すれば、昇温工程に移る。な
お、以下に記載の各種賦活流体を用いる時もこの工程は
保持温度が異なる場合でも同様に行う。ついで、昇温工
程では所定の温度に毎分10℃の速度で昇温し、所定温度
到達後、所定時間保持される。ここで、所定温度とは、
700 〜1000℃をいい、所定時間は、所定温度到達からの
時間をいい、3時間〜0時間が選択される。後述の式で
定義される固定炭素減少率は、賦活流体の総量と賦活温
度の組み合わせで決定される。以下に記載の賦活流体に
おいても共通である。
【0010】第二に賦活用流体として水蒸気と空気の混
合流体を用いる場合には、褐炭の充填量190 gに対し水
蒸気は、3.5 〜12g/minの割合で流通される。空気を用
いる場合には、酸素として4vol%以下が含有される
ことが望ましく、所定温度は500 〜700 ℃から、所定時
間は120 分〜10分から選択される。酸素として4vo
l%を越えると、得られる活性炭素の細孔径で20〜500
Åであるメソポアの占める容積が減少し、マクロポアが
増加し避けるべきである。なお、酸素として4vol%
以下が含有されることが望ましく、所定温度は500 〜70
0 ℃から、所定時間は120 分〜10分から選択されるの
は、酸化性ガスを賦活流体に用いる場合も同じである。
上記のいずれの賦活流体を選択するにしても、所定の温
度、所定の時間にかかわらず、次式で定義される固定炭
素減少率との関係で以下に述べる物性が整理できる。
【0011】
【数1】
【0012】以上のようにして得られた活性炭素の諸物
性を、触媒基礎測定法、触媒工学講座4、地人書館(昭
和53年発行)に記載の方法でベット吸着法による比表面
積、細孔容積、ベット吸着法または水銀圧入法による平
均細孔直径を測定した。ここで、平均細孔直径とは、細
孔容積Vと比表面積Sの関係として4V/Sで算出され
た値である。
【0013】なお、国際純正・応用化学連合(IUPA
C)で規定される20〜500 Åのメソポアの占める容積率
(%)も求めた。MCH転化率は、当業者によって良く
知られた図1に示す触媒性能測定装置によって測定され
た。なお、MCH転化率とは、メチル・シクロヘキン
(MCH)が脱水素されトルエンになるピーク面積と全
ピーク面積の割合をいう。反応管に詰められる活性炭素
の充填量は、約0.2 g、反応温度は、500 ±1℃に保持
され、メチル・シクロヘキン(MCH)はマイクロシリ
ンジで0.4 マイクロ・リッター打ち込まれる。その他必
要な測定条件は、以下の通りである。 MCH注入量;0.4nm3(μL) 脱水素反応温度(AC充填カラム温度);773K(500
℃) AC充填量;0.2 ×10-3kg 分離カラム温度;363K(90℃) キャリアガス(N2)2次圧力;270kPa (オーブン内温度が所定温度時) 以下に、諸物性について説明する。
【0014】MCH転化率は、固定炭素減少量との関係
で整理でき固定炭素減少率30%以上ではMCH転化率は
ほぼ一定となっている。この傾向は、他の原料炭におい
ても同様であった。なお、同一固定炭素減少率では、二
酸化炭素により賦活された活性炭素のMCH転化率は、
水蒸気により賦活された活性炭素のMCH転化率に比較
して高い値をとる結果となったが、MCH転化率は85%
を越えることはなかった。MCH転化率であるが、後述
する実施例4−1〜4−4および比較例4−2に示すよ
うに、MCH転化率が40%以上85%以下である方がよい
ことが分かる。なお、比較例4−1はMCH転化率およ
び比表面積の条件を満たしているが、後述の細孔容積、
メソポア比等の物性を満たしていない。MCH転化率40
%以上の活性炭素を選択し、比表面積、細孔容積および
平均細孔直径等の諸物性の関係をさらに探索した。比表
面積、細孔容積および平均細孔直径は、固定炭素減少率
が増加すれば、数値的に増加する傾向を示す。しかし、
後述の実施例4−1〜実施例4−4及び比較例4−1お
よび比較例4−2に示すように、特定の性状を有す活性
炭素としては、その比表面積が800 〜1000m2/gであ
り、その細孔容積が0.7 〜1.4 cm3/gであり、か
つ、20〜500 Åであるメソポアの占める容積が70%以上
であり、その平均細孔直径が30〜60Åである特定の性状
を有することが好ましいことが分かる。
【0015】特定の性状を有する活性炭素を製造するた
めの褐炭は、後述の表1に示す実施例1−1〜実施例1
−7からヤルーン炭及びモーエル炭が良いことが分か
る。その使用量は、後述の表6に示す実施例3−3〜実
施例3−7から1.0 wt%以上5.0 wt%以下がよいこ
とが分かる。1.0 wt%未満であると、比較例3−1〜
実施例3−3に示すようにコークの生成量が増加し、コ
ークの付着状況についても良くないことが分かる。ま
た、5.0 wt%を越えても効果に変わりがない。
【0016】鉄化合物の種類は、硫化鉄、天然パイライ
ト及び酸化鉄から選択される。後述の表6に示すように
実施例3−6と実施例3−9および実施例3−8と実施
例3−12からいずれを用いてもよいことが分かる。そ
の使用量は、実施例3−6〜8および実施例3−12か
ら鉄として0.25wt%以上3.0 wt%以下であることが
分かる。0.25wt%未満であればコークの生成量が増加
し、3.0 wt%を越えても効果は変わらない。
【0017】次に、特定の性状を有す活性炭素の粒径お
よび鉄化合物の粒径について説明する。特定の性状を有
す活性炭素の粒径であるが、後述の実施例5で示すよう
に、37μm以上840 μm以下が適当である。37μm未満
であると、分解油からの分離が極めて困難となり、840
μmを越えると反応時、重質油類との接触効率が悪くな
りコーク生成量が増加する傾向を示すため、避けるべき
である。鉄化合物の粒径であるが、後述の実施例6で示
すように、37μm以上149 μm以下が適当である。37μ
m未満であっても効果は変わらず粉砕動力を要すのみで
あり、149 μmを越えると反応時、重質油類との接触効
率が悪くなり、コーク生成量が増加する傾向を示すた
め、避けるべきである。
【0018】以上のようにして使用される本発明の重質
油類水素化分解用触媒の使用量は、表3に示す実施例2
−1および従来の触媒を使用した参考例2−1および参
考例2−2から、従来の触媒の使用量より少ないことが
分かる。また、表3に示す実施例2−2および参考例2
−3の生成物収率と生成物性状を表4に示すが、本発明
の重質油類水素化分解用触媒の方が優れていることが分
かる。
【0019】特定の性状を有す活性炭素の量、鉄化合物
の量、特定の性状を有す活性炭素の粒径および鉄化合物
の粒径を変えつつ、以下の条件下で反応試験を行った。 反応全圧 70〜150 kg/cm2G 反応温度 425 〜435 ℃ 反応器は容量1000ccであり、上記圧力下で水素が流通で
きる機能を有す。この反応器内に特定の性状を有す活性
炭素と重質炭化水素原料あるいは上記触媒と重質油類原
料、または、鉄化合物と重質油類原料のそれぞれ所定量
を充填し、一定時間で所定温度まで昇温する。この間、
内温が50℃に達すると、撹拌器を250 rpmで作動させ
た。なお、撹拌速度は、この装置において後述の鉄化合
物が撹拌器で充分径内に分散できるのを別途確認して決
定した回転数であり、この装置の固有の数値である。所
定温度に到達後、所定時間保持し、所定時間経過後、一
定時間で室温まで冷却し、反応器から発生コークを分離
しつつ内容物を取り出した。コークは、分解物の全量を
5ミクロンのフィルターで濾過し、濾過物をトルエンで
数回洗浄し8〜15torr、130 ℃、一時間の条件下で
真空乾燥後、重量を測定した。さらに、コークの全発生
量に加え、撹拌器に付着したコークの付着状況も同時に
観察した。これは、以下に記載の理由による。すなわ
ち、接触水素化分解触媒を用いた重質炭化水素の分解プ
ロセスを組み立てる場合、反応器内ではコークが発生す
るが、該コークが反応器の内部に付着しコーキングする
という不具合が想定できるからである。撹拌器に付着す
るコーク量をこの目安とした。言うまでもなく、コーク
が触媒上に析出すれば該不具合は発生しない。一方、内
容物の沸点範囲は蒸留ガスクロマトグラム装置(GCD
法)で測定し、各留分の収率を決定し転化率を求めた。
以上で求めた転化率にたいするコーク生成量を比較し触
媒性能を評価した。また、得られた分解油等の性状は、
石油製品に用いられる通常の方法で測定した。
【0020】
【実施例】本発明をさらに詳細に実施例で説明する。な
お、本発明は、以下に記載の実施例にのみに制限される
ことがないのは、言うまでもないことである。 実施例1 ヤルーン炭チャーを原料として賦活した本発明の特定の
性状を有する活性炭素(以下、単に活性炭素と称す)を
用意した。賦活条件と測定した活性炭素の性状を表1に
示す。
【0021】
【表1】
【0022】実施例2 重質油類原料としてその代表を表2に示す。本発明の触
媒の触媒使用量と従来技術による触媒の使用量を比較し
た結果を表3に示す。実施例2−1と参考例2−1およ
び参考例2−2から本発明の触媒は、従来の触媒に比較
して活性炭素の使用量が少ないことがわかる。さらに、
実施例2−2と参考例2−3のオイル性状等を表4〜5
に示す。この表から本発明の触媒を用いると全体の液収
率がよく、Gas Oil留分、VGO留分が増加す
る。また、分解生成油の脱硫効果が良いため、オイル性
状が良好で、かつ、VR留分の性状も良いことが分か
る。
【0023】
【表2】
【0024】
【表3】
【0025】
【表4】
【0026】
【表5】
【0027】実施例3 実施例1の表1に記載の活性炭素を下記の鉄化合物と混
合して重質油類水素化分解用触媒として用いた。鉄化合
物は、硫化鉄、天然パイライトおよび酸化鉄を選択して
反応試験を行った。また、比較のため、鉄化合物のみで
も実施した。これらの試験後のコーク付着状況も観察し
た。試験結果を併せて表6に示す。なお、上記活性炭素
の粒径および鉄化合物の粒径は、それぞれ37〜840 μ
m、37〜149 μmのものを用いた。
【0028】
【表6】
【0029】実施例4 実施例1で得たy物性の異なる活性炭素を用いて反応試
験を行った。試験条件、物性およびその試験結果を併せ
て表7に示す。 比較例4−1および比較例4−2 実施例3−6の活性炭素をy1からそれぞれy4および
d1に変えた以外は実施例3ー6と同様に実施した。結
果を表7に併記する。
【0030】
【表7】
【0031】比較例3−6A(粒径について) 実施例3−6の活性炭素y1の粒径を37〜840 μmから
840 〜1680μmに変えた以外は実施例3−6と同様に実
施した。結果を表8に示す。 比較例3−6B(粒径について) 実施例3−6の鉄化合物の粒径を37〜149 μmから149
〜350 μmに変えた以外は実施例3−6と同様に実施し
た。結果を表8に併記する。
【0032】
【表8】
【0033】
【発明の効果】本発明の特定の性状を有する重質油類水
素化分解活性炭素と鉄化合物とを単に混合されてなる重
質油類水素化分解用触媒を用いると、以下に記載の効果
がある。 (1)高転化率においてもコークの生成を抑制できるの
で、有用な中間留分に富んだ軽質化炭化水素を液収率よ
く得られる。また、分解生成油の脱硫効果が良いため、
オイル性状が良好で、かつ、VR成分の性状も良い。 (2)使用する触媒の量が削減できる。 (3)使用する触媒が、含浸・担持工程や乾燥工程を必
要としない。そのため、触媒の製造に要する繁雑な工程
を省略でき、省エネルギー、かつ、労力の削減ができ
る。 (4)触媒の使用に当たり、水素による還元工程や硫化
工程の前処理工程が省略できる。そのため、使用方法が
簡単で経済的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明において、MCH転化率を測定するの
に用いた触媒性能測定装置の概念図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C10G 47/12 9547−4H C10G 47/12 // C10G 1/06 9547−4H 1/06 E (72)発明者 杉本 勝行 山口県岩国市立石町3丁目8番2号 (72)発明者 吉川 武宏 山口県玖珂郡和木町和木3丁目2番39号 (72)発明者 福山 秀次 千葉県千葉市花見川区朝日ケ丘町2690番1 号 コスモ新検見川307号 (72)発明者 柳沢 譲 千葉県茂原市新小轡314番9号 (72)発明者 寺井 聡 千葉県千葉市若葉区小倉町1762番

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記のAなる特定の性状を有する重質油
    類水素化分解用活性炭素と下記Bの中から選択された少
    なくとも1種の鉄化合物とが単に混合されてなることを
    特徴とする重質油類水素化分解用触媒。 A:(1)MCH転化率が40%以上85%以下であり、
    (2)その比表面積が800 〜1000m2/gであり、
    (3)その細孔容積が0.7 〜1.4 cm3/gであり、
    (4)かつ、20〜500 Åであるメソポアの占める容積が
    70%以上であり、(5)その平均細孔直径が30〜60Åで
    ある B:硫化鉄、天然パイライト、酸化鉄
  2. 【請求項2】 重質油類原料に対し1.0 wt%以上5.0
    wt%以下から選択される特定の性状を有する重質油類
    水素化分解用活性炭素と重質油類原料に対し鉄として0.
    25wt%以上3.0 wt%以下から選択される鉄化合物と
    からなる請求項1記載の重質油類水素化分解用触媒。
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