JPH09152023A - 自動変速機 - Google Patents

自動変速機

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JPH09152023A
JPH09152023A JP7313135A JP31313595A JPH09152023A JP H09152023 A JPH09152023 A JP H09152023A JP 7313135 A JP7313135 A JP 7313135A JP 31313595 A JP31313595 A JP 31313595A JP H09152023 A JPH09152023 A JP H09152023A
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JP
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hydraulic pressure
learning
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shift
control
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JP7313135A
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English (en)
Inventor
Akihiro Makiyama
明裕 牧山
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Mitsubishi Motors Corp
Original Assignee
Mitsubishi Motors Corp
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Publication date
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Publication of JPH09152023A publication Critical patent/JPH09152023A/ja
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    • FMECHANICAL ENGINEERING; LIGHTING; HEATING; WEAPONS; BLASTING
    • F16ENGINEERING ELEMENTS AND UNITS; GENERAL MEASURES FOR PRODUCING AND MAINTAINING EFFECTIVE FUNCTIONING OF MACHINES OR INSTALLATIONS; THERMAL INSULATION IN GENERAL
    • F16HGEARING
    • F16H37/00Combinations of mechanical gearings, not provided for in groups F16H1/00 - F16H35/00
    • F16H37/02Combinations of mechanical gearings, not provided for in groups F16H1/00 - F16H35/00 comprising essentially only toothed or friction gearings
    • F16H37/04Combinations of toothed gearings only
    • F16H37/042Combinations of toothed gearings only change gear transmissions in group arrangement
    • F16H37/046Combinations of toothed gearings only change gear transmissions in group arrangement with an additional planetary gear train, e.g. creep gear, overdrive

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  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Mechanical Engineering (AREA)
  • Control Of Transmission Device (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 副変速装置を備えた自動変速装置において、
安価構成を図りながら摩擦係合要素間の掴み換え学習を
副変速装置の変速モードに拘わらず常に良好に変速制御
に反映可能な自動変速機を提供する。 【解決手段】 自動変速機は、摩擦係合要素の掴み換え
により変速を行う自動変速装置と、摩擦係合要素への供
給油圧を制御パラメータを用いて制御する油圧制御手段
と、自動変速装置と協働してエンジンの出力回転を変速
し車輪に伝達する副変速装置と、その変速状態を検出す
る変速状態検出手段とを備え、油圧制御手段は、変速時
の摩擦係合要素への油圧の供給状態に対応して変化する
出力パラメータが目標値に近づくよう制御パラメータを
学習制御するための学習値を求める学習手段(S20)と、
副変速装置の変速状態に応じて(S18)学習値に基づく制
御パラメータの設定態様を変更する学習変更手段(S23,S
24)とを有するようにした。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両に用いられる
自動変速機に係り、特に、自動変速装置に副変速装置の
連結された自動変速機に関する。
【0002】
【関連する背景技術】車両用の自動変速機では、ECU
(電子制御ユニット)により油圧制御用のソレノイド弁
をデューティ駆動制御するようにして、油圧摩擦係合要
素の解放と結合とを行う電子制御式のものが多くなって
いる。このような自動変速機は、変速制御がスロットル
開度と車速とをパラメータとするシフトマップに基づい
て行われる。即ち、運転状態がシフトマップ上のダウン
シフトタイミングやアップシフトタイミングとなった時
点で変速指令が出力され、この変速指令に応じて結合側
摩擦係合要素に供給される作動油圧、或いは解放側摩擦
係合要素から解放される作動油圧を制御してギヤの掴み
換えを行うことになる。
【0003】この変速制御では、結合側摩擦係合要素に
供給する作動油圧の初期値、即ち開始供給油圧をエンジ
ントルクから求められるタービントルク(TT)に応じて
設定するようにしており、変速中にはデューティ駆動す
るソレノイド弁のデューティ率を最適値にフィードバッ
ク制御するようにし、速やかにその変速が達成されるよ
う作動油圧の適正化が図られている。このフィードバッ
ク制御では、予め設定された変速時間と、予想されるタ
ービン回転速度差とに基づいて目標タービン回転速度変
化率を求め、実測により求まる実タービン回転速度変化
率がこの目標タービン回転速度変化率に近づくように作
動油圧を増減させるようにしている。これにより、結合
側と解放側の摩擦係合要素が同時に結合したり同時に解
放されたりすることなく変速が達成される。
【0004】また、近年では、このような自動変速機に
おいて、より制御の安定化を図るべく、解放側摩擦係合
要素から解放される作動油圧の解放時間や解放タイミン
グ、結合側摩擦係合要素に供給する作動油圧の初期供給
時間(ガタ詰め時間)や供給開始タイミング及び供給油
圧の初期圧力値等を実際の変速状況に基づいて学習補正
することが一般的となっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、最近では、
車種の多用化に伴い、急な登坂路や悪路において高トル
クを発生可能なように、自動変速装置の出力軸に直列に
副変速装置の連結された自動変速機を備えたRV車等の
オフロードタイプの車両が増加している。このような副
変速装置を有した自動変速機では、自動変速装置の各変
速段でのギヤ比全体を一括して変更でき、エンジンから
の出力回転を容易に減速或いは増速して駆動トルクを増
加或いは減少させることが可能とされている。一般に、
このような副変速装置では、通常の自動変速装置のギヤ
比でもってエンジントルクをそのまま駆動輪に伝達可能
なハイモードと自動変速装置のギヤ比が大きくなるよう
にしエンジントルクを増加させて駆動輪に伝達可能なロ
ーモードとの少なくとも2つの変速モードを備えてお
り、これらは切換レバーによって手動切換え可能とされ
ている。
【0006】ところで、このような副変速装置を有した
自動変速機においても上記のような変速制御や学習補正
を行うことが望ましい。しかしながら、副変速装置が自
動変速装置の出力軸に連結された車両にあっては、副変
速装置の変速モードに応じて駆動輪側から自動変速装置
側に伝わるトルクが異なっており、これにより、要求さ
れる解放側摩擦係合要素の油圧解放時間や解放タイミン
グ、結合側摩擦係合要素の初期油圧供給時間(ガタ詰め
時間)や供給開始タイミング、供給油圧の初期圧力値等
が変速モード毎に微妙に違っている。
【0007】これに伴い、学習補正内容も変速モード毎
に異なっており、この場合、学習補正を副変速装置の存
在を無視して従来通り一様に行うと、副変速装置の変速
モードを切換える度に学習補正値が変動し、スムースな
変速制御を実現できなくなる虞がある。例えば、副変速
装置をハイモードからローモードに切換えた場合には、
ハイモード時の学習補正値にさらにローモードでの学習
を加えることになり、再び副変速装置をローモードから
ハイモードに戻したときには、前回のハイモードでの学
習内容に基づいてではなくこのローモードでの学習内容
に基づいて変速制御が実施され、シフトショック等が発
生してしまうのである。詳しくは、通常、ローモード時
にあっては、駆動輪から自動変速装置に伝達されるトル
クがハイモードのときのトルクよりも小さくなることか
ら、結合側摩擦係合要素の結合状態を比較的浅くするよ
うな学習補正を行うのであるが、このような補正内容の
ままに再び変速モードをハイモードに切換えると、摩擦
係合要素間の掴み換えタイミングがずれてしまうのであ
る。
【0008】本発明は、上述した事情に基づいてなされ
たもので、その主目的とするところは、副変速装置が連
結された自動変速装置において、摩擦係合要素間の掴み
換え学習を副変速装置の変速モードに拘わらず常に良好
に変速制御に反映可能な自動変速機を提供することにあ
る。さらに、制御値や学習補正値の記憶容量を最小限に
抑えた自動変速機を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上述の主目的を達成する
ため、請求項1の発明では、車両のエンジンに連結さ
れ、歯車変速機構の第一摩擦係合要素への油圧を解放し
てその係合を解除する一方、第二摩擦係合要素に油圧を
供給してこれを係合させることにより第一変速段から第
二変速段への変速を達成可能な自動変速装置と、前記第
一及び第二摩擦係合要素に供給する油圧を制御する油圧
制御手段と、前記自動変速装置に直列に設けられ、前記
自動変速装置と協働して前記エンジンの出力回転を変速
し車輪に伝達する副変速装置と、前記副変速装置の変速
状態を検出する変速状態検出手段とを備え、前記油圧制
御手段は、前記副変速装置の変速状態に応じて前記第一
及び第二摩擦係合要素のうちの少なくとも一方への油圧
の制御態様を変更する油圧制御変更手段を含んでなるこ
とを特徴としている。
【0010】従って、通常、油圧制御手段によって、第
一及び第二摩擦係合要素に供給される油圧は制御される
が、副変速装置の変速状態に応じて第一及び第二摩擦係
合要素のうちの少なくとも一方への油圧の制御の態様が
好適に変更される。これにより、副変速装置の変速状態
に応じてそれぞれ好適な油圧制御が実施され、自動変速
装置の変速制御が副変速装置の変速状態に拘わらず常に
良好に実現される。
【0011】また、請求項2の発明では、前記油圧制御
手段は少なくとも一つの制御パラメータを用いて油圧を
制御するものであり、前記油圧制御変更手段は、前記副
変速装置の変速状態に応じ前記制御パラメータのうちの
少なくともいずれか一つの値を変更することを特徴とし
ている。従って、油圧制御は制御パラメータを用いて容
易に実施される。そして、少なくともいずれか一つの制
御パラメータが副変速装置の変速状態に応じて変更され
ることによって油圧の制御量が副変速装置の変速状態に
応じて好適に変更される。
【0012】また、請求項3の発明では、車両のエンジ
ンに連結され、歯車変速機構の第一摩擦係合要素への油
圧を解放してその係合を解除する一方、第二摩擦係合要
素に油圧を供給してこれを係合させることにより第一変
速段から第二変速段への変速を達成可能な自動変速装置
と、前記第一及び第二摩擦係合要素に供給する油圧を少
なくとも一つの制御パラメータを用いて制御する油圧制
御手段と、前記自動変速装置に直列に設けられ、前記自
動変速装置と協働して前記エンジンの出力回転を変速し
車輪に伝達する副変速装置と、前記副変速装置の変速状
態を検出する変速状態検出手段とを備え、前記油圧制御
手段は、変速時の前記第一及び第二摩擦係合要素への油
圧の供給状態に対応して変化する出力パラメータが目標
値に近づくように前記制御パラメータの学習値を求める
学習手段と、前記副変速装置の変速状態に応じて前記学
習値に基づく前記制御パラメータの設定態様を変更する
学習変更手段とを含んでなることを特徴としている。
【0013】従って、通常、制御パラメータを用いて第
一及び第二摩擦係合要素に供給される油圧は制御され、
この制御パラメータは、変速時の第一及び第二摩擦係合
要素への油圧の供給状態に対応して変化する出力パラメ
ータを目標値に近づけるように学習制御される。そし
て、この学習に基づく制御パラメータの設定態様は、副
変速装置の変速状態に応じて変更される。これにより、
副変速装置の変速状態に応じた好適な学習補正が行われ
て油圧制御が実施され、自動変速装置の変速制御が副変
速装置の変速状態に拘わらず常に良好に実現される。
【0014】また、請求項4の発明では、前記学習変更
手段は、前記副変速装置の変速状態毎にそれぞれ前記学
習値を記憶する記憶手段を有しており、前記副変速装置
の変速状態に応じた前記学習値を用いて前記制御パラメ
ータを設定することを特徴としている。従って、副変速
装置の変速状態毎に求められる学習値により学習制御が
行われる。これにより、副変速装置の変速状態に応じた
学習制御が好適に行われ、副変速装置の変速状態に関係
なく自動変速装置はさらに安定して変速制御される。
【0015】また、請求項5の発明では、前記学習変更
手段は、前記副変速装置の変速状態毎にそれぞれ予め定
められた基準値を記憶する記憶手段を有しており、前記
副変速装置の変速状態に応じた前記基準値と前記学習値
とに基づき前記制御パラメータを設定することを特徴と
している。従って、学習未完了の状態においても、副変
速装置の変速状態に応じて制御が好適に開始され、副変
速装置の変速状態に関係なく自動変速装置はさらに安定
して変速制御される。
【0016】また、請求項6の発明では、前記学習変更
手段は、前記副変速装置の特定の変速状態に対して前記
学習手段による学習値の更新を実行させ、前記副変速装
置の他の変速状態において前記学習値の更新を中止させ
ることを特徴としている。従って、副変速装置の変速状
態のうちの特定の変速状態に対して学習制御が行われる
一方、他の変速状態においては学習制御が中止され、特
定の変速状態について実施された学習制御内容が他の変
速状態のときに誤学習されてしまうことが防止される。
これにより、少なくとも副変速装置が特定の変速状態に
ある場合にあっては自動変速装置は常に安定して変速制
御される。
【0017】また、請求項7の発明では、前記学習変更
手段は、前記学習値を記憶する学習値記憶手段を有する
とともに、前記副変速装置が他の変速状態のときに前記
学習値を補正し、この補正された学習値に基づいて前記
制御パラメータを設定することを特徴としている。従っ
て、副変速装置の変速状態のうちの特定の変速状態に対
して学習制御が行われる一方、他の変速状態においては
学習値を補正して制御パラメータが好適に設定される。
これにより、他の変速状態においては学習補正しなくて
も制御パラメータが適切に設定され、装置の安価構成が
図られる。
【0018】また、請求項8の発明では、前記学習変更
手段は、前記副変速装置が特定の変速状態のときの適合
した制御パラメータの値と他の変速状態のときの適合し
た制御パラメータの値との差に基づいて前記学習値を補
正することを特徴としている。従って、他の変速状態に
あっては学習制御しなくても、制御パラメータが極めて
適切に設定され、装置の安価構成が図られる。
【0019】また、請求項9の発明では、前記副変速装
置は高速変速状態と低速変速状態の2つの変速状態を有
し、前記特定の変速状態は高速変速状態であり、前記他
の変速状態は低速変速状態であることを特徴としてい
る。従って、副変速装置が高速変速状態であるときにお
いて学習補正が行われ、使用頻度の低い低速変速状態の
ときにおいては高速変速状態での学習内容が好適に反映
される。
【0020】また、請求項10の発明では、前記自動変
速装置は、少なくとも前記エンジンの出力回転を変速し
て車輪に伝達する走行レンジと前記エンジンの出力回転
の車輪への伝達を遮断する中立レンジとを切換自在に有
しており、前記学習変更手段は、前記自動変速装置が前
記中立レンジと前記走行レンジとの間で切換操作されて
いるときには、前記副変速装置が前記他の変速状態であ
っても前記特定の変速状態の場合と同様の学習値の更新
を許容することを特徴としている。
【0021】従って、自動変速装置が走行レンジと中立
レンジ間で切換操作されている場合には、副変速装置が
他の変速状態であっても特定の変速状態の場合と同様に
学習補正が好適に実施され、走行レンジと中立レンジ間
での学習内容は高精度に維持される。また、請求項11
の発明では、前記制御パラメータは、前記第一摩擦係合
要素から解放する油圧の油圧解放開始時期及び前記第二
摩擦係合要素へ供給する油圧の初期油圧供給時間、供給
油圧のうちの少なくとも一つから構成されることを特徴
としている。
【0022】従って、自動変速装置の変速制御は、これ
らのパラメータに基づいて容易且つ良好に実現される。
【0023】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して、本発明の
実施の形態としての一実施例を詳細に説明する。図1に
は、本発明に係る自動変速機を適用したオフロード用4
輪駆動車のパワープラントの概略構成を示してある。同
図において、エンジン1の後端には自動変速装置2が接
続されており、自動変速装置2には、副変速装置80を
介してトランスファギヤボックス100が接続されてい
る。従って、エンジン1の出力は自動変速装置2、副変
速装置80及びトランスファギヤボックス100を経て
駆動輪(図示せず)に伝達される。
【0024】自動変速装置2は、トルクコンバータ3、
変速装置本体4、油圧コントローラ5から構成されてお
り、車室内等に設置された自動変速装置制御用、即ち油
圧制御手段として機能するECU(電子制御ユニット)
6により駆動制御される。変速装置本体4は複数組のプ
ラネタリギヤの他、油圧クラッチや油圧ブレーキ等の油
圧摩擦係合要素を内蔵している。また、油圧コントロー
ラ5には、一体に形成された油圧回路の他、ECU6に
よってデューティ駆動される複数のソレノイド弁(後述
の図4には第2ソレノイド弁71だけを例示してある)
が収納されている。なお、このソレノイド弁は、後述す
る複数の摩擦係合要素毎にそれぞれ設けられている。
【0025】また、自動変速装置2には運転モードを切
り換える切換レバー(図示せず)が装着されており、ド
ライバがこの切換レバーを操作することにより、パーキ
ングレンジ、走行レンジ(例えば、1速段〜4速段)、
ニュートラルレンジ及び後退レンジ等の変速レンジの選
択を手動で行えるようになっている。この走行レンジに
は自動変速モードと複数段からなる手動変速モード(マ
ニュアルシフトモード)の2つの変速モードがあり、自
動変速モードが選択された場合には、変速は、後述する
スロットル開度θTHと車速Vとに基づき予め設定された
シフトマップ(図示せず)に従って自動的に実施される
一方、マニュアルシフトモードが選択された場合には、
変速段はこのシフトマップにかかわらず選択された変速
段に固定される。
【0026】副変速装置80は、複数組のギヤとドグク
ラッチからなる自動変速装置2の補助的役割を果たす変
速装置であり、少なくともハイ(High)モード(特
定の変速状態)とロー(Low)モード(他の変速状
態)の2段の副変速段を切換え可能な手動式の変速装置
である。この副変速装置80には切換レバー95が設け
られており、ドライバがこの切換レバー95を操作する
ことで副変速段が切換わる。但し、この切換操作は、後
述するように、車両が停止し、且つ自動変速装置2の変
速レンジがニュートラルレンジに設定されているときに
限られる。
【0027】トランスファギヤボックス100は、4輪
駆動と2輪駆動との切換装置であり、自動変速装置2を
介して供給されるエンジン1からの出力を4輪全輪に伝
達したり、前輪或いは後輪のいずれか一方の駆動輪組に
のみ伝達することが可能となっている。このトランスフ
ァギヤボックス100には切換レバー110が設けられ
ており、上記切換レバー95と同様に、ドライバがこの
切換レバー110を操作することで4輪駆動と2輪駆動
とが切換わる。但し、この切換操作は、副変速装置80
と異なり、車両が走行中であって自動変速装置2の変速
レンジがニュートラルレンジに設定されていなくても実
施可能である。
【0028】ECU6は、図示しない入出力装置、多数
の制御プログラムを内蔵した記憶装置(不揮発性RA
M,ROM等のメモリ)、中央処理装置(CPU)、タ
イマカウンタ等を備えており、その入力側には、トルク
コンバータ3のタービン30のタービン回転速度NTを
検出するNTセンサ7、車速Vを検出する車速センサ
8、図示しないスロットルバルブの開度θTHを検出する
スロットルセンサ9、エンジン1の吸入空気量を検出す
るエアフローセンサ9a、フライホイールのリングギヤ
38の回転からエンジン回転速度NEを検出する電磁ピ
ックアップ式のNEセンサ39等の他、副変速装置80
の現在選択されている副変速段情報を検出する副変速段
検出センサ(変速状態検出手段)96が接続されてい
る。一方、出力側には、前述の油圧コントローラ5に収
納された複数のソレノイド弁が接続されている。なお、
ECU6にはこれらのセンサの他、変速レンジの切換え
位置を検出するインヒビタスイッチ、スロットルバルブ
の閉鎖状態を検出するアイドルスイッチ等、種々のセン
サやスイッチ類が接続されている。
【0029】なお、ここでは、副変速段検出センサ96
を用いて副変速段を検出するようにしているが、必ずし
も副変速段検出センサ96を設けなくても副変速段情報
を検出することは可能である(変速状態検出手段)。例
えば、エンジン回転速度NEと車速Vとに基づいて求め
ることもできる。詳しくは、ECU6により、先ず、エ
ンジン回転速度NEに基づき次式(A1)から副変速装置8
0の入力軸(図3中のインプットシャフト81)の回転
速度NAを求める。
【0030】NA=NE/ρn …(A1) ここに、ρnは自動変速装置2の変速段毎に定められて
いるギヤ比を示しており、変速段に応じて異なってい
る。一方、車速Vに基づき次式(A2)から副変速装置80
の出力軸(図3中のアウトプットシャフト84)の回転
速度NBを求める。
【0031】NB=(V/2πr)・ρf …(A2) ここに、rは駆動輪の半径、ρfはファイナルギヤ(図示
せず)のギヤ比である。そして、これら回転速度NAと
回転速度NBとに基づいて次の判別式(A3)が成立するか
否かにより副変速段がハイモードであるかローモードで
あるかを判別する。
【0032】(判別式)NA=ρL・NB …(A3) ここに、ρLは、ローモード時の副変速装置80のギヤ
比であり、詳しくは後述する。上記判別式(A3)が成立す
る場合には、副変速段はローモードであり、一方、成立
しない場合にはハイモードである。なお、この判別式(A
3)では等号を用いているが、必ずしも一致しなくても判
別可能なように、略等しければ成立と判定する許容範囲
を設定してもよい。
【0033】自動変速装置2のトルクコンバータ3は、
ハウジング37、ケーシング34、ポンプ31、ステー
タ32、タービン30等を含む流体継手から構成されて
おり、ポンプ31はケーシング34を介して入力軸たる
ドライブシャフト36に連結されている。また、ステー
タ32はワンウェイクラッチ33を介してハウジング3
7に連結され、タービン30は出力軸たる変速装置本体
4のインプットシャフト11に連結されている。さら
に、トルクコンバータ3内には、ケーシング34とター
ビン30との間に湿式単板型のダンパクラッチ(ロック
アップクラッチ)35が介装され、このダンパクラッチ
35の係合によりドライブシャフト36とインプットシ
ャフト11とが直結可能となっている。ダンパクラッチ
35は、油路65、66を介して、油圧コントローラ5
内のダンパクラッチ油圧制御回路40から供給される作
動油により駆動される。
【0034】ダンパクラッチ油圧制御回路40の中心を
なすダンパクラッチコントロールバルブ41は、ダンパ
クラッチ35への供給油圧を制御するスプール弁43、
該スプール弁43の両端に位置する左端室44と右端室
45、両室44、45にパイロット圧を導入する油路4
6、47、スプール弁43を図中右方向に付勢するスプ
リング48及び常閉型のダンパクラッチソレノイド弁4
2等から構成されている。左端室44側への油路46は
分岐油路49を介してソレノイド弁42に接続されてお
り、ソレノイド弁42が閉鎖状態(即ちOFF位置)の
場合には、左端室44と右端室45とのパイロット圧が
均衡して、スプリング48に付勢されたスプール弁43
が図中右方向に移動する。また、ソレノイド弁42が開
放状態(即ちON位置)の場合には、左端室44内のパ
イロット圧が抜かれ、右端室45側のパイロット圧に付
勢されることによりスプール弁43が図中左方向に移動
する。なお、油路46、分岐油路49にはそれぞれオリ
フィス46a、49aが形成されており、パイロット圧
の急激な変動が防止される。
【0035】スプール弁43が右方向に移動すると、油
路65を介してケーシング34とダンパクラッチ35と
の間にトルクコンバータ潤滑油圧(リリース圧)が供給
され、同時に油路66を介してケーシング34から作動
油が排出される。すると、後述する図14のトルクコン
バータ3の模式図で示すように、ダンパクラッチ35が
解放状態(非直結状態)となり、ドライブシャフト36
の回転はポンプ31の吐出圧でタービン30が回転させ
られることによってインプットシャフト11に伝達され
る。
【0036】一方、スプール弁43が左方向に移動する
と、油路65を介してケーシング34とダンパクラッチ
35との間の作動油が排出され、同時に油路66を介し
てケーシング34内にコントロールバルブ41の調圧に
基づくアプライ圧が供給される。すると、後述する図1
5の模式図で示すように、ダンパクラッチ35が結合状
態(完全直結状態)となり、ドライブシャフト36の回
転は直接インプットシャフト11に伝達されるようにな
る。
【0037】このように、ダンパクラッチ35の断接
は、スプール弁43の位置即ち左端室44と右端室45
とに供給されるパイロット圧の圧力差より決定され、こ
の圧力差はソレノイド弁42をデューティ駆動すること
により制御される。例えば、ECU6がソレノイド弁4
2を100%のデューティ率で駆動すると、左端室44
内のパイロット圧が分岐油路49、ソレノイド弁42を
介してほぼ完全に排出され、スプール弁43は左端に移
動し、上述したアプライ圧の作用によりダンパクラッチ
35が完全直結状態となる。また、ソレノイド弁42を
0%のデューティ率で駆動すると(即ち、全く駆動させ
なければ)、左端室44と右端室45内のパイロット圧
が均衡するためスプリング48に付勢されてスプール4
3は右端に移動し、上述したリリース圧の作用によりダ
ンパクラッチ35が非直結状態となる。そして、所定の
デューティ率(例えば、25〜35%)で駆動すれば、
低いアプライ圧状態を作り出すことができ、ダンパクラ
ッチ35は半クラッチ状態となる。なお、コントロール
バルブ41の出力圧であるリリース圧及びアプライ圧の
入力圧には、後述するレギュレータ弁により調圧された
ライン圧が使用される。
【0038】通常、ECU6は変速制御中である場合を
除き、図2に示したマップに基づいて、ダンパクラッチ
35の駆動制御を行う。このマップにおいて、横軸はタ
ービン回転速度NTであり、縦軸はスロットル開度θTH
である。同図に示したように、タービン回転速度NTが
比較的高く、且つスロットル開度θTHがパワーオンライ
ンLPOより大きいパワーオン状態の場合は、殆どの領域
が完全直結域となり、ダンパクラッチ35は完全直結制
御される。即ち、前述したようにコントロールバルブ4
1からケーシング34内にアプライ圧が供給される一
方、ダンパクラッチ35とケーシング34との間からリ
リース圧が排出され、ダンパクラッチ35が結合する。
なお、パワーオンラインLPO上では、理論的にはエンジ
ン回転速度NEとタービン回転速度NTとが一致し、加速
も減速も行われない。但し、実際にはエンジン出力のば
らつきにより、若干は加速されたり、減速されたりする
ことがある。
【0039】また、スロットル開度θTHがパワーオンラ
インLPOより小さいパワーオフ状態の場合は、タービン
回転速度NTがアイドル回転速度より若干高い領域(本
実施例では、1200rpm)以上で全て減速直結域とな
る。減速直結域においては、ダンパクラッチ35には必
要最小限のアプライ圧が供給され半クラッチ状態とな
り、エンジン1と変速装置本体4とが所定のスリップ量
をもってダンパクラッチ35を介して直結される。そし
て、急制動時等にはダンパクラッチ35がすばやく解除
されエンジンストールが回避できる。なお、この減速直
結時には、エンジン1の回転を維持しながら燃料供給を
停止することもできるため、燃費の向上には多大な効果
を奏する。
【0040】図3は、前進4段、後進1段が達成可能な
自動変速装置本体4内、副変速装置80内及びトランス
ファギヤボックス100内の各ギヤトレーンを示した概
略図であり、以下各ギヤトレーンの構成及び基本動作等
を説明する。先ず、自動変速装置本体4内のギヤトレー
ンの構成及び動作について説明する。
【0041】同図において、タービン30にはインプッ
トシャフト11が接続されており、このインプットシャ
フト11には、変速機構10として、第1、第2プラネ
タリギヤ12、13の他、第1プラネタリギヤ12のサ
ンギヤ14をインプットシャフト11に結合する第1ク
ラッチ15、第2プラネタリギヤ13のピニオンキャリ
ア16をインプットシャフト11に結合する第2クラッ
チ17、第2プラネタリギヤ13のサンギヤ18をイン
プットシャフト11に結合する第3クラッチ19が保持
されている。また、変速装置本体4のケーシング20に
は、第1プラネタリギヤ12のインターナルギヤ21を
固定し、反力要素となる第1ブレーキ22と、第2プラ
ネタリギヤ13のサンギヤ18を固定し、反力要素とな
る第2ブレーキ23とが取り付けられている。インプッ
トシャフト11の回転は、第1プラネタリギヤ12のピ
ニオンキャリア24を介しこのピニオンキャリア24に
連結されたドライブキャリア26に伝達される。
【0042】なお、第1プラネタリギヤ12のインター
ナルギヤ21と第2プラネタリギヤ13のピニオンキャ
リア16、第1プラネタリギヤ12のピニオンキャリア
24と第2プラネタリギヤ13のインターナルギヤ25
はそれぞれ結合されており、それらは一体に回転する。
図4は摩擦係合要素の油圧制御回路の一部を示してお
り、ここでは第2クラッチ17の油圧制御回路に関して
説明する。該油圧回路は、摩擦係合要素、即ち第2クラ
ッチ17への油圧の給排を制御するソレノイド弁、例え
ば第2ソレノイド弁71を備えている。この第2ソレノ
イド弁71は、常閉型の2位置切換弁で、3箇所にポー
ト71a、71b、71cを有している。
【0043】第1ポート71aには、オイルパン68か
ら作動油を汲み上げるオイルポンプ69に延びる第1油
路60が接続されており、この第1油路60には、調圧
弁(レギュレータ弁)70が介在され、所定圧に調圧さ
れた作動油圧(ライン圧)がソレノイド弁や前述したコ
ントロールバルブ41等に供給されている。また、第2
ポート71bには、第2クラッチ17に延びる第2油路
61が、第3ポート71cには、オイルパン68へ作動
油を排出する第3油路62がそれぞれ接続されており、
第2油路61には、アキュムレータ73が介在されてい
る。
【0044】第2ソレノイド弁71は、ECU6に電気
的に接続されており、ECU6からの駆動信号により、
デューティ制御が実行される。そして、ソレノイド71
eが消勢されている場合には、弁体71fは、リターン
スプリング71gに押圧されて第1ポート71aと第2
ポート71bの連通を遮断するとともに、第2ポート7
1bと第3ポート71cを連通させる。一方、ソレノイ
ド71eが付勢されている場合には、弁体71fは、リ
ターンスプリング71gに抗してリフトし、第1ポート
71aと第2ポート71bを連通させるとともに、第2
ポート71bと第3ポート71cとの連通を遮断する。
【0045】ECU6からソレノイド弁、例えば第2ソ
レノイド弁71に供給されるデューティ率が100%の
場合には、摩擦係合要素、即ち第2クラッチ17に供給
される作動油圧は調圧弁70により調圧されたライン圧
となる。一方、デューティ率が減少するのに応じて第2
クラッチ17に供給される油圧は小になり、デューティ
率0%の場合には、弁体71fはリターンスプリング7
1gにより第1ポート71aと第2ポート71bとの連
通を遮断するとともに、第2ポート71bと第3ポート
71cとを連通させ、第2クラッチ17から作動油を排
出することになる。
【0046】図5は、第2クラッチ17の断面詳細を示
している。この第2クラッチ17は、多数の摩擦係合板
50を備えている。これら摩擦係合板50は、インプッ
トシャフト11と一体に回転するクラッチプレート50
aと、ピニオンキャリア16と一体に回転するクラッチ
ディスク50bとから構成されている。この第2クラッ
チ17の結合時には、第2ソレノイド弁71によって油
圧制御された作動油が、第1油路61からポート51を
介して第2クラッチ17に供給され、ピストン52が往
動して各摩擦係合板50のクラッチプレート50aとク
ラッチディスク50bとが結合する。一方、解放時に
は、リターンスプリング53によりピストン52が押し
戻されることにより、作動油がポート51、第2油路6
1、第2ソレノイド弁71、第3油路62を介して排出
され、クラッチプレート50aとクラッチディスク50
bとの摩擦係合は解放される。
【0047】この第2クラッチ17のクラッチプレート
50aとクラッチディスク50bとの間には、解放時に
おいて引きずり現象が発生することなく、完全に解放状
態になるように、充分なクリアランス(ガタ)が設けら
れている。従って、結合時にあっては、クラッチプレー
ト50aとクラッチディスク50bとが結合状態に入る
前に、先ず、該クリアランス(ガタ)を略ゼロにし、無
効ストロークを解消するための所謂ガタ詰め操作が実施
される。
【0048】なお、第1クラッチ15、第2ブレーキ2
3等については、第2クラッチ17と略同一の構成であ
るから、それらの説明は省略する。以上のような構成の
変速装置本体4を持つ自動変速装置2では、切換レバー
が走行レンジに切換えられて走行しているとき、表1に
示すような結合或いは解放の組み合わせにより、各変速
段が確立されるようになっている。特に、自動変速モー
ドで走行しているときには、前述したように車速センサ
7で検出される車速V及びスロットルセンサ8で検出さ
れるスロットル開度θTHに応じて上述の第1〜第3クラ
ッチ15、17、19及び第1〜第2ブレーキ22、2
3等の摩擦係合要素が、各々に設定されたソレノイド弁
によってデューティ駆動制御され、表1に示す組み合わ
せにより、自動的に各変速段が確立されるようになって
いる。表1の○印が各クラッチ或いは各ブレーキの結合
を示している。
【0049】
【表1】
【0050】変速時においては、所定のデューティ率に
設定された駆動信号が所定の出力パターンで油圧コント
ローラ5の各ソレノイド弁に供給され、最適な変速制御
が実行される。次に、副変速装置80内のギヤトレーン
の構成及び動作について説明する。自動変速装置2の変
速装置本体4のドライブキャリア26からは、副変速装
置80の入力軸であるインプットシャフト81が延びて
おり、このインプットシャフト81の先端には、外周に
スプラインの形成されたスプラインギヤ82が設けられ
ている。そして、このスプラインギヤ82と対向して、
スプラインギヤ82と同一径であり且つ同一スプライン
の形成されたハブ83が設けられており、同図に示すよ
うに、このハブ83からは、インプットシャフト81と
同一軸心を有するアウトプットシャフト84がインプッ
トシャフト81とは逆方向に延びている。
【0051】インプットシャフト81のスプラインギヤ
82よりもドライブキャリア26寄りの位置には、ギヤ
85が設けられており、このギヤ85はインプットシャ
フト81と平行に配設されたアイドルシャフト86に設
けられたギヤ87と噛合している。また、アイドルシャ
フト86のギヤ87と離間した位置には、ギヤ87より
も小径で歯数の少ないギヤ88が設けられており、この
ギヤ88は上記アウトプットシャフト84周りで回転自
在なギヤ89と噛合している。ここに、インプットシャ
フト81及びアウトプットシャフト84とアイドルシャ
フト86とは平行であって、且つギヤ87がギヤ88よ
りも小径であることから、ギヤ89はギヤ85よりも大
径で歯数が多くされている。
【0052】同図に示すように、ギヤ89には、一体に
して、スプラインギヤ82と同一径且つ外周に同一スプ
ラインの形成されたスプラインギヤ90が設けられてい
る。このスプラインギヤ90は、ハブ83を挟んでスプ
ラインギヤ81と対象となるようにしてハブ83と対向
している。また、ハブ83には、ハブ83の外周面の幅
と略同一幅であって内周面にやはりスプラインの形成さ
れたスリーブ91が外嵌されている。これらハブ83の
スプラインとスリーブ91のスプラインとは互いに係合
しており、ハブ83はスプライン方向で摺動自在とされ
ている。従って、このスリーブ91がスプラインギヤ8
2側に摺動すると、スリーブ91のスプラインとスプラ
インギヤ82のスプラインとが噛み合うことでスリーブ
91を介してハブ83とスプラインギヤ82とが一体と
なり互いに同期回転可能になる。一方、スリーブ91が
スプラインギヤ90側に摺動すると、スリーブ91のス
プラインとスプラインギヤ90のスプラインとが噛み合
うことでスリーブ91を介してハブ83とスプラインギ
ヤ90とが一体となり互いに同期回転可能となる。
【0053】なお、ここでは図示しないが、スリーブ9
1の外周に沿い形成された溝91aには上述の切換レバ
ー95の先端が係合しており、この切換レバー95がド
ライバによってハイモード側及びローモード側のいずれ
かに操作されると、スリーブ91が移動させられて位置
が切換わることになる。つまり、切換レバー95がハイ
モード側(通常切換状態)に切換えられ、スリーブ91
がスプラインギヤ82側に摺動した状態(図示の状態)
では、インプットシャフト81からの入力は、スプライ
ンギヤ82、ハブ83を介して回転数の増減なく(ギヤ
比ρH=1)で直接アウトプットシャフト84に伝達さ
れる。一方、切換レバー95がローモード側に操作され
てスリーブ91がスプラインギヤ90側に摺動した状態
では、インプットシャフト81からの入力は、一旦アイ
ドルシャフト86、ギヤ89を介して一定のギヤ比ρL
(ρL>1)で減速された後にスプラインギヤ90、ハ
ブ83を介してアウトプットシャフト84に伝達され
る。
【0054】そして、同図に示すように、上記アウトプ
ットシャフト84はトランスファギヤボックス100内
を貫通しており、以下、トランスファギヤボックス10
0について説明する。アウトプットシャフト84には、
外周にスプラインの形成されたハブ101が設けられて
おり、また、外嵌するようにしてアウトプットシャフト
84周りに回転自在なプーリ102が設けられている。
プーリ102には、ハブ101と同一径であり且つ外周
に同一スプラインの形成されたスプラインギヤ103が
設けられている。
【0055】ハブ101には、ハブ101の外周面の幅
と略同一幅であって内周面にやはりスプラインの形成さ
れたスリーブ104が外嵌されている。これらハブ10
1のスプラインとスリーブ104のスプラインとは互い
に係合しており、ハブ101はスプライン方向に摺動自
在とされている。従って、このスリーブ104がスプラ
インギヤ103側に摺動すると、スリーブ104のスプ
ラインとスプラインギヤ103のスプラインとが噛み合
うことでスリーブ104を介してハブ101とスプライ
ンギヤ103とが一体となり互いに同期回転可能とな
る。
【0056】同図に示すように、アウトプットシャフト
84と平行にしてサブシャフト106が配設されてい
る。このサブシャフト106には、プーリ102同様の
プーリ107が設けられており、これらプーリ102,
107はベルトまたはチェーン等の環状の連結帯105
によって互いに同期回転可能に連結されている。なお、
ここでは図示しないが、スリーブ104の外周に沿い形
成された溝104aには上述の切換レバー110の先端
が係合しており、この切換レバー110がドライバによ
って2輪駆動側及び4輪駆動側のいずれかに操作される
と、スリーブ104が移動させられて位置が切換わるこ
とになる。つまり、切換レバー110が2輪駆動側に切
換えられ、スリーブ104がハブ101上に位置されて
いる状態では、ハブ101はスプラインギヤ103を回
転させないことからアウトプットシャフト84のみがエ
ンジン1の出力を2輪からなる駆動輪にのみ伝達するこ
とになる。一方、切換レバー110が4輪駆動側に操作
されてスリーブ104がスプラインギヤ103側に摺動
した状態(図示の状態)では、アウトプットシャフト8
4の回転はプーリ102、連結帯105、プーリ107
を介してサブシャフト106にも伝達され、これによ
り、エンジン1の出力はアウトプットシャフト84に接
続された2輪のみならず他の2輪にも伝達され、即ち4
輪全輪が駆動されることになる。
【0057】図6乃至図17は、パワーオンアップシフ
ト時にECU6が自動変速装置2に対して実行するアッ
プシフト変速制御を示すフローチャートであり、また、
図18及び図19は、これらのフローチャートの解放側
制御及び結合側制御に基づく、タービン回転速度NT、
解放側摩擦係合要素のソレノイド弁への供給信号デュー
ティ率DR、結合側摩擦係合要素のソレノイド弁への供
給信号デューティ率(供給油圧)DC及び解放側と結合
側の摩擦係合要素に供給される油圧の時間変化を示した
グラフであり、以下アップシフト変速制御を図6乃至図
19に基づいて説明する。
【0058】なお、アップシフト時の結合側摩擦係合要
素(第二摩擦係合要素)とは、表1から明らかなよう
に、第一変速段である1速段から第二変速段である2速
段への1−2アップシフトに関しては第2ブレーキ23
を、同様に2速段から3速段への2−3アップシフトに
関しては第2クラッチ17を、また同様に3速段から4
速段への3−4アップシフトに関しては第2ブレーキ2
3をそれぞれ示し、解放側摩擦係合要素(第一摩擦係合
要素)とは、1−2アップシフトに関しては第1ブレー
キ22を、2−3アップシフトに関しては第2ブレーキ
23を、3−4アップシフトに関しては第1クラッチ1
5をそれぞれ示す。
【0059】図6は、パワーオンアップシフト時の主制
御であるアップシフト制御ルーチンを示している。先
ず、ステップS10において、第一変速段から第二変速
段への変速指令(SS)が出力されたとき(以下、SS
時点という)にダンパクラッチ35が直結状態にあるか
否かを、ECU6からダンパクラッチソレノイド弁42
に供給されるデューティ率が所定の値DDC(例えば、6
0%)以上であるか否かによって判別する。判別結果が
Yes(肯定)であり、デューティ率がDDC(60%)
以上でダンパクラッチ35が直結状態と判定された場合
には、次にステップS12に進み、ダンパクラッチ35
が直結状態にあることをフラグF(DC)に値1を設定して
記憶する。一方、判別結果がNo(否定)であり、デュ
ーティ率がDDC(60%)より小さくダンパクラッチ3
5が非直結状態と判定された場合には、次にステップS
13に進み、ダンパクラッチ35が直結状態になく非直
結状態であることをフラグF(DC)に値0を設定して記憶
する。ステップS12またはステップS13においてフ
ラグF(DC)にそれぞれ値を設定したら、次にステップS
14に進む。
【0060】なお、ステップS10において、ダンパク
ラッチ35が直結状態か否かを、タービン30とポンプ
31とのスリップ量、つまりエンジン1側のポンプ31
の回転速度NEとタービン30の回転速度NTとの回転速
度差(NE−NT)が所定値ΔNET(例えば、6rpm)以
下であるか否かで判別するようにしてもよい。ステップ
S14では、摩擦係合要素の解放側のデューティ率DR
を制御する解放側制御を実施する。この解放側制御で
は、図7のサブルーチンが実行される。以下、図7のサ
ブルーチンに基づき説明するが、ここでは、例えば、2
速段(第一変速段)から3速段(第二変速段)への変
速、即ち2−3アップシフトを例に説明する。
【0061】先ず、ステップS30では、SS時点(油
圧供給開始時期)で2速段から3速段への変速指令(S
S)が出力され、2−3アップシフトが開始された後、
所定時間tsが経過したか否かを判別する。この所定時
間tsは、図18に示すように、結合側の第2クラッチ
(第二摩擦係合要素)17へ油圧を供給しガタ詰め操作
を行うガタ詰め時間(制御パラメータとしての初期油圧
供給時間)tF及びガタ詰め時間tFが経過し後述する油
圧再供給が開始されるまでの時間tcの和(tF+tc)
と解放側の第2ブレーキ(第一摩擦係合要素)23から
の油圧解放時間tRとの差(ts=tF+tc−tR)とし
て設定される(制御パラメータとしての油圧解放開始時
期)。この所定時間tsの値は、油圧解放時間tR、ガタ
詰め時間tFが後述する学習により補正されることか
ら、これらの補正に伴って変化するものである。
【0062】ステップS30の判別結果がNo(否定)
で未だ所定時間tsが経過していないと判定される場合
には、ステップS38に進んでデューティ率DRを10
0%に保持し、作動油圧をレギュレータ弁70からのラ
イン圧として、図6のステップS16に進む。一方、ス
テップS30の判別結果がYes(肯定)の場合には、
次のステップS32に進んで再結合制御を実行する。
【0063】ステップS32の再結合制御では、一旦解
放を開始した後、再び解放側の第2ブレーキ23に油圧
を供給する油圧再供給を実施する。アップシフトにおい
ては、図18に示すように、解放側の第2ブレーキ23
のソレノイド弁に供給されるデューティ率が0%にされ
て油圧が解放された後に、解放側の第2ブレーキ23と
結合側の第2クラッチ17とが共に係合されずタービン
30が空転状態となり、パワーオン状態ではエンジン1
の回転に呼応してこのタービン30が無負荷空転開始状
態となって吹き上がることがある(図18中にYで示
す)。このようにタービン30が吹き上がると、結合側
の第2クラッチ17が係合する際にショックを発生し、
シフトフィーリングが悪化する。
【0064】そこで、タービン30が吹き上がり、ター
ビン回転速度NTが変速前の2速段でのタービン30の
同期回転速度NTIを越えたことが確認されたら、第2ブ
レーキ23に100%のデューティ率の油圧を所定時間
に亘り再び供給するようにしている。このように、再結
合制御によりデューティ率DRが制御され、油圧再供給
が実施されると、第2ブレーキ23が所定時間だけ再び
係合し、図18に示すように、解放側の作動油圧が所定
時間に亘り増加し、タービン30の吹き上がりが充分に
抑止される。そして、タービン30の吹き上がり量が小
さくなり、タービン回転速度差(NT−NTI)が所定値
以下になると、最終的にデューティ率DRは再び0%に
戻されることになるのである。以下、図8のサブルーチ
ンに基づき再結合制御の制御手順を説明する。
【0065】このサブルーチンでは、先ず、ステップS
40において、後述の油圧再供給の実施を記憶するフラ
グf(BB)が値1であるか否かを判別することになるが、
解放側制御開始直後には値1をとらないことが多く(f
(BB)=0)、この場合、判別結果はNo(否定)となる
ため、解放側制御開始直後には次のステップS42が実
行される。ステップS42は第2ブレーキ23に油圧再
供給を実施し、再結合を行う必要があるか否かを判別す
るステップであり、この判別は、タービン30が所定の
タービン回転速度よりも所定偏差ΔNSA(図18、図1
9参照)だけ上昇したか否かで判別する。
【0066】そこで、ステップS42では、タービン3
0が吹き上がり、タービン回転速度NTが同期回転速度
NTIよりも所定偏差ΔNSAを越えて上昇したか否かの判
別を行う。なお、同期回転速度NTIは、自動変速装置2
の出力軸回転速度Noに変速前変速段(ここでは2速
段)のギヤ比を乗算して演算されるが、運転状態に応じ
て時々刻々と変化するので、実際のタービン回転速度N
Tとの比較を行うときは、変速指令(ここでは2−3ア
ップシフト指令)を検出したときのNTIを用いるとより
確実である。判別結果がNo(否定)で速度差(NT−
NTI)が所定偏差ΔNSA以下であれば、変速作動は良好
に進行しており、油圧再供給は必要でないと判定でき、
当該ルーチンを終了する。
【0067】一方、ステップS42の判別結果がYes
(肯定)で速度差(NT−NTI)が所定偏差ΔNSAより
大きい場合には、次にステップS44に進み、図18に
示すように、デューティ率DRを再び100%に設定し
て作動油圧をライン圧とし、これにより、第2ブレーキ
23の油圧再供給を実施する。そして、ステップS46
において、前述のフラグf(BB)に値1を設定してこれを
記憶する。
【0068】一旦再結合が実施され、フラグf(BB)が値
1に設定されると、次回の当該ルーチン実行時には、ス
テップS40でのフラグf(BB)の判別結果がYes(肯
定)となるため、この場合にはステップS50に進む。
ステップS50では、ステップS44でデューティ率D
Rを100%としたことで第2ブレーキ23の再結合が
実施され、タービン30の吹き上がりが充分に抑えられ
て再結合を終了しても良いか否かを判断するステップで
あり、速度差(NT−NTI)が減少して所定偏差ΔNSB
(図19Y詳細参照)よりも小さくなったか否かで判別
する。ここに所定偏差ΔNSBは、所定偏差ΔNSAより小
さい正の値である。判別結果がNo(否定)の場合に
は、未だ油圧再供給の効果が現れておらず、タービン3
0が吹き上がったままの状態であるため、ステップS5
4においてデューティ率DRを100%に維持する。従
って、タービン30の速度差(NT−NTI)が所定偏差
ΔNSBよりも小さくならない限りは、第2ブレーキ23
の油圧再供給状態は維持されることになる。
【0069】一方、ステップS50の判別結果がYes
(肯定)で速度差(NT−NTI)が所定値ΔNSBよりも
小さくなったことが確認されたら、油圧再供給の効果が
充分に現れたと判断でき、ステップS52においてデュ
ーティ率DRを0%に戻し、作動油圧を抜くようにして
第2ブレーキ23の再結合制御を終了する。ところで、
速度差(NT−NTI)が所定偏差ΔNSBよりも小さくな
り、一旦デューティ率DRを0%に戻した後に、第2ク
ラッチ17の結合が進まず、再度タービン30が吹き上
がるような場合にあっては、速度差(NT−NTI)が所
定偏差ΔNSBよりも小さくなるまでの間、油圧再供給は
繰り返し実施されることになる。
【0070】図7に戻り、ステップS34では、ステッ
プS32の再結合制御の実行により油圧再供給が実施さ
れたか否かを、油圧再供給の実施完了後に値1が設定さ
れるフラグF(BB)の値によって判別する。解放制御開始
直後においては、タービン30の吹き上がりはなく、再
結合制御による油圧再供給がすぐに実施されるようなこ
とはないため、この場合には、フラグF(BB)の値は1で
はなく(値0)判別結果はNo(否定)であり、次にス
テップS36に進むことになる。
【0071】ステップS36では、デューティ率DRを
0%に設定して第2ブレーキ23から油圧の解放を行
う。ステップS30の判別により所定時間tsが経過し
たと判定された直後においては、このステップS36の
実行によって初めて油圧の解放が開始されることにな
る。油圧の解放が開始されると、図18に示すように1
00%に設定されていたデューティ率DRがECU6か
らの指令を受けて0%となりソレノイド弁が消勢され、
作動油圧は同図に示す解放側の油圧線図のように減少し
始める。
【0072】一方、ステップS34の判別結果がYes
(肯定)であり、フラグF(BB)が値1で上述の再結合制
御において油圧再供給が実施されたと判定された場合に
は、第2ブレーキ23のソレノイド弁に供給するデュー
ティ率DRは再結合制御に従うことになり、ここでは何
もせずに図6のステップS16に進む。なお、値1に設
定されたフラグF(BB)は、後述するようにこの2−3ア
ップシフトが終了すると再び値0にリセットされる。
【0073】図6のステップS16においては、結合側
のデューティ率DCを制御する結合側制御が実行され
る。結合側制御では、図9及び図10のフローチャート
に示すサブルーチンに基づき制御が実施される。以下、
図9及び図10のサブルーチンに基づき説明するが、こ
こでは、上記解放側制御と同様に、例えば、2速段(第
一変速段)から3速段(第二変速段)への変速、即ち2
−3アップシフトを例に説明する。
【0074】図9のステップS60では、図18に示す
ように、SS時点でECU6から変速指令(SS)が出
力されると、先ず、クラッチプレート50aとクラッチ
ディスク50b間のクリアランス(ガタ)を詰めるため
に、前述したように、所定のガタ詰め時間tFだけガタ
詰め操作を行う。このガタ詰め操作は、第2クラッチ1
7の無効ストロークを解消するためのものであることか
ら、その動作が最も速くなるようデューティ率DCは1
00%に設定され、第2クラッチ17には、ライン圧の
作動油が供給される。これにより、結合側の油圧は、同
図の油圧線図に示すように徐々に増加することになる。
このガタ詰め時間tFは、学習によって補正されるもの
であり、その学習については後述する。ガタ詰め時間t
Fが経過したら、次にステップS62を実行する。
【0075】ステップS62では、エンジン1からター
ビン30に伝達されるタービントルクTTの演算を行
う。このタービントルクTTを求めることにより、ガタ
詰め時間tF経過後において結合側の第2クラッチ17
に供給すべき油圧を設定することができる。このタービ
ントルクTTの演算では、図11のフローチャートで示
すサブルーチンを実行する。
【0076】図11のステップS110では、先ず、現
在のA/N(一吸気行程当たりの吸気量)を読み込む。
このA/Nは、エアフローセンサ9aからの入力情報に
基づいて算出される。そして、次のステップS112に
おいて、現在のタービン回転速度NTとエンジン回転速
度NEとをそれぞれNTセンサ7とNEセンサ39からの
入力情報に基づいて読み込む。
【0077】ステップS114では、ステップS110
で読み込んだ現在のA/Nからエンジン1が出力するエ
ンジントルクTEを算出する。このエンジントルクTEは
次式(B1)で示すようにA/Nの関数で表される。 TE=f(A/N) …(B1) なお、ここでは、エンジントルクTEを求めるためにA
/Nを用いるようにしたが、A/Nの代わりにスロット
ルセンサ9によって検出されるスロットル開度θTHとエ
ンジン回転速度NE等を用い、これらの値に基づいてエ
ンジントルクTEを求めるようにしてもよい。
【0078】次のステップS116では、ステップS1
12で読み込んだ現在のタービン回転速度NTとエンジ
ン回転速度NEとからスリップ率eを次式(B2)から算出
する。 e=NT/NE …(B2) そして、次のステップS118において、このスリップ
率eに基づき、次式(B3)からエンジントルクTEとター
ビントルクTTとのトルク比tを算出する。
【0079】t=f(e) …(B3) 最後に、ステップS120において、トルク比tとエン
ジントルクTEとに基づいて次式(B4)からタービントル
クTTを算出する。 TT=t×TE …(B4) 以上のようにしてタービントルクTTを求めたら、次に
ステップS63に進む。
【0080】このステップS63は、ガタ詰め時間tF
経過後に第2クラッチ17の第2ソレノイド弁71に出
力するデューティ率DCを初期デューティ率DA1に設定
するステップである。この初期デューティ率DA1は、実
験等によって予めECU6に記憶された、タービントル
クTTと初期デューティ率DA1との関係を示すマップ
(図示せず)に基づいて設定される。このマップにより
タービントルクTTに応じた初期デューティ率DA1が設
定されたら、次にステップS64に進む。
【0081】ステップS64では、結合側の第2クラッ
チ17に供給する油圧のデューティ率DCを上述のよう
にして求めた初期デューティ率DA1とする。これによ
り、第2クラッチ17には、タービントルクTTに応じ
た油圧、つまり、第2クラッチ17のクラッチプレート
50aとクラッチディスク50bとの回転速度差を速や
かに減少させるのに充分な油圧が供給され始めることに
なる。そして、クラッチプレート50aとクラッチディ
スク50bとの係合が開始され、クラッチプレート50
aとクラッチディスク50bとの回転速度差が低減され
始めると、図18に示すように、タービン30の回転速
度NTが2速段での同期回転速度NTIから3速段での同
期回転速度NTJに向けて低下し始める。
【0082】ステップS66では、このように低下し始
めたタービン回転速度NTと2速段での同期回転速度NT
Iとの偏差(NTI−NT)が所定値ΔNB(例えば、50r
pm)以上になったか否かが判別される。判別結果がNo
(否定)で偏差(NTI−NT)が所定値ΔNBに満たない
場合には、ステップS62に戻ってタービントルクTT
の演算を行い、ステップS63を経てステップS64に
おいてデューティ率DCをデューティ率DA1に保持し続
ける。一方、ステップS66の判別結果がYes(肯
定)で偏差(NTI−NT)が所定値ΔNB以上である場合
には、次にステップS68に進む。なお、この偏差(N
TI−NT)が所定値ΔNBに達した時点を図18に示すよ
うに便宜上SB時点とする。
【0083】ステップS68乃至ステップS80はフィ
ードバック制御を実施するための準備期間である。先
ず、ステップS68では、改めてタービントルクTTの
演算を実施する。この演算は前述した図11のフローチ
ャートに沿って行われ、その算出方法については前述し
た通りであり、ここでは説明を省略する。ステップS6
9では、タービン30等に作用する慣性トルク(以下、
イナーシャトルクという)TIを演算する。このイナー
シャトルクTIの演算では、図12のフローチャートに
示されるようなサブルーチンを実行する。
【0084】図12のステップS130では、SB時点
でのタービン30の角速度ωTの変化率、つまりタービ
ン角速度変化率ωT'を次式(C1)から算出する。 ωT'=2π×NT'(VSB) …(C1) ここに、NT'(VSB)はSB時点での車速VSBの一次関数
で表される開始目標タービン回転速度変化率である。そ
の関係は実験等により設定され、ECU6に予めマップ
として記憶されている。従って、ここでは、車速センサ
8によって検出されたSB時点の車速VSBに対応する開
始目標タービン回転速度変化率NT'(VSB)をマップから
読み出して使用することになる。なお、アップシフトに
おいては、この開始目標タービン回転速度変化率NT'
(VSB)は負の値である。
【0085】ステップS132では、ダンパクラッチ3
5が非直結状態のときの自動変速装置2の入力軸系、つ
まり、図20に斜線で示すようなタービン30、ダンパ
クラッチ35及びインプットシャフト11の慣性モーメ
ントITと式(C1)から求めたωT'とからイナーシャトル
クTIを次式(C2)により算出する。 TI=IT×ωT' …(C2) 以上のようにしてタービントルクTTとイナーシャトル
クTIとが算出されたら、次にステップS70におい
て、学習補正領域の選定を行う。
【0086】この学習補正領域は、表2に示すように、
タービントルクTTとイナーシャトルクTIとのトルク和
(TT+TI)の取り得る値の範囲をそれぞれ所定の幅で
領域#1,領域#2〜領域#Nのように複数に分割設定
したものであり、後述するデューティ率学習値DALの学
習補正を行うときの実施区分となるものである。これら
の領域#1,領域#2〜領域#Nの幅は、タービントル
クTTとイナーシャトルクTIとのトルク和(TT+TI)
に基づき予め実験結果等により好適に設定されたもので
あり、表2に示すように、例えば、領域#1ではそのト
ルク和(TT+TI)の対応範囲はXT0〜XT1であり、領
域#2ではXT1〜XT2、また領域#Nでは、XT(N-1)〜
XTNとなる。
【0087】
【表2】
【0088】このように、タービントルクTTとイナー
シャトルクTIとのトルク和(TT+TI)の領域、即ち
学習補正を実施する領域を領域#1,#2〜#Nのよう
に分割することにより、トルク和(TT+TI)、つまり
領域#1,#2〜#Nに応じたデューティ率学習値DAL
がそれぞれ定まる(表2中のXDa1,XDa2〜XDaN及びX
Db1,XDb2〜XDbN)。そして、後述の学習時には、これ
らのデューティ率学習値DAL(XDa1,XDa2〜XDaN或い
はXDb1,XDb2〜XDbN)についての学習補正がそれぞれ
個別に行われ、その学習結果はECU6にそれぞれの領
域毎に記憶保持される。これにより、デューティ率学習
値DALの学習は、個々の学習補正領域においてのみ実施
されることになり、学習補正値のばらつきが小さくな
り、デューティ率学習値DALは、いずれの学習補正領域
に関しても微小変動はあるもののそれぞれ安定した値を
維持することになる。
【0089】従って、このステップS70では、ECU
6は、現在のタービントルクTTとイナーシャトルクTI
とのトルク和(TT+TI)が領域#1,#2〜#Nのど
の学習補正領域にあるかを判断し、現在のトルク和(T
T+TI)に対応するデューティ率学習値DALの領域を選
定する。これにより、表2に示すような領域#1,#2
〜#Nに応じたデューティ率学習値DAL(XDa1,XDa2
〜XDaN或いはXDb1,XDb2〜XDbN)が一義的に選択さ
れることになり、後述のデューティ率学習値DALの学習
時には、選択された領域の対応するデューティ率学習値
DALについて学習補正が実施されメモリに記憶保持され
ることになる。
【0090】ステップS71では、フィードバック制御
開始時の基準デューティ率DA2(即ち基準値)を設定す
る。この基準デューティ率DA2は、実験等により決定さ
れ、予めECU6に記憶された、タービントルクTT及
びイナーシャトルクTIとのトルク和(TT+TI)とデ
ューティ率DA2との関係を示すマップ(図示せず)に基
づいて設定される。実際には、このデューティ率DA2
は、前述した表2に示すように、領域#1,#2〜#N
毎にその値が設定されており(XD1,XD2〜XDN)、ス
テップS70において領域#1,#2〜#Nが選定され
ると、同時にデューティ率DA2が一義的に選択されるこ
とになる。
【0091】次にステップS72において、ダンパクラ
ッチ35が直結状態であるか非直結状態であるかを、前
述したフラグF(DC)が値1であるか否かで判別する。判
別結果がNo(否定)でダンパクラッチ35が非直結状
態の場合には、次にステップS73に進む。一方、判別
結果がYes(肯定)でダンパクラッチ35が直結状態
の場合には、次にステップS74に進む。
【0092】図20は、前述したように、エンジン1に
ドライブシャフト36を介して接続されたトルクコンバ
ータ3を模式的に示した図のうち、ステップS72の判
別結果がNo(否定)の場合、つまり、タービン30に
取付けられたダンパクラッチ35がケーシング34から
離れ、タービン30とポンプ31とが流体継手となった
非直結状態の図を示している。この場合には、慣性モー
メントは、前記のステップS69で求めたように、図中
斜線で示した部分、つまりタービン30、ダンパクラッ
チ35及びインプットシャフト11の慣性モーメントI
Tとなる。従って、ステップS73では、デューティ率
学習値DALには、この慣性モーメントITに応じた値DA
L1を設定する。そして、この値DAL1は、前述したよう
に、表2に示す領域#1,#2〜#N毎に個々の値(X
Da1,XDa2〜XDaN)を取ることになる。
【0093】一方、図21は、ステップS72の判別結
果がYes(肯定)の場合、つまり、ダンパクラッチ3
5がケーシング34に圧接された直結状態の図を示して
いる。このように、直結状態では、慣性モーメントは、
非直結の場合とは異なり、同図に斜線で示したように、
ドライブシャフト36、インプットシャフト11を含む
トルクコンバータ3全ての慣性モーメントIT'となる。
従って、ステップS74では、デューティ率学習値DAL
には、この慣性モーメントIT'に応じた値DAL2を設定
し、上記の値DAL1とは区別する。この値DAL2も、前述
したように、表2に示す領域#1,#2〜#N毎に個々
の値(XDb1,XDb2〜XDbN)を取ることになる。通常、
この値DAL2は値DAL1よりも大きな値である(DAL2>
DAL1)。
【0094】ステップS75では、基準デューティ率D
A2と上述したデューティ率学習値DAL(値DAL1或いは
値DAL2)とに基づき、フィードバック制御デューティ
率DU1を次式(D1)から算出する。 DU1=DA2+DAL …(D1) ここに、基準デューティ率DA2及びデューティ率学習値
DALは、上述したように、領域#1,#2〜#Nに応じ
た値となる。
【0095】このフィードバック制御デューティ率DU1
に基づき制御パラメータとしての供給油圧が設定され
る。次のステップS76では、ECU6はSB時点に達
してからの経過時間を計時するタイマカウンタをスター
トさせ、ステップS77では、結合側のデューティ率D
Cを上記のように設定したフィードバック制御デューテ
ィ率DU1とする(DC=DU1)。
【0096】次のステップS78では、SB時点から、
即ちフィードバック制御開始デューティ率DU1が出力さ
れてから所定時間t1が経過したか否かが判別される。
後述するデューティ率学習値DALの学習を行うにあたっ
ては、フィードバック制御開始時のタービン回転速度変
化率NT’の実測値であるタービン回転速度変化率NT
A’を求める必要があるが、この所定時間t1の間はター
ビン回転速度NTが減少し始めた直後でありタービン回
転速度変化率NTA’が一定でない不安定期間とみなせる
ため、この間はタービン回転速度変化率NT’の実測を
行わずに待機するのである。
【0097】ステップS78の判別結果がNo(否定)
で所定時間t1が未だ経過していない場合には、ステッ
プS77に戻り、ステップS75で設定した当初のフィ
ードバック制御デューティ率DU1を出力し続ける。一
方、ステップS78の判別結果がYes(肯定)で所定
時間t1が経過したと判定された場合には、図10のス
テップS80に進む。
【0098】ステップS80では、所定時間t1経過時
点からタイマカウンタにより計時される経過時間がさら
に所定時間t2経過した時点までの間のタービン回転速
度NTの変化率、即ち前述のタービン回転速度変化率NT
A’をNTセンサ7により検出されるタービン回転速度N
Tの実測値に基づき算出する。このタービン回転速度変
化率NTA’は、例えば、所定時間t2経過時点のタービ
ン回転速度NT2と所定時間t1経過時点のタービン回転
速度NT1の差を所定時間t2と所定時間t1との差で除し
て求める。このようにして求められたタービン回転速度
変化率NTA’は、後述するデューティ率学習値DALの学
習時において使用される。
【0099】次のステップS82以降は、フィードバッ
ク制御を実施するステップであり、先ず、ステップS8
2では、ステップS77の場合と同様にして結合側のデ
ューティ率DCをフィードバック制御デューティ率DU1
に改めて設定する。次のステップS84では、現在の車
速Vを車速センサ8からの入力信号に基づいて算出す
る。そして、ステップS86において、目標タービン速
度変化率NT'(V)を求める。この目標タービン速度変化
率NT'(V)は、前述した開始目標タービン回転速度変化
率NT'(VSB)と同様に、車速Vの一次関数で表されるも
のであり、この目標タービン速度変化率NT'(V)と車速
Vとの関係は、変速が所定の変速時間tSFT(例えば、
0.7sec)で完了すべく実験等により設定され、予め
ECU6にマップとして記憶されている。従って、ここ
では、このマップから現在の車速Vに対応する目標ター
ビン速度変化率NT'(V)を読み取る。アップシフト時に
おいては、目標タービン速度変化率NT'(V)は負の値で
示され、この値は車速Vが大きくなるほど負の方向に増
加し、その変化勾配が大きくなる。
【0100】次のステップS88は、変速が終了に近づ
いたか否かを判別するステップであり、タービン回転速
度NTと変速後の3速段での同期回転速度NTJとの差
(NT−NTJ)が所定値ΔNC以下であるか否かが判別さ
れる。判別結果がNo(否定)の場合には、未だ変速は
終了に近づいていないと判定でき、この場合には、次に
ステップS89に進む。
【0101】ステップS89では、現在のタービン速度
変化率NT'をタービン速度NTの実測値に基づき算出す
る。この算出方法としては、前述のタービン速度変化率
NTA'の場合と同様にして、所定の時間内におけるター
ビン速度NTの変化量から求める。そして、ステップS
90において、その現在のタービン速度変化率NT'が、
ステップS86において求めた目標タービン速度変化率
NT'(V)の負側の所定の許容値X1(例えば、3REV/
S2)の範囲以下であるか否かが判別される。ステップS
90の判別結果がYes(肯定)で現在のタービン速度
変化率NT'が目標タービン速度変化率NT'(V)の所定の
許容値X1の範囲以下である場合には、第2クラッチ1
7に供給する作動油圧が高く係合が速すぎると判定で
き、このときには、次のステップS92において、フィ
ードバック制御デューティ率DU1を所定の修正値αだけ
小さくする(DU1=DU1−α)。これにより、第2クラ
ッチ17に供給される作動油圧が減少し、現在のタービ
ン速度変化率NT'が目標タービン速度変化率NT'(V)に
近づくことになる。一方、ステップS90の判別結果が
No(否定)で現在のタービン速度変化率NT'が目標タ
ービン速度変化率NT'(V)の負側の所定の許容値X1の
範囲より大きい場合には、次にステップS94に進む。
【0102】ステップS94では、今度は、現在のター
ビン速度変化率NT'が目標タービン速度変化率NT'(V)
の正側の所定の許容値X1(例えば、3REV/S2)の範囲
以上であるか否かが判別される。判別結果がYes(肯
定)で現在のタービン速度変化率NT'が目標タービン速
度変化率NT'(V)の所定の許容値X1の範囲以上である
場合には、第2クラッチ17に供給する作動油圧が低く
係合が遅いと判定でき、次のステップS96において、
フィードバック制御デューティ率DU1を所定の修正値α
だけ大きくする(DU1=DU1+α)。一方、ステップS
94の判別結果がNo(否定)で現在のタービン速度変
化率NT'が目標タービン速度変化率NT'(V)の正側の所
定の許容値X1の範囲より小さい場合には、次にステッ
プS98に進む。
【0103】ステップS98では、ステップS90とス
テップS94の双方の判別結果により、現在のタービン
速度変化率NT'が、負側と正側の所定の許容値X1の範
囲内にあり、目標タービン速度変化率NT'(V)にほぼ等
しい値と判定できることから、フィードバック制御デュ
ーティ率DU1を修正しないようにする(DU1=DU1)。
【0104】ステップS92、ステップS96或いはス
テップS98を実行したら、ステップS82に戻り、デ
ューティ率DCを修正したフィードバック制御デューテ
ィ率DU1とする。このDU1の修正設定は、ステップS8
8での判別結果がNo(否定)でタービン回転速度NT
と変速後の3速段での同期回転速度NTJとの差(NT−
NTJ)が所定値ΔNCより大きい値である限り繰り返し
実施され、これによりフィードバック制御が良好に行わ
れる。
【0105】フィードバック制御が進行し、ステップS
88の判別結果がYes(肯定)でタービン回転速度N
Tと変速後の3速段でのタービン回転速度NTJとの差
(NT−NTJ)が所定値ΔNC以下となったら、変速が終
了に近づいたと判定でき、この場合には、次にステップ
S100に進む。なお、このタービン回転速度NTと変
速後の3速段でのタービン回転速度NTJとの差(NT−
NTJ)が所定値ΔNC以下となった時点を図18に示す
ようにFF時点とする。
【0106】ステップS100では、FF時点以降にお
いて出力するデューティ率DU2を次式(D2)から算出す
る。 DU2=DU1+ΔDE …(D2) ここに、ΔDEは予め設定された所定値であり、例えば
4.0%である。そして、次のステップS102におい
て、結合側のデューティ率DCを所定時間tHに亘りデュ
ーティ率DU2とする。このように、変速の終了間際にお
いてフィードバック制御デューティ率DU1から所定値Δ
DEだけ高くしたデューティ率DU2にすることにより、
第2クラッチ17に供給される作動油圧を殆ど最大値と
することができ、所定時間tHが経過したSF時点でデ
ューティ率DCを100%にしたときに起こるショック
を削減することができる。
【0107】この所定時間tHが経過し変速終了時点
(SF時点)となったら、最後にステップS104にお
いてデューティ率DCを上記のように100%にする。
これにより、第2クラッチ17は完全に係合することに
なり、一連の2−3アップシフトは終了する。以上のよ
うに、結合側制御が実施され、デューティ率DCのフィ
ードバック制御が行われると、常時監視される現在のタ
ービン速度変化率NT'が目標タービン速度変化率NT'
(V)から外れるような場合であっても、デューティ率D
Cを決定するフィードバック制御デューティ率DU1が好
適に修正されることになり、結合側の第2クラッチ17
に供給される作動油圧が適正に加減制御され、良好且つ
速やかな変速が達成される。
【0108】結合側制御を実行したら、図6のアップシ
フト制御のルーチンに戻り、ステップS17を実行す
る。ステップS17では、例えば上記2−3アップシフ
トのような第一変速段から第二変速段への変速が終了し
たか否か、つまり、タービン回転速度NTが第二変速段
(2−3アップシフトでは3速段)の同期回転速度NTJ
に到達したか否かを判別する。判別結果がNo(否定)
でアップシフトが未だ終了していない場合には、上述の
解放側制御及び結合側制御を継続する。一方、判別結果
がYes(肯定)でアップシフトが終了したと判定され
た場合には、次にステップS18に進む。
【0109】ステップS18乃至ステップS24は、副
変速装置80の副変速段検出センサ96からの信号に応
じて各種学習の実施可否判断を行うとともに各種学習を
行うステップである。ステップS18では、副変速段検
出センサ96からの副変速段信号に基づき、副変速装置
80がハイモードであるか否かを判別する。判別結果が
Yes(肯定)で副変速装置80が通常の副変速段、即
ちハイモード側に設定されている場合には、次にステッ
プS20に進み各種学習を含む学習制御(学習手段)を
実施する。この学習制御では、図13のサブルーチンを
実行する。
【0110】図13を参照すると、各種学習にはガタ詰
め時間tF、油圧解放時間tR及びデューティ率学習値D
ALの学習があり、以下、これらの学習内容について順に
説明する。前述したように、結合側係合要素(2−3ア
ップシフトでは第2クラッチ17)の結合遅れによりタ
ービン30が吹き上がると、再結合制御により油圧再供
給が実施されることになるが、このとき、出力軸トルク
Tが急激に上昇し、このトルクTが大きく変動すること
がある。これは、回転速度の上昇したタービン30とと
もに空転状態にあるプラネタリギヤ等が、解放側係合要
素(上記の2−3アップシフトでは第2ブレーキ23)
の再係合によって急激に出力軸に連結されることによっ
て起こるものであり、この変動によって乗員は車両が急
に前方に押されるようなショックを感じることになる。
【0111】このようなショックを発生する油圧再供給
を極力実施しないようにするためには、結合側係合要素
の結合と解放側係合要素との掴み換えのタイミングを最
適にすればよい。そこで、この最適タイミングを得るた
めに、上述した結合側のガタ詰め時間tFと解放側の油
圧解放時間tRとを所定の学習により最適値に補正する
ようにしている。最初にこれらガタ詰め時間tFと油圧
解放時間tRについて説明する。
【0112】先ず、ステップS140においてガタ詰め
時間tFの学習を実行する。油圧再供給は、油圧再供給
が実施されるか否か、即ち、タービン30の回転速度N
Tが同期回転速度NTIを越えて吹き上がるか否かのタイ
ミングで結合側係合要素(2−3アップシフトでは第2
クラッチ17)のガタ詰めが終わるようにしてやれば、
その発生を無くすことができ、ひいてはこの油圧再供給
によるシフトショックが抑止される。そこで、この学習
では、結合側係合要素の結合開始タイミングを支配する
ガタ詰め時間tFの長さを最適値に補正するようにして
いる。つまり、この学習は、上述の再結合制御の実施に
より発生するシフトショックを低減させるべく、結合側
係合要素のピストンのガタ詰めピストンストローク量S
CTに基づいて、ガタ詰め時間tFを適正な値に学習補正
するというものである。
【0113】本来、再結合制御は、結合側係合要素のガ
タ詰めの遅れに起因して発生する不都合を解消するため
に実施するものであり、ガタ詰め時間tFを初めから長
くして結合遅れが無いようにしておけば、タービンの吹
き上がりはなく、再結合制御を実行する必要はないはず
である。しかしながら、必要以上にガタ詰め時間tFを
長くしすぎてしまうと、デューティ率DC100%の高
油圧で結合が急激になされることになり、自動変速装置
2の故障に繋がる大きなシフトショックを発生させる虞
がある。
【0114】そこで、油圧再供給が実施されるか否か、
即ち、出力パラメータとしてのタービン30の回転速度
NTが目標値(NT+ΔNSA)を越えて吹き上がるのと略
同時に、結合側係合要素のガタ詰めが終わるようにして
やれば、油圧再供給の発生をなくすことができ、ひいて
はこの油圧再供給によるシフトショックを抑止すること
ができることから、結合側係合要素の結合開始タイミン
グを支配するガタ詰め時間tFを最適値に補正すべく、
このようなガタ詰め時間tF学習を実施するようにして
いる。
【0115】このガタ詰め時間tFの補正の特徴は、例
えば、一つのアップシフトにおいて油圧再供給が実施さ
れたときにはガタ詰め時間tFを学習補正するが、油圧
再供給が実施されることなくシフトが終了したときに
は、以後同一アップシフトが所定回数(設定回数)終了
するまでガタ詰め時間tFの学習を中止し、所定回数経
過後は故意に油圧再供給が実施されるようガタ詰め時間
tFを補正する(tF値を短くする)ことである。これに
より、油圧再供給が実施されるか否かの微妙なところで
ガタ詰め時間tFの値が安定するため、上述したタービ
ン回転速度NTの吹き上がり(ΔNSA)の発生する時間
が略ゼロとなり、トルク変動が防止され、変速フィーリ
ングが向上するのである。
【0116】このガタ詰め時間tFの学習では、図14
及び図15のサブルーチンを実行することになるが、こ
のガタ詰め時間tF学習サブルーチンは、第一変速段か
ら第二変速段への変速制御が終了する毎に実行される。
つまり、このガタ詰め時間tFの学習は、上記2−3ア
ップシフトの他に1−2、3−4アップシフト等のシフ
トモード毎に個々に実行され、学習値もそれぞれのシフ
トモード毎に記憶される。
【0117】以下、図14及び図15のフローチャート
に沿ってガタ詰め時間tF学習を説明する。ガタ詰め時
間tF学習では、先ず、図14のステップS150にお
いて、ガタ詰め時間tFの学習を実行しても良い条件が
成立しているか否かを判別する。学習を実行するために
は、作動油温TOIL、車速V、スロットル弁開度θTH及
びエンジン負荷(一吸気行程当たりの吸気量A/N等に
よって表される)がそれぞれ所定の範囲内にあり、出力
トルク等が安定している必要がある。判別結果がNo
(否定)で学習条件が満たされていない場合には、出力
トルク等が未だ安定していないと判定でき、ガタ詰め時
間tFの学習を実行しない。一方、判別結果がYes
(肯定)で学習条件成立の場合には、次にステップS1
52に進む。
【0118】ステップS152は、今回のアップシフト
変速制御で油圧再供給が実施されたか否かを、前述した
フラグf(BB)が値1であるか否かで判別するステップで
ある。ここで、判別結果がYes(肯定)で再結合制御
による油圧再供給が実施された場合には、後述する図1
5のステップS160以降を実行することにより、ガタ
詰め時間tFを油圧再供給が実行されなくなるように補
正する一方、制御開始直後のように判別結果がNo(否
定)となり今回のアップシフト変速制御で油圧再供給が
実行されていなければ、次にステップS154以降を実
行する。
【0119】ステップS154は、油圧再供給が実行さ
れなかった回数をカウントする出力パラメータとしての
油圧再供給無カウンタINが、目標値であるゼロ(IN
=0)であるか否かを判別するステップである。ここ
に、カウンタ値INがゼロである場合とは、バッテリ電
源を初めてオン状態(不揮発性RAMの記憶値を初期値
にリセットした状態)にした制御開始直後の場合であ
る。この初期状態のときに油圧再供給が実行されず、先
のステップS152でNo(否定)と判定された場合の
み、該ステップS154の判別結果はYes(肯定)と
なる。通常制御開始直後には油圧再供給は実行されない
ことが多く、この場合には、ステップS154の判別結
果はYes(肯定)となり、次にステップS170に進
み、ガタ詰めピストンストロークの補正量ΔSCTに所定
の補正値LTFBを設定する。この補正値LTFBは、油圧再
供給が実行され易くなるように負の値に設定してある
(ΔSCT=LTFB<0)。そして、ステップS179に
おいて、次式(E1)によって算出されるガタ詰め時間補
正量ΔtFだけ、ガタ詰め時間tFを次式(E2)によって
補正し、油圧再供給が実施されるようにする。この式に
おいて、Kはストローク補正量ΔSCTを補正時間に換算
する比例定数である。
【0120】 ΔtF=K×ΔSCT/(デューティ率100%) …(E1) tF=(tF)n+ΔtF …(E2) ここで、(tF)nは、前回のアップシフトにおいて学習
されて今回同一シフトモードでのアップシフトで使用さ
れたガタ詰め時間を示す。このステップS170での補
正は、先のステップS152の判別結果がNo(否定)
でフラグf(BB)が値1にならない限り、即ち再結合制御
による油圧再供給が少なくとも一回実行されるまで繰り
返されることになる。
【0121】ステップS170の補正値LTFBの設定に
よって、一旦再結合制御が実行されると、次の制御周期
でステップS152を実行したときには、その判別結果
はYes(肯定)となり、図15のステップS160以
降を実行することになる。ステップS160では、先
ず、カウンタINを値1に設定する(IN=1)。この
カウンタ値は、一旦値1に設定されるとバッテリ電源が
外されることがない限り、再び値0にリセットされるこ
とはなく、再結合制御による油圧再供給が実施される毎
に値1にリセットされるものである。
【0122】ステップS162以降は、油圧再供給の実
施を抑制するようにガタ詰めピストンストローク量SCT
を学習補正するステップであり、ステップS162にお
いて、測定した今回のガタ詰め時間(tF)Nと駆動デュ
ーティ率とに基づいて式(E3)により今回のアップシフ
トでのピストンストローク量(SCT)nを算出し、次
に、ステップS164で、前回使用したガタ詰め時間
(tF)n-1と駆動デューティ率とに基づいて式(E4)に
より前回の同一シフトモードでのアップシフトでのピス
トンストローク量(SCT)n-1を同様に算出する。
【0123】 (SCT)n=K×デューティ率×(tF)N …(E3) (SCT)n-1=K×デューティ率×(tF)n-1 …(E4) ここに、Kは前述の式(E1)で用いた比例定数と同じ値
が用いられる。そして、ステップS166で、これらの
値の差を次式(E5)から求めることによりストローク補正
量ΔSCTn(ΔSCTn>0)を設定する。
【0124】 ΔSCTn=(SCT)n-1−(SCT)n …(E5) ステップS168においては、この差ΔSCTnを次式(E
6)に基づいて補正して最終的に補正量ΔSCTを求め
る。 ΔSCT=C1×ΔSCTn …(E6) ここに、C1は補正定数(0<C1<1)であり、実験等に
より良好な結果が得られる値、例えば0.5に設定され
る。
【0125】次いで、前述した図14のステップS17
9に進み、ストローク補正量ΔSCTに対応するガタ詰め
時間補正量ΔtFを前式(E1)、(E2)により改めて算出
し、ガタ詰め時間tFを補正する。なお、ここでは、測
定したガタ詰め時間(tF)N及び前回使用したガタ詰め
時間(tF)n-1を一旦ピストンストローク量(SCT)n
及び(SCT)n-1に換算して補正量ΔSCTを求め、改め
てガタ詰め時間補正量ΔtFを求めるようにしたが、こ
れはステップS168の補正後のガタ詰め時間補正量Δ
tFが必ずしもガタ詰め時間tFの測定値の差のみによっ
て求めた値ΔtF'((tF)n-1−(tF)N)と一致しな
いことによるものである。
【0126】このようにして、ガタ詰め時間tFを補正
することにより、次回アップシフト時には、油圧再供給
が発生し難くなることを期待できる。そして、実際に次
回のアップシフト時において、油圧再供給が発生せず、
先のステップS152の判別結果がNo(否定)となり
フラグf(BB)が値1でない場合には(f(BB)=0)、前
述したステップS154に進む。今回は、前回ステップ
S160において油圧再供給無カウンタINを値1に設
定しているため、ステップS154の判別結果はNo
(否定)となり、次にステップS156に進む。
【0127】ステップS156は、カウンタINのカウ
ント値が、所定値SN(例えば、10)を越えたか否か
を判別するステップである。判別結果がNo(否定)で
未だ所定値SNに達していない場合には、このアップシ
フト変速制御において、油圧再供給が実行されずに変速
を終了した回数が連続する限り、次のステップS158
において、油圧再供給無カウンタINを所定値SNに達
するまでカウントアップし続ける(IN=IN+1)。
即ち、このカウンタ値INがカウントアップされ続けて
いる間(アップシフト10回分)は、油圧再供給は実行
されることがないため、以降の同一シフトモードでのア
ップシフトにおいて出力トルクT変動によるシフトショ
ックは起こらず、変速フィーリングは暫時最良状態に保
持されることになる。
【0128】ステップS156の判別結果がYes(肯
定)でカウンタ値INが所定値SNを越えたことが確認
されたら、ステップS175に進んでカウンタ値INを
値1にリセットし、次にステップS177において、ス
トローク補正量ΔSCTに、油圧再供給が実施され易くな
るように所定の負の補正値LTFAを設定する。なお、補
正値LTFAは、前述した補正値LTFBと同じ値に設定して
もよいが、これより大きい値(LTFB<LTFA<0)に設
定することが好ましい。そして、前述したステップS1
79において、ストローク補正量ΔSCTに応じたガタ詰
め時間補正量ΔtFだけ、ガタ詰め時間tFを負側に補正
する。
【0129】このように、ガタ詰め時間tFが、油圧再
供給が実施されることのない値で安定し、結合側係合要
素の結合制御が良好なものであっても、所定の周期(ア
ップシフト10回分)で油圧再供給を強制的に起こさ
せ、再びガタ詰め時間tFを学習してこれを更新するこ
とにより、ガタ詰め時間tFを最良値近傍に常に安定さ
せ続けることが可能となる。
【0130】ガタ詰め時間tF学習を終了したら、次に
図13のステップS142において油圧解放時間tR学
習を実行する。この学習では、図16の油圧解放時間t
R学習サブルーチンをガタ詰め時間tF学習と同様に各シ
フトモードでのアップシフト毎に実行する。この学習
は、解放側係合要素(2−3アップシフトでは第2ブレ
ーキ23)の油圧解放開始タイミングから油圧再供給実
施タイミングまでの油圧解放時間tRを、ガタ詰め時間
tFと照らしながら、補正しようというものである。こ
れは、即ち、SS発生時から油圧解放開始時点までの時
間tsを補正することである。SS時点から油圧解放開
始までの時間tsと油圧解放時間tR、ガタ詰め時間tF
との関係式は、tF>tRの場合には、前述したように次
式(F1)のようになる。
【0131】 ts=tF+tc−tR (tF>tR) …(F1) 一方、tF≦tRの場合には、解放側係合要素の油圧の解
放をSSが発生したと同時に開始する必要があり、次式
(F2)により時間tsを値0に設定する。 ts=0 (tF≦tR) …(F2) この油圧解放時間tRの学習補正は、油圧再供給が実施
された後、ガタ詰め時間tFの学習が進行して時間tFが
適正値になるまでの間は、解放側係合要素からの油圧解
放開始タイミングが最適な値となるように、前回アップ
シフトにおいて学習補正されて今回の同一シフトモード
でのアップシフトで使用された油圧解放時間(tR)nを
用いて油圧解放時間tRを学習補正するというものであ
る。
【0132】その後、油圧再供給が実施されなくなれ
ば、そのときのガタ詰め時間tF及び油圧解放時間tRが
最適値であるということになるから、ガタ詰め時間tF
の学習中止に合わせて油圧解放時間tRもその学習を一
旦中止する。さらにガタ詰め時間tFの学習が再開され
れば、油圧解放時間tRも学習を再開する。油圧解放時
間tRの学習では、先ず、図16のステップS180に
おいて、今回のアップシフト変速制御において油圧再供
給が実施されたか否かをフラグf(BB)が値1であるか否
かで判別する。油圧再供給が実施されていない場合に
は、ステップS180の判別結果はNo(否定)とな
り、次にステップS182に進む。一方、判別結果がY
es(肯定)で油圧再供給が実施された場合には、ガタ
詰め時間tFの補正学習を実行することに併せ、油圧解
放時間tRも学習を実行すべきと判定でき、ステップS
190に進む。これにより、油圧解放時間tRの補正学
習を開始する。
【0133】ステップS190では、今回のアップシフ
ト制御時の油圧解放時間を演算し、これを今回油圧解放
時間tRCとして記憶する。今回油圧解放時間tRCの演算
は、今回制御時の油圧解放時点から油圧再供給実施時点
間の時間を読み出すことによって行うことができる。次
にステップS192において、前回アップシフト時に使
用した油圧解放時間(tR)n-1を記憶装置から読み出
し、ステップS194において、今回油圧解放時間tRC
と前回油圧解放時間(tR)n-1との差ΔtRCを求める
(ΔtRC=tRC−(tR)n-1)。そして、ステップS1
96において、この差ΔtRCから次式(F3)に基づいて補
正値ΔtRを求める。
【0134】ΔtR=C2×ΔtRC …(F3) ここに、C2は補正定数であり、実験等により良好な結果
が得られる値、例えば0.5に設定される。このように
設定された補正値ΔtRに基づいて、油圧解放時間tR
は、ステップS188において補正される。ここでは、
油圧解放時間tRは、前回補正され今回使用された(t
R)nと上述した補正値ΔtRとから次式(F4)の通り演算
される。
【0135】tR=(tR)n+ΔtR …(F4) なお、nが0、つまり今回初めてtRの学習が行われる
場合には、(tR)nは(tR)0となり、このとき(t
R)0には予め記憶装置に記憶された基準値が用いられ
る。ガタ詰め時間tFの学習が進み、油圧再供給が実施
されることなく今回のアップシフトが終了すると、フラ
グf(BB)は値1ではなくなり(f(BB)=0)、ステップ
S180の判別結果はNo(否定)となるため、次にス
テップS182を実行する。ステップS182は、ガタ
詰め時間tFがゼロ(tF=0)であるか否かを判別する
ステップであるが、再結合制御による油圧再供給がな
く、且つこのガタ詰め時間tFがゼロとなるというよう
な状況は通常は起こらないため、殆どの場合は、判別結
果がNo(否定)となる。しかし、異常等の何らかの原
因により結合側係合要素がガタ詰め操作なしに結合を開
始したときには、結合側と解放側の両方の摩擦係合要素
が同時に結合された、所謂インタロック状態となること
が考えられるため、これを防止すべくこのような判別ス
テップを設けるようにしている。
【0136】判別結果がYes(肯定)となってしまう
ような場合には、次にステップS186に進む。ステッ
プS186では、油圧解放時間tRの補正値ΔtRをある
程度大きな所定の正の補正値XTR(例えば、24ms)
に設定する。そして、この場合には、ステップS188
において、油圧解放時間tRを所定の補正値XTRだけ補
正する。このようにすれば、解放側の油圧解放開始タイ
ミングを早くすることができるため、結合側係合要素の
ガタ詰め操作が実施されない場合でもインタロック状態
が起こらず、変速ショックを防止できる。この間に、ガ
タ詰め操作が正常に実施されるようになり、ガタ詰め時
間tFが発生することも期待できる。
【0137】ステップS182の判別結果がNo(否
定)でガタ詰め時間tFがゼロではない通常の場合に
は、次にステップS184に進む。ステップS184は
補正値ΔtRを設定するステップであるが、この場合に
は、ステップS180の判別結果がNo(否定)であり
フラグf(BB)は値1ではないことから、ガタ詰め時間t
Fが安定していると判定でき、補正値ΔtRを値0に設定
する。これにより、解放側係合要素からの油圧解放開始
タイミングと結合側係合要素の結合開始タイミングとの
関係は良好に保持される。
【0138】これらのガタ詰め時間tF及び油圧解放時
間tRの学習が終了したら、次に図13のステップS1
44においてデューティ率学習値DALの学習を実施す
る。このデューティ率学習値DALの学習では、図17の
フローチャートに示すようなサブルーチンを実行する。
以下、このフローチャートに沿ってデューティ率学習値
DALの学習手順について説明する。
【0139】先ず、ステップS200では、ダンパクラ
ッチ35が直結状態にあるか否かを上記フラグF(DC)が
値1であるか否かで判別する。判別結果がNo(否定)
でダンパクラッチ35が非直結状態のときには、次にス
テップS202に進むことになる。この判別結果によ
り、学習するデューティ率学習値DALとして値DAL1が
選択されることになる。なお、前述したように、この値
DAL1は、先のステップS70において選択した学習補
正領域に対応する値(例えば、領域#1の場合には、値
XDa1)となっている。
【0140】ステップS202では、フィードバック制
御開始時において実測した前述のタービン回転速度変化
率NTA’が開始目標タービン回転速度変化率NT'(VSB)
の負側の所定の許容値X2(例えば、3REV/S2)の範囲
以下であるか否かを判別する。ここに、開始目標タービ
ン回転速度変化率NT'(VSB)は、前述したように、車速
センサ8によって検出されたSB時点の車速VSBに応じ
て、ECU6に予め記憶されたマップから読み出された
負の値である。なお、この開始目標タービン回転速度変
化率NT'(VSB)は、車速VSBの変化に対してその変化量
がそれほど大きくないため、マップを用いずにその平均
的な値NT'av(例えば、−20REV/S2)に固定してもよ
い。
【0141】ステップS202の判別結果がYes(肯
定)でタービン回転速度変化率NTA’が開始目標タービ
ン回転速度変化率NT'(VSB)の所定の許容値X2の範囲
以下である場合には、結合側係合要素に供給する作動油
圧が高く係合が速くなっていると判定でき、次のステッ
プS203において、デューティ率学習値DAL1を所定
の補正値βだけ小さくする(DAL1=DAL1−β)。これ
により、結合側係合要素に供給する作動油圧を減少さ
せ、タービン回転速度変化率NTA’を開始目標タービン
回転速度変化率NT'(VSB)に近づけることができる。一
方、ステップS122の判別結果がNo(否定)でター
ビン回転速度変化率NTA’が開始目標タービン回転速度
変化率NT'(VSB)の所定の許容値X2の範囲より大きく
なっている場合には、次にステップS204に進む。
【0142】ステップS204では、今度は、タービン
回転速度変化率NTA’が開始目標タービン回転速度変化
率NT'(VSB)の正側の所定の許容値X2(例えば、3REV
/S2)の範囲以上であるか否かが判別される。判別結果
がYes(肯定)でタービン回転速度変化率NTA’が開
始目標タービン回転速度変化率NT'(VSB)の所定の許容
値X2の範囲以上である場合には、結合側係合要素に供
給する作動油圧が低く係合が遅くなっていると判定で
き、次のステップS125において、デューティ率学習
値DAL1を所定の補正値βだけ大きくする(DAL1=DAL
1+β)。一方、ステップS204の判別結果がNo
(否定)でタービン回転速度変化率NTA’が開始目標タ
ービン回転速度変化率NT'(VSB)の正側の所定の許容値
X2の範囲より小さい場合には、次にステップS206
に進む。
【0143】ステップS206では、ステップS202
とステップS204の双方の判別結果により、出力パラ
メータとしてのタービン回転速度変化率NTA’が、負側
と正側の所定の許容値X2の範囲内にあり、目標値であ
る開始目標タービン回転速度変化率NT'(VSB)にほぼ等
しい値と判定できることから、デューティ率学習値DAL
1を補正せずに学習を終了する(DAL1=DAL1)。
【0144】一方、ステップS200の判別結果がYe
s(肯定)でダンパクラッチ35が直結状態のときに
は、次にステップS210に進むことになる。この判別
結果により、学習するデューティ率学習値DALとして値
DAL2が選択される。なお、この値DAL2も値DAL1と同
様に、先のステップS50において選択した学習補正領
域に対応する値(例えば、領域#1の場合には、値XDb
1)となっている。
【0145】ステップS210では、非直結状態での上
述のステップS202と同様にして、タービン回転速度
変化率NTA’が開始目標タービン回転速度変化率NT'
(VSB)の負側の所定の許容値X2(例えば、3REV/S2
の範囲以下であるか否かを判別する。判別結果がYes
(肯定)でタービン回転速度変化率NTA’が開始目標タ
ービン回転速度変化率NT'(VSB)の所定の許容値X2の
範囲以下である場合には、結合側係合要素に供給する作
動油圧が高く係合が速くなっていると判定でき、次のス
テップS211において、デューティ率学習値DAL2を
所定の補正値βだけ小さくする(DAL2=DAL2−β)。
これにより、結合側係合要素に供給する作動油圧を減少
させ、タービン回転速度変化率NTA’を開始目標タービ
ン回転速度変化率NT'(VSB)に近づけることができる。
【0146】一方、ステップS210の判別結果がNo
(否定)でタービン回転速度変化率NTA’が開始目標タ
ービン回転速度変化率NT'(VSB)の所定の許容値X2の
範囲より大きい場合には、次にステップS212に進
む。ステップS212では、今度は、タービン回転速度
変化率NTA’が開始目標タービン回転速度変化率NT'
(VSB)の正側の所定の許容値X2(例えば、3REV/S2
の範囲以上であるか否かが判別される。判別結果がYe
s(肯定)でタービン回転速度変化率NTA’が開始目標
タービン回転速度変化率NT'(VSB)の所定の許容値X2
の範囲以上である場合には、結合側係合要素に供給する
作動油圧が低く係合が遅くなっていると判定でき、次の
ステップS213において、デューティ率学習値DAL2
を所定の補正値βだけ大きくする(DAL2=DAL2+
β)。一方、ステップS212の判別結果がNo(否
定)でタービン回転速度変化率NTA’が開始目標タービ
ン回転速度変化率NT'(VSB)の正側の所定の許容値X2
の範囲より小さい場合には、次にステップS214に進
む。
【0147】ステップS214では、ステップS210
とステップS212の双方の判別結果により、タービン
回転速度変化率NTA’が、負側と正側の所定の許容値X
2の範囲内であり、開始目標タービン回転速度変化率N
T'(VSB)にほぼ等しい値と判定できることから、デュー
ティ率学習値DAL2を補正せずに学習を終了する(DAL2
=DAL2)。
【0148】なお、前述したように、出力パラメータ
は、タービン回転速度、タービン回転速度変化率等のよ
うにトランスミッション等のパワープラントが直接出力
を行う出力パラメータに限られることはない。即ち、上
述した油圧再供給状態のように制御パラメータとしての
油圧供給状態変化に対応して生じる変速機状態を修正す
るための付加的制御の実施状態等を出力パラメータとし
て対応させるようにしてもよい。
【0149】このようにして学習されたガタ詰め時間t
F、油圧解放時間tR及びデューティ率学習値DALの補正
値は、次回実施される同一シフトモードでのアップシフ
ト制御に反映される。なお、前述したように、特に、デ
ューティ率学習値DALの補正値については、その学習
が、タービントルクTTとイナーシャトルクTIとのトル
ク和(TT+TI)に応じた学習補正領域毎に実施され、
ECU6に記憶保持されるものであるため、その補正値
は、次回実施される同一シフトモード、且つ、同一学習
補正領域でのアップシフト制御に良好に反映されること
になる。
【0150】そして、図6のフローチャートに戻り、ス
テップS26において、ステップS14の解放側制御に
おける再結合制御の油圧再供給の実施毎に値1が設定さ
れるフラグF(BB)を値0にリセットする(F(BB)=
0)。一方、図6のステップS18の判別結果がNo
(否定)で副変速装置80の副変速段がハイモードでな
くローモードの場合には、次にステップS22に進む。
【0151】ステップS22では、切換レバー(図示せ
ず)の操作によって変速レンジがニュートラルレンジと
走行レンジとの間で切換えられた場合或いはニュートラ
ルレンジと後退レンジとの間で切換えられた場合である
か否かを判別する。つまり、このアップシフト制御で
は、走行レンジにおけるアップシフト変速制御のみなら
ず、切換レバーによる変速レンジの切換え時における摩
擦係合要素の掴み換え制御も含んでおり、このステップ
S22では、切換レンジがニュートラルレンジと走行レ
ンジとの間で切換えられた場合或いはニュートラルレン
ジと後退レンジとの間で切換えられた場合であるか否か
を判別する。
【0152】ステップS22の判別結果がYes(肯
定)で、切換レンジがニュートラルレンジと走行レンジ
との間で切換えられた場合或いはニュートラルレンジと
後退レンジとの間で切換えられた場合には、上述のステ
ップS20に進み、やはり学習制御を実行する。一方、
ステップS22の判別結果がNo(否定)で、変速レン
ジが切換えられたとしても、その切換えがニュートラル
レンジと走行レンジ間での切換え或いはニュートラルレ
ンジと後退レンジ間での切換えでない場合には、次にス
テップS23に進む。
【0153】ステップS23では、上述のように、副変
速装置80の副変速段がハイモードの場合に実施してい
た学習制御を一切行わないように禁止する(学習変更手
段)。これは、副変速段がハイモードの場合とローモー
ドの場合とでは自動変速装置2の出力トルクToに差異
があり、もともと結合側と解放側の係合要素間の掴み換
えタイミングに差があって上述のガタ詰め時間tF、油
圧解放時間tR及びデューティ率DCに大きな違いがある
ことに基づいている。つまり、通常、副変速段がローモ
ードのときの方がハイモードのときよりも出力トルクT
oは小さいために、ローモードの場合には、結合側係合
要素に関していえば、結合側係合要素の上記摩擦係合板
50をあまり強く掴む必要がなく、ガタ詰め時間tFは
短くてよく、さらにデューティ率DC(つまり、デュー
ティ率DA1,DU1,DU2)もそれほど大きくなくてよい
ことから、ローモードの場合の学習値もハイモードの場
合の学習値と本来異なっており、これら異なる学習値を
導くような学習どうしを同一視して実施することができ
ないことに起因しているのである。
【0154】従って、このステップS23では、ローモ
ードの場合にあってはハイモードの場合のガタ詰め時間
tF、油圧解放時間tR及びデューティ率DCに係るデュ
ーティ率学習値DALの各学習を禁止するようにし、これ
により、ローモードでの誤学習が防止され、ローモード
からハイモードに再び切換えられたときに係合要素間の
掴み換えタイミングが合わずに発生するシフトショック
が防止され、ハイモード時、即ち通常運転時における学
習制御での学習値の安定化が図られるのである。
【0155】なお、ステップS22の判別結果により、
ローモードであっても変速レンジがニュートラルレンジ
と走行レンジ間での切換え或いはニュートラルレンジと
後退レンジ間での切換えである場合にあっては学習制御
の実施を許容しているが、これは、これらのような切換
え時にあっては、通常、車両は停止中であって、自動変
速装置2の出力トルクToに差異がなく、ガタ詰め時間
tF、油圧解放時間tR及びデューティ率DCに係るデュ
ーティ率学習値DALの各学習をハイモードのときと同様
に実施しても何等問題ないことに因っている。
【0156】ところで、ステップS23において学習を
禁止してしまうと、副変速段がローモードの場合には全
く学習がなされないことになり好ましいことではない。
そこで、次にステップS24を実行する。ステップS2
4では、上述のようにして求められ、副変速段がハイモ
ードである場合に最後に実施しECU6のメモリ(学習
値記憶手段)に記憶した学習値を含むガタ詰め時間t
F、油圧解放時間tR及びデューティ率DCに所定の制御
値補正(ローモード補正)を加え、これにより、ハイモ
ード時の学習を反映させてローモードでのガタ詰め時間
tF'、油圧解放時間tR'及びデューティ率DC'を設定す
る(油圧制御変更手段、学習変更手段)。詳しくは、ガ
タ詰め時間tF'についてはガタ詰め時間補正量ΔtFを
含んだガタ詰め時間tFに一定の所定値γを加える制御
値補正を行い、油圧解放時間tR'については油圧解放時
間補正値ΔtRを含んだ油圧解放時間tRに一定の所定値
δを加える制御値補正を行い、また、デューティ率DC'
については補正されたデューティ率学習値DALを含んだ
デューティ率DCに一定の所定値εを加える制御値補正
を行う。
【0157】これらの所定値γ,δ,εは、予め実験等
により設定された定数であり、例えば、ハイモード時の
ガタ詰め時間tF、油圧解放時間tR及びデューティ率D
Cの各基準値(適合した制御パラメータ)HtF,HtR,
HDcとローモード時のガタ詰め時間tF'、油圧解放時間
tR'及びデューティ率DC'の各基準値(適合した制御パ
ラメータ)HtF',HtR',HDc'との差(γ=HtF−Ht
F',δ=HtR−HtR',ε=HDc−HDc')に設定されて
いる。なお、これらガタ詰め時間tF,tF'、油圧解放
時間tR,tR'及びデューティ率DC,DC'は各シフトモ
ード毎に異なった値をとるため、所定値γ,δ,εにつ
いても各変速モード毎に異なった値をとっている。これ
により、副変速段がローモード時であってもハイモード
での学習補正内容が好適に反映され、ローモードでの走
行時においても自動変速装置2の変速制御はローモード
用の制御値や学習値を特に有しなくてもハイモード時同
様に常に良好に実現可能とされるのである。
【0158】ステップS24にてローモード補正を実施
したら、ステップS26に進んでフラグF(BB)を値0に
リセットする(F(BB)=0)。そして、再びステップS
10に戻り当該アップシフト制御のメインルーチンが繰
り返し実行されたときに、副変速装置80の副変速段が
継続してローモードであってステップS18での判別結
果がNo(否定)である場合には、ステップS14の解
放側制御において使用される所定時間tsはガタ詰め時
間tF'と油圧解放時間tR'とに基づいて設定され(例え
ば、ts=tF'+tc−tR')、また、ステップS16の
結合側制御において使用されるガタ詰め時間tFはガタ
詰め時間tF'に置き換えられ、さらにデューティ率DC
はデューティ率DC'に置き換えられる。
【0159】以上、詳細に説明したように、本発明の自
動変速機によれば、通常の変速段であるハイモードと低
速段側のローモードとの切換え可能な副変速装置80が
連結された自動変速装置2において、ハイモード時の摩
擦係合要素の掴み換えのタイミングとローモード時の摩
擦係合要素の掴み換えのタイミングとが異なるが、ロー
モード時においては、ハイモード時の学習内容を簡単な
制御値補正によって利用するようにでき、常に好適な摩
擦係合要素の掴み換えのタイミングを有してシフトショ
ックなく自動変速装置2の変速制御を実現可能である。
【0160】また、ローモード時においては、一旦ハイ
モード時に実施していた学習を中断するので、誤学習を
排除でき、少なくとも使用頻度の高いハイモード時にお
ける摩擦係合要素の掴み換えのタイミングについては極
めて安定した状態に維持しておくことができる。また、
本発明の自動変速機によれば、副変速装置80の副変速
段をエンジン回転速度NEと車速Vとに基づいて検出す
ることが可能であるので、別途新たに副変速段検出セン
サ96を用いてコストアップさせることなく容易に副変
速段のローモード状態を検出可能である。
【0161】なお、上記実施例においては、ローモード
時に学習を中止させ、制御値補正により摩擦係合要素の
掴み換えを行うようにしたが、ハイモード時とローモー
ド時の学習値をそれぞれ求め、各学習値をそれぞれのモ
ード毎に記憶手段に記憶し、各モード毎に対応する学習
値を用いて各制御パラメータの設定を行ってもよい。そ
の際、各基準値はハイモード、ローモード毎に個別に設
定することが好ましい。
【0162】また、上記実施例では、前進4段が達成可
能な自動変速装置2について説明したが、上記各制御は
少なくとも前進2段以上の変速段を有する自動変速装置
であれば同様に適用することが可能であり、また、ここ
ではアップシフト制御を対象に説明したが、上記各制御
をダウンシフト制御に適用させることも可能である。
【0163】
【発明の効果】以上、詳細に説明したように、本発明の
請求項1の自動変速機によれば、車両のエンジンに連結
され、歯車変速機構の第一摩擦係合要素への油圧を解放
してその係合を解除する一方、第二摩擦係合要素に油圧
を供給してこれを係合させることにより第一変速段から
第二変速段への変速を達成可能な自動変速装置と、第一
及び第二摩擦係合要素に供給する油圧を制御する油圧制
御手段と、自動変速装置に直列に設けられ、自動変速装
置と協働してエンジンの出力回転を変速し車輪に伝達す
る副変速装置と、副変速装置の変速状態を検出する変速
状態検出手段とを備え、油圧制御手段は、副変速装置の
変速状態に応じて第一及び第二摩擦係合要素のうちの少
なくとも一方への油圧の制御態様を変更する油圧制御変
更手段を含んでなるようにしたので、第一及び第二摩擦
係合要素のうちの少なくとも一方への油圧の制御の態様
を副変速装置の変速状態に応じて好適に変更でき、副変
速装置の変速状態に応じた好適な油圧制御をそれぞれ実
施でき、自動変速装置の変速制御を副変速装置の変速状
態に拘わらず常に良好に実現できる。
【0164】また、請求項2の自動変速機によれば、油
圧制御手段は少なくとも一つの制御パラメータを用いて
油圧を制御するものであり、油圧制御変更手段は、副変
速装置の変速状態に応じ制御パラメータのうちの少なく
ともいずれか一つの値を変更するので、油圧制御を制御
パラメータを用いて容易に実施でき、少なくともいずれ
か一つの制御パラメータを副変速装置の変速状態に応じ
て変更することにより油圧の制御量を副変速装置の変速
状態に応じて好適に変更できる。
【0165】また、請求項3の自動変速機によれば、車
両のエンジンに連結され、歯車変速機構の第一摩擦係合
要素への油圧を解放してその係合を解除する一方、第二
摩擦係合要素に油圧を供給してこれを係合させることに
より第一変速段から第二変速段への変速を達成可能な自
動変速装置と、第一及び第二摩擦係合要素に供給する油
圧を少なくとも一つの制御パラメータを用いて制御する
油圧制御手段と、自動変速装置に直列に設けられ、自動
変速装置と協働してエンジンの出力回転を変速し車輪に
伝達する副変速装置と、副変速装置の変速状態を検出す
る変速状態検出手段とを備え、油圧制御手段は、変速時
の第一及び第二摩擦係合要素への油圧の供給状態に対応
して変化する出力パラメータが目標値に近づくように制
御パラメータの学習値を求める学習手段と、副変速装置
の変速状態に応じて学習値に基づく制御パラメータの設
定態様を変更する学習変更手段とを含んでなるようにし
たので、制御パラメータを用いて第一及び第二摩擦係合
要素に供給する油圧を制御でき、また、この制御パラメ
ータは変速時の第一及び第二摩擦係合要素への油圧の供
給状態に対応して変化する出力パラメータを目標値に近
づけるように学習制御されるのであるが、この学習に基
づく制御パラメータの設定態様を副変速装置の変速状態
に応じて好適に変更でき、自動変速装置の変速制御を副
変速装置の変速状態に拘わらず常に良好に実現できる。
【0166】また、請求項4の自動変速機によれば、学
習変更手段は、副変速装置の変速状態毎にそれぞれ学習
値を記憶する記憶手段を有しており、副変速装置の変速
状態に応じた学習値を用いて制御パラメータを設定する
ので、副変速装置の変速状態に応じた学習制御を好適に
行うことができ、副変速装置の変速状態に関係なく自動
変速装置をさらに安定して変速制御できる。
【0167】また、請求項5の自動変速機によれば、学
習変更手段は、副変速装置の変速状態毎にそれぞれ予め
定められた基準値を記憶する記憶手段を有しており、副
変速装置の変速状態に応じた基準値と学習値とに基づき
制御パラメータを設定するので、学習未完了の状態にお
いても、副変速装置の変速状態に応じて制御を好適に開
始でき、副変速装置の変速状態に関係なく自動変速装置
をさらに安定して変速制御できる。
【0168】また、請求項6の自動変速機によれば、学
習変更手段は、副変速装置の特定の変速状態に対して学
習手段による学習値の更新を実行させ、副変速装置の他
の変速状態において学習値の更新を中止させるので、副
変速装置の変速状態のうちの特定の変速状態に対して学
習制御を行う一方、他の変速状態においては学習制御を
中止でき、特定の変速状態について実施された学習制御
内容が他の変速状態のときに誤学習されてしまうことを
防止できる。これにより、少なくとも副変速装置が特定
の変速状態にある場合にあっては自動変速装置を常に安
定して変速制御できる。
【0169】また、請求項7の自動変速機によれば、学
習変更手段は、学習値を記憶する学習値記憶手段を有す
るとともに、副変速装置が他の変速状態のときに学習値
を補正し、この補正された学習値に基づいて制御パラメ
ータを設定するので、副変速装置の変速状態のうちの特
定の変速状態に対して学習制御を行う一方、他の変速状
態においては学習値を補正して制御パラメータを好適に
設定できる。これにより、他の変速状態においては学習
補正しなくても制御パラメータを適切に設定でき、安価
構成でありながら自動変速装置を常に安定して変速制御
できる。
【0170】また、請求項8の自動変速機によれば、学
習変更手段は、副変速装置が特定の変速状態のときの適
合した制御パラメータの値と他の変速状態のときの適合
した制御パラメータの値との差に基づいて学習値を補正
するので、他の変速状態にあっては学習制御しなくても
制御パラメータを極めて適切に設定でき、安価構成であ
りながら自動変速装置を常に安定して変速制御できる。
【0171】また、請求項9の自動変速機によれば、副
変速装置は高速変速状態と低速変速状態の2つの変速状
態を有し、特定の変速状態は高速変速状態であり、他の
変速状態は低速変速状態であるので、副変速装置が高速
変速状態であるときにおいて学習補正を実施でき、使用
頻度の低い低速変速状態のときにおいては高速変速状態
での学習内容を好適に反映させることができる。
【0172】また、請求項10の自動変速機によれば、
自動変速装置は、少なくともエンジンの出力回転を変速
して車輪に伝達する走行レンジとエンジンの出力回転の
車輪への伝達を遮断する中立レンジとを切換自在に有し
ており、学習変更手段は、自動変速装置が中立レンジと
走行レンジとの間で切換操作されているときには、副変
速装置が他の変速状態であっても特定の変速状態の場合
と同様の学習値の更新を許容するので、自動変速装置が
走行レンジと中立レンジ間で切換操作されている場合に
は、副変速装置が他の変速状態であっても特定の変速状
態の場合と同様に学習補正を好適に実施でき、走行レン
ジと中立レンジ間での学習内容を高精度に維持できる。
【0173】また、請求項11の自動変速機によれば、
制御パラメータは、第一摩擦係合要素から解放する油圧
の油圧解放開始時期及び第二摩擦係合要素へ供給する油
圧の初期油圧供給時間、供給油圧のうちの少なくとも一
つから構成されるので、自動変速装置の変速制御をこれ
らのパラメータに基づいて容易且つ良好に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る自動変速機が適用されるパワープ
ラントの概略構成図である。
【図2】ダンパクラッチの制御領域を示したマップであ
る。
【図3】図1中の変速装置本体内、副変速装置内及びト
ランスファギヤボックス内のギヤトレーンの概略構成図
である。
【図4】図3中の変速装置本体内のギヤトレーンの摩擦
係合要素の油圧制御回路の概略構成図である。
【図5】図3中の変速装置本体内のギヤトレーンの摩擦
係合要素であるクラッチまたはブレーキを示す断面図で
ある。
【図6】図1中のECU(電子制御ユニット)が実行す
るアップシフト制御ルーチンを示すフローチャートであ
る。
【図7】図6に示す解放側制御のサブルーチンを示すフ
ローチャートである。
【図8】図7に示す再結合制御のサブルーチンを示すフ
ローチャートである。
【図9】図6に示す結合側制御のサブルーチンを示すフ
ローチャートの一部である。
【図10】図9のフローチャートに続く、結合側制御の
サブルーチンを示すフローチャートの残部である。
【図11】図9に示すタービントルクTT演算のサブル
ーチンを示すフローチャートである。
【図12】図9に示すイナーシャトルクTI演算のサブ
ルーチンを示すフローチャートである。
【図13】図6に示す学習制御のサブルーチンを示すフ
ローチャートである。
【図14】図13に示すガタ詰め時間tF学習のサブル
ーチンを示すフローチャートである。
【図15】図14のフローチャートに続く、ガタ詰め時
間tF学習のサブルーチンを示すフローチャートの残部
である。
【図16】図13に示す油圧解放時間tR学習のサブル
ーチンを示すフローチャートである。
【図17】図13に示すデューティ率学習値DAL学習の
サブルーチンを示すフローチャートである。
【図18】タービン回転速度NT、解放側ソレノイド弁
のデューティ率DR、結合側ソレノイド弁のデューティ
率DC及び解放側と結合側のそれぞれの摩擦係合要素に
供給される油圧の時間的変化を示す図である。
【図19】図18中のY部を示す詳細図である。
【図20】図1及び図3に示すダンパクラッチが非直結
の状態を示すトルクコンバータの模式図である。
【図21】図1及び図3に示すダンパクラッチが直結さ
れた状態を示すトルクコンバータの模式図である。
【符号の説明】
1 エンジン 2 自動変速装置 3 トルクコンバータ 4 変速装置本体 5 油圧コントローラ 6 ECU(電子制御ユニット) 8 車速センサ 10 変速機構 15 第1クラッチ 17 第2クラッチ(第二摩擦係合要素) 19 第3クラッチ 22 第1ブレーキ 23 第2ブレーキ(第一摩擦係合要素) 35 ダンパクラッチ 80 副変速装置 82 スプラインギヤ 83 ハブ 90 スプラインギヤ 91 スリーブ 95 切換レバー 96 副変速段検出センサ(変速状態検出手段) 100 トランスファギヤボックス

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 車両のエンジンに連結され、歯車変速機
    構の第一摩擦係合要素への油圧を解放してその係合を解
    除する一方、第二摩擦係合要素に油圧を供給してこれを
    係合させることにより第一変速段から第二変速段への変
    速を達成可能な自動変速装置と、 前記第一及び第二摩擦係合要素に供給する油圧を制御す
    る油圧制御手段と、 前記自動変速装置に直列に設けられ、前記自動変速装置
    と協働して前記エンジンの出力回転を変速し車輪に伝達
    する副変速装置と、 前記副変速装置の変速状態を検出する変速状態検出手段
    とを備え、 前記油圧制御手段は、前記副変速装置の変速状態に応じ
    て前記第一及び第二摩擦係合要素のうちの少なくとも一
    方への油圧の制御態様を変更する油圧制御変更手段を含
    んでなることを特徴とする自動変速機。
  2. 【請求項2】 前記油圧制御手段は少なくとも一つの制
    御パラメータを用いて油圧を制御するものであり、 前記油圧制御変更手段は、前記副変速装置の変速状態に
    応じ前記制御パラメータのうちの少なくともいずれか一
    つの値を変更することを特徴とする、請求項1記載の自
    動変速機。
  3. 【請求項3】 車両のエンジンに連結され、歯車変速機
    構の第一摩擦係合要素への油圧を解放してその係合を解
    除する一方、第二摩擦係合要素に油圧を供給してこれを
    係合させることにより第一変速段から第二変速段への変
    速を達成可能な自動変速装置と、 前記第一及び第二摩擦係合要素に供給する油圧を少なく
    とも一つの制御パラメータを用いて制御する油圧制御手
    段と、 前記自動変速装置に直列に設けられ、前記自動変速装置
    と協働して前記エンジンの出力回転を変速し車輪に伝達
    する副変速装置と、 前記副変速装置の変速状態を検出する変速状態検出手段
    とを備え、 前記油圧制御手段は、変速時の前記第一及び第二摩擦係
    合要素への油圧の供給状態に対応して変化する出力パラ
    メータが目標値に近づくように前記制御パラメータの学
    習値を求める学習手段と、 前記副変速装置の変速状態に応じて前記学習値に基づく
    前記制御パラメータの設定態様を変更する学習変更手段
    とを含んでなることを特徴とする自動変速機。
  4. 【請求項4】 前記学習変更手段は、前記副変速装置の
    変速状態毎にそれぞれ前記学習値を記憶する記憶手段を
    有しており、前記副変速装置の変速状態に応じた前記学
    習値を用いて前記制御パラメータを設定することを特徴
    とする、請求項3記載の自動変速機。
  5. 【請求項5】 前記学習変更手段は、前記副変速装置の
    変速状態毎にそれぞれ予め定められた基準値を記憶する
    記憶手段を有しており、前記副変速装置の変速状態に応
    じた前記基準値と前記学習値とに基づき前記制御パラメ
    ータを設定することを特徴とする、請求項4記載の自動
    変速機。
  6. 【請求項6】 前記学習変更手段は、前記副変速装置の
    特定の変速状態に対して前記学習手段による学習値の更
    新を実行させ、前記副変速装置の他の変速状態において
    前記学習値の更新を中止させることを特徴とする、請求
    項3記載の自動変速機。
  7. 【請求項7】 前記学習変更手段は、前記学習値を記憶
    する学習値記憶手段を有するとともに、前記副変速装置
    が他の変速状態のときに前記学習値を補正し、この補正
    された学習値に基づいて前記制御パラメータを設定する
    ことを特徴とする、請求項6記載の自動変速機。
  8. 【請求項8】 前記学習変更手段は、前記副変速装置が
    特定の変速状態のときの適合した制御パラメータの値と
    他の変速状態のときの適合した制御パラメータの値との
    差に基づいて前記学習値を補正することを特徴とする、
    請求項7記載の自動変速機。
  9. 【請求項9】 前記副変速装置は高速変速状態と低速変
    速状態の2つの変速状態を有し、前記特定の変速状態は
    高速変速状態であり、前記他の変速状態は低速変速状態
    であることを特徴とする、請求項6乃至8のいずれか記
    載の自動変速機。
  10. 【請求項10】 前記自動変速装置は、少なくとも前記
    エンジンの出力回転を変速して車輪に伝達する走行レン
    ジと前記エンジンの出力回転の車輪への伝達を遮断する
    中立レンジとを切換自在に有しており、 前記学習変更手段は、前記自動変速装置が前記中立レン
    ジと前記走行レンジとの間で切換操作されているときに
    は、前記副変速装置が前記他の変速状態であっても前記
    特定の変速状態の場合と同様の学習値の更新を許容する
    ことを特徴とする、請求項6乃至9のいずれか記載の自
    動変速機。
  11. 【請求項11】 前記制御パラメータは、前記第一摩擦
    係合要素から解放する油圧の油圧解放開始時期及び前記
    第二摩擦係合要素へ供給する油圧の初期油圧供給時間、
    供給油圧のうちの少なくとも一つから構成されることを
    特徴とする、請求項2乃至10のいずれか記載の自動変
    速機。
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