JPH09231930A - 電子銃におけるフィラメントの動作温度決定方法及び電子線装置 - Google Patents

電子銃におけるフィラメントの動作温度決定方法及び電子線装置

Info

Publication number
JPH09231930A
JPH09231930A JP3164196A JP3164196A JPH09231930A JP H09231930 A JPH09231930 A JP H09231930A JP 3164196 A JP3164196 A JP 3164196A JP 3164196 A JP3164196 A JP 3164196A JP H09231930 A JPH09231930 A JP H09231930A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
filament
emission current
current
normalized
difference
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP3164196A
Other languages
English (en)
Other versions
JP3365600B2 (ja
Inventor
Miyuki Matsutani
幸 松谷
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Jeol Ltd
Original Assignee
Jeol Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Jeol Ltd filed Critical Jeol Ltd
Priority to JP03164196A priority Critical patent/JP3365600B2/ja
Publication of JPH09231930A publication Critical patent/JPH09231930A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3365600B2 publication Critical patent/JP3365600B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Electron Sources, Ion Sources (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 フィラメントを用いた電子銃においてフィラ
メントの飽和点を決定する。 【解決手段】 制御装置6は段階的にフィラメント電流
を定める加熱コードFc(n) を与え、その各ステップ
において加速電圧発生装置5からエミッション電流Ie
を取り込む。そして、第n回目のステップのときのエミ
ッション電流値をIe(n) 、第(n+1)回目のステ
ップのときのエミッション電流値をIe(n+1) とし
たとき、k(n)=dIe(n)/dIe(n+1)によ
って規格化差分dIe(n) の増加比k(n)を各ステ
ップ毎に求め、この規格化差分の増加比と閾値とを比較
してフィラメントの動作温度を決定する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、フィラメントを備える
電子銃を用いる電子顕微鏡、電子プローブマイクロアナ
ライザ(EPMA)等の電子線装置において、電子銃の
フィラメントの動作温度を決定するための方法、及びそ
の電子線装置に関する。
【0002】
【従来の技術】フィラメントを用いた電子銃は概略図4
に示す構成を備えている。図中、1はフィラメント、2
はウェーネルト、3はアノード、4はフィラメント加熱
装置、5は加速電圧発生装置を示す。
【0003】図4において、フィラメント加熱装置4は
加速電圧発生装置5から供給された加速電圧をウェーネ
ルト2に印加すると共に、フィラメント1に対して加熱
するための電流を供給する。
【0004】これにより、フィラメント1は所定の温度
(以下、これを動作温度と称す)に加熱されるのである
が、この動作温度は図5の点Pで示す温度に設定される
のが通常である。
【0005】即ち、フィラメント1に供給する電流を増
加し、フィラメント1の温度(以下、これをフィラメン
ト温度と称す)を上げていくと、電子銃からの電子の放
出電流、即ちエミッション電流Ie は、はじめは図5の
Aで示す範囲のようにフィラメント温度Tf に依存して
増大していくが、次第に、図5のBで示す範囲のように
フィラメント温度Tf に依存せず、略一定値を保つよう
になる。
【0006】ここで、図5のAで示す範囲のようにエミ
ッション電流Ie がフィラメント温度Tf に依存して増
大していく範囲を温度制限領域、図5のBで示す範囲の
ようにエミッション電流Ie がフィラメント温度Tf
依存しない範囲を空間電荷制限領域と呼ぶが、フィラメ
ント1の動作温度は温度制限領域から空間電荷制限領域
に移行するところに設定するのである。そして、図5の
点Pで示す動作温度は通常飽和点Tf0と称されている。
【0007】このようにフィラメント1の動作温度を飽
和点に設定することの妥当性は明らかである。即ち、フ
ィラメント1の動作温度を温度制限領域内に設定した場
合には、フィラメント温度が多少でも変化するとそれに
伴ってエミッション電流Ieが大きく変動してしまうの
で望ましいものではないことは明らかである。これに対
して、フィラメント1の動作温度を空間電荷制限領域の
高い方に設定するとフィラメント温度が変化してもエミ
ッション電流Ie は殆ど変化しないので望ましいのであ
るが、フィラメント温度を高くするとフィラメント1の
寿命が短くなるという問題が生じる。
【0008】そこで、エミッション電流Ie が実用上安
定しており、しかもフィラメント1の寿命が短くなるこ
とがない動作温度を設定することが望まれるのであり、
このような動作温度が飽和点なのである。
【0009】以上のように、フィラメントの動作温度が
飽和点Tf0になるようにフィラメント加熱装置4からフ
ィラメント1に供給する電流を決定するのであるが、そ
のための手法としては、フィラメント1に供給する電流
を変化させながら適宜な方法によりプローブ電流Ip
検出し、その検出したプローブ電流Ip の変化に基づい
てフィラメント温度が飽和点Tf0となる電流を決定する
方法(以下、この方法を第1の方法と称す)、あるいは
フィラメント1に供給する電流を変化させながらエミッ
ション電流Ie を適宜な方法で検出し、その検出したエ
ミッション電流Ie の1次の導関数または2次の導関数
を求め、その極値に基づいてフィラメント温度が飽和点
f0となる電流を決定する方法(以下、この方法を第2
の方法と称す)が知られている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
第1の方法では次のような問題がある。プローブ電流I
p はフィラメント温度に対して概略図6に示すように変
化する。なお、図6においてAで示す範囲はフィラメン
ト温度が変化してもプローブ電流Ip が殆ど変化しない
領域であり、この領域を過飽和領域と称す。
【0011】さて、図5と図6を比較すれば容易に理解
できるように、プローブ電流Ip はエミッション電流I
e よりもダイナミックに変化する。このことは、エミッ
ション電流Ie を検出するよりもプローブ電流Ip を検
出した方が飽和点Tf0の探索がより容易に行えることを
意味している。
【0012】しかし、プローブ電流Ip を正しく検出す
るためには電子銃の軸合わせが正しく行われていなけれ
ばならない。なぜなら、プローブ電流Ip は試料に到達
する電子線量であるので、電子銃の軸が狂っている場合
にはプローブ電流Ip を正しく検出することができない
からである。
【0013】そこで、従来においてはこの第1の方法
は、例えば特開平1−183045号公報に開示されて
いるように、予めほぼ飽和点に達するような仮のフィラ
メント加熱をしておいて、電子銃の傾斜軸調整を行うプ
ロセスが必要であった。
【0014】次に、上記の第2の方法に関しては次のよ
うな問題がある。上述したようにフィラメント温度に対
するエミッション電流Ie の変化は、プローブ電流Ip
の変化よりも少なく、しかも、空間電荷制限領域ではフ
ィラメント温度が変化しても略一定値を保つとはいえ、
徐々にではあるがエミッション電流Ie は増加するの
で、エミッション電流Ie の変化を強調するという意味
においては検出したエミッション電流Ie の1次または
2次の導関数を用いるのは有効な方法ではあるが、エミ
ッション電流Ie の1次または2次の導関数の極値と飽
和点との関係については物理的な因果関係は必ずしも明
確にはなされておらず、従って第2の方法で求めた飽和
点は、実際にはエミッション電流Ie が温度制限領域か
ら空間電荷制限領域に移行する点に一致しない場合があ
るという問題があるのである。
【0015】本発明は、上記の課題を解決するものであ
って、エミッション電流Ie を検出することによってフ
ィラメント温度の動作温度を自動的に飽和点Tf0に設定
することができる電子銃におけるフィラメントの動作温
度決定方法を提供することを目的とするものである。
【0016】また、本発明は、エミッション電流Ie
検出することによってフィラメント温度の動作温度を自
動的に飽和点Tf0に設定することができる電子線装置を
提供することを目的とするものである。
【0017】また、本発明は、フィラメント及びフィラ
メントを加熱するための電流を発生する電源装置を含む
系統の異常の有無を判定することができる電子線装置を
提供することを目的とするものである。
【0018】更に、本発明は、エミッション電流のゆら
ぎの有無を判定することができる電子線装置を提供する
ことを目的とするものである。
【0019】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに、請求項1記載の電子銃におけるフィラメントの動
作温度決定方法は、フィラメント電流を所定のステップ
で変化させ、各ステップ毎に、今回のステップで得たエ
ミッション電流と前回のステップで得たエミッション電
流との差分をエミッション電流で正規化し、そのエミッ
ション電流で正規化した差分のステップ間での比に基づ
いてフィラメントの動作温度を決定することを特徴とす
る。
【0020】請求項2記載の電子銃におけるフィラメン
トの動作温度決定方法は、フィラメント電流を所定のス
テップで変化させ、各ステップ毎に、今回のステップで
得たエミッション電流と前回のステップで得たエミッシ
ョン電流との差分をエミッション電流で正規化し、その
エミッション電流で正規化した差分のステップ間での比
と、エミッション電流で正規化した差分の値とに基づい
てフィラメントの動作温度を決定することを特徴とす
る。
【0021】請求項3記載の電子線装置は、フィラメン
トと、フィラメントに加熱のための電流を供給する電源
装置と、エミッション電流を検出する検出手段と、制御
手段とを備える電子線装置において、制御手段は、電源
装置に対して所定のステップでフィラメントを加熱する
ための電流を発生させると共に、検出手段からそのとき
のエミッション電流を取り込み、今回のステップで得た
エミッション電流と前回のステップで得たエミッション
電流との差分をエミッション電流で正規化し、そのエミ
ッション電流で正規化した差分のステップ間での比に基
づいてフィラメントの動作温度を決定することを特徴と
する。
【0022】請求項4記載の電子線装置は、フィラメン
トと、フィラメントに加熱のための電流を供給する電源
装置と、エミッション電流を検出する検出手段と、制御
手段とを備える電子線装置において、制御手段は、電源
装置に対して所定のステップでフィラメントを加熱する
ための電流を発生させると共に、検出手段からそのとき
のエミッション電流を取り込み、各ステップ毎に、今回
のステップで得たエミッション電流と前回のステップで
得たエミッション電流との差分をエミッション電流で正
規化し、そのエミッション電流で正規化した差分のステ
ップ間での比と、エミッション電流で正規化した差分の
値とに基づいてフィラメントの動作温度を決定すること
を特徴とする。
【0023】請求項5記載の電子線装置は、フィラメン
トと、フィラメントに加熱のための電流を供給する電源
装置と、フィラメント電流を検出する検出手段と、制御
手段とを備える電子線装置において、制御手段は、電源
装置に対して所定のステップでフィラメントを加熱する
ための電流を発生させると共に、検出手段からそのとき
のフィラメント電流を取り込み、その取り込んだフィラ
メント電流に基づいてフィラメント及び電源装置を含む
系統の異常の有無を判定することを特徴とする。
【0024】請求項6記載の電子線装置は、加速電圧発
生装置と、エミッション電流を検出する検出手段と、制
御手段とを備える電子線装置において、制御手段は、加
速電圧発生装置に加速電圧の発生を指示してから所定の
時間内に検出手段からエミッション電流を取り込み、そ
の取り込んだエミッション電流の変動幅に基づいてエミ
ッション電流のゆらぎの有無を判定することを特徴とす
る。
【0025】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照しつつ実施の形
態について説明する。まず、最初にフィラメントの動作
温度決定方法について説明する。
【0026】フィラメントの動作温度を決定するに際し
ては、まず、フィラメントに供給するフィラメント電流
をステップ状に変化させ、その度毎にそのときのエミッ
ション電流Ie を取り込む。
【0027】いま、第n回目のステップのときのエミッ
ション電流値をIe(n) 、次の第(n+1)回目のス
テップのときのエミッション電流値をIe(n+1) と
すると、次式によってエミッション電流値の差分△Ie
(n) が得られる。
【0028】 △Ie(n) =Ie(n+1)−Ie(n) …(1) しかし、このエミッション電流値の差分△I(n)
の値だけから飽和点を決定することはできない。即ち、
エミッション電流Ie が比較的大きい場合の飽和点にお
ける△Ie(n) の値と、エミッション電流Ie が比較
的小さい場合の飽和点における△Ie(n) の値は一致
せず、従って、この差分△Ie(n)に基づいて飽和点
を決定することができないのである。
【0029】そこで、この△Ie(n) を、第n回目の
ステップでのエミッション電流値Ie(n)と第(n+
1)回目のステップでのエミッション電流Ie(n+
1)の平均値で規格化した差分(以下、規格化差分と称
す)dIe(n) を考える。
【0030】この規格化差分dIe(n) は次式で与え
られる。 dIe(n)=△Ie(n)/[{Ie(n+1)+Ie(n)}/2] …(2) しかし、この規格化差分dIe(n) だけからは飽和点
を決定することはできない。なぜなら、飽和点における
規格化差分dIe(n) の値は、加速電圧やエミッショ
ン電流Ie の値によって異なる値をとり、一定値にはな
らないからである。
【0031】実際、本発明者の実験によれば、エミッシ
ョン電流Ie が比較的大きい場合のフィラメント温度T
f と規格化差分dIe(n) との関係は図2のAで示す
ようであり、飽和点はPで示すような位置にあったが、
エミッション電流Ie が比較的小さい場合のフィラメン
ト温度Tf と規格化差分dIe(n) との関係は図2の
Bで示すようであり、飽和点はQで示すような位置にあ
り、このことから規格化差分dIe(n) の値だけから
は飽和点を決定することができないことが確認された。
なお、図2のグラフAのPで示す飽和点の位置、及びグ
ラフBでQで示す飽和点の位置は他の方法により求めた
ものである。
【0032】そこで、次に、次式で定義される規格化差
分dIe(n) の増加比k(n)(以下、単に増加比と
称す)を導入する。
【0033】 k(n)=dIe(n)/dIe(n+1) …(3) この増加比k(n)の下限値は理論的には 1になるが、
実際本発明者の実験によれば図3に示すような結果が得
られ、増加比k(n)の値はフィラメント電流の増加に
伴って 1に漸近していることが実証された。なお、図3
中のAで示すグラフはエミッション電流Ie が比較的大
きい場合のフィラメント温度Tf と増加比k(n)の関
係を示すものであり、Bで示すグラフはエミッション電
流Ie が比較的小さい場合のフィラメント温度Tf と増
加比k(n)の関係を示すものである。
【0034】そして、図3のAの場合とBの場合におい
て他の方法によって飽和点の位置を求めると、いずれの
場合においても飽和点は増加比k(n)の値がある範囲
内にあることが確認された。
【0035】そこで、閾値k0 を設定し、各ステップに
おいて増加比k(n)を求めると、その求めた増加比k
(n)と閾値k0 とを比較する。そして、k(n)≦k
0 であれば、第n回目のステップではエミッション電流
e は既に空間電荷制限領域に入っているものとし、第
(n−1)回目のステップでのフィラメント電流値が飽
和点を与えるもとして決定する。
【0036】ここで、閾値k0 の値は加速電圧、フィラ
メント電流のステップ等を考慮して定めればよいが、1.
5 〜 1の範囲に設定すれば実用上問題ないことが確認さ
れている。
【0037】以上のようであるので、本発明の電子銃に
おけるフィラメントの動作温度決定方法によれば、増加
比k(n)という事項を導入したので、自動的に、且つ
従来よりも確実に飽和点を決定することができる。ま
た、エミッション電流値Ie を検出して飽和点を決定す
るのでプローブ電流Ip を検出して飽和点を決定する場
合のように電子銃の軸合わせを考慮する必要はない。
【0038】なお、以上においては増加比k(n)の値
のみに基づいて飽和点を決定したが、増加比k(n)が
閾値以下で、且つ規格化差分dIe(n) の値が所定の
閾値以下という条件にしてもよい。これによれば、より
正確に飽和点を決定することができることが判明した。
【0039】以上、本発明に係る電子銃におけるフィラ
メントの動作温度決定方法について説明したが、次に本
発明に係る電子線装置について説明する。
【0040】図1は本発明に係る電子線装置の一実施形
態を示す図であり、図中、6は制御装置、7は操作装
置、8は表示装置を示す。なお、図4に示すものと同等
な構成要素については同一の符号を付す。
【0041】制御装置6は、プロセッサ及びその周辺回
路で構成されるものであり、その動作については後述す
る。操作装置7は種々の操作ボタン、キーボード等で構
成される。表示装置8はCRT等の適宜な表示装置で構
成される。
【0042】次に、図1に示す構成の動作について説明
する。操作装置7によりフィラメント1の動作温度設定
の処理が指示されると、制御装置6は操作装置7で設定
された加速電圧VA を加速電圧発生装置5に通知すると
共に、フィラメント加熱装置4に対して加熱コードFc
(n) を所定の値Fcmから所定のステップ△Fc 毎に
段階的に通知する。
【0043】この加熱コードFc(n) は、フィラメン
ト1に供給するフィラメント電流を定めるためのもので
あり、どのような形式とするかは任意であるが、ここで
は、制御装置6からはフィラメント電流値を符号化した
コードを所定のステップ△Fc で増加させるようにす
る。これに対してフィラメント加熱装置4は、制御装置
6から通知された加熱コードFc(n) を解読して当該
加熱コードFc(n) に対応するフィラメント電流値を
発生し、フィラメント1に供給する。
【0044】制御装置6は、加熱コードFc(n) をフ
ィラメント加熱装置4に与える度毎に、加速電圧発生装
置5からそのときのエミッション電流値Ie を取り込
み、またフィラメント加熱装置4からはそのときの実際
のフィラメント電流値If を取り込む。
【0045】なお、エミッション電流値Ie の検出につ
いては、周知のように、加速電圧発生装置5の中のエミ
ッション電流Ie が流れる抵抗の両端の電位差から求め
るようにすればよい。フィラメント電流If の検出につ
いてはフィラメント加熱装置4の中のフィラメント電流
f に比例する電流が流れる回路抵抗の両端の電位差か
ら求めるようにすればよい。
【0046】そして、制御装置6は、各ステップにおい
て加速電圧発生装置5からエミッション電流Ie を取り
込むと、上記(1) 、(2) 、(3) 式の演算を行って増加比
k(n)の値を求め、その増加比k(n)の値を閾値k
0 と比較する。
【0047】そして、加熱コードがFc(n0)であると
きに増加比k(n)の値が閾値k0以下になったとする
と、制御装置6は加熱コードFc(n0 −1) を求める
飽和点を与えるための加熱コードであると判断する。
【0048】制御装置6はこのようにして飽和点を与え
るための加熱コードを決定するとフィラメント加熱装置
4に対してこの加熱コードを通知すると共に、表示装置
8に対してフィラメントの動作温度を決定するための処
理が終了したこと、及び決定したフィラメント電流の値
を表示して処理を終了する。
【0049】以上の動作により、フィラメント1にはフ
ィラメント加熱装置4から飽和点となるフィラメント電
流が自動的に供給されて処理が終了する。
【0050】以上のようであるので、本発明によれば、
自動的に、且つ確実に飽和点が決定されるので、操作性
を大幅に向上させることができる。
【0051】なお、以上では制御装置6は増加比k
(n)のみに基づいて飽和点を決定するようになされて
いるが、上述したところから明らかなように、増加比k
(n)が閾値以下で、且つ規格化差分dIe(n) の値
が所定の閾値以下である場合に当該ステップでのエミッ
ション電流Ie が空間電荷制限領域に入っていると判断
させるようにしてもよい。
【0052】以上、飽和点を決定してそれをフィラメン
トの動作温度として決定する場合の動作について述べた
が、図1の構成によれば、フィラメント1を含むフィラ
メント加熱装置4の系統の異常や、エミッション電流I
e のゆらぎを検出することもできる。図1においてフィ
ラメント加熱装置4からフィラメント電流If を取り込
んでいるのはそのためである。
【0053】フィラメント1を含むフィラメント加熱装
置4の系統の異常検出の動作は次のようである。
【0054】制御装置6は各ステップにおいて加熱コー
ドをフィラメント加熱装置4に与えたときにフィラメン
ト加熱装置4からそのときのフィラメント電流If を取
り込み、その取り込んだフィラメント電流If が当該ス
テップにおける加熱コードに対応するフィラメント電流
を中心とする所定の範囲内にあるか否かを判断し、取り
込んだフィラメント電流If がこの範囲内にない場合に
はフィラメント1またはフィラメント加熱装置4に何等
かの異常が生じていると判断し、表示装置8にフィラメ
ント1を含むフィラメント加熱装置4の系統に異常があ
ることを表示する。
【0055】これによれば、フィラメント1を含むフィ
ラメント加熱装置4の系統の異常を早急に検出でき、こ
の異常に対して即座に異常回復の措置をとることが可能
となる。
【0056】なお、操作装置7に当該異常検出のための
メニューを設け、メニュー操作によって操作装置7から
独立にフィラメント1を含むフィラメント加熱装置4の
系統の異常を検出するための動作を行わせるようにする
ことも可能である。
【0057】次に、エミッション電流Ie のゆらぎの検
出については次のようである。電子銃においてはフィラ
メント1の蒸発等によってウェーネルト2の内壁が汚れ
たり、フィラメント1にウィスカーが成長したりするこ
とがあるが、このようなウェーネルト2の内壁の汚れや
フィラメント1に成長したウィスカーは加速電圧を印加
すると微小な放電を発生させ、その結果プローブ電流I
p の安定度を悪化させる原因になる場合があり、この微
小放電は、エミッション電流Ie のゆらぎとして観測す
ることができる。また、フィラメント1の加熱を行う前
でも加速電圧を印加しただけでエミッション電流Ie
ゆらぎが検出される場合がある。
【0058】そこで、制御装置6は、上記のフィラメン
ト1の動作温度を決定する処理を行う際に加速電圧発生
装置5に対して加速電圧VA を通知してからフィラメン
ト加熱装置4に加熱コードを与えるまでの所定の時間内
に加速電圧発生装置5からエミッション電流Ie を取り
込み、その変動を検出する。
【0059】そして、エミッション電流Ie の変動幅が
予め設定された範囲を越えている場合にはエミッション
電流Ie にゆらぎが生じていると判断して、表示装置8
にその旨を表示する。
【0060】以上により、電子銃が不安定な状態のまま
で当該電子線装置を使用することを防止することができ
るばかりでなく、飽和点を誤って決定することを防止す
ることができる。
【0061】なお、操作装置7に当該エミッション電流
e のゆらぎ検出のためのメニューを設け、メニュー操
作によって操作装置7から独立にエミッション電流Ie
のゆらぎを検出するための動作を行わせるようにするこ
とも可能である。
【0062】また、エミッション電流Ie はプローブ電
流Ip の設定や検出とは独立して検出することができる
ので、当該電子線装置を使用している場合において定期
的にエミッション電流Ie を検出し、その変動幅を判断
するようにすることも可能である。
【0063】また、エミッション電流Ie(n) の測定
や増加比k(n)に対してフィルタをかけて測定誤差や
ノイズ等の影響を減少することができる。つまり、エミ
ッション電流Ie(n) のサンプリングは高速で行うこ
とができるため、次のステップ(n+1)までの間に所
定のm回の測定を行い、
【0064】
【数1】
【0065】のように重み付けした平均処理を行うこと
もできる。ここで、Ci は重み付けの係数であり、全て
のCi の合計は 1であり、単純平均ではCi =1/m と
なる。
【0066】また、増加比k(n)については、各k
(n)を測定後、k(n)を中心として
【0067】
【数2】
【0068】のように(n1+n2+1)個の重み付け平
均値k′(n)をk(n)の代わりに用いることもでき
る。なお、上記の式においては n−n1 ≦i≦n+n2 である。また、
【0069】
【数3】
【0070】である。単純平均では Ci =1/(n1+n2+1) となる。
【0071】このようにすれば、サンプリングに伴う測
定誤差やノイズの影響を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る電子線装置の一実施形態を示す
図である。
【図2】 フィラメント温度と規格化差分との関係を示
す図である。
【図3】 フィラメント温度と増加比との関係を示す図
である。
【図4】 フィラメントを用いた電子銃の従来の構成例
を示す図である。
【図5】 フィラメント温度とエミッション電流との関
係を示す図である。
【図6】 フィラメント温度とプローブ電流との関係を
示す図である。
【符号の説明】
1…フィラメント、2…ウェーネルト、3…アノード、
4…フィラメント加熱装置、5…加速電圧発生装置、6
…制御装置、7…操作装置、8…表示装置。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】フィラメント電流を所定のステップで変化
    させ、各ステップ毎に、今回のステップで得たエミッシ
    ョン電流と前回のステップで得たエミッション電流との
    差分をエミッション電流で正規化し、そのエミッション
    電流で正規化した差分のステップ間での比に基づいてフ
    ィラメントの動作温度を決定することを特徴とする電子
    銃におけるフィラメントの動作温度決定方法。
  2. 【請求項2】フィラメント電流を所定のステップで変化
    させ、各ステップ毎に、今回のステップで得たエミッシ
    ョン電流と前回のステップで得たエミッション電流との
    差分をエミッション電流で正規化し、そのエミッション
    電流で正規化した差分のステップ間での比と、エミッシ
    ョン電流で正規化した差分の値とに基づいてフィラメン
    トの動作温度を決定することを特徴とする電子銃におけ
    るフィラメントの動作温度決定方法。
  3. 【請求項3】フィラメントと、 フィラメントに加熱のための電流を供給する電源装置
    と、 エミッション電流を検出する検出手段と、 制御手段とを備える電子線装置において、 制御手段は、 電源装置に対して所定のステップでフィラメントを加熱
    するための電流を発生させると共に、検出手段からその
    ときのエミッション電流を取り込み、今回のステップで
    得たエミッション電流と前回のステップで得たエミッシ
    ョン電流との差分をエミッション電流で正規化し、その
    エミッション電流で正規化した差分のステップ間での比
    に基づいてフィラメントの動作温度を決定することを特
    徴とする電子線装置。
  4. 【請求項4】フィラメントと、 フィラメントに加熱のための電流を供給する電源装置
    と、 エミッション電流を検出する検出手段と、 制御手段とを備える電子線装置において、 制御手段は、 電源装置に対して所定のステップでフィラメントを加熱
    するための電流を発生させると共に、検出手段からその
    ときのエミッション電流を取り込み、各ステップ毎に、
    今回のステップで得たエミッション電流と前回のステッ
    プで得たエミッション電流との差分をエミッション電流
    で正規化し、そのエミッション電流で正規化した差分の
    ステップ間での比と、エミッション電流で正規化した差
    分の値とに基づいてフィラメントの動作温度を決定する
    ことを特徴とする電子線装置。
  5. 【請求項5】フィラメントと、 フィラメントに加熱のための電流を供給する電源装置
    と、 フィラメント電流を検出する検出手段と、 制御手段とを備える電子線装置において、 制御手段は、 電源装置に対して所定のステップでフィラメントを加熱
    するための電流を発生させると共に、検出手段からその
    ときのフィラメント電流を取り込み、その取り込んだフ
    ィラメント電流に基づいてフィラメント及び電源装置を
    含む系統の異常の有無を判定することを特徴とする電子
    線装置。
  6. 【請求項6】加速電圧発生装置と、 エミッション電流を検出する検出手段と、 制御手段とを備える電子線装置において、 制御手段は、 加速電圧発生装置に加速電圧の発生を指示してから所定
    の時間内に検出手段からエミッション電流を取り込み、
    その取り込んだエミッション電流の変動幅に基づいてエ
    ミッション電流のゆらぎの有無を判定することを特徴と
    する電子線装置。
JP03164196A 1996-02-20 1996-02-20 電子銃におけるフィラメントの動作温度決定方法及び電子線装置 Expired - Fee Related JP3365600B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP03164196A JP3365600B2 (ja) 1996-02-20 1996-02-20 電子銃におけるフィラメントの動作温度決定方法及び電子線装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP03164196A JP3365600B2 (ja) 1996-02-20 1996-02-20 電子銃におけるフィラメントの動作温度決定方法及び電子線装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH09231930A true JPH09231930A (ja) 1997-09-05
JP3365600B2 JP3365600B2 (ja) 2003-01-14

Family

ID=12336845

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP03164196A Expired - Fee Related JP3365600B2 (ja) 1996-02-20 1996-02-20 電子銃におけるフィラメントの動作温度決定方法及び電子線装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3365600B2 (ja)

Also Published As

Publication number Publication date
JP3365600B2 (ja) 2003-01-14

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US4754200A (en) Systems and methods for ion source control in ion implanters
US9497839B2 (en) Boosting/blanking the filament current of an X-ray tube
JP4206598B2 (ja) 質量分析装置
JP4801451B2 (ja) 走査電子顕微鏡等に用いる電子銃の制御装置及び制御方法
JP3365600B2 (ja) 電子銃におけるフィラメントの動作温度決定方法及び電子線装置
JP4075166B2 (ja) X線基板検査装置
GB2034924A (en) Setting the cathode heating current of an electron beam machine
JP2001076634A (ja) 集束イオンビーム装置
JP2002208368A (ja) 電子放射型電子銃
JP3535387B2 (ja) 電子線装置
JP2017016772A (ja) X線発生装置及びx線撮影システム
US11450502B2 (en) X-ray imaging apparatus and consumption level estimation method for X-ray source
EP3627976B1 (en) X-ray imaging apparatus and consumption level estimation method for x-ray source
JPH10106792A (ja) インバータ式x線高電圧装置
JP3959280B2 (ja) 電源装置及びこれを用いた半導体製造装置及び半導体ウェハの製造方法
JPH05283023A (ja) 電子顕微鏡
JPH0756545Y2 (ja) X線保護回路
JP2834195B2 (ja) 電子銃のフィラメント電流調整方法
JP2656542B2 (ja) イオンビーム加工装置
JPH0353741B2 (ja)
SU1172097A1 (ru) Рентгеновский аппарат
JP4163393B2 (ja) 粒子線装置におけるフォーカス調整方法
JP2000124148A (ja) 半導体を製造するため使用するイオン注入装置のターボポンプ動作をモニタする方法
JP2000121800A (ja) 電子線照射装置
JPH087828A (ja) 質量分析装置

Legal Events

Date Code Title Description
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20021016

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20081101

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20091101

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101101

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101101

Year of fee payment: 8

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111101

Year of fee payment: 9

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121101

Year of fee payment: 10

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121101

Year of fee payment: 10

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20131101

Year of fee payment: 11

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees