JPH09188983A - スチールワイヤへの波くせ付け方法 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【課題】スチールワイヤの表面を傷付けずに均一な波く
せ付きを行うことができ、スチールコードとしたときに
内部へのゴム浸透性が安定し、コードとゴムとの接着性
が良好な連続波くせ付きのスチールワイヤを得る方法を
提供する。 【解決手段】自転可能な複数本のピンを配した型付け装
置と、入口側と出口側の各ガイドロールの間に直列状の
２個の中央ロールを配置したワイヤツイスト装置を用
い、各スチールワイヤをそれぞれ型付け装置のピンに沿
わせた後、ワイヤツイスト装置における２個の中央ロー
ルにたすき掛けで数回巻き付けて撚線機内に導き、コー
ド製造時に前記ワイヤツイスト装置をスチールワイヤの
通過ライン上で撚線機の回転方向と同方向に公転させる
ことにより撚り合わせ前のスチールワイヤに連続した螺
旋状の波くせを施す。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は自動車用ラジアルタ
イヤや搬送用コンベアベルトなどのゴム製品の補強材と
して使用されるスチールワイヤへの波くせ付け方法に関
する。

【０００２】

【従来の技術】自動車用ラジアルタイヤや搬送用コンベ
アベルトなどで代表されるゴム製品には補強材としてス
チールコードが汎用されている。このようなスチールコ
ードは一般に複数本のスチールワイヤを撚り合わせて構
成されるが、ゴムマトリックスとよく一体化していない
と使用時に複合体としての機能を十分に発揮することが
できなくなる。また、ゴムマトリックスがコードの内部
までよく浸透しないと、ゴムマトリックスで満たされて
いないコード内部の空間を水が伝わり、その結果、錆が
広がってゴム複合体の寿命も低下してしまう。

【０００３】こうした問題点を解消する方法の一つとし
て、コードを構成するスチールワイヤに撚りくせとは異
なる微小な波くせを撚り合わせ前に施し、このスチール
ワイヤを複数本撚り合わせたスチールコードがある。こ
のようなスチールコードは微小な波くせによってスチー
ルワイヤ間に隙間が形成されるため、タイヤ製造の際の
加硫工程においてコード内部にゴムが浸透できるように
なり、ゴムマトリックスとスチールコードの一体性を保
持することができるものである。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】このようなスチールワ
イヤへの波くせを施す方法として図７と図８のようなも
のがある。すなわち、撚線機５の入口側に、基板１１４
に３〜５本程度の固定ピン１１０，１１１，１１２を千
鳥状または直列状に配置した型付け装置１１を各スチー
ルワイヤ１，２，３，４のパスラインに装備させ、各型
付け装置１１毎に１本ずつのスチールワイヤを前記固定
ピン１１０，１１１，１１２に沿わせて誘導し、かかる
型付け装置１１をスチールワイヤ長手軸に対して撚線機
５の回転方向とは逆方向に高速で公転させながら通過さ
せることにより、スチールワイヤ１，２，３，４に連続
した螺旋状の波くせを付けるのである。

【０００５】しかしながらこの方法では、公転する型付
け装置１１の固定ピン１１０，１１１，１１２に対して
スチールワイヤの接触位置が一定せず、螺旋状の波くせ
形状が不均一になりやすいという問題があった。また、
この方法でスチールワイヤに波くせを施すと、スチール
ワイヤのねじりトルクが大きくなり、撚り合わせたコー
ドには強い自転性が残ってしまう。これを矯正するため
には、撚り合わせたスチールコードを巻き取る前で相対
する２個のロールにコードを巻き付けてグリップしなが
らスチールコードのパスラインを軸として公転するロー
ラを備えた過捻機５４によりスチールコードを塑性域ま
で捻じることが必要になる。このため、撚り合わせ直後
のスチールコードの自転性が強いとこの過捻機５４での
過捻率を高くしなければならず、このようにすると過捻
機５４におけるローラとの擦れによりスチールワイヤに
傷が付きやすくなってしまい、ゴムとの加硫接着に寄与
するワイヤ表面の真ちゅうめっき層が傷められてしま
う。このように波くせが不均一となったり、スチールワ
イヤの傷が多くなると、スチールコードの内部へのゴム
浸透性が不安定になったり、コードとゴムとの接着性が
低下したりし、その結果、複合体としての機能が十分に
活かされないようになるという問題があった。

【０００６】本発明は前記のような問題点を解消するた
めに研究して創案されたもので、その目的とするところ
は、スチールワイヤの表面を傷付けずに均一な波くせ付
きを行うことができ、撚り合わせてスチールコードとし
たときに内部へのゴム浸透性が安定し、コードとゴムと
の接着性が良好で、複合体としての機能を十分に活かす
ことができるスチールワイヤへの波くせ付け方法を提供
することにある。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
本発明は、複数本のスチールワイヤを撚線機で撚り合わ
せるにあたり、それぞれ自軸に対して回転可能な複数本
のピンを千鳥状または直列状に配した型付け装置と、入
口側と出口側の各ガイドロールの間に直列状の２個の中
央ロールを配置したワイヤツイスト装置を用い、複数本
のスチールワイヤをそれぞれのサプライボビンから引出
し、各スチールワイヤをそれぞれ前記型付け装置のピン
に沿わせた後、ワイヤツイスト装置における入口ガイド
ロールを介して２個の中央ロールにたすき掛けで数回巻
き付けて出口ガイドロールを介して引出して撚線機内に
導き、コード製造時に前記ワイヤツイスト装置をスチー
ルワイヤの通過ライン上で撚線機の回転方向と同方向に
公転させることにより撚り合わせ前のスチールワイヤに
連続した螺旋状の波くせを施す構成としたものである。

【０００８】

【発明の実施の形態】以下本発明の実施例を添付図面に
基いて説明する。図１ないし図４は本発明によるスチー
ルワイヤへの波くせ付け方法の一例を示しており、１ａ
〜１ｄは表面に真ちゅうめっきが施されたスチールワイ
ヤ、５は撚線機本体、６ａ〜６ｄはスチールワイヤを巻
収したサプライボビンであり、各サプライボビンには図
示しないがブレーキ装置が付属されており、該ブレーキ
装置によりスチールワイヤ１ａ〜１ｄは所定の張力を付
与された状態で引き出されるようになっている。７はサ
プライボビン６ａ〜６ｄの下流のワイヤパスライン上に
固定された型付け装置である。該型付け装置７は、図２
(a)のように板状または円錐状の基体７０に複数本たと
えば３〜５本のピン７１を一定の間隔をおいて千鳥状
(直列状でもよい)に配しており、各ピン７１は図２(b)
のように基体７０に対してベアリング７２によって自軸
に対して回転自在となっている。

【０００９】８は前記型付け装置７の下流側のワイヤパ
スライン上に配されたワイヤツイスト装置であり、図３
(a)のように板状または筒状の基体８０に入口ガイドロ
ール８１と出口ガイドロール８３を設けるとともに、そ
れらの間に径が前記ロール８１，８３よりも相対的に大
きい２個の中央ロール８２，８２’を間隔をおいて直列
状に配している。中央ロール８２，８２’は図３(b)の
ようにそれぞれ基体８０に対してベアリング８４によっ
て自軸に対し回転自由となっており、しかも、基体８０
は公転駆動装置によりパスラインに対して撚線機本体５
の回転方向と同方向に自在に公転できるようになってい
る。入口ガイドロール８１および出口ガイドロール８３
も同様である。なお、前記中央ロール８２，８２’はス
チールワイヤをたすき掛けで数回巻回した後、出口ガイ
ドロール８３に誘導されるよう複数本の溝８２０を有し
ている。公転駆動装置はたとえば基体８０の長手方向に
支軸を設けこれを軸受を介して回転自由に支持させると
共に、一方の支軸に歯車やプーリなどの伝動要素を設
け、これを撚線機本体５の回転機構からの伝動手段と回
転数調整手段を介して連絡したものが用いられる。回転
数調整手段はスチールワイヤに施す波くせピッチにより
ワイヤツイスト装置の回転数を調節するためである。

【００１０】その他図面において、９はワイヤツイスト
装置８の下流に設けられた集線板で、スチールワイヤ１
ａ〜１ｄを通す孔を配設している。１０は集線板で集合
されたスチールワイヤを撚線機本体５に導くボイスであ
る。撚線機本体５はこの実施例ではバンチャー式撚線機
が用いられており、クレードル５２と、原動機５０で駆
動される中空軸５１，５１’とを有し、クレードル５２
と同軸上に前記中空軸５１，５１’と一体回転する回転
弓５３，５３を取り付けており、クレードル５２には巻
取りリール５６とこれよりも上流に引取りキャプスタン
５５を設け、さらにこれよりも上流に過捻機５４を配し
ている。そして入口側の中空軸５１の上流に前記ボイス
１０が設けられている。

【００１１】本発明はスチールコードを製造するにあた
って、各サプライボビン６ａ〜６ｄからそれぞれ引き出
したスチールワイヤ１ａ〜１ｄをそれぞれのパスライン
上にある型付け装置７の複数のピン７１に順次沿わせ、
ついで、それぞれワイヤツイスト装置８に導く。このワ
イヤツイスト装置８においては、入口カイドロール８１
に沿わせた後、第１の中央ロール８２を経由して第２の
中央ロール８２’に導き、これの周りを経由して再び第
１の中央ロール８２の周りを回すというようにたすき掛
けで数回巻き付け、最後に出口ガイドロール８３に沿わ
せてから集線板９およびボイス１０を経て中空軸５１か
ら撚線機本体５内に導く。そして、ガイドロール５７か
ら回転弓５３を経由し、ガイドロール５８から中空軸５
１’を経て過捻機５４に導き、引取りキャプスタン５５
を経て巻取りリール５６に導く。そしてこの状態で中空
軸５１，５１’を駆動して回転弓５３を回転させるとと
もに、回転弓５３の回転と同方向でかつ回転弓回転数と
所要の比でワイヤツイスト装置８をスチールワイヤに対
して公転させるものである。

【００１２】型付け装置７はパスライン上で位置が固定
されているため、各スチールワイヤ１ａ〜１ｄはワイヤ
ツイスト装置８の公転により自転しながら型付け装置７
の複数本の回転ピン７１の間をしごかれて通過すること
になり、各スチールワイヤ１ａ〜１ｄは螺旋状の連続し
た波付けが施される。こうして螺旋状の波付けが施され
た各スチールワイヤ１ａ〜１ｄは集線板９およびボイス
１０を通して撚線機本体５内に導かれ、ガイドローラ５
７から回転弓５３及びガイドロール５８を通過する間に
撚り合わされ、続いて過捻機５４によりコードの回転性
が矯正された後、引取りキャプスタン５５を経て巻取り
リール５６に巻き取られる。これにより図４および図５
に示すようなスチールコードＳとなり、スチールコード
Ｓを構成するスチールワイヤ１ａ(１ｂ，１ｃ，１ｄ)は
撚りによる螺旋波と異なる微小な螺旋状のくせ付け波１
００を有し、そのくせ付け波１００により多数の隙間ｃ
が創成されている。

【００１３】上記のように型付け装置７は固定されてお
り、それに続くワイヤツイスト装置８の入口ガイドロー
ル８１がパスラインを一定位置におさえているため、ス
チールワイヤ１ａ〜１ｄに施された螺旋状の微小波くせ
の形状、寸法は均一に保持される。しかもワイヤツイス
ト装置８においては２つの直列配置の中央ロール８２，
８２’を有し、それらにスチールワイヤがたすき掛けで
数回巻回されて誘導されるためしっかりとクリップされ
滑りが生じにくい。したがって、螺旋状の微小波くせを
確実に創成することができる。また、捻りトルクの発生
が少なくなるのでその後の過捻率を相対的に下げること
が可能となり、それによりスチールワイヤ１ａ〜１ｄの
傷も小さくすることができる。しかも、型付け装置７は
それ自体が位置固定であるのに対して、ピン７１は自軸
に対して回転自在であるから、スチールワイヤ１ａ〜１
ｄとの摩擦が激減するとともに接触点が逐次移動し、し
たがって、スチールワイヤ１ａ〜１ｄの傷の発生もさら
に低減することができる。

【００１４】本発明方法の例を述べると、直径0.30mmの
スチールワイヤを４本用いて、それらに波くせを施し
て、１×４構造のスチールコードを製造した。型付け装
置の回転ピン７１は直径２mmとして千鳥状に配置した。
ワイヤツイスト装置の入口、出口のガイドロールは直径
１６mmとし、２個の中央ロールはそれぞれ直径４０mmと
しこれにスチールワイヤをたすき掛けで３回巻き付け、
ワイヤツイスト装置を撚線機本体と同方向に回転数比で
４:１で公転させた。このようにして製造したスチール
コードと図７による従来法によるスチールコードの各連
続波くせ付きスチールワイヤについて、特性を比較し
た。まず、コードを分解して図６に示す如きワイヤの波
くせ高さｈとピッチｐを測定した。その結果、そのばら
つきは従来法によるものに比べて、高さおよびピッチと
も約２０％減少していた。また、コードを一定荷重のも
とでゴム中で加硫した後、コードを取り出して長手方向
に分解し、ゴムの浸透度合いを目視検査したところ、従
来法の７０〜８５％に対し、本発明によるものは８５〜
９０％と良好範囲に安定していた。また、ゴムとの接着
試験を行ったところ、従来法でのスチールコード接着率
７５〜９０％に比べて本発明法のそれは８５〜９０％と
良好範囲に安定していた。

【００１５】

【発明の効果】以上説明した本発明によるときには、ス
チールコードを構成するスチールワイヤに対し長手方向
で均一な螺旋状の微小波くせを施すことができ、しかも
スチールワイヤに対する傷付けが少なくそのめっきの損
傷を低減することができるためゴムとの接着性能が向上
され、スチールコードの特性を十分に活かすことができ
るというすぐれた効果が得られる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明によるスチールワイヤへの波くせ付け方
法を模式的に示す説明図である。

【図２】（ａ）は図１における型付け装置とスチールワ
イヤの取り合いを示す側面図である。（ｂ）は（ａ）の
部分断面図である。

【図３】（ａ）は本発明におけるワイヤツイスト装置と
スチールワイヤの取り合いを示す側面図である。（ｂ）
は（ａ）の部分的断面図である。

【図４】本発明により製造されたスチールコードの一例
を示す拡大側面図である。

【図５】（ａ）（ｂ）は本発明により製造されたスチー
ルコードを例示する断面図である。

【図６】本発明によるスチールワイヤを用いたスチール
コードを分解して取り出したスチールワイヤの部分拡大
図である。

【図７】従来のスチールワイヤへの波くせ付け方法を模
式的に示す説明図である。

【図８】図７の部分的拡大図である。

【符号の説明】

１ａ〜１ｄ スチールワイヤ ５ 撚線機本体 ６ａ〜６ｄ サプライボビン ７ 型付け装置 ８ ワイヤツイスト装置 ７１ ピン（回転ピン） ８１ 入口ガイドロール ８２ 中央ロール ８３ 出口ガイドロール １００ くせ付け波

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】複数本のスチールワイヤを撚線機で撚り合
   わせるにあたり、それぞれ自軸に対して回転可能な複数
   本のピンを千鳥状または直列状に配した型付け装置と、
   入口側と出口側の各ガイドロールの間に直列状の２個の
   中央ロールを配置したワイヤツイスト装置を用い、複数
   本のスチールワイヤをそれぞれのサプライボビンから引
   出し、各スチールワイヤをそれぞれ前記型付け装置のピ
   ンに沿わせた後、ワイヤツイスト装置における入口ガイ
   ドロールを介して２個の中央ロールにたすき掛けで数回
   巻き付けて出口ガイドロールを介して引出して撚線機内
   に導き、コード製造時に前記ワイヤツイスト装置をスチ
   ールワイヤの通過ライン上で撚線機の回転方向と同方向
   に公転させることにより撚り合わせ前のスチールワイヤ
   に連続した螺旋状の波くせを施すことを特徴とするスチ
   ールワイヤへの波くせ付け方法。