JP3535387B2 - 電子線装置 - Google Patents
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Description
ント)を備える電子銃を用いる電子顕微鏡、電子プロー
ブマイクロアナライザ(EPMA)等の電子線装置に関
し、特に電子銃の陰極の動作温度を容易に設定できるよ
うにした電子線装置に関する。
子銃は、図2に示すような構成を備えている。図2にお
いて、101 は陰極、102 はグリッド(ウェーネルト)、
103 は陽極、104 は陰極加熱装置、105 は加速電圧発生
装置を示している。
装置105 から供給された加速電圧を陰極101 に印加する
と共に、陰極101 に対して加熱するための電流を供給す
るようになっている。これにより、陰極101 は所定の温
度(以下、これを動作温度と称する)に加熱されるので
あるが、この動作温度は図3の点Pで示す温度に設定さ
れるのが通常である。すなわち、陰極101 に供給する電
流を増加し、陰極101の温度(以下、これを陰極温度と
称する)を上げていくと、電子銃からの電子の放出電
流、すなわちエミッション電流Ie は、はじめは図3に
おいてAで示す範囲のように、陰極温度Tf に依存して
増大していくが、次第に図3においてBで示す範囲のよ
うに、陰極温度Tf に依存せず、略一定値を保つように
なる。
ッション電流Ie が陰極温度Tf に依存して増大してい
く範囲を温度制限領域、図3のBで示す範囲のようにエ
ミッション電流Ie が陰極温度Tf に依存しない範囲を
空間電荷制限領域(飽和領域)と呼ぶが、陰極101 の動
作温度は温度制限領域から空間電荷制限領域に移行する
ところ(P点)に設定される。そして、図3の点Pで示
す動作温度は通常飽和点Tf0と称されている。
になるように陰極加熱装置104 から陰極101 に供給する
電流を決定するのであるが、この飽和領域に入るところ
の陰極加熱の設定(飽和点の設定)は、コンピュータ技
術等の発達により自動的に行われるようになっている。
例えば、電子銃から取り出され、試料に照射されるビー
ム電流はプローブ電流Ip と呼ばれるが、陰極101 に供
給する電流を変化させながら適宜な方法によりプローブ
電流Ip を検出し、その検出したプローブ電流Ip の変
化(Ip の比など)が所定の値以下になるところを、飽
和点として検出する方法や、陰極101 に供給する電流を
変化させながらエミッション電流Ie を適宜な方法で検
出し、その検出したエミッション電流Ie の1次の導関
数又は2次の導関数を求め、その極値に基づいて陰極温
度が飽和点Tf0となる電流を決定する方法が知られてい
る。そして、プローブ電流を検出する手法のコンピュー
タ技術による自動化の現状は、通常の手動による飽和点
検出の作業をソフトウェアで単に置き換えたものに類似
した程度のものである。
加熱の飽和点の設定手法には、次のような問題点があ
る。まず、プローブ電流Ip を測定して飽和点を検出す
る手法においては、プローブ電流Ip を正しく検出す
るためには電子銃の軸合わせが正しく行われていなけれ
ばならない。したがって、電子銃の光軸が合っていない
と正確な飽和点判定がでぎず、光軸を合わせるためには
陰極の加熱が飽和点に達していなければならないという
矛盾があり、このため全体としてみると効率は必ずしも
よいものでないという問題点がある。また、飽和点を
検出する過程で、電子銃の加速電圧Va やエミッション
電流Ie の大きさに応じて、陰極の加熱開始点を自動的
に変更する機能がないため、飽和点検出に余分な時間を
必要としている。
の加速電圧Va に対してエミッション電流Ie がカット
オフ領域に入るのを避けるようなグリッド電圧(−Vg
)の設定機能がないため、陰極の寿命を延ばそうとし
て小さなエミッション電流Ieを選んだとき、安定なプ
ローブ電流が得られなくなる場合がある。また、飽和
点を検出する過程で、陰極(フィラメントなど)の使用
履歴に応じて、陰極の加熱開始点を自動的に変更する機
能を備えていないため、飽和点の検出に余分な時間を必
要とし、更にまた、陰極の連続使用による飽和点の経
時変化に対し、僅かに陰極加熱を変化させて該加熱を最
適に保つような、狭い範囲の飽和点検出機能が考慮され
ていないので、例えば、陰極の消耗と共に低い陰極加熱
で飽和点に達し得る状態にあるとき、陰極の加熱を低減
して寿命を延ばす操作を短時間に行えないという問題点
がある。
飽和点を検出する手法においても、上記,,,
と同様な問題点があり、更に、飽和点を判定する際、
加速電圧Va やエミッション電流Ie の大きさに応じ
て、飽和点の判定基準を自動的に変更する機能を備えて
いないので、より正確な飽和点判定や、目的に応じた柔
軟な飽和点判定が行えないという問題点があり、また、
エミッション電流Ieの大きさに応じてエミッション
電流Ie を検出するレンジを自動的に変える機能が考慮
されていないので、エミッション電流の値によってはエ
ミッション電流Ie の測定精度が落ち、正確な飽和点判
定ができないという問題点がある。
ための陰極温度の飽和点検出手法における上記問題点を
解消するためになされたもので、請求項1に係る発明
は、陰極の動作温度の設定のための陰極温度の飽和点の
検出を短時間で行えるようにした電子線装置を提供する
ことを目的とする。また請求項2に係る発明は、陰極温
度の飽和点の判定がより正確に行えると共に、加速電圧
や仮設定陰極加熱量におけるエミッション電流に応じた
柔軟な加熱設定の選択が可能な電子線装置を提供するこ
とを目的とする。また請求項3に係る発明は、陰極温度
の飽和点検出で行われるエミッション電流のサンプリン
グにおいて、レンジ切り換え等の時間損失や、レンジ切
り換え中に発生する測定間隔のばらつきに起因する飽和
点判定の誤りを防止できるようにした電子線装置を提供
することを目的とする。また請求項4に係る発明は、エ
ミッション電流が不安定になることがなく飽和点判定を
誤らせることのない電子線装置を提供することを目的と
する。また請求項5に係る発明は、通常の陰極温度飽和
点判定の初期値をむやみに小さくする必要なく、判定時
間を短縮できるようにした電子線装置を提供することを
目的とする。また請求項6に係る発明は、通常の継続的
な使用状態においては、飽和点判定に要する時間が短縮
されるだけでなく、飽和点検出がより確実に行えると共
に、エミッション電流が安定になる時間も短縮できるよ
うにした電子線装置を提供することを目的とする。
め、請求項1に係る発明は、電子を放出する陰極と、該
陰極を加熱するための電流を供給する陰極加熱電源と、
前記陰極に電子引出しと加速のための電位を供給する電
源と、陽極と、前記陰極からの電子放出を抑制する抑制
電極と、前記陽極と抑制電極間のバイアス電圧を変える
バイアス切換手段と、前記陰極からの電子のエミッショ
ン電流を検出する手段と、上記各構成要素を制御する制
御手段とを備え、該制御手段は、陰極温度の飽和点検出
動作における陰極加熱量の初期値を、前記陽極と陰極間
の電位差である加速電圧と、最大エミッション電流が得
られる陰極加熱量より小さい値であって、装置に固有の
固定値である仮設定値となる陰極加熱量を陰極に加えた
際に得られるエミッション電流の測定値とに応じて決定
するようにして、電子線装置を構成するものである。
電流が得られる陰極加熱量より小さい値であって、装置
に固有の固定値である仮設定値となる陰極加熱量を陰極
に加えた際に得られるエミッション電流の測定値に応じ
て、陰極温度の飽和点検出動作における陰極加熱量の初
期値を決定するように構成することにより、陰極温度の
飽和点検出動作を初期値零から開始したり、ある固定値
から開始するよりも短時間で飽和点の検出が可能とな
る。
子線装置において、前記制御手段は、前記陰極温度の飽
和点の判定で用いる判定条件を、前記加速電圧と、前記
エミッション電流の前記測定値とに応じて決定するよう
に構成されていることを特徴とするものである。
電流の前記測定値とに応じて、陰極温度の飽和点の判定
で用いる判定条件を決定するように構成することによ
り、飽和点の判定がより正確に行えるようになるばかり
でなく、加速電圧や陰極加熱量の仮設定値におけるエミ
ッション電流に応じた柔軟な加熱設定の選択が可能とな
る。
係る電子線装置において、前記制御手段は、前記陰極加
熱量の仮設定値におけるエミッション電流に応じて、エ
ミッション電流検出手段のレンジ切り換えを行うように
構成されていることを特徴とするものである。
るエミッション電流に応じて、エミッション電流検出手
段のレンジ切り換えを行うように構成することにより、
陰極温度の飽和点検出で行われるエミッション電流のサ
ンプリングにおいて、レンジ切り換え等の時間損失や、
レンジ切り換え中に発生する測定間隔のばらつきに起因
する飽和点判定の誤りを防止することができる。
ずれか1項に係る電子線装置において、前記制御手段
は、与えられた加速電圧に対しエミッション電流がカッ
トオフ領域にならないように、前記陰極加熱量の仮設定
値におけるエミッション電流が最低限必要なエミッショ
ン電流以上になるようにバイアス電圧を設定するように
構成されていることを特徴とするものである。
て、カットオフ領域にならない最低限必要なエミッショ
ン電流以上にエミッション電流を設定するように構成す
ることにより、エミッション電流が不安定になることが
なく、飽和点判定を誤らせることもなくなる。
ずれか1項に係る電子線装置において、前記制御手段
は、前記陰極温度の飽和点検出動作における陰極加熱量
の初期値を、前記陰極の使用時間や残り寿命等の使用履
歴に応じて変更するように構成されていることを特徴と
するものである。
点検出における陰極加熱量の初期値を変更するように構
成することにより、通常の飽和点判定の初期値をむやみ
に小さくする必要もなく、判定時間を短くでき、飽和点
のシフトによる過飽和設定も防ぐことが可能となる。
極と、該陰極を加熱するための電流を供給する陰極加熱
電源と、前記陰極に電子引出しと加速のための電位を供
給する電源と、陽極と、前記陰極からの電子放出を抑制
する抑制電極と、前記陰極と抑制電極間のバイアス電圧
を変えるバイアス切換手段と、前記陰極からの電子のエ
ミッション電流を検出する手段と、上記各構成要素を制
御する制御手段とを備え、該制御手段は、継続的な使用
状態においての陰極温度の飽和点検出動作における陰極
加熱量の初期値を、その使用時点での陰極加熱量の設定
値から所定の値だけ低い加熱量に設定し、これにより設
定された加熱量から飽和点検出を行うようにして、電子
線装置を構成するものである。
陰極温度の飽和点検出動作における陰極加熱量の初期値
を、その使用時点での陰極加熱量の設定値から所定の値
だけ低い加熱量に設定し、これにより設定された加熱量
から飽和点検出を行うようにすることにより、通常の継
続的な使用状態においては、飽和点判定に要する時間が
短縮されるだけでなく、飽和点検出がより確実に行える
ようになり、また飽和点検出における陰極加熱量の変化
量も小さく、エミッション電流が安定になる時間を短縮
することができる。
る。図1は本発明に係る電子線装置の実施の形態の基本
構成を示すブロック構成図である。図1において、1は
電子を放出するための陰極で、該陰極1は陰極加熱電源
2によって加熱されるようになっており、この陰極加熱
電源2には陰極加熱電流をモニタする装置が含まれてい
る。また、陰極1に電位(−Va )を供給するため、陰
極加熱電源2はバイアス切換装置3を介して高圧電源4
に接続されている。そして、高圧電源4と陰極加熱電源
2との間には帰還抵抗5が接続されており、エミッショ
ン電流Ie が変化しても陰極1の電位(加速電圧Va に
対応)が一定に保たれるようになっている。6は陽極で
接地されており、陽極6と陰極1の間の電位差が加速電
圧Va になる。また、高圧電源4には陰極1から放出さ
れるエミッション電流Ie を検出するためのエミッショ
ン電流検出器7が接続されている。
に相当する機能を含むもので、該制御部8は信号線9を
介して、陰極加熱電源2,バイアス切換装置3,高圧電
源4に接続されている。10は操作表示部であり、ホスト
コンピュータや操作・表示パネル又はこれに相当する機
能を有するものである。高圧電源4の出力はグリッド
(又はウェーネルトとも呼ばれる)11に接続されてお
り、グリッド11には陰極1からの熱電子放出を制御する
バイアス電圧(−Vg )が印加されている。Vg の値が
大きくなると、陰極1とグリッド11間のバイアス電圧−
(Vg −Va )により、陰極1からの電子放出量は抑制
される。操作表示部10からの指令に基づいて、制御部8
は陰極加熱電源2,バイアス切換装置3,高圧電源4の
制御を行うようになっている。なお、ここでは制御部8
は上記のように陰極加熱電源2,バイアス切換装置3,
高圧電源4の制御を行うものとして説明を行うが、操作
表示部10がこれらの一部又は全部の制御を行うものとし
ても、機能的には全く同様に実現できることは明らかで
ある。また、図1において、IL はバイアス切換装置3
を流れる電流、I0 は帰還抵抗5を流れる電流で、矢印
の向きは電子の流れる方向を示している。
置における陰極1の動作温度を設定するための陰極加熱
の飽和点の検出動作の原理について説明する。陰極1の
加熱量を表す数値をFc で示す。陰極加熱の飽和点にお
ける加熱量Fc =Fcsは、加速電圧Va が高いほど大き
な値になり、またエミッション電流Ie が大きいほど大
きな値になる。また、図1に示した電子線装置におい
て、陰極1とグリッド11の間隔が小さいほどエミッショ
ン電流Ie は大きくなり、電圧(Vg −Va )が小さく
なるほどエミッション電流Ie は大きくなる。
て、飽和点付近のエミッション電流のおおよその値を測
定するため、仮の陰極加熱量Fc =Fctを設定して陰極
加熱を行う。熱電子放出を用いた電子顕微鏡等の電子銃
で用いられるエミッション電流範囲(数μ〜数百μA)
に対し、仮の陰極加熱量Fc =Fctで加熱されたときに
測定されるエミッション電流Ie =Ietは、陰極加熱の
飽和点Fc =Fcsにおけるエミッション電流Ie =Ies
と比較して、10%程度以下であるものとする。実測によ
れば、このような仮の陰極加熱量Fctは陰極の寿命(〜
数百時間)を著しく減少させる値ではなく、しかも仮の
陰極加熱量Fc =Fctとして前記測定レンジを決める間
(〜数秒)の加熱では、陰極の寿命への影響は無視でき
ることが確認されている。
Fctを行っても陰極の寿命には影響せず、しかもこの仮
設定におけるエミッション電流Ie の測定値Ietを飽和
点付近のエミッション電流とみなしても、飽和点におけ
るエミッション電流の増加は10%程度以下であるから、
陰極加熱の飽和点検出における初期加熱量Fc =Fcoの
決定や、この飽和点を判定する条件のエミッション電流
に応じた選択などには問題がないことがわかる。
検出の基本動作について説明する。まず、加速電圧Va
とエミッション電流Ie に応じた陰極加熱の初期値開始
点について説明する。
定すると、操作表示部10は制御部8に、この処理を指示
する。次に、陰極加熱電源2に対し、その時点で設定さ
れている電子銃の動作条件におけるエミッション電流I
e の領域を決めるため、陰極加熱の仮設定値Fc =Fct
を指示する。この陰極加熱の仮設定値Fctについて更に
詳細に付言すると、装置が許容している最大のエミッシ
ョン電流がIemaxであって、陰極加熱量Fc はFcsmax
という値で飽和しているものとし、陰極加熱量Fc をこ
の値から徐々に下げ最大エミッション電流Iemaxから10
%程度下がるまで減少させたとき、そのときの陰極加熱
量Fc が仮の陰極加熱量Fctである。この陰極加熱量F
ctは装置が設計されるとき決められる固定値で、飽和点
検出の動作の際に、その都度何らかの条件で設定される
ものではない。
もよいし、時間的に段階的に設定してもよい。次に、制
御部8はエミッション電流検出器7に対し、この陰極加
熱の仮設定値Fc =Fctにおけるエミッション電流検出
器7で測定されたエミッション電流Ietは制御部8で読
み込まれ、制御部8はその時点で設定されている加速電
圧Va とエミッション電流Ietに基づいて、制御部8で
予め記憶されているテーブルを用い、陰極加熱の飽和点
検出における初期加熱量Fc =Fco(Va ,Iet)を決
定する。
いほど大きな加熱量になり、またエミッション電流Iet
が大きいほど大きな加熱量になるように選ばれる。ま
た、同じエミッション電流下における陰極1の形状や陰
極1とグリッド11の距離の違いによる飽和点のばらつき
等を考慮しても、飽和点加熱量Fc =Fcsよりも小さな
値であるように初期加熱量Fcoが選ばれるものとする。
ッション電流Ie(又はIet)に対し、陰極加熱の飽和点
加熱量Fc =Fcsがどのような値になるか、又はそのば
らつきΔFcsがどの程度であるかは、装置が設計される
ときに前もって測定される。その実測値をもとに、与え
られた加速電圧Va とエミッション電流Ie(又はIet)
に対し、どのようなばらつきが発生しても、飽和点の陰
極加熱量Fcsよりも小さな値になるように初期加熱量F
coが定められる。この初期加熱量Fcoは装置設計時に定
められる固定値で、飽和点検出の際に加速電圧Va とエ
ミッション電流Ietの値だけでなく、これ以外の情報を
用いて、その都度設定されるものではない。
値Fcoを用いると、飽和点検出動作を加熱量Fc =0か
ら開始したり、あるいはある固定値から開始するよりも
短時間で陰極加熱の飽和点が検出できる。
e に応じた陰極加熱の飽和点の判定条件の決定について
説明する。本件発明者は、先に特開平9−231930
号において、広い加速電圧範囲(例えば1〜50kV)と
広いエミッション電流範囲(例えば1μ〜 200μA)に
対して、電子銃の軸合わせ等を必要としない陰極加熱の
飽和点の判定法を提案した。次に、この飽和点判定法の
概要について説明する。
状に変化させ、その度毎にそのときのエミッション電流
Ie を取り込む。n(=1,2,・・・)回目の測定点
における陰極加熱量をFc(n),n回目と(n+1)回
目のステップのときのエミッション電流をIe(n),I
e(n+1)とすると、次式(1)によってエミッション
電流の差分ΔIe(n)が得られる。 ΔIe(n)=Ie(n+1)−Ie(n) ・・・・・・・・・(1) 次に、この差分ΔIe(n)を、n回目と(n+1)回目
のステップでのエミッション電流の平均値で規格化した
差分 dIe(n)を、次式(2)により求める。 dIe(n)={Ie(n+1)−Ie(n)}/〔{Ie(n)+Ie(n+1)} /2〕 ・・・・・・・・・・・・・・・・(2) 次に、上記規格化した差分のn回目と(n+1)回目の
値から、規格化差分の増加比k(n)を次式(3)で求
める。 k(n)= dIe(n)/ dIe(n+1) ・・・・・・・・(3) そして、上記規格化差分 dIe(n)と、該規格化差分の
増加比k(n)が、n=n0 において、所定の判定値 d
Ie0及びk0 に対し、次式(4),(5)を満たしたと
き、すなわちエミッション電流の変化が十分小さくなっ
たとき、その時点の前のステップにおける加熱量Fc(n
0 −1)を飽和点として判定するものである。 判定条件 :k(n0)≦k0 ・・・・・・・・・・・・・(4) 副判定条件: dIe(n0)≦ dIe0 ・・・・・・・・・・・(5)
e0及びk0 を一定値とするのではなく、設定した加速電
圧Va と前述の陰極加熱の仮設定値Fc =Fctにおける
エミッション電流Ie =Ietに応じて、データテーブル
を用いて、次式(6),(7)に示すように、判定条件
の値k0 及び副判定条件の値 dIe0を定めるものであ
る。 判定条件の値 k0 =k0(Va ,Iet) ・・・・・・・・(6) 副判定条件の値 dIe0= dIe0(Va ,Iet) ・・・・・(7)
条件の値 dIe0を定めることにより、飽和点の判定がよ
り正確に行えるようになるだけでなく、加速電圧Va や
陰極加熱の仮設定におけるエミッション電流Ietに応じ
た柔軟な加熱設定の選択が可能になる。例えば、加速電
圧Va が低い場合には飽和点における加熱は小さくて済
むので、多少過飽和気味に設定されても寿命への影響は
小さくて済む。また、加速電圧Va が高くエミッション
電流Ietが大きい場合には、寿命への影響を考慮し、陰
極加熱量を若干不足気味に設定することもできる。
電子線装置の変形例について説明する。図1に示した実
施の形態において、エミッション電流検出器7を、測定
レンジが切り換えられるように構成を変更できることは
明らかである。このようにエミッション電流検出器7の
測定レンジを切り換えられるように構成することによ
り、前記実施の形態の基本動作で説明した陰極加熱の仮
設定値Fc =Fctにおいて測定されたエミッション電流
Ie =Ietを用いて、飽和点検出で使用するエミッショ
ン電流検出器7の測定レンジを決定することができる。
すなわち、当該電子線装置で使用する加速電圧とエミッ
ション電流の使用範囲においては、陰極加熱の仮設定値
Fc =Fctで測定されたエミッション電流Ie =Ietに
対し飽和点におけるエミッション電流Ie =Iesは、最
大でも仮設定値に対応するエミッション電流Ietより10
%程度大きいだけであるから、この10%程度大きな値を
スケールオーバーせずに測定できるレンジを設定でき
る。例えば、フルスケール値を連続的にIet×1.2 とし
たり、少なくともIet×1.2 を測定できる段階的な値に
することもできる。
の飽和点検出動作で行われるエミッション電流Ie のサ
ンプリングにおいて、レンジ切り換え等の時間損失や、
レンジ切り換え中に発生する測定間隔のばらつきに起因
する飽和点判定の誤りを防ぐことができる。
て、与えられた加速電圧Va に対して、バイアス電圧−
(Vg −Va )が負に大きくなると、電子放出の抑制効
果が大きくなり、エミッション電流Ie が急激に減少す
る現象、すなわち“エミッション電流のカットオフ”と
呼ばれる現象が現れる。この領域付近における電子銃の
動作では、陰極の加熱の変化に対し、陰極の温度変化に
起因する熱膨脹等の影響でエミッションが不安定であ
り、飽和点判定を誤らせる原因になるばかりでなく、ビ
ーム電流も変化しやすい。
て、前記カットオフ領域付近の不安定な動作にならない
ように、最低限必要なエミッション電流Iem=Iem(V
a )をデータテーブルを用いて定めるようにする。実測
によれば、加速電圧1kV〜50kVの範囲では、最低限
必要なエミッション電流Iemは、加速電圧Va が高いほ
ど大きな値になることが確認されている。この最低限必
要なエミッション電流Iem=Iem(Va )を用いると、
前述の陰極加熱の仮設定値Fc =Fctにおいて測定され
たエミッション電流Ie =Ietに対して、上記最低限必
要なエミッション電流Iem=Iem(Va )よりも大きな
エミッション電流が流れるように、バイアス切換装置3
を制御してグリッド電位−Vg を設定することができ
る。このグリッド電位−Vg の設定は、バイアス抵抗を
用いずに専用の電源を用いてもよいことは明らかであ
る。
陰極1を加熱して長時間使用すると、バイアス条件を変
えなければ、陰極の蒸発に伴って陰極加熱の飽和点は徐
々に低い加熱量の方へ移行する。これは、陰極の蒸発に
よって陰極とグリッドとの間隔が拡がること、陰極の消
耗によって低い加熱電力でも温度が高くなること等の理
由によるものと考えられる。陰極の使用履歴を決める方
法としては、次の方法が挙げられる。 (a)制御部8又は操作表示部10の持つタイマー機能を
用い、実質的な使用時間tを求める方法。 (b)制御部8又は操作表示部10により、加熱量と加熱
時間の積算により、実質的な使用時間tや寿命τを推定
する方法(特願平10−61982号参照)。 (c)おおよその使用時間tを業務日誌等を参照して操
作表示部10から入力する方法。
tに基づいて、飽和点検出における加熱初期値の変更量
ΔFco=ΔFco(t)をデータテーブルから求め、前述
の陰極加熱の仮設定値Fc =Fctで測定されたエミッシ
ョン電流Ie =Ietから求められた加熱初期値Fco(V
a ,Iet)から減算した、次式(8)で示す値Fco′
を、使用履歴を考慮した陰極加熱の初期値とすることが
できる。 Fco′=Fco(Va ,Iet)−ΔFco(t) ・・・・・・(8)
初期値を用いることにより、通常の飽和点判定の初期値
をむやみに小さくする必要もなく、判定時間を短縮する
ことができる。また、飽和点のシフトによる過飽和設定
も防ぐことができる。ここで、飽和点のシフトとは前述
のように、使用時間と共に飽和点における陰極加熱量F
csが下がることを指しているが、陰極寿命付近では、こ
の飽和点における陰極加熱量Fcsは初期加熱量Fcoと同
程度になる。したがって、未使用の陰極を用いて最初に
設定した飽和点の陰極加熱量をそのまま使用すると、陰
極の寿命は著しく短いものになってしまう。
その検出された陰極加熱で電子銃を継続的に使用してい
る場合、前述の使用履歴により、実際の飽和点における
陰極の加熱は、使用時間と共に低い方へ移行する。一
方、通常の継続的な使用状態においては、飽和点が全く
未知であるわけではなく、徐々に飽和点が低くなってい
るのを修正すればよいだけである。このような場合に
は、飽和点検出の初期値は、その時点の設定値から所定
の値だけ低い加熱量に設定し、その加熱量から飽和点検
出を行うことができる。このようにして飽和点検出を行
うことにより、飽和点判定に要する時間が短縮されるば
かりでなく、飽和点検出における陰極加熱の変化量も小
さいので、エミッション電流が安定になる時間も短縮さ
れる。
に、請求項1に係る発明によれば、加速電圧と最大エミ
ッション電流が得られる陰極加熱量より小さい値であっ
て、装置に固有の固定値である仮設定値となる陰極加熱
量を陰極に加えた際に得られるエミッション電流の測定
値に応じて、陰極温度の飽和点検出動作における陰極加
熱量の初期値を決めるようにしているので、飽和点検出
動作を初期値零から開始したり、あるいはある固定値か
ら開始するよりも短時間で陰極温度の飽和点を検出する
ことが可能となる。また請求項2に係る発明によれば、
加速電圧と陰極加熱量の仮設定値におけるエミッション
電流に応じて、陰極温度の飽和点の判定で用いる判定条
件を決めるようにしているので、飽和点の判定がより正
確に行えるようになると共に、加速電圧や陰極加熱量の
仮設定値におけるエミッション電流に応じた柔軟な加熱
設定の選択が可能となる。また請求項3に係る発明によ
れば、陰極加熱量の仮設定値におけるエミッション電流
に応じて、エミッション電流検出手段のレンジ切り換え
を行うように構成しているので、陰極温度の飽和点検出
で行われるエミッション電流のサンプリングにおいて、
レンジ切り換え等に要する時間損失をなくし、レンジ切
り換え中に発生する測定間隔のばらつきに起因する飽和
点判定の誤りを防止することができる。また請求項4に
係る発明によれば、与えられた加速電圧に対し、カット
オフ領域にならない最低限必要なエミッション電流以上
にエミッション電流を設定するように構成しているの
で、エミッションが不安定になることがなく、飽和点判
定を誤らせることも防止することができる。また請求項
5に係る発明によれば、陰極の使用履歴に応じて飽和点
検出における陰極加熱量の初期値を変更するように構成
しているので、通常の飽和点判定の初期値をむやみに小
さくする必要もなく、判定時間を短縮することができ、
また飽和点のシフトによる過飽和設定も防ぐことが可能
となる。また請求項6に係る発明によれば、継続的な使
用状態においての陰極温度の飽和点検出動作における陰
極加熱量の初期値を、その使用時点での陰極加熱量の設
定値から所定の値だけ低い加熱量に設定し、これにより
設定された加熱量から飽和点検出を行うようにしている
ので、通常の継続的な使用状態においては、飽和点判定
に要する時間が短縮されるばかりでなく、飽和点検出が
より確実に行われ、また飽和点検出における陰極加熱の
変化量も小さいので、エミッション電流が安定になる時
間も短縮される。
成を示すブロック構成図である。
成例を示す図である。
である。
Claims (6)
- 【請求項1】 電子を放出する陰極と、該陰極を加熱す
るための電流を供給 する陰極加熱電源と、前記
陰極に電子引出しと加速のための電位を供給する電源
と、陽極と、前記陰極からの電子放出を抑制する抑制電
極と、前記陰極と抑制電極間のバイアス電圧を変えるバ
イアス切換手段と、前記陰極からの電子のエミッション
電流を検出する手段と、上記各構成要素を制御する制御
手段とを備え、 該制御手段は、陰極温度の飽和点検出動作における陰極
加熱量の初期値を、前記陽極と陰極間の電位差である加
速電圧と、最大エミッション電流が得られる陰極加熱量
より小さい値であって、装置に固有の固定値である仮設
定値となる陰極加熱量を陰極に加えた際に得られるエミ
ッション電流の測定値とに応じて決定するように構成さ
れていることを特徴とする電子線装置。 - 【請求項2】 前記制御手段は、前記陰極温度の飽和点
の判定で用いる判定条件を、前記加速電圧と、前記エミ
ッション電流の前記測定値とに応じて決定するように構
成されていることを特徴とする請求項1に係る電子線装
置。 - 【請求項3】 前記制御手段は、前記陰極加熱量の仮設
定値におけるエミッション電流に応じて、エミッション
電流検出手段のレンジ切り換えを行うように構成されて
いることを特徴とする請求項1又は2に係る電子線装
置。 - 【請求項4】 前記制御手段は、与えられた加速電圧に
対しエミッション電流がカットオフ領域にならないよう
に、前記陰極加熱量の仮設定値におけるエミッション電
流が最低限必要なエミッション電流以上になるようにバ
イアス電圧を設定するように構成されていることを特徴
とする請求項1〜3のいずれか1項に係る電子線装置。 - 【請求項5】 前記制御手段は、前記陰極温度の飽和点
検出動作における陰極加熱量の初期値を、前記陰極の使
用時間や残り寿命等の使用履歴に応じて変更するように
構成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれ
か1項に係る電子線装置。 - 【請求項6】 電子を放出する陰極と、該陰極を加熱す
るための電流を供給する陰極加熱電源と、前記陰極に電
子引出しと加速のための電位を供給する電源と、陽極
と、前記陰極からの電子放出を抑制する抑制電極と、前
記陰極と抑制電極間のバイアス電圧を変えるバイアス切
換手段と、前記陰極からの電子のエミッション電流を検
出する手段と、上記各構成要素を制御する制御手段とを
備え、 該制御手段は、継続的な使用状態においての陰極温度の
飽和点検出動作における陰極加熱量の初期値を、その使
用時点での陰極加熱量の設定値から所定の値だけ低い加
熱量に設定し、これにより設定された加熱量から飽和点
検出を行うように構成されていることを特徴とする電子
線装置。
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JP20109998A JP3535387B2 (ja) | 1998-07-02 | 1998-07-02 | 電子線装置 |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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-
1998
- 1998-07-02 JP JP20109998A patent/JP3535387B2/ja not_active Expired - Fee Related
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