JPH09133671A - 残留塩素量を判定する方法、残留塩素量を判定するキット及び酸化物検出用キット - Google Patents

残留塩素量を判定する方法、残留塩素量を判定するキット及び酸化物検出用キット

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JPH09133671A
JPH09133671A JP23397696A JP23397696A JPH09133671A JP H09133671 A JPH09133671 A JP H09133671A JP 23397696 A JP23397696 A JP 23397696A JP 23397696 A JP23397696 A JP 23397696A JP H09133671 A JPH09133671 A JP H09133671A
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JP23397696A
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Noriyasu Kuzuhara
憲康 葛原
稔 ▲高▼田
Minoru Takada
Masayuki Numama
雅之 沼間
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Konica Minolta Inc
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】 色素の沈澱の発生を抑制して、発色後時間が
経過しても被検液中の酸化剤の濃度、特に残留塩素濃度
を判定することが出来る残留塩素量を判定する方法及び
残留塩素量を判定するキット及び酸化剤検出用キットの
提供。 【解決手段】 ベンジジン指示薬2又はその塩を含有す
る溶液と被検液を混合して生成する色素の色相により、
被検液中の残留塩素量を判定する残留塩素量を判定する
方法。 ベンジジン指示薬2又はその塩を含有する溶液と被検液
を混合して生成する色素の色相により、被検液中の残留
塩素量を判定する方法において、ベンジジン指示薬又は
その塩の濃度を変化させることによって、生成する色素
の色相変化が生じる残留塩素の濃度領域を変化させる残
留塩素量を判定する方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はベンジジン、テトラ
アルキルベンジジン、特に3,3′,5,5′−テトラ
メチルベンジジン(TMB)、及びN−スルホアルキル
−3,3′,5,5′−テトラメチルベンジジン(SA
−TMB)を用いた残留塩素量を判定する方法、残留塩
素量を判定するキット及び酸化物検出用キットに関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】残留塩素とは、塩素剤が水に溶けて生成
する次亜塩素酸及びこれがアンモニアと結合して生じる
クロロアミンをいい、前者を遊離残留塩素、後者を結合
残留塩素、両者を併せて残留塩素という。これらの定量
法としては、例えばo−トリジン比色法、又はジエチル
−p−フェニレンジアンモニウム(DPD)比色法の他
に、濃度が比較的高い場合にはヨウ素滴定法が用いられ
る。
【0003】TMB及びSA−TMBなどのベンジジン
は、例えばエンザイムリンクドイムノソルベントアッセ
イ(ELISA)においてペルオキシダーゼ活性の定量
にしばしば用いられる発色基質である(例えば、ホラン
ドら、Tetrahedron,第30巻、3299〜
3302頁,特開昭61−52300号等)。ELIS
Aにおいては通常例えば生体中に存在する微量な物質を
測定するために該物質に対する抗体などの結合性物質を
担体と呼ばれるビーズ又はプレートの穴(ウェル)に固
定化し、当該物質を含む液を反応させて結合させた後、
更にペルオキシダーゼ標識された当該物質に結合性を有
する第二の物質(例えば抗体)を反応し結合させた後、
過酸化水素存在下でTMBを添加すると、ペルオキシダ
ーゼの作用により過酸化水素が酸素を生じその結果TM
Bが酸化されて発色すると言う原理により、発色体の吸
光度と当該物質濃度との相関関係が得られることを利用
している。
【0004】即ち、TMB、SA−TMBなどのベンジ
ジンはペルオキシダーゼ存在下で過酸化水素を測定する
ために用いられる。
【0005】o−トリジン、又はDPD比色法について
は、JISK0102によれば、何れも例えば各濃度の
クロム酸カリウム−ニクロム酸カリウム溶液の黄色、又
は各濃度の1−(4−メチルベンゼンスルホンアミド)
−7−(2−メチルフェニルアゾ)−8−ヒドロキシ−
3,6−ナフタレンスルホン酸二ナトリウムの桃色の残
留塩素標準液と、被検液とo−トリジン又はDPDとの
混合により生じた色素の比色により被検液中の残留塩素
濃度を定量する。
【0006】この方法によれば、非常に高感度に正確に
残留塩素濃度を定量することが可能であるが多数の濃度
の残留塩素標準比色液(例えば0.01mg/l〜0.
01mg/l刻みで20本)を調製しなければならず、
この標準液も色素の退色が免れないため長期間の保存が
出来ず要時調製が必要となる。また、調製時に沈殿が出
た場合にはやり直す必要があるなど非常に煩雑なもので
ある。
【0007】一方、比較的高濃度の残留塩素測定にはヨ
ウ素滴定法が用いられるが、この方法の場合もJISK
0102によれば、ヨウ化カリウム溶液と残留塩素の被
検液を混合し遊離したヨウ素をチオ硫酸ナトリウム溶液
で滴定し溶液の黄色が薄くなってから指示薬としてでん
ぷん溶液を加え生じたヨウ素でんぷんの青い色が消える
まで滴定して、滴定に要したチオ硫酸ナトリウム溶液量
を用いて一定の計算式から残留塩素濃度を算出すること
ができる。しかしながら、この場合も滴定操作を必要と
する点で非常に煩雑であることに変わりはない。
【0008】残留塩素の測定が望まれる場合としては様
々な状況が考えられるが、例えば食品製造業において液
状の食品の製造加工工程で製造ライン等のパイプ、タン
クなどの殺菌洗浄時に次亜塩素酸溶液を用いた場合に、
洗浄終了後当該溶液をきれいに洗い流す必要があるわけ
であるがこのようなルーチンの工程管理に於いて上記の
ような煩雑かつ緻密な検査は実施するのは極めて困難で
あり、結果的にいわば当業者の勘に依存するところとな
ってしまう可能性がある。
【0009】TMBの発色については、分析対象物存在
下で2つの連続する発色が起こることが特公平2−25
152号に開示されている。ここで開示されている二つ
の連続する発色とは、青色の第一の種、続いて褐色の第
二の種とされており、この青色の第一の種は一時的なも
のである傾向を示し、最後には褐色に変化する、即ち時
間の経過により青色が続いて褐色に変化することを示し
ている。また、分析濃度が高いほどこの現象が生じやす
いことが記載されている。しかし上記特許は、発色につ
いては第一及び第二の種(青色及び褐色)の存在を開示
するにとどまり、該特許の発明者らの関心は専ら青色の
発色をいかに維持するかに注がれており、唯一、時間的
に連続して生ずるとされる褐色の色素については好まし
くないものとして記載されているに過ぎない。その点
で、TMBと酸化剤とのモル比により変化する色相の関
係を捉えて開示したものではない。
【0010】従って、酸化剤の濃度に依存して青色、緑
色、黄色、オレンジ色又は赤色という安定した発色を呈
することについてはなんら開示されたものではなく、又
示唆されたものでもない。
【0011】また、TMBには検出試薬中のTMBの濃
度が高い場合には、発色後の色素(特に青色の場合が著
しい)が一定時間放置しておく場合に沈殿を生じやすく
なるという問題がある。特開昭62−182659号で
は特定のアニオン類が生じた色素は特に不溶化させやす
いことを積極的に利用して、当該不溶化した色素を免疫
組織染色等の生物学的物質を視覚化させるために用いる
ことが開示されている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、ベン
ジジン及びその誘導体が酸化剤、特に残留塩素と共存す
ることによりその量に応じて生成する色素の色相に変化
が生ずることを利用して、簡便な操作で、且つ発色した
色の色相を観察することによって被検液中の残留塩素濃
度を測定することができる残留塩素量を判定する方法、
残留塩素量を判定するキット及び酸化物検出用キットを
提供することにある。更に、本発明の目的はベンジジン
及びその誘導体と酸化剤、特に残留塩素が共存すること
により生成する色素の沈澱の発生を抑制することができ
る残留塩素量を判定する方法、残留塩素量を判定するキ
ット及び酸化物検出用キットを提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明の上記目的は、以
下の構成により達成される。
【0014】1.ベンジジン指示薬又はその塩を含有す
る溶液と被検液を混合して生成する色素の色相により、
被検液中の残留塩素量を判定することを特徴とする残留
塩素量を判定する方法。
【0015】2.ベンジジン指示薬又はその塩を含有す
る溶液と被検液を混合して生成する色素の色相により、
被検液中の残留塩素量を判定する方法であって、ベンジ
ジン指示薬又はその塩の濃度を変化させることによっ
て、生成する色素の色相変化が生じる残留塩素の濃度領
域を変化させることを特徴とする残留塩素量を判定する
方法。
【0016】3.ベンジジン指示薬がテトラアルキルベ
ンジジンであることを特徴とする前記1又は2に記載の
残留塩素量を判定する方法。
【0017】4.テトラアルキルベンジジンが3,
3′,5,5′−テトラメチルベンジジンであることを
特徴とする前記3に記載の残留塩素量を判定する方法。
【0018】5.テトラアルキルベンジジンが下記一般
式Iで表される3,3′,5,5′−テトラアルキルベ
ンジジンのスルホアルキル誘導体である前記3に記載の
残留塩素量を判定する方法。
【0019】
【化5】
【0020】式中R1,R2,R3,R4は同一又は異なっ
ても良く、各々炭素原子数1乃至6の直鎖アルキル基を
表し、R5,R6は水素原子又は次式II:−(CH2)n
SO3H(式中、nは1乃至6の整数を表す。)で表さ
れるスルホアルキル基を表し、かつ少なくともR5、R6
の何れか一方は該スルホアルキル基を表すものであり、
更に該スルホアルキル基はヒドロキシル基の少なくとも
1個により置換されていてもよい。
【0021】6.前記色相が青色、緑色、黄色、オレン
ジ色、赤色又はこれらの中間色の何れかであることを特
徴とする前記4に記載の残留塩素量を判定する方法。
【0022】7.前記色相が青緑色、黄色、オレンジ
色、赤色又はこれらの中間色の何れかであることを特徴
とする前記5に記載の残留塩素量を判定する方法。
【0023】8.ベンジジン指示薬又はその塩を含有す
る溶液と被検液を混合して生成する色素の色相により、
被検液中の残留塩素量を判定するキット。
【0024】9.ベンジジン指示薬又はその塩を希釈で
きる溶液を含んでなる、ベンジジン指示薬又はその塩を
含有する溶液と被検液を混合して生成する色素の色相に
より被検液中の残留塩素量を判定するキット。
【0025】10.ベンジジン指示薬又はその塩を含有
する溶液と被検液を混合して生成する色素の色相によ
り、被検液中の残留塩素量を判定するキットであって、
ベンジジン指示薬又はその塩を含有する溶液の複数の希
釈倍率及び/又は濃度と被検液中の様々な残留塩素含有
量の組み合わせによって観察される標準的な発色の色相
名及び/又は発色の色相見本を含む被検液中の残留塩素
量を判定するキット。
【0026】11.ベンジジン指示薬がテトラアルキル
ベンジジンであることを特徴とする前記8〜10の何れ
か1項に記載の残留塩素量を判定するキット。
【0027】12.テトラアルキルベンジジンが3,
3′,5,5′−テトラメチルベンジジンであることを
特徴とする前記11に記載の残留塩素量を判定するキッ
ト。
【0028】13.テトラアルキルベンジジンが前記一
般式Iで表される3,3′,5,5′−テトラアルキル
ベンジジンのスルホアルキル誘導体であること特徴とす
る前記11に記載の残留塩素量を判定するキット。
【0029】14.ベンジジン指示薬又はその塩及び一
般式(1)〜(4)から選ばれる化合物を少なくとも1
種含有する溶液と被検液を混合して生成する色素の色相
により、被検液中の残留塩素量を判定することを特徴と
する残留塩素量を判定する方法。
【0030】
【化6】
【0031】式中、W1は、−NO2,−CN,−CH
O,−COR7(R7は置換、無置換のアルキル基、又は
水素原子)の何れかであって、X1,Y1,Z1は、それ
ぞれ、−NR89(R8,R9は置換、無置換のアルキル
基、又は水素原子)、−OR10(R10は置換、無置換の
アルキル基、又は水素原子)、−R11(R11は置換、無
置換の炭素数1から4の低級アルキル基)、−Cl,−
F,−I,−Hから選ばれる原子、基であり、X1
1,Z1のうち少なくとも一つは水素原子以外である。
【0032】
【化7】
【0033】式中、X2,Y2,Z2は、それぞれ、−N
1213(R12,R13は置換、無置換のアルキル基、又
は水素原子)、−OR14(R14は置換、無置換のアルキ
ル基、又は水素原子)、−R15(R15は置換、無置換の
炭素数1から4の低級アルキル基)、−Cl,−F,−
I,−Hから選ばれる原子、基であり、X2,Y2,Z2
のうち少なくとも一つは水素原子以外である。
【0034】
【化8】
【0035】式中、X3は、−NR1617(R16,R17
は置換、無置換のアルキル基、アルケニル基、アルキニ
ル基、置換、無置換のフェニル基、置換、無置換のヘテ
ロ環残基又は水素原子)、−OR18(R18は置換、無置
換アルキル基、又は水素原子)、−R19(R19は置換、
無置換の炭素数1から4の低級アルキル基)、−Cl,
−F,−I,−Hから選ばれる原子、基であり、Y
3は、置換、無置換のアルキル基、置換、無置換のアル
ケニル基、置換、無置換のアルキニル基、置換、無置換
のフェニル基、置換、無置換のヘテロ環残基、−NR20
21(R20,R21は置換、無置換のアルキル基、又は水
素原子)、置換、無置換のアルキルチオ基、置換、無置
換のフェニルチオ基、−OR22(R22は置換、無置換の
アルキル基、又は水素原子)、−R23(R23は置換、無
置換の炭素数1から4の低級アルキル基)、−Cl,−
F,−I,−Hから選ばれる原子、基である。Z3はヒ
ドロキシル基、置換、無置換のアルコキシル基、置換、
無置換のアルキル基、置換、無置換のシクロアルキル基
である。
【0036】一般式(4) X4−COCH2CO−Y4 式中、X4,Y4は、それぞれ、置換、無置換のアルキル
基、置換、無置換のアルコキシル基、フェニル基、ヒド
ロキシル基又はアミノ基で置換されたフェニル基、−N
2425(R24,R25は置換、無置換のアルキル基、又
は水素原子)から選ばれる基である。
【0037】15.ベンジジン指示薬又はその塩及び上
記一般式(1)乃至(4)から選ばれる化合物を少なく
とも1種類含有する溶液と被検液を混合して生成する色
素の色相により、被検液中の残留塩素量を判定する方法
であって、ベンジジン指示薬又はその塩の濃度を変化さ
せることによって、生成する色素の色相変化が生じる残
留塩素の濃度領域を変化させることを特徴とする残留塩
素量を判定する方法。
【0038】16.ベンジジン指示薬がテトラアルキル
ベンジジンであることを特徴とする前記14又は15に
記載の残留塩素量を判定する方法。
【0039】17.テトラアルキルベンジジンが3,
3′,5,5′−テトラメチルベンジジンであることを
特徴とする前記16に記載の残留塩素量を判定する方
法。
【0040】18.テトラアルキルベンジジンが前記一
般式Iで表される3,3′,5,5′−テトラアルキル
ベンジジンのスルホアルキル誘導体であることを特徴と
する前記16に記載の残留塩素量を判定する方法。
【0041】19.ベンジジン指示薬又はその塩及び前
記一般式(1)乃至(4)から選ばれる化合物を少なく
とも1種含有する溶液と被検液を混合して生成する色素
の色相により、被検液中の残留塩素量を判定するキッ
ト。
【0042】20.ベンジジン指示薬又はその塩を希釈
できる溶液を含んでなる、ベンジジン指示薬又はその塩
及び上記一般式(1)乃至(4)から選ばれる化合物を
少なくとも1種含有する溶液と被検液を混合して生成す
る色素の色相により被検液中の残留塩素量を判定するキ
ット。
【0043】21.ベンジジン指示薬又はその塩及び上
記一般式(1)乃至(4)から選ばれる化合物を少なく
とも1種含有する溶液と被検液を混合して生成する色素
の色相により、被検液中の残留塩素量を判定するキット
であって、発色溶液の複数の希釈倍率及び/又は濃度と
被検液中の様々な残留塩素含有量の組み合わせによって
観察される標準的な発色の色相名及び/又は発色の色相
見本を含む被検液中の残留塩素量を判定するキット。
【0044】22.ベンジジン指示薬がテトラアルキル
ベンジジンであることを特徴とする前記19〜21の何
れか1項に記載の残留塩素量を判定するキット。
【0045】23.テトラアルキルベンジジンが3,
3′,5,5′−テトラメチルベンジジンであることを
特徴とする前記22に記載の残留塩素量を判定するキッ
ト。
【0046】24.テトラアルキルベンジジンが前記一
般式Iで表される3,3′,5,5′−テトラアルキル
ベンジジンのスルホアルキル誘導体であることを特徴と
する前記22に記載の残留塩素量を判定するキット。
【0047】25.予め指示薬が分注され、密封された
容器が複数個収納箱に収納されていることを特徴とする
酸化物検出用キット。
【0048】26.前記指示薬がベンジジン指示薬及び
その塩であることを特徴とする前記25に記載の酸化物
検出用キット。
【0049】27.前記指示薬がパラフェニレンジアミ
ン誘導体であることを特徴とする前記25に記載の酸化
物検出用キット。
【0050】28.前記一般式(1)〜(4)から選ば
れる化合物の少なくとも1種を前記容器に含有している
ことを特徴とする前記25、26又は27に記載の酸化
物検出用キット。
【0051】以下、本発明を更に詳細に述べる。
【0052】ベンジジン指示薬又はその塩について説明
する。
【0053】先ず本発明に好ましく用いられる前記一般
式Iで表されるベンジジン指示薬化合物について説明す
る。
【0054】一般式IにおいてR1,R2,R3,R4は同
一又は異なっても良く、各々炭素原子数1乃至6の直鎖
アルキル基を表し、R5,R6は水素原子又は次式II:−
(CH2)nSO3H(式中、nは1乃至6の整数を表
す。)で表されるスルホアルキル基を表し、かつ少なく
ともR5,R6の何れか一方は該スルホアルキル基を表す
ものであり、更に該スルホアルキル基はヒドロキシル基
の少なくとも1個により置換されてもよい。塩としては
通常の酸が用いられ、例えば塩酸塩、硫酸塩、クエン酸
塩等が挙げられる。
【0055】以下に本発明に好ましく用いられるベンジ
ジン指示薬の具体的化合物を挙げるが本発明はこれらに
限定されるものではない。
【0056】N−(2−スルホエチル)−3,3′,
5,5′−テトラメチルベンジジン、N−(3−スルホ
プロピル)−3,3′,5,5′−テトラメチルベンジ
ジン、N−(4−スルホブチル)−3,3′,5,5′
−テトラメチルベンジジン、N−(3−スルホプロピ
ル)−3,3′,5,5′−テトラエチルベンジジン、
N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,
3′,5,5′−テトラメチルベンジジン、N,N′−
ビス(2−スルホエチル)−3,3′,5,5′−テト
ラメチルベンジジン、N,N′−ビス(3−スルホプロ
ピル)−3,3′,5,5′−テトラメチルベンジジ
ン、N,N′−ビス(4−スルホブチル)−3,3′,
5,5′−テトラメチルベンジジン、N,N′−ビス
(3−スルホプロピル)−3,3′,5,5′−テトラ
エチルベンジジン、N,N′−ビス(2−ヒドロキシ−
2−スルホエチル)−3,3′,5,5′−テトラメチ
ルベンジジン、N,N′−ビス(2−ヒドロキシ−3−
スルホプロピル)−3,3′,5,5′−テトラメチル
ベンジジン。
【0057】ベンジジン指示薬の塩としては、上記具体
的化合物の塩酸塩、硫酸塩、クエン酸塩が挙げられる。
【0058】前記一般式IにおいてR1,R2,R3,R4
が全てメチル基、R5,R6が水素原子の場合が3,
3′,5,5′−テトラメチルベンジジン(TMB)で
あり、R1,R2,R3,R4が全てメチル基、R5がスル
ホアルキル基、R6が水素原子の場合がN−スルホアル
キル−3,3′,5,5′−テトラメチルベンジジン
(SA−TMB)であり本発明において好ましい。特に
TMBが好ましい。
【0059】本発明における具体的な態様として、TM
Bを例にとって説明すると、例えば、まずTMBを溶解
可能な少量の液に溶解する。この溶媒はTMBを溶解す
ることが出来れば、例えばジメチルスルホキシド(DM
SO)のような非プロトン性の有機溶媒、ジメチルホル
ムアミド(DMF)、低級アルコール類のようなプロト
ン性の有機溶媒であってもよく、また、酸性の水溶液で
あってもよい。好ましくはpH2.0程度の希塩酸など
のうすい鉱酸の水溶液を用いることが出来る。
【0060】これを緩衝液に一定量添加して残留塩素検
出試薬を調製することが出来る。この場合、pHはTM
Bが析出しない領域で用いることが出来るが、好ましく
は3から7であり、更に好ましくは4から5であり、最
も好ましくは4.6から5.0である。ここで用いられ
る緩衝系としては、特に制限されるものではないが、マ
ロン酸、フタル酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、β−
アラニン、ジメチルグルタル酸、アスパラギン酸、バル
ビツール酸、安息香酸、コハク酸、シュウ酸、酢酸、リ
ンゴ酸、2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸、マ
レイン酸などの緩衝剤を用いることが出来る。ここへ残
留塩素を含有する溶液、例えば、次亜塩素酸溶液を水で
適当倍に希釈したものを検出試薬の1/10量添加する
ことにより、次亜塩素酸濃度の低い試料から高い試料へ
順に、青色、緑色、黄色、オレンジ色、赤色又はこれら
の中間色に呈色する。
【0061】更に詳しくは、各色についてそれぞれに次
亜塩素酸濃度に応じて呈色の濃度が正の相関を示してい
る。特に、青色(TMB濃度に対して次亜塩素酸濃度が
相対的に低い領域)及びオレンジ色又は赤色(TMB濃
度に対して次亜塩素酸濃度が相対的に高い領域)につい
ての各色の濃度の変化の情報は、次亜塩素酸濃度の判定
に於いて有益である。
【0062】色相の変化が生ずる次亜塩素酸濃度領域
は、検出試薬中のTMBの濃度を変化させることによっ
て動かすことが出来る。即ち、検出試薬中のTMBの濃
度を低下させることにより色相の変化が発生する次亜塩
素酸の濃度領域は低濃度側に移行し、逆にTMBの濃度
を上昇させることにより色相の変化が発生する次亜塩素
酸の濃度領域は高濃度側に移行させることが出来る。
【0063】即ち、この色相の変化を観察することによ
れば、後述の実施例において示されるように、検出試薬
中のTMBの濃度を変化させることにより次亜塩素酸の
濃度は例えば、10〜200mg/lの濃度域の判定も
可能であるし、500〜2000mg/lの濃度域の判
定も可能である。また、検出感度については、検出試薬
に対して添加する被検液の量を相対的に増加させること
により、当然に被検液中の残留塩素濃度の検出感度を数
倍に向上させることは可能である。この場合検出試薬液
と被検液の混合によるpH変動により、例えばTMBが
析出してくることなどの考えられる弊害を回避すべく、
必要に応じて検出試薬の緩衝液濃度を上昇させるなど、
緩衝能力を高めておけばよい。
【0064】TMBと残留塩素量と発色後の色相の関係
については、例えば、TMBを少量のpH2.0の塩酸
の水溶液に溶解したものを0.1Mクエン酸−0.1M
リン酸緩衝液(pH4.8)に加えて作成したものを用
いた場合、残量塩素中のTMBに対する活性塩素のモル
比(活性塩素/TMB)が約3.0以下(値が0の場合
が除く)で青色、2.0〜6で緑色、3.5〜40で黄
色、4.5以上でオレンジ色又は赤色、という傾向を示
す。
【0065】色相の変化は、モル比を変化させることが
重要なのでTMBの濃度を変化させて、定量の被検液を
入れても、TMBの濃度を一定にして、被検液の量を変
化させても良い。
【0066】ここで各色相のモル比の値が重複している
が、これは例えばTMB濃度の低い検出試薬液を用いた
場合、同該モル比が2未満(0であることはない)で青
色、2以上、5未満(0であることはない)で緑色、5
以上、20未満で黄色、20以上で赤色であり、例えば
TMB濃度の高い検出試薬液を用いた場合には、同該モ
ル比が3未満(0であることはない)で青色、3以上、
6未満で緑色、6以上、11未満で黄色、11以上で赤
色であるというように、TMB濃度に依存して、色相変
化の起こる境界の該モル比が異なることを意味するもの
であり、1種類の検出試薬において同一のモル比で複数
種類の色相を示す可能性をあらわしているものではな
い。
【0067】特に、色相変化による判定が行いやすいT
MB濃度である10〜50mg/lの領域では当該モル
比が3.0未満で青色、3.0以上6.0未満で緑色、
6.0以上10.0未満で黄色、10.0以上で赤色で
ある。ただし、この関係は当該反応液の組成により影響
を受ける可能性のあるものである。
【0068】また、色相の変化により判定する方法を用
いない場合には、比較的高濃度のTMBを含む検出試薬
を用いて青い色の濃度の差異による判定方法を用いるこ
とが出来る。更に、前述の色相の変化によって判定する
方法においても、特に色相の変化が発生する領域よりも
低濃度の次亜塩素酸の濃度の領域では、青い色の濃度の
差異により次亜塩素酸濃度を判定することを併用するこ
とは、検出対象の残留塩素濃度の測定可能領域を著しく
拡大可能にする。
【0069】後述の実施例にて開示するように、例え
ば、比較的高濃度である33μg/mlのTMBを含有
する検出試薬を用いた場合、色相の変化により判定する
方法における測定可能な残留塩素濃度領域が200〜1
000mg/lの場合、青色の濃度即ち明度の差異も併
用することにより、測定可能な残留塩素濃度領域は2〜
1000mg/lとなり著しく向上する。このことは、
残留塩素濃度が全く未知の被検液の残留塩素濃度判定に
おいて特に有用である。即ち、1次検査として未知の残
留塩素の濃度被検液を検査して、色相変化による判定が
測定可能な残留塩素濃度領域をはずれた場合に、未知の
残留塩素濃度の被検液により発色した色素(例えば青
色)の明度から被検液中の残留塩素濃度のおおよその該
濃度域が推定できるので、次にその推定した残留塩素濃
度領域を色相変化により判定可能な検出試薬液(例えば
前述のように検出試薬中のTMBの濃度調整により設定
できる)を用いることにより判定することができる。
【0070】これは、被検液について無駄な希釈系列を
作成し、多数の試験を行うという煩雑さから試験者を開
放することに大いに寄与するものである。
【0071】検出試薬液に被検液を添加した後は、発色
は速やかに進行するため、発色むらを防止すべく軽く反
応液を振る又は撹拌することにより均一な色相を呈した
時点ですぐに観察することもできるし、生成した色素は
少なくとも数時間は安定に存在するので例えば1時間後
に観察することもできる。
【0072】また、TMBには検出試薬中のTMBの濃
度が高い場合には、発色後の色素(特に青色の場合が著
しい)が一定時間放置しておく場合に沈殿を生じやすく
なるという問題がある。特開昭62−182659号で
は特定のアニオン類が生じた色素を特に不溶化させやす
いことを積極的に利用して、当該不溶化した色素を免疫
組織染色等の生物学的物質を視覚化させるために用いる
ことが開示されている。
【0073】しかしながら、本発明における発色後の色
素の不溶化(沈殿生成)は、本発明の目的のためにはむ
しろ有害となりうるものである。溶解度を極端に低下さ
せる因子がない限り通常、発色後判定を行うに十分な一
定時間経過まではこのような沈殿は観察されないが、時
間の経過に伴い色素の不溶化(特に高濃度の青色の色素
において起こりやすい)が認められることがある。
【0074】この点を改善すべく鋭意研究した結果、特
定の特徴を有する芳香族化合物、特定のジカルボニル化
合物、又は、ベンツイミダゾール類を添加することによ
り沈殿生成を抑制しうることを見いだした。
【0075】その結果これらの化合物を共存させること
により、例えば24時間経過後においても沈澱の影響を
抑制して残留色素の判定を可能にした。特に青色発色領
域における発色濃度の差による目視判定又は吸光度測定
による定量を可能にした。
【0076】次に本発明の一般式(1)〜(4)で表さ
れる化合物について説明する。
【0077】一般式(1)においてW1は、−NO2,−
CN,−CHO,−COR7(R7は置換、無置換のアル
キル基、又は水素原子)の何れかであって、−X1,−
1,−Z1は、それぞれ、−NR89(R8,R9は置
換、無置換のアルキル基、又は水素原子)、−OR
10(R10は置換、無置換のアルキル基、又は水素原
子)、−R11(R11は置換、無置換の炭素数1から4の
低級アルキル基)、−Cl、−F、−I、−Hから選ば
れる原子、基であり、X1,Y1,Z1のうち少なくとも
一つは水素原子以外である。
【0078】一般式(2)においてX2,Y2,Z2は、
それぞれ、−NR1213(R12,R13は置換、無置換の
アルキル基、又は水素原子)、−OR14(R14は置換、
無置換のアルキル基、又は水素原子)、−R15(R15
置換、無置換の炭素数1から4の低級アルキル基)、−
Cl,−F,−I,−Hから選ばれる原子、基であり、
2,Y2,Z2のうち少なくとも一つは水素原子以外で
ある。
【0079】一般式(3)においてX3は、−NR16
17(R16,R17は置換、無置換のアルキル基、アルケニ
ル基、アルキニル基、置換、無置換のフェニル基、置
換、無置換のヘテロ環残基又は水素原子)、−OR
18(R18は置換、無置換のアルキル基、又は水素原
子)、−R19(R19は置換、無置換の炭素数1から4の
低級アルキル基)、−Cl,−F,−I,−Hから選ば
れる原子、基であり、Y3は、置換、無置換のアルキル
基、置換、無置換のアルケニル基、置換、無置換のアル
キニル基、置換、無置換のフェニル基、置換、無置換の
ヘテロ環残基、NR2021(R20,R21はアルキル基、
又は水素原子)、置換、無置換のアルキルチオ基、置
換、無置換のフェニルチオ基、−OR22(R22は置換、
無置換のアルキル基、又は水素原子)、R23(R23は置
換、無置換の炭素数1から4の低級アルキル基)、−C
l,−F,−I,−Hから選ばれる原子、基である。Z
3はヒドロキシル基、置換、無置換のアルコキシル基、
置換、無置換のアルキル基、置換、無置換のシクロアル
キル基である。
【0080】X3,Y3における置換、無置換のヘテロ環
残基としては、例えばピリジン、チオフェン、フラン、
テトヒドロピラン等のヘテロ環残基が挙げられる。
【0081】上記置換基としては、例えばヒドロキシ
基、アミノ基、ニトリル基、スルホン酸基等が挙げられ
る。
【0082】一般式(4) X4−COCH2CO−Y4 一般式(4)においてX4,Y4は、それぞれ、置換、無
置換のアルキル基、置換、無置換のアルコキシル基、置
換、無置換のフェニル基、−NR2425(R24,R25
置換、無置換のアルキル基、又は水素原子)から選ばれ
る基である。
【0083】以下に本発明一般式(1)〜(4)で表さ
れる具体的化合物を挙げるが本発明はこれらに限定され
るものではない。
【0084】
【化9】
【0085】
【化10】
【0086】
【化11】
【0087】
【化12】
【0088】
【化13】
【0089】これらは、前記TMB溶液中に発色反応時
に共存していればどのような形で共存させても良く、例
えばTMBを含む試験液と上記本発明の化合物を含む試
験液と別々の包装がされ、検査時に混合するものであっ
ても、予め混合された状態で供給されても良い。上記本
発明の化合物を共存させる量は、好ましくはTMBに対
してモル比で0.01以上であり、更に好ましくは0.
1以上、最も好ましくは1以上である。過剰量添加する
ことは本発明に於いてなんら避けるべきものではない
が、該化合物自身の溶解性その他当該化合物のみの添加
により生じる問題は考慮すべきである。
【0090】SA−TMBにおいても同様にして残留塩
素、特に次亜塩素酸の濃度の判定が可能である。この場
合注意することはTMBで見られた青色の発色に替えて
青緑色の発色が見られることである。即ち、残留塩素の
濃度の低い方から青緑色、黄色、オレンジ色、赤色又は
これらの中間色に呈色する。その他の性質、即ち発色色
素の濃度依存性等に関してはTMBの場合と同様の性質
を持つため、色相のみ、濃度差のみ、色相と濃度差の併
用により残留塩素の濃度の判定が可能である。
【0091】また、TMBに代表されるテトラアルキル
ベンジジンの場合と同様にSA−TMBにおいても濃度
が高い場合に沈殿を生じやすくなる点を、有機溶媒を一
定濃度(通常5%以上)添加するという方法の他に、前
述した特定の特徴を有する芳香族化合物、特定のジカル
ボニル化合物又は前述したベンツイミダゾール類を添加
することにより又極微量の添加によっても沈殿生成を抑
制しうることを見いだした。
【0092】その結果これらの化合物を共存させること
により、例えば24時間経過後においても特に青色発色
領域における発色濃度の差による目視判定又は吸光度測
定による定量を可能にした。
【0093】更に、本発明はベンジジン、好ましくはテ
トラアルキルベンジジン、特に好ましくは3,3′,
5,5′−テトラメチルベンジジン(TMB)及びN−
スルホアルキル−3,3′,5,5′−テトラメチルベ
ンジジン(SA−TMB)を用いた残留塩素量の測定キ
ットに関するものである。
【0094】本発明の残留塩素量を判定するキットは、
ベンジジン指示薬が分注された容器を複数個収納箱に収
納していることが残留塩素測定のための最低限の構成と
なるが、該キットには更に、例えば被検液を一定量はか
りとることの出来るスポイト又はその代用物、発色後の
色相又は明度の判定を容易にする比較対象用の色見本
(カラースケール)を付属することにより、更に使用勝
手を向上させることが可能である。なお、色見本は色素
の溶液、又はゲル状のものであってもよいが例えば紙な
どにカラー印刷されたものを用いれば使用勝手は更に向
上する。
【0095】本発明のベンジジン、好ましくはテトラア
ルキルベンジジン、特に好ましくは3,3′,5,5′
−テトラメチルベンジジン(TMB)及びN−スルホア
ルキル−3,3′,5,5′−テトラメチルベンジジン
(SA−TMB)を用いたキットの場合としては、例え
ば、まずTMBを溶解可能な溶媒に溶解する。この溶媒
はTMBを溶解することが出来れば、例えばジメチルス
ルホキシド(DMSO)のような非プロトン性の有機溶
媒、ジメチルホルムアミド(DMF)、低級アルコール
類のようなプロトン性の有機溶媒であってもよく、ま
た、酸性の水溶液であってもよい。好ましくはpH2.
0程度の希塩酸などのうすい鉱酸の水溶液を用いること
が出来る。例えば、TMB5mgをpH2.0の希塩酸
1mlに溶解することができる。
【0096】これを緩衝液に一定量添加して残留塩素検
出キットを調製することが出来る。この場合、pHはT
MBが析出しない領域で用いることが出来るが、好まし
くは3から7であり、更に好ましくは4から5であり、
最も好ましくは4.6から5.0である。ここで用いら
れる緩衝系としては、特に制限されるものではないが、
マロン酸、フタル酸、フマル酸、酒石酸、クエン酸、β
−アラニン、ジメチルグルタル酸、アスパラギン酸、バ
ルビツール酸、安息香酸、コハク酸、シュウ酸、酢酸、
リンゴ酸、2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸、
マレイン酸などの緩衝剤を用いることが出来る。当該キ
ットの具体的な使用方法としては、ここへ残留塩素溶
液、例えば次亜塩素酸水溶液を水で適当倍に希釈したも
のを検出試薬の1/10量添加することにより生じる、
次亜塩素酸濃度の低い試料から高い試料へ順に、青色、
緑色、黄色、オレンジ色、又は赤色という呈色を観察す
ることにより被検液の残留塩素量を判定することが出来
る。各色についてそれぞれに次亜塩素酸濃度に応じて呈
色の濃度が正の相関を示しており、特に、青色及びオレ
ンジ色又は赤色についての各色の濃度の変化の情報は、
次亜塩素酸濃度の判定に於いて有益である。
【0097】また、本発明は、検出試薬及び、該検出試
薬を希釈するための溶液からなる残留塩素量を判定する
キットに関するものである。残留塩素を含む被検液の残
留塩素濃度測定可能領域、特に色相の変化により判定可
能な残留塩素濃度の領域は、該キットの検出試薬液中の
TMB濃度を変化させることにより変動させることがで
きる。即ち、検出試薬中のTMBの濃度を低下させるこ
とにより色相の変化が発生する判定可能な残留塩素濃度
の領域は低濃度側に移行し、逆にTMBの濃度を上昇さ
せることにより色相の変化が発生する該領域は高濃度側
に移行させることが出来るが、その関係は前述の通りで
ある。
【0098】従って、上記キットの構成に加えられた適
当な希釈用溶液により検出試薬中のTMB濃度を変化さ
せることにより、被検液中の残留塩素濃度に応じて適切
な色相変化を与えるキットを調製することが可能であ
る。前記希釈用溶液は、TMBの発色反応に影響を与え
ないものであればどのようなものでも差し支えないが、
好ましくはTMBの溶解されている緩衝溶液、又は蒸留
水である。ここで示されるTMBの溶解されている緩衝
溶液には当然に生成した色素の沈殿を抑制するための前
述の添加試薬が含まれていてもよく、好ましい態様とし
ては、TMBを溶解した溶液に検出試薬が含有されてい
る場合には該試薬を同一濃度含有したものを用い、検出
試薬が含有されていない場合には該試薬を含有しない緩
衝液を用いることがあげられる。SA−TMBにおいて
も、TMBの場合と同様の構成のキットである。
【0099】更に、本発明は予め指示薬が分注され、密
封された容器が複数個収納箱に収納された酸化物検出用
キットである。
【0100】収納箱は通常の公知の箱で良いが、複数の
容器が、固定されて収納されるものが好ましい。
【0101】上記キットは、例えば、予め指示薬が容器
に分注され、密封された該容器が複数個収納されたケー
ス(図1(a))、色見本(カラースケール)(図1
(b))及び分注機(被検液用)より構成される。
【0102】指示薬としては特に限定されないが、前記
に記載したベンジジン指示薬又はその塩〔例えばテトラ
アルキルベンジジン(例えばテトラメチルベンジジン
(TMB)、前記一般式Iで表される化合物のスルホア
ルキル誘導体、オルトトリジン(OT)〕、パラフェニ
レンジアミン誘導体(例えば、N,N−ジエチルパラフ
ェニレンジアミン(DPD))等が挙げられる。これら
の中で特に好ましいものはテトラメチルベンジジン(T
MB)、オルトトリジン(OT)、N,N−ジエチルパ
ラフェニレンジアミン(DPD)である。
【0103】上記指示薬に使用される溶媒、緩衝液の種
類、量は前述したTMBと同様である。
【0104】また、本キットは前記一般式(1)〜
(4)から選ばれる少なくとも1種の化合物を上記容器
に含有してることが、指示薬と被検液と反応して得られ
る色素の沈殿防止のために好ましい。指示薬に対する該
一般式(1)〜(4)から選ばれる化合物の量等は前述
したTMBの場合と同様である。
【0105】本発明は予め指示薬が容器に分注され、密
封された該容器に含有されていることを特徴とするが、
指示薬を精度よく分注することがポイントである。
【0106】本発明で指示薬を精度よく分注するとは、
分注誤差が±4%以内であることをいう。
【0107】指示薬の分注方法としては、精密ピペット
(例えば、FH−10S:(株)ヒラサワ)で、又は精
密天秤(例えば、AT250メトラー社製)で指示薬を
計りとり精度良く分注することができる。
【0108】指示薬の分注量は、本発明においては、通
常1ml〜5mlで、2mlが好ましい。
【0109】本発明の密封された容器はいかなる形状で
も良いが、使い勝手及びケースに収納する点からして、
例えば試験管のような形状が好ましい。
【0110】容器の材質の物性は、吸水性の点では0.
01〜0.06%が好ましく、ガス透過性の点ではCO
2:50〜900cc/100m2/mm/24hr.a
tm、25℃、O2:50〜350cc/100m2/2
4hr.atm、25℃が好ましく、具体的には例えば
ポリスチレン等が挙げられる。
【0111】本発明の容器を密封するふたの形状として
はいかなる形状でも良いが、栓、シール状が好ましく、
特にシール状がより好ましい。
【0112】ふたの材質の物性は、例えばポリエチレ
ン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニルポリ塩化ビニリデ
ン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエステル、ポリ
エチレンテレフタレート等ポリマーの場合、引っ張り強
さの点で1.1〜2.2kg/cm2、破断伸びの点で
10〜600%、引裂強さの点で1.1〜25kg/m
2が好ましい。
【0113】アルミ箔の場合は引っ張り強さの点で10
〜90N/mm2、破断伸びの点で2〜45%、引裂強
さの点で5〜60kg/mm2が好ましい。
【0114】上記ふたの吸水性は0〜9%が好ましく、
ガス透過性はCO2:1.5〜2700cc/100m2
/mm/24hr.atm、25℃、O2:20〜20
00cc/100m2/24hr.atm、25℃が好
ましい。
【0115】ふたの容器へのシール方法としては熱、電
磁波、超音波、レーザー光及び接着剤でシールでき、
熱、電磁波、超音波、レーザー光でシールする場合通
常、150〜280℃で1秒〜5秒でふたを容器にシー
ルでき、接着剤の場合は、平板接着であれば通常、加重
2kg/cm2でシールできる。
【0116】本発明の場合、密封性及び生産性の観点か
ら熱及びレーザー光でシールするのが好ましい。
【0117】本発明の酸化物検出用キットのふたと容器
の構成は、ふたはアルミ箔とポリマー(例えばポリエチ
レン等)を張り合わせた複合体シート(図2、図3)で
あり、容器はポリスチレン製試験管(図1、図2)であ
ることが好ましい。
【0118】また、アルミ箔とポリマーを張り合わせた
複合体シートは、被検液(酸化物)を分注する汎用分注
機に使用されているチップにより破断されなければなら
なく、ポリマーの厚みは、1μm〜10μmであること
が好ましく、アルミ箔の厚みは5μm〜50μmである
ことが好ましい。
【0119】シールされたアルミシートを破断する時の
加重は、汎用分注機の例えば200μl用チップの場合
50g/m2以上、水漏れ等を考慮すると200g/m2
以上であれば充分である。アルミシートとしては例え
ば、昭和アルミニウム(株)製(図3)のものがある。
【0120】また、上記ポリスチレン製試験管の厚み
は、通常200μm〜2000μm、好ましくは600
μm〜1300μmである。
【0121】本発明の酸化物検出用キットは酸化物であ
ればどれにも利用できるが、残留塩素量検出に適してい
る。
【0122】次に、本発明の予め指示薬が容器に分注さ
れ、密封された該容器が複数個収納された酸化物検出用
キットを図を用いて説明する。
【0123】本発明の一例を示す酸化物検出用キット構
成(図1)は、次の構成である。すなわち、図1(a)
は本発明の指示薬(試薬:2ml)2が容器(試験管:
12φ×75mm)1に分注され、アルミシート(図3
に示す)3で密封された容器1から構成されている。そ
の他に、恒温槽(ブロックヒーターなど、温度が60℃
に安定設定できるもの)、分光光度計(波長450nm
の吸光度が測定可能のもの)、カラーメーター(図1
(b))、標準カラースケール(図1(c))、試験管
立て及び分注機5を用意する。
【0124】本キットの場合カラーメーター(図1
(b))、標準カラースケール(図1(c))がセット
されている。図1(b)、図1(c)において1aは標
準カラースケール、1bはライト、1cは比色窓、1d
は標準カラースケールホルダー、1eは試験管ホルダ
ー、1fは酸化物量表示、1gは比色の度合を示すもの
である。
【0125】キット操作法 容器1を図2に示す方向に手で持ち、予め被検液を10
0μl分注した市販の分注機5を用いチップ4で加重7
0g/m2をかけアルミシート3を破断し被検液(酸化
物)100μlを容器1中の試薬に注入させ、軽く振と
うして混ぜる。次いでそれぞれ容器を室温で10秒〜1
0分間放置し、カラーメーターにて発色度合をブランク
と比較する。このとき、カラーメーターには標準カラー
スケールを予め用意しておき、これと比較することによ
り酸化物の検出が可能である。
【0126】また、分光光度計を用いて、450nm波
長の吸光度を測定する事により、予め求めておいた酸化
物量(例えば塩素検量線)から、被検液(酸化物)の酸
化物量を正確に測定することができる。
【0127】図3は本発明の好適な一例を示すアルミシ
ート(昭和アルミニウム(株)製)の断面図を示す。1
0は保護層、11はアルミ箔層、12はドライ層、13
は本発明の容器に上記のアルミシートを熱でシールでき
るホットメルト層である。
【0128】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明す
るが、本発明の態様はこれに限定されない。
【0129】実施例1(TMBを用いた残留塩素濃度判
定試薬の調製) TMB(アルドリッチ社製)10mgにpH2.0の塩
酸水溶液2mlを加えてよく撹拌して溶解し、TMB溶
液をつくった。一方、0.1Mクエン酸−0.1Mリン
酸緩衝液(pH4.8)(以下CP緩衝液という)をつ
くった。このCP緩衝液1mlに対しTMB溶液を20
μlの割合で添加して(沈殿を生じないようTMB溶液
20μlに対してCP緩衝液1mlを加えた。)撹拌
し、検出試薬Aを調製した。また、別途調製した検出試
薬AとCP緩衝液を容積比1:2で混合してTMB濃度
が検出試薬Aの3倍希釈液となる検出試薬Bを調製し
た。
【0130】更に同様にしてTMB濃度が順次3倍希釈
になるように検出試薬C(検出試薬Aの9倍希釈)、検
出試薬D(検出試薬Aの27倍希釈)、検出試薬E(検
出試薬Aの81倍希釈)を調製した。
【0131】実施例2(TMBを用いた残留塩素濃度の
判定) 残留塩素測定は、活性塩素源として次亜塩素酸ナトリウ
ム溶液を希釈したものを用いて以下のようにして測定し
た。次亜塩素酸ナトリウム溶液(関東化学製、活性塩素
量:最低5%以上、以下の実験では活性塩素量を5%と
して各溶液の活性塩素量を算出した。)を蒸留水で希釈
して、最終活性塩素濃度として2(mg/l)、10
(mg/l)、20(mg/l)、50(mg/l)、
100(mg/l)、200(mg/l)、300(m
g/l)、400(mg/l)、500(mg/l)、
800(mg/l)、1000(mg/l)、2000
(mg/l)、5000(mg/l)の水溶液を調製し
た。
【0132】これら各濃度の次亜塩素酸ナトリウム溶液
を100μlずつ、各検出試薬AからEが1mlずつ入
ったガラスチューブに加えて軽く振った。その結果、即
座に発色し、均一の色を呈するまでチューブを振った後
発色から1分後に色相を観察した。その結果を表1に示
した。
【0133】
【表1】
【0134】また、検出試薬Bについて(特に青色に発
色する濃度領域について)分光光度計マイクロフロー・
スペクトロフォトメーターCL−750(島津製作所
製)を用いて650nmの吸光度を測定した結果を表2
に示した。
【0135】
【表2】
【0136】表1の結果から、次亜塩素酸ナトリウム溶
液の濃度の変化に応じて低濃度の方から順に、青色、緑
色、黄色、オレンジ色、又は赤色という色相の変化が生
じ、それにより活性塩素の濃度の判定が簡便に実施でき
ることがわかる。更に、この結果TMB濃度を変化させ
ることにより測定対象試料の測定濃度領域を調整し、例
えば必要に応じて比較的高感度測定用、低感度測定用の
検出試薬が調製できることがわかる。例えば、この実施
例の結果によれば、検出試薬Aを用いることにより例え
ば500〜2000(mg/l)の濃度を、検出試薬B
を用いることにより例えば200〜1000(mg/
l)を、検出試薬Cを用いることにより例えば20(又
は50)〜400(mg/l)を、そして検出試薬Dを
用いた場合には例えば10〜200(mg/l)を色相
の変化で測定できることになる。
【0137】また、表2の結果から青色に発色する領域
において発色濃度が活性塩素濃度と正の相関を示すこと
から、被検液の低濃度域では青色の発色濃度を、そして
それ以上の濃度域では発色の色相の変化を観察すること
により2〜1000(mg/l)の領域が判定可能とな
り、色相のみの変化から判定した場合に比較して著しく
拡大された濃度領域が判定可能となることがわかる。更
に、標準濃度溶液を作成して、検量線を作成しておけ
ば、定量することも可能である。
【0138】実施例3(TMBを用いた残留塩素濃度判
定試薬の調製(2)) TMB(アルドリッチ社製)10mgにpH2.0の塩
酸水溶液2mlを加えてよく撹拌して溶解し、TMB溶
液をつくった。一方、0.1Mクエン酸−0.1Mリン
酸緩衝液(pH4.8)(以下CP緩衝液という)をつ
くり、ここへそれぞれ2,4−ジヒドロキシ安息香酸、
4−ヒドロキシ安息香酸、サリチルアミド、4−アミノ
ベンズアミド、4−クロロフェノール、2−アミノベン
ツイミダゾール、マロン酸ジメチル、3−オキソブタン
酸エチルを最終濃度でTMBの2倍等量(0.84m
M)となるように添加した溶液を調製した。このCP緩
衝液1mlに対しTMB溶液を20μlの割合で添加し
て(沈殿を生じないようTMB溶液20μlに対してC
P緩衝液1mlを加えた。)撹拌し、検出試薬A1〜A
8を調製した。
【0139】実施例4(TMBを用いた残留塩素濃度の
判定(2)) 残留塩素測定は、活性塩素源として次亜塩素酸ナトリウ
ム溶液を希釈したものを用いて以下のようにして測定し
た。次亜塩素酸ナトリウム溶液(関東化学製、活性塩素
量:最低5%以上、以下の実験では活性塩素量を5%と
して各溶液の活性塩素量を算出した。)を蒸留水で希釈
して、最終活性塩素濃度として2(mg/l)、10
(mg/l)、20(mg/l)、50(mg/l)、
100(mg/l)、200(mg/l)、300(m
g/l)、400(mg/l)、500(mg/l)、
800(mg/l)、1000(mg/l)、2000
(mg/l)、5000(mg/l)の水溶液を調製し
た。
【0140】これら各濃度の次亜塩素酸ナトリウム溶液
を100μlずつ、各検出試薬A、A1〜A8を1ml
ずつ入れたガラスチューブに加えて軽く振った。その結
果、即座に発色し、均一の色を呈するまでチューブを振
った後発色から24時間後に沈殿の生成を観察した。そ
の結果を表3に示した。
【0141】
【表3】
【0142】この結果、本発明の化合物を添加すること
により、発色後一定時間経過後に色素の沈殿の生成が抑
制されていることがわかる。
【0143】実施例5(スルホプロピル−TMBを用い
た残留塩素濃度判定試薬の調製) N−スルホプロピル−3,3′,5,5′−テトラメチ
ルベンジジン(以下SP−TMB)(同仁化学研究所
製)10mgにpH2.0の塩酸水溶液2mlを加えて
よく撹拌して溶解し、TMB溶液をつくった。一方、
0.1Mクエン酸−0.1Mリン酸緩衝液(pH4.
8)(以下CP緩衝液という)をつくった。このCP緩
衝液1mlに対しSP−TMB溶液を20μlの割合で
添加して(沈殿を生じないようSP−TMB溶液20μ
lに対してCP緩衝液1mlを加えた。)撹拌し、検出
試薬aを調製した。また、別途調製した検出試薬aとC
P緩衝液を容積比1:2で混合してTMB濃度が検出試
薬aの3倍希釈液となる検出試薬bを調製した。更に同
様にしてSP−TMB濃度が順次3倍希釈になるように
検出試薬c(検出試薬aの9倍希釈)、検出試薬d(検
出試薬aの27倍希釈)、検出試薬e(検出試薬aの8
1倍希釈)を調製した。
【0144】実施例6(SP−TMBを用いた残留塩素
濃度の判定) 残留塩素測定は、活性塩素源として次亜塩素酸ナトリウ
ム溶液を希釈したものを用いて以下のようにして測定し
た。
【0145】次亜塩素酸ナトリウム溶液(関東化学製、
活性塩素量:最低5%以上、以下の実験では活性塩素量
を5%として各溶液の活性塩素量を算出した。)を蒸留
水で希釈して、最終活性塩素濃度として2(mg/
l)、10(mg/l)、20(mg/l)、50(m
g/l)、100(mg/l)、200(mg/l)、
300(mg/l)、400(mg/l)、500(m
g/l)、800(mg/l)、1000(mg/
l)、2000(mg/l)、5000(mg/l)の
水溶液を調製した。これら各濃度の次亜塩素酸ナトリウ
ム溶液を100μlずつ、各検出試薬aからeが1ml
ずつ入ったガラスチューブに加えて軽く振った。その結
果、即座に発色し、均一の色を呈するまでチューブを振
った後発色から1分後に色相を観察した。その結果を表
4に示した。
【0146】
【表4】
【0147】また、検出試薬aについて(特に青色に発
色する濃度領域について)分光光度計マイクロフロー・
スペクトロフォトメーターCL−750(島津製作所
製)を用いて655nmの吸光度を測定した結果を表5
に示した。
【0148】
【表5】
【0149】上記表4の結果から、次亜塩素酸ナトリウ
ム溶液の濃度の変化に応じて低濃度の方から順に、青緑
色、黄色、オレンジ色、又は赤色という色相の変化が生
じ、それにより活性塩素の濃度の判定が簡便に実施でき
ることがわかる。更に、この結果SP−TMB濃度を変
化させることにより測定対象試料の測定濃度領域を調整
し、例えば必要に応じて比較的高感度測定用、低感度測
定用の検出試薬が調製できることがわかる。
【0150】例えば、この実施例の結果によれば、検出
試薬aを用いることにより、例えば500〜2000
(mg/l)の濃度を、検出試薬bを用いることによ
り、例えば200〜1000(mg/l)を、検出試薬
cを用いることにより、例えば20(又は50)〜40
0(mg/l)を、そして検出試薬dを用いた場合には
例えば、10〜200(mg/l)を測定できることに
なる。
【0151】また、上記表5の結果から青緑色に発色す
る領域においても発色濃度が活性塩素濃度と正の相関を
示すことから、青緑色の発色濃度により被検液間の残留
塩素濃度の比較をすることも可能である。
【0152】実施例7(SP−TMBを用いた残留塩素
濃度判定試薬の調製(2)) SP−TMB(アルドリッチ社製)10mgにpH2.
0の塩酸水溶液2mlを加えてよく撹拌して溶解し、T
MB溶液をつくった。一方、0.1Mクエン酸−0.1
Mリン酸緩衝液(pH4.8)(以下CP緩衝液とい
う)をつくり、ここへそれぞれ2,4−ジヒドロキシ安
息香酸、4−ヒドロキシ安息香酸、サリチルアミド、4
−アミノベンズアミド、4−クロロフェノール、2−ア
ミノベンツイミダゾールを最終濃度でSP−TMBの2
倍等量(0.84mM)となるように添加した溶液を調
製した。
【0153】このCP緩衝液1mlに対しSP−TMB
溶液を20μlの割合で添加して(沈殿を生じないよう
SP−TMB溶液20μlに対してCP緩衝液1mlを
加えた。)撹拌し、検出試薬a1〜a6を調製した。
【0154】実施例8(SP−TMBを用いた残留塩素
濃度の判定(2)) 残留塩素測定は、活性塩素源として次亜塩素酸ナトリウ
ム溶液を希釈したものを用いて以下のようにして測定し
た。
【0155】次亜塩素酸ナトリウム溶液(関東化学製、
活性塩素量:最低5%以上、以下の実験では活性塩素量
を5%として各溶液の活性塩素量を算出した。)を蒸留
水で希釈して、最終活性塩素濃度として2(mg/
l)、10(mg/l)、20(mg/l)、50(m
g/l)、100(mg/l)、200(mg/l)、
300(mg/l)、400(mg/l)、500(m
g/l)、800(mg/l)、1000(mg/
l)、2000(mg/l)、5000(mg/l)の
水溶液を調製した。
【0156】これら各濃度の次亜塩素酸ナトリウム溶液
を100μlずつ、各検出試薬a、a1〜a6を1ml
ずつ入れたガラスチューブに加えて軽く振った。その結
果、即座に発色し、均一の色を呈するまでチューブを振
った後、発色から24時間後に沈殿の生成を観察した。
その結果を表6に示した。
【0157】
【表6】
【0158】この結果、本発明の化合物を添加すること
により、発色後一定時間経過後に色素の沈殿の生成が抑
制されていることがわかる。
【0159】実施例9 (分注による判定精度)精密ピペット(分注誤差変動係
数1%以内)で試験管(12×75mm)に実施例1で
作成した検出試薬A 2mlを分注した(3本)。
【0160】分注誤差による反応の影響の程度を求める
ために、検出試薬A 2mlの基準に対し、−2%,−
4%,−8%,−12%の誤差を設定し、即ちそれぞれ
検出試薬A 1.96ml,1.92ml,1.76m
lを正確に試験管へ分注した(それぞれ3本)。
【0161】次に標準次亜塩素酸溶液を、それぞれ50
ppm,100ppm,200ppm、上記検出試薬A
を分注したそれぞれの試験管に注入し、軽く手で揺すっ
て撹拌した。30秒〜3分放置した後、検出試薬Aの分
注誤差に対し、目視による試薬の発色色相の変化を表7
に示す。
【0162】
【表7】
【0163】表7から明らかなように分注誤差が4%を
越えると標準次亜塩素酸量に対する目視による色相判定
に差異を生じた。
【0164】(分注誤差)検出試薬A 2mlを人、分
注器具、環境を変えて連続して分注し、それぞれ分注し
た検出試薬Aの重量を精密天秤で測定した。結果を以下
に示す。
【0165】
【表8】
【0166】表8の結果から、通常の分注操作におい
て、人、分注器具、環境等の間差の分注誤差変動係数は
5%程度が見込まれ、人、分注器具、環境により大きく
バラつくことが分かる。
【0167】よって本発明のキット性能を満足させる為
には予め精密ピペット(例えば、FH−10S:(株)
ヒラサワ:分注誤差変動係数1%以内)により精度よく
試験管等に個別分注することにより判定精度に対する信
頼度を向上させることができることが分かる。
【0168】(保存性試験) 1.A:ポリスチレン、B:アクリル、C:ポリエリレ
ン、D:ポリプロピレン製の試験管に検出試薬A 2m
lを分注し、図3に示すアルミシートを用いて260
℃、4秒でそれぞれの試験管をヒートシールした。この
試料を5本用意した。
【0169】2.ガラス広口ビン(直径8cm)に検出
試薬A 100mlを入れ、ガラススクリューキャップ
で栓をした。この試料(以下バルク試料A,B,Cとい
う)を3個用意した。
【0170】3.上記で作成した各々の試料を通常の環
境下で6月間保存した。
【0171】4.検出試薬Aの劣化度を確認するために
検出試薬Aのバックグランドの波長450nmの吸光度
を測定した。
【0172】また、検出試薬Aの発色反応の劣化を見る
ためにそれぞれの試料の検出試薬A2mlに対し標準次
亜塩素酸溶液(55ppm)100μlを入れ、しばら
く放置した後、波長450nmの吸光度を測定した。結
果を以下に示す。
【0173】
【表9】
【0174】表9から明らかなようにバルク状態で保存
した試料A,B,Cはバックグラウンドが上昇し、試薬
Aの発色時の色相にも実際の判定レベルより高い数値を
示した。
【0175】それに対し、試験管A,B,C,Dに個別
分注状態で保存した試料の検出試薬Aはバックグラウン
ドの上昇は認められず、検出試薬Aの発色反応の劣化も
なかった。当然、濃度判定に及ぼす影響は観察できなか
った。
【0176】
【発明の効果】本発明による残留塩素量を判定する方法
及び残留塩素量を判定するキットは、テトラアルキルベ
ンジジン及びその誘導体が酸化剤、特に残留塩素と共存
することによりその量に応じて生成する色素の色相に変
化が生ずることを利用して、簡便な操作で、且つ発色し
た色の色相を観察することによって被検液中の残留塩素
濃度を測定することができる。更に、生成した色素の沈
澱の発生を抑制して、発色後時間経過しても正確な被検
液中の残留塩素濃度を測定することを可能にした。
【0177】また、酸化物、特に残留塩素を含有する被
検液を試薬に添加するだけで即座に含有される酸化物の
濃度、特に残留塩素濃度を検出することができ、密封さ
れた容器中の酸化剤(試薬)の保存性物良好であった。
【0178】尚、OD,DPDの場合も同様な結果が得
られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一例を示す酸化物検出用キット構成図
である。
【図2】本発明の一例を示す容器(試薬)と分注機(被
検液用)を示す図である。
【図3】本発明の一例を示すアルミシートの断面図を示
す。
【符号の説明】
1 容器(試験管) 2 指示薬(試薬) 3 アルミシート 4 チップ 5 分注機(被検液用) 10 保護層 11 アルミ箔層 12 ドライ層 13 ホットメルト層

Claims (28)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ベンジジン指示薬又はその塩を含有する
    溶液と被検液を混合して生成する色素の色相により、被
    検液中の残留塩素量を判定することを特徴とする残留塩
    素量を判定する方法。
  2. 【請求項2】 ベンジジン指示薬又はその塩を含有する
    溶液と被検液を混合して生成する色素の色相により、被
    検液中の残留塩素量を判定する方法であって、ベンジジ
    ン指示薬又はその塩の濃度を変化させることによって、
    生成する色素の色相変化が生じる残留塩素の濃度領域を
    変化させることを特徴とする残留塩素量を判定する方
    法。
  3. 【請求項3】 ベンジジン指示薬がテトラアルキルベン
    ジジンであることを特徴とする請求項1又は2に記載の
    残留塩素量を判定する方法。
  4. 【請求項4】 テトラアルキルベンジジンが3,3′,
    5,5′−テトラメチルベンジジンであることを特徴と
    する請求項3に記載の残留塩素量を判定する方法。
  5. 【請求項5】 テトラアルキルベンジジンが下記一般式
    Iで表される3,3′,5,5′−テトラアルキルベン
    ジジンのスルホアルキル誘導体である請求項3に記載の
    残留塩素量を判定する方法。 【化1】 〔式中R1,R2,R3,R4は同一又は異なっても良く、
    各々炭素原子数1乃至6の直鎖アルキル基を表し、
    5,R6は水素原子又は次式II:−(CH2)nSO3
    (式中、nは1乃至6の整数を表す。)で表されるスル
    ホアルキル基を表し、かつ少なくともR5、R6の何れか
    一方は該スルホアルキル基を表すものであり、更に該ス
    ルホアルキル基はヒドロキシル基の少なくとも1個によ
    り置換されていてもよい。〕
  6. 【請求項6】 前記色相が青色、緑色、黄色、オレンジ
    色、赤色又はこれらの中間色の何れかであることを特徴
    とする請求項4に記載の残留塩素量を判定する方法。
  7. 【請求項7】 前記色相が青緑色、黄色、オレンジ色、
    赤色又はこれらの中間色の何れかであることを特徴とす
    る請求項5記載の残留塩素量を判定する方法。
  8. 【請求項8】 ベンジジン指示薬又はその塩を含有する
    溶液と被検液を混合して生成する色素の色相により、被
    検液中の残留塩素量を判定するキット。
  9. 【請求項9】 ベンジジン指示薬又はその塩を希釈でき
    る溶液を含んでなる、ベンジジン指示薬又はその塩を含
    有する溶液と被検液を混合して生成する色素の色相によ
    り被検液中の残留塩素量を判定するキット。
  10. 【請求項10】 ベンジジン指示薬又はその塩を含有す
    る溶液と被検液を混合して生成する色素の色相により、
    被検液中の残留塩素量を判定するキットであって、ベン
    ジジン指示薬又はその塩を含有する溶液の複数の希釈倍
    率及び/又は濃度と被検液中の様々な残留塩素含有量の
    組み合わせによって観察される標準的な発色の色相名及
    び/又は発色の色相見本を含む被検液中の残留塩素量を
    判定するキット。
  11. 【請求項11】 ベンジジン指示薬がテトラアルキルベ
    ンジジンであることを特徴とする請求項8〜10の何れ
    か1項に記載の残留塩素量を判定するキット。
  12. 【請求項12】 テトラアルキルベンジジンが3,
    3′,5,5′−テトラメチルベンジジンであることを
    特徴とする請求項11に記載の残留塩素量を判定するキ
    ット。
  13. 【請求項13】 テトラアルキルベンジジンが前記一般
    式Iで表される3,3′,5,5′−テトラアルキルベ
    ンジジンのスルホアルキル誘導体であること特徴とする
    請求項11に記載の残留塩素量を判定するキット。
  14. 【請求項14】 ベンジジン指示薬又はその塩及び一般
    式(1)〜(4)から選ばれる化合物を少なくとも1種
    含有する溶液と被検液を混合して生成する色素の色相に
    より、被検液中の残留塩素量を判定することを特徴とす
    る残留塩素量を判定する方法。 【化2】 〔式中、W1は、−NO2,−CN,−CHO,−COR
    7(R7はアルキル基、又は水素原子)の何れかであっ
    て、X1,Y1,Z1は、それぞれ、−NR89(R8,R
    9は置換、無置換のアルキル基、又は水素原子)、−O
    10(R10は置換、無置換のアルキル基、又は水素原
    子)、−R11(R11は置換、無置換の炭素数1から4の
    低級アルキル基)、−Cl,−F,−I,−Hから選ば
    れる原子、基であり、X1,Y1,Z1のうち少なくとも
    一つは水素原子以外である。〕 【化3】 〔式中、X2,Y2,Z2は、それぞれ、−NR12
    13(R12,R13は置換、無置換のアルキル基、又は水素
    原子)、−OR14(R14は置換、無置換のアルキル基、
    又は水素原子)、−R15(R15は置換、無置換の炭素数
    1から4の低級アルキル基)、−Cl,−F,−I,−
    Hから選ばれる原子、基であり、X2,Y2,Z2のうち
    少なくとも一つは水素原子以外である。〕 【化4】 〔式中、X3は、−NR1617(R16,R17は置換、無
    置換のアルキル基、置換、無置換のアルケニル基、置
    換、無置換のアルキニル基、置換、無置換のフェニル
    基、置換、無置換のヘテロ環残基又は水素原子)、−O
    18(R18は置換、無置換アルキル基、又は水素原
    子)、−R19(R19は置換、無置換の炭素数1から4の
    低級アルキル基)、−Cl,−F,−I,−Hから選ば
    れる原子、基であり、Y3は、置換、無置換のアルキル
    基、置換、無置換のアルケニル基、置換、無置換のアル
    キニル基、置換、無置換のフェニル基、置換、無置換の
    ヘテロ環残基、−NR2021(R20,R21は置換、無置
    換のアルキル基、又は水素原子)、置換、無置換のアル
    キルチオ基、置換、無置換のフェニルチオ基、−OR22
    (R22は置換、無置換のアルキル基、又は水素原子)、
    −R23(R23は置換、無置換の炭素数1から4の低級ア
    ルキル基)、−Cl,−F,−I,−Hから選ばれる原
    子、基である。Z3はヒドロキシル基、置換、無置換ア
    ルコキシル基、置換、無置換のアルキル基、置換、無置
    換のシクロアルキル基である。〕 一般式(4) X4−COCH2CO−Y4 〔式中、X4,Y4は、それぞれ、置換、無置換のアルキ
    ル基、置換、無置換のアルコキシル基、置換、無置換の
    フェニル基、ヒドロキシル基又はアミノ基で置換された
    フェニル基、−NR2425(R24,R25は置換、無置換
    のアルキル基、又は水素原子)から選ばれる基であ
    る。〕
  15. 【請求項15】 ベンジジン指示薬又はその塩及び上記
    一般式(1)乃至(4)から選ばれる化合物を少なくと
    も1種類含有する溶液と被検液を混合して生成する色素
    の色相により、被検液中の残留塩素量を判定する方法で
    あって、ベンジジン指示薬又はその塩の濃度を変化させ
    ることによって、生成する色素の色相変化が生じる残留
    塩素の濃度領域を変化させることを特徴とする残留塩素
    量を判定する方法。
  16. 【請求項16】 ベンジジン指示薬がテトラアルキルベ
    ンジジンであることを特徴とする請求項14又は15に
    記載の残留塩素量を判定する方法。
  17. 【請求項17】 テトラアルキルベンジジンが3,
    3′,5,5′−テトラメチルベンジジンであることを
    特徴とする請求項16に記載の残留塩素量を判定する方
    法。
  18. 【請求項18】 テトラアルキルベンジジンが前記一般
    式Iで表される3,3′,5,5′−テトラアルキルベ
    ンジジンのスルホアルキル誘導体であることを特徴とす
    る請求項16に記載の残留塩素量を判定する方法。
  19. 【請求項19】 ベンジジン指示薬又はその塩及び前記
    一般式(1)乃至(4)から選ばれる化合物を少なくと
    も1種含有する溶液と被検液を混合して生成する色素の
    色相により、被検液中の残留塩素量を判定するキット。
  20. 【請求項20】 ベンジジン指示薬又はその塩を希釈で
    きる溶液を含んでなる、ベンジジン指示薬又はその塩及
    び上記一般式(1)乃至(4)から選ばれる化合物を少
    なくとも1種含有する溶液と被検液を混合して生成する
    色素の色相により被検液中の残留塩素量を判定するキッ
    ト。
  21. 【請求項21】 ベンジジン指示薬又はその塩及び上記
    一般式(1)乃至(4)から選ばれる化合物を少なくと
    も1種含有する溶液と被検液を混合して生成する色素の
    色相により、被検液中の残留塩素量を判定するキットで
    あって、発色溶液の複数の希釈倍率及び/又は濃度と被
    検液中の様々な残留塩素含有量の組み合わせによって観
    察される標準的な発色の色相名及び/又は発色の色相見
    本を含む被検液中の残留塩素量を判定するキット。
  22. 【請求項22】 ベンジジン指示薬がテトラアルキルベ
    ンジジンであることを特徴とする請求項19〜21の何
    れか1項に記載の残留塩素量を判定するキット。
  23. 【請求項23】 テトラアルキルベンジジンが3,
    3′,5,5′−テトラメチルベンジジンであることを
    特徴とする請求項22に記載の残留塩素量を判定するキ
    ット。
  24. 【請求項24】 テトラアルキルベンジジンが前記一般
    式Iで表される3,3′,5,5′−テトラアルキルベ
    ンジジンのスルホアルキル誘導体であることを特徴とす
    る請求項22に記載の残留塩素量を判定するキット。
  25. 【請求項25】 予め指示薬が分注され、密封された容
    器が複数個収納箱に収納されていることを特徴とする酸
    化物検出用キット。
  26. 【請求項26】 前記指示薬がベンジジン指示薬及びそ
    の塩であることを特徴とする請求項25に記載の酸化物
    検出用キット。
  27. 【請求項27】 前記指示薬がパラフェニレンジアミン
    誘導体であることを特徴とする請求項25に記載の酸化
    物検出用キット。
  28. 【請求項28】 前記一般式(1)〜(4)から選ばれ
    る化合物の少なくとも1種を前記容器に含有しているこ
    とを特徴とする請求項25、26又は27に記載の酸化
    物検出用キット。
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