JPH09213218A - 酸化物塗布カソードおよびその製造方法 - Google Patents

酸化物塗布カソードおよびその製造方法

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JPH09213218A
JPH09213218A JP2009396A JP2009396A JPH09213218A JP H09213218 A JPH09213218 A JP H09213218A JP 2009396 A JP2009396 A JP 2009396A JP 2009396 A JP2009396 A JP 2009396A JP H09213218 A JPH09213218 A JP H09213218A
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carbonate
oxide
particles
cathode
particle suspension
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JP2009396A
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Takeshi Iwamoto
猛 岩本
Riichi Kondo
利一 近藤
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Mitsubishi Electric Corp
Original Assignee
Mitsubishi Electric Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 カソードに塗布する炭酸塩粒子懸濁液中に含
まれるサブミクロン粒子が他の粒子の間隙を埋め、加熱
処理時の炭酸ガスの放出を阻害し、酸化物生成量が不十
分となってカソードの寿命が短くなる課題があった。ま
た、粗大粒子が塗布表面の平坦度を悪化させ、モアレ発
生の原因になる課題があった。 【解決手段】 カソード表面に炭酸塩塗布層を形成する
際に、嵩密度を1g/cm3 以下に形成するようにし
た。塗布以前に粒径1μm以下の炭酸塩粒子と粒径10
μm以上の炭酸塩粒子を除去し、炭酸塩粒子懸濁液中に
超音波照射、加熱を行い、噴霧液滴の平均直径を20μ
m以下とした噴霧により塗布を行った。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、ブラウン管の電
子銃等に用いられる熱電子放出用の酸化物塗布カソード
およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ブラウン管の電子銃等に用いられる熱電
子放出用のカソードの製造においては、カソードの熱電
子を放出する表面に、熱電子の放出性能の高いBa,S
r等の酸化物の層を形成することが従来行われており、
この酸化物の層の形成の方法が種々検討されている。
【0003】例えば、特開昭57−80631号公報に
掲載された従来のカソードの製造方法においては、カソ
ードとしてのコイルフィラメントの表面に、アルカリ土
類金属炭酸塩の懸濁液をスプレー法により塗布し、その
後このアルカリ土類金属炭酸塩を加熱処理により熱分解
して酸化物とし、熱電子を放出するエミッタとして活性
化するようにしており、エミッタ形成のために塗布する
アルカリ土類金属炭酸塩の懸濁液としては、3元炭酸塩
粉末,酢酸ブチル,およびニトロセルロースを100:
100:0.5(重量比)の配合比で混合し、炭酸塩の
平均粒子径が3〜6μmになるまでめのう石あるいはア
ルミナボールを収容したポットにより粉砕を行ったもの
を用いている。
【0004】上記のように、アルカリ土類金属炭酸塩の
懸濁液中の炭酸塩の平均粒子径を3〜6μmとして、こ
の懸濁液を3〜4kg/cm3 の高圧空気で噴霧して塗
布を行うことにより、塗布面への炭酸塩粒子の被着量お
よび塗布均一性を増加して、エミッタの長寿命化を可能
としており、図13に示すように、従来法と比較して2
割程度のカソードの寿命増を行っている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従来の酸化物塗布カソ
ードおよびその製造方法は以上のように構成されている
ので、エミッタ形成のために塗布される炭酸塩粒子の粒
子径の調整を粉砕行程のみにより行っており、平均粒子
径の調整を行うことは可能であるが、粒子径分布の広が
りに関しての調整をすることは困難であるという課題が
あった。
【0006】図14は、粉砕行程のみによって炭酸塩粒
子を平均粒子径2μm程度に調整した際の、粒子径分布
の広がりを示すグラフであり、(a)は粒子径Dp(μ
m)と、その粒子径以下の粒子の占める体積比である積
算ふるい下U(%)との関係、(b)は粒子径Dp(μ
m)と、その粒子径の粒子の全粒子体積に占める比率d
U/d(logDp)との関係を示している。粒子径の
分布はほぼ対数正規分布に従っているが、幾何標準偏差
が2以上であり、かなり広がりをもった分布となってい
る。ここで、1μm以下のサブミクロン粒子は全粒子体
積の約20%程度、10μm以上の粒子は約5%程度あ
り、粉砕による粒子径調整だけで分布をそろえることが
困難であることがわかる。
【0007】このように、粉砕行程のみによって調整さ
れた炭酸塩粒子では1μm以下のサブミクロン粒子が相
当量あり、このまま炭酸塩粒子を塗布した場合、1μm
以下のサブミクロン粒子がそれ以上の大きさの粒子径の
粒子の間隙を埋めることとなり、本来なら、塗布された
炭酸塩粒子がその後の加熱処理により熱分解し、炭酸ガ
スを放出して酸化物となるものが、間隙が隙間なく埋め
られることにより炭酸ガスの放出が困難となり、カソー
ド表面の酸化物の生成量が不十分となってカソードの寿
命が短くなるという課題があった。
【0008】また、粉砕行程のみによって調整された炭
酸塩粒子には10μm以上の粗大粒子も相当量含まれる
ため、これらが突起となり塗布表面の平坦度を極端に悪
化させており、突起の尖塔部から電子が放出されやすく
なるため放出分布が塗布面において不均一となり、モア
レ発生の原因になるなどの課題もあった。
【0009】この発明は上記のような課題を解決するた
めになされたもので、表面に十分な量の酸化物が形成さ
れて長寿命であり、モアレ等の発生しない均一な電子放
出を行うことのできる酸化物塗布カソードおよびその製
造方法を得ることを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】請求項1記載の発明に係
る酸化物塗布カソードの製造方法は、炭酸塩粒子を分散
させた炭酸塩粒子懸濁液をカソード表面に塗布して、カ
ソード表面に炭酸塩塗布層を形成する際に、嵩密度を1
g/cm3 以下に形成し、その後加熱処理を行ってカソ
ード表面に熱電子放出面としての酸化物塗布層を形成す
るものである。
【0011】請求項2記載の発明に係る酸化物塗布カソ
ードの製造方法は、炭酸塩粒子懸濁液の塗布以前に粒径
1μm以下の炭酸塩粒子を除去し、この除去後の炭酸塩
粒子懸濁液を塗布するものである。
【0012】請求項3記載の発明に係る酸化物塗布カソ
ードの製造方法は、炭酸塩粒子懸濁液の塗布以前に粒径
10μm以上の炭酸塩粒子を除去するものである。
【0013】請求項4記載の発明に係る酸化物塗布カソ
ードの製造方法は、炭酸塩粒子懸濁液中に微小気泡を導
入して塗布を行うものである。
【0014】請求項5記載の発明に係る酸化物塗布カソ
ードの製造方法は、炭酸塩粒子懸濁液中に炭酸塩粒子よ
り低温で熱分解あるいは昇華する粒子径が炭酸塩粒子の
平均径と同等あるいはそれ以下の粒子を混合して塗布を
行うものである。
【0015】請求項6記載の発明に係る酸化物塗布カソ
ードの製造方法は、炭酸塩粒子懸濁液の塗布を、噴霧液
滴の平均直径を20μm以下とした噴霧により行うもの
である。
【0016】請求項7記載の発明に係る酸化物塗布カソ
ードの製造方法は、炭酸塩粒子懸濁液の塗布以前に粒径
1μm以下の炭酸塩粒子および粒径10μm以上の炭酸
塩粒子を除去し、この除去後の炭酸塩粒子懸濁液を、噴
霧液滴の平均直径を20μm以下とした噴霧により塗布
する際に、炭酸塩粒子懸濁液中に微小気泡を導入、また
は炭酸塩粒子より低温で熱分解あるいは昇華する粒子径
が炭酸塩粒子の平均径と同等あるいはそれ以下の粒子を
混合して、塗布を行うものである。
【0017】請求項8記載の発明に係る酸化物塗布カソ
ードの製造方法は、炭酸塩粒子懸濁液に超音波を照射し
て塗布を行うものである。
【0018】請求項9記載の発明に係る酸化物塗布カソ
ードの製造方法は、炭酸塩粒子懸濁液を加熱して塗布を
行うものである。
【0019】請求項10記載の発明に係る酸化物塗布カ
ソードは、炭酸塩粒子を分散させた炭酸塩粒子懸濁液を
カソード表面に塗布して、カソード表面に炭酸塩塗布層
の嵩密度を1g/cm3 以下に形成し、その後加熱処理
を行うことにより、カソード表面に熱電子放出面として
の酸化物塗布層を形成したものである。
【0020】請求項11記載の発明に係る酸化物塗布カ
ソードは、炭酸塩塗布層が形成された状態における表面
粗さを10μm以下に形成したものである。
【0021】請求項12記載の発明に係る酸化物塗布カ
ソードは、炭酸塩粒子懸濁液中に微小気泡を導入して塗
布を行ったものである。
【0022】請求項13記載の発明に係る酸化物塗布カ
ソードは、炭酸塩粒子懸濁液中に炭酸塩粒子より低温で
熱分解あるいは昇華する粒子径が炭酸塩粒子の平均径と
同等あるいはそれ以下の粒子を混合して塗布を行ったも
のである。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の一形態を
説明する。 実施の形態1.図1はこの発明の実施の形態1による酸
化物塗布カソードおよびその製造方法を実現する製造装
置を示す概略図であり、図において、1は10μm以上
の炭酸塩粒子を取り除く湿式分級器、2は1μm以下の
炭酸塩粒子を取り除く湿式分級器、3は炭酸塩粒子懸濁
液8を貯蔵する貯蔵タンク、4は炭酸塩粒子懸濁液8を
カソード6に塗布するスプレー、5は噴霧液滴、6は例
えばTVのブラウン管の電子銃等に用いられるNi等の
金属により形成されたカソード、7はカソード6を固定
する治具であり、図示しない開口部を介してカソード6
の炭酸塩塗布層形成部位への炭酸塩粒子懸濁液8の塗布
が行われる。8はBa,Sr,Ca等の炭酸塩を液中に
分散させた炭酸塩粒子懸濁液、9は圧縮ガス、10はバ
ルブ、11は圧力計、12は炭酸塩粒子懸濁液8に超音
波を照射するための超音波バス、13は炭酸塩粒子懸濁
液8を加熱するためのヒータである。
【0024】次に動作について説明する。酸化物塗布カ
ソードの製造工程は、カソード6上に炭酸塩粒子懸濁液
8を塗布して炭酸塩塗布層を形成する工程と、その後、
カソード6に真空中で加熱処理を行うことにより酸化物
塗布層を形成する工程よりなる。
【0025】炭酸塩塗布層の形成工程は以下の通りであ
る。すなわち、まず、湿式分級器1によって10μm以
上、次いで、湿式分級器2で1μm以下の炭酸塩粒子が
分級カットされて粒子径分布の調整がなされ、その後、
分級調整のなされた炭酸塩粒子懸濁液8は貯蔵タンク3
に貯蔵される。
【0026】次に、貯蔵タンク3に貯蔵された炭酸塩粒
子懸濁液8に対して、超音波バス12により超音波が照
射され、また、ヒータ13により熱が加えられる。
【0027】その後、圧縮ガス9により貯蔵タンク3内
に所定圧力がかけられ、炭酸塩粒子懸濁液8がスプレー
4に輸送される。その間も、炭酸塩粒子懸濁液8の温度
を保持するために噴霧直前までヒータ13による加熱が
行われる。スプレー4においては、各バルブ10の調整
により炭酸塩粒子懸濁液8が噴霧液滴5として噴霧さ
れ、治具7に固定されたカソード6に塗布される。
【0028】噴霧された炭酸塩粒子懸濁液8は噴霧直後
にカソード6上で乾燥してカソード6上に炭酸塩塗布層
が順次形成されてゆき、炭酸塩塗布層が所定の厚さとな
った時点で噴霧が終了する。
【0029】以上のような炭酸塩塗布層の形成工程が終
了したカソード6には、その後、真空中において加熱処
理がなされ、炭酸塩塗布層中のBa,Sr,Ca等の炭
酸塩粒子が炭酸ガス(CO2 )を放出して酸化物となる
ことにより、酸化物塗布層が形成されて、酸化物塗布カ
ソードの製造が完了する。
【0030】図2は、粒子径分布を1〜10μmに分級
調整した場合と分級調整を行わない場合の、炭酸塩粒子
懸濁液8中の炭酸塩粒子のカソード6への塗布状態を示
す概略図である。(a)は湿式分級器1と湿式分級器2
を用いて粒子径分布を1〜10μmに調整した場合、
(b)は分級は行わず平均粒子径の調整のみを行って粒
子径分布が広いままで炭酸塩粒子を塗布した場合を示し
ており、図において、14は炭酸塩粒子、15はカソー
ド6の金属層である。
【0031】塗布された炭酸塩粒子14は、加熱処理に
よる熱分解により、熱電子を放出しやすい酸化物に変換
されるが、図2(b)の「分級調整なし」では1μm以
下の微小粒子がそれ以上の粒子径の粒子間の空隙を埋め
ており、熱分解時の炭酸ガス抜けが悪くなり酸化物生成
がスムーズに行われない。しかし、図2(a)の「分級
調整あり」では、炭酸塩塗布層の嵩密度が1g/cm3
以下となって、炭酸ガスの抜けに必要な粒子間の空隙が
十分あり、酸化物生成が十分になされるため、従来より
寿命の長い酸化物塗布カソードの製造を行うことができ
る。
【0032】また、図2(b)の「分級調整なし」の場
合は、粒子径が10μm以上の粗大粒子が塗布面表面に
残った場合には、平坦度が極端に悪くなり塗布面に突起
が存在することになる。電子は尖塔部から放出されやす
いことから、突起の存在は電子の均一な放出を阻害しモ
アレ発生の大きな要因となる。しかし、図2(a)の
「分級調整あり」の場合は、塗布表面に突起となる粒子
が存在せず表面粗さが10μm以下となるので均一な電
子放出が可能となり、モアレ発生を抑制した品質の良い
酸化物塗布カソードの製造を行うことができる。
【0033】図3は、貯蔵タンク3中の炭酸塩粒子懸濁
液8に対して超音波バス12により超音波照射を行った
場合と行わない場合の炭酸塩粒子懸濁液8中の炭酸塩粒
子14の状態を示す概略図である。(a)は超音波照射
を行った場合、(b)は超音波照射を行わない場合を示
しており、図において、16は炭酸塩粒子14が凝集し
た凝集粒子、17は凝集粒子16が分散した単分散粒子
である。
【0034】分級調整後の炭酸塩粒子懸濁液8は貯蔵タ
ンク3に送られるが、炭酸塩粒子懸濁液8は炭酸塩粒子
数濃度が高くスラリー状であるため、炭酸塩粒子14が
凝集を起こしやすい。そのため、分級を行って粒子径分
布を調整しても噴霧前に凝集して粒子径の大きなものと
なりやすい。
【0035】しかし、超音波バス12により炭酸塩粒子
懸濁液8に超音波照射を行うと、凝集粒子16から単分
散粒子17へと分散する場合に、超音波照射場と流れ場
との粒子分散機構の差から、図3(a)に示したように
単一粒子までの分散が可能となり、分級調整した粒子径
分布の状態での噴霧が行えるため、塗布面平坦化が可能
となり、モアレ発生を抑制した品質の良い酸化物塗布カ
ソードの製造を行うことができる。
【0036】図4は貯蔵タンク3中の炭酸塩粒子懸濁液
8に対してヒータ13により加熱を行った場合と行わな
い場合の炭酸塩粒子14のカソード6への塗布状態を示
す概略図であり、(a)は加熱を行った場合、(b)は
加熱を行わない場合を示している。
【0037】カソード6表面に到達した噴霧液滴5の乾
燥が完了する前に次の噴霧液滴5が到達して噴霧液滴5
同士が合体するウエット状態と呼ばれる状態となると、
大きな噴霧液滴5を噴霧した場合と同様の状態となり、
乾燥時に大きな噴霧液滴5中の粒子が広範囲から強固に
かつ密に凝集し、炭酸塩塗布層の嵩密度が高くなる結果
となる。
【0038】しかし、図4(a)のように炭酸塩粒子懸
濁液8の加熱を行った場合は、個々の噴霧液滴5がカソ
ード6表面で速やかに乾燥してウエット状態となりにく
く、各噴霧液滴5中で乾燥によって生成された粒子凝集
塊が密に凝集していても、各々の粒子凝集塊の集合状態
は疎となる。このため、炭酸塩塗布層は炭酸ガスの抜け
に必要な粒子間の空隙が十分ある嵩密度の低い状態に形
成され、酸化物生成が十分になされるようになり、従来
より寿命の長い酸化物塗布カソードの製造を行うことが
できる。
【0039】また、加熱を行った場合は炭酸塩粒子懸濁
液8の粘性係数が低下して噴霧時の液滴径が小さくなる
ため、液滴に含有可能な粒子径の制限や噴霧液滴5の乾
燥時間の短縮が可能となり、平坦度が高くモアレ発生を
抑制した品質の良い酸化物塗布カソードの製造を短時間
で行うことができる。
【0040】図5は、スプレー4において噴霧液滴5の
平均直径を20μm以下に制限して噴霧を行った場合と
噴霧液滴5の平均直径を制限せずに噴霧を行った場合の
噴霧液滴5および炭酸塩粒子14のカソード6への塗布
状態を示す概略図であり、(a)は液滴径を制限した場
合、(b)は液滴径を制限しない場合を示している。
【0041】図5(a)に示したように、スプレー4か
ら噴霧される噴霧液滴5の平均直径を20μm以下に抑
えた場合には、ランダムにカソード6に到達した噴霧液
滴5の乾燥が速やかに行われるため、ウエット状態を回
避して炭酸塩塗布層を嵩密度の低い空隙率の高い状態に
形成することができ、従来より寿命の長い酸化物塗布カ
ソードの製造を行うことができる。
【0042】また、貯蔵タンク3内で凝集粗大化した炭
酸塩粒子14があった場合でも、液滴径以上の炭酸塩粒
子14は液滴に含有されないことから20μm程度以上
の粒径の炭酸塩粒子14を除去する分級効果を持たせる
ことが可能となるため、平坦度の高い塗布面を形成する
ことができ、モアレ発生を抑制した品質の良い酸化物塗
布カソードの製造を行うことができる。
【0043】以上の塗布方法により、カソード面への炭
酸塩粒子14の塗布を行った酸化物塗布カソード(炭酸
塩塗布層嵩密度:0.75g/cm3 )と、従来の塗布
方法によってカソード面への炭酸塩粒子14の塗布を行
った酸化物塗布カソード(炭酸塩塗布層嵩密度:1.4
g/cm3 )とを比較して、経過時間と相対エミッショ
ン電流との関係を図6に示した。2000時間程度まで
は両方に余り違いは見られないが、4000時間後にお
いてその差は約10%程度、6000時間後においては
15%程度、8000時間後においては25%程度まで
になり、時間の経過とともにその差は大幅に拡大してお
り、この実施の形態1の製造方法により長寿命の酸化物
塗布カソードを得ることができる。
【0044】また、図7は、種々の表面粗さに形成した
酸化物塗布カソードを14インチブラウン管の電子銃に
適用してモアレ発生を評価した結果を示すグラフであ
る。表面粗さの評価にはレーザ光学式非接触表面形状測
定システムを用い、真空中における酸化物塗布層の表面
粗さの評価を行うことは困難であるため酸化物塗布カソ
ードの炭酸塩塗布層表面の10点平均粗さの平均値をと
り、これを表面粗さとした。
【0045】図7に示した評価において、各モアレラン
クは下記の状態をいい、モアレランク3以上が製品とし
ての合格レベルである。 モアレランク1・・・ブラウン管全面にモアレが観測さ
れたもの モアレランク2・・・ブラウン管全面に非常に薄いモア
レが観測されたもの モアレランク3・・・ブラウン管端部に非常に薄いモア
レが観測されたもの モアレランク4・・・ブラウン管端部に極めて薄いモア
レが観測されたもの モアレランク5・・・モアレが全く観測されなかったも
【0046】図7において、表面粗さ4μmの群におけ
るモアレランクの平均値は4.58であり熱電子放出の
均一性は極めて高く、表面粗さ6μmの群におけるモア
レランクの平均値は3.25、表面粗さ10μmの群に
おけるモアレランクの平均値は3.08、また、表面粗
さ16μmの群におけるモアレランクの平均値は2.7
5であり、表面粗さが増すほどモアレの発生が見られ
た。従って、この実施の形態1の製造方法を用いて炭酸
塩塗布層の表面粗さを10μm以下に形成することによ
り、モアレ発生のない均一な熱電子放出を行う高品質の
酸化物塗布カソードを得ることができる。
【0047】以上のように、この実施の形態1によれ
ば、湿式分級器1および湿式分級器2により炭酸塩粒子
14の粒子径分布を1〜10μmに分級調整したことに
より、1μm以下の微小粒子による粒子間の空隙充填を
防止して嵩密度1g/cm3 以下の炭酸塩塗布層を形成
することができ、酸化物生成を十分に行って従来より寿
命の長い酸化物塗布カソードの製造を行うことができる
とともに、粒子径10μm以上の粗大粒子による酸化物
塗布カソード表面の突起形成を防止して、モアレ発生を
抑制して均一な熱電子放出を行う高品質の酸化物塗布カ
ソードの製造を行うことができる。
【0048】また、炭酸塩粒子懸濁液8に対して超音波
バス12により超音波照射を行ったことにより、凝集し
やすい炭酸塩粒子14を単一粒子まで分散して分級調整
した粒子径分布の状態で噴霧を行って平坦な塗布面を形
成することができ、モアレ発生を抑制して均一な熱電子
放出を行う高品質の酸化物塗布カソードの製造を行うこ
とができる。
【0049】また、炭酸塩粒子懸濁液8に対してヒータ
13により加熱を行ったため、乾燥速度を速めてウエッ
ト状態を防止することにより炭酸塩塗布層を嵩密度の低
い状態に形成して、従来より寿命の長い酸化物塗布カソ
ードの製造を行うことができるほか、粘性係数の低下に
よる液滴径減少により、炭酸塩粒子14の粒子径の制限
や噴霧液滴の乾燥時間の短縮が行われるため、表面平坦
度が高くモアレ発生を抑制して均一な熱電子放出を行う
高品質の酸化物塗布カソードを効率よく製造することが
できる。
【0050】また、スプレー4において噴霧液滴5の平
均直径を20μm以下に制限して噴霧を行ったため、ウ
エット状態の回避によるカソード表面における粒子凝集
塊の粗大化抑制効果および、スプレー以前の巨大炭酸塩
粒子の分級効果が得られ、表面平坦度が高くモアレ発生
を抑制して均一な熱電子放出を行う高品質の酸化物塗布
カソードを製造することができる。
【0051】なお、上記実施の形態1では分級からスプ
レーまでの工程を一連のものとしたが、分級を個別に行
うようにしてもよく、また、分級の方法は湿式でなく乾
式分級で行うようにしてもよい。
【0052】実施の形態2.図8はこの発明の実施の形
態2による酸化物塗布カソードおよびその製造方法を実
現する製造装置を示す概略図、図9は図8の貯蔵タンク
3付近の要部を示す概略図であり、図において、18は
炭酸塩粒子懸濁液8中に微小気泡を発生させる気泡発生
用シート、19は気泡(微小気泡)、20は攪拌機であ
る。なお、図1に示したものと同一または相当部分につ
いては同一符号を付して重複説明を省略する。
【0053】次に動作について説明する。炭酸塩塗布層
の形成工程は以下の通りである。まず、湿式分級器1に
よって10μm以上、次いで、湿式分級器2で1μm以
下の炭酸塩粒子14が分級カットされて粒子径分布の調
整がなされ、その後、分級調整のなされた炭酸塩粒子懸
濁液8は貯蔵タンク3に貯蔵される。
【0054】次に、貯蔵タンク3に貯蔵された炭酸塩粒
子懸濁液8に対して、気泡発生用シート18から炭酸塩
粒子14と同程度の大きさである直径数μmの気泡が導
入される。気泡が導入された炭酸塩粒子懸濁液8には、
超音波バス12によって超音波が照射され、また、ヒー
タ13によって熱が加えられる。
【0055】それから、圧縮ガス9により貯蔵タンク3
内にかけられた所定圧力により、炭酸塩粒子懸濁液8が
ヒータ13による加熱を受けながらスプレー4に輸送さ
れ、スプレー4において各バルブ10の調整によって噴
霧液滴5として噴霧され、治具7に固定されたカソード
6に塗布される。以下の工程は前記実施の形態1と同様
である。
【0056】図10は炭酸塩粒子懸濁液8へ気泡を導入
した場合と導入しない場合の炭酸塩粒子14のカソード
6への塗布状態を示す概略図である。(a)は気泡導入
を行った場合、(b)は気泡導入を行わない場合を示し
ており、図において、5は噴霧液滴、14は炭酸塩粒
子、15はカソード6の金属層、19は気泡である。
【0057】炭酸塩粒子懸濁液8中に存在する炭酸塩粒
子14は液の蒸発にともない次第に凝集するが、図10
(b)に示す従来法のように、液中に粒子が密に存在す
るような状態では粒子濃縮状態になり、特に広範囲にわ
たって塗布面がウエット状態となる場合、凝集は強固で
炭酸塩塗布層は密なものとなる。
【0058】しかし、図10(a)に示すように、液中
に気泡19が存在する場合は凝集機構が異なり、液が連
続している部分から粒子凝集が起こり、気泡19を挟ん
だような状態で凝集が進むことから、この気泡19の作
る空間が炭酸塩粒子14間の強固な凝集を緩和し、嵩密
度1g/cm3 以下の空隙率の高い炭酸塩塗布層が形成
され、これにより、熱分解時の炭酸ガスの抜けが向上し
て、酸化物生成がスムーズにかつ十分に行われる。
【0059】以上のように、この実施の形態2によれ
ば、炭酸塩粒子懸濁液8に直径数μmの気泡を導入して
塗布を行ったので、嵩密度1g/cm3 以下の空隙率の
高い炭酸塩塗布層を形成することができ、加熱処理時に
酸化物生成をスムーズにかつ十分に行うことが可能とな
り、従来より寿命の長い酸化物塗布カソードの製造を行
うことができる。
【0060】また、前記実施の形態1と同様に、炭酸塩
粒子14の粒子径分布を1〜10μmに分級調整したの
で、1μm以下の微小粒子による粒子間の空隙充填を防
止して酸化物生成を十分に行い、従来より寿命の長い酸
化物塗布カソードの製造を行うことができるとともに、
粒子径10μm以上の粗大粒子による酸化物塗布カソー
ド表面の突起形成を防止して、モアレ発生を抑制して均
一な熱電子放出を行う高品質の酸化物塗布カソードの製
造を行うことができる。
【0061】また、前記実施の形態1と同様に、炭酸塩
粒子懸濁液8に超音波照射を行ったので、単一粒子の状
態で噴霧を行って平坦な塗布面を形成することができ、
モアレ発生を抑制して均一な熱電子放出を行う高品質の
酸化物塗布カソードの製造を行うことができる。
【0062】また、実施の形態1と同様に炭酸塩粒子懸
濁液8の加熱を行ったので、乾燥速度の向上によりウエ
ット状態が防止されて空隙率の高い塗布層の塗布が可能
となり、従来より寿命の長い酸化物塗布カソードの製造
を行うことができるほか、粘性係数の低下による液滴径
減少により、表面平坦度が高くモアレ発生を抑制して均
一な熱電子放出を行う高品質の酸化物塗布カソードを効
率よく製造することができる。
【0063】また、実施の形態1と同様に、液滴径を制
限した噴霧により塗布を行ったので、乾燥が速やかに行
われ塗布時のウエット状態を抑制でき、しかも、塗布時
に分級効果を持たせられることから、空隙率が高く平坦
度の高い塗布が可能となり長寿命でモアレ発生の少ない
カソードの製造を行うことができる。
【0064】実施の形態3.図11はこの発明の実施の
形態3による酸化物塗布カソードおよびその製造方法を
実現する製造装置を示す概略図であり、図において、2
1は炭酸塩粒子懸濁液8中に混合される高分子材料であ
るポリメチルメタアクリレート粒子(粒子)である。な
お、図8に示したものと同一または相当部分については
同一符号を付して重複説明を省略する。このポリメチル
メタアクリレート粒子21は、後の加熱処理により酸化
物塗布層を形成する工程において炭酸塩粒子14より低
温で熱分解する粒子であり、その粒子径を炭酸塩粒子1
4の平均径と同等あるいはそれ以下の数μmに形成され
ているものである。
【0065】次に動作について説明する。炭酸塩塗布層
の形成工程は以下の通りである。まず、湿式分級器1に
よって10μm以上、次いで、湿式分級器2で1μm以
下の炭酸塩粒子14が分級カットされ粒子径分布の調整
がなされ、その後、分級調整された炭酸塩粒子懸濁液8
は貯蔵タンク3に貯蔵される。
【0066】次に、貯蔵タンク3に貯蔵された炭酸塩粒
子懸濁液8に対して、直径数μmのポリメチルメタアク
リレート粒子21が混合され、このポリメチルメタアク
リレート粒子21の混合された炭酸塩粒子懸濁液8に対
して、気泡発生用シート18による気泡19の導入およ
び超音波バス12による超音波の照射が行われ、また、
ヒータ13による加熱が行われる。混合されたポリメチ
ルメタアクリレート粒子21は、この気泡19の導入お
よび超音波の照射により、炭酸塩粒子懸濁液8中に均一
に分散される。
【0067】それから、圧縮ガス9により貯蔵タンク3
内にかけられた所定圧力により、炭酸塩粒子懸濁液8が
ヒータ13による加熱を受けながらスプレー4に輸送さ
れ、スプレー4において各バルブ10の調整によって噴
霧液滴5として噴霧され、治具7に固定されたカソード
6に塗布される。以下の工程は前記実施の形態1と同様
である。
【0068】図12は炭酸塩粒子懸濁液8にポリメチル
メタアクリレート粒子21を混合した場合の炭酸塩粒子
14のカソード6への塗布後の状態および加熱処理中の
状態を示す概略図である。(a)は塗布後の状態、
(b)は加熱処理中の状態を示しており、図において、
14は炭酸塩粒子、15はカソード6の金属層、21は
ポリメチルメタアクリレート粒子である。
【0069】塗布段階においては炭酸塩粒子懸濁液8に
ポリメチルメタアクリレート粒子21が混合されている
ため、図12(a)に示すように、ポリメチルメタアク
リレート粒子21が炭酸塩粒子14の粒子間隙を埋める
形となり、密な状態で塗布される。しかし、その後の加
熱処理において、約400℃程度まで十分な時間をかけ
て温度を上昇させると、高分子材料でできたポリメチル
メタアクリレート粒子21は、図12(b)に示すよう
に、約400℃以下でほぼ完全に熱分解してしまい、ポ
リメチルメタアクリレート粒子21が存在していた空間
に空隙が形成される。これにより、炭酸塩塗布層の嵩密
度が1g/cm3 となり、より高温において炭酸塩粒子
14が熱分解し酸化物となる際に発生する炭酸ガスの抜
けを向上することができる。
【0070】以上のように、この実施の形態3によれ
ば、炭酸塩粒子懸濁液8に、炭酸塩粒子14より低温で
熱分解する粒子径数μmのポリメチルメタアクリレート
粒子21を混合して塗布を行ったので、加熱処理時の炭
酸塩粒子14の熱分解前に、炭酸塩塗布層中に十分な空
隙を形成することができ、炭酸ガスの抜けを向上して酸
化物生成をスムーズにかつ十分に行うことが可能とな
り、従来より寿命の長い酸化物塗布カソードの製造を行
うことができる。
【0071】また、前記実施の形態2と同様に、炭酸塩
粒子14の粒子径分布を1〜10μmに分級調整し、炭
酸塩粒子懸濁液8への気泡導入,超音波照射,および加
熱を行い、また、液滴径を制限した噴霧により塗布を行
ったので、前記実施の形態2と同様の機構により、従来
より寿命の長い酸化物塗布カソードの製造を行うことが
できるとともに表面平坦度が高くモアレ発生を抑制して
均一な熱電子放出を行う高品質の酸化物塗布カソードを
効率よく製造することができる。
【0072】なお、この実施の形態3においては、炭酸
塩粒子14より低温で熱分解する高分子材料からなる微
小粒子であるポリメチルメタアクリレート粒子21を用
いたが、炭酸塩粒子14より低温で昇華する物質からな
る微小粒子を用いてもよい。
【0073】
【発明の効果】以上のように、請求項1記載の発明によ
れば、カソード表面に炭酸塩塗布層を形成する際に、炭
酸塩塗布層の嵩密度を1g/cm3 以下に形成するよう
に構成したので、炭酸塩塗布層中の炭酸塩粒子間に炭酸
ガス抜けに必要な空隙を十分に形成した後の加熱処理に
よる酸化物塗布層形成時に熱電子放出能力の高い酸化物
の生成を十分かつ速やかに行い、従来より寿命の長い酸
化物塗布カソードを製造できる効果がある。
【0074】請求項2記載の発明によれば、炭酸塩粒子
懸濁液の塗布以前に粒径1μm以下の炭酸塩粒子を除去
し、この除去後の炭酸塩粒子懸濁液を塗布するように構
成したので、1μm以下の微小粒子がそれ以上の粒子径
の粒子間の空隙を埋めることを防止して炭酸塩塗布層の
嵩密度を1g/cm3 以下に形成することができ、炭酸
塩塗布層中の炭酸塩粒子間に炭酸ガス抜けに必要な空隙
を十分に形成した後の加熱処理による酸化物塗布層形成
時に熱電子放出能力の高い酸化物の生成を十分にかつ速
やかに行い、従来より寿命の長い酸化物塗布カソードを
製造できる効果がある。
【0075】請求項3記載の発明によれば、炭酸塩粒子
懸濁液の塗布以前に粒径10μm以上の炭酸塩粒子を除
去するように構成したので、粒子径が10μm以上の粗
大粒子が炭酸塩塗布層表面に残ることを防止してカソー
ド表面の平坦度を向上し、モアレ発生を抑制して均一な
熱電子放出を行う高品質の酸化物塗布カソードを製造で
きる効果がある。
【0076】請求項4記載の発明によれば、炭酸塩粒子
懸濁液中に微小気泡を導入して塗布するように構成した
ので、微小気泡が炭酸塩粒子間の強固な凝集を緩和して
空隙率の高い炭酸塩塗布層が形成されることにより、加
熱処理時に酸化物生成をスムーズにかつ十分に行うこと
が可能となり、従来より寿命の長い酸化物塗布カソード
を製造できる効果がある。
【0077】請求項5記載の発明によれば、炭酸塩粒子
懸濁液中に炭酸塩粒子より低温で熱分解あるいは昇華す
る粒子径が炭酸塩粒子の平均径と同等あるいはそれ以下
の粒子を混合して塗布するように構成したので、加熱処
理時の炭酸塩粒子の熱分解前に、炭酸塩塗布層中に十分
な空隙を形成することができ、炭酸ガスの抜けを向上し
て酸化物生成をスムーズかつ十分に行うことが可能とな
り、従来より寿命の長い酸化物塗布カソードを製造でき
る効果がある。
【0078】請求項6記載の発明によれば、炭酸塩粒子
懸濁液の塗布を、噴霧液滴の平均直径を20μm以下と
した噴霧により行うように構成したので、炭酸塩粒子懸
濁液はカソード面へランダムに、しかも小さい噴霧液滴
の状態で塗布されるため、カソードに到達した噴霧液滴
のウエット状態が回避され、乾燥時の粒子凝集塊の粗大
化が抑制されるので、炭酸塩塗布層を嵩密度の低い空隙
率の高い状態に形成することができ、従来より寿命の長
い酸化物塗布カソードを製造できる効果がある。また、
塗布前に20μm程度以上に凝集粗大化した炭酸塩粒子
を除去する分級効果が得られることにより、カソード表
面の平坦度が向上し、モアレ発生を抑制して均一な熱電
子放出を行う高品質の酸化物塗布カソードを製造できる
効果がある。
【0079】請求項7記載の発明によれば、炭酸塩粒子
懸濁液の塗布以前に粒径1μm以下の炭酸塩粒子および
粒径10μm以上の炭酸塩粒子を除去し、この除去後の
炭酸塩粒子懸濁液を、噴霧液滴の平均直径を20μm以
下とした噴霧により塗布する際に、炭酸塩粒子懸濁液中
に微小気泡を導入、または炭酸塩粒子より低温で熱分解
あるいは昇華する粒子径が炭酸塩粒子の平均径と同等あ
るいはそれ以下の粒子を混合して塗布するように構成し
たので、従来より寿命が長く、かつモアレ発生を抑制し
て均一な熱電子放出を行う高品質の酸化物塗布カソード
を製造できる効果がある。
【0080】請求項8記載の発明によれば、炭酸塩粒子
懸濁液に超音波を照射して塗布するように構成したの
で、炭酸塩粒子懸濁液中で凝集を起こしやすい炭酸塩粒
子を単一粒子まで分散して噴霧することでカソード表面
の平坦度が向上し、モアレ発生を抑制して均一な熱電子
放出を行う高品質の酸化物塗布カソードを製造できる効
果がある。
【0081】請求項9記載の発明によれば、炭酸塩粒子
懸濁液を加熱して塗布するように構成したので、個々の
噴霧液滴の乾燥を速めてウエット状態を防止することに
より炭酸塩塗布層を嵩密度の低い状態に形成し、これに
より後の加熱処理による酸化物塗布層形成時に酸化物の
生成を十分かつ速やかに行い、従来より寿命の長い酸化
物塗布カソードを製造できる効果がある。また、炭酸塩
粒子懸濁液の粘性係数が低下して噴霧時の液滴径が小さ
くなることにより噴霧液滴に含有可能な炭酸塩粒子の粒
子径の制限や噴霧液滴の乾燥時間の短縮が可能となり、
表面平坦度が高く、モアレ発生を抑制して均一な熱電子
放出を行う高品質の酸化物塗布カソードを効率よく製造
できる効果がある。
【0082】請求項10記載の発明によれば、カソード
表面に炭酸塩塗布層を形成する際に、炭酸塩塗布層の嵩
密度を1g/cm3 以下に形成するように構成したの
で、炭酸塩塗布層中の炭酸塩粒子間に炭酸ガス抜けに必
要な空隙を十分に形成した後の加熱処理による酸化物塗
布層形成時に熱電子放出能力の高い酸化物の生成を十分
かつ速やかに行い、従来より寿命の長い酸化物塗布カソ
ードが得られる効果がある。
【0083】請求項11記載の発明によれば、炭酸塩塗
布層が形成された状態における表面粗さを10μm以下
に形成するように構成したので、酸化物塗布カソード表
面の突起から局所的に熱電子が放出される状態を回避
し、モアレ発生を抑制して均一な熱電子放出を行う高品
質の酸化物塗布カソードが得られる効果がある。
【0084】請求項12記載の発明によれば、炭酸塩粒
子懸濁液中に微小気泡を導入して塗布するように構成し
たので、微小気泡が炭酸塩粒子間の強固な凝集を緩和し
て空隙率の高い炭酸塩塗布層が形成されることにより、
加熱処理時に酸化物生成をスムーズかつ十分に行うこと
が可能となり、従来より寿命の長い酸化物塗布カソード
が得られる効果がある。
【0085】請求項13記載の発明によれば、炭酸塩粒
子懸濁液中に炭酸塩粒子より低温で熱分解あるいは昇華
する粒子径が炭酸塩粒子の平均径と同等あるいはそれ以
下の粒子を混合して塗布するように構成したので、加熱
処理時の炭酸塩粒子の熱分解前に、炭酸塩塗布層中に十
分な空隙を形成することができ、炭酸ガスの抜けを向上
して酸化物生成をスムーズかつ十分に行うことが可能と
なり、従来より寿命の長い酸化物塗布カソードが得られ
る効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1による酸化物塗布カ
ソードおよびその製造方法を実現する製造装置を示す概
略図である。
【図2】 粒子径分布を1〜10μmに分級調整した場
合と分級調整を行わない場合の、炭酸塩粒子懸濁液中の
炭酸塩粒子のカソードへの塗布状態を示す概略図であ
る。
【図3】 貯蔵タンク中の炭酸塩粒子懸濁液に対して超
音波バスにより超音波照射を行った場合と行わない場合
の炭酸塩粒子懸濁液中の炭酸塩粒子の状態を示す概略図
である。
【図4】 貯蔵タンク中の炭酸塩粒子懸濁液に対してヒ
ータにより加熱を行った場合と行わない場合の炭酸塩粒
子のカソードへの塗布状態を示す概略図である。
【図5】 スプレーにおいて噴霧液滴の平均直径を20
μm以下に制限して噴霧を行った場合と噴霧液滴の平均
直径を制限せずに噴霧を行った場合の噴霧液滴および炭
酸塩粒子のカソードへの塗布状態を示す概略図である。
【図6】 実施の形態1による嵩密度0.75g/cm
3 に炭酸塩塗布層を形成した酸化物塗布カソードと、従
来の塗布層嵩密度1.4g/cm3 に炭酸塩塗布層を形
成した酸化物塗布カソードの、経過時間と相対工ミッシ
ョン電流との関係を示すグラフ図である。
【図7】 種々の表面粗さに形成した酸化物塗布カソー
ドを14インチブラウン管の電子銃に適用してモアレ発
生を評価した結果を示すグラフ図である。
【図8】 この発明の実施の形態2による酸化物塗布
カソードおよびその製造方法を実現する製造装置を示す
概略図である。
【図9】 図8の貯蔵タンク付近の要部を示す概略図で
ある。
【図10】 炭酸塩粒子懸濁液へ気泡を導入した場合と
導入しない場合の炭酸塩粒子のカソードへの塗布状態を
示す概略図である。
【図11】 この発明の実施の形態3による酸化物塗布
カソードおよびその製造方法を実現する製造装置を示す
概略図である。
【図12】 炭酸塩粒子懸濁液にポリメチルメタアクリ
レート粒子を混合した場合の炭酸塩粒子のカソードへの
塗布後の状態および加熱処理中の状態を示す概略図であ
る。
【図13】 従来のカソードの製造方法によるカソード
の寿命増加を示す表図である。
【図14】 従来のカソードの製造方法による粉砕行程
のみによって炭酸塩粒子を平均粒子径2μm程度に調整
した際の粒子径分布の広がりを示すグラフ図である。
【符号の説明】
5 噴霧液滴、6 カソード、8 炭酸塩粒子懸濁液、
14 炭酸塩粒子、19 気泡(微小気泡)、21 ポ
リメチルメタアクリレート粒子(粒子)。

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 炭酸塩粒子を分散させた炭酸塩粒子懸濁
    液をカソード表面に塗布して炭酸塩塗布層を形成し、該
    炭酸塩塗布層に加熱処理を行い前記炭酸塩粒子を酸化さ
    せることにより、前記カソード表面に熱電子放出面とし
    ての酸化物塗布層を形成する酸化物塗布カソードの製造
    方法において、前記炭酸塩塗布層の嵩密度を1g/cm
    3 以下に形成することを特徴とする酸化物塗布カソード
    の製造方法。
  2. 【請求項2】 炭酸塩粒子懸濁液の塗布以前に粒径1μ
    m以下の前記炭酸塩粒子を除去し、該除去後の炭酸塩粒
    子懸濁液を塗布することを特徴とする請求項1記載の酸
    化物塗布カソードの製造方法。
  3. 【請求項3】 炭酸塩粒子懸濁液の塗布以前に粒径10
    μm以上の前記炭酸塩粒子を除去することを特徴とする
    請求項1または請求項2記載の酸化物塗布カソードの製
    造方法。
  4. 【請求項4】 炭酸塩粒子懸濁液中に微小気泡を導入し
    て塗布を行うことを特徴とする請求項1から請求項3の
    うちのいずれか1項記載の酸化物塗布カソードの製造方
    法。
  5. 【請求項5】 炭酸塩粒子懸濁液中に炭酸塩粒子より低
    温で熱分解あるいは昇華する粒子径が前記炭酸塩粒子の
    平均径と同等あるいはそれ以下の粒子を混合して塗布を
    行うことを特徴とする請求項1から請求項3のうちのい
    ずれか1項記載の酸化物塗布カソードの製造方法。
  6. 【請求項6】 炭酸塩粒子懸濁液の塗布を、噴霧液滴の
    平均直径を20μm以下とした噴霧により行うことを特
    徴とする請求項1から請求項5のうちのいずれか1項記
    載の酸化物塗布カソードの製造方法。
  7. 【請求項7】 炭酸塩粒子懸濁液の塗布以前に粒径1μ
    m以下の前記炭酸塩粒子および粒径10μm以上の前記
    炭酸塩粒子を除去し、該除去後の炭酸塩粒子懸濁液を、
    噴霧液滴の平均直径を20μm以下とした噴霧により塗
    布することを特徴とする請求項4または請求項5記載の
    酸化物塗布カソードの製造方法。
  8. 【請求項8】 炭酸塩粒子懸濁液に超音波を照射して塗
    布を行うことを特徴とする請求項6または請求項7記載
    の酸化物塗布カソードの製造方法。
  9. 【請求項9】 炭酸塩粒子懸濁液を加熱して塗布を行う
    ことを特徴とする請求項6から請求項8のうちのいずれ
    か1項記載の酸化物塗布カソードの製造方法。
  10. 【請求項10】 炭酸塩粒子を分散させた炭酸塩粒子懸
    濁液をカソード表面に塗布して炭酸塩塗布層を形成し、
    該炭酸塩塗布層に加熱処理を行い前記炭酸塩粒子を酸化
    させることにより、前記カソード表面に熱電子放出面と
    しての酸化物塗布層を形成した酸化物塗布カソードにお
    いて、前記炭酸塩塗布層の嵩密度を1g/cm3 以下に
    形成したことを特徴とする酸化物塗布カソード。
  11. 【請求項11】 炭酸塩塗布層が形成された状態におけ
    る表面粗さを10μm以下に形成したことを特徴とする
    請求項10記載の酸化物塗布カソード。
  12. 【請求項12】 炭酸塩粒子懸濁液中に微小気泡を導入
    して塗布を行ったことを特徴とする請求項10または請
    求項11記載の酸化物塗布カソード。
  13. 【請求項13】 炭酸塩粒子懸濁液中に前記炭酸塩粒子
    より低温で熱分解あるいは昇華する粒子径が前記炭酸塩
    粒子の平均径と同等あるいはそれ以下の粒子を混合して
    塗布を行ったことを特徴とする請求項10または請求項
    11記載の酸化物塗布カソード。
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