JP3784093B2 - 使い捨てカイロ用袋 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、機械的特性、寸法安定性、吸湿性、ソフトな肌触り感および柔軟性に富んだ使い捨てカイロ用袋に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、使い捨てカイロ用袋の素材としては、合成繊維からなる不織布が用いられ、一般的に、合成繊維からなるスパンボンド不織布が多く用いられている。しかしながら、スパンボンド不織布を用いた従来の使い捨てカイロ用袋は、不織布の製造過程において又はカイロ用袋として成形する際において熱圧接が施されているため、柔軟性に欠ける等の問題があった。また、合成繊維からなる使い捨てカイロ用袋では、一般に、天然繊維に比べ吸湿性に劣ることが多く、肌触り感についても必ずしも優れたものとは言い難い。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
本発明はこのような課題を解決するもので、ソフトな肌触り感、柔軟性および吸湿性に富み、しかも機械的特性、寸法安定性に優れた使い捨てカイロ用袋を提供することを目的とするものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
この課題を解決するために本発明は、木綿繊維不織ウエブと熱可塑性重合体からなる合成繊維不織ウエブとが積層されて三次元的交絡によって一体化された積層シートにより形成され、この積層シートを前記合成繊維不織ウエブが内側となるように2つ折りして形成される2枚のシート部を備え、この2枚のシート部の繋がり部を除く縁近傍部において、前記熱可塑性重合体が融解して合成繊維不織ウエブが互いに融着するとともに融解した前記熱可塑性重合体が木綿繊維不織ウエブの構成繊維間に入り込んで木綿繊維と融着した状態で2枚のシート部間が接合されてなることを要旨とするものである。
【0005】
【発明の実施の形態】
本発明の使い捨てカイロ用袋を図面に基づいて、詳細に説明する。
図1は本発明の使い捨てカイロ用袋の展開図、図2は本発明の使い捨てカイロ用袋の完成直前の状態を示す斜視図である。
【0006】
1は、木綿繊維不織ウエブ2と合成繊維不織ウエブ3とが積層されて三次元的交絡によって一体化されてなる積層シートである。この積層シート1は展開状態において平面形状が矩形を呈し、これを合成繊維不織ウエブ3が内側となるように2つ折りにすることにより2枚のシート部4a,4bが形成されている。この2枚のシート部4a,4bは、両シート部を繋いでいる繋がり部5を除く縁近傍部において、接着部6によって接合されている。
【0007】
本発明の使い捨てカイロ用袋の第1の特徴は、使い捨てカイロ用袋の表面が、木綿を構成繊維とした木綿繊維不織ウエブ2で形成されていることである。これにより、使い捨てカイロ用袋の表面に存在する木綿繊維の特性によって、ソフトな肌触り感および優れた柔軟性を付与することができ、さらに適度の吸湿性を具備させることができる。
【0008】
本発明における木綿繊維不織ウエブ2の目付けは60〜100g/m2 であるのが好ましい。目付けが60g/m2 未満であると、高温に達したカイロの熱が直接肌に伝わり、熱さを感じ好ましくない。一方、目付けが100g/m2 を超えると、木綿繊維不織ウエブ2の構成繊維と合成繊維不織ウエブ3の構成繊維との三次元的交絡および木綿繊維不織ウエブ2の構成繊維同士の三次元的交絡がともに十分に施されないため、好ましくない。
【0009】
木綿繊維不織ウエブ2を構成する木綿としては、例えば、コーマ糸、晒し綿が用いられ、またその繊度は1.0〜2.5デニール、平均繊維長は10〜30mm程度のものが好ましい。
【0010】
さらに、木綿繊維不織ウエブ2を構成する木綿として、前述のコーマ糸および晒し綿のほかに、木綿からなる糸または織物または編物から得られる反毛であっても良い。ここで、反毛としては、単に漂泊しただけのもの、蛍光晒しのものおよび染色したものを含む。このとき、効果的に用いることができる反毛機としては、ラッグ・マシン、ノット・ブレーカー、ガーネット・マシン、廻切機などがある。用いる反毛機の種類や組み合わせは反毛される布帛の形状や、構成する糸の太さ、撚りの強さにもよるが、同一の反毛機を数台直列に連結させたり、2種以上の反毛機を組み合わせて用いたりすると効果的である。ここで、反毛機による解繊率は30〜95%の範囲が好ましい。解繊率が30%未満であると、三次元的交絡による合成繊維不織ウエブ3との一体化のために加圧液体流でウエブを処理する際に液体流がウエブを十分貫通せず、逆に、解繊率が95%を超えると十分な表面摩耗強度が得られない。なお、解繊率は次式により求められる。
解繊率(%)=(反毛重量−糸状物重量)×100/反毛重量
【0011】
本発明の使い捨てカイロ用袋の第2の特徴は、木綿繊維不織ウエブ2と合成繊維不織ウエブ3とが積層されており、しかも、この積層体が三次元交絡によって一体化されていることである。このような構成により、使い捨てカイロ用袋としての大きな強力が得られるとともに、三次元的交絡による優れた機械的特性、寸法安定性を発揮することができるのである。
【0012】
本発明に用いられる合成繊維不織ウエブ3は、繊維形成性を有するポリオレフィン系重合体、ポリエステル系重合体あるいはポリアミド系重合体からなるものであり、かつこれらの重合体の融点が70℃以上であることが重要である。合成繊維不織ウエブ3を構成する重合体の融点が70℃未満であると、これにより得られる使い捨てカイロ用袋を実際に使用したときに、内部の発熱体の温度によっては機械的特性や寸法安定性が低下することがあり好ましくない。
【0013】
ポリオレフィン系重合体としては、炭素原子数2〜18の脂肪数α−モノオレフィン、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−ドデセン、1−オクタデセンなどからなるホモポリオレフィン重合体が挙げられる。これらの脂肪族α−モノオレフィンは、例えばブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、スチレン、α−メチルスチレンのような他の類似のエチレン系不飽和モノマーが共重合されたポリオレフィン系共重合体であっても良い。また、ポリエチレン系重合体の場合には、エチレンに対してプロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン、1−オクテンまたは類似の高級α−オレフィンが10重量%以下共重合されたものであっても良く、ポリプロピレン系重合体の場合には、プロピレンに対してエチレンまたは類似の高級α−オレフィンが10重量%以下共重合されたものであっても良い。但し、前記高級α−オレフィン等の共重合物の共重合率が前記重量%を超えると、共重合体の融点が低下し、これら共重合体からなる合成繊維不織ウエブ3を用いて得た積層シート1を高温条件下で使用したときに、機械的特性や寸法安定性が低下するので好ましくない。
【0014】
ポリエステル系重合体としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタリン−2,6−ジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸あるいはアジピン酸、セバチン酸などの脂肪族ジカルボン酸またはこれらのエステル類を酸成分とし、かつエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどのジオール化合物をジオール成分とするホモポリエステル重合体あるいは共重合体が挙げられる。なお、これらのポリエステル系重合体には、パラオキシ安息香酸、5−ソジウムスルホイソフタル酸、ポリアルキレングリコール、ペンタエリスリトール、ビスフェノールAなどが添加あるいは共重合されていても良い。
【0015】
ポリアミド系重合体としては、ポリイミノ−1−オキソテトラメチレン(ナイロン4)、ポリテトラメチレンアジパミド(ナイロン46)、ポリカプラミド(ナイロン6)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)、ポリウンデカナミド(ナイロン11)、ポリラウロラクタミド(ナイロン12)、ポリメタキシレンアジパミド、ポリパラキシレンデカナミド、ポリビスシクロヘキシルメタンデカナミドまたはこれらのモノマーを構成単位とするポリアミド系共重合体が挙げられる。特に、ポリテトラメチレンアジパミドの場合、ポリテトラメチレンアジパミドにポリカプラミドやポリヘキサメチレンアジパミド、ポリウンデカメチレンテレフタラミドなどの他のポリアミド成分が30モル%以下共重合されたポリテトラメチレンアジパミド系共重合体であっても良い。前記他のポリアミド成分の共重合率が30モル%を超えると共重合体の融点が低下し、これにより得られる使い捨てカイロ用袋を高温条件下で使用したときに、機械的特性や寸法安定性が低下するので好ましくない。
【0016】
また、本発明のカイロ用袋は使い捨て用途として用いるものであることから、合成繊維不織ウエブ3を構成する重合体としては、前記の重合体のなかでも特に、生分解性を有する熱可塑性重合体が好適である。使い捨てカイロ用袋の表面層を構成する木綿不織ウエブ2は天然繊維である木綿繊維からなるので自然界で分解可能である。したがって、内面を構成する合成繊維不織ウエブ3として、生分解性を有する熱可塑性重合体からなる合成繊維不織ウエブ3を採用することにより、使い捨てカイロ用袋全体が生分解性繊維により構成されることとなる。よって、使い捨てにした際にカイロ用袋全体が微生物で完全に分解されることとなるので、環境面から好ましい。
【0017】
生分解性の熱可塑性重合体としては、例えば、以下の脂肪族ポリエステルが挙げられる。すなわち、ポリグリコール酸やポリ乳酸のようなポリ(α−ヒドロキシ酸)またはこれらのモノマーを構成単位とする共重合体が、また、ポリ(ε−カプロラクトン)、ポリ(β−プロピオラクトン)のようなポリ(ω−ヒドロキシアルカノエート)が、さらに、ポリ−3−ヒドロキシプロピオネート、ポリ−3−ヒドロキシブチレート、ポリ−3−ヒドロキシカプロエート、ポリ−3−ヒドロキシヘプタノエート、ポリ−3−ヒドロキシオクタノエートのようなポリ(β−ヒドロキシアルカノエート)、およびこれらの構成単位とポリ−3−ヒドロキシバリレートやポリ−4−ヒドロキシブチレートの構成単位との共重合体が挙げられる。またグリコールとジカルボン酸の縮重合体からなるものとして、例えば、ポリエチレンオキサレート、ポリエチレンサクシネート、ポリエチレンアジペート、ポリエチレンアゼテート、ポリブチレンオキサレート、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリブチレンセバケート、ポリヘキサメチレンセバケート、ポリネオペンチルオキサレートまたはこれらのモノマーを構成単位とする共重合体が挙げられる。
【0018】
また、前記の脂肪族ポリエステル成分により構成される重合体のなかでも、前述のように、使い捨てカイロ用袋内部に発熱体が充填されることを考慮すると、内側に配された合成繊維不織ウエブ3が軟化、熱融着等による変形を受けないためには、発熱体の発する温度よりも低い融点をもつ重合体は好ましくなく、重合体の融点が70℃以上の重合体が好適に用いられる。前記の中で70℃以上の融点を有する重合体としては、ポリ乳酸、ポリエチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートならびにこれらのモノマーを構成単位とする共重合体があり、製糸性および生分解性能に優れる等の理由により好適に用いられる。なお、以上の重合体を共重合体として用いる場合、前述の理由により共重合体の融点が70℃以上になるよう、適宜共重合率を設定することが肝要である。
【0019】
なお、本発明において、前記した繊維形成性の熱可塑性重合体には、必要に応じて、例えば艶消し剤、顔料、防炎剤、消臭剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤などの各種添加剤を本発明の効果を損なわない範囲内で添加することができる。
【0020】
本発明における合成繊維不織ウエブ3を構成する合成繊維の繊維横断面形態は、特に制限されるものではないが、割繊型複合断面であれば特に好ましい。ここで、割繊型複合断面とは、相異なる二成分が隣接して存在するよう配置した断面であり、例えば、図3に示す多葉型複合断面のように一つの芯部7の周囲にこれよりも小さい複数の葉部8が配されているものや、図4に示す交互配列型複合断面のように二成分9,10が互いに細かく分断されるように交互に配されているもの等が挙げられる。このような断面形態の糸は、三次元的交絡処理において加圧液体流やニードルのような外力を受けると、二成分の隣接部分が割れて各成分毎に分割されて細繊度の割繊糸となる。これは、相異なる二成分は基本的に混じり合わず、それぞれに異なるフィラメントを形成していると考えられるためであり、従って、割繊型複合断面とする場合には、できるだけ非相溶性の大きい二成分を選択することが好ましい。合成繊維不織ウエブ3を構成する合成繊維の繊維横断面形態を割繊型複合断面とすることにより、木綿繊維不織ウエブ2と合成繊維不織ウエブ3とを積層した積層体に三次元的交絡処理を施した際に、割繊型の合成繊維が分割、割繊されて細繊度の割繊糸となるため、より効率良く木綿繊維と三次元的に交絡し、緻密性に優れることとなって、機械的強力、粉塵捕集効率に優れた使い捨てカイロ用袋を得ることができる。
【0021】
合成繊維不織ウエブ3が割繊型複合繊維により形成される場合には、この割繊型複合繊維は前記熱可塑性重合体から選択された二成分で構成されるのであるが、このとき、両成分の融点差が20℃以上であることが好ましい。割繊複合繊維を構成する二成分の融点差が20℃未満であると、積層体を一体化して積層シート1とする三次元的交絡処理に先立ち、合成繊維不織ウエブ3の形態保持を容易にすべく合成繊維不織ウエブ3に前処理として熱圧接処理を施す場合、その熱圧接処理温度によっては、融点の低い方の成分のみならず、融点が高い方の成分もまた融解し積層シートが全体的に融着してフィルム化することとなる。したがって、合成繊維不織ウエブ3の柔軟性が損なわれるとともに、三次元的交絡処理の際に、各合成繊維が十分に割繊されないこととなり、三次元的交絡がうまく形成できず、目標とする積層シート1が得られないこととなる。
【0022】
また、本発明における合成繊維不織ウエブ3を構成する合成繊維としては、前記熱可塑性重合体単独からなるものや前記の割繊型複合繊維の他に、前記熱可塑性重合体の中から選択された2種以上の相異なる重合体が各々溶融紡糸性を損なわない範囲内でブレンドされたブレンド物からなるものであっても良い。このブレンドでは、例えばポリエステル系重合体とポリオレフィン系重合体とがブレンドされたものや、2種の相異なるポリアミド系重合体がブレンドされたものが挙げられる。特に、前者の場合には、溶融紡出直後で未配向のポリエステル成分の収縮を抑制することができるため好ましい。
【0023】
本発明における合成繊維不織ウエブ3を構成する合成繊維は、単糸繊度が0.05〜2.0デニールのものが好ましい。ただし、割繊型複合繊維を適用した場合には、割繊後の割繊糸の繊度を単糸繊度とする。使い捨てカイロ用袋においては、使用に際し内部に充填される発熱体の漏れを防止し得ることが重要であり、この発熱体の漏れを防止するためには、使い捨てカイロ用袋を形成する不織布は、高い緻密性を有するものでなければならない。この緻密性は、袋の内側に配される合成繊維を細繊度とすることにより向上させることができ、合成繊維の単糸繊度が0.05〜2.0デニールであれば、ほぼ完全に発熱体の漏れを防止できる。つまり、合成繊維不織ウエブ3を構成する合成繊維の単糸繊度が2.0デニールを超えると、使い捨てカイロ用袋に用いた場合、合成繊維不織ウエブ3を構成する繊維の本数が減少し、合成繊維不織ウエブ3の密度が結果的に粗いものとなり、袋内部の発熱体が外部に漏れることがあるので好ましくない。
【0024】
なお、発熱体の漏れ防止効果については、後述の方法により測定される粉塵の捕集効率により判定する。本発明においては、平均粒子径5ミクロンの粉塵の捕集効率が85%以上となるので、使い捨てカイロに用いられる平均粒子径10ミクロン以上の発熱体の袋外部への漏れを防止できるのである。
【0025】
また逆に、本発明における合成繊維不織ウエブ3を構成する合成繊維の単糸繊度が0.05デニール未満であると、たとえ割繊型複合繊維として紡糸し、その後に割繊させたとしても、生産性に劣り、しかも製糸工程において糸切れが発生し易いため好ましくない。
【0026】
本発明における合成繊維不織ウエブ3は、その目付けが10〜100g/m2であるのが好ましい。目付けが10g/m2 未満であると、構成繊維同士の緻密な重なりの程度が低く、この合成繊維不織ウエブ3に木綿繊維不織ウエブ2を積層し一体化して得られる積層シート1の地合いが損なわれることとなり、逆に、目付けが100g/m2 を超えると、合成繊維不織ウエブ3に木綿繊維不織ウエブ2を積層して三次元的交絡処理を施すに際し、合成繊維不織ウエブ3の構成繊維と木綿繊維不織ウエブ2の構成繊維とが十分に交絡せず、全体として一体化されないため、いずれも好ましくない。これらの理由より、合成繊維不織ウエブ3の目付けはさらに好ましくは15〜80g/m2 であるのが良い。
【0027】
本発明においては、前述のような目付け範囲からなる木綿繊維不織ウエブ2および合成繊維不織ウエブ3の積層体の目付けが、70〜200g/m2 であるのが良い。積層体の目付けが70g/m2 未満であると、合成繊維不織ウエブ3を構成する単繊維の重なりが不十分であり、これに木綿繊維不織ウエブ2を積層して交絡処理しても、積層シート1を構成する繊維間の交絡が弱いものとなり好ましくない。一方、積層体の目付けが200g/m2 を超えると、合成繊維不織ウエブ3の構成繊維と木綿繊維不織ウエブ2の構成繊維相互間の交絡に要するエネルギーコストが多大になるのみでなく、繊維相互間の交絡も不十分なものとなり好ましくない。
【0028】
本発明における積層シート1を得るには、前述のように、木綿繊維不織ウエブ2と合成繊維不織ウエブ3とを単に積層しただけの積層体に、三次元的交絡処理を施すことが必要である。積層体に三次元的交絡処理を施すことによって、木綿繊維不織ウエブ2の構成繊維と合成繊維不織ウエブ3の構成繊維との間において三次元的に交絡するのみならず、木綿繊維不織ウエブ2の構成繊維相互間や合成繊維不織ウエブ3の構成繊維相互間においても、各構成繊維が三次元的交絡が形成されて、積層シート1全体として一体化されることとなる。したがって、使い捨てカイロ用袋に形態保持性、機械的強力を具備させつつ柔軟性を付与することができる。ここで、三次元的交絡とは、両不織ウエブを構成する構成繊維相互がウエブの平面方向のみでなく、ウエブの厚み方向に対しても交絡がなされ、緻密に一体化した構造を有していることを意味する。また、緻密に一体化された構造とは、構成繊維の主体的な交絡によってなるものであり、カーデイングされた不織ウエブよりも嵩密度が高い構造となっていることをいう。
【0029】
また、本発明の積層シート1は、三次元的に緻密に一体化した構造となっていることから、木綿繊維不織ウエブ2と合成繊維不織ウエブ3との層間剥離強力が250g/5cm幅以上となるものである。ここで、積層シート1の層間剥離強力は以下の方法で測定されるものである。すなわち、試料幅5cm、試料長15cmの積層シート1の試料片を3枚作成し、定速伸長型引張試験機(東洋ボールドウイン(株)製テンシロンUTM−4−1−100)を用い、引張速度5cm/分にて、各試料毎に試料の一方の端部から試料端より5cmの位置まで、強制的に木綿繊維不織ウエブ2と合成繊維不織ウエブ3とに剥離させて、得られた最大荷重値(g/5cm幅)の平均値を積層シート1の層間剥離強力(g/5cm幅)をする。積層シート1の層間剥離強力が250g/5cm幅未満となる場合、両不織ウエブ2,3の層間の三次元的交絡の形成が十分でないため、使用時において層間が剥離し易いのみでなく、木綿繊維不織ウエブ2を構成する単繊維の脱落の要因となるため好ましくない。
【0030】
本発明の第3の特徴は、積層シート1を袋状に成形して本発明の使い捨てカイロ用袋を得る際に、合成繊維不織ウエブ3が使い捨てカイロ用袋の内側に配されることである。これにより、木綿繊維不織ウエブ2は使い捨てカイロ用袋の表面に存在することとなり、前述のように吸湿性、ソフトな肌ざわり感に優れるという本発明の効果を発揮することができるのである。
【0031】
また、本発明の使い捨てカイロ用袋における第4の特徴は、積層シート1を袋状に成形して本発明の使い捨てカイロ用袋を得る際に、2枚のシート部の繋がり部5を除く縁近傍部に形成される接着部6において、超音波ウエルダー処理によって、合成繊維不織ウエブ3を構成する熱可塑性重合体が一部融解して、合成繊維不織ウエブ3が互いに融着するとともに、融解した熱可塑性重合体が木綿繊維不織ウエブ2の構成繊維間に入り込んで木綿繊維と融着した状態で2枚の積層シート部間が接合されていることである。このような構成により、接着部の耐剥離性に優れ、袋状形態を良好に維持し得ることとなる。
【0032】
次に本発明の使い捨てカイロ用袋の製造方法について説明する。
まず、合成繊維不織ウエブ3の製造は、通常の複合紡糸装置を用い、常法にて行うことができる。たとえば、合成繊維不織ウエブ3が長繊維で構成されるときには、スパンボンド法、メルトブロー法、フラッシュ紡糸法などにより得られる不織ウエブを、短繊維で構成されるときは、カード機によりカードウエブとした後、熱圧接を施した不織ウエブを用いる。
【0033】
本発明においては、合成繊維不織ウエブ3は木綿繊維不織ウエブ2と積層された後に三次元的交絡処理が施されるのであるが、この三次元的交絡処理の際の積層体の形態を保持するためには、合成繊維不織ウエブ3に予め部分的な熱圧接処理を施しておくことが好ましい。これにより、木綿繊維不織ウエブ2と積層される際の合成繊維不織ウエブ3の形態保持が可能となるため、操業性上取り扱いが容易となる。しかも、この部分的熱圧接処理により形成される圧接点は、後の三次元的交絡処理時の加圧液体流により、少なくとも一部剥離されることから、使い捨てカイロ用袋としたときの柔軟性を損なうこともない。つまり、部分的な熱圧接を施した合成繊維不織ウエブ3は、それ自体の接着性による強力は低いものの、柔軟性に富み、使い捨てカイロ用袋に好適な素材となる。
【0034】
ここで、部分的な熱圧接とは、加熱され表面に彫刻模様が刻印されたロール、すなわちエンボスロールと加熱され表面が平滑な金属ロールとの間にウエブを通すことにより前記彫刻模様に該当する部分のウエブ構成繊維同士を熱的に接着させることである。さらに詳しくは、この部分的な熱圧接とは、合成繊維不織ウエブ3の全表面積に対して特定の領域を有し、すなわち、個々の熱圧接領域は必ずしも円形の形状である必要はないが0.1〜1.0mm2 の面積を有し、その密度すなわち圧接点密度が2〜80点/cm2 好ましくは4〜60点/cm2 のものであるのが良い。この圧接点密度が2点/cm2 未満であると熱圧接後のウエブの機械的特性や形態保持性が向上せず、一方、圧接点密度が80点/cm2 を超えると柔軟性と嵩高性が向上せず、いずれも好ましくない。
【0035】
また、合成繊維不織ウエブ3の全表面積に対する全熱圧接領域の面積の比すなわち圧接面積率が2〜30%好ましくは4〜20%であるのが好ましい。この圧接面積率が2%未満であると熱圧接後の不織ウエブの寸法安定性が向上せず、従って、この合成繊維不織ウエブ3に木綿繊維不織ウエブ2を積層して得られた積層シート1の寸法安定性が劣り、好ましくない。一方、圧接面積率が30%を超えると、積層シート1の機械的強力は向上するものの、非熱圧接部の面積の減少により、木綿繊維不織ウエブ2が積層され交絡処理が施される際の交絡部分の減少による剥離強力の低下の原因となるだけでなく、目付けによっては合成繊維不織ウエブ3全体がフィルム化してしまうため、好ましくない。
【0036】
また、このときの熱圧接温度は、合成繊維不織ウエブ3を形成する合成繊維を構成する熱可塑性重合体の融点以下の温度、あるいはこの熱可塑性重合体が複数の場合は最も融点の低い重合体の融点以下の温度であることが好ましく、得られる使い捨てカイロ用袋の柔軟性を損なわない程度の圧接力を施すことが好ましい。すなわち、合成繊維不織ウエブ3を木綿繊維不織ウエブ2と積層する際に、合成繊維不織ウエブ3の形態保持が可能となる程度で熱圧接が施されていれば良い。この理由で、熱圧接温度の範囲は、熱可塑性重合体の融点あるいは前記最低融点成分重合体の融点をT℃としたときに、(T−20)〜(T−10)℃の範囲で行なうと良い。 次いで、このようにして得られた合成繊維不織ウエブ3と常法により得られる木綿繊維不織ウエブ2とを積層して、この積層体に三次元的交絡処理を施し一体化して、積層シート1を得る。
【0037】
三次元的交絡処理には、例えば、スパンレース法を採用することができる。この工程を詳述すると、孔径が0.05〜2.0mm、好ましくは0.1〜0.4mmの噴射孔を、噴射孔間隔0.3〜10mmで1列ないしは複数列に複数配設した装置を用い、噴射圧力5〜150kg/cm2 Gで柱状に噴射される加圧液体流を、多孔性支持板上に載置した積層体に衝突せしめ、不織ウエブを構成する繊維相互を緻密に交絡させて一体化を施すものである。
【0038】
ここで、噴射孔の配列は、積層体の進行方向と直交する方向に列状に配列する。流体としては常温の水あるいは熱水を使用することができる。噴射孔と積層体との間の距離は、1〜15cmとするのが良い。この距離が1cm未満であると、この処理により得られる積層シート1の地合いが乱れ、逆にこの距離が15cmを超えると、液体流が積層体に衝突したときの衝撃力が低下して三次元的な交絡が十分に施されず、いずれも好ましくない。また、加圧液体流の噴射の際、積層体を載置する多孔性支持板としては、加圧液体流が支持板上の積層体を通過しうる構成のものであれば、金属製、ポリエステル製、あるいはその他の材質のいずれでも良く、一般的には、金属製、ポリエステル製などの網目を有するネットが用いられる。交絡処理に際し用いられるネットの網目の範囲は、50〜150本/25mmの範囲であり、さらに好ましくは70〜100本/25mmの範囲である。50本/25mm未満では、積層シート1に孔が付与され、孔空き状の積層シート1となり、使い捨てカイロ用の袋として用いたとき、孔空き部分より内部のカイロ成分の温度が直に伝わり好ましくない。また、150本/25mmを超えると、積層シート1とネットとを加圧液体流が通過に要するエネルギー量が多大となり、生産コスト上好ましくない。
【0039】
加圧液体流による交絡処理は、少なくとも2回に分けて施すことが好ましい。すなわち、第1回目の加圧液体流による交絡処理は、圧力が5〜30kg/cm2 Gの加圧液体流により前記積層体に予備的な交絡を施す。この第1回目の交絡処理を行なう場合、圧力が5kg/cm2 G未満であれば、木綿繊維不織ウエブ2の構成繊維同士を予備的に交絡させることができず、逆に、圧力が30kg/cm2 Gを超えると、積層体に加圧液体流を噴射し衝突させたときに木綿繊維不織ウエブ2に地合いの乱れや目付け斑が生じるためいずれも好ましくない。
【0040】
この予備交絡の施された積層体は、引き続き第2回目の交絡処理を圧力が40〜150kg/cm2 Gの加圧液体流により行ない、構成繊維相互が三次元的に交絡して緻密に一体化した構造となる。ここで、合成繊維不織ウエブ3の構成繊維として前述の割繊型複合繊維を適用した場合には、構成繊維間の三次元的交絡と同時に合成繊維が割繊、分割され、この割繊糸と木綿繊維不織ウエブ2の構成繊維とをさらに交絡させることができる。第2回目の交絡処理において、圧力が40kg/cm2 G未満であると、合成繊維の割繊および構成繊維間の三次元的交絡が十分に施されず、逆に、圧力が150kg/cm2 Gを超えると、得られる積層シート1の柔軟性と嵩高性が向上せず好ましくない。
【0041】
なお、本発明においては、第2回目の処理として、このように高圧の液体流を用いるが、この第2回目の処理を施す際には、第1回目の処理により予備的交絡を形成しているため、第2回目の処理によって木綿繊維不織ウエブ2の構成繊維が液体流の作用により乱れ、木綿繊維不織ウエブ2に地合いの乱れや目付け斑を生じたりすることもない。
【0042】
また、積層シート1の目付けによっては、前記方法により得られた積層シート1をさらに反転し、第3回目の交絡処理として、第2回目で適用した圧力により交絡処理を施すことにより、表裏共に緻密に交絡した不織ウエブとすることができる。
【0043】
以上により得られた処理物の余分な水分を、既知の水分除去装置であるマングルなどにより除去し、さらに例えばサクションバンド方式の熱風循環式乾燥機により乾燥処理を施して三次元的交絡を有する積層シート1を得る。
【0044】
本発明においては、以上のようにして得られた積層シート1を袋状に成形して、使い捨てカイロ用袋が得られる。すなわち、積層シート1を図1に示す形状に裁断を施した後、合成繊維不織ウエブ3が内側となるように2つ折りして形成された2枚のシート部4a,4bを形成し、これにより形成された2枚の積層シート部間の繋がり部5を除く縁近傍部において、2枚の積層シート部間に超音ウエルダー処理により熱接着加工を施して、2枚の積層シート部間を接合して袋状にするものである。
【0045】
この部分的な超音波ウエルダー処理は、以下の方法により行なうことができる。すなわち、超音波ウエルダー加工機としては、超音波の発振周波数19〜22kHzの超音波発振機、超音波増幅機、振動盤および超音波ウエルダー処理を施す彫刻ロールにより構成されるものである。彫刻ロールとしては、ロールの円周方向に点状ないしは帯状の超音波ウエルダー部が1列または複数列に配されたもの、または幾何学的模様に配されたものを用いる。この彫刻ロールの押し圧は、0.5〜5kg/cmの範囲が良い。
【0046】
なお、本発明の使い捨てカイロ用袋には、積層を施す前の木綿繊維不織ウエブ2に、必要に応じてプリントまたは染色などの後加工を施すことができる。
【0047】
【実施例】
以下、実施例に基づき本発明を説明する。
本発明においては、以下の方法により測定を行なった。
【0048】
重合体の融点(℃);パーキンエルマ社製示差走査型熱量計DSC−2型を用い、昇温速度20℃/分の条件で測定し、得られた融解吸熱曲線において極値を与える温度を重合体の融点とした。
【0049】
メルトインデックス値(g/10分);ASTM−D1238(E)に記載の方法により測定した(以下、MI値と称す)。
【0050】
引張強力(kg/5cm幅);定速伸長型引張試験機(東洋ボールドウイン(株)製テンシロンUTM−4−1−100)を用い、JIS−L−1096に記載のストリップ法に従って測定した。すなわち、試料幅が5cmで試料長が10cmの試料片を10枚作成し、各試料毎に引張速度10cm/分で測定して最大引張強力(kg)を求め、得られた各引張強力値の平均値を試料幅5cmで除して、不織布の引張強力(kg/5cm幅)とした。
【0051】
圧縮剛軟度(g);試料長が10cm、試料幅が5cmの試料片を5枚作成し、各試料片毎に横方向に曲げて円筒状物とし、各々その端部を接合したものを圧縮剛軟度測定試料とした。次いで、各測定試料毎にその軸方向について、定速伸長型引張試験機(東洋ボールドウイン(株)製テンシロンUTM−4−1−100)を用い、圧縮速度5cm/分で圧縮し、得られた最大荷重値(g)の平均値を圧縮剛軟度(g)とした。
【0052】
接着部の層間剥離強力(g/5cm幅);積層シートを超音波ウエルダー処理により成形してカイロ用袋としたときのシート接合部を、超音波ウエルダー部を中心に、幅5cm、長さを超音波ウエルダー部より、双方向に、それぞれ7.5cmとする試料片を5枚作成し、各試料片を定速伸長型引張試験機(東洋ボールドウイン(株)製テンシロンUTM−4−1−100)を用い、引張速度10cm/分で測定し最大引張強力を求め、得られた各引張強力の平均値を層間剥離強力(g/5cm幅)とした。
【0053】
粉塵の捕集効率(%);20cm×20cmの大きさの試料片を5枚作成し、粉塵の捕集効率を下記の方法により測定し、得られた測定値が85%以上のものを良好な発熱体漏れ防止効果を有する複合不織ウエブとした。すなわち、前記測定試料を、直径11cmの風洞中に設け、この風洞に対して、粉塵として平均粒子径5ミクロンのラテックスを、粉塵濃度15mg/m3 、流速5m/分で供給し、測定試料の前後の粉塵濃度を測定して、粉塵の通過量により発熱体の漏れ防止効果を判定した。なお、測定試料の前後には、粉塵の濃度測定器として、光学散乱方式のデジタル表示粉塵計を設け、試料の前の濃度Aを測定するとともにし、試料の後の濃度Bを測定して、下記式により粉塵の捕集効率が求めた。
【0054】
粉塵の捕集効率(%)=(A−B)×100/A
【0055】
吸湿性(mm);JIS−L−1096に記載のバイレック法により測定した。
【0056】
実施例1
まず、A成分とB成分とからなる割繊型複合長繊維で形成される合成繊維不織ウエブを得た。
【0057】
すなわち、A成分として、融点が255℃、相対粘度が1.38のポリエチレンテレフタレート重合体チップを、B成分として、融点が130℃、MI値が20g/10分のポリエチレン重合体チップを用い、スパンボンド法により、A成分とB成分とで構成される割繊型複合長繊維からなる合成繊維不織ウエブを製造した。すなわち、前記重合体チップを個々のエクストルーダー型溶融押出機を用いて溶融し、これを繊維横断面が図3に示す割繊型複合断面(配列合計数=7)となる紡糸口金を通して紡糸した。溶融紡糸に際しては、A成分であるポリエチレンテレフタレート重合体の溶融温度を285℃、B成分であるポリエチレン重合体の溶融温度を285℃とし、単孔吐出量を1.2g/10分とし、ポリエチレン重合体を芯部に、ポリエチレンテレフタレート重合体を6セグメントに分割して鞘成分に配し、A成分/B成分の複合比(重量比)が1/1とする条件下にて行った。溶融紡糸された糸条を公知の冷却器にて冷却した後、エアーサッカを用い牽引速度3600m/分で引取った後、コロナ放電手段を用いて開繊し、移動する捕集面上に捕集・堆積させてウエブとした。このウエブの単繊維繊度は、3.0デニール(ポリエチレンテレフタレート:0.25デニール×6、ポリエチレン:1.5デニール)であった。
【0058】
次いで、得られたウエブに部分的な熱圧接処理を施して、目付け50g/m2の合成繊維不織ウエブを作成した。熱圧接処理条件は、面積が0.6mm2 の彫刻が圧接点密度20点/cm2 かつ圧接面積率12%で配設されたエンボスロールと表面が平滑な金属ロールとを用いた。このとき、エンボスロールおよび表面が平滑な金属ロールの表面温度を125℃とし、両ロール間の線圧を50kg/cmとして実施した。
【0059】
一方、平均繊維長25mm、平均繊度1.5デニールの木綿の晒し綿を用い、ランダムカード機により、繊維の配列が一様でない目付け70g/m2 の木綿繊維不織ウエブを作成した。
【0060】
そして、合成繊維不織ウエブの片面に木綿繊維不織ウエブを積層し、50メッシュの金網上に載置して加圧液体流処理を施した。加圧液体流処理は、孔径0.12mmの噴射孔が孔間隔0.62mmで3群配列で配置された加圧液体流装置を用い、積層体の上方50mmの位置から2段階に分けて加圧液体流処理を施した。第1段階の処理では圧力を30kg/cm2 Gとし、第2段階の処理では圧力70kg/cm2 Gのの加圧液体流により2回の処理を施した。得られた処理物より過剰水分の除去と乾燥処理を施し、目付け120g/m2 の積層シートを得た。この積層シートの物性を表1に示す。
【0061】
この積層シートを袋状に成形してカイロ用袋とする方法としては、得られた積層シートを幅20cm、長さ15cmに裁断し、幅方向に2つ折りして、2枚のシート部を形成し、この2枚のシート部の折曲線に沿う繋がり部を除く残りの3つの辺において、面積2mm2 の正方形からなる彫刻が1.5mm間隔で3列に円周上に配された超音波加工ロールにより、ロールの押し圧2kg/cm2 、超音波発振周波数19.7kHz、送り速度5m/分にて、超音波ウエルダー処理を施し、使い捨てカイロ用袋を形成した。
【0062】
得られた使い捨てカイロ用袋の接着部の層間剥離強力は、450g/5cm幅であり、実用に耐えうるものであった。
【0063】
実施例2
合成繊維不織ウエブとして、実施例1と同一のA成分、B成分を用い、繊維横断面が図4に示す割繊型複合断面(配列合計数=30)となる紡糸口金を通して、A成分/B成分の複合比(重量比)を1/1とし、エアーサッカーの牽引速度を3200m/分にしたこと以外は実施例1と同一条件下にて、溶融紡糸、開繊、堆積させてウエブを得た。このウエブの単糸繊度が3.0デニール(ポリエチレンテレフタレート:0.05デニール×20、ポリエチレン:0.15デニール)であった。次いで、このウエブに実施例1と同一条件下にて、部分的な熱圧接処理を施して、合成繊維織ウエブを作成した。
【0064】
一方、木綿の白メリヤスより得られた平均繊維長22mm、平均繊度1.5デニール、反毛率90%の反毛を用い、ランダムカード機により、繊維の配列が一様でない目付け60g/m2 の木綿繊維不織ウエブを作成した。
【0065】
そして、得られた合成繊維不織ウエブと木綿繊維不織ウエブとを用い、実施例1と同一条件下にて積層し、加圧液体流処理を施して積層シートを得、さらに、この積層シートを実施例1と同様に袋状に成形してカイロ用袋とした。積層シートの物性を表1に示す。また、得られた使い捨てカイロ用袋の接着部の層間剥離強力は、430g/5cm幅であり、実用に耐えうるものであった。
【0066】
実施例3
A成分として、実施例1と同一のポリエチレンテレフタレート重合体チップを用い、B成分として、融点が210℃、相対粘度が2.60のナイロン6重合体チップを用い、スパンボンド法により、A成分とB成分とで構成される割繊型複合長繊維からなる合成繊維不織ウエブを製造した。すなわち、溶融紡糸に際し、B成分であるナイロン6重合体の溶融温度を260℃とし、単孔吐出量=1.3g/10分、ナイロン6重合体を芯部に配し、エアーサッカーの牽引速度を3800m/分にしたこと以外は実施例1と同一条件下にて、溶融紡糸、開繊、堆積させてウエブを得た。このウエブの単糸繊度が3.0デニール(ポリエチレンテレフタレート:0.25デニール×6、ナイロン6:1.5デニール)であった。次いで、このウエブに、エンボスロールおよび表面が平滑な金属ロールの表面温度を195℃としたこと以外は実施例1と同一条件下にて、部分的な熱圧接処理を施して、合成繊維織ウエブを作成した。
【0067】
そして、得られた合成繊維不織ウエブに、実施例1と同様の目付け100g/m2 の木綿繊維不織ウエブを積層し、実施例1と同一条件下にて、加圧液体流処理を施して積層シートを得、さらに、この積層シートを実施例1と同様に袋状に成形してカイロ用袋とした。積層シートの物性を表1に示す。また、得られた使い捨てカイロ用袋の接着部の層間剥離強力は、410g/5cm幅であり、実用に耐えうるものであった。
【0068】
実施例4
合成繊維不織ウエブを、単糸繊度3.0デニールのポリエチレンテレフタレート重合体から得られた単相型の長繊維により形成したこと以外は実施例1と同一条件にて積層シートを得、さらに、この積層シートを実施例1と同様に袋状に成形してカイロ用袋とした。積層シートの物性を表1に示す。また、得られた使い捨てカイロ用袋の接着部の層間剥離強力は、470g/5cm幅であり、実用に耐えうるものであった。
【0069】
【表1】
【0070】
以上の実施例から明らかなように、本発明の使い捨てカイロ用袋は、強力、柔軟性に優れるとともに、良好な吸湿性を有し、良好な発熱体漏れ防止効果をもつものであり、しかもソフトな肌触り感が得られるものであった。
【0071】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、表面が木綿繊維不織ウエブで構成されていることから、ソフトな肌触り感および柔軟性に優れ、かつ適度の吸湿性を具備させることができる。また、木綿繊維不織ウエブの内側に合成繊維不織ウエブが存在することにより、使い捨てカイロ用袋として大きな強力が得られるとともに、優れた機械的特性、寸法安定性が得られる。また、2枚のシート部の接着部において、合成繊維不織ウエブを構成する熱可塑性重合体が融解して合成繊維不織ウエブが互いに融着するとともに、融解した熱可塑性重合体が木綿繊維不織ウエブの構成繊維間に入り込んで木綿繊維と融着した状態で2枚の積層シート部間が接合しているので、耐剥離性に優れた使い捨てカイロ用袋が得られる。
【0072】
さらに、本発明において、合成繊維不織ウエブとして生分解性熱可塑性重合体を適用すると、カイロ用袋全体が微生物によって完全に分解されるので、使い捨て後の環境面で好適な使い捨てカイロ用袋を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の使い捨てカイロ用袋の展開図である。
【図2】本発明の使い捨てカイロ用袋の完成直前の状態を示す斜視図である。
【図3】本発明における合成繊維不織ウエブを構成する長繊維の繊維横断面の一例を示す模式図である。
【図4】本発明における合成繊維不織ウエブを構成する長繊維の繊維横断面の他の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
1 積層シート
2 木綿繊維不織ウエブ
3 合成繊維不織ウエブ
4a シート部
4b シート部
5 繋がり部
6 接着部
Claims (5)
- 木綿繊維不織ウエブと熱可塑性重合体からなる合成繊維不織ウエブとが積層されて三次元的交絡によって一体化された積層シートにより形成され、この積層シートを前記合成繊維不織ウエブが内側となるように2つ折りして形成される2枚のシート部を備え、この2枚のシート部の繋がり部を除く縁近傍部において、前記熱可塑性重合体が融解して合成繊維不織ウエブが互いに融着するとともに融解した前記熱可塑性重合体が木綿繊維不織ウエブの構成繊維間に入り込んで木綿繊維と融着した状態で2枚の積層シート部間が接合されてなることを特徴とする使い捨てカイロ用袋。
- 合成繊維不織ウエブが、割繊型複合長繊維にて形成されることを特徴とする請求項1記載の使い捨てカイロ用袋。
- 割繊型複合長繊維が、融点差が20℃以上である二成分により形成されることを特徴とする請求項2記載の使い捨てカイロ用袋。
- 合成繊維不織ウエブの構成繊維の単糸繊度が、0.05〜2.0デニールであることを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載の使い捨てカイロ用袋。
- 合成繊維不織ウエブを構成する熱可塑性重合体が、生分解性を有することを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載の使い捨てカイロ用袋。
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