JPH09143661A - 亜鉛系メッキ鋼板 - Google Patents

亜鉛系メッキ鋼板

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JPH09143661A
JPH09143661A JP30407395A JP30407395A JPH09143661A JP H09143661 A JPH09143661 A JP H09143661A JP 30407395 A JP30407395 A JP 30407395A JP 30407395 A JP30407395 A JP 30407395A JP H09143661 A JPH09143661 A JP H09143661A
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steel sheet
zinc
film
plated steel
alloy film
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JP30407395A
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English (en)
Inventor
Takayuki Urakawa
隆之 浦川
Toru Imokawa
透 妹川
Michitaka Sakurai
理孝 櫻井
Junichi Inagaki
淳一 稲垣
Masaaki Yamashita
正明 山下
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JFE Engineering Corp
Original Assignee
NKK Corp
Nippon Kokan Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 プレス金型との摺動抵抗が小さく、且つ、硬
質で融点が高く、しかも良好な接着性を示す皮膜を亜鉛
系メッキ鋼板のメッキ層の表面に形成させる。 【解決手段】 亜鉛系メッキ鋼板の少なくとも一方の面
のメッキ層表面に、下記Fe−Ni合金皮膜を形成す
る。皮膜の付着量は、金属元素の合計量換算で、10〜
1500mg/m2 の範囲内にあり、皮膜中のFe含有
量(wt.%)とNi含有量(wt.%)との和に対す
るFe含有量(wt.%)の比率は、0.05〜0.9
の範囲内にあること。 【効果】 プレス成形性、スポット溶接性および接着性
に優れた亜鉛系メッキ鋼板を提供することができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、加工性に優れた
亜鉛系メッキ鋼板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】この発明は、亜鉛系メッキ鋼板の改良に
関し、特に、プレス成形性に優れた亜鉛系メッキ鋼板に
関するものである。亜鉛系メッキ鋼板は種々の優れた特
徴を有するために、各種の防錆鋼板として広く使用され
ている。この亜鉛系メッキ鋼板を自動車用防錆鋼板とし
て使用するためには、耐食性、塗装適合性等のほかに、
車体製造工程において要求される性能として、プレス成
形性、スポット溶接性、接着性および化成処理性に優れ
ていることが重要である。
【0003】しかし、亜鉛系メッキ鋼板は、一般に、冷
延鋼板に比べてプレス成形性が劣るという欠点を有す
る。これは亜鉛系メッキ鋼板とプレス金型との摺動抵抗
が、冷延鋼板の場合に比較して大きいことが原因であ
り、この摺動抵抗が大きいと、ビードと亜鉛系メッキ鋼
板との摺動の激しい部分で、亜鉛系メッキ鋼板がプレス
金型に流入しにくくなり、鋼板の破断が起こりやすくな
る。
【0004】亜鉛系メッキ鋼板のプレス成形性を向上さ
せる方法としては、一般に、高粘度の潤滑油を塗布する
方法が広く用いられている。しかしこの方法では、潤滑
油の高粘性のために、次塗装工程で脱脂不良による塗装
欠陥が発生したり、また、プレス時の油切れにより、プ
レス性能が不安定になる等の問題がある。従って、亜鉛
系メッキ鋼板のプレス成形性が改善されることが強く要
請されている。
【0005】一方、亜鉛系メッキ鋼板は、スポット溶接
時に電極である銅が溶融した亜鉛と反応して脆い合金層
を形成しやすいために、銅電極の損耗が激しく、その寿
命が短く、冷延鋼板に比べて連続打点性が劣るという問
題がある。
【0006】更に、自動車車体の製造工程においては、
車体の防錆、制振等の目的で各種の接着剤が使用される
が、近年になって亜鉛系メッキ鋼板の接着性は冷延鋼板
の接着性に比較して劣ることが明らかになってきた。
【0007】上述した問題を解決する方法として、特開
昭53−60332号公報および特開平2−19048
3号公報は、亜鉛系メッキ鋼板の表面に電解処理、浸漬
処理、塗布酸化処理、または加熱処理を施すことによ
り、ZnOを主体とする酸化膜を生成させて溶接性、ま
たは加工性を向上させる技術(以下、先行技術1とい
う)を開示している。
【0008】特開平4−88196号公報は、亜鉛系メ
ッキ鋼板の表面に、リン酸ナトリウム5〜60g/lを
含むpH2〜6の水溶液中にメッキ鋼板を浸漬するか、
電解処理、また、上記水溶液を散布することにより、P
酸化物を主体とした酸化膜を形成して、プレス成形性お
よび化成処理性を向上させる技術(以下、先行技術2と
いう)を開示している。
【0009】特開平3−191093号公報は、亜鉛系
メッキ鋼板の表面に電解処理、浸漬処理、塗布処理、塗
布酸化処理または加熱処理により、Ni酸化物を生成さ
せることによりプレス成形性および化成処理性を向上さ
せる技術(以下、先行技術3という)を開示している。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述し
た先行技術には、下記問題がある。先行技術1は、上述
した各種処理により、メッキ層表面にZnOを主体とす
る酸化物を生成させる方法であるため、溶接性および加
工性は向上するが、プレス金型とメッキ鋼板との摺動抵
抗の低減効果は少なく、プレス成形性の改善効果は少な
い。また、ZnO主体の酸化膜がメッキの表面に存在す
ると、接着性が劣化するという問題を有する。
【0011】先行技術2は、P酸化物を主体とした酸化
膜を亜鉛系メッキ鋼板の表面に形成する方法であるた
め、プレス成形性および化成処理性の改善効果は大きい
が、スポット溶接性、接着性は劣化するという問題を有
する。
【0012】先行技術3は、Ni酸化物単相の皮膜を生
成させる方法であるため、プレス成形性は向上するが、
一方、接着性が低下するという問題がある。
【0013】従って、この発明の目的は、上述した問題
を解決して、プレス金型との摺動抵抗が小さく、且つ、
硬質で融点が高く、しかも良好な接着性を示す皮膜を亜
鉛系メッキ鋼板のメッキ層の表面に形成させることによ
り、プレス成形性、スポット溶接性および接着性に優れ
た亜鉛系メッキ鋼板を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上述した
問題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、亜鉛系メッキ
鋼板のメッキ層の表面に、Fe−Ni合金の適正な皮膜
を形成することにより、プレス成形性、スポット溶接性
および接着性を大幅に改善することができることを見出
した。この上層としてのFe−Ni合金皮膜の付着量
は、金属元素の合計量換算で、10〜1500mg/m
2 の範囲内になければならず、しかも、この皮膜中のF
eとNiとの和(wt.%)に対するFe(wt.%)
の比率は、0.05〜0.9の範囲内になければなら
ず、望ましくは0.1〜0.5の範囲内にあるのが更に
よいことを知見した。なお、この発明におけるFe−N
i合金を構成する成分元素は、FeおよびNiを除けば
不可避的の混入する不純物元素のみである。
【0015】従来の亜鉛系メッキ鋼板は、プレス成形性
において、冷延鋼板に比較して劣る。それは、亜鉛系メ
ッキ鋼板とプレス金型との摺動抵抗が大きいからであ
る。その原因は、高面圧下において、低融点の亜鉛と金
型とが凝着現象を起こすためであり、これを防ぐために
は、亜鉛系メッキ鋼板のメッキ層の表面に、亜鉛または
亜鉛合金メッキ層より硬質で、且つ高融点の皮膜を形成
することが有効である。この発明におけるFe−Ni合
金皮膜は、硬質且つ高融点であるから、プレス成型時に
おけるメッキ層表面とプレス金型との摺動抵抗が低下
し、亜鉛系メッキ鋼板がプレス金型へ滑り込み易くな
り、プレス成形性が向上する。
【0016】従来の亜鉛系メッキ鋼板は、スポット溶接
における連続打点性において、冷延鋼板と比較して劣
る。その原因は、溶接時に溶融した亜鉛と電極の銅とが
接触して溶融し、脆い合金層を生成するために、電極の
劣化が激しくなることにある。従って、亜鉛系メッキ鋼
板の連続打点性を改善する方法としては、メッキ表面
に、高融点の皮膜を形成することが有効とされている。
本発明者らは、亜鉛系メッキ鋼板のスポット溶接性を改
善するために、各種の皮膜について検討した結果、Ni
金属が特に有効であることを見出した。この理由の詳細
は明らかではないが、Ni金属が高融点であり、電気伝
導度が高いことが理由として考えられる。
【0017】従来の亜鉛系メッキ鋼板の接着性が、冷延
鋼板に比較して劣ることは知られていたが、その原因は
明らかになっていない。ところが、Fe−Ni合金皮膜
中のFeが、接着性の改善のために有効である。但し、
このFeの存在により接着性が改善される機構は明らか
ではない。
【0018】この発明は、上述した知見に基づいてなさ
れたものであって、この発明の亜鉛系メッキ鋼板は、少
なくとも一方の面のメッキ層表面に、Fe−Ni合金皮
膜を形成した亜鉛系メッキ鋼板であって、Fe−Ni合
金皮膜の付着量が、この皮膜中の金属元素の合計量換算
で、10〜1500mg/m2 の範囲内にあり、且つ、
この皮膜中のFe含有量(wt.%)とNi含有量(w
t.%)との和に対するFe含有量(wt.%)の比率
が、0.05〜0.9の範囲内にあることに特徴を有す
るものである。
【0019】
【発明の実施の形態】次に、この発明の亜鉛系メッキ鋼
板のメッキ層の表面に形成されたFe−Ni合金皮膜の
付着量およびその組成を上述したように限定した理由を
述べる。
【0020】〔Fe−Ni合金皮膜の付着量〕前述した
ように、Fe−Ni合金皮膜の形成によりプレス成形
性、スポット溶接性および接着性が向上する。しかしな
がら、Fe−Ni合金皮膜の付着量が、皮膜中金属の合
計量換算で10mg/m2 未満では、プレス成形性、ス
ポット溶接性および接着性の向上効果が得られない。一
方、その付着量が、上記合計量換算で1500mg/m
2 を超えると、上記効果が飽和し、更に、リン酸塩結晶
の生成が抑制されて、化成処理性が劣化する。従って、
Fe−Ni合金皮膜の付着量を、皮膜中金属の合計量換
算で、10〜1500mg/m2 の範囲内に限定すべき
である。
【0021】〔Fe−Ni合金皮膜中のFe含有量とN
i含有量との和に対するFe含有量の比率〕Fe−Ni
合金皮膜中に適正量のFeが含有されることにより、接
着性が改善される。これは、接着性は、表面電位が高い
金属ほど良好であり、Feは最も表面電位が高い金属に
属する。従って、Feを多く含有するほど、接着性は改
善される。しかしながら、Fe−Ni合金皮膜中のFe
含有量(wt.%)とNi含有量(wt.%)との和に
対するFe含有量(wt.%)の比率(以下、「皮膜中
Fe/(Fe+Ni)」という)が、0.05未満で
は、接着性の改善効果が発揮されない。一方、皮膜中F
e/(Fe+Ni)が、0.9を超えると、皮膜中に存
在するNi含有量が減少するため、溶接時に形成される
高融点のZn−Ni合金の比率が少なくなり、そのため
電極の劣化がはげしくなり、スポット溶接性の改善効果
が小さくなる。従って、Fe−Ni合金皮膜中Fe/
(Fe+Ni)を、0.05〜0.9の範囲内にすべき
である。
【0022】なお、Fe−Ni合金皮膜中には、下層の
メッキ皮膜中に含まれるZn、Co、Mn、Mo、A
l、Ti、Sn、W、Si、PbおよびTa等成分元素
が取り込まれた酸化物、水酸化物または金属単体が不可
避的な含有量で含まれていても、上述した効果は奏され
る。
【0023】本発明において用いられる亜鉛系メッキ鋼
板とは、母材である鋼板上に溶融メッキ法、電気メッキ
法、または気相メッキ法等の方法でメッキ層を形成させ
た鋼板であり、亜鉛系メッキ層の化学成分組成は、純亜
鉛のほか、Fe、Ni、Co、Mn、CrおよびAlの
内、一種または二種以上を所定量含有する単層または複
層のメッキ層からなるものである。また、前記メッキ層
にSiO2 、Al2 3 等の微粒子を含有してもよい。
また、亜鉛系メッキ鋼板として、メッキ層の化学成分組
成の異なる複数の層からなる複層メッキ鋼板や、メッキ
層の構成成分は同じであってメッキ層の厚さ方向に組成
を連続的に変化させた機能傾斜メッキ鋼板を使用するこ
とも可能である。
【0024】また、本発明における、上層としてのFe
−Ni合金皮膜は、その形成方法により限定されるもの
ではないが、NiおよびFeイオンを含有する電解液か
ら電解析出させる方法、または、置換析出させる方法が
最も簡単で処理コストも安い。しかしながら、CVDお
よびPVD等のいわゆるドライプロセスによっても形成
させることができる。この発明のFe−Ni合金皮膜
は、上記いずれの方法により形成されたものであっても
よい。
【0025】上述したFe−Ni合金皮膜は、亜鉛系メ
ッキ鋼板の少なくとも一方の面のメッキ層表面に形成さ
れているので、車体製造工程のどのような工程におい
て、どのような車体部分に使用される鋼板であるかに応
じて、その皮膜を一方の面あるいは両面に形成されたも
のを適宜選択することができる。
【0026】
【実施例】次に、本発明を実施例により更に詳細に説明
する。本発明の範囲内の亜鉛系メッキ鋼板(実施例1〜
72)、および、本発明の範囲外の亜鉛系メッキ鋼板
(比較例1〜14)を、次に述べる方法で調製した。
【0027】先ず、Fe−Ni合金皮膜を形成させる鋼
板として、下記7種のメッキ種(メッキの方法、メッキ
組成およびメッキ付着量)の亜鉛系メッキ鋼板を調製し
た。7種のメッキ種の記号と内容は次の通りである。 GA:合金化溶融亜鉛メッキ鋼板(10wt.%Fe、
残部Zn)であり、付着量は両面共に60g/m2 であ
る。 GI:溶融亜鉛メッキ鋼板であり、付着量は両面共に9
0g/m2 である。 EG:電気亜鉛メッキ鋼板であり付着量は両面共に40
g/m2 である。 Zn−Fe:電気Zn−Fe合金メッキ鋼板(15w
t.%Fe)であり、付着量は両面共に40g/m2
ある。 Zn−Ni:電気Zn−Ni合金メッキ鋼板(12w
t.%Ni)であり、付着量は両面共に30g/m2
ある。 Zn−Cr:電気Zn−Cr合金メッキ鋼板(4wt.
%Cr)であり、付着量は両面共に20g/m2 であ
る。 Zn−Al:溶融Zn−Al合金メッキ鋼板(5wt.
%Al)であり、付着量は両面共に60g/m2 であ
る。
【0028】このようにして調製された亜鉛系メッキ鋼
板のメッキ層の表面に、上層としてのFe−Ni合金皮
膜を、次の2種類の手法の何れかにより形成した。 〔手法A〕硫酸第一鉄と硫酸ニッケルの混合溶液中で、
原板を陰極電解処理を行なうことにより、原板の表面に
所定のFe−Ni合金皮膜を形成させた。表1に、手法
Aの電解浴液組成および電解条件を示す。硫酸第一鉄お
よび硫酸ニッケルの濃度、電流密度、並びに、pHを調
整することにより、形成すべきFe−Ni合金皮膜の付
着量およびFe比率を調整した。
【0029】
【表1】
【0030】〔手法B〕塩化第一鉄と塩化ニッケルとの
混合溶液中に、原板を浸漬することによって、Fe−N
i合金皮膜を形成させた。表2に、手法Bの浸漬浴の化
学成分組成および浸漬条件を示す。塩化第一鉄および塩
化ニッケルの濃度、並びに、浸漬時間を調整することに
より、形成すべきFe−Ni合金皮膜の付着量およびF
e比率を調整した。
【0031】
【表2】
【0032】このようにして、この発明の実施例1〜7
2および比較例1〜14の供試体を調製した。各供試体
の表面に形成されたFe−Ni合金皮膜の付着量、およ
び、皮膜中Fe比率(Fe/(Fe+Ni))を下記方
法で測定した。
【0033】〔皮膜の付着量、および、皮膜中Fe/
(Fe+Ni)〕皮膜の付着量は、皮膜中の金属元素の
合計量換算で表すものとした。メッキ種が、GI、E
G、Zn−Cr、Zn−Alの供試体については、Fe
−Ni合金皮膜を、下層のメッキ皮膜(Zn系メッキ、
以下同じ)の表層部と共に希塩酸により溶解剥離させ、
ICP法によりFe、Niおよび金属の定量分析を行な
うことによって、Fe−Ni合金皮膜の付着量および組
成を測定した。次いで、皮膜中Fe/(Fe+Ni)を
算定した。メッキ種が、GA、Zn−Fe、Zn−Ni
の供試体については、下層のメッキ皮膜中にFe−Ni
合金皮膜中の成分元素を含むので、ICP法では上層の
Fe−Ni合金皮膜中成分元素と下層のメッキ皮膜中成
分元素とを完全に分離することは困難である。そこで、
ICP法により下層のメッキ皮膜中に含まれていないF
e−Ni合金皮膜の成分元素のみを定量分析した。更
に、Arイオンスパッタした後、XPS法によりFe−
Ni合金皮膜中各成分元素の測定を皮膜表面から繰り返
すことによって、メッキ皮膜中の深さに対する各成分元
素の組成分布を測定した。この測定方法においては、下
層のメッキ皮膜中に含まれていないFe−Ni合金皮膜
の成分元素が最大濃度である深さと、その元素が検出さ
れなくなった深さの半分の位置との間隔を、Fe−Ni
合金皮膜の厚さとした。そして、ICP法の結果とXP
S法の結果とから、Fe−Ni合金皮膜の付着量および
組成を算定した。次いで、皮膜中Fe/(Fe+Ni)
を算定した。
【0034】一方、実施例および比較例の各供試体につ
いて、プレス成形性、スポット溶接性および接着性を試
験した。
【0035】プレス成形性の評価は、供試体とビードと
の摩擦係数で、スポット溶接性の評価は、スポット溶接
の連続打点性試験における連続打点数で、そして、接着
性の評価は、供試体の表面同士を接着させた後の剥離強
度で行なった。各評価試験方法は下記の通りである。
【0036】〔摩擦係数測定試験〕プレス成形性を評価
するために、各供試体の摩擦係数を、下記装置により測
定した。図1は、摩擦係数測定装置を示す概略正面図で
ある。同図に示すように、供試体から採取した摩擦係数
測定用試料1が試料台2に固定され、試料台2は、水平
移動可能なスライドテ−ブル3の上面に固定されてい
る。スライドテ−ブル3の下面には、これに接したロ−
ラ4を有する上下動可能なスライドテ−ブル支持台5が
設けられ、これを押上げることにより、ビ−ド6による
摩擦係数測定用試料1への押付荷重Nを測定するための
第1ロ−ドセル7が,スライドテ−ブル支持台5に取付
けられている。上記押付力を作用させた状態で、スライ
ドテ−ブル3の水平移動方向の一方の端部には、スライ
ドテ−ブル3を水平方向へ移動させるための摺動抵抗力
Fを測定するための第2ロ−ドセル8が、スライドテ−
ブル3の一方の端部に取付けられている。なお、潤滑油
として、日本パーカライジング社製ノックスラスト55
0HNを試料1の表面に塗布して試験を行なった。
【0037】供試体とビ−ドとの間の摩擦係数μは、
式:μ=F/Nで算出した。但し、押付荷重N:400
kgf、試料の引き抜き速度(スライドテ−ブル3の水
平移動速度):100cm/minとした。なお、ビー
ドは、下記2種類の寸法・形状のものを使用した。
【0038】図2は、使用した第1のビ−ド(以下、
「ビードタイプA」という)の形状・寸法を示す概略斜
視図である。ビ−ド6の下面が試料1の表面に押しつけ
られた状態で摺動する。その下面形状は、幅10mm、
摺動方向長さ3mmの平面を有し、その前後面の幅10
mmの各々の線に4.5mmRをもつ筒面の1/4筒面
が同図のように接している。なお、この寸法・形状のビ
ードを、タイプAと呼ぶことにする。
【0039】図3は、使用した第2のビ−ド(以下、
「ビードタイプB」という)の形状・寸法を示す概略斜
視図である。ビードタイプBは、ビードタイプAの摺動
面の試料摺動方向の長さを、3mmから60mmに長く
したものであり、その他の部分はビードタイプAと同じ
である。ビードタイプBは、プレス成形性の評価をより
厳しい条件で行なうことにより、供試体間の摩擦係数値
の有意差を一層明確に評価するためである。
【0040】〔連続打点性試験〕スポット溶接性を評価
するために、各供試体について連続打点性試験を行なっ
た。同じNO.の供試体を2枚重ね、それを両面から1対
の電極チップで挟み、加圧通電して電流を集中させた抵
抗溶接(スポット溶接)を、下記溶接条件で連続的に実
施した。 ・電極チップ:先端径6mmのド−ム型、 ・加圧力:250kgf、 ・溶接時間:12サイクル(60Hz)、 ・溶接電流:11.0KA、 ・溶接速度:1点/sec。 連続打点性の評価としては、スポット溶接時に、2枚重
ねた溶接母材(供試体)の接合部に生じた溶融凝固した
金属部(形状:碁石状、以下、ナゲットという)の径
が、4×t1/2 (t:1枚の板厚)未満になるまでに連
続打点溶接した打点数を用いた。なお、上記打点数を以
下、電極寿命という。
【0041】〔接着性試験〕各供試体から次の接着性試
験用試験体を調製した。図4は、その組み立て過程を説
明する概略斜視図である。同図に示すように、幅25m
m、長さ200mmの2枚の供試体10を、その間に直
径0.15mmのスペーサー11を介して、接着剤12の厚さ
が0.15mmとなるように重ね合わせて接着した試験体13
を作成し、150°C×10minの焼き付けを行な
う。このようにして調製された前記試験体を図5に示す
ようにT型に折り曲げ、引張試験機を用いて200mm
/minの速度で引張試験をし、試験体が剥離した時の
平均剥離強度(n=3回)を測定した。剥離強度は、剥
離時の引張荷重曲線の荷重チャ−トから、平均荷重を求
め、単位:kgf/25mmで表わした。図5中、Pは
引張荷重を示す。なお接着剤は塩ビ系のヘミング用アド
ヒシブを用いた。
【0042】以上の各種試験により得られたFe−Ni
合金皮膜の性状、および、供試体の特性評価の結果を、
表3〜6に示す。
【0043】
【表3】
【0044】
【表4】
【0045】
【表5】
【0046】
【表6】
【0047】表3〜6に示した試験結果から、下記事項
が明らかである。メッキ種がGA(合金化溶融亜鉛メッ
キ鋼板)の場合、実施例1〜36は、Fe−Ni合金皮
膜を形成させなかった比較例1よりも、プレス成形性、
スポット溶接性および接着性のいずれについても大幅に
向上している。一方、本発明の範囲外の条件でFe−N
i合金皮膜を形成させた比較例2〜8は、プレス成形
性、スポット溶接性および接着性の何れかについて劣っ
ている。即ち、合金皮膜の付着量が本発明の範囲外に少
ない比較例2は、プレス成形性、スポット溶接性および
接着性のいずれについても劣っており、合金皮膜中のF
e比率が本発明の範囲外に小さい比較例3、4および5
は接着性に劣り、一方Fe比率が本発明の範囲外に大き
い比較例6、7および9はスポット溶接性に劣ってい
る。これに対して実施例1〜36は、いずれの特性も良
好である。
【0048】他のメッキ種の場合でも、同一メッキ種内
において実施例と比較例との特性値を比較すると、実施
例37〜72は、Fe−Ni合金皮膜を形成させなかっ
た比較例9〜14よりも、プレス成形性、スポット溶接
性および接着性のいずれに関しても大幅に向上してい
る。
【0049】
【発明の効果】本発明は、以上のように構成したので、
亜鉛系メッキ鋼板のメッキ層の表面に形成されたFe−
Ni合金皮膜が、亜鉛または亜鉛合金メッキ層に比べて
硬質、且つ、高融点であるために、亜鉛系メッキ鋼板の
プレス成形時におけるメッキ層表面とプレス金型との摺
動抵抗が低下し、そして、スポット溶接時の電極寿命が
延びる。更に、Fe−Ni合金皮膜中のFeの存在によ
り、接着剥離強度が向上する。かくして、本発明によれ
ば、プレス成形性、スポット溶接性および接着性に優れ
た亜鉛系メッキ鋼板を提供することができる、工業上有
用な効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】摩擦係数測定装置を示す概略正面図である。
【図2】図1中のビ−ドの形状・寸法(ビードタイプ
A)を示す概略斜視図である。
【図3】図1中の他のビ−ドの形状・寸法(ビードタイ
プB)を示す概略斜視図である。
【図4】接着性試験用試験体の組み立て過程を説明する
概略斜視図である。
【図5】接着性試験における剥離強度測定時の引張荷重
の負荷を説明する概略斜視図である。
【符号の説明】
1 摩擦係数測定用試料、 2 試料台、 3 スライドテ−ブル、 4 ロ−ラ、 5 スライドテ−ブル支持台、 6 ビ−ド、 7 第1ロ−ドセル、 8 第2ロ−ドセル、 9 レ−ル、 10 供試体、 11 スペ−サ−、 12 接着剤、 13 接着試験用試験体、 P 引張荷重、 F 摺動抵抗力、 N 押付荷重。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 稲垣 淳一 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内 (72)発明者 山下 正明 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日 本鋼管株式会社内

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 少なくとも一方の面のメッキ層表面に、
    Fe−Ni合金皮膜を形成した亜鉛系メッキ鋼板であっ
    て、 前記Fe−Ni合金皮膜の付着量は、前記Fe−Ni合
    金皮膜中の金属元素の合計量換算で、10〜1500m
    g/m2 の範囲内にあり、 更に、前記Fe−Ni合金皮膜中のFe含有量(wt.
    %)とNi含有量(wt.%)との和に対する前記Fe
    含有量(wt.%)の比率は、0.05〜0.9の範囲
    内にあることを特徴とする亜鉛系メッキ鋼板。
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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2013170308A (ja) * 2012-02-22 2013-09-02 Nippon Steel & Sumitomo Metal Corp プレス成形性に優れたリチウムイオン電池ケース用表面処理鋼板及びその製造方法

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