JPH09176527A - 紫外線および/または赤外線遮断膜とその形成用塗料および形成方法 - Google Patents

紫外線および/または赤外線遮断膜とその形成用塗料および形成方法

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JPH09176527A
JPH09176527A JP33449295A JP33449295A JPH09176527A JP H09176527 A JPH09176527 A JP H09176527A JP 33449295 A JP33449295 A JP 33449295A JP 33449295 A JP33449295 A JP 33449295A JP H09176527 A JPH09176527 A JP H09176527A
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powder
ultraviolet
liquid
layer
infrared
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JP33449295A
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English (en)
Inventor
Toshiharu Hayashi
年治 林
Masahiro Sekiguchi
昌宏 関口
Masahiro Hagiwara
正弘 萩原
Masahide Arai
将英 荒井
Akira Nishihara
明 西原
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Materials Corp
Original Assignee
Mitsubishi Materials Corp
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 硬度と耐候性が高く、近赤外域での遮断作用
が高く、かつ視感度も優れた紫外線および/または赤外
線遮断膜を低コストで形成する。 【解決手段】 透明基体上に、錫ドープ酸化インジウム
微粉末と紫外線遮断能を有するZnO(またはTiO2) 微粉末
の一方または両方を含有する、バインダーを含まない、
粘度15 cps以下の分散液から塗膜を形成し、必要であれ
ば上記微粉末の他方を含有する同様の分散液から塗膜を
形成し、次いで形成された粉末層の上に粘度が10 cps以
下、SiO2換算濃度が 0.5〜2.5 重量%のシリカゾル溶液
を塗布し、加熱乾燥させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、紫外線および/ま
たは赤外線遮断ガラスおよび広義には紫外線および/ま
たは赤外線遮断能を備えた透明基体と、その製造に用い
る紫外線および/または赤外線遮断膜形成用塗料および
紫外線および/または赤外線遮断膜の形成方法とに関す
る。
【0002】本発明の紫外線および/または赤外線遮断
膜は、高硬度で傷つきにくく、耐候性と視感度に優れて
いるため、建築および車両用ガラスに紫外線および/ま
たは赤外線遮断能を付与するのに特に適している。この
紫外線および/または赤外線遮断能により、紫外線によ
る皮膚への悪影響を軽減でき、および/または夏期は太
陽光の赤外線を遮断して大幅な冷房用電力節減効果を達
成し、冬期は室内の保温効果を発揮させることができ
る。
【0003】
【従来の技術】建築および車両用のガラスに適用して紫
外線と赤外線の両方を遮断できる従来の紫外線・赤外線
遮断膜として、特開平2−75683 号公報に記載のよう
に、酸化亜鉛(ZnO) 粉末や酸化チタン(TiO2)粉末などの
無機系紫外線吸収剤と、酸化マグネシウム(MgO) 粉末や
シリカ(SiO2)粉末などの無機系赤外線吸収剤の両方を、
バインダーとなる高分子樹脂溶液中に分散させた塗料を
ガラス面に噴霧塗布して形成した紫外線・赤外線遮断膜
が知られている。
【0004】また、紫外線吸収膜である酸化亜鉛薄膜
と、赤外線吸収膜であるAl含有酸化亜鉛粉末薄膜とを、
スパッタ法、真空蒸着法、CVD法などの気相法により
窓ガラス等の透明基体上に積層した紫外線・赤外線遮断
膜が、特公平4−44721 号公報に記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、特開平2−75
683 号公報公報に金属酸化物の紫外線・赤外線遮断膜で
は、特に近赤外域での遮断作用が不十分なため、日射透
過率 (JIS R 3106) を十分に低くすることができず、こ
の結果、空調への効果 (夏期の冷房用電力節減効果と冬
期の保温効果) が損なわれる。
【0006】特公平4−44721 号公報に記載の方法は、
真空設備を必要とする気相法で2種類の膜を形成するた
め、工程が複雑でコストが高く、しかも建築用の大面積
の窓ガラスには適用しにくいという欠点がある。
【0007】さらに、上記の紫外線・赤外線遮断膜は、
耐候性や硬度に劣るため耐久性の面で満足できないばか
りか、色むら (干渉色) を生じやすいため、透明ガラス
の視感度が悪化し、使用しにくいという問題もあった。
本発明の目的は、硬度と耐候性が高く、かつ視感度も優
れた紫外線および/または赤外線遮断膜を低コストで形
成する手段を提供することである。本発明の別の目的
は、近赤外域での遮断作用が高く、日射透過率を十分に
低下させて夏期の冷房用電力節減効果と冬期の保温効果
の高い赤外線遮断膜または紫外線・赤外線遮断膜を形成
する手段を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的は、赤外線遮断
材として錫ドープ酸化インジウム (以下、ITOと略記
する) 粉末を用いた、下記の構成の本発明により達成す
ることができる。
【0009】(1) 基体上に塗布するための第1液、およ
び第1液の塗布で形成した塗膜上に塗布するための第2
液、からなる2液型の紫外線および/または赤外線遮断
膜形成用塗料であって、前記第1液は、平均一次粒子径
0.5 μm以下のITO粉末と、平均一次粒子径0.5 μm
以下の紫外線遮断能を有する粉末、の一方または両方が
溶媒中に分散している、粘度15 cps以下の分散液であ
り、この分散液はバインダーを含有せず、分散液中の粉
末合計含有量が1〜25重量%であり、前記第2液は、加
水分解性有機シラン化合物を加水分解・縮合させて得
た、粘度が10 cps以下、SiO2換算濃度が 0.5〜2.5 重量
%のシリカゾル溶液である、ことを特徴とする、紫外線
および/または赤外線遮断膜形成用塗料。
【0010】(2) 上記塗料を用いて紫外線および/また
は赤外線遮断膜を形成する方法であって、透明基体上に
第1液を塗布して乾燥させ、粉末層を形成する工程、お
よびこの粉末層上に第2液を塗布し、加熱乾燥させる工
程、からなる透明基体上に紫外線および/または赤外線
遮断膜を形成する方法。
【0011】(3) 透明基体上に、平均一次粒子径0.5 μ
m以下のITO粉末と平均一次粒子径0.5 μm以下の紫
外線遮断能を有する粉末の一方を1〜25重量%含有し、
バインダーを含有しない、粘度15 cps以下の分散液を塗
布して乾燥させる工程、その上に上記2種類の粉末の他
方を1〜25重量%含有し、バインダーを含有しない、粘
度15 cps以下の分散液を塗布して乾燥させる工程、およ
び形成された粉末層の上に加水分解性有機シラン化合物
を加水分解・縮合させて得た、粘度が10 cps以下、SiO2
換算濃度が 0.5〜2.5 重量%のシリカゾル溶液を塗布
し、加熱乾燥させる工程、からなる透明基体上に紫外線
および赤外線遮断膜を形成する方法。
【0012】(4) 透明基体上に、第1層として平均一次
粒子径0.5 μm以下のITO粉末と平均一次粒子径0.5
μm以下の紫外線遮断能を有する粉末の一方または両方
とシリカとからなる紫外線および/または赤外線遮断層
と、その上の第2層としてシリカ保護層を有する、紫外
線および/または赤外線遮断能を有する透明基体。
【0013】(5) 第1層がITO粉末と紫外線遮断能を
有する粉末の両方を含有し、これら2種類の粉末が第1
層内で上下に分層して存在する、上記(4) 記載の紫外線
および赤外線遮断能を有する透明基体。
【0014】(6) 透明基体がガラスであり、第1層がI
TO粉末と紫外線遮断能を有する粉末の両方を30:70〜
70:30の重量比で含有し、第1層の膜厚が 0.1〜2.0 μ
m、第2層の膜厚が0.02〜0.5 μmである、上記(4) ま
たは(5) 記載の紫外線および赤外線遮断能を有するガラ
ス。
【0015】本発明の特徴をまとめると次の通りであ
る。 赤外線遮断材として、近赤外域での遮断効果の高いI
TO粉末を用いる。 有機バインダーの代わりに、シリカゾルをバインダー
とする。このシリカゾルは、塗布後の加熱によりガラス
質のシリカとなる。それにより、高硬度と高耐候性が得
られる。
【0016】バインダーを使用しないで、ITO粉末
および/または紫外線遮断能を有する粉末(以下、紫外
線遮断粉末という)のみからなる塗膜 (粉末層) を基体
上に形成した後、その上にシリカゾルを塗布して粉末層
に含浸させる。シリカゾルが粉末層の粒子間に浸透し、
バインダーとして機能して、加熱後に粉末がシリカで結
合された第1層が形成されると同時に、粉末層の上にた
まったシリカゾルによって第1層の上にシリカのみから
なる第2層が形成される。
【0017】この2層構造により、第1層が高屈折率
で、第2層が低屈折率を示すため、干渉色による色ムラ
を解消できる。また、粉末層は、バインダーを使用せず
に形成されるため、粉末充填密度が極めて高く、紫外線
および/または赤外線遮断効果が著しく高くなる。
【0018】
【発明の実施の形態】
[第1液]本発明の2液型の紫外線および/または赤外線
遮断膜形成用塗料の第1液は、溶媒中に赤外線遮断粉末
と紫外線遮断粉末の一方または両方が分散した分散液か
らなり、バインダーを含有していない、バインダーレス
の分散液である。
【0019】本発明において、「バインダー」とは、重
合体または重合や架橋によって重合体を形成する単量体
からなる皮膜形成成分を意味し、有機系、無機系を問わ
ない。即ち、有機ポリマーやモノマーに加えて、アルコ
キシシラン、クロロシランなどの金属酸化物皮膜を形成
する無機系バインダーをも含む意味である。従って、こ
の第1液は、ポリマー、モノマー、さらにはアルコキシ
シランなどを含むバインダーを含有していない。第1液
がバインダーを含有していると、第1液の塗布で形成さ
れた粉末層における粉末充填密度が低下し、紫外線およ
び/または赤外線遮断効果が低下する。
【0020】このようなバインダーを含有していなくて
も、紫外線および/または赤外線遮断用の粉末を溶媒に
分散させた分散液を基体に塗布することで、粉末の凝集
性を利用して、溶媒の蒸発後に実質的に粉末のみからな
る塗膜 (粉末層) を形成することができる。但し、この
粉末層は塗膜強度が不十分であるので、その上にバイン
ダーを含有する第2液を塗布し、粉末層に含浸させるの
である。
【0021】ITO粉末 本発明では、赤外線遮断材として、平均一次粒子径0.5
μm以下のITO粉末を用いる。透明性をより良好にす
るには、ITO粉末の平均一次粒子径は好ましくは0.2
μm、より好ましくは0.1 μm以下である。平均一次粒
子径の下限は特に限定されないが、あまりに微粒子にな
ると、凝集し易くなって、分散液の調製が難しくなるの
で、好ましくは0.01μm以上である。ITO粉末中のSn
ドープ量は、Sn/(Sn+In)の原子で、0.01〜0.15、特に0.
04〜0.12の範囲が好ましい。
【0022】ITO粉末は、常法に従って、Inと少量の
Snの水溶塩を含む水溶液をアルカリと反応させてInとSn
の水酸化物を共沈させて得た共沈物、或いはInとSnの水
酸化物および/または酸化物の混合物からなる原料粉末
を、大気中で加熱焼成して酸化物に変換させることによ
り製造できる。本発明においては、このような従来法で
製造したITO粉末を利用することもできる。
【0023】しかし、従来法で製造しITO粉末は、可
視領域での透過性に優れていて透明性は良好であるもの
の、赤外線遮断作用については1000 nm 超、多くは1200
nm以上の長波長域の赤外線しか遮断せず、1200 nm 以
下、特に1000 nm 以下の近赤外域の遮断効果が不足して
いる。従って、このようなITO粉末を赤外線遮断材と
して使用すると、可視域に近接した近赤外域の赤外線を
遮断することができないため、冷房用電力節減効果や保
温効果が低下する。
【0024】そのため、好適態様にあっては、ITO粉
末として、最低1000 nm より長波長側の赤外線を全面的
に90%以上遮断する赤外線遮断能を有するものを使用す
る。即ち、このITO粉末は最低赤外線遮断波長(600 n
m より長波長側での光透過率が10%以下になる最低波
長) が1000 nm 以下であるものを使用する。ITO粉末
の最低赤外線遮断波長は、より好ましくは 700〜900 nm
の範囲内にある。
【0025】最低赤外線遮断波長が1000 nm 以下の好ま
しいITO粉末は、上記の原料粉末を加圧不活性ガス中
で焼成するか、或いは大気中での焼成により得られたI
TO粉末を加圧不活性ガス中で熱処理することにより製
造することができる。ただし、製造方法はこれに限られ
るものではなく、最低赤外線遮断波長が1000 nm 以下で
あれば、他の方法で製造されたITO粉末も有用であ
る。
【0026】この焼成または熱処理 (以下、これらを加
熱処理と総称する) 時の不活性ガス雰囲気は、アルゴ
ン、ヘリウムなどの希ガス、窒素ガス、およびこれらの
混合ガスのいずれでもよい。不活性ガス雰囲気の圧力条
件は、室温下における全圧で2kgf/cm2 以上、特に5〜
60 kgf/cm2の範囲内が好ましい。不活性ガス雰囲気中の
酸素分圧は0.2 kgf/cm2 (150 Torr)以下、特に0.02 kgf
/cm2 (15 Torr)以下に制限することが好ましい。加熱処
理温度は、一般に 350〜1000℃の範囲内、好ましくは 4
00〜800 ℃の範囲内の温度で1〜4時間行うことが好ま
しい。
【0027】この方法で得られたITO粉末の特性を調
べたところ、粉末の色調はxy色度図上でx値 0.220〜
0.295 、y値 0.235〜0.325 の範囲内であり、かつ結晶
の格子定数が10.110〜10.160Åの範囲内にあるという共
通の特性を有していた。従って、この特性を調べること
によっても、本発明で用いる好ましいITO粉末を特定
することができる。
【0028】紫外線遮断能を有する粉末(紫外線遮断粉
末) 紫外線遮断粉末は特に制限されず、紫外線遮断能を持つ
ことが知られている任意の無機または有機粉末を使用す
ることができる。第2液の塗布後の加熱を高温で行う場
合には、この加熱に耐える耐熱性に優れた紫外線遮断粉
末、例えば、無機酸化物型のものを使用することが好ま
しい。好ましい紫外線遮断粉末は、紫外線遮断能の高い
酸化亜鉛(ZnO) 粉末および酸化チタン(TiO2)粉末であ
り、その一方または両方を使用することができる。
【0029】紫外線遮断粉末も、透明性を阻害しないよ
うに、平均一次粒子径0.5 μm以下、好ましくは0.01μ
m以上で、0.2 μm以下、特に0.1 μm以下のものを使
用する。
【0030】溶媒 溶媒は、上記の微粉末を分散させることができれば特に
制限されず、有機溶媒および水から選んだ1種もしくは
2種以上の溶媒を使用できる。使用可能な有機溶媒の例
としては、メタノール、エタノール、イソプロパノー
ル、ブタノール、ヘキサノールなどのアルコール類、ア
セトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケト
ン、シクロヘキサノン、イソホロン、4−ヒドロキシ−
4−メチル−2−ペンタノン等のケトン類、トルエン、
キシレン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素類、
N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド
などのアミド類、ジメチルスルホキシドなどのスルホキ
シド類などが挙げられる。
【0031】好ましい溶媒はアルコール性溶媒、即ち、
上記のような1種もしくは2種以上のアルコールのみか
らなるか、或いは1種もしくは2種以上のアルコール
に、これと相溶する1種もしくは2種以上の他の有機溶
媒 (上記のケトン系溶媒が好ましい) および/または水
を混合したアルコール含有混合溶媒である。
【0032】その他の添加剤 第1液は、上記の粉末と溶媒のみから構成したものでも
よいが、好適態様にあっては、さらに有機チタン化合物
またはその加水分解・縮合反応生成物(或いはその両
者)を第1液に存在させる。この有機チタン化合物は、
膜補強剤として作用し、第1液の塗布で形成された塗膜
における粉末粒子間に一定した均一な結合性を与え、塗
膜性能を安定化させることができる。
【0033】本発明で使用するのに適した有機チタン化
合物としては、テトライソプロポキシチタン、テトラキ
ス(2−エチルヘキソキシ) チタン、テトラステアロキシ
チタンなどのテトラアルコキシチタン類、ジイソプロポ
キシ・ビス (アセチルアセトナト) チタン、ジ−n−ブ
トキシ・ビス (トリエタノールアミナト) チタン、ジヒ
ドロキシ・ビス (ラクタト) チタン、チタン−i−プロ
ポキシオクチレングリコレート、チタンステアレート等
が挙げられる。
【0034】本発明で使用できる別の有機チタン化合物
は、チタンカップリング剤として知らる有機チタン化合
物である。チタンカップリング剤の例には、イソプロピ
ルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ
デシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルト
リス (ジオクチルパイロホスフェート) チタネート、テ
トライソプロピルビス (ジオクチルホスファイト) チタ
ネート、テトラオクチルビス (ジトリデシルホスファイ
ト) チタネート、テトラ(2,2−ジアリルオキシメチル−
1−ブチル) ビス (ジ−トリデシル) ホスファイトチタ
ネート、ビス (ジオクチルパイロホスフェート) オキシ
アセテートチタネート、トリス (ジオクチルパイロホス
フェート) エチレンチタネートなどがある。
【0035】有機チタン化合物が加水分解性 (例、テト
ラアルコキシチタン類) の場合には、加水分解・縮合生
成物として使用することもできる。好ましい有機チタン
化合物は、テトラアルコキシチタン類、および次の構造
式(1)〜(8) で示されるチタンカップリング剤である。
【0036】
【化1】
【0037】第1液の塗料組成物には、さらにバインダ
ー以外の任意添加成分を含有させることができる。かか
る添加成分の例には、界面活性剤 (カチオン系、アニオ
ン系、ノニオン系) 、pH調整剤 (有機酸または無機
酸、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、オクチ
ル酸、塩酸、硝酸、過塩素酸等、或いはアミン) などが
ある。
【0038】第1液の調製 第1液は、溶媒に必要によりチタン化合物やその他の添
加剤を配合し、これにITO粉末と紫外線遮断粉末の一
方または両方を加えて、塗料の調製に慣用されている分
散・混合手段を利用して粉末を溶媒中に分散させること
により調製することができる。
【0039】即ち、用途に応じて、形成された膜が紫外
線遮断能のみを有していればよい場合 (例、革、天然色
猶の劣化防止用透明ガラス)には第1液にITO粉末を
添加する必要はなく、逆に形成された膜が赤外線遮断能
のみを有していればよい場合(例、温室用ガラス) には
第1液に紫外線遮断粉末を添加する必要はない。また、
後述するように、ITO粉末を含有する層と紫外線遮断
粉末を含有する層とに分けて粉末層を形成する場合に
も、第1液として、粉末がITO粉末のみからなる分散
液と、粉末が紫外線遮断粉末のみからなる分散液の2種
類を用意する。
【0040】しかし、好ましくは、第1液にITO粉末
と紫外線遮断粉末の両者を含有させて、一度の塗布で、
紫外線および赤外線遮断能 (以下、紫外線・赤外線遮断
能と記す) を示す粉末層を形成する。この場合、ITO
粉末と紫外線遮断粉末の割合は、重量比で30:70〜70:
30の範囲内とすることが好ましい。この重量比はより好
ましくは35:65〜65:35である。
【0041】第1液 (分散液を2種類用意する場合には
各液) における、粉末の量 (ITO粉末と紫外線遮断粉
末の両方を含有する場合は合計量) は、1〜25重量%の
範囲とする。第1液がバインダーを含有していないた
め、この液から形成される粉末層の膜厚 (従って、第1
層の膜厚) は、粉末含有量に大きく依存する。粉末含有
量が合計1重量%未満では、十分な紫外線および/また
は赤外線遮断効果を持つ第1層を形成するのに、第1液
の塗布を何回も反復する必要があり、効率が悪い。粉末
含有量が合計で25重量%を超えると、粉末層の膜厚が大
きくなりすぎ、第2液が粉末層中に十分に浸透できない
ため、膜の密着強度が低下する。好ましい粉末含有量は
合計2〜20重量%の範囲である。
【0042】第1液に有機チタン化合物を添加する場合
には、有機チタン化合物を粉末の量(ITO粉末と紫外
線遮断粉末の両方を含有する場合は合計量) に対して
0.1〜2.0 重量%の割合で使用する。この量が0.1 重量
%未満では有機チタン化合物による膜補強効果がほとん
どなく、2.0 重量%を超えると密着強度が低下する。有
機チタン化合物の添加量は好ましくは 0.3〜1.5 重量%
である。
【0043】第1液は、粘度 (室温での粘度) が15 cps
以下となるように調整し、好ましくは液のpHを 3.5〜
7.0 の範囲内とする。pHが上記範囲外では、第1液の
安定性が低下し、粉末が凝集し易くなり、均一な塗膜を
形成できないことがある。粘度が15 cpsを超えると、塗
膜の成膜精度が低下し、塗膜の平滑性が低下する。好ま
しくは、pHが 4.5〜7、粘度が 1.5〜10 cpsである。
【0044】第1液のpHは、必要により、上記のよう
にpH調整剤として有機酸および/または無機酸を溶媒
に添加することで調整できる。粘度は、溶媒の種類や溶
媒量の調整、導電性微粉末の電荷調整 (界面活性剤、カ
ップリング剤処理も含む) 、あるいはpH調整剤、界面
活性剤、および溶媒の組合わせによる総合バランスによ
り調整できる。
【0045】[第2液]本発明の2液型紫外線および/ま
たは赤外線遮断膜形成用塗料の第2液は、加水分解性有
機シラン化合物を加水分解・縮合させて得たシリカゾル
溶液である。この有機シラン化合物の加水分解・縮合生
成物 (シリカゾル) が、バインダーレスの第1液から形
成した粉末層中に浸透して、ITO粉末および/または
紫外線遮断粉末を結合させるバインダーとして作用し、
加熱後にこの粉末がシリカで緊密に結合された高屈折率
の紫外線および/または赤外線遮断層を形成するととも
に、浸透しなかった分が、この遮断層を覆う低屈折率の
シリカ質の保護層を形成する。
【0046】加水分解性有機シラン化合物 シリカゾル合成の原料となる加水分解性有機シラン化合
物としては、テトラエトキシシラン (=エチルシリケー
ト) 、テトラプロポキシシラン、メチルトリエトキシシ
ラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリエトキ
シシランなどのアルコキシシラン類;メチルトリクロロ
シラン、ジメチルジクロロシラン、フェニルトリクロロ
シランなどのクロロシラン類;さらにはtert−ブチルジ
メチルクロロシラン、 N,N−ビス (トリメチルシリル)
ウレア、 N,O−ビス (トリメチルシリル) アセトアミ
ド、ヘキサメチルジシラザン、γ−クロロプロピルトリ
メトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシ
シラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−
グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシ
ドキシメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプ
ロピルトリメトキシシラン、 N−フェニル−γ−アミノ
プロピルトリメトキシシラン、 N−β− (アミノエチ
ル) −γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、 N−β
− (アミノエチル) −γ−アミノプロピルメチルジメト
キシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチ
ルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニ
ルトリス (β−メトキシエトキシ) シラン、ビニルトリ
エトキシシラン、ビニルトリメトキシシランなどが挙げ
られる。
【0047】また、これらの有機シラン化合物の部分加
水分解物、例えば、テトラエトキシシランを部分加水分
解したエトキシポリシロキサン、メチルジメトキシシラ
ンを部分加水分解したメトキシポリシロキサンなども、
シリカゾルの合成原料として使用できる。
【0048】シリカゾルの合成 第2液として用いるシリカゾルは、溶媒中で加水分解性
有機シラン化合物を加水分解・縮合させることにより得
られる。この反応は、塩酸および硝酸から選んだ酸触媒
と水の一方または両方の存在下に有機溶媒中で行うこと
が好ましい。触媒として塩酸、硝酸以外の酸 (例、リン
酸、硫酸、または酢酸などの有機酸) を使用すると、加
熱後に生成するシリカの硬度、密着性、密度が低下する
傾向がある。
【0049】シリカゾルの合成に用いる有機溶媒は、第
1液に使用可能な有機溶媒と同様でよい。但し、シラン
化合物の加水分解・縮合においては水は反応成分である
ので、溶媒に水は含まない。第2液の場合も、好ましい
有機溶媒はアルコールを含有するアルコール性溶媒であ
る。
【0050】酸触媒と水の使用量は、[H]/[Si]のモル比
が 0.004〜0.100 、[H2O]/[Si]のモル比が 1.2〜5.5
(ここで、[H], [Si], [H2O]はそれぞれ、酸、アルコキ
シシラン、水の量である) の範囲内が好ましい。
【0051】有機シラン化合物の加水分解・縮合は、室
温ないし加熱下で行うことができ、好ましい反応温度は
20〜80℃の範囲内である。反応後、必要に応じて溶媒
(この時には水も溶媒として使用できる) で希釈して、
得られたシリカゾル溶液の濃度をSiO2換算濃度で 0.5〜
2.5 重量%に調整して第2液として使用する。この濃度
調整後のシリカゾル溶液の粘度が10 cps以下となるよう
に、加水分解・縮合反応時間、溶媒の選択や配合量を制
御する。
【0052】第2液の濃度がSiO2換算濃度で0.5 重量%
未満では、粉末層に浸透したシリカゾルが粉末を十分に
結合できず、またその上に形成されるシリカ保護層の膜
厚も薄くなりすぎる。一方、この濃度が2.5 重量%を超
えると成膜精度が低下し、シリカ保護層の膜厚の制御が
しにくくなる。また、第2液の粘度が10 cpsを超える
と、シリカゾルが粉末層中に十分に浸透しなくなり、膜
強度が低下する上、成膜精度が低下して、シリカ保護層
の膜厚の制御も困難となる。第2液には、所望により浸
透性の調整のための界面活性剤などの添加剤を少量であ
れば添加することができる。
【0053】[紫外線および/または赤外線遮断膜の形
成方法]基体 本発明の紫外線および/または赤外線遮断膜は、ガラ
ス、プラスチック(例、アクリル樹脂、ポリカーボネー
ト等)を含む任意の透明基体上に形成することができ
る。しかし、本発明の紫外線および/または赤外線遮断
膜は、特に建築用や車両用のガラスの紫外線・赤外線遮
断に適していることから、好ましい基体はガラスであ
る。
【0054】第1液の塗布 基体表面にまず、ITO粉末および/または紫外線遮断
粉末が溶媒中に分散した、バインダーレスの第1液を塗
布し、乾燥させて溶媒を蒸発させ、最終的に紫外線およ
び/または赤外線遮断層となる粉末層を基体上に形成す
る。乾燥は風乾でも、加熱乾燥でもよい。第1液の塗布
は、スプレー法、スピンコート法、浸漬法、ロールコー
ト法などによって行うことができる。
【0055】紫外線・赤外線遮断膜 (即ち、紫外線遮断
能と赤外線遮断能を備えた膜) を形成する場合、粉末層
の形成方法には2種類の方法がある。第1の方法では、
第1液にITO粉末と紫外線遮断粉末の両方を一緒に分
散させ、ITO粉末と紫外線遮断粉末が混合した粉末層
を形成する。第2の方法では、ITO粉末を分散させた
第1液と紫外線遮断粉末を分散させた第1液を別々に用
意し、一方の液を先に基体に塗布し、乾燥後、その上に
残りの液を塗布し、乾燥させて、ITO粉末と紫外線遮
断粉末が上下に層状に分かれた粉末層を形成する。この
場合も、2層に分かれたITO粉末と紫外線遮断粉末の
割合は、重量比で70:30〜30:70の範囲とすることが好
ましい。これらの方法のうち、塗布操作が1回ですむ第
1の方法が好ましいが、比重の相違等の原因で2種類の
粉末を均一に混合して分散させることが難しい場合に
は、第2の方法を採用すればよい。
【0056】第2液の塗布 第1液の塗布により形成された粉末層の上に、シリカゾ
ル溶液からなる第2液を塗布し、シリカゾルを粉末層中
に含浸させると同時に、この粉末層上にシリカ保護層を
形成する。このシリカゾルの含浸により、粉末層の基体
への密着性と粉末粒子間の結合が行われる。
【0057】この第2液も、第1液と同様の方法で塗布
することができる。第2液の塗布量は、シリカゾルで粉
末層が完全に含浸され、かつ塗布後の加熱により粉末層
の上に所望膜厚のシリカ保護層が形成されるように調整
する。
【0058】第1液と第2液を塗布して成膜を終了した
後、塗膜を加熱して、シリカゾルをシリカに変換させ
る。それにより、ITO粉末および/または紫外線遮断
粉末がシリカで結合された紫外線および/または赤外線
遮断層 (第1層) とその上のシリカ保護層 (第2層) と
からなる、本発明の紫外線および/または赤外線遮断膜
が基体上に形成される。この加熱時に膜の体積収縮が起
こり、それによって第1層における粉末充填密度がさら
に増大し、その紫外線および/または赤外線遮断効果が
一層向上する。また、加熱で生成したシリカは高硬度で
耐候性に優れていることから、膜は良好な耐久性を示
す。
【0059】この加熱は 150〜800 ℃の広範囲の温度で
行うことができる。特に高い硬度と耐候性を必要とする
場合には、350 ℃以上の比較的高温で加熱を行うことが
好ましい。加熱時間はシリカゾルがシリカに完全に転化
するのに十分な時間であればよく、温度に依存して大き
く変化する。例えば、温度が400 ℃以下と比較的低い場
合の加熱時間は通常は5分〜1時間の範囲であり、温度
が400 ℃より高くなると10秒〜10分程度の短時間の加熱
で十分である。
【0060】[紫外線および/または赤外線遮断膜]上記
の方法により形成された本発明の紫外線および/または
赤外線遮断膜において、第1層 (紫外線および/または
赤外線遮断層)の膜厚は好ましくは 0.1〜2.0 μm、よ
り好ましくは 0.2〜1.5 μmであり、第2層 (シリカ保
護層) の膜厚は好ましくは0.02〜0.5 μm、より好まし
くは0.05〜0.25μmである。なお、各層とも、1回の塗
布では膜厚が不足する場合には、所望の膜厚になるまで
塗布操作を反復してもよい。
【0061】下層の第1層は、高充填密度でITO粉末
および/または紫外線遮断粉末が存在するため高屈折率
層であり、上層のシリカ保護層は実質的にシリカのみか
らなる低屈折率層であり、両者の間に大きな屈折率差が
ある。この屈折率差により第1層の反射光と第2層の反
射光が互いに打ち消しあい、色ムラ (干渉色) を生じな
くなり、ガラスその他の透明基体の視感度や美観が損な
われない。
【0062】本発明の紫外線および/または赤外線遮断
膜は、紫外線と赤外線の両方を広い波長範囲にわたって
遮断することができるので、建築用および車両用のガラ
スに紫外線・赤外線遮断能を付与するのに適している。
【0063】
【実施例1】 (第1液の調製)それぞれ下記に示すA〜Gから選ばれた
粉末、場合によりa〜dから選ばれた有機チタン化合
物、およびア〜エから選ばれた有機溶媒 (かっこ内の比
率はひずれも重量比) を使用して、第1液を調製した。
これらの成分を表1に示す配合比となるようにガラスビ
ンに入れ、直径0.3 mmのジルコニアビーズを加えてペイ
ントシェーカーで6時間分散処理することにより、表1
に示す粘度を持つ第1液を得た。
【0064】粉末 A:ITO粉末 B:ZnO 粉末 C:TiO2粉末 D:ITO/ZnO 粉末混合物(63/37) E:ITO/ZnO 粉末混合物(36/64) F:ITO/TiO2粉末混合物(68/32) G:ITO/ZnO /TiO2粉末混合物(66/10/24) 。
【0065】各粉末の平均一次粒子径は、ITO粉末が
0.02μm、ZnO 粉末が0.05μm、TiO2粉末が0.05μmで
あった。使用したITO粉末は、塩化インジウムと塩化
錫の塩酸水溶液を水酸化アンモニウムで中和して得た水
酸化インジウム/水酸化錫共沈物を乾燥後、加圧窒素ガ
ス雰囲気中で焼成したものであった。このITO粉末の
Sn/(In+Sn)原子比は0.10であり、その最低赤外線遮断波
長は720 nmであった。
【0066】有機チタン化合物
【0067】a:
【化1】の(1) 式で示されるチタンカップリング剤
【0068】b:
【化1】の(2) 式で示されるチタンカップリング剤 c:テトラステアロキシチタン d:チタニウムテトライソプロポキシド/イソプロパノ
ール/水/塩酸 (重量比=10:50:10:1) を反応させ
た加水分解・縮合生成物。
【0069】溶 媒 ア:エタノール/メチルセロソルブ/ブチルセロソルブ
(75/20/5) イ:エタノール/メタノール/メチルセロソルブ (70/
10/20) ウ:イソプロパノール/メチルセロソルブ/アセチルア
セトン (80/15/5) エ:イソプロパノール/メタノール/メチルセロソルブ
(65/15/20) 。
【0070】(第2液の調製)還流冷却器を取り付けたフ
ラスコ内で、エチルシリケート 500g、エタノール500
g、濃硝酸25g、脱イオン水 500gを40℃で6時間攪拌
して、シリカゾルを合成した。このシリカゾルを、上記
ア〜エから選ばれた有機溶媒により表1に示すSiO2換算
濃度になるまで希釈して、表1に示す粘度の第2液を調
製した。
【0071】(成膜方法)透明ガラス基体上に第1液を浸
漬塗布し、放置して溶媒を蒸発させた後、得られた粉末
層の上に第2液を浸漬塗布し、次のまたはの方法で
加熱することにより、紫外線および/または赤外線遮断
膜をガラス基体上に形成した。
【0072】所定温度のオーブン中で30分間加熱し、
取り出す。 所定温度の電気炉内で3分間加熱し、取り出す。 得られた紫外線および/または赤外線遮断膜の断面構造
をSEMで検査したところ、この膜は、粉末がシリカで
結合されている下層と、シリカのみからなる上層という
2層構造をとることが確認された。各層の厚みをSEM
断面写真より測定した結果を表1に併せて示す。
【0073】この紫外線および/または赤外線遮断膜を
形成したガラス基体は、表面に色ムラ (干渉色) がな
く、視感度に優れていた。
【0074】(試験方法)紫外線および/または赤外線遮
断膜の光透過スペクトルを積分球付き自記分光光度計を
用いて測定し、ガラス基体による吸収分を除外して、紫
外線および/または赤外線遮断膜による分光透過率曲線
を作製した。この曲線から、透明性の尺度である可視光
透過率 (JIS R3106)と、紫外域 (波長380 nm以下) で透
過率が5%を示す最大波長および赤外域 (波長810 nm以
上) で透過率が5%を示す最小波長をそれぞれ「紫外線
遮断波長」および「赤外線遮断波長」として求めた。
【0075】また、得られた紫外線および/または赤外
線遮断膜の鉛筆硬度と耐候性も併せて試験した。鉛筆硬
度は、角度45°、荷重1kgの条件で測定した。耐候性
は、試験片を、耐水性 (100 ℃×1時間の浸漬) 、
耐熱性 (100 ℃×240 時間) 、耐寒性 (−20℃×240
時間) 、および耐湿性 (40℃、RH80%×240 時間) の
4種類の試験条件に曝した後、それぞれの試験片につい
て、(a) 可視光透過率の低下が2%未満、(b) 紫外線遮
断波長の長波長側シフトが2nm以内、(c) 赤外線遮断波
長の長波長側シフトが5nm以内、および(d) 鉛筆硬度の
変化がない、という4点について評価した。即ち、1サ
ンプルについて4×4の計16回の試験を行い、全部の試
験の評価が合格である場合を100 点とし、1回の評価が
不合格であるごとに1/16=6.25点を減点する方式で評点
をつけた。これらの試験結果を表1に併せて示す。
【0076】
【表1】
【0077】
【実施例2】表1の試験No.6の紫外線・赤外線遮断膜の
赤外線遮断効果について、赤外線ランプを10cmの距離か
ら5分間照射した後、消灯し、照射後の箱の内部温度の
経時変化を調べることにより調査した。市販の温室用の
グリーンガラス、比較例である試験No.13 の紫外線・赤
外線遮断膜、および実施例1で基体として使用した透明
ガラス (クリアガラス) の赤外線遮断効果についても同
様に試験した。
【0078】結果を図1に示す。図1からわかるよう
に、本発明の紫外線・赤外線遮断膜を形成したガラス基
体は、従来のUV-IR フィルムやグリーンガラスに比べて
赤外線遮断能が高く、赤外線照射後の温度上昇が著しく
少なくなった。
【0079】
【発明の効果】本発明によれば、可視光透過率が90%以
上と高く透明性に優れ、しかも紫外線の大部分と約1100
〜1500 nm 、好ましくは約1100〜1200 nm より長波長側
の赤外線を遮断することができるという、紫外線と赤外
線の遮断能、特に赤外線遮断能が従来より著しく向上し
た、紫外線および/または赤外線遮断膜が得られる。こ
の優れた遮断能は、粉末の充填密度がバインダー樹脂を
利用した従来の膜に比べて高くなること、および使用し
たITO粉末の赤外線遮断能が優れていることの両方に
起因するものと考えられる。
【0080】また、本発明の紫外線および/または赤外
線遮断膜は、粉末をシリカで結合した構造を有するた
め、従来のものより硬度が高く、特に第2液塗布後の加
熱温度が400 ℃以上であると非常に高硬度になり、傷つ
きにくいばかりか、耐候性も良好で、建築用窓ガラスや
車両用ガラスに適用した場合に格段に優れた耐久性を示
す。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の紫外線・赤外線遮断膜の赤外線遮断能
(赤外線ランプを5分間照射後の温度変化) を、従来の
赤外線遮断製品、比較例の紫外線・赤外線遮断膜、およ
び透明ガラス基体の赤外線遮断能と共に示すグラフであ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C09K 3/00 104 C09K 3/00 104Z 105 105 (72)発明者 荒井 将英 埼玉県大宮市北袋町1丁目297番地 三菱 マテリアル株式会社総合研究所内 (72)発明者 西原 明 埼玉県大宮市北袋町1丁目297番地 三菱 マテリアル株式会社総合研究所内

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基体上に塗布するための第1液、および
    第1液の塗布で形成した塗膜上に塗布するための第2
    液、からなる2液型の紫外線および/または赤外線遮断
    膜形成用塗料であって、 前記第1液は、平均一次粒子径0.5 μm以下の錫ドープ
    酸化インジウム粉末と平均一次粒子径0.5 μm以下の紫
    外線遮断能を有する粉末の一方または両方が溶媒中に分
    散している、粘度15 cps以下の分散液であり、この分散
    液はバインダーを含有せず、分散液中の粉末合計含有量
    が1〜25重量%であり、 前記第2液は、加水分解性有機シラン化合物を加水分解
    ・縮合させて得た、粘度が10 cps以下、SiO2換算濃度が
    0.5〜2.5 重量%のシリカゾル溶液である、ことを特徴
    とする、紫外線および/または赤外線遮断膜形成用塗
    料。
  2. 【請求項2】 錫ドープ酸化インジウム粉末が、最低10
    00 nm より長波長側の赤外線を全面的に90%以上遮断す
    る赤外線遮断能を有する、請求項1記載の紫外線および
    /または赤外線遮断膜形成用塗料。
  3. 【請求項3】 紫外線遮断能を有する粉末が酸化チタン
    粉末および酸化亜鉛粉末から選ばれる、請求項1または
    2記載の紫外線および/または赤外線遮断膜形成用塗
    料。
  4. 【請求項4】 第1液が、有機チタン化合物またはその
    加水分解・縮合生成物を、第1液中の粉末合計量に対し
    て 0.1〜2.0 重量%の量で含有する、請求項1ないし3
    のいずれか1項に記載の紫外線および/または赤外線遮
    断膜形成用塗料。
  5. 【請求項5】 請求項1記載の塗料を用いて紫外線およ
    び/または赤外線遮断膜を形成する方法であって、透明
    基体上に第1液を塗布して乾燥させ、粉末層を形成する
    工程、およびこの粉末層上に第2液を塗布し、加熱乾燥
    させる工程、からなる透明基体上に紫外線および/また
    は赤外線遮断膜を形成する方法。
  6. 【請求項6】 透明基体上に、平均一次粒子径0.5 μm
    以下の錫ドープ酸化インジウム粉末と平均一次粒子径0.
    5 μm以下の紫外線遮断能を有する粉末の一方を1〜25
    重量%含有し、バインダーを含有しない、粘度15 cps以
    下の分散液を塗布して乾燥させる工程、その上に上記2
    種類の粉末の他方を1〜25重量%含有し、バインダーを
    含有しない、粘度15 cps以下の分散液を塗布して乾燥さ
    せる工程、および形成された粉末層の上に加水分解性有
    機シラン化合物を加水分解・縮合させて得た、粘度が10
    cps以下、SiO2換算濃度が 0.5〜2.5 重量%のシリカゾ
    ル溶液を塗布し、加熱乾燥させる工程、からなる透明基
    体上に紫外線および赤外線遮断膜を形成する方法。
  7. 【請求項7】 透明基体上に、第1層として平均一次粒
    子径0.5 μm以下の錫ドープ酸化インジウム粉末と平均
    一次粒子径0.5 μm以下の紫外線遮断能を有する粉末の
    一方または両方とシリカとからなる紫外線および/また
    は赤外線遮断層と、その上の第2層としてシリカ保護層
    とを有する、紫外線および/または赤外線遮断能を有す
    る透明基体。
  8. 【請求項8】 第1層が錫ドープ酸化インジウム粉末と
    紫外線遮断能を有する粉末の両方を含有し、これら2種
    類の粉末が第1層内で上下に分層して存在する、請求項
    7記載の紫外線および赤外線遮断能を有する透明基体。
  9. 【請求項9】 透明基体がガラスであり、第1層が錫ド
    ープ酸化インジウム粉末と紫外線遮断能を有する粉末の
    両方を30:70〜70:30の重量比で含有し、第1層の膜厚
    が 0.1〜2.0 μm、第2層の膜厚が0.02〜0.5 μmであ
    る、請求項7または8記載の紫外線および赤外線遮断能
    を有するガラス。
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