JPH09206765A - 湿式酸化方法 - Google Patents
湿式酸化方法Info
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Abstract
リ水溶液廃水の湿式酸化において、酸化操作の安全性お
よび酸化反応の効率的な進行を確保するための簡便な方
法を提供する。 【解決手段】 アルカリ水溶液廃水の中和滴定によりp
Hが約9になるまでに要した強酸の当量数AおよびpH
が約4になるまでに要した強酸の当量数Bが式〔I〕 2A−B > 0 ・・・・・・〔I〕 の関係を満足することを特徴とする湿式酸化方法。
Description
サ、ブタン、エタンなどの軽質炭化水素を熱分解して得
られるエチレン、プロピレンなどの炭化水素流体中に含
まれる硫黄化合物を、アルカリ水溶液により吸収除去す
る際の排出液、いわゆる廃ソーダを湿式酸化する方法に
関するものである。
分解または接触改質等により処理するとき、硫黄分は主
として硫化水素に転換される。硫化水素は、例えば分解
生成物のその後の精製工程において触媒毒等の有害な作
用を及ぼすために除去する必要がある。工業的な除去法
としては、アルカリ水溶液と接触させて吸収除去する方
法が一般的に用いられている。アルカリ水溶液を用いた
洗浄操作から排出されるアルカリ水溶液廃水は、通常廃
ソーダと呼ばれ、吸収した硫化水素による強い悪臭を有
し、また化学的酸素要求量(COD)の値も高い。すな
わち、単にアルカリ水溶液に吸収させるのみでは、吸収
液が環境変化により酸性に変化したとき液中から硫化水
素が遊離するなどの問題を生ずる。このため公害防止の
見地から、悪臭の除去とCOD値の低減を目的とする除
害操作が必要となる。
従来提案されている方法の中では、水が液相を保持し得
る条件において分子状の酸素と接触させて酸化する方
法、すなわち湿式酸化法が工業的には好ましい方法と考
えられている。この方法は、硫化水素の硫黄原子をより
高い酸化状態へ酸化するものであり、その結果、吸収液
が酸性に変化しても硫化水素が遊離することはない。し
かしながら、酸化により硫黄原子の酸化状態が高くなる
と同時に、酸化終了後の廃水のpHは低下する可能性が
あり、低いpHにおいては酸化反応器の腐食を招く懸念
がある。
が提案されている。例えば、特開平4−338285号
公報には、廃ソーダ液中に含まれる各種物質を分析し、
酸化により生成する硫酸を中和するために必要なアルカ
リの量を硫化水素や炭酸の1次および2次解離定数を基
礎にして計算で求め、その結果に基づいて湿式酸化工程
の原液に不足分のアルカリを加える方法が提案されてい
る。すなわち、同公報が開示する方法は、予め廃ソーダ
の分析により全アルカリ度、全硫化物、メルカプタン、
COD、チオ硫酸塩、全炭酸塩およびpHを測定し、文
献等から得られる硫化水素や炭酸の1次および2次解離
定数に基づいて、全硫化物の量を硫化物と水硫化物に分
離し、また全炭酸塩の量を炭酸塩と重炭酸塩とに分離し
てそれぞれ算出し、pHから存在する苛性ソーダ量を算
出し、湿式酸化反応の過程で消費されるアルカリ度を予
想し、必要に応じて適宜不足分のアルカリをアルカリ水
溶液廃水に添加する方法を開示している。この方法は、
湿式酸化の過程で酸の発生源となり得る水硫化物の量を
算出し、発生した酸により被処理廃水を酸性に変化させ
ないための必要最小限のアルカリ量を求めるものであ
る。しかしながら、アルカリ度の定量および硫化物の定
量の基礎として、硫化水素や炭酸の解離定数を用いた計
算方法を採用しているため、安全性確認の信頼性はこれ
らの解離定数の精度に左右されることになる。一般に種
々の物質の解離定数として各種の異なる数値が公表され
ていることはよく知られており、操作の安全性に対する
予測が採用する解離定数によって左右されるため、不確
実さは避けられない。また、解離定数は温度や圧力の関
数でもあるため、これらの点も考慮しなければ確実性は
さらに低下する。特開平7−979号公報に記載された
技術も、同様に硫化水素や炭酸の解離定数を用いた計算
方法を採用して湿式酸化を行うものであり、上記と同様
の問題を有している。
ては、上記のような被処理流体の酸性度の上昇による腐
食防止を予測することの重要性に加え、CODの除去効
率を上げることも重要である。すなわち、本発明に用い
る廃ソーダにおいてアルカリ水溶液中に吸収された硫黄
分は、硫化ナトリウムおよび水硫化ナトリウムとして平
衡状態で存在するが、無触媒下でこれらの硫黄分を湿式
酸化するとき、それぞれ下記のようにチオ硫酸ナトリウ
ムを経て2段階の反応が進行する。
間段階であるチオ硫酸ナトリウムの酸化が速やかに進行
するためには、反応系にOH-イオンが存在することが
必要である。反応形式は、工業的な実施形態としてバッ
チ式よりも連続式の方が優れていることは明らかである
が、連続方式を用いる場合には、限られた時間内に反応
を進行させることが特に必要であるため、反応速度は大
きいほど有利である。従って、廃ソーダの組成が反応を
速やかに進行させる上で好適な状態にあるか否かを事前
に把握しておくことが重要である。
物質として硫化水素および二酸化炭素を吸収したアルカ
リ水溶液廃水の湿式酸化において、酸化操作の安全性お
よび酸化反応の効率的な進行を確保するための簡便な方
法を提供することを目的とする。
は、主たる酸性物質として硫化水素および二酸化炭素を
含む炭化水素流体にアルカリ水溶液を接触させ酸性物質
を吸収させてなるアルカリ水溶液廃水を、分子状酸素に
より酸化する湿式酸化方法において、アルカリ水溶液廃
水の中和滴定によりpHが約9になるまでに要した強酸
の当量数AおよびpHが約4になるまでに要した強酸の
当量数Bが式〔I〕 2A−B > 0 ・ ・ ・ ・ ・ ・〔I〕 の関係を満足することを特徴とする湿式酸化方法に関す
るものである。本発明の第2は、上記本発明の第1にお
いて、前記アルカリ水溶液が苛性ソーダ水溶液であるこ
とを特徴とする湿式酸化方法に関する。本発明の第3
は、上記本発明の第1において、湿式酸化を連続流通式
の装置により実施することを特徴とする湿式酸化方法に
関する。
性物質として硫化水素および二酸化炭素を含む炭化水素
流体とは、炭化水素からなる液状、気体状またはこれら
の混合相からなる流体であり、例えば硫黄分を含むナフ
サ、ブタン、エタンなどの軽質炭化水素を、エチレン、
プロピレンなどのオレフィン製造のために熱分解または
接触分解する工程から得られるエチレンなどの非凝縮性
オレフィンを含むガスが挙げられる。上記の軽質炭化水
素は、硫黄、酸素などを含み、これらの元素は熱分解さ
れることにより硫化水素および二酸化炭素となってエチ
レンなどの非凝縮性オレフィンガスに混入する。通常、
これらのほかに水素ガスやアセチレン等も混入している
が、酸性物質としては、硫化水素および二酸化炭素が主
たるものである。
等の芳香族炭化水素の増産またはオクタン価向上などの
ために石油類を改質する工程から得られる改質ガソリン
やC6〜C10留分などの芳香族留分も、硫黄、酸素など
を含み、これらの元素は改質操作により硫化水素および
二酸化炭素となって炭化水素留分中に混入している。さ
らにまた、例えばC8芳香族炭化水素の異性化工程から
得られる芳香族炭化水素留分も、同様に酸性物質として
主として硫化水素および二酸化炭素を含むものであり、
本発明の炭化水素流体として例示される。
のは、前記ナフサ、ブタン、エタンなどの硫黄分を含む
軽質炭化水素をエチレン、プロピレンなどのオレフィン
製造のために熱分解または接触分解する工程から得られ
るエチレンなどの非凝縮性オレフィンを含むガスであ
る。これらに含まれる酸性物質の主なものは、硫化水素
と二酸化炭素である。メルカプタンやカルボン酸等の酸
性物質は少ない。エチレンなどのオレフィンガスは、精
製の過程でアセチレンなどの高度不飽和炭化水素を除去
するため選択的水素添加工程に供されるのであるが、そ
の際にオレフィンガス中に共存する硫化水素は、水素添
加触媒の触媒毒になることがある。触媒毒となる硫化水
素を除去するためには、スクラバーにおいてオレフィン
ガスをアルカリ水溶液で洗浄し、硫化水素をアルカリ水
溶液中に吸収させる。この際、オレフィンガス中の二酸
化炭素などの酸性物質も同時にアルカリ水溶液に吸収除
去される。通常、スクラバーの洗浄液としては、苛性ソ
ーダ、苛性カリ、アンモニアなどのアルカリ、好ましく
は苛性ソーダのような強塩基の水溶液が用いられる。な
お、スクラバーにおいては、洗浄液が酸性となって硫化
水素が遊離することを防止するために、通常、炭化水素
流体中の酸性物質の量に比べて洗浄液中のアルカリを過
剰にする。以下、スクラバーにおいて苛性ソーダ水溶液
で洗浄することにより得られるアルカリ水溶液廃水を例
にとり本発明の湿式酸化を説明する。
や二酸化炭素を吸収したアルカリ水溶液廃水中では、硫
黄分は硫化ナトリウムと水硫化ナトリウムとして平衡関
係を保持しながら存在し、通常チオ硫酸ナトリウムは実
質的に検出されない。また酸性物質として吸収される二
酸化炭素は実質上炭酸ナトリウムとして存在し、重炭酸
ナトリウムの形では存在しない。スクラバーからのアル
カリ水溶液廃水には、僅かではあるが油状の炭化水素が
含まれることがあるため、一般には湿式酸化処理に供す
る前に抽出分離等の前処理を行う。従って、油状の炭化
水素は通常、実質的に湿式酸化に影響を与えない程度ま
で除去されている。本発明の湿式酸化方法においても、
このようなアルカリ水溶液廃水を湿式酸化の対象とす
る。
原料のアルカリ水溶液廃水について、あらかじめ強酸の
水溶液を中和試薬として常法により中和滴定を行う。上
記の中和滴定において、原料廃水のpHが約9になるま
でに要する強酸の当量数(A)と、中和滴定により原料
廃水のpHが約4になるまでに要する強酸の当量数
(B)とを求める。この際、同一の原料廃水について連
続した滴定操作により当量数AおよびBを求めることも
できるが、別個の原料廃水を滴定して、AおよびBを別
々に求めてもよい。別個に行うときは、試料容量を同一
の値に換算して当量数を求める。
和滴定で測定される成分は、苛性ソーダ(廃ソーダ1リ
ットル当たりaモルとする)、硫化ナトリウム(同bモ
ルとする)、水硫化ナトリウム(同cモルとする)およ
び炭酸ソーダ(同dモルとする)である。これらの各成
分を塩酸により中和する場合の反応は、以下の各式で表
される。
められる酸の当量数(A)は、上記式の第(1)項にお
いて表される3種の中和反応により消費される酸の合計
である。また、pH約4までの中和滴定により求められ
る酸の当量数(B)は、上記式の第(1)項および第
(2)項で表される5種の中和反応により消費される酸
の合計である。すなわち、本発明の中和滴定において得
られる当量数AおよびBは、各成分の含有量a、b、c
およびdにより以下の通り表される。 A=a+b+d B=a+2b+c+2d 上の2式から下記式〔II〕が得られる。 2A−B=a−c ・ ・ ・ ・ ・ ・〔II〕 この結果から、2A−Bの値は、廃ソーダ中の苛性ソー
ダの量(a)と水硫化ナトリウムの量(c)との差を表
すことが判る。
結果から得られる2A−Bの値について考察する。 (i)2A−B=0の場合(a=c) この場合には、アルカリ水溶液廃水中に苛性ソーダと水
硫化ナトリウムとが等モル量で存在する。従って、前記
水硫化ナトリウムの酸化反応式から判るように、水硫化
ナトリウムの酸化が最終段階まで到達するために必要な
OH-イオンが過不足なく存在しており、酸化が硫酸ナ
トリウムの段階まで進行する。しかしながら、酸化反応
の中間段階であるチオ硫酸ナトリウムの酸化を速やかに
進行させるためには、OH-イオンはさらに過剰に存在
する方が好ましい。 (ii)2A−B<0の場合(a<c) この場合には、アルカリ水溶液廃水中の苛性ソーダのモ
ル数が水硫化ナトリウムのモル数より少ない。そのた
め、水硫化ナトリウムの酸化は、酸化反応の条件によっ
て、チオ硫酸ナトリウムの段階で停止するか、更に進行
して硫酸ナトリウムまで変化し、その結果酸化被処理水
が酸性になり、装置の腐食という問題が生ずることにな
る。
るまでに要した強酸の当量数をAとし、またpHが約4
になるまでに要した強酸の当量数をBとして、AとBと
が式〔I〕:2A−B>0 の関係を満足するアルカリ水
溶液廃水を用いて酸化を行う本発明の方法によれば、反
応上必要なアルカリ性を確実に維持することができ、ま
た反応効率の点からも有利である。当量数Aを求める中
和滴定は、pHが約9で変色する通常の指示薬を用いて
行うことができる。これらの指示薬の具体例としては、
pH8.3〜10.0の範囲で変色するフェノールフタレ
イン、チモールフタレイン等を挙げることができる。ま
た当量数Bを求める中和滴定は、pHが約4で変色する
通常の指示薬を用いて行うことができる。これらの指示
薬の具体例としては、pHが3.1〜4.4の範囲で変色
するメチルオレンジを挙げることができる。中和滴定
は、上記指示薬を用いる方法のほかに、pHの変化から
当量数を求める電動度による方法で行うこともできる。
滴定に用いる強酸としては、硫酸、硝酸、塩酸などが挙
げられ、好ましくは塩酸であり、水溶液の形態で用いら
れる。また、当量数Bを求める滴定操作の終点付近にお
いては、中和液を煮沸加熱し、中和によって発生する二
酸化炭素と硫化水素とを放出させる等の考慮が必要とな
る。
る。例えば、以下の手順により行う。なお、原料廃水以
外の水としては、いずれも脱イオン水を使用した。試薬
はいずれも試薬特級である。 (中和滴定手順) (1)中和滴定装置 300mlのフラスコ、 ビューレット (2)中和滴定試薬 (a)0.5N塩酸水溶液: 50mlの濃塩酸を1リ
ットルの水に希釈することにより調製し、炭酸ナトリウ
ムにより標定する。 (b)指示薬 フェノールフタレイン: 0.1%溶液 メチルオレンジ: 0.1%溶液 (3)滴定法 300mlフラスコに、適当量(例えば、10ml)の
試料を入れ、さらに約50ccの水を加え、3滴のフェ
ノールフタレインを加えた後に0.5N塩酸水溶液で滴
定を開始する。フェノールフタレインによるピンク色が
消えた点を終点として、それまでの滴定に要した0.5
N塩酸水溶液の塩酸の当量数をAとする。次いで、3滴
のメチルオレンジを加えて、滴定をさらに継続する。赤
色からオレンジ色に変わった点を終点とし、滴定開始か
ら、メチルオレンジ試薬による滴定終了までに要した
0.5N塩酸水溶液の塩酸の当量数をBとする。後段の
滴定操作の終点付近においては、中和液を適宜に煮沸加
熱し、中和によって発生する二酸化炭素と硫化水素とを
放出させ、必要の場合はさらに滴定を継続して終点に到
達させる。
に中和滴定を行い、式〔II〕:2A−Bにより計算され
る値が零または負のときは、上式の値が正になるように
適宜にアルカリを原料廃水に添加する。AとBとが式
〔I〕:2A−B>0の関係を満足するときは、そのま
ま酸化反応に供する。添加するアルカリは特に限定され
ないが、例えば、苛性ソーダ、苛性カリ、アンモニアな
どが挙げられ、好ましくは苛性ソーダであり、これらを
水溶液の形態で添加する。添加する場所は、原料廃水が
湿式酸化反応器に入る前の任意の箇所とすることができ
る。本発明においては、AとBとが式〔I〕:2A−B
>0の関係を満足する場合に、アルカリをさらに添加す
ることを排除するものではない。しかしながら、2A−
Bの値が著しく大きな正の数である場合には、酸化終了
後の液を中和して排出しようとするときに中和剤の使用
量が過大となる。従って、通常は廃水1リットル当たり
の2A−Bの値が1.5を越えないようにすることが好
ましい。この場合に、希硫酸などの酸を加えることによ
って2A−Bの値が1.5を越えないようにすることも
可能である。
ように、通常アルカリの量を炭化水素流体中の酸性物質
の量よりも過剰になるように調整するが、そのために酸
性物質の含有量が変動する場合に備えて、アルカリ添加
量の調整設備が設置されている。従って、スクラバーの
洗浄液のアルカリ度を調整する際に、この設備を利用し
て追加のアルカリも併せて添加することが好ましい。も
ちろん、前記特開平4−338285号公報に記載され
ているように、酸化反応器の前に別途に設備を設けて添
加することも可能である。
たは空気などの分子状酸素を含む気体を、高温、高圧下
で硫化物の水溶液と接触させることにより、硫化物を酸
化して硫酸ナトリウムとする。反応温度は、150〜3
50℃、好ましくは150〜230℃の範囲である。ナ
フサ等の熱分解炉(ナフサクラッカー)から得られるガ
スにおいては、元来炭化水素類の含有量は少ない。しか
しながら、少量であっても洗浄廃水中に炭化水素類が混
入すると、酸化反応が不安定になるなどの問題が生ず
る。従って、炭化水素類などの酸化可能な有機物は、予
め抽出操作などの適宜の除去手段により除去することが
好ましい。ただし、有機物が混入していても実質的に酸
化が進行しないように、低温で反応を行うことが好まし
い。例えば150〜230℃で行うことが適当であり、
好ましくは150〜210℃である。この範囲の温度で
あれば、硫化ナトリウムは十分に酸化され硫酸ナトリウ
ムになる。
であればよく、例えば1〜1,000kg/cm2の範囲から
任意に選択することができる。原料のアルカリ廃水と接
触させるべき分子状酸素としては、酸素ガス、空気また
はこれらの混合ガスが用いられる。反応形式は特に限定
されず、バッチ式の反応器も採用することができるが、
好ましくは連続流通式である。従って、原料廃水は連続
的に酸化反応器に導入され、また分子状酸素も連続的に
反応器に導入される。このような連続流通式の反応形式
は、前述のように工業的な実施形態を想定すると、明ら
かにバッチ式よりも優れている。連続流通式の場合、廃
ソーダ液の流量は、例えば0.1〜1,000l/hr の範
囲から、また分子状酸素を含むガスは0.001〜1,0
00Nm3/hr の範囲からそれぞれ選択することができ
る。
処理済み液との熱交換を行う熱交換器を設置することに
より、酸化反応から発生する熱を回収することができ
る。酸化反応器自体の構造は、特に制限はなく、公知の
ものを用いることができる。例えば、特公昭55−41
158号公報に記載されているように、反応器下部から
内筒内部へ酸素含有ガスを導入し、内筒内部を上昇する
ガス流の流動を利用して内筒の内部から外部(外筒/内
筒の間隙)へ液循環させる二重円筒型反応器は、本質的
に本発明の方法に適したものであり、熱交換器を設ける
必要性が少なく有利である。ただし、二重円筒型反応器
による場合においても、適宜に熱交換器を設置すること
ができる。なお、本発明の湿式酸化においては、特に触
媒を使用する必要はなく、無触媒で行うことが好まし
い。しかしながら、本発明の効果を発揮する限り、触媒
を使用することもできる。湿式酸化の終了後は、処理済
み液をそのまま、または適宜の水により希釈し、もしく
は適宜の酸により中和して系外へ排出する。
的に説明する。なお、実施例および比較例における中和
滴定は、いずれも前記の中和滴定手順に従って行った。
16グラムおよび水硫化ナトリウム11.9グラムを純
水で溶解して1リットルとしたモデル廃ソーダ水溶液を
調整した。得られた水溶液について中和滴定を行ったと
ころ、フェノールフタレイン指示薬により A=0.22
6当量/リットル、およびメチルオレンジ指示薬により
B=0.460当量/リットルの値を得た。すなわち、
前記式〔II〕:2A−Bは負の値であった。次いで、上
記のモデル廃ソーダ水溶液を、温度180℃、圧力35
気圧の空気により1時間湿式酸化を行ったところ、残存
S--イオンは7ppm のレベルまで低下していたが、酸化
反応の中間段階であるチオ硫酸ナトリウムが0.7%検
出され、湿式酸化が不十分であった。
苛性ソーダ8.89グラムおよび水硫化ナトリウム11.
9グラムを純水で溶解して1リットルとしたモデル廃ソ
ーダ水溶液を調整した。得られた水溶液について中和滴
定を行ったところ、フェノールフタレイン指示薬により
A=0.244当量/リットル、およびメチルオレンジ
指示薬によりB=0.478当量/リットルの値を得
た。すなわち、前記式〔II〕:2A−Bは正の値であっ
た。次いで、上記のモデル廃ソーダ水溶液について、温
度180℃、圧力35気圧の空気により1時間湿式酸化
を行ったところ、残存S--イオンおよびチオ硫酸ナトリ
ウムは検出されず、湿式酸化が完全に終了していた。ま
た湿式酸化後の処理済みの反応液のpHは11.9であ
り、酸による装置の腐食が問題とならないレベルであっ
た。
性ソーダ22.4グラム、水硫化ナトリウム77.6グラ
ムおよび硫化ナトリウム9.1グラムを純水で溶解して
1リットルとしたモデル廃ソーダ水溶液を調整した。得
られた水溶液について中和滴定を行ったところ、フェノ
ールフタレイン指示薬により A=0.727当量/リッ
トル、およびメチルオレンジ指示薬により B=2.27
9当量/リットルの値を得た。すなわち、前記式〔I
I〕:2A−Bは負の値であった。次いで、上記のモデ
ル廃ソーダ水溶液について、温度180℃、圧力35気
圧の空気により1時間湿式酸化を行ったところ、残存S
--イオンは7ppm のレベルまで低下していたが、酸化反
応の中間段階であるチオ硫酸ナトリウムが6.4%検出
され、湿式酸化の達成度が不十分であった。
クラッカーから得られるエチレン、水素、硫化水素およ
び二酸化炭素を主として含むガスを、アルカリ水溶液に
よりスクラバーで洗浄した。スクラバーで用いた洗浄液
は、苛性ソーダ水溶液である。硫化水素および二酸化炭
素を吸収した後のアルカリ水溶液廃水はアルカリ性を示
した。メルカプタン類およびチオ硫酸類は実質的に含ま
れていない。分離が不十分なために同伴された油状の炭
化水素類は、別途抽出操作により除去した。 (湿式酸化)上記スクラバーにおけるソーダ洗浄塔から
の洗浄廃液について中和滴定を行った結果、フェノール
フタレイン指示薬により A=0.926当量/リット
ル、およびメチルオレンジ指示薬により B=1.840
当量/リットルの値が得られた。すなわち、前記式〔I
I〕:2A−Bは正の値であった。この洗浄廃液につい
て実施例1と同様にして湿式酸化を行ったところ、被処
理液の残存S--イオンは6ppm まで低下しており、pH
も11.9であり、酸による腐食の心配のないことが確
認された。
らのC8炭化水素を主とする芳香族留分中の硫黄分を除
去するためにソーダ水溶液で洗浄を行い、ソーダ洗浄塔
からの洗浄廃液について中和滴定を行った。その結果、
フェノールフタレイン指示薬によりA=0.418当量
/リットル、およびメチルオレンジ指示薬により B=
0.848当量/リットルの値が得られた。すなわち、
前記式〔II〕:2A−Bは負の値であった。この洗浄廃
液について実施例1と同様にして湿式酸化を行ったとこ
ろ、被処理流体の残存S--イオンは8ppm のレベルにま
で低下していたが、酸化反応の中間段階であるチオ硫酸
ナトリウムが検出され、さらにpHも7.9まで低下し
ていた。なお、洗浄廃液中にわずかに含まれる油状炭化
水素は、湿式酸化の前に重質異性化留分による抽出を行
って分離除去した。また、別に化学分析を行い、C8芳
香族留分に含まれる酸性物質は主として硫化水素と二酸
化炭素であることを確認した。
いることによって、安全かつ簡便に、しかも効率よく操
業し得る廃ソーダの湿式酸化方法を提供することができ
る。前記特開平4−338285号公報等で提案されて
いる解離定数に基づいて計算する方法は、解離定数の不
確実さが問題になると共に、現時点では高アルカリ領域
における反応解析や分析手段が不十分であるため、一見
理論的ではあるが、信頼性に優れた手法とはいい難い。
これに対し本発明は、特定の廃水について本発明者らが
長年の実機経験に基づいて確立したものであり、簡便で
ある上に極めて確実な方法である。
Claims (3)
- 【請求項1】 主たる酸性物質として硫化水素および二
酸化炭素を含む炭化水素流体にアルカリ水溶液を接触さ
せ該酸性物質を吸収させてなるアルカリ水溶液廃水を、
分子状酸素により酸化する湿式酸化方法において、該ア
ルカリ水溶液廃水の中和滴定によりpHが約9になるま
でに要した強酸の当量数AおよびpHが約4になるまで
に要した強酸の当量数Bが式〔I〕 2A−B > 0 ・ ・ ・ ・ ・ ・〔I〕 の関係を満足することを特徴とする湿式酸化方法。 - 【請求項2】 前記アルカリ水溶液が苛性ソーダ水溶液
であることを特徴とする請求項1に記載の湿式酸化方
法。 - 【請求項3】 前記湿式酸化を連続流通式の装置により
実施することを特徴とする請求項1に記載の湿式酸化方
法。
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