JPH0921058A - ミシンの張力付与機構付き糸案内具 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 複数本の糸を案内する複数の糸案内部材を備
えていながら横方向の全長を小さく抑えることができ、
糸案内部材に糸を通し易くでき、各糸に付与する張力を
同時に調整することができ、部品点数を減らしてコスト
ダウンを図ることができ、糸案内部材の回転の規制もで
きるミシンの張力付与機構付き糸案内具を得る。 【構成】 第一張力付与機構付き糸案内具１は、支軸９
の外周に糸案内部材１２とスペーサ２０とバネ２２とを
横方向の移動可能に挿通してなる。糸案内部材１２に糸
を通すには、糸を２枚の縦片１３の前方に位置させ、両
縦片１３の手前縁から両縦片１３間に進入させて挟ませ
ればよい。バネ２２は、各糸案内部材１２の２枚の縦片
１３を押し合わせるように作用して糸に張力を付与す
る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、ミシンの上糸に張力を
付与しながら該上糸を案内するための張力付与機構付き
糸案内具に関し、とりわけ多針刺繍ミシンに適した糸案
内具に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】多針刺繍ミシンのヘッド（図示略）の上
方には、図４に示すように、糸道装置４１が設けられ、
糸道装置４１にはヘッドの針本数（同図の例では９本）
に対応した複数（同図の例では９つ）の第二張力付与機
構付き糸案内具４３が横１行に配設されている。また、
糸道装置４１の上方には糸案内枠４６が設けられ、糸案
内枠４６には複数の糸案内部材５２を備えた一体の第一
張力付与機構付き糸案内具５０が取付けられている。こ
の第一張力付与機構付き糸案内具５０は、糸６０に適度
な張力を付与して、糸より、糸同士のからみ、糸落下、
糸切りの際の糸端の飛び等を防止しながら、糸６０を案
内するためのものであって、横長の取付板５１にヘッド
の針本数に対応した複数（同図の例では９つ）の糸案内
部材５２を配設して構成される。

【０００３】各糸案内部材５２は、図５に示すように、
取付板５１から手前側へ立設されたボルト５３と、ボル
ト５３にねじ込み量を調整可能に螺合された調整ナット
５４と、ボルト５３に挿通されて取付板５１と調整ナッ
ト５４との間に介装される押え片５５及びバネ５６とか
ら構成され、押え片５５と取付板５１との間に糸６０を
挟むようになっている。押え片５５の左右両端部は取付
板５１の前面から手前側へ反るように湾曲しており、上
下端部の左右四箇所には取付板５１の上面及び下面に掛
かる糸外れ防止爪５７が形成されている。バネ５６は押
え片５５を常に取付板５１の方向へ付勢して糸６０に張
力を付与するためのもので、その弾発力は調整ナット５
４のねじ込み量によって調整される。

【０００４】そして、糸立ての巻糸（図示略）から供給
される糸６０を第一張力付与機構付き糸案内具５０に通
すには、糸６０を、図５の二点鎖線のように糸案内部材
５２の押え片５５の側方に位置させ、糸６０の位置Ａ及
びＢを指でつまんで取付板５１の前面に沿わせて図５の
矢印方向へスライドさせ、押え片５５と取付板５１との
間に押し込んで挟ませて、糸外れ防止爪５７を越えさせ
る（特開平６−２８７８５４号公報）。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】ところが、この第一張
力付与機構付き糸案内具５０では、前述のように糸６０
を押え片５５の側方からスライドさせやすくするため
に、各糸案内部材５２間に広い間隔５８を設ける必要が
あった。このため、図４に示すように、第一張力付与機
構付き糸案内具５０の横方向の全長が糸道装置４１の横
幅より大きくなり、９本の糸６０が横方向に大きく広が
って邪魔になることがあった。また、たとえ間隔５８が
設けられていても、糸６０を糸案内部材５２の側方から
通すというのは、やりにくい作業であった。また、９つ
の糸案内部材５２の各々に調整ナット５４及びバネ５６
が必要なためコストがかかっていた。そして、各糸６０
に付与する張力を調整するには、各調整ナット５４のね
じ込み量を変えて行なう必要があり、面倒であった。さ
らに、作業の最中に糸外れ防止爪５７が取付板５１の上
面及び下面から外れ、押え片５５が左右に回転すること
があり、定位置に戻すのが面倒であった。

【０００６】本発明の目的は、上記課題を解決し、複数
本の糸を案内する複数の糸案内部材を備えていながら横
方向の全長を小さく抑えることができ、糸案内部材に糸
を通し易くでき、各糸に付与する張力を同時に調整する
ことができ、部品点数を減らしてコストダウンを図るこ
とができ、糸案内部材の回転の規制もできるミシンの張
力付与機構付き糸案内具を提供することにある。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明のミシンの張力付与機構付き糸案内具は、横
方向に延びる支軸の外周に、２枚の縦片が合わされてな
り該縦片間に糸を挟むための少なくとも２つの糸案内部
材と、糸案内部材間に配されて糸案内部材の相互間隔を
保つ少なくとも１つのスペーサと、最も端に位置する糸
案内部材を反対の端の方向へ付勢する少なくとも１つの
バネとを、横方向の移動可能に挿通してなる構成とし
た。

【０００８】ここで、糸案内部材の２枚の縦片の手前縁
は、略Ｖ字状に開くように曲げて糸受部とすることが好
ましい。また、糸案内部材の２枚の縦片の側縁に、互い
の側縁を抱き合うように突出する糸外れ防止突起を設け
ることが好ましい。また、支軸の端部に雌ねじを切り、
該雌ねじにバネの弾発力を調節するための調整ナットを
螺合することが好ましい。また、糸案内部材の２枚の縦
片を角形に形成し、該縦片の奥縁から０．１〜２．０ｍ
ｍ後方に壁を設けることが好ましい。また、スペーサは
特定の形状に限定されないが、短いパイプが好ましい。
また、バネは、一方の最も端に位置する糸案内部材だけ
を反対の端の方向へ付勢する場合には１つとなり、両方
の最も端に位置する糸案内部材を互いに反対の端の方向
へ付勢する場合には２つとなる。

【０００９】

【作用】本発明のミシンの張力付与機構付き糸案内具に
よれば、２枚の縦片が合わされてなる糸案内部材を用い
ているので、糸をこの糸案内部材に通すには、糸を両縦
片の前方に位置させ、両縦片の手前縁から両縦片間に進
入させて挟ませればよい。このため、各糸案内部材間に
従来のような広い間隔を設ける必要がなく、最小限の短
いスペーサを配するだけで済み、もって横方向の全長を
小さく抑えることができる。また、糸を前方から両縦片
間に通す作業は、大変にやりやすい。また、最も端に位
置する糸案内部材を反対の端の方向へ付勢する少なくと
も１つのバネは、各糸案内部材の２枚の縦片を押し合わ
せるように作用するので、各糸案内部材に通された全て
の糸に張力を付与することができ、糸案内部材の数に拘
らず従来よりバネの数を減らすことができる。

【００１０】上記作用に加え、縦片の手前縁に前記略Ｖ
字状の糸受部を形成した場合には、広い面積の糸受部で
糸を受け入れて縦片間に進入させることができるので、
糸通しがさらに楽になる。また、縦片の側縁に前記糸外
れ防止突起を設けた場合には、縦片間に挟んだ糸の上下
移動を規制して糸外れを防止することができる。また、
支軸に切られた雌ねじに調整ナットを螺合した場合に
は、該調整ナットのねじ込み量を調整することによって
バネの弾発力を調整し、もって各糸案内部材に通された
全ての糸に付与する張力を同時に調整することができ
る。また、縦片を角形に形成し、該縦片の奥縁から０．
１〜２．０ｍｍ後方に壁を設けた場合には、その壁によ
って縦片の回転が規制されるので、糸案内部材を常に所
定の姿勢に保つことができる。

【００１１】

【実施例】以下、本発明を多針刺繍ミシンの糸立用糸案
内に具体化した一実施例について、図１〜図３を参照し
て説明する。図２に示すように、多針刺繍ミシンのヘッ
ド４０（その詳細は図示略）の上方には糸道装置４１が
設けられ、糸道装置４１の取付台４２の正面には、ヘッ
ド４０の針本数に対応した複数組の第二張力付与機構付
き糸案内具４３、糸調子４４及び糸案内孔部材４５が互
いに近接した状態で配設されている。本実施例では９本
針のヘッド４０に対応するために、９つの第二張力付与
機構付き糸案内具４３が横１行に配設され、９つの糸調
子４４が３行３列に配設され、３つの糸案内孔部材４５
が各行の糸調子４４の下方に取付けられている。

【００１２】糸道装置４１の上方には糸案内枠４６が設
けられ、糸案内枠４６には第一張力付与機構付き糸案内
具１が取付けられている。図１は第一張力付与機構付き
糸案内具１を下から見た底面図である。第一張力付与機
構付き糸案内具１は外枠としてのブラケット２を備え、
ブラケット２は、横長の取付壁３と、取付壁３の左右両
端部から手前側へ折曲形成された２枚の側壁４と、取付
壁３の上端部から手前側へ折曲形成された上壁５とから
構成されている。取付壁３には２つの取付孔６が貫設さ
れ、ブラケット２は取付孔６に挿通されたビス１７によ
って糸案内枠４６に取り付けられている。上壁５には横
方向に間隔を置いて９つの糸通し孔８が貫設されてい
る。

【００１３】ブラケット２の内側には、その全長にわた
って横方向に延びる丸棒状の支軸９が渡され、支軸９の
両端は、両側壁４の孔７に側方から挿入されたねじ１１
を、支軸９の端面に切られた雌ねじ孔１８に螺合させる
ことによって、ブラケット２に固定されている。支軸９
の右端部の外周には雌ねじ１０が切られている。支軸９
の外周には、９つの糸案内部材１２と、８つのスペーサ
２０と、２つのバネ２２と、２つの調整ナット２４と
が、横方向の移動可能に挿通されている。

【００１４】糸案内部材１２は、四角板状の縦片１３を
２枚合わせたもので、両縦片１３間に糸３０を挟むよう
になっている。縦片１３の中央部には、内径が支軸９の
外径より僅かに大きい挿通孔１４が貫設されている。縦
片１３の手前縁は斜め手前に約４５度の傾斜角度で曲げ
られ、縦片１３を２枚合わせた際には略Ｖ字状に開いた
糸受部１５を形成する。縦片１３の一側縁の２箇所には
糸外れ防止突起１６が設けられ、縦片１３を２枚合わせ
た際には４つの糸外れ防止突起１６が互いの側縁を抱き
合うように突出する。なお、縦片１３の奥縁は、ブラケ
ット２の取付壁３から、図１に示すように、約０．５ｍ
ｍの距離Ｄを置いて隔たっている。

【００１５】短いパイプ状のスペーサ２０は、糸案内部
材１２間に配されて糸案内部材１２の相互間隔を保つた
めのもので、その内径は支軸９の外径より僅かに大き
い。２つのうち一方のバネ２２は、最も左端に位置する
糸案内部材１２に左側から当接し、該糸案内部材１２を
右端の方向へ付勢している。他方のバネ２２は、最も右
端に位置する糸案内部材１２に右側から当接し、該糸案
内部材１２を左端の方向へ付勢している。２つで一組を
なす調整ナット２４は、支軸９の右端部に右側のバネ２
２に右側から当接するように挿通され、雌ねじ１０にね
じ込み量を調整可能に螺合されている。２つの調整ナッ
ト２４は一方が他方の回り止めとなっており、２つが互
いに対向して当接することによって、がたつくことなく
固定される。以上の各構成部品は、図３に一部示すよう
に、支軸９の外周に矢印方向に順に挿通されて組み立て
られる。

【００１６】糸立てにセットされた巻糸（図示略）から
導かれる糸３０は、手作業によって、まず第一張力付与
機構付き糸案内具１に通され、次に第二張力付与機構付
き糸案内具４３に通され、続いて糸調子４４に巻き掛け
られ、続いて糸案内孔部材４５に通される。

【００１７】以上のように構成された本実施例の第一張
力付与機構付き糸案内具１によれば、２枚の縦片１３が
合わされてなる糸案内部材１２を用いているので、糸３
０をこの糸案内部材１２に通すには、まず、糸３０の位
置Ａを指でつまんでブラケット２の糸通し孔８に上方か
ら垂らし入れ、続いて糸３０の位置Ｂ又はＣを指でつま
んで糸３０を両縦片１３の前方に位置させ、両縦片１３
の手前縁から両縦片１３間に進入させて挟ませればよ
い。このため、各糸案内部材１２間に従来のような広い
間隔を設ける必要がなく、最小限の短いスペーサ２０を
配するだけで済み、もって横方向の全長を小さく抑える
ことができる。また、糸３０を前方から両縦片１３間に
通す作業は、大変にやりやすい。また、最も端に位置す
る糸案内部材１２を反対の端の方向へ付勢する２つのバ
ネ２２は、各糸案内部材１２の２枚の縦片１３を押し合
わせるように作用するので、各糸案内部材１２に通され
た全ての糸３０に張力を付与することができ、糸案内部
材１２の数に拘らず従来よりバネの数を減らすことがで
きる。

【００１８】さらに、本実施例では、縦片１３の手前縁
に略Ｖ字状の糸受部１５を形成しており、広い面積の糸
受部１５で糸３０を受け入れて縦片１３間に進入させる
ことができるので、糸通しがさらに楽になる。また、縦
片１３の側縁に糸外れ防止突起１６が設けられるので、
縦片１３間に挟んだ糸３０の上下移動を規制して糸外れ
を防止することができる。また、支軸９に切られた雌ね
じ１０に調整ナット２４を螺合するので、調整ナット２
４のねじ込み量を調整することによってバネ２２の弾発
力を調整し、もって各糸案内部材１２に通された全ての
糸３０に付与する張力を同時に調整することができる。
また、取付壁３によって縦片１３の回転が規制されるの
で、糸案内部材１２を、常に糸受部１５が手前に位置し
た所定の姿勢に保つことができる。

【００１９】なお、本発明は前記実施例の構成に限定さ
れるものではなく、例えば次のように発明の趣旨から逸
脱しない範囲で適宜変更して具体化することもできる。 （１）上壁５を備えないブラケットを用いれば、糸通し
孔８に糸３０を通す手間が省ける。 （２）糸道装置４１に配設された第二張力付与機構付き
糸案内具４３を排除し、第一張力付与機構付き糸案内具
１に通された糸３０をそのまま糸調子４４に巻き掛けて
もよい。 （３）２つのバネ２２のいずれか一方は省略してもよ
い。

【００２０】

【発明の効果】以上詳述したように、請求項１のミシン
の張力付与機構付き糸案内具は、複数本の糸を案内する
複数の糸案内部材を備えていながら横方向の全長を小さ
く抑えることができ、糸案内部材に糸を通し易くでき、
部品点数を減らしてコストダウンを図ることもできると
いう優れた効果を奏する。上記効果に加え、請求項２の
ミシンの張力付与機構付き糸案内具は、糸通しをさらに
楽にできるという優れた効果を奏する。また、請求項３
のミシンの張力付与機構付き糸案内具は、糸案内部材に
通した糸の糸外れを防止することができるという優れた
効果を奏する。また、請求項４のミシンの張力付与機構
付き糸案内具は、各糸に付与する張力を同時に調整する
ことができるという優れた効果を奏する。また、請求項
５のミシンの張力付与機構付き糸案内具は、糸案内部材
の回転を規制することができるという優れた効果を奏す
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明を具体化した張力付与機構付き糸案内具
を示す、図２の要部拡大底面図である。

【図２】同糸立用糸案内等の正面図である。

【図３】同糸立用糸案内の組立時における部分斜視図で
ある。

【図４】従来の糸立用糸案内等を示す正面図である。

【図５】同糸立用糸案内を示す、図４の要部拡大斜視図
である。

【符号の説明】

１ 第一張力付与機構付き糸案内具 ３ 取付壁 ９ 支軸 １０ 雌ねじ １２ 糸案内部材 １３ 縦片 １５ 糸受部 １６ 糸外れ防止突起 ２０ スペーサ ２２ バネ ２４ 調整ナット ３０ 糸

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 横方向に延びる支軸の外周に、２枚の縦
   片が合わされてなり該縦片間に糸を挟むための少なくと
   も２つの糸案内部材と、前記糸案内部材間に配されて糸
   案内部材の相互間隔を保つ少なくとも１つのスペーサ
   と、最も端に位置する前記糸案内部材を反対の端の方向
   へ付勢する少なくとも１つのバネとを、横方向の移動可
   能に挿通してなるミシンの張力付与機構付き糸案内具。
2. 【請求項２】 前記糸案内部材の２枚の縦片の手前縁
   を、略Ｖ字状に開くように曲げて糸受部とした請求項１
   記載のミシンの張力付与機構付き糸案内具。
3. 【請求項３】 前記糸案内部材の２枚の縦片の側縁に、
   互いの側縁を抱き合うように突出する糸外れ防止突起を
   設けた請求項１記載のミシンの張力付与機構付き糸案内
   具。
4. 【請求項４】 前記支軸の端部に雌ねじを切り、該雌ね
   じに前記バネの弾発力を調節するための調整ナットを螺
   合した請求項１記載のミシンの張力付与機構付き糸案内
   具。
5. 【請求項５】 前記糸案内部材の２枚の縦片を角形に形
   成し、該縦片の奥縁から０．１〜２．０ｍｍ後方に壁を
   設けた請求項１記載のミシンの張力付与機構付き糸案内
   具。