JPH09195153A - 面ファスナ雌材用不織布およびその製造方法 - Google Patents

面ファスナ雌材用不織布およびその製造方法

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JPH09195153A
JPH09195153A JP8004428A JP442896A JPH09195153A JP H09195153 A JPH09195153 A JP H09195153A JP 8004428 A JP8004428 A JP 8004428A JP 442896 A JP442896 A JP 442896A JP H09195153 A JPH09195153 A JP H09195153A
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woven
hook
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JP8004428A
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Katsunori Suzuki
克昇 鈴木
Tetsuo Asano
哲男 浅野
Nobuo Noguchi
信夫 野口
Michiyo Iimi
美智代 飯見
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Unitika Ltd
Original Assignee
Unitika Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 面ファスナの雌材を不織布で構成す
るとともにこの不織布表面の任意の箇所に面ファスナ雄
材を接合させることができ、したがって、この雄材を取
り付けるべき接合対象の特定箇所にこの雄材を固定する
だけで面ファスナとしての機能をなし、使用目的に適宜
対応できる面ファスナ雌材用不織布を提供する。 【解決手段】 長繊維不織ウエブ層と短繊維不織ウ
エブ層とを積層して積層不織ウエブを形成し、次いでこ
の積層不織ウエブを移動する10〜20メッシュの多孔
性支持板上に載置して加圧液体流処理を施し、長繊維不
織ウエブ層の構成繊維と短繊維不織ウエブ層の構成繊維
とを相互に三次元的に交絡させるとともに短繊維不織ウ
エブ層の構成繊維同士を三次元的に交絡させ、同時に、
積層不織ウエブに面積0.5〜3.0mm2 の孔を配設
密度15〜60個/cm2 で設けて、面ファスナ雌材用
不織布を得る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、フック部を有する
雄材に対して着脱自在に接合できる面ファスナ雌材用不
織布に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、面ファスナは、突起部分が屈曲し
てなるフック部を有する雄材とループが形成された雌材
とを、それぞれ、接合させようとする二つの面にあらか
じめ接着あるいは縫製により固定させておき、この雄材
のフック部を雌材のループに引っ掛けることにより脱着
自在に接合させるものであった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】このような従来の面フ
ァスナでは、例えばカーテンの接続やジャケットへのフ
ードカバーの取り付けのように対で用いる場合、また
は、例えば布団カバーの出し入れ口やカバンのふたの止
め具のように雄材および雌材を固定する箇所が限定され
る場合には便利であったが、例えば電車や飛行機の座席
にヘッドレストカバーを取り付ける場合のように接合す
る一方の箇所が不特定である場合や、ベルトの止め具の
ように接合する箇所を任意に変化させ得る自由度が要求
される場合の用途には対応できないという問題があっ
た。
【0004】本発明はこのような問題を解決するもの
で、面ファスナの雌材を不織布で構成するとともにこの
不織布表面の任意の箇所に面ファスナ雄材を接合させる
ことができ、したがって、この雄材を取り付けるべき接
合対象の特定箇所にこの雄材を固定するだけで面ファス
ナとしての機能をなし、使用目的に適宜対応できる面フ
ァスナ雌材用不織布を提供することを目的とするもので
ある。
【0005】
【課題を解決するための手段】この課題を解決するため
に本発明の面ファスナ雌材用不織布は、長繊維不織ウエ
ブ層と短繊維不織ウエブ層とが積層されてなる面ファス
ナ雌材用不織布であって、長繊維不織ウエブ層の構成繊
維と短繊維不織ウエブ層の構成繊維とが相互に三次元的
に交絡するとともに短繊維不織ウエブ層の構成繊維同士
が三次元的に交絡しており、かつ面積0.5〜3.0m
2 の孔が配設密度15〜60個/cm 2 で少なくとも
長繊維不織ウエブ層の表面に配設されてなることを要旨
とする。
【0006】また、本発明の面ファスナ雌材用不織布の
製造方法は、長繊維不織ウエブ層と短繊維不織ウエブ層
とを積層して積層不織ウエブを形成し、次いでこの積層
不織ウエブを移動する10〜20メッシュの多孔性支持
板上に載置して加圧液体流処理を施し、長繊維不織ウエ
ブ層の構成繊維と短繊維不織ウエブ層の構成繊維とを相
互に三次元的に交絡させるとともに短繊維不織ウエブ層
の構成繊維同士を三次元的に交絡させ、同時に、積層不
織ウエブに面積0.5〜3.0mm2 の孔を配設密度1
5〜60個/cm2 で設けることを要旨とする。
【0007】さらに、本発明の面ファスナ雌材用不織布
の製造方法は、長繊維不織ウエブ層に、積層前にエンボ
スロールを用いてあらかじめ部分的な熱圧接を施し、か
つこの際にエンボスロールの表面温度を長繊維不織ウエ
ブ層の構成繊維の融点よりも30〜60℃低くし、エン
ボスロールの線圧を5〜50kg/cmとすることを要
旨とする。
【0008】以上のように、本発明の面ファスナ雌材用
不織布は、10〜20メッシュ(10〜20本/1イン
チ)のネットからなる多孔性支持板を用いて加圧液体流
処理を施すことによって、面積0.5〜3.0mm2
孔が配設密度15〜60個/cm2 で配設されてなるこ
とから、面ファスナとして用いた際にこの孔が雌材のル
ープの働きをなし、雄材のフック部がこの孔に引っ掛か
ることによって、着脱自在に接合させることができるも
のである。
【0009】また、本発明の面ファスナ雌材用不織布
は、長繊維不織ウエブ層の構成繊維と短繊維不織ウエブ
層の構成繊維とが相互に三次元的に交絡するとともに短
繊維不織ウエブ層の構成繊維同士が三次元的に交絡する
ことにより全体として一体化された不織布であるので、
面ファスナ雌材用の布帛として好適な柔軟性を具備し得
るものである。
【0010】さらに、本発明においては、面ファスナ雌
材用不織布を製造する際に、長繊維不織ウエブ層に、積
層前にエンボスロールを用いてあらかじめ部分的な熱圧
接を施し、かつこの際にエンボスロールの表面温度を長
繊維不織ウエブ層の構成繊維の融点よりも30〜60℃
低くし、エンボスロールの線圧を5〜50kg/cmと
することによって、三次元的交絡処理を施す際の長繊維
不織ウエブ層の形態保持性を向上させることができる。
【0011】本発明によれば、不織布の表面全体にわた
りループに代わる孔を備えて面ファスナの雌材として機
能し得ることから、不織布の任意の箇所に面ファスナ雄
材を接合させることができ、したがって、この雄材を取
り付けるべき接合対象の特定箇所にこの雄材を固定する
だけで面ファスナとしての機能をなし、使用目的に適宜
対応できる面ファスナ雌材用不織布を提供することがで
きる。
【0012】
【発明の実施の形態】まず、本発明の面ファスナ雌材用
不織布について説明する。本発明に適用される長繊維不
織ウエブ層を構成する長繊維は、繊維形成性を有するポ
リオレフィン系重合体、ポリエステル系重合体、または
ポリアミド系重合体からなるものである。
【0013】ポリオレフィン系重合体としては、炭素原
子数2〜18の脂肪族α−モノオレフィン、例えば、エ
チレン、プロピレン、1−ブテン、1−ドデセン、1−
オクタデセンからなるホモポリオレフィン重合体が挙げ
られる。この脂肪族α−モノオレフィンは、他のエチレ
ン系不飽和モノマー、例えばブタジエン、イソプレン、
1,3−ペンタジエン、スチレン、α−メチルスチレン
のような類似のエチレン系不飽和モノマーが共重合され
たポリオレフィン系共重合体であっても良い。また、ポ
リエチレン系重合体の場合には、エチレンに対してプロ
ピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンまた
は類似の高級α−オレフィンが10重量%以下の範囲で
共重合されたものであっても良く、ポリプロピレン系重
合体の場合には、プロピレンに対してエチレンまたは類
似の高級α−オレフィンが10重量%以下の範囲で共重
合されたものであっても良い。但し、このとき、これら
の共重合物の共重合率が前記の範囲を超えると、共重合
体の融点が低下し、これら共重合体からなる不織布を高
温条件下で使用したときに、機械的特性や寸法安定性が
低下するので好ましくない。
【0014】ポリエステル系重合体としては、テレフタ
ル酸、イソフタル酸、ナフタリン−2,6−ジカルボン
酸などの芳香族ジカルボン酸、あるいはアジピン酸、セ
バチン酸などの脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエス
テル類を酸成分とし、かつ、エチレングリコール、ジエ
チレングリコール、1,4−ブタジオール、ネオペンチ
ルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール
などのジオール化合物をアルコール成分とするホモポリ
エステル重合体あるいはこれらの共重合体が挙げられ
る。なお、これらのポリエステル系重合体には、パラオ
キシ安息香酸、5−ソジウムスルホイソフタール酸、ポ
リアルキレングリコール、ペンタエリスリトール、ビス
フェノールAなどが添加あるいは共重合されていても良
い。
【0015】ポリアミド系重合体としては、ポリイミノ
−1−オキソテトラメチレン(ナイロン4)、ポリテト
ラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリカプラミ
ド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナ
イロン66)、ポリウンデカナミド(ナイロン11)、
ポリラウロラクタミド(ナイロン12)、ポリメタキシ
レンアジパミド、ポリパラキシリレンデカナミド,ポリ
ビスシクロヘキシルメタンデカナミドまたはこれらのモ
ノマーを構成単位とするポリアミド系共重合体が挙げら
れる。特に、ポリテトラメチレンアジパミドを適用する
場合、ポリカプラミドやポリヘキサメチレンアジパミ
ド、ポリウンデカメチレンテレフタラミドなどの他のポ
リアミド成分が30モル%以下の範囲で共重合されたポ
リテトラメチレンアジパミド系共重合体であっても良
い。但し、このとき、他のポリアミド成分の共重合率が
30モル%を超えると、共重合体の融点が低下し、これ
ら共重合体からなる不織布を高温条件下で使用したとき
に、機械的特性や寸法安定性が低下するので好ましくな
い。
【0016】なお、本発明において、長繊維不織ウエブ
層を構成する前記重合体には、必要に応じて、例えば艶
消し剤、顔料、防炎剤、消臭剤、光安定剤、熱安定剤、
酸化防止剤などの各種添加剤を本発明の効果を損なわな
い範囲内で添加することができる。
【0017】また、本発明に適用される長繊維不織ウエ
ブ層は、前記重合体の中から選択された2種の相異なる
重合体が、芯鞘構造や並列構造に配された複合繊維で構
成されたものであっても良い。ここで、芯鞘構造の繊維
を用いる場合は、鞘成分の融点より高い融点の成分を芯
成分として配することが肝要である。この配置が逆にな
り、芯成分に鞘成分より融点の低い成分を配したので
は、この長繊維不織ウエブにあらかじめ部分的熱圧接処
理を施す場合、鞘成分の融点以下の温度で熱処理を行っ
た際に芯部を構成する成分が熱硬化し、ひいては柔軟性
の乏しい長繊維不織ウエブ層となるので好ましくない。
【0018】本発明において、長繊維不織ウエブ層を構
成する長繊維は、単繊維繊度が1.5〜8.0デニール
であることが好ましい。単繊維繊度が1.5デニール未
満であると、得られた面ファスナ雌材用不織布の機械的
特性が低下したり、溶融紡糸工程において製糸性が低下
したりし、しかも、面ファスナ雄材との剥離を繰り返す
ことによって毛羽が生じ易くなり、雄材との接合力が劣
る傾向にあるので好ましくない。一方、単繊維繊度が
8.0デニールを超えると、得られた面ファスナ雌材用
不織布の風合いが硬くなって、柔軟性が低下する傾向に
あるので好ましくない。したがって、本発明では、この
単繊維繊度が1.5〜8.0デニール、好ましくは2.
0〜5.0デニールであるのが良い。
【0019】本発明において、長繊維不織ウエブ層は、
その目付けが10〜60g/m2 であるのが好ましい。
目付けが10g/m2 未満であると、長繊維同士の緻密
な重なりの程度が低く、この長繊維不織ウエブ層に短繊
維不織ウエブ層を積層して得られる不織布の地合いが低
下するので好ましくない。一方、目付けが60g/m 2
を超えると、この長繊維不織ウエブ層に短繊維不織ウエ
ブ層を積層して加圧液体流処理を施すに際して、長繊維
不織ウエブ層の構成繊維と短繊維不織ウエブ層の構成繊
維とが三次元的に十分に交絡せず、このため全体として
の一体化がなされないため、得られた面ファスナ雌材用
不織布から面ファスナ雄材を剥離する際に層間剥離を起
こしやすくなるので好ましくない。したがって、長繊維
不織ウエブ層の目付けは10〜40g/m2 であるのが
特に好ましい。
【0020】本発明に適用される短繊維不織ウエブ層を
構成する短繊維としては、木綿に代表される天然繊維、
パルプから得られる再生繊維のほか熱可塑性重合体から
得られる短繊維等が挙げられる。
【0021】本発明において、木綿繊維としては、晒し
の施されていないコーマ糸、晒し加工の施された晒し綿
等のほか、木綿の糸、織物または編物等から得られた反
毛を用いることができる。ここで、反毛を効果的に得る
ことができる反毛機としては、ラッグ・マシン、ノット
・ブレイカー、ガーネット・マシン、廻切機などがあ
る。用いる反毛機の種類や組合せは、反毛される布帛の
形状や、構成する糸の太さや撚りの強さなどにもよる
が、同一の反毛機を複数台直列に連結させたり、2種以
上の反毛機の組合を用いたりすると効果的である。この
反毛機による解繊率は50〜95%の範囲が好ましい。
解繊率が50%未満であると、カードウエブ中に未解繊
繊維が存在し、不織布表面にザラツキが生じるばかり
か、交絡処理の際の加圧液体流がウエブを十分に貫通せ
ずに、短繊維不織ウエブ層の構成繊維相互の交絡が不十
分となったり、長繊維不織ウエブ層の構成繊維と短繊維
不織ウエブ層の構成繊維との相互の交絡が不十分となっ
て、長繊維不織ウエブ層と短繊維不織ウエブ層とが簡単
に剥離し易くなり好ましくない。一方、解繊率が95%
を超えると、十分な不織布摩擦強度が得られないので、
好ましくない。なお、反毛の解繊率は下記の式により求
められる。 解繊率(%)=(反毛重量−未解繊物重量)×100/
反毛重量
【0022】木綿より得られる反毛の素材としては、晒
し綿よりなる織・編物や布帛のほか、染色・プリントの
施されたもの、また蛍光処理の施された織・編物等も用
いることができる。
【0023】本発明において、パルプより得られる再生
繊維としては、ビスコースレーヨン、酢酸セルロースレ
ーヨンのほか、溶剤紡出されたレーヨンであるリヨセル
等が用いられる。
【0024】本発明において、熱可塑性重合体からなる
短繊維とは、長繊維不織ウエブ層を形成する長繊維を構
成する熱可塑性合成重合体と同様の前記重合体からなる
ものである。
【0025】本発明における短繊維不織ウエブ層として
は、前記短繊維素材からなるパラレルカードウエブやラ
ンダムカードウエブやクロスレイドウエブ等を挙げるこ
とができる。ここで、短繊維素材としては、前記の中か
ら選択された単一素材からなるもののほかに、複数種の
素材が混合されてなるものであっても良い。また、この
短繊維不織ウエブ層は長繊維不織ウエブ層と同一素材か
らなるものを採用することもできる。
【0026】この短繊維不織ウエブ層は、その目付けが
10〜60g/m2 であるのが好ましい。目付けが10
g/m2 未満であると、積層不織ウエブとしたときの形
態保持性が低下するので好ましくない。一方、目付けが
60g/m2 を超えると、長繊維不織ウエブ層の構成繊
維とこの短繊維不織ウエブ層の構成繊維との三次元的交
絡およびこの短繊維不織ウエブ層の構成繊維同士の三次
元的交絡がいずれも十分に形成されず、面ファスナ雄材
との剥離を繰り返すことにより、長繊維不織ウエブ層表
面の構成繊維が剥離して毛羽立ったものとなり、雄材と
の接合力が劣ることとなり好ましくない。
【0027】本発明の不織布は、前記長繊維不織ウエブ
層に前記短繊維不織ウエブ層が積層され、長繊維不織ウ
エブ層の構成繊維と短繊維不織ウエブ層の構成繊維とが
相互に三次元的に交絡し、かつ短繊維不織ウエブ層の構
成繊維同士が三次元的に交絡してなるものである。この
ような構成において、短繊維不織ウエブ層は主として基
布として機能し、長繊維不織ウエブ層は主として雄材の
フック部を引っ掛けるための引っ掛かり部として機能す
る。例えば、短繊維不織ウエブ層を引っ掛かり部として
フック部と引っ掛けた場合、短繊維に毛羽立ちが生じ、
得られる不織布は繰り返しの脱着に耐えないものとな
る。
【0028】本発明においては、このような面ファスナ
用布帛として好適な不織布に、面積0.5〜3.0mm
2 の孔を配設密度15〜60個/cm2 で少なくとも長
繊維不織ウエブ層の表面に配設されていることが重要で
ある。この孔は、後述する加圧液体流処理によって、構
成繊維間を三次元的に交絡させるのと同時に、形成され
るものである。このような孔が多数存在することによ
り、本発明の不織布を面ファスナとして用いた際にこの
孔が雄材のフック部を引っ掛ける対象として機能し、雄
材のフック部がこの孔に引っ掛かることによって、着脱
自在に接合させることができるのである。また、この孔
は少なくとも長繊維不織ウエブ層の表面に設けられ、長
繊維不織ウエブ層側にフック部が引っ掛かることから、
前述のように、引っ掛かり部としてフック部と引っ掛け
た場合に毛羽立ちを生じることもない。
【0029】ここで、一つの孔の面積は0.5〜3.0
mm2 でなければならない。この面積が0.5mm2
満であると、孔が小さすぎるために雄材のフック部がこ
の孔に引っ掛かりにくく、一方、この面積が3.0mm
2 を超えると、孔が大きくなりすぎるために雄材のフッ
ク部は引っ掛かるものの接合力が弱く、いずれも面ファ
スナとしての十分な接合力を具備し得ないこととなる。
【0030】また、孔の配設密度は、15〜60個/c
2 でなければならない。孔の配設密度が15個/cm
2 未満であると、雄材のフック部がこの孔に引っ掛かる
確率が低くなるため、面ファスナとして接合し難くな
り、一方、孔の配設密度が60個/cm2 を超えると、
不織布としての形態安定性を損なうこととなり、いずれ
も好ましくない。
【0031】なお、孔が不織布を完全に貫通しているか
否か、あるいは貫通していない場合の孔の深さについて
は、雄材のフック部の引っ掛かりが可能である限り特に
制限はない。
【0032】次に、本発明の面ファスナ雌材用不織布の
製造方法について説明する。本発明の不織布は、例えば
スパンボンド法により形成した長繊維不織ウエブ層に、
常法により得られる短繊維不織ウエブ層を積層して積層
不織ウエブを構成し、この積層不織ウエブを移動する1
0〜20メッシュのネットからなる多孔性支持板上に載
置して加圧液体流処理を施し、長繊維不織ウエブ層の構
成繊維と短繊維不織ウエブ層の構成繊維とを相互に三次
元的に交絡させ、かつ短繊維不織ウエブ層の構成繊維同
士を三次元的に交絡させて全体として一体化させると同
時に、積層不織ウエブに面積0.5〜3.0mm2 の孔
を配設密度15〜60個/cm 2 で設けることにより、
効率良く製造することができる。
【0033】詳しくは、まず、長繊維不織ウエブ層をス
パンボンド法で製造する。すなわち、前述の繊維形成性
を有するポリオレフイン系重合体、ポリエステル系重合
体またはポリアミド系重合体を用いて溶融紡出し、紡出
されたポリマー流を冷却した後、エアサッカー等の引取
り手段を用いて牽引し、開繊し、移動する捕集面上に捕
集・堆積させて、単繊維繊度が1.5〜8.0デニール
の単繊維からなる長繊維不織ウエブ層とする。
【0034】引取り手段を用いて牽引するに際しては、
引取り速度を3000〜6000m/分とするのが好ま
しい。引取り速度が3000m/分未満であると、長繊
維の分子配向度が十分に増大しないため得られたウエブ
の機械的特性や寸法安定性が向上せず、一方、引取り速
度が6000m/分を超えると、溶融紡糸時の製糸性が
低下するため、いずれも好ましくない。
【0035】本発明においては、長繊維不織ウエブ層
に、積層前にあらかじめ部分的な熱圧接を施しておくこ
とが好ましい。これにより、この長繊維不織ウエブ層を
短繊維不織ウエブ層に積層して加圧液体流処理を施す際
に、長繊維ウエブ層の形態を良好に保持させることがで
き、また得られる不織布の機械的強度にも優れることと
なる。また、長繊維不織ウエブ層に形成された熱接着点
のうち少なくとも一部は、後に施される加圧液体流処理
によって剥離されることから、得られる不織布の柔軟性
を損なうこともない。
【0036】ここで、部分的な熱圧接とは、表面に彫刻
模様が刻印された加熱状態のロールすなわちエンボスロ
ールと、表面が平滑な加熱状態の金属ロールとの間にウ
エブを通すことにより、前記彫刻模様に該当する部分の
ウエブ構成繊維同士を熱的に接着させることをいう。
【0037】さらに詳しくは、この部分的な熱圧接が行
われた箇所は、長繊維不織ウエブ層の全表面積に対して
特定の領域を有する。すなわち、個々の熱圧接領域は、
必ずしも円形の形状である必要はないが、0.1〜1.
0mm2 の面積を有し、その密度すなわち圧接点密度が
2〜80点/cm2 、好ましくは4〜60点/cm2
ものであるのが良い。この圧接点密度が2点/cm2
満であると、熱圧接後のウエブの機械的特性や形態保持
性が向上せず、一方、圧接点密度が80点/cm2 を超
えると、長繊維不織ウエブ層の大半が熱融着されるため
柔軟性を損ない、また三次元交絡を形成する際に加圧液
体流がウエブを貫通しないため短繊維不織ウエブ層との
交絡性に劣り、面ファスナ雄材から剥離する際に層間剥
離を起こしやすくなるので好ましくない。また、長繊維
不織ウエブ層の全表面積に対する全熱圧接領域の面積の
比すなわち圧接面積率は2〜30%、好ましくは4〜2
0%とするのが良い。この圧接面積率が2%未満である
と、熱圧接後のウエブの寸法安定性が向上せず、ひいて
は、得られた面ファスナ雌材用不織布の寸法安定性が劣
り好ましくない。一方、圧接面積率が30%を超える
と、構成繊維の大半が熱融着され、長繊維不織ウエブ層
の柔軟性を損ない、また三次元交絡を形成する際に加圧
液体流がウエブを貫通しないため短繊維不織ウエブ層と
の交絡性に劣るので好ましくない。
【0038】長繊維不織ウエブに部分的な熱圧接処理を
施すに際し、エンボスロールの条件は、この長繊維を構
成する重合体の種類により適宜選択すれば良いのである
が、特に、エンボスロールの表面温度を長繊維不織ウエ
ブ層の構成繊維の融点よりも30〜60℃低くし、かつ
エンボスロールの線圧を5〜50kg/cmをとするの
が好ましい。なお、前述の如く長繊維不織ウエブが複合
長繊維によって形成されている場合には、エンボスロー
ルの表面温度を、その複合長繊維を構成する重合体のう
ち最も融点の低い重合体の融点よりも30〜60℃低い
温度とすることが好ましい。エンボスロールの表面温度
が重合体の融点よりも高い場合およびエンボスロールの
表面温度と重合体の融点との温度差が30℃未満である
場合には、加圧液体流処理を施す際に長繊維不織ウエブ
層の大半が熱融解してしまうため柔軟性を損ない、また
三次元交絡を形成する際に加圧液体流がウエブを貫通し
ないため短繊維不織ウエブ層との交絡性に劣るので好ま
しくない。一方、エンボスロールの表面温度と重合体の
融点との温度差が60℃を超えると、長繊維不織ウエブ
の構成繊維間が殆ど接着されず、加圧液体流処理の際の
形態保持性が十分でないため好ましくない。
【0039】次に、得られた長繊維不織ウエブ層の片面
に前記短繊維から常法により得られる短繊維不織ウエブ
層を積層した後、この積層不織ウエブの短繊維不織ウエ
ブ層側より加圧液体流処理を施して、長繊維不織ウエブ
層の構成繊維と短繊維不織ウエブ層の構成繊維とを相互
に三次元的に交絡させ、かつ短繊維不織ウエブ層の構成
繊維同士を三次元的に交絡させて全体として一体化させ
ると同時に、積層不織ウエブに面積0.5〜3.0mm
2 の孔を配設密度15〜60個/cm2 で設ける。
【0040】加圧液体流処理を施すに際しては、例えば
孔径が0.05〜2.0mm特に0.1〜0.4mmの
噴射孔を孔間隔を0.3〜10mmとして1列あるいは
複数列に多数配列したオリフィス・ヘッドを用い、噴射
圧力が5〜150kg/cm 2 Gの加圧液体流を前記噴
射孔から噴射する方法を採用する。噴射孔は、積層不織
ウエブの進行方向と直交する方向に列状に配列する。加
圧液体としては、水あるいは温水を用いるのが一般的で
ある。噴射孔と積層不織ウエブとの間の距離は、1〜1
5cmとするのが良い。この距離が1cm未満であると
この処理により得られる不織布の地合いが乱れ、一方、
この距離が15cmを超えると液体流が積層不織ウエブ
に衝突したときの衝撃力が低下して三次元的な交絡が十
分に施されないため、いずれも好ましくない。
【0041】加圧液体流処理は、加圧液体流を噴出して
衝突させたときに生じる短繊維不織ウエブ層の地合いの
乱れや目付け斑を防止する点から、少なくとも2段階に
分けて施すことが好ましい。まず、第1段階の処理とし
て、圧力が5〜40kg/cm2 Gの加圧液体流を噴出
して積層不織ウエブの短繊維不織ウエブ層側に衝突さ
せ、短繊維不織ウエブ層の構成繊維同士を予備的に交絡
させる。この第1段階の処理において、液体流の圧力が
5kg/cm2 G未満であると、短繊維不織ウエブ層の
構成繊維同士を予備的に交絡させることができず、一
方、液体流の圧力が40kg/cm2 Gを超えると、積
層不織ウエブに加圧液体流を噴出して衝突させたときに
短繊維不織ウエブ層の構成繊維が液体流の作用によって
乱れ、この短繊維不織ウエブ層に地合いの乱れや目付け
斑が生じるため、いずれも好ましくない。
【0042】次いで、第2段階の処理として圧力が40
〜150kg/cm2 Gの加圧液体流を噴出して積層不
織ウエブに衝突させ、長繊維不織ウエブ層の構成繊維と
短繊維不織ウエブ層の構成繊維とを相互に三次元的に交
絡させるとともに、短繊維不織ウエブ層の構成繊維同士
を三次元的に交絡させ、この積層物を全体として一体化
させる。この第2段階の処理において、液体流の圧力が
40kg/cm2 G未満であると、上述したような繊維
間の三次元的交絡を十分に形成することができず、一
方、液体流の圧力が150kg/cm2 Gを超えると、
得られた不織布に形成される孔が大きくなり過ぎるた
め、雌材として雄材のフック部との引っ掛かりが不十分
となり、面ファスナとしての接合力に劣ることとなるの
で、いずれも好ましくない。このように第2段階の処理
として圧力が40〜150kg/cm 2 Gの加圧液体流
を用いるが、その際には上述の第1段階の処理によりあ
らかじめ短繊維不織ウエブ層の構成繊維同士を予備的に
交絡させてあるため、この短繊維不織ウエブ層の構成繊
維が第2段階の高圧の液体流の作用によって乱れること
でそのウエブ層に地合いの乱れや目付け斑が生じたりす
ることはない。
【0043】加圧液体流処理を施すに際し、積層物を担
持する支持材は、10〜20メッシュのネットからなる
多孔性のものであることが重要である。このような支持
体を用いることにより初めて、前記のような面積および
配設密度を満足する孔を形成することができるのであ
る。支持材のメッシュが10メッシュ未満であると、加
圧液体流処理で形成される孔が大きくなり過ぎ、雄材の
フック部と引っ掛かるものの接合力が弱くなり、形態保
持性にも劣ることとなるため、面ファスナとして適さな
い。一方、支持材のメッシュが20メッシュを超える
と、加圧液体流処理で形成される孔の配設密度が大きく
なり過ぎ、孔の面積が小さくなるので、雄材のフック部
と引っ掛かり難くなり、面ファスナとして適さない。な
お、支持材の材質は、特に限定されない。
【0044】加圧液体流処理を施した後、処理後の積層
物から過剰水分を除去する必要があるが、この過剰水分
の除去には、公知の方法を採用することができる。例え
ばマングルロール等の絞り装置を用いて過剰水分をある
程度機械的に除去し、引き続き連続熱風乾燥機等の乾燥
装置を用いて残余の水分を除去すれば良い。
【0045】なお、本発明の不織布には、必要に応じ
て、染色、プリント等の加工を行うことができる。
【0046】
【実施例】次に、実施例に基づき本発明を具体的に説明
するが、本発明は、これらの実施例のみに限定されるも
のではない。
【0047】以下の実施例における各種特性値の測定
は、次の方法により実施した。
【0048】(1)融点(℃):パーキンエルマ社製示
差走査型熱量計DSC−2型を用い、昇温速度20℃/
分の条件で測定し、得られた融解吸熱曲線において極値
を与える温度を融点(℃)とした。
【0049】(2)メルトフローレート(g/10
分):ASTM−D−1238(L)に記載の方法に準
じて測定した。
【0050】(3)ポリエチレンテレフタレートの相対
粘度:フェノールと四塩化エタンの等重量混合液を溶媒
とし、この溶媒100ccに試料0.5gを溶解し、温
度20℃の条件で常法により測定した。
【0051】(4)不織布の目付け(g/m2 ):標準
状態の試料から縦10cm×横10cmの試料片計10
点を作成し、平衡水分に至らしめた後、各試料片の重量
(g)を秤量し、得られた値の平均値を単位面積(m
2 )当たりに換算して目付け(g/m2 )とした。
【0052】(5)孔の面積(mm2 ):日本光学
(株)製万能投影機(PROFILE PROJECT
OR V−12)を用い、不織布に形成された任意の孔
50個の縦・横の長さを小数点以下3桁までmm単位で
測定して孔面積を算出し、その平均値を孔面積(mm
2 )とした。
【0053】(6)孔の配設密度(個/cm2 ):日本
光学(株)製万能投影機(PROFILE PROJE
CTOR V−12)を用い、各々1cm2 中の孔数を
10箇所に亘り数え、その平均値を各々の孔の配設密度
(個/cm2 )とした。
【0054】(7)不織布の引張強力(kg/5cm
幅)及び引張伸度(%):JIS−L−1096Aに記
載の方法に準じて測定した。すなわち、試料長が15c
m、試料幅が5cmの試料片を不織布の機械方向(M
D)およびそれに直交する方向(CD)にそれぞれ10
点ずつ作成し、各試料片毎に、不織布のMD方向および
CD方向について、定速伸長型引張試験機(東洋ボール
ドウイン社製テンシロンUTM−4−1−100)を用
い、試料の掴み間隔10cmとし、引張速度10cm/
分で伸長した。そして、得られた切断時荷重値(kg/
5cm)の平均値を引張強力(kg/5cm幅)とする
とともに、切断時伸長率(%)の平均値を引張伸度
(%)とした。
【0055】(8)圧縮剛軟度(g):試料長が10c
m、試料幅が5cmの試料片計5点を作成し、各試料片
毎に横方向に曲げて円筒状物とし、各々その端部を接合
したものを圧縮剛軟度測定試料とした。次いで、各測定
試料毎にその軸方向について、定速伸長型引張試験機
(東洋ボールドウイン社製テンシロンUTM−4−1−
100)を用い、圧縮速度5cm/分で圧縮し、得られ
た最大荷重値(g)の平均値を圧縮剛軟度(g)とし
た。
【0056】(9)面ファスナ雄材との接合力:面ファ
スナ雄材として、YKK(株)製面ファスナ(1QEF
N−N25)を用い、不織布との接合力および20回着
脱を繰り返し行い、下記の5段階評価を行った。
【0057】 5:接合力が極めて良好である。 4:接合力が良好である。 3:接合力がやや良好である。 2:接合力が弱い。 1:全く接合しない。
【0058】(実施例1)融点が259℃、相対粘度が
1.38のポリエチレンテレフタレート重合体チップを
用い、スパンボンド法により長繊維不織ウエブ層を製造
した。すなわち、前記重合体チップを紡糸温度290℃
で溶融し、これを紡糸孔を通して紡出し、溶融紡出され
たポリマー流を冷却した後、エアーサッカを用いて引き
取り速度4800m/分で引き取った後、コロナ放電手
段を用いて開繊し、移動する捕集面上に捕集・堆積させ
て単繊維繊度が2.5デニールの長繊維からなるウエブ
とし、次いで得られたウエブに熱圧接処理を施して目付
けが30g/m2 の長繊維不織ウエブ層を得た。熱圧接
処理に際しては、面積が、0.6mm2 の彫刻模様が圧
接点密度20点/cm2 かつ圧接面積率15%で配設さ
れたエンボスロールと表面が平滑な金属ロールとを用
い、このエンボスロールと表面が平滑な金属ロールの表
面温度を235℃、かつ両ロール間の線圧を30kg/
cmとして行った。
【0059】短繊維不織ウエブ層として、平均繊度1.
6デニール、平均繊維長22mmのコットンの晒綿を用
いて、目付けが25g/m2 のパラレルカードウエブを
作成した。そして、これを前述の長繊維不織ウエブ層の
片面に積層し、短繊維不織ウエブ層を上側にして移動す
る20メッシュの金属製ネット上に載置して、三次元的
交絡処理を2段階で施した。すなわち、まず予備交絡処
理として、孔径0.1mmの噴射孔が孔間隔0.6mm
で一列に配されたオリフィス・ヘッドを用い、この短繊
維不織ウエブ層の上方50mmの位置より、噴射圧40
kg/cm2 Gの加圧液体流により第1段階の予備交絡
を施した。そして、引続き前記オリフィス・ヘッドを用
い、噴射圧70kg/cm2 Gで4回の処理を施して、
第2段階の交絡処理とした。次いで、この交絡処理の施
された積層不織ウエブから、既知の水分除去装置である
マングルを用いて余剰の水分を除去し、引続きサクショ
ンバンド方式の乾燥機を用いて90℃で乾燥処理を行っ
た。得られた不織布は、短繊維不織ウエブ層を構成する
繊維同士に交絡が施されるとともに、短繊維不織ウエブ
層および長繊維不織ウエブ層の構成繊維相互に三次元的
交絡が施されて緻密に一体化したものであった。得られ
た不織布の性能を以下に示す。
【0060】 目付け :55.4g/m2 孔の面積 :0.72mm2 孔の配設密度 :59.4個/cm2 強力(MD) :8.5kg/5cm幅 伸度(MD) :55.4% 強力(CD) :6.6kg/5cm幅 伸度(CD) :64.6% 剛軟度 :26g 面ファスナ雄材との接合力 : 5 得られた不織布は、面ファスナ雄材と接合させた場合に
も十分な接合力を保持し、また機械的特性、柔軟性に優
れ、面ファスナ雌材用不織布として実用に耐え得るもの
であった。
【0061】(実施例2)ASTM−D−1238
(L)に記載の方法に準じて測定されるメルトフローレ
ート値が70g/10分であるポリプロピレン重合体チ
ップを用い、これを紡糸温度210℃で溶融し、紡糸孔
を通して紡出し、溶融紡出されたポリマー流を冷却した
後、エアーサッカを用いて引き取り速度3800m/分
で引き取った後、コロナ放電手段を用いて開繊し、移動
する捕集面上に捕集・堆積させて単繊維繊度が3.0デ
ニールの長繊維からなるウエブとし、次いで得られたウ
エブに熱圧接処理を施して目付けが25g/m2 の長繊
維不織ウエブ層を得た。熱圧接処理に際しては、面積
が、0.25mm2 の彫刻模様が圧接点密度16点/c
2で配設されたエンボスロールと表面が平滑な金属ロ
ールとを用い、このエンボスロールと表面が平滑な金属
ロールの表面温度を125℃、かつ両ロール間の線圧を
50kg/cmとして行った。得られた長繊維不織ウエ
ブは、ポリマー成分が長繊維の糸条方向にわたって並列
に配されたものであった。
【0062】短繊維不織ウエブ層として、平均繊度2.
0デニール、平均繊維長51mmであるポリエステル短
繊維(日本エステル社製 タイプ101)からなる目付
けが25g/m2 のパラレルカードウエブを作成した。
そして、これを前述の長繊維不織ウエブ層の片面に積層
し、10メッシュのポリエステル製ネットを使用する以
外は、実施例1と同一条件で交絡処理を施した後、乾燥
処理を行って不織布を得た。得られた不織布の性能を以
下に示す。
【0063】 目付け :51.6g/m2 孔の面積 :2.84mm2 孔の配設密度 :15.6個/cm2 強力(MD) :7.9kg/5cm幅 伸度(MD) :48.5% 強力(CD) :4.7kg/5cm幅 伸度(CD) :69.5% 剛軟度 :24g 面ファスナ雄材との接合力 : 5 得られた不織布は、面ファスナ雄材と接合させた場合に
も十分な接合力を保持し、また機械的特性、柔軟性に優
れ、面ファスナ雌材用不織布として実用に耐え得るもの
であった。
【0064】(比較例1)長繊維不織ウエブ層として
は、実施例1と同様のポリエチレンテレフタレート重合
体より同一条件にて得られた目付け25g/m2 の長繊
維不織ウエブ層を用い、短繊維不織ウエブ層としては、
コットン晒し綿(平均繊度1.8デニール、平均繊維長
26mm)からなる目付け30g/m2 パラレルカード
ウエブを用いた。
【0065】長繊維不織ウエブ層に短繊維不織ウエブ層
を積層し、30メッシュのポリエステル製ネットを支持
体として用い、短繊維不織ウエブ層を上側にしてにネッ
ト上に載置して、短繊維不織ウエブ層の上方20mmの
位置にある孔径0.12mmの噴射孔より第1回目の予
備交絡処理としては35kg/cm2 Gの加圧液体流を
作用させて交絡を施し、引続き、第2回目の交絡処理を
70kg/cm2 Gの加圧液体流を作用させて交絡を施
した。得られた不織布の性能を以下に示す。
【0066】 目付け :54.8g/m2 孔の面積 :0.29mm2 孔の配設密度 :138.2個/cm2 強力(MD) :7.3kg/5cm幅 伸度(MD) :60.5% 強力(CD) :5.2kg/5cm幅 伸度(CD) :74.6% 剛軟度 :31g 面ファスナ雄材との接合力 : 2 得られた不織布は、機械的特性、柔軟性には優れている
が、30メッシュの支持体を用いたので形成された孔が
小さくなりすぎて雄材のフック部との引っ掛かりが不十
分となり、このため面ファスナ雄材との接合力に劣り、
面ファスナ雌材に適さないものであった。
【0067】(比較例2)8メッシュのポリエステル製
ネットを支持体として用いること以外は、比較例1と同
一条件にて不織布を得た。得られた不織布の性能を以下
に示す。
【0068】 目付け :52.8g/m2 孔の面積 :3.84mm2 孔の配設密度 :9.9個/cm2 強力(MD) :3.3kg/5cm幅 伸度(MD) :50.5% 強力(CD) :1.2kg/5cm幅 伸度(CD) :58.6% 剛軟度 :35g 面ファスナ雄材との接合力 : 2 得られた不織布は、8メッシュの支持体を用いたので形
成された孔が大きくなりすぎ、雄材のフック部と引っ掛
かるものの接合力が弱く、しかも形態安定性に劣り、面
ファスナ雌材に適さないものであった。
【0069】
【発明の効果】本発明の面ファスナ雌材用不織布は、1
0〜20メッシュのネットからなる多孔性支持板を用い
て加圧液体流処理を施すことによって、面積0.5〜
3.0mm2 の孔が配設密度15〜60個/cm2 で配
設されてなることから、面ファスナとして用いた際にこ
の孔が雌材のループの働きをなし、雄材のフック部がこ
の孔に引っ掛かることによって、着脱自在に接合させる
ことができるものである。
【0070】また、本発明の面ファスナ雌材用不織布
は、長繊維不織ウエブ層の構成繊維と短繊維不織ウエブ
層の構成繊維とが相互に三次元的に交絡するとともに短
繊維不織ウエブ層の構成繊維同士が三次元的に交絡する
ことにより全体として一体化された不織布であるので、
面ファスナ雌材用の布帛として好適な柔軟性を具備し得
るものである。
【0071】さらに、本発明においては、面ファスナ雌
材用不織布を製造する際に、長繊維不織ウエブ層に、積
層前にエンボスロールを用いてあらかじめ部分的な熱圧
接を施し、かつこの際にエンボスロールの表面温度を長
繊維不織ウエブ層の構成繊維の融点よりも30〜60℃
低くし、エンボスロールの線圧を5〜50kg/cmと
することによって、三次元的交絡処理を施す際の長繊維
不織ウエブ層の形態保持性を向上させることができる。
【0072】したがって、本発明によれば、不織布の表
面全体にわたりループに代わる孔を備えて面ファスナの
雌材として機能し得ることから、任意の箇所に面ファス
ナ雄材を接合させることができ、したがって、この雄材
を取り付けるべき接合対象の特定箇所にこの雄材を固定
するだけで面ファスナとしての機能をなし、使用目的に
適宜対応できる面ファスナ雌材用不織布を提供すること
ができる。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成8年3月11日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0038
【補正方法】変更
【補正内容】
【0038】長繊維不織ウエブに部分的な熱圧接処理を
施すに際し、エンボスロールの条件は、この長繊維を構
成する重合体の種類により適宜選択すれば良いのである
が、特に、エンボスロールの表面温度を長繊維不織ウエ
ブ層の構成繊維の融点よりも30〜60℃低くし、かつ
エンボスロールの線圧を5〜50kg/cmするのが
好ましい。なお、前述の如く長繊維不織ウエブが複合長
繊維によって形成されている場合には、エンボスロール
の表面温度を、その複合長繊維を構成する重合体のうち
最も融点の低い重合体の融点よりも30〜60℃低い温
度とすることが好ましい。エンボスロールの表面温度が
重合体の融点よりも高い場合およびエンボスロールの表
面温度と重合体の融点との温度差が30℃未満である場
合には、熱圧接処理を施す際に長繊維不織ウエブ層の大
半が熱融着してしまうため柔軟性を損ない、また三次元
交絡を形成する際に加圧液体流がウエブを貫通しないた
め短繊維不織ウエブ層との交絡性に劣るので好ましくな
い。一方、エンボスロールの表面温度と重合体の融点と
の温度差が60℃を超えると、長繊維不織ウエブの構成
繊維間が殆ど接着されず、加圧液体流処理の際の形態保
持性が十分でないため好ましくない。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 飯見 美智代 京都府宇治市宇治小桜23番地 ユニチカ株 式会社中央研究所内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 長繊維不織ウエブ層と短繊維不織ウエ
    ブ層とが積層されてなる面ファスナ雌材用不織布であっ
    て、長繊維不織ウエブ層の構成繊維と短繊維不織ウエブ
    層の構成繊維とが相互に三次元的に交絡するとともに短
    繊維不織ウエブ層の構成繊維同士が三次元的に交絡して
    おり、かつ面積0.5〜3.0mm2 の孔が配設密度1
    5〜60個/cm2 で少なくとも長繊維不織ウエブ層の
    表面に配設されてなることを特徴とする面ファスナ雌材
    用不織布。
  2. 【請求項2】 長繊維不織ウエブ層と短繊維不織ウエ
    ブ層とを積層して積層不織ウエブを形成し、次いでこの
    積層不織ウエブを移動する10〜20メッシュの多孔性
    支持板上に載置して加圧液体流処理を施し、長繊維不織
    ウエブ層の構成繊維と短繊維不織ウエブ層の構成繊維と
    を相互に三次元的に交絡させるとともに短繊維不織ウエ
    ブ層の構成繊維同士を三次元的に交絡させ、同時に、積
    層不織ウエブに面積0.5〜3.0mm2 の孔を配設密
    度15〜60個/cm2 で設けることを特徴とする面フ
    ァスナ雌材用不織布の製造方法。
  3. 【請求項3】 長繊維不織ウエブ層に、積層前にエン
    ボスロールを用いてあらかじめ部分的な熱圧接を施し、
    かつこの際にエンボスロールの表面温度を長繊維不織ウ
    エブ層の構成繊維の融点よりも30〜60℃低くし、エ
    ンボスロールの線圧を5〜50kg/cmとすることを
    特徴とする請求項2記載の面ファスナ雌材用不織布の製
    造方法。
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