JPH09163993A - L−アスパラギン酸の製造方法 - Google Patents

L−アスパラギン酸の製造方法

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JPH09163993A
JPH09163993A JP32707195A JP32707195A JPH09163993A JP H09163993 A JPH09163993 A JP H09163993A JP 32707195 A JP32707195 A JP 32707195A JP 32707195 A JP32707195 A JP 32707195A JP H09163993 A JPH09163993 A JP H09163993A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 マレイン酸およびアンモニアを系内で効率的
に循環使用しバランスの製造プロセスとなり得る新規な
フロ−を提供する。 【解決手段】 酵素処理により得られたL−アスパラギ
ン酸アンモニウムを脱アンモニア処理しモノアンモニウ
ム塩とした後、マレイン酸を用いて酸析し、加えて、脱
アンモニア処理から排出されるアンモニアをマレイン酸
を用いて中和する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はL−アスパラギン酸
の製造方法に関するものであり、詳しくは、マレイン酸
及び/又は無水マレイン酸を原料とし、酵素作用により
L−アスパラギン酸を製造するための工業的有利なプロ
セスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】L−アスパラギン酸は医薬、食品添加物
として需要が増加している。また新たな用途開発も検討
されているが、現在のところ、経済的に優れた工業的プ
ロセスは確立されていない。従って、安価な製造コスト
で大量生産が可能となれば、L−アスパラギン酸の需要
は急増するものと予想される。従来、L−アスパラギン
酸の製造法としては、フマル酸を原料とし、アンモニア
の存在下、アスパルターゼ又はこれを産生する微生物の
作用によりL−アスパラギン酸を酵素法により得るとい
う方法が知られている。しかしながら、従来法は、酵素
処理後のL−アスパラギン酸アンモニウムを硫酸又は塩
酸により酸析するため、経済的価値の低い無機酸アンモ
ニウム塩を大量に副生し、結果的にL−アスパラギン酸
の製造コストを高めることとなる。
【0003】一方、酵素処理後のL−アスパラギン酸ア
ンモニウムをマレイン酸又は無水マレイン酸により酸析
し、L−アスパラギン酸結晶を回収した後のマレイン酸
アンモニウムを含む母液を原料として利用する方法が提
案されている(EP127,940)。この方法によれ
ば、原料として大量に入手が容易で、しかも、安価な無
水マレイン酸を用いるので、安定した連続操作により所
望のL−アスパラギン酸を得ることができれば工業的に
非常に望ましい方法となり得る。しかし、上記特許方法
の場合、L−アスパラギン酸アンモニウムの晶析に当
り、大量のマレイン酸を添加しないとL−アスパラギン
酸結晶の回収率を高めることができない。従って、晶析
工程で添加するマレイン酸の量は、晶析すべきL−アス
パラギン酸の量を超える条件となる。そのため、晶析後
のマレイン酸アンモニウムを含む母液を反応系にリサイ
クル使用すると、次第に、系内のL−アスパラギン酸濃
度が上昇することとなり、安定した連続操作を継続的に
行なうことができない。要するに、上記特許方法では、
工業的な連続操作は不可能である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、L−
アスパラギン酸アンモニウム水溶液から、L−アスパラ
ギン酸を効率よく沈殿回収すると共に、酸析後に得られ
るマレイン酸アンモニウムおよび蒸留により得られるア
ンモニアを系内で循環使用してもバランスのとれた安定
した連続操作が可能なL−アスパラギン酸製造プロセス
を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決するために鋭意検討を重ねた結果、酵素処理によ
り得られたL−アスパラギン酸アンモニウムを脱アンモ
ニア処理することで実質的全てをモノアンモニウム塩と
した後、これをマレイン酸を用いて酸析すること及び脱
アンモニア処理から排出されるアンモニアを酸析剤の一
部を用いて中和すること等により、工業的有利なバラン
スのとれたプロセスが得られることを見い出した。
【0006】すなわち、本発明の要旨は、マレイン酸ア
ンモニウム水溶液を原料とし、異性化反応及びアンモニ
アの存在下でのアスパルターゼ又はアスパルターゼを産
出する微生物による酵素処理によりL−アスパラギン酸
アンモニウム水溶液を得、次いで、得られた水溶液を酸
析し、アスパラギン酸結晶を析出させ、これを分離回収
するL−アスパラギン酸の製法において、(1)酵素処
理後のL−アスパラギン酸アンモニウム水溶液を蒸留す
ることにより、脱アンモニアし、L−アスパラギン酸ア
ンモニウムの実質的全てをモノアンモニウム塩とするこ
と、(2)前記酸析の酸析剤として、マレイン酸及び/
又は無水マレイン酸を使用すること、(3)酸析後のマ
レイン酸モノアンモニウムを含有する母液を前記原料と
して使用すること、(4)前記蒸留工程で塔頂より留出
するアンモニア含有ガスを、前記酸析剤の一部を用いて
調製した水溶液で吸収し、これを前記酸析後の母液とと
もに反応原料として使用すること、を特徴とするL−ア
スパラギン酸の製法に存する。
【発明の実施の形態】以下、本発明の各工程につき詳細
に説明する。
【0007】(反応工程)本発明では、マレイン酸モノ
アンモニウムを含む水溶液からL−アスパラギン酸アン
モニウムを製造する。この反応はマレイン酸アンモニウ
ムをフマル酸アンモニウムに異性化した後、これを酵素
処理してアスパラギン酸アンモニウムを生成させる2段
反応法、又は、マレイン酸アンモニウムの異性化とアス
パラギン酸アンモニウムの生成とを同時に行なう1段反
応法のいずれでもよい。マレイン酸アンモニウムをフマ
ル酸アンモニウムに異性化する反応及びフマル酸アンモ
ニウムをアスパラギン酸アンモニウムに変換する反応は
公知であり、本発明はこれらの反応自体は公知法に準じ
て実施することができる。また、異性化反応は化学反応
でもよいが、マレイン酸等が熱劣化を受けやすく、不純
物の蓄積が起こりやすいこと等の観点から、よりマイル
ドな反応条件を設定しうる酵素処理による異性化反応が
望ましい。
【0008】異性化反応を酵素処理により行うには、マ
レイン酸イソメラーゼあるいは、マレイン酸イソメラー
ゼを産生する微生物を用いる。マレイン酸イソメラーゼ
活性を有する微生物としては、マレイン酸を異性化して
フマル酸を生成しうる能力を有する微生物であれば特に
制限がなく、例えば、アルカリゲネス属、シュードモナ
ス属、キサントモナス属、バチルス属等の微生物が挙げ
られる。具体的には、アルカリゲネス・フェカリス(A
lcaligenes faecalis)IFO12
669、同IFO13111、同IAM1473、アル
カリゲネス・ユウトロフス(Alcaligenes
eutrophus)、シュードモナス・フルオレッセ
ンス(Pseudomonas fluorescen
s)ATCC23728、キサントモナス・マルトモナ
ス(Xanthomonas marutomonas
u)ATCC13270等を例示することが出来る。
【0009】一方、アスパルターゼあるいはアスパルタ
ーゼを産生する微生物で酵素処理することは、広く知ら
れているが、種々の処理方法のうち特に限定されるもの
ではない。アスパルターゼ活性を有する微生物として
は、フマル酸とアンモニアからL−アスパラギン酸を生
成しうる能力を有する微生物であれば特に制限がなく、
例えば、ブレビバクテリウム属、エシェリヒア属、シュ
ードモナス属、バチルス属等の微生物が挙げられる。具
体的には、ブレビバクテリウム・フラバム(Brevi
bacterium flavum)MJ−233(F
ERM BP−1497))、同MJ−233−AB−
41(FERM BP−1498)、ブレビバクテリウ
ム・アンモニアゲネス ATCC6872、エシェリヒ
ア・コリ(Escherichia coli)ATC
C11303、同 ATCC27325等を例示するこ
とが出来る。
【0010】原料水溶液濃度は、通常、後述する晶析工
程から回収されるマレイン酸モノアンモニウム水溶液の
濃度により決定される。すなわち、マレイン酸アンモニ
ウムがフマル酸アンモニウムとなり、次いで、アスパラ
ギン酸アンモニウムと変化するが、その水溶液濃度はほ
ぼ一定である。前記原料水溶液の濃度は、通常、マレイ
ン酸アンモニウムとして、45〜700g/l、好まし
くは90〜450g/lである。第2反応は、アンモニ
アの存在下で実施される。この際の反応系内のpHは通
常、7.5〜10であり、アンモニアの使用量は原料マ
レイン酸モノアンモニウムに対して、1.1〜1.6モ
ル倍である。
【0011】第1反応及び第2反応の温度は、10〜1
00℃、好ましくは20〜80℃であり、酵素反応が効
率的に行なわれる温度を選定する。酵素反応の反応方式
は、通常、固体化した微生物を懸濁した反応器中に原料
水溶液を供給する一方、反応液を連続的に抜き出す方
法、又は、固定化した微生物の固定床に原料水溶液を連
続的に通液する方法が挙げられる。なお、第1反応と第
2反応とを酵素反応により同時に行なう場合には、各々
の性質を持つ菌を併用し、両反応に適した条件を選定し
て行なうことができる。また、両方の性質を有するもの
であれば併用の必要は必ずしもない。
【0012】(蒸留工程)本発明においては、上記処理
で得られたL−アスパラギン酸アンモニウムを晶析する
前に、脱アンモニア処理し、実質的全てをモノアンモニ
ウム塩とする。蒸留操作は、常圧下でも減圧下でもよ
く、30〜100℃の範囲で、好ましくは、40〜80
℃で行う。低温下でアンモニア除去操作を行うには、減
圧度を高めなくてはならず操作上の制約が大きくなる。
一方、高温下では、溶質の熱劣化を招くので好ましくな
い。本発明で構成される全工程のうち、最も高温で処理
することを余儀なくされる本工程の温度条件、特に上限
温度について、この観点から上記の様に規定されるべき
である。
【0013】アンモニア蒸留操作で塔頂から蒸気として
分離されるのは、アンモニアおよび水のみであり、冷却
管等を用いてこの蒸気を液として回収すれば、アンモニ
ア水が得られる。この得られるアンモニア水の濃度は、
アンモニア除去操作の温度、圧力および蒸気回収温度等
に影響されるが、通常、1〜50重量%である。本発明
では、ここで排出されるアンモニアを後述する酸析剤の
一部を用い吸収することを要件とする。アンモニア蒸留
塔の形式は、通常の棚段塔又は充填塔でよい。
【0014】酵素処理により得られたL−アスパラギン
酸アンモニウム水溶液を、上記の方法で蒸留することに
より、蒸留釜にはL−アスパラギン酸に対するアンモニ
アのモル比が約1.0の残液を得ることができる。この
実験事実により、酵素処理により得られたL−アスパラ
ギン酸アンモニウム水溶液中のモノアンモニウム塩を形
成するアンモニア以外のアンモニアは、アンモニア除去
操作により容易に除去分離しうることが判明し、次工程
の晶析操作において極めて有利な条件を与え得る。上記
操作後の水溶液は、晶析工程に送り、L−アスパラギン
酸結晶を回収するが、晶析工程に供給する水溶液中のL
−アスパラギン酸アンモニウムの濃度は、通常、50〜
800g/lの範囲であり、好ましくは、100〜50
0g/lである。濃度が低すぎると、後工程の沈殿回収
においてL−アスパラギン酸の回収率が低くなってしま
い、高すぎると、回収スラリーの濃度が上がり、操作に
支障をきたす。また、未反応のフマル酸アンモニウムお
よびマレイン酸アンモニウムは、できるだけ少ない方が
望ましく、通常、2g/l以下、好ましくは、1g/1
以下に制御される。
【0015】(酸析工程)上記のアンモニア蒸留工程で
得られた液に無水マレイン酸及び/又はマレイン酸を添
加して、L−アスパラギン酸を晶析させる。添加するマ
レイン酸、無水マレイン酸は、粉末でも、溶融液でも、
水溶液でも、またスラリーであってもよい。この二種類
の酸を任意の比で混合することも何ら制限をうけるもの
でない。
【0016】(マレイン酸+無水マレイン酸)/L−ア
スパラギン酸モノアンモニウムのモル比としては、0.
3〜1.2の範囲であり、好ましくは、0.5〜1.0
がよい。このモル比が小さすぎると、晶析回収でのL−
アスパラギン酸の回収率が充分でなく、また大きすぎる
と、添加したマレイン酸及び/又は無水マレイン酸の合
計のモル数が、晶析回収されるL−アスパラギン酸のモ
ル数を上回り、晶析回収で得られる母液を異性化してリ
サイクルする場合に、このモル数の差に相当するL−ア
スパラギン酸が濃縮され、リサイクル工程を含むプロセ
スを構成する際に問題となる。本発明では酸析に先だっ
てアンモニア蒸留によりジアンモニウム塩をモノアンモ
ニウム塩としているので、マレイン酸及び/又は無水マ
レイン酸の使用量を多くしなくてもL−アスパラギン酸
結晶を効果的に回収することができる。もし、本工程及
び後述するアンモニア吸収工程で用いるマレイン酸及び
/又は無水マレイン酸の合計モル数が、晶析回収される
L−アスパラギン酸のモル数を上回る場合には、リサイ
クル工程を含むプロセスのバランスをとることが極めて
困難となる。このように本発明は、L−アスパラギン酸
アンモニウム水溶液から、L−アスパラギン酸を効率よ
く晶析回収し、またマレイン酸を用いて晶析回収する際
の母液をリサイクルするプロセスに関し、プロセス上、
バランスのとれた工業的に有利な方法と言える。
【0017】マレイン酸及び/又は無水マレイン酸の添
加は、特に限定するものではないが、10〜90℃の温
度範囲、好ましくは、20〜80℃で行う。低温下で酸
の添加を行うと、小粒径のL−アスパラギン酸の結晶し
か得られないため、固液分離工程、特にリンス効率が悪
化する。すなわち、固液分離で得られる湿ケーキの母液
保持量(含水液量)が多く、さらに充分なリンス効果が
得られないため、結晶純度が低下するか、リンス量を増
やしてL−アスパラギン酸の回収率を低下させるかの状
況になる。一方、高温下では、マレイン酸の熱劣化があ
ることから好ましくない。
【0018】L−アスパラギン酸の回収率を上げるた
め、必要に応じてマレイン酸及び/又は無水マレイン酸
の添加により得られたスラリーをさらに冷却する。温度
は、特に限定するものではないが、0〜80℃の範囲、
好ましくは、10〜50℃まで冷却する。低温下ではス
ラリーの粘性が高く取扱いが困難になり、高温下ではL
−アスパラギン酸の回収率が低下してしまう。マレイン
酸及び/又は無水マレイン酸の添加、それに引き続き行
われる冷却の一連の操作は、特に限定されるものではな
いが、得られるスラリーを充分に撹拌し得る反応槽を使
用することが好ましい。また、回分式、連続式のいずれ
で行っても何ら問題はないが、工業的には、連続法が好
ましい。
【0019】(固液分離工程)次に、得られたスラリー
から固液分離、必要に応じてリンスすることによりL−
アスパラギン酸結晶を回収する。固液分離で得られる母
液の主成分は、マレイン酸モノアンモニウムであり、溶
解度分のL−アスパラギン酸モノアンモニウムも含まれ
ている。本発明では、この母液を反応工程に供給する。
すなわち、上記酸析工程で酸析剤としてマレイン酸及び
/又は無水マレイン酸を用い、これが変化したマレイン
酸モノアンモニウムを反応原料として用いることが重要
である。
【0020】スラリーの固液分離は、特に限定されるも
のではないが、0〜80℃の温度範囲、好ましくは、1
0〜50℃で行う。低温下ではスラリーの粘性が高く取
扱いが困難になり、高温下では、L−アスパラギン酸の
溶解度が高くなり、回収率が低下してしまう。得られた
湿ケーキは、要求されるL−アスパラギン酸の品質、湿
ケーキに含まれる不純物量により、必要に応じてリンス
操作を行う。リンス操作は、特に限定されるものではな
いが、湿ケーキに水をかけた後に固液分離を行ってもよ
いし、湿ケーキを水中で懸濁洗浄後固液分離してもよ
い。リンス操作に用いる水の量は、特に限定されるもの
ではないが、湿ケーキに対して5重量倍以下、好ましく
は、3重量倍以下で行う。リンス量が少なすぎるとリン
ス効果が充分でなく、多すぎるとL−アスパラギン酸の
回収率が低下する。リンス水の温度についても特に限定
されない。リンス後は乾燥して目的とするL−アスパラ
ギン酸の結晶を得ることができる。分離操作は、限定さ
れるものではないが、ヌッチェ、遠心分離等の常法によ
り行う。また、回分式、連続式のいずれで行っても何ら
問題はないが、工業的には連続法が好ましい。
【0021】(吸収工程)蒸留工程で塔頂から蒸気とし
て得られたアンモニアは、酸析剤であるマレイン酸及び
又は無水マレイン酸の一部を用い調製したマレイン酸水
溶液で吸収する。アンモニアの吸収はアンモニアとマレ
イン酸の酸塩基反応によるものであり、容易に行われ
る。吸収に用いるマレイン酸水溶液を調製するために使
用するマレイン酸及び又は無水マレイン酸量は、通常、
酸析に用いるマレイン酸及び又は無水マレイン酸に対
し、10〜50モル%である。また、マレイン酸水溶液
濃度は、通常、10〜80重量%である。用いる酸析剤
量が少なすぎるとアンモニアとマレイン酸のモル比が2
を越え、pHが高くなり、アンモニアの吸収効率が低下
する。逆に酸析剤量が多すぎると晶析工程に供給される
マレイン酸量が少なくなり、L−アスパラギン酸の晶析
収率が低下する。
【0022】アンモニアガス濃度は、主に蒸留操作条件
によるが通常1〜50%程度である。アンモニア濃度が
低すぎると蒸留塔底液のL−アスパラギン酸濃度が高く
なりすぎスラリー粘性が高くなり、引き続き行われる晶
析工程で支障を来す。逆に高濃度のアンモニアガスを得
るには、高い蒸留塔を要し、効率が悪い。操作温度は、
特に限定されないが、アンモニア蒸留における塔頂温度
を考慮して0〜80℃、好ましくは10〜50℃がよ
い。高温下では、アンモニアの蒸気圧が高くなり好まし
くなく、また0℃以下の低温下では液が凝固する可能性
があり望ましくない。また操作圧力は、常圧でも減圧で
も良いが、吸収塔塔底での母液の熱劣化を防ぐため低温
とする為、減圧で行う方が望ましい。
【0023】アンモニア吸収が容易に行われるため、吸
収装置として特に制限はなく、一般的な吸収装置、すな
わち充填塔、ぬれ壁塔、スプレー塔などが挙げられる。
また、実験室レベルの小スケールで行う場合は、ただ単
にアンモニアガスをマレイン酸水溶液中にバブリングす
るような簡単な操作でも充分にアンモニアは吸収でき
る。また操作としては回分操作、連続操作いずれでも良
いが、工業的には連続法が望ましい。アンモニアを吸収
した液は、晶析母液とともに、必要に応じてアンモニア
を添加し、pHを調整した後、反応工程にリサイクルす
る。
【0024】このpH調整に用いるアンモニアの量は、
異性化反応、アスパルターゼによる酵素処理方法、およ
び晶析工程で添加したマレイン酸と無水マレイン酸の合
計量によるが、反応工程への合計添加量の、固液分離で
得た母液中に含まれるマレイン酸に対するモル比で、
0.8〜3.0の範囲、好ましくは、1.0〜2.5で
ある。このモル比が小さすぎると、酵素処理する反応液
のpHが十分に高くなく、マレイン酸アンモニウム及び
フマル酸アンモニウムの変換が充分に行われないばかり
か、1.0より小さいと化学量論的にもマレイン酸アン
モニウムあるいはフマル酸アンモニウムが残存してリサ
イクルの効率が悪化する。一方、モル比が大きすぎる
と、反応液のpHが高くなりすぎてマレイン酸アンモニ
ウム及びフマル酸アンモニウムの変換が充分に行われ
ず、好ましくない。反応器中でのアンモニアおよび晶析
母液の混合時には中和熱を発生するので必要に応じて除
熱する。温度は、特に限定されないが、それぞれの反応
温度を考慮して5〜80℃、好ましくは、10〜50℃
がよい。高温下では、アンモニアの蒸気圧が高くなり好
ましくない。また、反応温度より低温で供給しても何ら
問題ない。
【0025】本発明においては、酸析工程で用いたマレ
イン酸及び/又は無水マレイン酸から変化したマレイン
酸モノアンモニウムを原料として、反応工程、蒸留工
程、酸析工程及び固液分離工程と順次処理することによ
り、リサイクル系で連続的製造プロセスを組むことが可
能である。しかし、この場合、系内の不純物成分の蓄積
を防止するため、例えば、蒸留後のL−アスパラギン酸
アンモニウム水溶液の一部(1〜20重量%)をブリ−
ドすることが好ましい。ブリ−ド液からL−アスパラギ
ン酸を結晶として回収する方法としては、通常、硫酸又
は塩酸等の無機酸を添加して行なうのが好ましい。無機
酸の添加量はアスパラギン酸アンモニウムに対して当量
以上である。また、必要により、酸析母液中のマレイン
酸モノアンモニウム濃度を調節するため、母液を濃縮し
てもよい。
【0026】
【実施例】以下に実施例を挙げて、本発明を具体的に説
明する。尚、L−アスパラギン酸(以下ASPと略記す
ることがある)、マレイン酸(以下MAと略記すること
がある)およびフマル酸(以下FAと略記することがあ
る)の分析は高速液体クロマトグラフィーにより、AS
P結晶中のアンモニア(以下NH3と略記することがあ
る)含量の分析はイオンクマトグラフィーにより定量し
た。 〔実施例1〕リサイクル操作 リサイクル0 (A1)反応工程 通常の培養方法により得たアスパルターゼ活性を有する
ブレビバクテリウム・フラバム MJ−233−AB−
41(FERM BP−1498)、および通常の培養
方法により得たマレイン酸イソメラーゼ活性を有するア
ルカリゲネス・フェカリエス IFO−12669を含
むそれぞれの液の限外ろ過膜(旭化成社製−ACV−3
050)による濃縮菌体液60g(湿菌体約50重量
%)づつを、反応液(マレイン酸150gおよび、25
%アンモニア水220mlに水を加えて全量を1000
mlとした水溶液、pH9)に添加して、30℃で24
時間反応させた。反応終了後、限外ろ過膜により菌体を
除去し、得られたろ液を分析したところASPが170
g/l(理論収量の99%以上)、FA1g/l、アン
モニア28g/l(NH3/ASPモル比1.3、pH
9、すなわち、アスパラギン酸ジアンモニウム塩が全ア
ンモニウム塩に対し0.3モル倍)であった。
【0027】(B1)アンモニア蒸留工程 (A1)で得られた酵素反応液1Lを、2Lの三つ口フ
ラスコに仕込み、ラボ用エバポレーターを用いて、80
℃、300〜400mmHgの条件下、アンモニアを留
出させた。留出したアンモニア蒸気は、40重量%マレ
イン酸水溶液56g(酸析剤として用いる全マレイン酸
溶液の25%)を予め仕込んだ500ml耐圧瓶に、そ
のまま連続的に室温下でバブリングし、アンモニアを吸
収させた。途中圧力を大気圧に戻し、温度を室温近くま
で冷やした後、釜残液のpHを測定し、pH6〜7にな
るまでアンモニアを留出させた。蒸留後の釜残液組成
は、ASP238g/l、FA1g/l、NH331g
/l(NH3/ASPモル比は1.0、すなわち、全て
がモノアンモニウム塩)、723mlの容量であった。
また、アンモニアを吸収した液の組成は、MA69g/
l、NH319g/l、容量は325mlであった。
【0028】(C1)ASP晶析工程 (B1)で得られたL−アスパラギン酸モノアンモニウ
ム水溶液739mlを1000mlジャケット付きセパ
ラブルフラスコ内でジャケットに温水を流すことで60
℃に保温し、撹拌しながら40重量%MA169g(M
A/ASPモル比は0.45)を添加した。MAの添加
後、撹拌を続けながら30分間60℃で保温した後、1
時間かけ、10℃まで冷却し、さらに30分間保温し
た。
【0029】(D1)固液分離工程 (C1)で得られたスラリーは、ヌッチェで固液分離
し、さらに蒸留水310gでリンスし、減圧下、約60
℃で乾燥したところ、103gの白色固体を得た。得ら
れた固体は、99.3重量%ASPでマレイン酸アンモ
ニウム0.6重量%、フマル酸アンモニウム0.1重量
%を含んでいた。ASPの回収率は、60%であった。 (E1)晶析母液濃縮工程 一方、固液分離で得られたマレイン酸モノアンモニウム
を含む母液は、ASP64g/l、FA1g/l、MA
64g/l、NH321g/lの組成であり、pHは約
5.0、容量1060mlであった。母液はロータリー
エバポレーターにより、80℃、減圧(300〜400
mmHg)下、水を飛ばし倍の濃度に濃縮した。(操作
(A2)へ)
【0030】リサイクル1(アンモニアのみリサイク
ル) (A2) (B1)得られたアンモニア吸収液、(E1)で得られ
た晶析母液濃縮液、25%アンモニア水56gおよび蒸
留水を添加し全量で1lとした反応液(pH9)を用
い、(A1)と同様の方法で酵素処理を行い、ASP1
70g/l(理論収量の99%以上)、FA1g/l、
NH329g/l(NH3/ASPモル比1.3、pH
9、すなわち、ASPジアンモニウム塩が全アンモニウ
ム塩に対し、0.3モル倍)の液1lを得た。
【0031】(B2) (A2)で得られた反応液1lを、2l三ツ口フラスコ
に仕込み、温度80℃に保つため圧力を300〜400
mmHgの範囲で制御し、アンモニアを留出させた。留
出したアンモニア蒸気は、40重量%MA水溶液56g
(酸析剤として用いる全マレイン酸水溶液の25%)を
予め仕込んだ500ml耐圧瓶に、そのまま連続的に室
温下でバブリングし、アンモニアを吸収させた。途中圧
力を大気圧に戻し、温度を室温近くまで冷やした後、釜
残液のpHを測定し、pH6〜7になるまでアンモニア
を留出させた。蒸留後の釜残液組成は、ASP238g
/l、NH331g/1(NH3/ASPモル比は1.
0、すなわち、全てがモノアンモニウム塩)、容量は、
723mlであった。またアンモニアを吸収した液の組
成は、MA69g/l、FA1g/1、NH319g/
l、容量は325mlであった。(操作(A3)へ)
【0032】(C2・D2) (B2)で得られたL−アスパラギン酸アンモニウム水
溶液723mlは、(C1)と同様の操作によりASP
を晶析した。さらに得られたスラリーは、(D1)と同
様の方法により固液分離、乾燥処理を行い、103gの
白色固体を得た。得られた固体は99.3重量%ASP
でマレイン酸アンモニウム0.6重量%、フマル酸アン
モニウム0.1重量%を含んでいた。ASPの回収率
は、60%であった。
【0033】(E2) 一方、固液分離工程で得られたマレイン酸モノアンモニ
ウムを含む晶析母液は、ASP64g/l、FA1g/
l、MA66g/l、NH321g/lの組成であり、
pHは5.0、容量1050mlであった。その後、
(E1)と同様の操作により倍の濃度に濃縮した。
【0034】上記(A2)〜(E2)と同様の操作を順
次条件を変えずに更に3回繰り返しL−アスパラギン酸
の製造を行ない、各繰り返し反応における反応率(原料
マレイン酸アンモニウムに対するL−アスパラギン酸ア
ンモニウムの生成率)、L−アスパラギン酸の晶析回収
率及び回収結晶の純度を求めたところ、表−1に示す結
果を得た。
【0035】
【表1】
【0036】
【発明の効果】本発明によれば、L−アスパラギン酸の
酸析剤として用いるマレイン酸の一部を用いて、酵素反
応後の脱アンモニア工程から排出されるアンモニアを効
率よく中和することができ、しかも、この中和液を反応
原料として利用することができる。従って、アンモニア
中和のために別の中和剤を用いる必要がなく、また、ア
ンモニアも系外に排出されることなく、系内で循環利用
されるので工業プロセス上、極めて好ましい。また、本
発明のプロセスで連続運転を実施しても、酵素反応の活
性に悪影響を及ぼすことがないばかりか、高純度のL−
アスパラギン酸結晶を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のプロセスを示すフローシートである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C12R 1:05) (72)発明者 藤井 静司 三重県四日市市東邦町1番地 三菱化学株 式会社四日市総合研究所内

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 マレイン酸アンモニウム水溶液を原料と
    し、異性化反応及びアンモニアの存在下でのアスパルタ
    ーゼ又はアスパルターゼを産出する微生物による酵素処
    理によりL−アスパラギン酸アンモニウム水溶液を得、
    次いで、得られた水溶液を酸析し、アスパラギン酸結晶
    を析出させ、これを分離回収するL−アスパラギン酸の
    製法において、(1)酵素処理後のL−アスパラギン酸
    アンモニウム水溶液を蒸留することにより、脱アンモニ
    アし、L−アスパラギン酸アンモニウムの実質的全てを
    モノアンモニウム塩とすること、(2)前記酸析の酸析
    剤として、マレイン酸及び/又は無水マレイン酸を使用
    すること、(3)酸析後のマレイン酸モノアンモニウム
    を含有する母液を前記原料として使用すること、(4)
    前記蒸留工程で塔頂より留出するアンモニア含有ガス
    を、前記酸析剤の一部を用いて調製した水溶液で吸収
    し、これを前記酸析後の母液とともに反応原料として使
    用すること、を特徴とするL−アスパラギン酸の製法。
  2. 【請求項2】 異性化反応および酵素反応を同時に行う
    請求項1記載の製法。
  3. 【請求項3】 (1)工程で得られた脱アンモニア後の
    L−アスパラギン酸モノアンモニウムを含有する反応液
    の一部をパージする請求項1記載の製法。
  4. 【請求項4】 (4)工程で用いる酸析剤の量が、酸析
    に用いる量に対して10〜50モル%である請求項1記
    載の製法。
  5. 【請求項5】 (4)工程で用いる酸析剤水溶液の濃度
    が、10〜80重量%である請求項1記載の製法。
  6. 【請求項6】 (4)工程の吸収温度が0〜80℃であ
    る請求項1の方法。
  7. 【請求項7】 各工程が順次連続的に行われることを特
    徴とする請求項1の製法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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CN103130669A (zh) * 2013-02-28 2013-06-05 大同长兴制药有限责任公司 一种门冬氨酸钾的制备方法
CN112813130A (zh) * 2021-02-03 2021-05-18 安徽丰原生物技术股份有限公司 一种d-天门冬氨酸的生产方法

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CN112813130A (zh) * 2021-02-03 2021-05-18 安徽丰原生物技术股份有限公司 一种d-天门冬氨酸的生产方法
CN112813130B (zh) * 2021-02-03 2023-05-16 安徽丰原生物技术股份有限公司 一种d-天门冬氨酸的生产方法

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