JPH09173860A - カルボニル化触媒系およびカルボニル化方法 - Google Patents

カルボニル化触媒系およびカルボニル化方法

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JPH09173860A
JPH09173860A JP7350505A JP35050595A JPH09173860A JP H09173860 A JPH09173860 A JP H09173860A JP 7350505 A JP7350505 A JP 7350505A JP 35050595 A JP35050595 A JP 35050595A JP H09173860 A JPH09173860 A JP H09173860A
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JP
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carboxylic acid
carbonylation
unsaturated
organic
compound
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JP7350505A
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Tatsumizu Han
立瑞 潘
Tomohide Ina
智秀 伊奈
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Daicel Corp
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Daicel Chemical Industries Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 カルボニル化反応により、有機カルボン酸エ
ステル(メタクリル酸メチルなど)を高い収率で得る。 【解決手段】 アセチレン系又はオレフィン系不飽和化
合物と、一酸化炭素と、アルコールとを液相系で反応さ
せ、不飽和又は飽和カルボン酸エステル(メタクリル酸
メチルなど)を生成させカルボニル化反応において、
白金源(例えば、白金化合物)、トリフェニルホスフ
ィンなどの有機ホスフィン、および有機カルボン酸
(メタクリル酸など)で構成されたカルボニル化触媒系
を用いる。有機カルボン酸は前記エステルに対応する
カルボン酸であってもよい。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、カルボニル化反応
に有用な触媒系、およびこの触媒系を用いてアセチレン
系又はオレフィン系不飽和化合物をカルボニル化する方
法に関する。
【0002】
【従来の技術】アセチレン系不飽和化合物をカルボニル
化し、メタクリル酸メチルなどのα,β−エチレン性不
飽和化合物を得る方法として、周期表第8族金属源およ
びホスフィンとで構成された触媒の存在下、アセチレン
系又はオレフィン系不飽和化合物を、一酸化炭素および
求核性化合物と反応させる方法が提案されている。例え
ば、EP−A1−106379、EP−A1−2358
64、EP−A1−274795、EP−A1−279
477には、パラジウム化合物、トリアリールホスフィ
ンおよびプロトン酸で構成されたカルボニル化触媒系
と、この触媒系を用いてアセチレン系不飽和化合物およ
びオレフィン系化合物をカルボニル化する方法が開示さ
れている。
【0003】特公平5−29212号公報、特開昭61
−176549号公報、特開昭62−72649号公報
には、2価のパラジウム化合物、有機ホスフィン、およ
びプロトン酸で構成されたカルボニル化触媒系と、この
触媒系を用いて、アルコール又は水の存在下、アセチレ
ン系不飽和化合物をカルボニル化する方法が開示されて
いる。この文献には、プロトン酸として、トリフルオロ
酢酸などのpKaが1.0以下のカルボン酸、p−トル
エンスルホン酸などのpkaが1.0よりも大きな非カ
ルボン酸型プロトン酸が記載され、非カルボン酸型プロ
トン酸は非配位性の陰イオンを有すると記載されてい
る。特開昭63−154646号公報には、パラジウム
化合物、窒素含有複素環基を有する有機ホスフィン、お
よびp−トルエンスルホン酸などのプロトン酸で構成さ
れたカルボニル化触媒系と、この触媒系を用いてアセチ
レン系不飽和化合物をカルボニル化する方法が開示され
ている。この文献には、第8族金属源としてパラジウム
化合物源が好ましいこと、反応剤として、水やアルコー
ル以外に、アクリル酸やメタクリル酸などのカルボン酸
を使用できることが開示されている。
【0004】さらに、特開平4−215851号公報に
は、第8族金属源、イミノ窒素原子含有芳香族置換基を
有するホスフィン、アルキルスルホン酸などのプロトン
源およびアルキルスルホン酸アニオン源で構成されたカ
ルボニル化触媒系と、この触媒系を用いてアセチレン系
不飽和化合物およびオレフィン系化合物をカルボニル化
する方法が開示されている。特開平4−21852号公
報には、第8族金属源、イミノ窒素原子含有芳香族置換
基を有するホスフィン、プロトン源および第三級アミン
を含む触媒系と、この触媒系を用いてアセチレン系不飽
和化合物およびオレフィン系化合物をカルボニル化する
方法が開示されている。これらの文献には、第8族金属
源としてパラジウム化合物源が好ましいこと、反応剤と
して、水やアルコール以外に、酸無水物を生成させるた
め、アクリル酸やメタクリル酸などのカルボン酸の使用
が開示されている。
【0005】しかし、これらの触媒系は、プロトン源と
して飽和カルボン酸やp−トルエンスルホン酸などの非
カルボン酸型プロトン酸を必要とし、触媒系を構成する
ためには多くの成分を必要とする。しかも、カルボニル
化触媒系において、未だ転化率および選択率を改善する
ことが必要である。さらには、パラジウム化合物を触媒
成分とする触媒系は、安定性が低く、反応過程でパラジ
ウム金属が析出する。そのため、金属源を有効に利用で
きないだけでなく、触媒活性の低下とともに転化率およ
び選択率が低下する。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、高い転化率および選択率でカルボニル化してカルボ
ン酸エステルを生成させる上で有用であるとともに、安
定性の高い単純な構成の触媒系およびそれを用いたカル
ボニル化方法を提供することにある。本発明の他の目的
は、アセチレン系又はオレフィン系不飽和化合物のカル
ボニル化により、カルボン酸エステルを液相系で長期間
に亘り高い転化率および選択率で生成できる触媒系およ
びカルボニル化方法を提供することにある。本発明のさ
らに他の目的は、メタクリル酸メチルなどのα,β−エ
チレン性不飽和カルボン酸エステルを高い転化率および
選択率で製造する上で有用な触媒系およびカルボニル化
方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは前記目的を
達成するため(a)アセチレン系又はオレフィン系不飽
和化合物と(b)一酸化炭素と(c)アルコールとのカ
ルボニル化反応について鋭意検討の結果、(1)白金源
と(2)有機ホスフィンと(3)有機カルボン酸とを組
み合わせて触媒系を構成すると、安定性が高いととも
に、予想に反して触媒活性がきわめて高く、高い転化率
および選択率で(d)有機カルボン酸エステルが生成す
ることを見いだした。すなわち、前記カルボニル化反応
系に、(3)有機カルボン酸(メタクリル酸など)に対
して過剰量の(c)アルコール(メタノールなど)が共
存すると、(3)有機カルボン酸と(c)アルコールと
のエステル(メタクリル酸メチルなど)が生成し、
(3)有機カルボン酸(メタクリル酸など)は酸無水物
を形成するための反応剤として機能し、触媒成分として
機能しないと考えられている。ところが、前記(3)有
機カルボン酸と、(1)白金源および(2)有機ホスフ
ィンとを組み合わせると、(3)有機カルボン酸の使用
量が少量であり、かつ(c)アルコールが多量に存在す
る反応系であっても、有機カルボン酸エステル(メタク
リル酸メチルなど)が高い選択率および収率で生成する
ことを見いだした。
【0008】すなわち、本発明のカルボニル化触媒系
は、(a)アセチレン系又はオレフィン系不飽和化合物
と(b)一酸化炭素と(c)アルコールとを反応させ、
(d)不飽和又は飽和有機カルボン酸エステルを生成さ
せるカルボニル化触媒であって、(1)白金源、(2)
有機ホスフィンおよび(3)有機カルボン酸で構成され
ている。この触媒系において、白金源(1)には白金化
合物が含まれ、有機ホスフィン(2)には、置換されて
いてもよい芳香族性の同素又は複素環を有する有機ホス
フィン、例えば、トリフェニルホスフィンなどの置換さ
れていてもよいアリール基を有する第3級ホスフィンな
どが含まれる。前記有機カルボン酸(3)は、前記カル
ボニル化反応生成物に対応するカルボン酸であってもよ
く、例えば、α−アセチレン系又はα−オレフィン系化
合物を用いα,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステ
ル(例えば、メタクリル酸メチル)を生成させる場合に
は、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸(例えば、メ
タクリル酸)を使用してもよい。
【0009】本発明の方法では、前記触媒系の存在下、
(a)アセチレン系又はオレフィン系不飽和化合物と
(b)一酸化炭素と(c)アルコールとを反応させ、
(d)前記不飽和又は飽和有機カルボン酸エステルを生
成させる。この方法において、アセチレン系又はオレフ
ィン系不飽和化合物としては、α−アセチレン系又はα
−オレフィン系化合物などが含まれ、アルコールには、
炭素数1〜20のアルコールなどが含まれる。本発明の
方法には、例えば、(a)α−アセチレン系又はオレフ
ィン系炭化水素、(b)一酸化炭素、および(c)アル
コールを反応させ、(d)α,β−エチレン性不飽和カ
ルボン酸エステルを製造する方法であって、前記反応
を、(1)白金化合物、(2)置換基を有していてもよ
いトリアリールホスフィンおよび(3)前記α,β−エ
チレン性不飽和カルボン酸で構成された触媒系の存在下
で行ない、(d)α,β−エチレン性不飽和カルボン酸
エステルを製造する方法が含まれる。より具体的には、
本発明の方法には、例えば、(a)アセチレン、プロピ
ン又はアレンから選択された少なくとも一種のα−アセ
チレン系又はオレフィン系炭化水素、(b)一酸化炭
素、および(c)アルコールを反応させ、(d)(メ
タ)アクリル酸と前記アルコールとのエステルを製造す
る方法であって、前記反応を、(1)白金化合物、
(2)置換基を有していてもよいトリフェニルホスフィ
ンおよび(3)前記(メタ)アクリル酸で構成された触
媒系の存在下で行なう(メタ)アクリル酸エステルの製
造方法も含まれる。
【0010】なお、本明細書において、「オレフィン系
不飽和化合物」とは、二重結合の数の如何を問わず、エ
チレン性不飽和二重結合を有する化合物を意味する。ま
た、アクリル酸およびメタクリル酸を(メタ)アクリル
酸と総称し、アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エ
ステルを(メタ)アクリル酸エステルと総称する場合が
ある。
【0011】
【発明の実施の形態】本発明は、下記式(I)で表され
る(a)アセチレン系又はオレフィン系不飽和化合物、
(b)一酸化炭素および(c)アルコールの反応によ
り、下記式(II)で表される(d)不飽和又は飽和有機
カルボン酸エステルを生成させるカルボニル化方法に適
用される。この反応系の触媒系の特色は、(1)白金源
および(2)有機ホスフィンと、(3)有機カルボン酸
(不飽和又は飽和カルボン酸)とを組み合せる点にあ
り、(3)有機カルボン酸は式(II)で表される化合物
に対応するカルボン酸(すなわち式(II)においてR5
が水素原子である化合物)であってもよい。
【0012】
【化1】 (式中、R1 〜R4 は、それぞれ同一又は異なって、水
素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基
を有していてもよいアルケニル基、置換基を有していて
もよいアルキニル基、置換基を有していてもよいシクロ
アルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、置
換基を有していてもよいアラルキル基を示し、互いに隣
接するR1 〜R4 は、互いに結合して環を形成してもよ
い。R5 は反応成分のアルコールに対応する残基を示
す) なお、前記式(I)において炭素原子間の不飽和結合は
二重または三重結合を示し、前記式(II)において炭素
原子間の結合は一重または二重結合を示す。以下に、本
発明のカルボニル化反応とこの反応に用いる触媒系につ
いて詳細に説明する。
【0013】[カルボニル化反応]アセチレン系又はオレフィン系不飽和化合物 前記式(I)において、アルキル基には、例えば、メチ
ル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブ
チル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシ
ル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル基などの炭素
数1〜10程度の直鎖状又は分岐鎖状アルキル基が含ま
れる。好ましいアルキル基には、例えば、炭素数1〜6
程度、特に炭素数1〜4程度の低級アルキル基が含まれ
る。アルケニル基には、例えば、ビニル、アリル、イソ
プロペニル、2−メチル−1−プロペニル、1−ブテニ
ル、2−ブテニル、1−ペンテニル、1−ヘキセニル、
1−ヘプテニル、1−オクテニルなどの炭素数2〜10
程度の直鎖状又は分岐鎖状アルケニル基が含まれる。好
ましいアルケニル基には、例えば炭素数2〜6、特に炭
素数2〜4程度のアルケニル基が含まれる。アルキニル
基には、例えば、エチニル、プロピニル、1−ブチニ
ル、2−ブチニル、1−ペンチニル、1−ヘキシニル、
1−ヘプチニル、1−オクチニルなどの炭素数2〜10
程度のアルキニル基が含まれる。
【0014】シクロアルキル基としては、例えば、シク
ロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロオ
クチル基などの炭素数4〜10程度のシクロアルキル基
が挙げられ、アリール基としては、例えば、フェニル
基、ナフチル基などC6-10アリール基が挙げられる。好
ましいシクロヘキシル基にはC5-8 シクロアルキル基、
好ましいアリール基にはフェニル基などが含まれる。ア
ラルキル基には、例えば、ベンジル、フェネチル、ベン
ズヒドリル基などのフェニル−C1-4 アルキル基が含ま
れる。互いに隣接するR1 〜R4 (例えば、R1 とR2
及び/又はR3 とR4 )が結合して形成する環には、例
えば、C3-10シクロアルカン環が含まれ、橋かけ式炭化
水素環を形成してもよい。
【0015】R1 〜R4 の置換基としては、種々の置換
基、例えば、フッ素、塩素、臭素などのハロゲン原子;
メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イ
ソブチル、sec−ブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘ
キシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル基などの
直鎖状又は分岐鎖状C1-10アルキル基;シクロヘプチ
ル、シクロヘキシル、シクロオクチルなどのC4-10シク
ロアルキル基;フェニル、ナフチルなどのアリール基;
ベンジル、フェネチルなどのC6-10アリール−C1-4
ルキル基などのアラルキル基;シアノ基;ホルミル、ア
セチル、プロピオニル、ブチリル、イソブチリル、バレ
リル、イソバレリル、ピバロイル基などのC1-7 アシル
基;アセトキシ基などのアルキル部分の炭素数1〜6程
度のアシルオキシ基;ヒドロキシル基;メトキシ、エト
キシ、プロポキシ、ブトキシ、t−ブトキシなどのC
1-6 アルコキシ基;トリフルオロメチル、トリクロロメ
チル基などのハロアルキル基;トリフルオロメトキシ、
トリクロロメトキシ基などのハロアルコキシ基;カルボ
キシル基;C1-6 アルコキシ−カルボニル基;アミノ
基、モノアルキルアミノ基やジアルキルアミノ基などの
N−置換アミノ基;アミド基;アセトアミド基などのN
−置換アミド基などを有していてもよい。
【0016】前記式(I)で表されるアセチレン系また
はオレフィン系不飽和化合物は、好ましくは非対称のア
セチレン系化合物またはオレフィン系化合物、さらに好
ましくはα−アセチレン系化合物、α−オレフィン系化
合物又はアレン系化合物である。アセチレン系不飽和化
合物の炭素数は、通常、2〜30程度、好ましくは2〜
20、特に2〜10程度であり、オレフィン系不飽和化
合物及びアレン系化合物の炭素数は、例えば、2〜3
0、好ましくは2〜20、特に2〜10程度である。こ
れらの不飽和炭化水素には、置換基を有していてもよい
アルキン、アルケン(オレフィン)、又はシクロアルケ
ン、シクロアルカジエンや橋かけ式不飽和炭化水素が含
まれる。不飽和炭化水素は、1分子中に三重結合と二重
結合とを有していてもよく、二重結合を2個以上有して
いてもよい。
【0017】より具体的には、アルキンとしては、例え
ば、アセチレン、プロピン、1−ブチン、2−ブチン、
1−ペンチン、1−ヘキシン、1−ヘプチン、1−オク
チン、2−オクチン、4−オクチン、1,7−オクタジ
イン、5−メチル−3−ヘプチン、4−プロピル−2−
ペンチン、1−ノニン、フェニルアセチレン、ベンジル
エチンおよびシクロヘキシルエチンなどが例示できる。
低級不飽和カルボン酸エステルを製造する場合、アルキ
ンとしては、α−アセチレン系炭化水素、例えば、アセ
チレン、プロピン(メチルアセチレン)などのC2-6
ルキンを用いる場合が多い。
【0018】アルケンには、例えば、エチレン、プロピ
レン、フェニルエチレン、1−ブテン、2−ブテン、1
−ペンテン、3−メチルペンテン−1、4−メチルペン
テン−1、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテ
ン、2−オクテン、4−オクテン、アレンなどのアレン
型化合物、シクロヘキセンおよびノルボルナジエンなど
が含まれる。低級飽和又は不飽和カルボン酸を製造する
場合、アルケンとしては、α−オレフィン系炭化水素、
例えば、エチレン、プロピレン、アレンなどのC2-6
ルケンを用いる場合が多い。
【0019】一酸化炭素 一酸化炭素としては、純粋な一酸化炭素を用いてもよ
く、窒素、ヘリウム、アルゴン、二酸化炭素などの不活
性ガスで希釈した一酸化炭素を使用してもよい。
【0020】アルコール カルボニル反応における反応剤としてアルコール類を用
いる。なお、アルコール類にはシラノールも含まれる。
アルコール類は、脂肪族、脂環式、芳香族アルコールや
フェノール類であってもよく、一価又は多価アルコール
であってもよい。アルコール類は、前記不飽和化合物の
項で述べた置換基のうち、ヒドロキシル基以外の1又は
2以上の置換基を有していてもよい。一価アルコール類
には、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノ
ール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノ
ール、1−メチルプロパン−1−オール、2−メチルプ
ロパン−2−オール、1−ペンタノール、1−ヘキサノ
ール、1−オクタノール、2−エチルヘキサノール、ス
テアリルアルコール、アリルアルコール、クロチルアル
コール、プロパルギルアルコールなどの脂肪族アルコー
ル;シクロペンタノール、シクロヘキサノール、4−メ
チルシクロヘキサノール、シクロヘキセン−1−オー
ル、シクロヘプタノール、シクロオクタノール、ボルネ
オールなどの脂環族アルコール;ベンジルアルコール、
サリチルアルコール、ベンズヒドロール、フェネチルア
ルコールなどの芳香族アルコールなどが含まれる。フェ
ノール類には、フェノール、アルキルフェノール、レゾ
ルシノール、カテコール、2,2−ビス(4−ヒドロキ
シフェニル)プロパンなどが含まれる。
【0021】多価アルコールには、例えば、エチレング
リコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコー
ル、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコー
ル、ポリプロピレングリコール、トリメチレングリコー
ル、テトラメチレングリコール、1,6−ヘキサンジオ
ール、グリセロール、トリメチロールプロパン(2,2
−ビスヒドロキシメチル−1−ブタノール)、ペンタエ
リスリトール、1,2−シクロヘキサンジオール、1,
4−シクロヘキサンジオール、多糖類(例えば、グルコ
ース、フルクトース、マンノース、ガラクトース、サッ
カロース、アルドキノース、アルドペントース、アルト
ロース、アロース、タロース、グロース、イドース、リ
ボース、アラボノース、キシロース、リキソース、エリ
トロース、トレオースおよびセルロースなど)などが含
まれる。
【0022】好ましいアルコール類には、炭素数1〜2
0程度、特に炭素数1〜10程度の一価アルコールが含
まれる。アルコール類としては、脂肪族飽和アルコール
を使用する場合が多い。
【0023】前記不飽和化合物、一酸化炭素、およびア
ルコールの反応により前記式(II)で表される不飽和又
は飽和有機カルボン酸エステル(d)が生成する。この
カルボニル化反応においては、反応剤の種類に応じて、
オレフィン系不飽和化合物およびアセチレン系不飽和化
合物に対応する化合物が生成する。例えば、反応剤とし
てアルコールを用いる場合には、カルボニル化反応によ
り、オレフィン系不飽和化合物およびアセチレン系不飽
和化合物に対応して、カルボン酸およびα,β−不飽和
カルボン酸などの不飽和カルボン酸に対応するエステル
が生成する。さらに、例えば、オレフィン系不飽和化合
物としてエチレンを用い、反応剤としてメタノールを用
いると、一酸化炭素との反応により、プロピオン酸メチ
ルを生成させることができる。オレフィン系不飽和化合
物として、アレンを用い、反応剤(求核性化合物)とし
てメタノールを用いると、一酸化炭素との反応により、
メタクリル酸メチルを生成させることができる。また、
アセチレン系不飽和化合物としてプロピン又はアセチレ
ン、反応剤(求核性化合物)としてメタノールを用いる
と、一酸化炭素との反応により、メタクリル酸メチル又
はアクリル酸メチルを生成させることができる。
【0024】好ましい方法には、(a)α−アセチレン
系又はオレフィン系化合物として、アセチレン、プロピ
ン、アレン、エチレン、プロピレンなどを用いる方法が
含まれる。また、(a)α−アセチレン系又はオレフィ
ン系化合物(特に、アセチレン、プロピンなどのC2-4
アルキン、アレンなどの共役C2-4 アルカジエンなど)
と(b)一酸化炭素と(c)炭素数1〜20のアルコー
ルとを反応させ、(d)α,β−エチレン性不飽和カル
ボン酸エステル(特に(メタ)アクリル酸アルキルエス
テル)を製造する方法が好ましい。
【0025】カルボニル化反応における各成分の割合は
広い範囲で選択でき、例えば、一酸化炭素の割合は、例
えば、アセチレン系又はオレフィン系不飽和化合物1モ
ルに対して、例えば、0.1〜100モル(例えば、1
〜50モル)、好ましくは0.8〜10モル(例えば1
〜10モル)、さらに好ましくは1.0〜5モル程度で
ある。一酸化炭素は、アセチレン系又はオレフィン系不
飽和化合物1モルに対して、過剰モル(例えば1〜20
モル程度)用いる場合が多く、反応系において大過剰の
一酸化炭素雰囲気として使用してもよい。反応剤として
のアルコールの使用量は、例えば、アセチレン系又はオ
レフィン系不飽和化合物1モルに対して、0.1〜10
0モル(例えば1.0〜50モル)、好ましくは1〜2
5モル(例えば1.2〜10モル)、さらに好ましくは
1.0〜5モル程度である。アルコールを反応剤として
用いる場合、前記不飽和化合物1モルに対して過剰モル
(例えば、1〜10モル程度)である場合が多い。な
お、反応剤は反応溶媒として使用することもできる。
【0026】なお、アルコールと同じく水や有機カルボ
ン酸(3)を反応剤として利用すると、カルボン酸およ
び不飽和カルボン酸やこれらの酸無水物を生成すること
が知られている。また、(3)有機カルボン酸(例え
ば、メタクリル酸)を触媒の構成成分として用い、
(3)有機カルボン酸に対して過剰量の(c)アルコー
ル(例えば、メタノール)を反応剤として用いてカルボ
ニル化反応すると、(3)有機カルボン酸と(c)アル
コールとのエステル(例えば、メタクリル酸メチル)の
形成に伴って、触媒の構成成分である(3)有機カルボ
ン酸が消費される。そのため、前記アセチレン系又はオ
レフィン系不飽和化合物、一酸化炭素およびアルコール
を反応系に供給しても、次第に触媒活性が低下し、有機
カルボン酸エステルを効率よく生成できないと予想され
る。しかし、本発明の方法においては、(3)有機カル
ボン酸を、(1)白金源および(2)有機ホスフィンと
組み合わせると、(3)有機カルボン酸の使用量が少量
であっても、高い安定性を示すとともに、触媒活性が顕
著に増加し、長期間に亘り高い触媒活性を維持しつつ、
有機カルボン酸エステルを高い選択率および収率で得る
ことができる。(3)有機カルボン酸は、前記カルボニ
ル化反応により生成する反応生成物に対応する有機カル
ボン酸であってもよい。本発明の触媒系の機作は明確で
ないものの、前記(1)白金源、(2)有機ホスフィン
および(3)有機カルボン酸が錯体又は錯塩触媒を形成
するものと推測される。
【0027】[触媒系]白金源 本発明の触媒系を構成する白金源には、金属状であって
もよいが、好ましくは白金化合物である。前記白金の酸
化数は、種類に応じて選択でき、制限されないが、白金
の酸化数は、0価、2価、4価などである場合が多い。
白金化合物には、例えば、無機酸塩(例えば、硝酸塩、
硫酸塩、過ハロゲン酸塩、塩化水素酸、臭化水素酸など
のハロゲン化水素酸塩など)、有機酸塩(例えば、メタ
ンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン
酸、p−トルエンスルホン酸などのスルホン酸塩、ホス
ホン酸塩、ギ酸、酢酸、プロピオン酸などの炭素数12
以下のカルボン酸塩など)、ハロゲン化物(例えば、塩
化物、臭化物など)、錯体(又は錯塩)などが含まれ
る。
【0028】錯体を構成する配位子は、例えば、OH
(ヒドロキソ)、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブ
トキシ基などのアルコキシ基、アセチル、プロピオニル
などのアシル基、メトキシカルボニル(アセタト)、エ
トキシカルボニルなどのアルコキシカルボニル基、アセ
チルアセトナト、シクロペンタジエニル基、シクロオク
タジエニル基、ベンジリデン基、ベンジリデン アセト
ン、ベンジリデン アセチルアセトン、ベンジリデン
アセトフェノン、シクロオクタジエンなどのシクロアル
カジエン、塩素、臭素などハロゲン原子、CO、CN、
酸素原子、H2 O(アコ)、ホスフィン(例えば、トリ
フェニルホスフィンなどのトリアリールホスフィン)、
NH3 (アンミン)、NO、NO2 (ニトロ)、NO3
(ニトラト)、エチレンジアミン、ジエチレントリアミ
ン、ピリジン、フェナントロリンなどの窒素含有化合物
などが挙げられる。錯体又は錯塩において、同種又は異
種の配位子は一種又は二種以上配位していてもよい。錯
体又は錯塩としては、例えば、ジベンジリデンアセトン
白金、ジベンジリデンアセチルアセトン白金、ジベンジ
リデンアセトフェノン白金などのジベンジリデンケトン
白金、ジシクロオクタジエン白金、ジクロロビス(トリ
フェルホスフィン)白金、テトラキス(トリフェニルホ
スフィン)白金、酢酸ビス(トリフェニルホスフィン)
白金、硫酸ビス(トリフェニルホスフイン)白金、ヘキ
サクロロ白金(IV)酸などの白金錯体又は錯塩が例示
できる。
【0029】これらの白金源(1)のうち、白金化合
物、特に白金錯体又は錯塩を用いる場合が多い。また、
白金源(1)は、例えば、ハロゲン原子、酢酸などの有
機酸、トリアリールホスフィンなどの有機ホスフィン、
ベンジリデン アセトン、シクロアルカジエンなどとの
塩や錯体などとして使用する場合が多い。
【0030】有機ホスフィン 本発明の触媒系は下記式(III)で表される有機ホスフ
ィンを含んでいる。
【0031】
【化2】 式(III)において、R6 〜R8 は、同一又は異なっ
て、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル
基、アラルキル基、同素環基(シクロアルキル基、アリ
ール基)又は複素環基を示す。ただし、R6 〜R8 が同
時に水素原子であることはない。R6 〜R8 で表される
アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アラルキル
基、シクロアルキル基、アリール基としては、前記R1
〜R5 の項で例示したのと同様のアルキル基、アルケニ
ル基、アルキニル基、アラルキル基、シクロアルキル
基、アリール基が例示できる。複素環基には、例えば、
ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、
キノリル、イソキノリル、アクリジニル、フェナジニ
ル、フェナンスリジニル、フェナンスロリニル、フタラ
ジニル、キノキサリニル、キナゾリニルなどの窒素含有
複素環基などが含まれる。好ましい複素環基には、5又
は6員の窒素含有複素環基が含まれる。
【0032】これらのアルキル基、アルケニル基、アル
キニル基、シクロアルキル基、アリール基には、触媒活
性を損わない種々の置換基、例えば、ハロゲン原子(フ
ッ素、塩素、臭素、ヨウ素原子)、アルキル基(例え
ば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチ
ル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシルなど
のC1-10アルキル基、好ましくはC1-6 アルキル基、特
にC1-4 アルキル基)、ヒドロキシル基、アルコキシ基
(例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロ
ポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、t−ブトキシ、ペン
チルオキシ、ヘキシルオキシ基などのC1-10アルコキシ
基、好ましくはC1-6 アルコキシ基、特にC1-4 アルコ
キシ基)、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基
(例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、
プロポキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ブ
トキシカルボニル、イソブトキシカルボニル、t−ブト
キシカルボニル基などのC1-10アルコキシ−カルボニル
基、好ましくはC1-6 アルコキシ−カルボニル基、特に
1-4 アルコキシ−カルボニル基、)、アシル基(例え
ば、ホルミル、アセチル、プロピオニル、ブチリル、イ
ソブチリル、バレリル、イソバレリル、ピバロイル基な
どのC1-6 アシル基)、ニトロ基、シアノ基などが置換
していてもよい。R7 とR8 は互いに結合して、メチレ
ン、エチレン、プロピレン、イソプロピリデン、テトラ
メチレンなどのC1-10程度のアルキレン基を形成し、リ
ン原子とともに炭素数3〜10程度のホスファシクロア
ルキレン基を形成してもよい。
【0033】好ましいR6 〜R8 には、それぞれ置換さ
れていてもよい芳香族性の同素環基(例えば、シクロヘ
キシル基、フェニル基など)又は複素環基(例えば、ピ
リジル基など)、特にR6 〜R8 のうち少なくとも1つ
がフェニル基や置換フェニル基などの置換されていても
よいアリール基が含まれる。
【0034】有機ホスフィンは、第1ホスフィン(例え
ば、エチルホスフィン、イソブチルホスフィン、フェニ
ルホスフィン、シクロヘキシルホスフィンなど)、第2
ホスフィン(例えば、ジエチルホスフィン、ジイソプロ
ピルホスフィン、ジ−n−ブチルホスフィン、ジフェニ
ルホスフィン、ジシクロヘキシルホスフィンなど)や第
3ホスフィンのいずれであってもよい。好ましい有機ホ
スフィンには第3有機ホスフィン(特に、置換基を有し
ていてもよい芳香族性の同素環基又は複素環基を有する
第3有機ホスフィン、置換基を有していてもよいアリー
ル基を有する第3有機ホスフィン)が含まれる。
【0035】好ましい有機ホスフィン(第3有機ホスフ
ィン)としては、例えば、トリフェニルホスフィン、ト
リ(4−メチルフェニル)ホスフィン、トリ(3,5−
ジメチルフェニル)ホスフィン、トリ(2,4,6−ト
リメチルフェニル)ホスフィン、トリ(4−メトキシフ
ェニル)ホスフィン、トリ(3,5−ジメトキシフェニ
ル)ホスフィン、トリ(4−クロロフェニル)ホスフィ
ン、トリ(3,5−ジクロロフェニル)ホスフィンなど
の置換基を有していてもよいトリアリールホスフィン;
エチルジフェニルホスフィン、プロピルジフェニルホス
フィン、ブチルジフェニルホスフィンなどのモノC1-10
アルキルジアリールホスフィン;ジメチルフェニルホス
フィン、ジエチルフェニルホスフィン、ジブチルフェニ
ルホスフィンなどのジC1-10アルキルモノアリールホス
フィン;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィ
ン、トリブチルホスフィン、トリアミルホスフィン、ト
リヘキシルホスフィンなどのトリC1-10アルキルホスフ
イン;シクロペンチルジフェニルホスフィン、シクロヘ
キシルジフェニルホスフィンなどのモノC4-10シクロア
ルキルジアリールホスフィン;ジシクロペンチルフェニ
ルホスフィン、ジシクロヘキシルフェニルホスフィンな
どのジC4-10シクロアルキルモノアリールホスフィン;
トリシクロペンチルホスフィン、トリシクロヘキシルホ
スフィンなどのトリC4-10シクロアルキルホスフィン;
エタン−1,2−ジイルビスジフェニルホスフィン、エ
タン−1,2−ジイルビス[ビス(トリフルオロメチ
ル)ホスフィン]、エテン−1,2−ジイルビスジフェ
ニルホスフィン、エチン−1,2−ジシルビスジフェニ
ルホスフィン、1,2−フェニレンビスジフェニルホス
フィン、ヘキサフルオロシクロペンテン−1,2−ジイ
ルビスジフェニルホスフィン、テトラフルオロシクロブ
テン−1,2−ジイルビスジフェニルホスフィン、オク
タフルオロシクロヘキセン−1,2−ジイルビスジフェ
ニルホスフィン、1,4−ジフェニル−1,4−ジホス
ファシクロヘキサン、ビス(1,2−ジフェニル)ホス
フィノメチルシクロブタンなどが例示される。ホスフィ
ンは、ピリジル基などの窒素含有複素環基を有していて
もよく、例えば、トリビリジルホスフィン、ジピリジル
モノフェニルホスフィン、モノピリジルジフェニルホス
フィンなども使用できる。これらの有機ホスフィンは単
独で又は二種以上組み合わせて使用できる。有機ホスフ
ィンとしては、置換基を有していてもよいトリフェニル
ホスフィンなどの安価で繁用性の高いトリアリールホス
フィンを用いる場合が多い。
【0036】有機カルボン酸 本発明の触媒系の特色は、(3)有機カルボン酸を、触
媒構成成分として用いる点にある。(3)有機カルボン
酸としては、前記カルボニル化反応により生成する反応
生成物に対応するカルボン酸、すなわち前記式(II)で
表される化合物(d)に対応する不飽和又は飽和カルボ
ン酸を用いる場合が多い。(3)有機カルボン酸は、特
に制限されず、例えば、プロピオン酸、n−酪酸、イソ
酪酸、ピバリン酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、
カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン
酸、ステアリン酸などの飽和脂肪族カルボン酸、マロン
酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、アゼライン
酸、セバシン酸などの飽和脂肪族多価カルボン酸、乳
酸、β−オキシプロピオン酸、β−オキシ酪酸、リンゴ
酸、酒石酸、クエン酸などのオキシカルボン酸、アクリ
ル酸、メタクリル酸、クロトン酸、オレイン酸、リノー
ル酸などの不飽和脂肪族カルボン酸、マレイン酸、フマ
ル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸などの不
飽和多価カルボン酸などが例示できる。有機カルボン酸
は、前記式(II)で表される化合物に対応して、脂肪族
カルボン酸、好ましくは炭素数3〜20程度、さらに好
ましくは炭素数3〜18程度のカルボン酸、特に炭素数
3〜10程度のカルボン酸である場合が多い。
【0037】有用な(3)有機カルボン酸には、前記式
(II)で表される化合物に対応する不飽和又は飽和カル
ボン酸、好ましくは不飽和有機カルボン酸、さらに好ま
しくはα,β−エチレン性不飽和カルボン酸(例えば、
アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸などのC3-6
飽和脂肪族カルボン酸、C4-6 マレイン酸、フマル酸、
イタコン酸などの不飽和多価カルボン酸など)が含ま
れ、(メタ)アクリル酸エステルを生成させる場合に
は、(メタ)アクリル酸が好ましく使用される。なお、
25℃においてアクリル酸のpKaは4.3程度であ
り、前記先行文献で使用されるpKa1.0以下の有機
カルボン酸(トリフルオロ酢酸など)と区別される。
【0038】本発明の触媒系において、有機ホスフィン
(2)の割合は、例えば、白金源1モルに対して、1〜
1000モル、好ましくは5〜500モル、さらに好ま
しくは10〜100モル程度、特に15〜100モル
(例えば、20〜100モル)程度である。なお、白金
源に対する有機ホスフィン(2)の割合が大きくなるに
つれて、(a)アセチレン系又はオレフィン系化合物の
転化率が向上するとともに、(d)不飽和又は飽和有機
カルボン酸エステルの選択率および収率が大きく向上す
る。なお、有機ホスフィン(2)は、反応系中、濃度
0.1〜1.5モル/kg、好ましくは0.2〜1モル
/kg、さらに好ましくは0.3〜1モル/kg程度で
使用する場合が多い。有機カルボン酸(3)の割合は、
例えば、白金源1モルに対して、1モル以上(例えば、
2〜500モル程度の過剰モル)、好ましくは5モル以
上(例えば、5〜400モル)、さらに好ましくは10
モル以上(例えば、10〜300モル程度)、特に25
〜250モル程度である。カルボニル化反応における触
媒系の割合は広い範囲で選択でき、前記白金源の割合
は、例えば、アセチレン系又はオレフィン系不飽和化合
物に対して0.01〜15重量%、好ましくは0.1〜
10重量%程度であり、0.5〜8重量%程度である場
合が多い。また、液相系で反応させる場合、白金源の濃
度は、広い範囲で選択でき、例えば、10〜10000
ppm、好ましくは50〜7500ppm、さらに好ま
しくは100〜5000ppm程度の範囲から選択でき
る。
【0039】本発明の触媒系は、均一触媒、不均一触媒
のいずれであってもよい。液相反応に利用する場合、触
媒系は均一系であってもよい。また、必要に応じて、触
媒系は、活性炭、アルミナ、シリカなどの担体に前記触
媒成分が担持された固体触媒を構成してもよい。触媒系
を構成する各成分の割合は、各触媒成分の種類などに応
じて、触媒活性および安定性を損わない範囲で選択でき
る。
【0040】本発明の触媒系は、安定性がきわめて高
く、反応過程で殆ど析出しない。しかも、単純な構成で
あるにも拘らず、不飽和炭化水素類のカルボニル化にお
いて高い活性を示す。そのため、本発明の触媒系を利用
すると、アセチレン系不飽和化合物またはオレフィン系
不飽和化合物と、一酸化炭素と、アルコールとのカルボ
ニル化反応により、前記式(II)で表される化合物(特
に(メタ)アクリル酸メチルなど)を長期間に亘り高い
収率で製造する上で有用である。
【0041】前記反応は、反応に不活性な溶媒の存在下
で行ってもよい。なお、溶媒として、アミン類、イミン
類、エーテル類などの前記周期表第8族元素に対して配
位性を有する電子供与性化合物が広く利用されている。
しかし、本発明において溶媒として電子供与性化合物を
用いる必要はなく、幅広い有機溶媒が使用できる。有機
溶媒としては、例えば、脂肪族炭化水素(例えば、ヘキ
サン、オクタンなど)、脂環族炭化水素(シクロヘキサ
ンなど)、芳香族炭化水素類(例えば、ベンゼン、トル
エン、キシレン、エチルベンゼンなど)、ハロゲン化炭
化水素(ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホル
ム、四塩化炭素、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンな
ど)、前記アルコール、エステル類(例えば、酢酸メチ
ル、酢酸エチル、酢酸ブチル、プロピオン酸メチルなど
の飽和カルボン酸のアルキルエステル;アクリル酸メチ
ル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチル、クロトン
酸メチル、クロトン酸エチルなどの不飽和カルボン酸の
アルキルエステルなど)、ケトン類(例えば、アセト
ン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シ
クロヘキサノンなど)、ラクトン類、エーテル類(例え
ば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、1,
2−ジメトキシエタン、セロソルブ、カルビトール、ジ
グライム、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジ
エチレングリコールジエチルエーテルなどの鎖状エーテ
ル;アニソール、1,2−ジメトキシベンゼン、ジフェ
ニルエーテルなどの芳香族エーテル;テトラヒドロフラ
ン、ジオキソランなどの環状エーテルなど)、ニトリル
類(例えば、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチ
ロニトリル、ベンゾニトリルなど)、ニトロ化合物(例
えば、ニトロメタン、ニトロエタンなどの脂肪族ニトロ
化合物、ニトロベンゼンなどの芳香族ニトロ化合物な
ど)、アミン類(例えば、ジエチルアミン、ジブチルア
ミン、トリエチルアミンなどのアルキルアミン;ジメタ
ノールアミン、トリメタノールアミン、ジエタノールア
ミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノー
ル、ジエチルアミノエタノールなどのヒドロキシアルキ
ルアミン;アニリン、N,N−ジメチルアニリンなどの
芳香族アミン;モルホリン、N−メチルピロリドン、イ
ミダゾール、1−メチルイミダゾール、ピリジン、ピコ
リン、ビピリジン、o−トルイジン、ピペリジンなどの
複素環式アミンなど)、イミン類、アミド類(例えば、
ホルムアミド、アセトアミド、N,N−ジメチルホルム
アミド、N,N−ジメチルアセトアミド、テトラメチル
尿素、ヘキサメチルホスホアミドなど)、スルホキシド
類(例えば、ジメチルスルホキシド、スルホラン、2−
メチルスルホラン、3−メチルスルホランなど)などが
挙げられる。これらの有機溶媒は単独で又は二種以上混
合して使用できる。なお、溶媒として前記(3)有機カ
ルボン酸や反応剤(アルコール)を用いる場合には、上
記有機溶媒を使用する必要はない。さらに、反応系に
は、必要に応じてアルコールとともに水が共存していて
もよい。
【0042】反応系には、必要に応じて、第4アンモニ
ウム基などの塩基性基を有する樹脂やイオン交換樹脂
(例えば、ピリジンとホルムアルデヒドの反応により生
成するピリジン樹脂などのアミン樹脂など)を添加して
もよい。なお、必要であれば、反応系には、前記(3)
有機カルボン酸以外の酸を添加してもよい。前記酸に
は、無機酸(硫酸、ハロゲン化水素酸、硝酸、リン酸、
ヘテロポリ酸など)、有機酸(アリールスルホン酸、ア
ルキルスルホン酸などのスルホン酸、ホスホン酸、カル
ボン酸、過ハロゲン酸など)およびルイス酸[(C
25)O・BF3、BF3、AlCl3、SnCl4、Sn
Cl2、TiCl4、Ti[OCH(CH3)24、NbF
5、TaF5、PF5、AsF5、SbF5など]が含まれ
る前記酸は酸性イオン交換樹脂、例えば、スルホン酸
基、ホスホン酸基、ホスフィン酸基などを有するイオン
交換樹脂などであってもよい。
【0043】カルボニル化反応は、例えば、10〜25
0℃(例えば10〜200℃)、好ましくは25〜20
0℃程度の温度で、常圧〜150気圧程度(好ましくは
常圧〜100気圧、通常、10〜70気圧程度)で行な
う場合が多い。反応は、バッチ式、セミバッチ式や連続
式などの慣用の方法で行なうことができ、液相又は気相
で行なうことができる。反応は、液相系で行なう場合が
多い。
【0044】反応終了後、反応生成物は、慣用の方法、
例えば、濾過、濃縮、蒸留、抽出、晶析、再結晶、カラ
ムクロマトグラフィーなどの分離手段や、これらを組合
せた分離手段により、容易に分離精製できる。
【0045】
【発明の効果】本発明の触媒系は安定で活性が高く、こ
の触媒系を利用したカルボニル化方法では、高い転化率
および選択率でアセチレン系又はオレフィン系不飽和化
合物をカルボニル化して高い収率でカルボン酸エステル
を生成できる。また、カルボニル化により、カルボン酸
エステル(特に、メタクリル酸メチルなどのα,β−エ
チレン性不飽和カルボン酸エステル)を液相系で長期間
に亘り高い転化率および選択率で生成できる。
【0046】
【実施例】以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細
に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定され
るものではない。 比較例1 ステンレス製オートクレーブ(内容積300ml)に、
テトラキス(トリフェニルホスフィン)白金[Pt(P
Ph3 4 ]0.62g(0.5ミリモル)、メタクリ
ル酸8.61g(100ミリモル)、ピリジン7.8g
(100ミリモル)、メタノール14.5g(452.
6ミリモル)及びアニソール19.5gを装入した。次
いで、オートクレーブから空気を追い出した後、プロピ
ン9.0g(224.7ミリモル)、一酸化炭素600
ミリモルを導入し、オートクレーブを密封して加熱し、
50kg/cm2 、温度150℃で2時間反応させた。
反応生成物をガスクロマトグラフィーで分析したとこ
ろ、プロピンの転化率98.7%であり、メタクリル酸
メチル(MMA)が収率38.5%で生成した。
【0047】実施例1〜4 比較例1の反応系に、下記の量のトリフェニルホスフィ
ン(TPP)を添加する以外、比較例1と同様にして反
応させた。比較例1の結果、及び白金Ptに対するTP
Pのモル比とともに、結果を表1及び図1に示す。
【0048】
【表1】 表1及び図1から明らかなように、TPPの添加量が増
加するにつれて、プロピンの転化率、メタクリル酸メチ
ル(MMA)の選択率および収率が大きく向上する。
【0049】比較例2,実施例5及び6 メタクリル酸(MAA)の使用量を調整することによ
り、白金に対するメタクリル酸のモル比(MAA/P
t)を0(比較例2)、100(実施例5)及び200
(実施例6)とする以外、比較例1と同様にして反応さ
せたところ、表2に示す結果を得た。
【0050】
【表2】 表2から明らかなように、反応生成物に対応する有機カ
ルボン酸を併用することにより、プロピンの転化率、メ
タクリル酸メチル(MMA)の選択率および収率が顕著
に向上する。
【0051】実施例7 ピリジンを用いることなく、実施例1と同様にして反応
させたところ、プロピンの転化率99%であり、メタク
リル酸メチルが収率92.3%で生成した。
【0052】実施例8 ピリジンに代えて、o−ジクロロベンゼンを用いる以
外、実施例1と同様にして反応させたところ、プロピン
の転化率97.5%であり、メタクリル酸メチルが収率
91.8%で生成した。
【0053】実施例9および比較例3 テトラキス(トリフェニルホスフィン)白金[Pt(P
Ph3 4 ]0.62g(約0.5ミリモル)、トリフ
ェニルホスフィン4.68g、メタクリル酸10.15
g、メタノール34.5g、およびプロピン9.1g、
一酸化炭素600ミリモルを用いる以外、実施例1と同
様にして反応させた(実施例9)。また、テトラキス
(トリフェニルホスフィン)白金に代えて、酢酸パラジ
ウム[Pd(OAc)2 ]0.5ミリモルを用いる以
外、上記と同様にして反応させた(比較例3)。
【0054】そして、反応生成物をガスクロマトグラフ
ィーで分析するとともに、反応終了後の反応液中の金属
濃度(Pt又はPd)をICP分析により測定し、理論
量(仕込み金属量)に対する残存金属濃度の割合を算出
したところ、表3に示す結果を得た。
【0055】
【表3】 表3から明らかなように、パラジウム触媒を用いた反応
系では黒いメタル状物が生成しており、触媒系が不安定
であるのに対して、実施例の触媒系では白金成分が殆ど
析出せず、高い安定性を有しているとともに、高い転化
率および収率でメタクリル酸メチル(MMA)を得るこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は実施例1〜4および比較例1の結果を示
すグラフである。

Claims (15)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (a)アセチレン系又はオレフィン系不
    飽和化合物と(b)一酸化炭素と(c)アルコールとを
    反応させ、(d)不飽和又は飽和有機カルボン酸エステ
    ルを生成させるカルボニル化触媒であって、(1)白金
    源、(2)有機ホスフィンおよび(3)有機カルボン酸
    で構成されているカルボニル化触媒系。
  2. 【請求項2】 有機ホスフィン(2)が、置換されてい
    てもよい芳香族性の同素又は複素環を有する有機ホスフ
    ィンである請求項1記載のカルボニル化触媒系。
  3. 【請求項3】 有機カルボン酸(3)が不飽和有機カル
    ボン酸である請求項1記載のカルボニル化触媒系。
  4. 【請求項4】 (a)アセチレン系又はオレフィン系不
    飽和化合物と(b)一酸化炭素と(c)アルコールとを
    反応させ、(d)不飽和カルボン酸エステルを生成させ
    るカルボニル化触媒であって、(1)白金化合物、
    (2)置換基を有していてもよいアリール基を有する第
    3有機ホスフィン、および(3)不飽和カルボン酸で構
    成されているカルボニル化触媒系。
  5. 【請求項5】 (3)有機カルボン酸が、カルボン酸エ
    ステルに対応する不飽和又は飽和カルボン酸である請求
    項1又は4記載のカルボニル化触媒。
  6. 【請求項6】 (a)アセチレン系又はオレフィン系不
    飽和化合物と(b)一酸化炭素と(c)アルコールとを
    反応させ、(d)不飽和又は飽和有機カルボン酸エステ
    ルを生成させるカルボニル化方法であって、この反応
    を、(1)白金源、(2)置換されていてもよい芳香族
    性の同素又は複素環を有する有機ホスフィン、および
    (3)有機カルボン酸で構成された触媒系の存在下で行
    なうカルボニル化方法。
  7. 【請求項7】 白金源が、白金化合物である請求項6記
    載のカルボニル化方法。
  8. 【請求項8】 有機ホスフィンが、置換されていてもよ
    いアリール基を有する第3級ホスフィンである請求項6
    記載のカルボニル化方法。
  9. 【請求項9】 (1)白金源1モルに対して(2)有機
    ホスフィン5モル以上を用いる請求項6記載のカルボニ
    ル化方法。
  10. 【請求項10】 (3)有機カルボン酸が、カルボン酸
    エステルに対応する不飽和又は飽和カルボン酸である請
    求項6記載のカルボニル化方法。
  11. 【請求項11】 (1)白金源1モルに対して(3)有
    機カルボン酸1モル以上を用いる請求項6記載のカルボ
    ニル化方法。
  12. 【請求項12】 不飽和化合物が、α−アセチレン系又
    はα−オレフィン系化合物である請求項6記載のカルボ
    ニル化方法。
  13. 【請求項13】 アルコールが、炭素数1〜20のアル
    コールである請求項6記載のカルボニル化方法。
  14. 【請求項14】 (a)α−アセチレン系又はオレフィ
    ン系炭化水素、(b)一酸化炭素、および(c)水また
    はアルコールを反応させ、α,β−エチレン性不飽和カ
    ルボン酸エステルを製造する方法であって、前記反応
    を、(1)白金化合物、(2)置換基を有していてもよ
    いトリアリールホスフィンおよび(3)前記α,β−エ
    チレン性不飽和カルボン酸で構成された触媒系の存在下
    で行なうα,β−エチレン性不飽和カルボン酸エステル
    の製造方法。
  15. 【請求項15】 (a)アセチレン、プロピン又はアレ
    ンから選択された少なくとも一種のα−アセチレン系又
    はオレフィン系炭化水素、(b)一酸化炭素、および
    (c)アルコールを反応させ、(メタ)アクリル酸と前
    記アルコールとのエステルを製造する方法であって、前
    記反応を、(1)白金化合物、(2)置換基を有してい
    てもよいトリフェニルホスフィンおよび(3)前記(メ
    タ)アクリル酸で構成された触媒系の存在下で行なう
    (メタ)アクリル酸エステルの製造方法。
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