JPH09147854A - ニッケル正極板 - Google Patents

ニッケル正極板

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JPH09147854A
JPH09147854A JP7309074A JP30907495A JPH09147854A JP H09147854 A JPH09147854 A JP H09147854A JP 7309074 A JP7309074 A JP 7309074A JP 30907495 A JP30907495 A JP 30907495A JP H09147854 A JPH09147854 A JP H09147854A
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positive electrode
nickel
fluororesin
nickel hydroxide
electrode plate
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JP7309074A
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Hitoshi Kato
人士 加藤
Akitomo Shirakawa
亮偕 白川
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Furukawa Battery Co Ltd
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Furukawa Battery Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 活物質の相互結着性が優れ、充放電時に活物
質の脱落が抑制され、もってサイクル寿命特性が優れて
いる電池の製造を可能にするニッケル正極板とその製造
方法を提供する。 【解決手段】 水酸化ニッケル粉末を主体とする活物質
を結着剤を用いて導電性基板に担持して成るニッケル正
極板において、前記結着剤として、フッ素樹脂およびシ
ランカップリング剤の両方を用いている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ニッケル・亜鉛二
次電池,ニッケル・カドミウム二次電池,ニッケル・水
素二次電池のような密閉式アルカリ二次電池の正極に用
いられるニッケル正極板に関し、更に詳しくは、充放電
時における活物質の脱落が抑制され、もってサイクル寿
命特性が優れている電池を提供することができるニッケ
ル正極板に関する。
【0002】
【従来の技術】例えば、ニッケル・水素二次電池は、無
公害で放電容量も大きいので各種の電気・電子機器の電
源として急速に実用化されはじめている。この電池の正
極として組み込まれるニッケル極としては、従来、焼結
式ニッケル極が主流であったが、最近では、活物質の充
填密度を高めることができ、そのことによって、小型で
あっても放電容量を大きくすることができるという点で
ペースト式ニッケル極が登場しはじめている。
【0003】このペースト式ニッケル極は、活物質であ
る水酸化ニッケルの粉末と、増粘剤を溶解する増粘剤水
溶液と、必要に応じてはカーボニルニッケル粉末や一酸
化コバルト粉末のような導電材粉末との所定量を混合し
て活物質のペーストを調製し、この活物質ペーストの所
定量を、例えば3次元網状構造を有する発泡ニッケルシ
ートのような導電性基板の空隙内に充填・担持して製造
されるのが通例である。
【0004】このようにして製造されるペースト式ニッ
ケル極は、活物質の充填密度が高くなって、組み立てた
電池の放電容量を大きくすることができるという利点が
ある一方で、水酸化ニッケル粉末(活物質粉末)相互間
における結着性が良好とはいえず、次のような問題を引
き起こしやすい。すなわち、電池の充放電サイクルが反
復される過程で、導電性基板に担持されている水酸化ニ
ッケルには不可逆的な反応生成物であるγ−オキシ水酸
化ニッケルが蓄積され、そのことによって膨張・変形す
る。とくに、急速充電時には、上記傾向が顕著に発現す
る。
【0005】そのため、水酸化ニッケルは上記した膨張
・変形時のストレスを受けて導電性基板から脱落するこ
とがある。このような事態が発生すると、ニッケル極の
容量低下が引き起こされるとともに、脱落量が多くなっ
た場合にはそれが正極板と負極板との間を短絡し、電池
のサイクル寿命を短くしてしまう。このような問題に対
しては、水酸化ニッケル粉末を主体とする活物質ペース
トを例えば発泡メタルに充填し、乾燥後加圧し、更につ
づけてフッ素樹脂を含む懸濁液(例えばポリテトラフル
オロエチレンのディスパージョン)に浸漬したのち乾燥
するニッケル正極の製造方法が提案されている(特開昭
60−131765号公報参照)。この方法の場合に
は、前記懸濁液の一部は乾燥後の活物質ペーストの空隙
に浸透し、水酸化ニッケルの粉末をある程度互いに結着
することになる。
【0006】また、特開平4−248265号公報で
は、球状の水酸化ニッケル粉末と増粘剤と水とポリテト
ラフルオロエチレン(PTFE)のディスパージョンと
を混練して活物質ペーストとし、これを導電性基板に充
填してニッケル極を製造する方法が開示されている。こ
の先行技術の場合、ポリテトラフルオロエチレンによっ
て水酸化ニッケル粉末の相互結着性が確保される。しか
しながら、結着剤として用いている上記ポリテトラフル
オロエチレンは、剪断力を受けると繊維化するという性
質を備えている。
【0007】上記した先行技術に基づいて製造したニッ
ケル正極板は、いずれも、充放電サイクルが反復される
過程で、導電性基板に担持されていた水酸化ニッケル粉
末の脱落が進行して、容量低下が引き起こされるととも
に、比較的早期の段階で電池寿命が尽きるという問題が
ある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記した先
行技術における問題を解決し、水酸化ニッケル粉末の相
互間、および水酸化ニッケル粉末と導電性基板との間の
結着性が優れていて長期間の充放電時にも水酸化ニッケ
ル粉末の脱落が抑制され、同時に容量低下も少なく、ま
た製造時には活物質ペーストの導電性基板への充填性も
良好で、結着剤の使用量は少なく容量増を実現すること
ができるニッケル正極板の提供を目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記した目的を達成する
ために、本発明においては、水酸化ニッケル粉末を主体
とする活物質を結着剤を用いて導電性基板に担持して成
るニッケル正極板において、前記結着剤として、フッ素
樹脂とシランカップリング剤の両方を用いることを特徴
とするニッケル正極板が提供される。
【0010】
【発明の実施の形態】本発明のニッケル正極板は、導電
性基板に水酸化ニッケル粉末を主体とする活物質層が担
持されている構造であることは従来のニッケル正極板と
変わらない。ここで、導電性基板は集電体として機能
し、網状,繊維状,フェルト状,スポンジ状の3次元網
状構造体のように連通孔が複雑に形成されているもの
や、パンチングメタルシートのように多数の開口が形成
されている2次元多孔シートなどを用いることができ
る。これらのうち、3次元網状構造体であるものは、空
隙率が大きく、後述する活物質ペーストの充填密度を高
くすることができるので有効である。なお、これらの導
電性基板は、少なくともその表面がニッケルで構成され
ていることが好ましい。
【0011】上記した活物質層は、水酸化ニッケル粉末
を主体として構成される。具体的には、水酸化ニッケル
粉末,増粘剤,フッ素樹脂およびシランカップリング
剤、更に必要に応じては導電材粉末をもって構成され
る。水酸化ニッケル粉末としては、球形形状のものが好
ましい。その理由は、フッ素樹脂粉末として例えばPT
FEを一緒に混合したときに、特開平4−248265
号公報に記載されているように、PTFEに作用する剪
断力が小さくなってその繊維化は抑制された状態で活物
質ペーストが調製されるので、当該活物質ペーストの導
電性基板への充填性が損なわれなくなるからである。ま
た、亜鉛を固溶する水酸化ニッケル粉末は、粉末表面に
露出する前記亜鉛がフッ素樹脂粉末とよくなじむので、
水酸化ニッケル粉末の相互結着性が向上して好適であ
る。
【0012】このようなことから、本発明では、活物質
として、亜鉛が固溶され、形状は球形の水酸化ニッケル
粉末がとくに好ましいことになる。増粘剤は、後述する
製造方法において、活物質ペーストの調製時に配合され
る成分であって、活物質ペーストに適正な粘性を付与す
ることにより、導電性基板への当該活物質ペーストの充
填または塗着を円滑に進行させる。
【0013】増粘剤としては、従来から活物質ペースト
の調製に用いられていたものであれば何であってもよ
く、例えば、カルボキシメチルセルロース,メチルセル
ロース,ヒドロキシエチルセルロース,エチルセルロー
スのようなセルロース系高分子や、エチレングリコー
ル,ポリエチレングリコール,プロピレングリコールの
ようなグルコール類;ポリビニルアルコール,ポリアク
リル酸ソーダのような合成高分子をあげることができ
る。
【0014】この増粘剤は、予め水に所定量を溶解して
所定濃度の増粘剤水溶液として使用することが好まし
い。また、フッ素樹脂は水酸化ニッケル粉末を結着する
ための成分であり、前記したPTFE粉末の外に、例え
ば、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレ
ン共重合体の粉末,パーフルオロアルキルビニルエーテ
ル共重合体の粉末などのポリテトラフルオロエチレン誘
導体の粉末や、三フッ化塩化エチレン樹脂の粉末,フッ
化ビニル樹脂の粉末などをあげることができる。
【0015】これらのフッ素樹脂は、乾燥粉末の状態で
用いてもよいが、所定濃度のディスパージョンとして用
いた方が水酸化ニッケル粉末との混練状態が均一化しや
すいので好適である。シランカップリング剤は、水酸化
ニッケル粉末とフッ素樹脂との間を媒介的に結合するこ
とにより、フッ素樹脂による水酸化ニッケル粉末の相互
結着性を高めるための成分である。
【0016】シランカップリング剤は、次式:
【0017】
【化1】
【0018】(Xは有機官能基,Rはアルキル基を表
す)で示される構造単位を有する。有機官能基Xとして
は、例えば、エポキシ基,アミノ基,ビニル基,メルカ
プト基,塩素基などを代表例とすることができ、アルキ
ル基Rとしては、例えば、メチル基,エチル基,イソプ
ロピル基,シクロヘキシル基,フェニル基などを代表例
とする。
【0019】このシランカップリング剤は、一方の端部
に位置する官能基Xが有機物質と反応して当該有機物質
と結合し、他方の端部に位置する−OR(アルコキシド
基)は水の存在下で加水分解する。したがって、水酸化
ニッケル粉末とフッ素樹脂との系に上記シランカップリ
ング剤を添加すると、官能基Xは有機物質であるフッ素
樹脂と結合し、アルコキシド基(−OR)は加水分解し
て無機物質である水酸化ニッケル粉末と結合し、もっ
て、シランカップリング剤は水酸化ニッケル粉末とフッ
素樹脂とを媒介的に結合する。
【0020】このようなシランカップリング剤として
は、例えば、γ−クロルプロピルトリメトキシシラン,
ビニルトリメトキシシラン,β−(3,4−エポキシシ
クロヘキシル)トリメトキシシラン,γ−グリシドキシ
プロピルトリメトキシシラン,γ−メルカプトプロピル
トリメトキシシラン,N−β−(アミノエチル)−γ−
アミノプロピルトリメトキシシラン,γ−アミノプロピ
ルトリメトキシシランなどをあげることができる。
【0021】これらのうち、官能基Xがエポキシ基であ
るものは、アルカリ水溶液,例えば電池の電解液として
多用されるKOH水溶液に対して難溶解性であるため分
解生成物を生ずることがなく、また充電時に発生する酸
素ガスに対しても耐酸化性が良好で、化学的には非常に
安定であり、好ましい。したがって、このシランカップ
リング剤を用いて水酸化ニッケル粉末とフッ素樹脂とを
媒介的に結合した活物質層は、電池反応にとって有害な
分解生成物を生ずることなく、長期に亘ってその結合状
態が保持される。すなわち、水酸化ニッケル粉末の相互
結着性は弱まらないことになる。
【0022】上記した4成分の外に、必要に応じて配合
される導電材粉末としては、例えば、カーボニルニッケ
ル粉末,ニッケル粉末,カーボンブラック,黒鉛粉末な
どをあげることができる。このニッケル正極板は次のよ
うにして製造される。それを、まず、第1の製造方法に
ついて説明する。
【0023】第1の製造方法では、水酸化ニッケル粉末
と水と増粘剤とフッ素樹脂とシランカップリング剤と必
要に応じては導電材料とを混練して活物質ペーストが調
製される(混練工程)。この混練工程で用いる水として
は、電池反応にとって有害となる成分を含まないものが
用いられ、例えば、蒸留水,脱イオン水などをあげるこ
とができる。
【0024】この混練工程では、調製された活物質ペー
ストにおいて、水酸化ニッケル粉末とフッ素樹脂とがシ
ランカップリング剤によって媒介的に結合されることに
より、結果として水酸化ニッケル粉末が相互に結着され
る。このとき、シランカップリング剤の働きにより、フ
ッ素樹脂は有効に水酸化ニッケル粉末の表面と結合する
ので、フッ素樹脂単独で同等の結着性を実現する場合に
比べて、フッ素樹脂の必要量は少なくてよいことにな
る。すなわち、シランカップリング剤を用いることによ
り、水酸化ニッケル粉末の相互結着に要するフッ素樹脂
の量を減少させることができ、そのため、水酸化ニッケ
ル粉末の表面がフッ素樹脂によって被覆されてしまうこ
とに基づく容量低下という問題は起こりづらくなる。
【0025】混練工程では、上記した成分を混練して活
物質ペーストを調製するが、その場合、調製された活物
質ペーストが適正な粘性を備え、またフッ素樹脂とシラ
ンカップリング剤によって水酸化ニッケル粉末の表面が
過度に被覆されないように留意して各成分の混合割合が
調整される。例えば、水の割合が多くなりすぎると、活
物質である水酸化ニッケル粉末の相対的な量が減少する
とともに、得られた活物質ペーストは大きな流動性を示
し、次工程で導電性基板に充填したときに流失すること
があり、結果として活物質の充填密度は小さくなってニ
ッケル極としての容量低下を招く。また、水の割合が少
なくなりすぎると、活物質ペーストは可塑性を失うので
導電性基板への充填性や塗着性は悪くなり、この場合
も、適正量の水酸化ニッケルを担持させることが困難に
なる。
【0026】そしてまた、例えば、フッ素樹脂とシラン
カップリング剤の割合が多くなりすぎると、水酸化ニッ
ケル粉末の相互結着性を高めることはできるものの、他
方では充填性や塗着性の低下を招くとともに、水酸化ニ
ッケル粉末の表面の多くがフッ素樹脂とカップリング剤
によって被覆された状態になるためニッケル極としての
容量低下が引き起こされ、逆に少なくなりすぎると、水
酸化ニッケル粉末の相互結着性が悪くなってくる。
【0027】このようなことから、混練工程におけるフ
ッ素樹脂とシランカップリング剤の使用量は、水酸化ニ
ッケル粉末の使用量との関係で選定されるが、概ね、水
酸化ニッケル粉末100重量部に対し、0.01〜5重量
部であることが好ましく、とくに0.01〜1重量部であ
ることが好ましい。また、フッ素樹脂とシランカップリ
ング剤とを使用する場合、シランカップリング剤の割合
が過少であると前記した媒介的な結合効果は減退し、逆
に過多であっても前記した媒介的な結合効果にとって無
駄であるばかりではなく、水酸化ニッケル粉末の表面活
性を阻害することになるので、フッ素樹脂とシランカッ
プリング剤との割合は、重量比で、前者1に対し0.05
以上であることが好ましい。
【0028】以上のことを勘案すると、各成分の混練割
合は、水酸化ニッケル粉末100重量部に対し、増粘剤
0.1〜1重量部,水30〜70重量部,フッ素樹脂0.5
〜3重量部,シランカップリング剤0.1〜3重量部,導
電材粉末5〜30重量部に設定することが好ましい。な
お、フッ素樹脂としてそのディスパージョンを使用する
場合、水酸化ニッケル粉末100重量部に対し、フッ素
樹脂の割合が前記した範囲となるように、ディスパージ
ョンにおけるフッ素樹脂の濃度とそのディスパージョン
の使用量が選定される。また、水酸化ニッケル粉末とし
て球形形状のものを用いた場合には、フッ素樹脂の割合
が0.001〜2重量%となるようにディスパージョンの
濃度と使用量を選定することが好ましい。
【0029】なお、これら粉末成分の粒径は、次工程で
用いる導電性基板の種類やそれへの塗着・充填性との関
係で適宜に選定されるが、粒径が大きすぎると、導電性
基板への塗着・充填性が低下し、また粒径が小さすぎる
と、混練工程でそれぞれの粉末が均一に分散した状態の
活物質ペーストを調製することに難点が生ずるようにな
るので、水酸化ニッケル粉末,導電材粉末,フッ素樹脂
粉末は、その粒度分布が1〜200μmの範囲にあるも
のを用いることが好ましい。
【0030】混練工程で調製された活物質ペーストは、
次に、担持工程で導電性基板に担持される。導電性基板
が3次元網状構造体である場合には、活物質ペーストは
その空隙部に充填されてそこに担持されるとともに、表
面に層状をなして担持される。また導電性基板が2次元
多孔シートである場合には、活物質ペーストは当該シー
トの開口で係止された状態で表面に塗着され、そこに層
状に担持される。
【0031】充填または塗着された活物質ペーストは湿
潤しているので、この工程では、充填または塗着ののち
に乾燥処理が行われ、更に続けて例えばロール圧延を行
って所定厚みの正極板に整形される。なお、用いたフッ
素樹脂がPTFE粉末である場合、活物質ペーストの充
填または塗着に続けて行う圧延・整形処理の過程で、P
TFE粉末は繊維化して互いに絡み合うようになるの
で、水酸化ニッケル粉末の相互結着性は高まりその脱落
抑制効果が向上する。
【0032】つぎに、第2の製造方法について説明す
る。この第2の製造方法の混練工程では、前記した混練
工程と異なり、まず、水酸化ニッケル粉末と水と増粘剤
と、必要に応じては導電材粉末とが混練される。すなわ
ち、フッ素樹脂とシランカップリング材は同時に混練さ
れない。したがって、得られた活物質ペーストにおける
水酸化ニッケル粉末の相互結着性は、第1の製造方法の
場合に比べて弱く、単に増粘剤で軽度に結着された状態
にあるにすぎない。
【0033】ついで、この活物質ペーストを、担持工程
において、導電性基板に充填または塗着して担持させ
る。この場合にも、第1の製造工程における担持工程と
同じように、乾燥したのち圧延して所定の厚みに整形さ
れる。この担持工程が終了した時点では、活物質層に結
着剤であるフッ素樹脂が含まれていないので、水酸化ニ
ッケル粉末は相互に強い結着力をもって結合していない
状態にある。
【0034】したがって、第2の製造方法では、前記し
た担持工程を終了したのち、得られた板材を塗着工程に
移送し、そこでその表面に更にフッ素樹脂とシランカッ
プリング剤が塗着される。具体的には、フッ素樹脂のデ
ィスパージョンにシランカップリング剤を添加した液に
担持工程終了後の板材を浸漬する。その場合、用いるデ
ィスパージョンに分散するフッ素樹脂とシランカップリ
ング剤の種類,量などは、第1の製造方法の場合と同様
の基準で選定することにより、水酸化ニッケル粉末の相
互結着性を適正化すると同時に、水酸化ニッケル粉末の
表面活性を阻害しないようにする。
【0035】この塗着工程において、ディスパージョン
とシランカップリング剤の一部は、導電性基板に塗着ま
たは充填されている活物質ペーストの空隙に滲透してい
き、そこでフッ素樹脂と水酸化ニッケル粉末とがシラン
カップリング剤によって媒介的に結合される。そして、
大部分のディスパージョンとシランカップリング剤は、
活物質ペーストの表面に付着し、そのことによって水酸
化ニッケル粉末の相互結着性を高める。
【0036】なお、この第2の製造方法では、担持工程
において乾燥処理が行われていることにより、活物質ペ
ースト中の水などが除去されて乾燥ペーストには多くの
空隙が生成するようになるため、前記した塗着工程でそ
の空隙へのディスパージョンとシランカップリング剤の
滲透が円滑に進行して,水酸化ニッケル粉末に対する相
互結着性が一層有効に発現することになる。
【0037】本発明のニッケル正極板は、以上説明した
第1の製造方法,第2の製造方法のいずれによっても製
造することができる。そして、第1の製造方法の場合、
混練工程におけるフッ素樹脂の使用量を少なくして活物
質ペーストを調製し、それを担持工程に移送したのち、
得られた板材に対し、その表面に、フッ素樹脂を充填ま
たは塗着してもよい。このとき、最後の工程で充填また
は塗着されたフッ素樹脂は、既に活物質層に存在してい
るシランカップリング剤が新たに充填または塗着された
フッ素樹脂と水酸化ニッケル粉末との間を媒介的に結合
することができる。
【0038】なお、前記した塗着工程に続けて、乾燥処
理を行い、更に圧延処理を行うと、表面に塗着している
フッ素樹脂がPTFEから成る場合には、それが繊維化
して、内部で生じた繊維と表層部で生じた繊維とが互い
に絡みやすくなり、なお一層の水酸化ニッケル粉末の相
互結着性を高めて脱落防止に資するので非常に有効であ
る。
【0039】
【実施例】
実施例1〜6,比較例1,2 (1) ニッケル正極板の製造 1〜200μmの粒度分布を有し、亜鉛が7重量%固溶
している球状の水酸化ニッケル粉末100重量部に対
し、0.5〜10μmの粒度分布を有するカーボニルニッ
ケル粉末10重量部、0.5〜30μmの粒度分布を有す
る一酸化コバルト粉末5重量部,濃度2重量%のカルボ
キシメチルセルロース水溶液50重量部(カルボキシメ
チルセルロース換算量1重量部),濃度60重量%のP
TFEディスパージョン1重量部(PTFE粉末換算0.
6重量部,PTFE粉末の粒径0.1〜10μm)、およ
びγ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.1重
量部を混練して活物質ペーストを調製した。したがっ
て、この活物質ペーストにおける水の混合割合は、水酸
化ニッケル粉末100重量部に対し49重量部になって
いる。ただし、混練は、カルボシキメチルセルロースと
PTFEディスパージョンとを混練したのちに、そこに
他の成分を添加して混合した。
【0040】この活物質ペーストを、空隙率95%のス
ポンジ状ニッケル板に充填し、温度150℃で20分間
乾燥したのち4ton/cm2 の圧力でロール圧延した。つい
で、得られた板材を、混練工程で用いたものと同じディ
スパージョン(PTFE粉末の換算量は、水酸化ニッケ
ル粉末100重量部に対し1重量部である)に浸漬した
のち取り出し、温度120℃で20分間乾燥し、更に6
ton/cm2 の圧力でロール圧延して厚み0.7mmのニッケル
正極板にした。これを実施例1の正極板という。
【0041】水酸化ニッケル粉末が亜鉛を3重量%固溶
するものであったこと、γ−グリシドキシプロピルトリ
メトキシシランの量が0.3重量部であったこと、混練工
程で用いたPTFEディスパージョンの量が濃度60重
量%のPTFEディスパージョン0.5重量部(PTFE
粉末換算にして0.3重量部)であったこと、塗着工程で
用いたPTFEディスパージョンの量が濃度60重量%
のPTFEディスパージョン2.5重量部(PTFE粉末
換算にして1.5重量部)であったことを除いては、実施
例1の正極板と同じようにして正極板を製造した。これ
を実施例2の正極板という。
【0042】水酸化ニッケル粉末が亜鉛を10重量%固
溶するものであったこと、塗着工程で用いたPTFEデ
ィスパージョンの量が濃度60重量%のPTFEディス
パージョン2.5重量部(PTFE粉末換算にして1.5重
量部)であったことを除いては実施例1の正極板と同じ
ようにして正極板を製造した。これを実施例3の正極板
という。
【0043】水酸化ニッケル粉末が亜鉛を5重量%固溶
するものであったこと、混練工程で用いたPTFEディ
スパージョンの量が濃度60重量%のPTFEディスパ
ージョン0.2重量部(PTFE粉末換算にして0.12重
量部)であったことを除いては、実施例1の正極板と同
じようにして正極板を製造した。これを実施例4の正極
板という。
【0044】水酸化ニッケル粉末が亜鉛を5重量%固溶
するものであったこと、混練工程ではPTFEディスパ
ージョンとシランカップリング剤を用いなかったこと、
塗着工程で、濃度60重量%のPTFEディスパージョ
ン1重量部(PTFE粉末換算にして0.6重量部)とγ
−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.1重量部
の混合物に浸漬したことを除いては、実施例1の正極板
と同じようにして正極板を製造した。これを実施例5の
正極板とする。
【0045】塗着工程でPTFEディスパージョンとシ
ランカップリング剤を用いたことを除いては実施例1の
正極板と同じようにして正極板を製造した。これを実施
例6の正極板とした。水酸化ニッケル粉末として、不定
形で亜鉛を固溶しないものを用いたこと、シランカップ
リング剤を用いなかったこと、混練工程では濃度60重
量%のPTFEディスパージョンの5重量部(PTFE
粉末換算にして3重量部)で混練したこと、塗着工程は
行わなかったことを除いては、実施例1の正極板と同じ
ようにして正極板を製造した。これを比較例1の正極板
とする。
【0046】水酸化ニッケル粉末として、不定形で亜鉛
を固溶しないものを用いたこと、混練工程ではPTFE
ディスパージョンとシランカップリング剤のいずれも用
いなかったこと、塗着工程は、濃度60重量%のPTF
Eディスパージョンのみを2.5重量部(PTFE粉末換
算にして1.5重量部)用いて行ったことを除いては、実
施例1の正極板と同じようにして正極板を製造した。こ
れを比較例2の正極板とする。
【0047】(2) 電池の組み立て 組成:MmNi3.2 Co1.0 Al0.2 Mn0.4 (Mmは
ミッシュメタル)の水素吸蔵合金を粉砕して平均粒径6
5μmの粉末とし、この粉末100重量部に対してニッ
ケル粉末0.15重量部、ポリフッ化ビニリデン粉末0.0
3重量部、濃度1%のカルボキシメチルセルロース水溶
液0.2重量部を混合してペーストを調製した。
【0048】ついで、このペーストを、パンチングニッ
ケルシート(開口径1.5mm,開口率38%,厚み0.07
mm)の両面に圧着したのち温度80℃で60分間乾燥
し、更に3ton/cm2 の圧力でロール圧延して厚み0.35
mmの負極板にした。一方、組み込むセパレータを次のよ
うにして製造した。まず、FT−310(商品名、日本
バイリーン(株)製のポリオレフィン系の不織布)を水
洗して表面に付着する非イオン界面活性剤を除去したの
ち乾燥し、ついで、その不織布を濃度95%の熱濃硫酸
(温度100℃)に30分間浸漬して表面にスルホン化
処理を行った。処理後の不織布を流水で充分に洗浄し、
温度80℃で1時間乾燥したのち、濃度1%の水酸化ナ
トリウム水溶液に5分間浸漬し、更に水洗した。
【0049】また、FT−773(商品名、日本バイリ
ーン(株)製のポリアミド系樹脂の不織布)を水洗し、
この不織布の両面に、前記FT−310の処理品を重ね
合わせ、全体に3kg/m2 の圧力を加えながら温度80℃
で1時間の熱圧処理を行って一体化し、それをセパレー
タとした。前記した各ニッケル正極板と負極板との間
に、前記セパレータを介在させて極板群とし、これをニ
ッケルめっきが施されているステンレス鋼製の缶に収容
し、ここに、0.6NのNaOHと1NのLiOHと7N
のKOHとから成る電解液を注液して封口し、角形で,
定格容量900mAh のニッケル・水素二次電池を組み立
てた。
【0050】(3) 電池特性の調査 組み立てた電池につき、温度0℃において、900mAで
1.5時間の充電,900mAで電池電圧が0Vの完全放電
状態になるまでの放電,休止0.25時間を1サイクルと
するサイクル寿命試験を行い、各サイクル毎に、試験前
の容量に対する放電容量を測定し、その値を試験前の容
量で除算して容量保持率(%)を算出した。その結果を
図1に示した。
【0051】また、上記サイクル寿命試験において、1
000サイクル終了時に電池を分解して正極板を取り出
し、その重量を測定して電池に組み込む前の重量から活
物質の脱落量を求めた。各正極板につき、比較例1の正
極板における脱落量を1としたときの相対値として表1
に示した。なお、表1には、充放電1000サイクル終
了時における各電池の容量保持率も併記した。
【0052】
【表1】
【0053】図1,表1から明らかなように、各実施例
の正極板は、いずれも1000サイクルの充放電試験後
にあっても活物質の脱落は極めて少なく、そのため、容
量保持率も90%以上を確保し、優れたサイクル寿命特
性を示している。これに反し、比較例の正極板の場合に
は、例えば比較例1の正極板のように、用いたPTFE
の量は多いにもかかわらず、活物質の脱落量は実施例の
正極板に比べて17〜48倍と多く、サイクル寿命特性
も早期の段階から低下している。
【0054】これは、実施例の正極板の場合、シランカ
ップリング剤を併用していることがもたらす効果であ
る。
【0055】
【発明の効果】以上の説明で明らかなように、本発明方
法によれば、活物質ペーストの導電性基板への充填性を
損なうことなく、活物質の相互結着性が優れているニッ
ケル正極板を製造することができる。そのため、そのニ
ッケル正極板を組み込んだ電池は、急速充填を行った場
合であっても、活物質の脱落は有効に抑止され、長期に
亘って高い放電保持率を示し、そのサイクル寿命特性が
優れたものになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】電池のサイクル寿命特性を示すグラフである。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 水酸化ニッケル粉末を主体とする活物質
    を、結着剤を用いて導電性基板に担持して成るニッケル
    正極板において、前記結着剤として、フッ素樹脂とシラ
    ンカップリング剤の両方を用いたことを特徴とするニッ
    ケル正極板。
  2. 【請求項2】 前記シランカップリング剤がエポキシ系
    シランカップリング剤である請求項1のニッケル正極
    板。
JP7309074A 1995-11-28 1995-11-28 ニッケル正極板 Pending JPH09147854A (ja)

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JP7309074A JPH09147854A (ja) 1995-11-28 1995-11-28 ニッケル正極板
PCT/JP1996/003490 WO1997020356A1 (fr) 1995-11-28 1996-11-28 Electrode pour cellule
EP96939322A EP0865090A4 (en) 1995-11-28 1996-11-28 ELECTRODE FOR CELL

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH11354104A (ja) * 1998-04-09 1999-12-24 Denso Corp 非水電解液二次電池及び電極の製造方法

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH11354104A (ja) * 1998-04-09 1999-12-24 Denso Corp 非水電解液二次電池及び電極の製造方法

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