JPH09130050A - 多層プリント配線板およびその製造方法 - Google Patents

多層プリント配線板およびその製造方法

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JPH09130050A
JPH09130050A JP33568295A JP33568295A JPH09130050A JP H09130050 A JPH09130050 A JP H09130050A JP 33568295 A JP33568295 A JP 33568295A JP 33568295 A JP33568295 A JP 33568295A JP H09130050 A JPH09130050 A JP H09130050A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 外観および信頼性に優れた多層プリント配線
板とその製造技術を提供すること。 【解決手段】 表面に微細な凹凸層9を有する内層銅パ
ターン3と、外層銅パターン6との間に、アディティブ
用接着剤からなる層間絶縁層4を設けてなるビルドアッ
プ多層プリント配線板1において、内層銅パターン3の
凹凸層9表面には、イオン化傾向が銅よりも大きくかつ
チタン以下である金属を1種以上含む金属層、あるいは
貴金属層10が被覆形成されている。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、多層プリント配線
板およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、外層銅パターンと内層銅パターン
との間に層間絶縁層が介在されてなるビルドアップ多層
プリント配線板は、例えば、以下に示す〜のプロセ
スを経て製造されている。即ち、 .基材上への内層(下層)銅パターンの形成、 .無電解めっき用接着剤の塗布による層間絶縁層の形
成、 .層間絶縁層へのバイアホール形成用開口部の形成、 .酸、酸化剤処理等による層間絶縁層の粗化、 .スルーホール形成用孔の形成およびデスミア処理
(孔の中の樹脂の切削屑を化学処理で除去すること)、 .触媒核付与、 .めっきレジストの形成、 .硫酸等による活性化処理、 .無電解銅めっきによる外層(上層)銅パターンの形
成、という一連のプロセスである。
【0003】一方で、この種の多層プリント配線板の製
造プロセスでは、内層(下層)銅パターンと層間絶縁層
との密着性の向上を目的として、例えば、上記の工程
前に銅−ニッケル−リン合金めっき処理等を実施するこ
とによって、内層銅パターンの表面に凹凸層が形成され
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記のよう
な製造プロセスでは、バイアホール形成用開口やスルー
ホール形成用孔を設けると、内層(下層)銅パターンの
表層の一部は層間絶縁層の外部に露出した状態となる。
そのため、後の工程において、その露出した内層銅パタ
ーンの表層部は、リン酸やクロム酸等の無電解めっき用
接着剤層の粗化液や過硫酸ソーダ等のソフトエッチング
液に直接に晒される。そして、このような場合、バイア
ホール周囲の内層銅パターンが変色したり、その内層銅
パターンの表層部が溶解し(いわゆるハロー現象が起
き)たりするなどの不具合が生じる。その結果、得られ
る多層プリント配線板の外観を損ねるという問題があっ
た。
【0005】しかも、上記表層部(凹凸層)の溶解が顕
著になって内層(下層)銅パターン自体を溶解させるよ
うになると、外観の悪化に止まらず、層間絶縁層と内層
銅パターンとの密着性やめっき付き周り性なども悪化す
る(図7 (a)〜(c) に示す顕微鏡写真参照)。その結
果、多層プリント配線板の信頼性が損なわれるという問
題があった。
【0006】本発明は、従来の技術が抱える上記問題を
解消するためになされたものであり、その目的は、外観
および信頼性に優れた多層プリント配線板とその製造技
術を提案することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】発明者は、上記の目的実
現に向け鋭意研究を行った。その結果、上記課題におい
て問題提起した内層銅パターンの変色の原因は、その内
層銅パターンの表層部に設けた合金めっきが酸や酸化剤
に溶解しやすいという点にあり、層間絶縁層と合金めっ
き層との間に隙間が生じて変色することを知見した。ま
た、このような合金めっき層の溶解が進むと、その合金
めっきの触媒核であるPdが表出し、酸や酸化剤の溶液中
において、CuとPdの局部電極反応が起こり、 Cu→Cu2+ +2e- 2H+ +2e- →H2 の反応が生じる。そのため、Cuがイオン化して溶出し内
層(下層)銅パターン自体が溶解することも併せて知見
した(図8に示す原理図参照)。
【0008】本発明は、このような知見に基づいてなさ
れたものであり、以下に示す内容を要旨構成とするもの
である。すなわち、上記の課題を解決するために、本発
明の多層プリント配線板は、 (1)表面に微細な凹凸層を有する内層銅パターンと、外
層銅パターンとの間に層間絶縁層を設けてなるビルドア
ップ多層プリント配線板において、イオン化傾向が銅よ
りも大きくかつチタン以下である金属を1種以上含む金
属層が、前記内層銅パターンの凹凸層表面に被覆形成さ
れてなることを特徴とする。 (2)表面に微細な凹凸層を有する内層銅パターンと、外
層銅パターンとの間に層間絶縁層を設けてなるビルドア
ップ多層プリント配線板において、イオン化傾向が銅よ
りも大きくかつチタン以下である金属を1種以上含む金
属層が、上記内層銅パターンの凹凸層表面に被覆形成さ
れ、バイアホールのための開口部が、上記層間絶縁層に
形成され、内層導体パターンと外層導体パターンを接続
するバイアホールが、その開口部にて部分的に露出して
いる金属層と凹凸層とを介して形成されてなることを特
徴とする。
【0009】なお、上記 (1)または(2) に記載の多層プ
リント配線板において、イオン化傾向が銅よりも大きく
かつチタン以下である金属は、チタン、アルミニウム、
亜鉛、鉄、インジウム、タリウム、コバルト、ニッケ
ル、スズ、鉛およびビスマスから選ばれるいずれか少な
くとも1種以上であることが好ましい。内層銅パターン
表層の微細な凹凸層は、針状結晶合金層であることが好
ましく、特に、針状の銅−ニッケル合金層、銅−ニッケ
ル−リン合金層、銅−コバルト合金層、銅−コバルト−
リン合金層であることが望ましい。また、イオン化傾向
が銅よりも大きくかつチタン以下である金属を1種以上
含む金属層は、その厚さが前記凹凸層の厚さよりも薄い
ことが好ましく、特に、内層銅パターン表層の微細な凹
凸層は、厚さが 0.5μm〜7.0 μmの銅−ニッケル−リ
ン合金層であり、イオン化傾向が銅よりも大きくかつチ
タン以下である金属を1種以上含む金属層は、厚さが0.
01μm〜1.0 μmのスズ層であることが望ましい。
【0010】また、本発明にかかるの他の多層プリント
配線板は、 (3)表面に微細な凹凸層を有する内層銅パターンと、外
層銅パターンとの間に層間絶縁層を設けてなるビルドア
ップ多層プリント配線板において、貴金属層が、前記内
層銅パターンの凹凸層表面に被覆形成されてなることを
特徴する。 (4)表面に微細な凹凸層を有する内層銅パターンと、外
層銅パターンとの間に層間絶縁層が設けてなるビルドア
ップ多層プリント配線板において、貴金属層が、上記内
層銅パターンの凹凸層表面に被覆形成され、バイアホー
ルのための開口部が、上記層間絶縁層に形成され、内層
導体パターンと外層導体パターンを接続するバイアホー
ルが、その開口部にて部分的に露出している貴金属層と
凹凸層とを介して形成されてなることを特徴とする。
【0011】なお、上記 (3)または(4) に記載の多層プ
リント配線板において、貴金属層を構成する貴金属は、
金および白金から選ばれる少なくとも1種以上であるこ
とが好ましい。内層銅パターン表層の微細な凹凸層は、
針状結晶合金層であることが好ましく、特に、針状の銅
−ニッケル合金層、銅−ニッケル−リン合金層、銅−コ
バルト合金層、銅−コバルト−リン合金層であることが
望ましい。また、貴金属層は、その厚さが前記凹凸層の
厚さよりも薄いことが好ましい。
【0012】そして、このような多層プリント配線板を
製造する方法として、本発明にかかる多層プリント配線
板の製造方法は、 (1)基材に設けられた内層銅パターンの表面に、微細な
凹凸層を形成する工程と、前記凹凸層の表面に、イオン
化傾向が銅よりも大きくかつチタン以下である金属を1
種以上含む金属層を被覆形成する工程と、無電解めっき
用接着剤からなる層間絶縁層を形成する工程と、前記金
属層を部分的に露出させる工程と、前記層間絶縁層の表
面を粗化液で粗化する工程と、前記層間絶縁層の表面に
触媒核を付与する工程と、無電解銅めっきによって、外
層銅パターンおよび必要に応じてバイアホールを形成す
る工程とを少なくとも含むことを特徴とする。 (2)基材に設けられた内層銅パターンの表面に、針状の
銅−ニッケル−リン合金層を無電解銅−ニッケル−リン
合金めっきによって形成する工程と、前記銅−ニッケル
−リン合金層の表面に、少なくともスズを含む無電解置
換めっきによって含スズめっき膜を被覆形成する工程
と、無電解めっき用接着剤からなる層間絶縁層を形成す
る工程と、前記含スズめっき膜を部分的に露出させるバ
イアホール形成用開口部を前記層間絶縁層の所定位置に
形成する工程と、前記層間絶縁層の表面を粗化液で粗化
する工程と、前記層間絶縁層の表面に触媒核を付与する
工程と、無電解銅めっきによって、外層銅パターンおよ
びバイアホールを形成する工程とを少なくとも含むこと
を特徴とする。 (3)基材に設けられた内層銅パターンの表面に、微細な
凹凸層を形成する工程と、前記凹凸層の表面に、貴金属
層を被覆形成する工程と、無電解めっき用接着剤からな
る層間絶縁層を形成する工程と、前記貴金属層を部分的
に露出させる工程と、前記層間絶縁層の表面を粗化液で
粗化する工程と、前記層間絶縁層の表面に触媒核を付与
する工程と、無電解銅めっきによって、外層銅パターン
および必要に応じてバイアホールを形成する工程とを少
なくとも含むことを特徴とする。
【0013】なお、このような銅パターンの溶解腐食を
防止する技術として、従来、 .特開平2−292894号公報には、銅、コバルトまたは
ニッケルの電気めっき層を形成した後、防錆処理を施す
技術が、 .特開平3−283389号には、亜鉛、スズおよびコバル
トの群から選ばれる少なくとも1種の金属が含有された
銅めっき浴を用いて、熱劣化防止層を有する粗化面を形
成し、この面にクロメート処理を施して防錆処理を行う
技術が、それぞれ提案されている。また、銅パターンへ
の凹凸層(粗化層)の形成技術として、従来、 .特開平4−116176号には、銅、ニッケルおよびリン
からなる合金めっきにより、均質に粗化された無電解銅
めっき被膜を形成し、プリプレグとの密着性を改善する
技術が提案されている。
【0014】しかしながら、特開平2−292894号に記載
の技術は、防錆技術としてクロム酸化物を使用してお
り、電気導電性がないため、本発明のようなバイアホー
ルに使用することは不可能である。また、特開平3−28
3389号に記載の技術は、アディティブ配線基板に転用す
ると、塩酸や硫酸などの無電解めっき用接着剤の粗化液
にクロムが急速に溶解してしまうため、転用できない。
さらに、特開平4−116176号に記載の技術は、銅パター
ンの溶解腐食を防止するための技術ではない。このよう
に、従来の技術においては、本発明のような多層プリン
ト配線板を製造する技術は存在していない。
【0015】
【発明の実施の形態】本発明にかかる多層プリント配線
板の特徴は、表層に微細な凹凸層を有する内層銅パター
ンが、イオン化傾向が銅よりも大きくかつチタン以下で
ある金属を1種以上含む金属層、もしくは貴金属層によ
って保護されている点にある。これにより、 .内層銅パターンが酸性の処理液に直接に晒されるこ
とがないから、合金からなる凹凸層部分が溶解すること
はない。 .イオン化傾向が銅よりも大きくかつチタン以下であ
る金属を1種以上含む金属層自体が酸にわずかに溶解し
て電子を放出するため、触媒核であるPdと導体回路であ
るCuとの局部的な電池反応を防止でき、Cu導体回路の溶
解を防ぐことができる。一方、貴金属層の場合は、酸性
の処理液が浸透せずCu−Pdの電極反応が生じないため、
銅導体回路の溶解を防止することができる。 .前記の金属層または貴金属層は、酸性の処理液に晒
されても変色しにくいため、外観不良となることはな
い。 .前記の金属層または貴金属層は、凹凸層の酸化を防
止して凹凸層と樹脂層間絶縁層の濡れ性を改善でき、ま
た、凹凸層と樹脂層間絶縁層との間に空隙が発生するの
を防止して凹凸層と樹脂層との密着性を向上させること
ができ、ひいては、ヒートサイクルなどに供しても樹脂
層の剥離やクラックの発生を抑止することが可能とな
る。その結果、凹凸層表面を前記の金属層または貴金属
層で保護すると、凹凸層を形成した銅パターンを2週間
近く放置することも可能であり、工程の管理が容易とな
る。 .従来、バイアホールを形成する場合には、凹凸層上
に無電解銅めっきを施す前に、酸処理によって酸化膜を
除去する必要があったが、前記の金属層または貴金属層
は、酸化されずに電気導電性を有することから、このよ
うな処理が不要となる。
【0016】このような作用効果は、酸あるいは酸化剤
によって変色や溶解を起こしやすく、しかも非常に酸化
しやすく、一旦酸化すると樹脂との親和性が低下して剥
離やクラック発生の原因となる合金膜、例えば、銅−ニ
ッケル合金膜、銅−ニッケル−リン合金膜、銅−コバル
ト合金膜、あるいは銅−コバルト−リン合金膜からなる
凹凸層を有する内層銅パターンを形成した多層プリント
配線板において特に顕著である。
【0017】本発明では、イオン化傾向が銅よりも大き
くかつチタン以下である金属は、チタン、アルミニウ
ム、亜鉛、鉄、インジウム、タリウム、コバルト、ニッ
ケル、スズ、鉛およびビスマスから選ばれるいずれか少
なくとも1種以上であることが望ましい。なかでも、ス
ズは、工業的に安価で毒性が少ない金属で、酸や酸化剤
での変色がなく、光沢を維持し続けうるものであり、し
かも、銅との置換反応によって析出する金属であり、銅
−ニッケル層あるいは銅−ニッケル−リン層の針状結晶
を破壊することなく被覆できるという点で最適である。
また、スズは、銅との置換反応によって析出するため
に、表層の銅と一旦置換されると、そこでの置換反応は
終了し、非常に薄い被膜で上記凹凸層の針状結晶を覆う
ような層を形成する。それ故に、上記凹凸層の針状結晶
はその尖った形状がそのまま維持され、上記凹凸層とス
ズめっき膜とは密着性にも優れる。
【0018】本発明では、貴金属層を構成する貴金属
は、金あるいは白金であることが望ましい。これらの貴
金属は、銀などに比べて粗化処理液である酸や酸化剤に
冒されにくく、また凹凸層を容易に被覆できるからであ
る。ただし、貴金属は、コストが嵩むために、高付加価
値製品にのみ使用されることが多い。
【0019】本発明では、内層銅パターン表層の微細な
凹凸層は、針状結晶合金層であることが好ましく、特
に、針状の銅−ニッケル合金層、銅−ニッケル−リン合
金層、銅−コバルト合金層、銅−コバルト−リン合金層
であることが望ましい。これらの合金層は、針状結晶で
あるため層間絶縁剤層との密着性に優れ、また電気導電
性にも優れるためバイアホール上に形成されていても絶
縁されることがなく、それ故にバイアホール形成のため
に除去する必要もないからである。これにより、製造工
程が簡略化され、不良の発生を大幅に低減できる。ま
た、これらの合金層は、硬度が高く、ヒートサイクル性
にも優れる。なお、前記合金層を構成する銅、ニッケル
およびリンの含有量は、それぞれ、90〜96%、1〜5
%、 0.5〜2wt%程度であることが望ましい。この理由
は、上記範囲内において、析出被膜の結晶が針状構造に
なり、アンカー効果に優れるからである。
【0020】本発明では、イオン化傾向が銅より大きく
かつチタン以下である金属を1種以上含む金属層、また
は貴金属層は、その厚さが凹凸層の厚さよりも薄いこと
が望ましい。この理由は、前記の金属層または貴金属層
の厚さが凹凸層の厚さより厚くなると、凹凸層が金属層
等の下に深く埋没してしまう。この場合、針状結晶の尖
った形状が維持されなくなり(鋭角な形状をしていた結
晶の先端部が鈍角化し)、所望の密着性を確保できなく
なるからである。
【0021】具体的には、 .下層銅パターン表層の凹凸層は、厚さが 0.5μm〜
7.0 μm、好ましくは1.0μm〜5.0 μm、より好まし
くは 1.5μm〜3.0 μmの銅−ニッケル−リン合金層と
する。なお、ここでいう凹凸層(銅−ニッケル−リン合
金層)の厚さとは、内層銅パターンの表面から針状結晶
の頂部までの距離をいう。ここで、上記凹凸層の厚みを
上記範囲に限定した理由は、凹凸層の厚みが7.0μmよ
りも厚くなると、めっき時間の長期化に起因して製造コ
ストや材料コストが嵩むおそれがあるばかりでなく、皮
膜自体が脆くなって層間絶縁剤層との剥離が生じやすく
なる。一方 0.5μmよりも薄くなると、アンカー効果が
不充分となって層間絶縁剤層との剥離が生じやすくなる
からである。
【0022】.イオン化傾向が銅より大きくかつチタ
ン以下である金属を1種以上含む金属層は、厚さが0.01
μm〜1.0 μm、好ましくは0.05μm〜0.8 μm、より
好ましくは 0.1μm〜0.5 μmの含スズめっき層とす
る。ここで、上記含スズめっき層(金属層)の厚みを上
記範囲に限定した理由は、スズめっき層が 1.0μmより
も厚くなると、上記のように層間樹脂絶縁材との所望の
密着性を確保できなくなることに加えて、製造コストや
材料コストが嵩むという欠点がある。一方、スズめっき
層が0.01μmよりも薄くなると、銅−ニッケル−リン合
金層を完全に被覆することができなくなり、当該合金部
分がクロム酸等に直接に晒されて溶解してしまうため
に、電極反応の防止ができないからである。
【0023】.貴金属層は、その厚さが0.05〜1.0 μ
mの範囲にあることが望ましい。この理由は、貴金属層
の厚さが1.0 μmを超えると、コストが嵩むうえ、内層
銅パターン表層の凹凸層を埋めてしまい、層間樹脂絶縁
材との所望の密着性を確保できなくなる。一方、貴金属
層の厚さが0.05μm未満では、上記凹凸層の保護が困難
になり、電極反応の防止ができないからである。
【0024】本発明では、多層プリント配線板を構成す
る層間絶縁層は、無電解めっき用接着剤からなることが
望ましく、特にこの無電解めっき用接着剤は、酸あるい
は酸化剤に難溶性の耐熱性樹脂(耐熱性樹脂マトリック
ス)中に予め硬化処理された酸あるいは酸化剤に可溶性
の耐熱性樹脂粒子を含有してなるものが望ましい。
【0025】上記耐熱性樹脂粒子としては、.平均粒
径が10μm以下の耐熱性樹脂粉末、.平均粒径が2μ
m以下の耐熱性樹脂粉末を凝集させて平均粒径を前記粉
末の3倍以上の大きさとした凝集粒子、.平均粒径が
10μm以下の耐熱性粉末樹脂粉末と、平均粒径が前記粉
末の1/5以下でかつ2μm以下の耐熱性樹脂粉末との
混合物、.平均粒径が2μm〜10μmの耐熱性樹脂粉
末の表面に、平均粒径が2μm以下の耐熱性樹脂粉末ま
たは無機粉末のいずれか少なくとも1種を付着させてな
る疑似粒子、から選ばれることが望ましい。
【0026】上記耐熱性樹脂マトリックスとしては、感
光性樹脂を有利に用いることができる。バイアホール形
成用の開口部が、露光、現像によって容易に形成できる
からである。また、エポキシ樹脂やポリイミド樹脂、エ
ポキシアクリレート樹脂などの熱硬化性樹脂、あるいは
これらにポリエーテルスルフォンなどの熱可塑性樹脂を
混合した複合体などを用いることもできる。上記耐熱性
樹脂粒子としては、エポキシ樹脂、アミノ樹脂(メラミ
ン樹脂、尿素樹脂、グアナミン樹脂)などがよい。な
お、エポキシ樹脂は、そのオリゴマーの種類、硬化剤の
種類、架橋密度を変えることにより、任意に酸や酸化剤
に対する溶解度を変えることができる。例えば、ビスフ
ェノールA型エポキシ樹脂オリゴマーをアミン系硬化剤
で硬化処理したものは、酸化剤に溶解しやすい。ノボラ
ックエポキシ樹脂オリゴマーをイミダゾール系硬化剤で
硬化させたものは、酸化剤に溶解しにくい。
【0027】上記耐熱性樹脂粒子を溶解除去するための
酸としては、リン酸や塩酸、硫酸、有機酸(蟻酸や酢酸
など)などがあるが、特に有機酸が望ましい。残留イオ
ンが少なくマイグレーションが発生しにくい。また、内
層導体回路を腐食させにくいからである。また、酸化剤
としては、クロム酸や過マンガン酸塩(過マンガン酸カ
リウムなど)などが望ましい。特に、アミノ樹脂粒子を
溶解除去する場合には、酸と酸化剤で交互に粗化処理す
ることが望ましい。
【0028】本発明では、銅−ニッケル合金めっきまた
は銅−ニッケル−リン合金めっきの前にパラジウム触媒
を付与することが必要である。触媒の付与がなければめ
っきが析出しないからである。このような触媒として
は、塩化パラジウム触媒と有機酸の混合溶液から構成さ
れるものを使用することができる。このパラジウム触媒
の存在により、銅とパラジウムの局部電極反応が生じて
しまうのであり、本発明は、この局部電極反応を防止す
ることを主眼とした。
【0029】次に、本発明にかかる多層プリント配線板
の製造方法を説明する。 (1) まず、基材上に内層銅パターンを形成する。基材へ
の銅パターンの形成は、銅張積層板をエッチングして行
うか、あるいはガラスエポキシ基板やポリイミド基板、
セラミック基板、金属基板などの基板に無電解めっき用
接着剤層を形成し、この接着剤層表面を粗化して粗化面
とし、ここに無電解めっきを施して行う方法がある。
【0030】(2) 次に、基材に設けられた内層銅パター
ンの上面に微細な凹凸層を形成する。この凹凸層には、
無電解銅−ニッケルめっき、無電解銅−ニッケル−リン
めっき、無電解銅−コバルトめっき、無電解銅−コバル
ト−リンめっき等によって得られる合金の針状結晶層
(針状結晶合金めっき層)や、銅の酸化処理によって得
られる黒化層、銅の酸化処理および還元処理によって得
られる黒化還元層、サンドブラスト、ショットブラス
ト、バフ研磨、ラッピング等の物理的手法によって得ら
れる物理的粗化層などがある。なかでも、無電解銅−ニ
ッケルめっき、無電解銅−ニッケル−リンめっき、無電
解銅−コバルトめっき、無電解銅−コバルト−リンめっ
き等によって得られる合金の針状結晶層(針状結晶合金
めっき層)が望ましい。なぜなら、このような合金層
は、針状結晶層であるために樹脂絶縁層との密着性に優
れ、しかも、電気導電性があるためにバイアホール形成
時に除去する必要がないからである。さらに、この合金
層は、無電解めっきにて容易に形成できるため、基板へ
のダメージを低減できるからである。
【0031】このような合金の針状結晶層を形成するた
めの無電解めっきの組成は、例えば無電解銅−ニッケル
−リンめっきでは、硫酸銅;1〜40g/リットル、硫酸
ニッケル; 0.1〜6.0 g/リットル、クエン酸;10〜20
g/リットル、次亜リン酸塩;10〜100 g/リットル、
ほう酸;10〜40g/リットル、界面活性剤;0.01〜10g
/リットルとすることが望ましい。特に針状結晶層を形
成するためには、界面活性剤の存在が必要であり、かつ
上記範囲を満たさなければならない。上記範囲を逸脱す
ると、析出する凹凸層を構成するめっき被膜が緻密にな
らず、ヒートサイクル特性が著しく低下してしまうから
である。また、上記無電解めっきの条件は、めっき浴の
温度を60〜80℃、pHを 8.5〜10程度の強塩基、浴比を
0.01〜1.0 dm2 /lとし、析出速度を1〜3μm/10
分、めっき時間を5〜20分とすることが望ましい。
【0032】(3) 上記(2) で凹凸層を形成した後、その
凹凸層上に、イオン化傾向が銅より大きくかつチタン以
下である金属を1種以上含む金属層、もしくは貴金属層
を形成する。これらの層を形成することにより、内層銅
パターンの表面に設けた凹凸層が保護され、PdとCuとの
局部電極反応を抑制できる。
【0033】イオン化傾向が銅よりも大きくかつチタン
以下である金属は、チタン、アルミニウム、亜鉛、鉄、
インジウム、タリウム、コバルト、ニッケル、スズ、鉛
およびビスマスから選ばれる少なくとも1種以上である
ことが望ましい。これらの金属のうち、インジウム、
鉛、コバルトおよびスズは、無電解めっきにより被膜化
され、その他の金属は、スパッタや蒸着などの方法によ
り被膜化される。特にスズは、無電解置換めっきで析出
して薄い層を形成でき、凹凸層との密着性にも優れるこ
とから、最も有利に適用することができる。
【0034】このような含スズめっき膜を形成するため
の無電解めっき浴は、ほうふっ化スズ−チオ尿素液また
は塩化スズ−チオ尿素液を使用し、そのめっき処理条件
は、20℃前後の室温において約5分とし、50℃〜60℃程
度の高温において約1分とすることが望ましい。このよ
うな無電解めっき処理によれば、銅パターンの表面にチ
オ尿素の金属錯体形成に基づくCu−Sn置換反応が起き、
厚さ 0.1〜2μmのSn薄膜層が形成される。Cu,Sn置換
反応であるため、凹凸層の形状を破壊することなく凹凸
層を被覆できる。
【0035】イオン化傾向が銅よりも大きくかつチタン
以下である金属を1種以上含む金属層に代えて貴金属層
を使用することができる。この貴金属層を構成する貴金
属は、金あるいは白金であることが望ましい。これらの
貴金属は、銀などに比べて粗化処理液である酸や酸化剤
に冒されにくく、また凹凸層を容易に被覆できるからで
ある。ただし、貴金属は、コストが嵩むために、高付加
価値製品にのみ使用されることが多い。このような金や
白金の被膜は、スパッタ、電解あるいは無電解めっきに
より形成することができる。
【0036】(4) 次に、上記(3) の処理が施された内層
銅パターン上に、無電解めっき用接着剤からなる層間絶
縁層を形成する。ここで、無電解めっき用接着剤は、酸
あるいは酸化剤に難溶性の耐熱性樹脂(耐熱性樹脂マト
リックス)中に予め硬化処理された酸あるいは酸化剤に
可溶性の耐熱性樹脂粒子を含有してなるものが望まし
く、これを塗布したりあるいはフィルム化したものを積
層することにより層間絶縁層とする。
【0037】(5) 上記(4) で形成した層間絶縁層の一部
を除去することにより、イオン化傾向が銅より大きくか
つチタン以下である金属を1種以上含む金属層、もしく
は貴金属層の一部を露出させて、バイアホール形成用開
口を形成する。なお、バイアホールを形成しない場合
は、このような除去や開口の形成は行わない。 このよ
うな開口の形成は、接着剤の耐熱性樹脂マトリックスと
して感光性樹脂を使用した場合には、露光、現像するこ
とにより、接着剤の耐熱性樹脂マトリックスとして熱硬
化性樹脂および/または熱可塑性樹脂を使用した場合に
は、レーザーなどによって穴明けすることにより行う。
【0038】(6) 上記(5) で形成した層間絶縁層(無電
解めっき用接着剤層)表面を粗化液で粗化する。この粗
化は、層間絶縁層を構成する接着剤中の耐熱性樹脂粒子
を溶解除去して蛸壺状のアンカーを形成することにより
行う。このような粗化に用いられる粗化液は、酸や酸化
剤が好ましい。特に上記耐熱性樹脂粒子としてアミノ樹
脂粒子を使用する場合には、粗化処理は、リン酸などの
酸と過マンガン酸塩などの酸化剤で交互に処理して行う
ことが望ましい。即ち、酸化剤が樹脂マトリックスをわ
ずかに溶解させてアミノ樹脂粒子を表出させ、このアミ
ノ樹脂粒子を酸が加水分解、溶解除去して、アンカーを
形成する。なお、スルーホールを形成する場合は、上記
粗化処理をし終えた後、ドリル加工やパンチング加工な
どによって所定部分にスルーホール形成用孔が穿孔され
る。この場合も、上記の金属層、もしくは貴金属層の一
部が露出される。
【0039】(7) このようにして形成された層間絶縁層
の粗化面や、バイアホール形成用開口およびスルーホー
ル形成用孔の内壁面に触媒核を付与し、次いで、めっき
レジストを塗布したりあるいはフィルム状のめっきレジ
ストを積層した後、露光、現像することにより、めっき
レジストパターンを設ける。そして、無電解めっきによ
って、上層の銅パターン、バイアホールまたはスルーホ
ールを形成し、ビルドアップ多層プリント配線板を製造
する。
【0040】
【実施例】次に、実施例を図1〜図5に基づき説明す
る。図5は、以下に述べる実施例で製造したビルドアッ
プ多層プリント配線板1の部分断面図を示す。この図に
示すように、以下に述べる実施例では、導体層を4つ有
する、いわゆる4層板の多層プリント配線板1を製造し
た。即ち、多層プリント配線板1を構成する基材2の両
面には、表層に微細な凹凸層9を有する内層銅パターン
3が形成されており、この内層銅パターン3が形成され
た基材2の両面には層間絶縁層4が形成されている。さ
らに、これらの層間絶縁層4の上面には、めっきレジス
トとしての永久レジスト5と外層銅パターン6とが形成
されており、この外層銅パターン6は、バイアホール7
やスルーホール8によって内層銅パターン3と電気的に
接続されている。
【0041】特に、本発明にかかる実施例においては、
多層プリント配線板1は、内層銅パターン3の表面に形
成した微細な凹凸層(針状の銅−ニッケル層または銅−
ニッケル−リン層)9を保護するために、さらにイオン
化傾向が銅よりも大きくかつチタン以下である金属を1
種以上含む金属層10、もしくは貴金属層10が形成されて
いる。
【0042】(実施例1) (1)まず、基材2の両面に銅箔がラミネートされている
銅張積層板を出発材料とし、その銅箔を常法に従ってパ
ターン状にエッチングすることにより、基材2の両面に
内層銅パターン3を形成した。特に、本実施例では、前
記基材2としてガラスエポキシ製の板材を使用した。
【0043】(2)次に、その基板を酸性脱脂、ソフトエ
ッチングし、塩化パラジウムと有機酸からなる触媒溶液
で処理して、Pd触媒を付与し、活性化を行った後、下記
表に示す組成の無電解めっき浴にてめっきを施し、銅パ
ターンとバイアホールパッドの表面にCu−Ni−P合金の
厚さ 2.5μmの凹凸層(粗化層)9を形成した。
【0044】
【0045】特に、本実施例では、Cu−Ni−P合金の前
記粗化層9を形成するためのめっき浴は、荏原ユージラ
イト株式会社製、商品名「インタープレートプロセス」
を使用した。その処理条件は、70℃,10分とした。な
お、本実施例では、上記粗化層9のめっき浴として、Cu
−Niめっき浴を用いることができる。
【0046】(3)そして、水洗(および必要に応じて乾
燥)の後、さらにその基板をホウふっ化スズ−チオ尿素
液(あるいは塩化スズ−チオ尿素液でも可能)からなる
無電解スズめっき浴に50℃で1分間浸漬して、Cu−Ni−
P合金の粗化層9の表面に厚さ0.3μmのスズめっき層1
0を置換形成した(図1参照)。この処理を施した後、2
4時間放置し、その基板を水に浸漬したところ、はっ水
現象が観られず、表面に酸化膜が形成されていないこと
が確認できた。なお、この無電解スズめっきは置換反応
であるため、Cu−Ni−P層9の表面がスズめっきで一旦
置換されると、めっき反応がそれ以上進行せず、非常に
薄いスズめっき層10を形成することができる。しかも、
置換反応であるため、Cu−Ni−P層9とスズめっき層10
との密着性にも優れる。
【0047】
【0048】(4)一方、DMDG(ジメチルグリコールジメ
チルエーテル)に溶解したクレゾールノボラック型エポ
キシ樹脂(日本化薬製、分子量2500)の25%アクリル化
物を70重量部、ポリエーテルスルフォン(PES)30重
量部、イミダゾール硬化剤(四国化成製、商品名;2E4M
Z-CN)4重量部、感光性モノマーであるカプロラクトン
変成トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート(東
亜合成製、商品名;アロニックスM325 )10重量部、光
開始剤としてのベンゾフェノン(関東化学製)5重量
部、光増感剤としてのミヒラーケトン(関東化学製)
0.5重量部、さらにこの混合物に対してメラミン樹脂粒
子の平均粒径 5.5μmを35重量部、平均粒径 0.5μmの
ものを5重量部を混合した後、さらにNMPを添加しな
がら混合し、ホモディスパー攪拌機で粘度 2000cpsに調
整し、続いて3本ロールで混練して感光性接着剤溶液を
得た。
【0049】(5)前記 (1)〜(3) の工程を終えた後、水
洗し、乾燥した基材2の両面に、上記感光性接着剤溶液
を、ロールコーターを用いて塗布し、水平状態で20分間
放置してから、60℃で 0.5時間の乾燥を行い、厚さ40μ
mの接着剤層4を形成した。
【0050】(6)前記(5) の処理を施して得た配線板
に、100 μmφの黒円が印刷されたフォトマスクフィル
ムを密着させ、超高圧水銀灯 500mJ/cm2 で露光した。
これをDMDG溶液でスプレー現像することにより、配線板
上に 100μmφのバイアホールとなる開口を形成した。
さらに、前記配線板を超高圧水銀灯により約6000mJ/cm
2で露光し、100 ℃で1時間、その後150 ℃で12時間の
加熱処理することによりフォトマスクフィルムに相当す
る寸法精度に優れた開口(バイアホール形成用開口11)
を有する厚さ50μmの樹脂層間絶縁層4を形成した(図
2参照)。なお、バイアホール形成用開口11は、スズめ
っき膜10を部分的に露出させるように形成した。
【0051】(7)前記(6) の処理を施した配線板を、p
H=13に調整した過マンガン酸カリウム(KMnO4 、60 g
/l )に70℃で2分間浸漬し、次いでリン酸に30分間浸
漬して樹脂層間絶縁層の表面を粗化して粗化面4aを形成
し、その後、中和溶液(アトテック製)に浸漬したのち
水洗した。そして、ドリル加工やパンチング加工を行う
ことよって、基材2の所定部分にスルーホール形成用孔
12を穿孔した(図3参照)。なお、必要に応じてデスミ
ア処理を行った。
【0052】(8)前記(7) の処理を施した配線板にパラ
ジウム触媒(アトテック製)を付与することにより、層
間絶縁層4の表面や、バイアホール形成用開口11および
スルーホール形成用孔12の内壁面に触媒核を付与した。
【0053】(9)一方、DMDGに溶解させたクレゾールノ
ボラック型エポキシ樹脂(日本化薬製、商品名;EOCN-1
03S)のエポキシ基25%をアクリル化した感光性付与の
オリゴマー(分子量4000)、PES(分子量17000 )、
イミダゾール硬化剤(四国化成製、商品名; 2PMHZ-PW
)、感光性モノマーであるアクリル化イソシアネート
(東亜合成製、商品名;アロニックスM215 )、光開始
剤としてのベンゾフェノン(関東化学製)、光増感剤と
してのミヒラーケトン(関東化学製)を、下記組成でN
MPを用いて混合した後、ホモディスパー攪拌機で粘度
3000cps に調整し、続いて3本ロールで混練して、液状
レジストを得た。 樹脂組成物;感光性エポキシ/PES/M215 /BP/
MK/イミダゾール=70/30/10/5/0.5 /5
【0054】(10) 前記(8) の処理を終えた配線板の樹
脂絶縁層上に、上記液状レジストをロールコーターを用
いて塗布し、80℃で 0.5時間乾燥して厚さ約30μmのレ
ジスト層を形成した。次いで、L/S=50/50の導体回
路パターンが描画されたマスクフィルムを密着させ、超
高圧水銀灯1000mJ/cm2 で露光し、DMDGでスプレー現像
処理することにより、配線板上に導体回路パターン部の
抜けためっき用レジストを形成した。さらに超高圧水銀
灯により、3000mJ/cm2 で露光し、100 ℃で1時間、そ
の後 150℃で3時間の加熱処理を行い、層間絶縁層4の
表面に永久レジスト5を形成した(図4参照)。
【0055】(11) 前記(10)の処理を施した配線板に、
予めめっき前処理(具体的には硫酸処理等および触媒核
の活性化)を施し、その後、下記組成の無電解銅めっき
浴による無電解めっきによって、レジスト非形成部分に
厚さ15μmほどの無電解銅めっきGを析出させて、外層
銅パターン6、バイアホール7およびスルーホール8を
形成し、ビルドアップ多層プリント配線板1を製造した
(図5参照)。
【0056】
【0057】以上説明したように、無電解スズめっき浴
によってCu−Ni−P層9の表面にスズめっき膜10を置換
形成する本実施例によれば、Cu−Ni−P層9を耐酸性の
スズめっき膜10によって保護することができる。これに
より、酸性の処理液に弱いCu−Ni−P層9がクロム酸や
ソフトエッチ液等に直接に晒されなくなり、表層におけ
るCuの溶解が確実に防止できる。しかも、スズめっき膜
10自体は、酸性の処理液に直接に晒されても変色するこ
とがないので、多層プリント配線板1の外観の悪化を確
実に防止できる。さらに、内層銅パターン3と層間絶縁
層4との間に所望の密着性が確保されるので、信頼性の
向上も図ることができる。なお、バイアホール部分の断
面構造を示す顕微鏡写真である図6から明らかなよう
に、本発明にかかる多層プリント配線板を構成する銅パ
ターンは、溶解部分もなく、良好なバイアホールを形成
していることが分かる。
【0058】(実施例2)本実施例は、Cu−Ni−P合金
の粗化層9の表層にスズめっき層10を置換形成するスズ
の代わりにインジウムを置換めっき処理したこと以外
は、実施例1と同様にしてビルドアップ多層プリント配
線板を製造した。なお、上記のめっき処理は、インジウ
ム濃度12g/リットルのシアン浴を使用し、めっき温
度;30〜50℃、pH;1.2 、めっき時間;20分の処理条
件にて行い、厚さ1μmのインジウム膜を形成した。
【0059】(実施例3)本実施例は、Cu−Ni−P合金
の粗化層9の表層にスズめっき層10を置換形成するスズ
の代わりに鉛を置換めっき処理したこと以外は、実施例
1と同様にしてビルドアップ多層プリント配線板を製造
した。なお、上記のめっき処理は、下記組成のめっき浴
を使用し、めっき温度;50℃、pH; 1.5、めっき時
間;20分の処理条件にて行い、厚さ0.5 μmの鉛膜を形
成した。
【0060】
【0061】(実施例4)本実施例は、Cu−Ni−P合金
の粗化層9の表層にスズめっき層10を置換形成するスズ
の代わりにコバルトを置換めっき処理したこと以外は、
実施例1と同様にしてビルドアップ多層プリント配線板
を製造した。なお、上記のめっき処理は、塩化コバルト
と次亜リン酸ナトリウムからなる混合浴を使用し、めっ
き温度;75℃、pH;7.0 、めっき時間;20分の処理条
件にて行い、厚さ1.0 μmのコバルト膜を形成した。
【0062】(実施例5)本実施例は、Cu−Ni−P合金
の粗化層9の表層にスズめっき層10を置換形成するスズ
の代わりにニッケルを置換めっき処理したこと以外は、
実施例1と同様にしてビルドアップ多層プリント配線板
を製造した。なお、上記のめっき処理は、硫酸ニッケル
と次亜リン酸ナトリウムからなるめっき浴を使用し、め
っき温度;80℃、pH;4、めっき時間;20分の処理条
件にて行い、厚さ1.0 μmのニッケル膜を形成した。
【0063】(実施例6)本実施例は、Cu−Ni−P合金
の粗化層9の表層にスズめっき層10を置換形成する無電
解スズめっきの代わりに亜鉛の電解めっき処理を施し、
厚さ1.0 μmの亜鉛膜を形成したこと以外は、実施例1
と同様にしてビルドアップ多層プリント配線板を製造し
た。
【0064】(実施例7)本実施例は、Cu−Ni−P合金
の粗化層9の表層にスズめっき層10を置換形成するスズ
めっきの代わりに、チタン、アルミニウム、鉄、タリウ
ムまたはビスマスをそれぞれスパッタ処理して、厚さ0.
8 μmの被膜を形成したこと以外は、実施例1と同様に
してビルドアップ多層プリント配線板を製造した。
【0065】(実施例8)本実施例は、Cu−Ni−P合金
の粗化層9の表層にスズめっき層10を置換形成するスズ
の代わりに金をめっき処理したこと以外は、実施例1と
同様にしてビルドアップ多層プリント配線板を製造し
た。なお、上記のめっき処理は、シアン化金カリウムを
主成分とするめっき浴を用いた電解めっきであり、厚さ
0.5 μmの金めっきを施した。本実施例の多層プリント
配線板は、針状結晶からなる凹凸層表面に金めっきを施
し、ここに透光性の層間絶縁材(実施例1の無電解めっ
き用接着剤は透光性を示す)を被覆したものであるた
め、下層銅パターンがきらめき、意匠性に非常に優れた
ものであった。
【0066】(実施例9)本実施例は、Cu−Ni−P合金
の粗化層9の表層にスズめっき層10を置換形成する無電
解スズめっきの代わりに白金を真空蒸着処理し、厚さ0.
5 μmの蒸着膜を形成したこと以外は、実施例1と同様
にしてビルドアップ多層プリント配線板を製造した。
【0067】(比較例)Cu−Ni−P合金の粗化層9の表
層にスズめっき層10を置換形成するスズめっきを施さな
かったこと以外は、実施例1と同様にしてビルドアップ
多層プリント配線板を製造した。なお、本比較例では、
Cu−Ni−P合金の粗化層9を形成した後、24時間放置
し、これを水に浸漬して引き上げたところ、はっ水現象
が観察された。また、バイアホール部分の溶解状態を示
す顕微鏡写真である図7(a) 〜(c) から明らかなよう
に、下層銅パターンの溶解が観察された。
【0068】このようにして得られた多層プリント配線
板に関し、その外観観察、バイアホール部分の断面観
察、凹凸層と層間絶縁剤層との隙間の有無、さらに−65
℃〜125 ℃で1000サイクルのヒートサイクル試験後のク
ラック発生の有無について調査した。その結果を表1に
示す。この表に示す結果から明らかなように、本発明に
かかる多層プリント配線板は、表層に微細な凹凸層を有
する内層銅パターンが、イオン化傾向が銅よりも大きく
かつチタン以下である金属を1種以上含む金属層、もし
くは貴金属層によって被覆保護されているので、外観、
断面観察、凹凸層と層間絶縁剤層との隙間の有無、ヒー
トサイクル試験後のクラック発生の有無、のいずれの場
合についても問題がなく、外観および信頼性に優れるも
のであった。
【0069】
【表1】 *1 外観;目視検査で評価した。 変色がない場合は○、変色がある場合は× *2 断面観察;バイアホール部分の断面を顕微鏡で観察して評価した。 銅の溶解が観察されなければ○、銅の溶解が観察されれば× *3 隙間有無;凹凸層と層間絶縁層との隙間の有無を顕微鏡で観察して 確認した。隙間が無ければ○、隙間が有れば× *4 ヒートサイクル;−65℃〜125 ℃で1000サイクルのヒートサイクル試験 後のクラック発生等の有無を確認した。 クラックや剥離がなければ○、クラックや剥離が有れば×
【0070】なお、本発明は、上記の実施例に限定され
るものではなく、例えば、以下のような態様に変更する
ことが可能である。 (1)上記実施例で例示した4層板以外の多層プリント配
線板1、例えば2層板や3層板、5層板、6層板、7層
板、8層板等の多層プリント配線板に本発明を適用して
もよい。この場合、外層銅パターン6の上面にNi−P−
Cu合金の粗化層を形成し、さらにその表面にイオン化傾
向が銅よりも大きくかつチタン以下である金属を1種以
上含む金属層を被覆形成したうえで層間絶縁層4を形成
して多層化することができる。 (2)請求項4において、銅−ニッケル層または銅−ニッ
ケル−リン層に代え、銅−コバルト層や銅−コバルト−
リン層、あるいは内層銅パターンに対する黒化処理およ
び還元処理によって形成される黒化還元層を設けること
ができる。
【0071】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、内
層銅パターンの表層部の溶解等を確実に防止でき、また
内層銅パターンと樹脂層間絶縁層との密着性を改善でき
るので、外観および信頼性に優れた多層プリント配線板
を容易に得ることができる。しかも、工程管理が容易と
なり、低コスト化に寄与するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる多層プリント配線板の製造方法
において、内層銅パターン上に銅−ニッケル−リン層と
含スズめっき膜とを形成した状態を示す部分概略断面図
である。
【図2】同じく層間絶縁層にバイアホール形成用開口を
形成した状態を示す部分概略断面図である。
【図3】同じく粗化処理をした後、スルーホール形成用
開口を形成した状態を示す部分概略断面図である。
【図4】同じくめっきレジストを形成した状態を示す部
分概略断面図である。
【図5】同じく無電解銅めっきを行った状態を示す部分
概略断面図である。
【図6】本発明にかかる多層プリント配線板の基板上に
形成されたパターンの断面構造を示す顕微鏡写真であ
る。
【図7】(a) 〜(c) は、従来技術にかかる多層プリント
配線板の基板上に形成されたパターンの断面構造を示す
顕微鏡写真である。
【図8】従来技術にかかる多層プリント配線板のバイア
ホール部分の溶解原理図である。
【符号の説明】
1 (ビルドアップ)多層プリント配線板 2 基材 3 内層銅パターン 4 層間絶縁層 5 めっきレジストとしての永久レジスト 6 外層銅パターン 9 微細な凹凸としての銅−ニッケル−リン層 10 含スズめっき膜としてのスズめっき膜 11 バイアホール形成用開口

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 表面に微細な凹凸層を有する内層銅パタ
    ーンと、外層銅パターンとの間に層間絶縁層を設けてな
    るビルドアップ多層プリント配線板において、イオン化
    傾向が銅よりも大きくかつチタン以下である金属を1種
    以上含む金属層が、前記内層銅パターンの凹凸層表面に
    被覆形成されてなることを特徴とする多層プリント配線
    板。
  2. 【請求項2】 表面に微細な凹凸層を有する内層銅パタ
    ーンと、外層銅パターンとの間に層間絶縁層を設けてな
    るビルドアップ多層プリント配線板において、 イオン化傾向が銅よりも大きくかつチタン以下である金
    属を1種以上含む金属層が、上記内層銅パターンの凹凸
    層表面に被覆形成され、 バイアホールのための開口部が、上記層間絶縁層に形成
    され、 内層導体パターンと外層導体パターンを接続するバイア
    ホールが、その開口部にて部分的に露出している金属層
    と凹凸層とを介して形成されてなることを特徴とする多
    層プリント配線板。
  3. 【請求項3】 イオン化傾向が銅よりも大きくかつチタ
    ン以下である金属が、チタン、アルミニウム、亜鉛、
    鉄、インジウム、タリウム、コバルト、ニッケル、ス
    ズ、鉛およびビスマスから選ばれるいずれか少なくとも
    1種以上である請求項1または2に記載の多層プリント
    配線板。
  4. 【請求項4】 内層銅パターン表層の微細な凹凸層が、
    針状の銅−ニッケル合金層または銅−ニッケル−リン合
    金層である請求項1または2に記載の多層プリント配線
    板。
  5. 【請求項5】 イオン化傾向が銅よりも大きくかつチタ
    ン以下である金属を1種以上含む金属層は、その厚さが
    前記凹凸層の厚さよりも薄いことを特徴とする請求項1
    または2に記載の多層プリント配線板。
  6. 【請求項6】 内層銅パターン表層の微細な凹凸層は、
    厚さが 0.5μm〜7.0μmの銅−ニッケル−リン合金層
    であり、イオン化傾向が銅よりも大きくかつチタン以下
    である金属を1種以上含む金属層は、厚さが0.01μm〜
    1.0 μmのスズ層であることを特徴とする請求項1また
    は2に記載の多層プリント配線板。
  7. 【請求項7】 表面に微細な凹凸層を有する内層銅パタ
    ーンと、外層銅パターンとの間に層間絶縁層を設けてな
    るビルドアップ多層プリント配線板において、貴金属層
    が、前記内層銅パターンの凹凸層表面に被覆形成されて
    なることを特徴する多層プリント配線板。
  8. 【請求項8】 表面に微細な凹凸層を有する内層銅パタ
    ーンと、外層銅パターンとの間に層間絶縁層が設けてな
    るビルドアップ多層プリント配線板において、 貴金属層が、上記内層銅パターンの凹凸層表面に被覆形
    成され、 バイアホールのための開口部が、上記層間絶縁層に形成
    され、 内層導体パターンと外層導体パターンを接続するバイア
    ホールが、その開口部にて部分的に露出している貴金属
    層と凹凸層とを介して形成されてなることを特徴とする
    多層プリント配線板。
  9. 【請求項9】 貴金属層を構成する貴金属が、金および
    白金から選ばれる少なくとも1種以上である請求項7ま
    たは8に記載の多層プリント配線板。
  10. 【請求項10】 内層銅パターン表層の微細な凹凸層が、
    針状の銅−ニッケル共晶合金層または銅−ニッケル−リ
    ン合金層である請求項7または8に記載の多層プリント
    配線板。
  11. 【請求項11】 貴金属層は、その厚さが前記凹凸層の厚
    さよりも薄いことを特徴とする請求項7または8に記載
    の多層プリント配線板。
  12. 【請求項12】 基材に設けられた内層銅パターンの表面
    に、微細な凹凸層を形成する工程と、 前記凹凸層の表面に、イオン化傾向が銅よりも大きくか
    つチタン以下である金属を1種以上含む金属層を被覆形
    成する工程と、 無電解めっき用接着剤からなる層間絶縁層を形成する工
    程と、 前記金属層を部分的に露出させる工程と、 前記層間絶縁層の表面を粗化液で粗化する工程と、 前記層間絶縁層の表面に触媒核を付与する工程と、 無電解銅めっきによって、外層銅パターンを形成する工
    程とを少なくとも含むことを特徴とする多層プリント配
    線板の製造方法。
  13. 【請求項13】 基材に設けられた内層銅パターンの表面
    に、針状の銅−ニッケル−リン合金層を無電解銅−ニッ
    ケル−リン合金めっきによって形成する工程と、 前記銅−ニッケル−リン合金層の表面に、少なくともス
    ズを含む無電解置換めっきによって含スズめっき膜を被
    覆形成する工程と、 無電解めっき用接着剤からなる層間絶縁層を形成する工
    程と、 前記含スズめっき膜を部分的に露出させるバイアホール
    形成用開口部を前記層間絶縁層の所定位置に形成する工
    程と、 前記層間絶縁層の表面を粗化液で粗化する工程と、 前記層間絶縁層の表面に触媒核を付与する工程と、 無電解銅めっきによって、外層銅パターンおよびバイア
    ホールを形成する工程とを少なくとも含むことを特徴と
    する多層プリント配線板の製造方法。
  14. 【請求項14】 基材に設けられた内層銅パターンの表面
    に、微細な凹凸層を形成する工程と、 前記凹凸層の表面に、貴金属層を被覆形成する工程と、 無電解めっき用接着剤からなる層間絶縁層を形成する工
    程と、 前記貴金属層を部分的に露出させる工程と、 前記層間絶縁層の表面を粗化液で粗化する工程と、 前記層間絶縁層の表面に触媒核を付与する工程と、 無電解銅めっきによって、外層銅パターンを形成する工
    程とを少なくとも含むことを特徴とする多層プリント配
    線板の製造方法。
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