JPH0912940A - 誘電体保護膜形成用ペースト - Google Patents

誘電体保護膜形成用ペースト

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JPH0912940A
JPH0912940A JP7168944A JP16894495A JPH0912940A JP H0912940 A JPH0912940 A JP H0912940A JP 7168944 A JP7168944 A JP 7168944A JP 16894495 A JP16894495 A JP 16894495A JP H0912940 A JPH0912940 A JP H0912940A
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JP
Japan
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mgo
aliphatic monocarboxylic
monocarboxylic acid
precursor
paste
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Withdrawn
Application number
JP7168944A
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English (en)
Inventor
Ichiro Koiwa
一郎 小岩
Mitsuro Mita
充郎 見田
Takao Kanehara
隆雄 金原
Kazuki Takatani
和樹 高谷
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Oki Electric Industry Co Ltd
Shinto Paint Co Ltd
Original Assignee
Oki Electric Industry Co Ltd
Shinto Paint Co Ltd
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Publication date
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Publication of JPH0912940A publication Critical patent/JPH0912940A/ja
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 MgO粒子及び焼成によりMgOバインダー
を生ずるMgO前駆体を含有するスクリーン印刷用ペー
ストにおいて、炭素数6〜10の脂肪族モノカルボン酸
から成る出発原料もしくは炭素数6〜10の脂肪族モノ
カルボン酸及び炭素数5以下の脂肪族モノカルボン酸か
ら成る出発原料に対し、Mg化合物を過剰に反応させて
得た脂肪族モノカルボン酸Mg塩を、MgO前駆体に用
いる。このMgO前駆体の混合量は、ペースト中の粒子
100重量%に対し5〜20重量%のMgOバインダー
を生ずるような、量とする。 【効果】 このペーストを、スクリーン印刷法で塗布乾
燥した後、450〜700℃で3〜20分間焼成するこ
とにより、PDP10の誘電体保護膜18として有用な
MgO膜を形成できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、プラズマディスプレ
イパネルの誘電体保護膜を、塗布熱分解法により形成す
るための誘電体保護膜形成用ペーストに関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、直流型及び交流型のプラズマ
ディスプレイパネル(以下、PDP)において、放電の
ための電極を誘電体で覆い、さらに放電による誘電体の
損傷を防止するために、誘電体表面を誘電体保護膜で覆
うことが行なわれている。
【0003】高価で複雑な装置の必要がなくしかも簡単
な工程で誘電体保護膜を形成できる方法として、塗布熱
分解法がある。その一つとして例えば特開平6−162
920号公報に開示されている方法があり、この方法に
あっては、アルカリ土類金属含有有機化合物を、誘電体
表面に塗布して乾燥させ然る後300〜700℃で熱分
解(或は焼成)することによって、アルカリ土類金属酸
化物から成る誘電体保護膜を形成する。アルカリ土類金
属含有有機化合物としては、金属アルコキシド或は有機
酸アルカリ土類金属塩が用いられる。
【0004】アルカリ土類金属酸化物から成る誘電体保
護膜は、PDPのパネル特性を向上できる例えば放電開
始電圧及び放電維持電圧を低減できるという利点があ
る。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら上述した
従来技術において誘電体保護膜の形成に用いる金属アル
コキシドはゲル化し易く、従って金属アルコキシドの生
成過程中或はペースト作成中にゲル化して、金属アルコ
キシドの印刷がしにくくなる。
【0006】また上述した従来技術において有機酸アル
カリ土類金属塩を用いて誘電体保護膜を形成する場合、
1回の印刷及び熱分解により膜厚0.5μm以上の誘電
体保護膜を形成すると、誘電体保護膜が剥離しやすくな
る。従って剥離を回避しつつ誘電体保護膜を形成するた
めには、1回の印刷及び熱分解により形成する誘電体保
護膜の膜厚を0.1〜0.2μm程度に抑える必要があ
る。一方、誘電体保護膜として充分な機能を得るために
は、誘電体保護膜の最終的な膜厚を5〜15μm程度と
する必要がある。従って実用上望まれる膜厚の誘電体保
護膜を形成するには、工程数が増加する。
【0007】そこで印刷がし易くまた実用に適した膜厚
の誘電体保護膜をより少ない工程数で形成できるペース
トとして、MgO粉末、ブチルカルビトール、エチルセ
ルロースなどを主成分とするペーストが用いられること
もある。しかしながらこのペーストで形成した誘電体保
護膜では、放電開始電圧及び放電維持電圧が高くなり、
実用上望ましい放電特性を得ることが難しい。
【0008】この発明の第一の目的は、PDPのパネル
特性として実用上望ましい特性を得るのに適したMgO
誘電体保護膜を形成できしかもゲル化しにくい誘電体保
護膜形成用ペーストを提供することにある。
【0009】この発明の第二の目的は、第一の目的に加
え、実用に適した膜厚のMgO誘電体保護膜をより少な
い工程数で形成することのできる誘電体保護膜形成用ペ
ーストを提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段及び作用】第一の目的を達
成するため請求項1の発明は、MgO粒子と焼成により
MgOバインダーを生じるMgO前躯体と有機物から成
る添加剤とを含有して成る誘電体保護膜形成用ペースト
において、MgO前躯体を、脂肪族モノカルボン酸Mg
塩としたことを特徴とする。
【0011】請求項1の発明によれば、MgO前駆体及
び添加剤はそれぞれ有機物であり、これらの有機成分
は、ペーストを乾燥或は焼成させた際に気化して雰囲気
中へと散逸する。そしてMgO前駆体はペーストの焼成
によりMgと有機成分とに熱分解し、この熱分解された
Mgの酸化によりバインダーとなるMgOが生成され
る。従ってMgO粒子とMgOバインダーとから成る誘
電体保護膜を形成でき、この誘電体保護膜はMgOを主
成分としているので、PDPのパネル特性例えば放電開
始電圧、放電維持電圧或は発光効率として、実用上望ま
れる特性を得るのに適している。
【0012】さらに請求項1の発明によれば、加水分解
によるゲル化を生じにくい脂肪族モノカルボン酸Mg塩
を、MgO前駆体とするので、ゲル化しにくいペースト
を得ることができる。
【0013】PDPのパネル特性をより実用に適したも
のとするためには、結晶性の良好な(すなわち非晶質部
分の少ない)誘電体保護膜を形成することが望まれる。
このためにはMgO粒子を用い、このMgO粒子を種結
晶としてMgOバインダーを結晶成長させるのが好まし
い。
【0014】MgO粒子のなかでも気相法により形成し
たMgO粒子を用いるのが特に好適である。気相法によ
り形成したMgO粒子は、純度が高く結晶性が良好であ
りしかも粒子表面が比較的に平滑であるという特性を有
し、このような特性を有するMgO粒子を種結晶とし
て、MgOバインダーを結晶成長させることにより、よ
り良好な結晶性を有するMgOバインダーを得ることが
できる。
【0015】請求項5の発明は、この点に着目して成さ
れたものであり、請求項1の発明において、粒子を、気
相法により形成したMgO粒子とすることを特徴とす
る。
【0016】さらにPDPのパネル特性をより実用に適
したものとするという観点からは、焼成して得た誘電体
保護膜において、粒子とMgOバインダーとがどのよう
な割合で存在しているかという点も重要である。
【0017】請求項6の発明は、この点に鑑み成された
ものであり、請求項1の発明において、粒子100重量
%に対してMgOバインダー5〜20重量%(5重量%
以上20重量%以下)を生じる割合で、粒子とMgO前
駆体とを混合することを特徴とする。
【0018】粒子100重量%に対し5重量%未満のM
gOバインダーしか生じない場合には、放電開始電圧及
び放電維持電圧が高くなり実用上好ましくないが、粒子
100重量%に対し5重量%以上のMgOバインダーを
生じるようにすれば、放電開始電圧及び放電維持電圧を
実用に適した程度まで低減できる。
【0019】また粒子100重量%に対し20重量%を
越える割合でMgOバインダーを生じるようにしても、
放電開始電圧及び放電維持電圧の低減効果は、20重量
%以下のMgOバインダーを生じるようにした場合とほ
とんど変わらない。しかも粒子はMgOバインダーの結
晶成長に寄与する種結晶としても機能するものであるか
ら、結晶性の良好なMgOバインダーを得るためには、
単位体積当りのMgO前駆体における粒子含有量が極端
に減少するのは好ましくない。従って放電開始電圧及び
放電維持電圧を実用に適した程度まで低減しつつ、結晶
性の良好なMgOバインダーを得るのに充分な粒子含有
量を確保するには、粒子100重量%に対し20重量%
以下のMgOバインダーを生じる割合で、粒子とMgO
前駆体とを混合するのが好ましい。
【0020】また第二の目的を達成するため請求項2の
発明は、請求項1の発明において、MgO前駆体を、M
gの組成比が化学量論的に求まる組成比よりも大きな脂
肪族モノカルボン酸Mg塩としたことを特徴とする。
【0021】請求項2の発明によれば、MgO前駆体に
用いる脂肪族モノカルボン酸Mg塩のMg組成比は、化
学量論的に求まる組成比よりも大きいので、単位体積当
りのMgO前駆体において、Mg含有量は増大すると共
に有機成分含有量は相対的に減少する。この結果、1回
当りの印刷及び焼成で得られるMgOバインダーの厚さ
を増加させることができる。また焼成して得たMgOバ
インダー中に残渣として残存する有機成分の量を減少さ
せることができるので、より純度が高くより緻密に結晶
成長したMgOバインダーを得ることができる。また第
二の目的を達成するため請求項3の発明は、請求項2の
発明において、MgO前駆体を、炭素数6〜10(炭素
数6以上10以下)の脂肪族モノカルボン酸から成る出
発原料2モルに対してMg化合物を1.01モル以上過
剰に反応させて得た脂肪族モノカルボン酸Mg塩とした
ことを特徴とする。
【0022】請求項3の発明によれば、脂肪族モノカル
ボン酸の炭素数を6以上として得た脂肪族モノカルボン
酸Mg塩を、MgO前駆体に用いる。
【0023】炭素数を6以上とすることにより、MgO
前駆体の熱分解開始温度及びMgOバインダーの結晶成
長開始温度を高めることができ、従って添加剤例えば増
粘剤、有機溶媒或は消泡剤の有機成分が気化する温度よ
りも高い温度で、MgO前駆体の熱分解及びMgOバイ
ンダーの結晶成長を開始させることができる。その結
果、添加剤の有機成分が、焼成により得たMgOバイン
ダー中に残渣として残存する量を減少させることができ
るので、MgOバインダーの純度を高めることができ、
従って実用上望まれるパネル特性を得るのに、より適し
た誘電体保護膜を形成できる。
【0024】これに対し、脂肪族モノカルボン酸の炭素
数を5以下として得た脂肪族モノカルボン酸Mg塩を、
MgO前駆体とした場合は、MgO前駆体の熱分解開始
温度及びMgOバインダーの結晶成長開始温度が低くな
り、一般に良く用いられる添加剤の有機成分が気化する
温度よりも高い温度で、MgO前駆体の熱分解及びMg
Oバインダーの結晶成長を開始させることが難しくな
る。その結果、純度の高いMgOバインダーを得ること
が難しくなる。
【0025】さらに請求項3の発明によれば、脂肪族モ
ノカルボン酸の炭素数を10以下として得た脂肪族モノ
カルボン酸Mg塩を、MgO前駆体に用いる。
【0026】炭素数を10以下とすることにより、PD
Pの製造に用いるガラス基板が変形或は変質する温度よ
りも低い温度で、MgO前駆体の熱分解及びMgOバイ
ンダーの結晶成長を開始させることができる。
【0027】これに対し、脂肪族モノカルボン酸の炭素
数を11以上として得た脂肪族モノカルボン酸Mg塩
を、MgO前駆体に用いた場合は、MgO前駆体の熱分
解開始温度及びMgOバインダーの結晶成長開始温度が
高くなるので、PDPの製造に用いるガラス基板の変形
や変質を招き易くなる。
【0028】このように請求項3の発明によれば、炭素
数6〜10の脂肪族モノカルボン酸から成る出発原料を
用いて得た脂肪族モノカルボン酸Mg塩を、MgO前駆
体とするので、PDPの誘電体保護膜の形成に適した温
度で純度の高いMgOバインダーを生成できる。
【0029】また第二の目的を達成するために請求項4
の発明は、請求項2の発明において、MgO前駆体を、
炭素数6〜10(炭素数6以上10以下)の脂肪族モノ
カルボン酸及び炭素数5以下の脂肪族モノカルボン酸か
ら成る出発原料2モルに対してMg化合物を1.01モ
ル以上過剰に反応させて得た脂肪族モノカルボン酸Mg
塩としたことを特徴とする。
【0030】請求項4の発明によれば、炭素数5以下の
脂肪族モノカルボン酸を出発原料の成分として得たMg
O前駆体を用いる。
【0031】単位体積当りのMgO前駆体におけるMg
含有量は、炭素数の少ない脂肪族モノカルボン酸を用い
て得たMgO前駆体の場合は多くなり、また炭素数の多
い脂肪族モノカルボン酸を用いて得たMgO前駆体の場
合は少なくなる。
【0032】従って炭素数5以下の脂肪族モノカルボン
酸を出発原料の成分のひとつとして得たMgO前駆体を
用いることにより、単位体積当りのMgO前駆体におけ
るMg含有量を増やすことができるので、1回の印刷及
び焼成で得られるMgOバインダーの厚さを増やすこと
ができる。
【0033】一方、炭素数5以下の脂肪族モノカルボン
酸のみから成る出発原料を用いて得たMgO前駆体で
は、前述のように、MgO前駆体の熱分解開始温度及び
MgOバインダーの結晶成長開始温度が低くなるので、
純度の高いMgOバインダーを得ることが難しくなる。
【0034】しかしながら請求項4の発明によれば、炭
素数6〜10の脂肪族モノカルボン酸も出発原料の成分
として加えて得たMgO前駆体を、MgO前駆体とす
る。
【0035】これがため請求項3の発明と同様に、添加
剤例えば増粘剤、有機溶媒或は消泡剤の有機成分が気化
する温度よりも高い温度で、MgO前駆体の熱分解及び
MgOバインダーの結晶成長が開始するようにすること
ができる。さらにPDPの製造に用いるガラス基板が変
形或は変質する温度よりも低い温度で、MgO前駆体の
熱分解及びMgOバインダーの結晶成長を開始させるよ
うにすることができる。
【0036】従って請求項4の発明によれば、1回の印
刷及び焼成で得られるMgOバインダーの厚さを増やす
ことができ、しかもPDPの誘電体保護膜の形成に適し
た温度でより純度の高いMgOバインダーを生成でき
る。
【0037】
【実施例】この実施例の誘電体保護膜形成用ペースト
は、スクリーン印刷して乾燥させた後に、例えば400
〜700℃で焼成熱分解してPDPのMgO誘電体保護
膜を形成するためのものであって、MgO粒子と焼成に
よりMgOバインダーを生じるMgO前躯体と有機物か
ら成る添加剤とを含有して成る。
【0038】MgO前駆体には、Mg(RCOO)2
[R:アルキル基]で表される脂肪族モノカルボン酸M
g塩を用いる。脂肪族モノカルボン酸Mg塩は、有機酸
金属塩の一般的な製法である直接法、溶融法或は複分解
法などの製法で作ることが可能である。
【0039】添加剤としては、スクリーン印刷用ペース
トに添加される種々の材料、ここでは増粘材及び有機溶
媒をペースト中に混合することができる。増粘剤として
はエチルセルロース、ニトロセルロース等の有機樹脂、
また有機溶媒としてはブチルカービトール、テルピネオ
ール等の有機溶媒を用いることができる。或は添加剤と
して、これら増粘材及び有機溶媒に加え、消泡剤を用い
ることもできる。
【0040】脂肪族モノカルボン酸Mg塩の種類は出発
原料となる脂肪族モノカルボン酸の種類によって多数の
ものがあり、炭素数の多い脂肪族モノカルボン酸を出発
原料として得たものは、分子量が大きくMg含有量は低
い。逆に、炭素数の少ない脂肪族モノカルボン酸を出発
原料として得たものは分子量が小さくMg含有量が高
い。
【0041】焼成して得たMgO誘電体保護膜中のMg
O粒子とMgOバインダーとの重量比はPDPのパネル
特性例えば放電開始電圧、放電維持電圧或は発光効率に
影響を与える。従って実用上望まれるパネル特性を得る
のに適した重量比でMgOバインダーを生成できるよう
に、ペースト中に混合する脂肪族モノカルボン酸Mg塩
の量及びMgOを調整する必要がある。分子量が大きく
Mg含有量の低い脂肪族モノカルボン酸Mg塩の場合に
はペースト中に混合する脂肪族モノカルボン酸の量は多
くなり、逆に、分子量が小さくMg含有量の高い脂肪族
モノカルボン酸Mg塩の場合にはペースト中に混合する
脂肪族モノカルボン酸の量は少なくなる。
【0042】Mg含有量の低い脂肪族モノカルボン酸M
g塩を用いた場合、所望の厚さの誘電体保護膜を得るた
めに印刷回数が増える。またこの場合、脂肪族モノカル
ボン酸Mg塩が含有する有機成分が多くなるので、焼成
して得たMgOバインダー中に最終的に残渣として残る
有機成分が増え、これがためMgOバインダーの純度が
落ちるので、PDPパネル特性として実用上望まれる特
性を得ることは難しい。またMg含有量の低い脂肪族モ
ノカルボン酸Mg塩は有機成分が気化する温度が高くな
り、従って焼成温度を高くしなければならなくなる。
【0043】このような不都合を解消するためには、脂
肪族モノカルボン酸Mg塩として、Mg含有量が高いも
のすなわち分子量が小さいものが好ましい。
【0044】さらにこれに加えて、スクリーン印刷用ペ
ーストに用いる有機溶媒例えばテルピネオール、ブチル
カービトールなどに対し溶解性が高いことも望まれる。
このような高い溶解性を示す脂肪族モノカルボン酸Mg
塩は、炭素数が6〜10の脂肪族モノカルボン酸を出発
原料として得たものに多い。
【0045】これらのことを検討した結果、MgO前駆
体に用いる脂肪族モノカルボン酸Mg塩として、炭素数
6〜10(炭素数6以上10以下)の脂肪族モノカルボ
ン酸から成る出発原料(A)2モルに対してMg化合物
を1.01モル以上より好ましくは1.2モル以上過剰
に反応させて得た脂肪族モノカルボン酸Mg塩、又は、
炭素数6〜10(炭素数6以上10以下)の脂肪族モノ
カルボン酸及び炭素数5以下の脂肪族モノカルボン酸か
ら成る出発原料(B)2モルに対してMg化合物を1.
01モル以上より好ましくは1.2モル以上過剰に反応
させて得た脂肪族モノカルボン酸Mg塩を用いるのが、
良いことを見出した。
【0046】いずれの場合も、1.2モル以上過剰に反
応させて得た脂肪族モノカルボン酸Mg塩を用いるの
は、1.2モル未満では、1回当りの印刷で得られるM
gOバインダーを必ずしも充分に厚くすることができ
ず、印刷回数の低減効果が薄いからである。
【0047】ここに述べるものに限定するものではない
が、Mg化合物としては、MgOを用いることができ
る。炭素数6〜10の脂肪族モノカルボン酸としては、
例えばカプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、オクチル
酸、炭素数7〜10のセカノイック酸(エクソン社商品
名)、ネオデカン酸、ネオヘプタン酸、ネオノナン酸或
はN−ヘプタノイック酸を用いることができる。炭素数
5以下の脂肪族モノカルボン酸としては、例えば酢酸、
プロピオン酸或は酪酸を用いることができる。
【0048】出発原料(A)には、炭素数6〜10の脂
肪族モノカルボン酸を1種或は複数種混合したものを用
いることができる。また出発原料(B)には、炭素数6
〜10の脂肪族モノカルボン酸を1種或は複数種と、炭
素数5以下の脂肪族モノカルボン酸を1種或は複数種と
を混合したものを用いることができる。
【0049】炭素数5以下の脂肪族モノカルボンのみか
ら成る出発原料を用いて得た脂肪族モノカルボン酸Mg
塩は、Mg含有量は高いがテルピネオール、ブチルカル
ビトールなどの有機溶媒に溶けにくい。しかし炭素数5
以下の脂肪族モノカルボンと炭素数6〜10の脂肪族モ
ノカルボン酸とを混合した出発原料(B)を用いて得た
脂肪族モノカルボン酸Mg塩は、テルピネオールなどの
有機溶媒に可溶となる。
【0050】尚、脂肪族モノカルボン酸と塩基性Mg化
合物の反応性については、反応物を芳香族炭化水素系溶
液、例えばキシレンに溶かし、ろ過した液が均一な透明
である場合を反応していると判断した。従って脂肪族モ
ノカルボン酸に対し塩基性Mg化合物を過剰に反応させ
て得た脂肪族モノカルボン酸Mg塩について現時点では
構造解析に至っていない。
【0051】ペースト中には、粒子100重量%に対し
てMgOバインダー5〜20重量%を生じる混合割合
で、MgO粒子と脂肪族モノカルボン酸Mg塩とを混合
する。5〜20重量%のMgOバインダーを生ずるよう
にすることにより、実用上望まれるPDPパネル特性を
得るのに適したMgO誘電体保護膜、例えば放電開始電
圧及び放電維持電圧を低くできるMgO誘電体保護膜を
形成できる。
【0052】またMgO前駆体としての脂肪族モノカル
ボン酸Mg塩が含有する有機成分及びMgは焼成により
熱分解し、その結果、有機成分は気化して消失すると共
に、Mgの酸化によりMgOバインダーが結晶成長す
る。この際、MgOバインダーは、ペースト中のMgO
粒子を種結晶として、微小な結晶粒界を形成しつつ結晶
成長する。
【0053】この種結晶として、気相法により形成した
MgO粒子をペースト中に混合するのが好適である。気
相法により形成したMgO粒子は、純度が高く結晶性が
良好でありしかも粒子表面が平滑であるので、MgOバ
インダーの種結晶として用いて好適である。
【0054】この実施例の誘電体保護膜形成用ペースト
として、例えば、MgO粉末と、MgO前駆体としてオ
クチル酸Mg塩或はバーサチック酸Mg塩(バーサチッ
ク酸はシェル社の商品名)と、増粘剤としてエチルセル
ロースと、有機溶媒としてブチルカービトールとを混合
したものを用いた場合、ペーストを、印刷乾燥後に空気
中或は酸素雰囲気中で、常温から700℃に加熱して7
00℃で10分間焼成すると、ペースト中の有機物は2
50〜450℃の範囲で分解して気化し、残ったMgは
450〜700℃で酸化されてMgOバインダーを生ず
る。MgOバインダーは、ペースト中のMgO粒子に起
因して微小な結晶粒界を形成しつつ結晶成長し、そして
粒子の間を埋め込むので、緻密で均一なMgO誘電体保
護膜を形成できる。
【0055】次に以下に述べる実施例1〜6及び比較例
1〜2のペーストで誘電体保護膜を形成したAC−PD
Pにつき、パネル特性を実験的に調べたので、その点に
つき説明する。
【0056】これら実施例のペーストを作成するに当っ
ては、脂肪族モノカルボン酸に対しMg化合物を過剰に
反応させて、Mgの組成比が化学量論的に求まる組成比
よりも大きな脂肪族モノカルボン酸Mg塩を生成し、該
脂肪族モノカルボン酸Mg塩をMgO前駆体に用いてペ
ーストを調製した。
【0057】この際、炭素数6〜10(炭素数6以上1
0以下)の脂肪族モノカルボン酸から成る出発原料2モ
ルに対しMg化合物を1.01モル以上過剰に反応させ
て、脂肪族モノカルボン酸Mg塩を生成し(実施例1〜
4)、或は、炭素数6〜10(炭素数6以上10以下)
の脂肪族モノカルボン酸及び炭素数5以下の脂肪族モノ
カルボン酸から成る出発原料2モルに対しMg化合物を
1.01モル以上過剰に反応させて、脂肪族モノカルボ
ン酸Mg塩を生成した(実施例5〜6)。
【0058】実施例1〜6及び比較例1〜2の各場合に
ついて、MgO前駆体の生成に供したMg化合物:Mg
Oの混合量、出発原料となる脂肪族モノカルボン酸の混
合量及び有機溶媒:ブチルカービトールの混合量と、生
成したMgO前駆体のMg含有量とを、図1に示す。
【0059】(実施例1)還流冷却管付き300ml反
応用ビーカー内に、炭素数6〜10の脂肪族モノカルボ
ン酸から成る出発原料としてオクチル酸100g及び有
機溶媒としてブチルカービトール21.7gを入れ、こ
れらを混合攪拌しながら、この反応用ビーカー内にMg
化合物としてMgO21.8gを混合する。次いで反応
用ビーカー内のオクチル酸及びMgOを、70〜100
℃で約1時間反応させる。次いでビーカー内の混合物
を、110℃まで昇温した後に珪藻土を用いてろ過し、
MgOを過剰に反応させて得たMgO前駆体としてオク
チル酸Mg塩を得る。このオクチル酸Mg塩は、当該M
g塩100重量%に対し9.14重量%の割合でMgを
含有する。
【0060】次にMgO粒子として気相法によるMgO
超微粉末(宇部興産社製)と、MgO前駆体として前述
のオクチル酸Mg塩と、増粘剤としてエチルセルロース
と、有機溶媒としてブチルカービトールとを、例えばロ
ールミルを用いて混合攪拌して、実施例1のペーストを
得る。
【0061】このときの混合割合は、ペースト100重
量%に対して、MgO粒子X重量%、MgO前駆体Y重
量%、増粘剤5重量%、有機溶媒{100−X−Y−
5}重量%とする。X=12.5〜30.2とし、Mg
O前駆体の混合割合Y重量%は、ペースト中に混合する
MgO粒子100重量%に対して、MgOバインダー
5.61〜10.53重量%を生ずるように定める。
【0062】(比較例1)還流冷却管付き300ml反
応用ビーカー内に、炭素数6〜10の脂肪族モノカルボ
ン酸から成る出発原料としてオクチル酸100g及び有
機溶媒としてブチルカービトール21.7gを入れ、こ
れらを混合攪拌しながら、この反応用ビーカー内にMg
化合物としてMgO15.0gを混合する。次いで反応
用ビーカー内のオクチル酸及びMgOを、70〜100
℃で約1時間反応させる。次いでビーカー内の混合物
(反応生成物、有機溶媒)を、110℃まで昇温した後
に珪藻土を用いてろ過し、Mg組成比が化学量論的に求
まる組成比のMgO前駆体としてオクチル酸Mg塩を得
る。このオクチル酸Mg塩は、当該Mg塩100重量%
に対し6.54重量%の割合でMgを含有する。
【0063】次にMgO粒子として気相法によるMgO
超微粉末(宇部興産社製)と、MgO前駆体として前述
のオクチル酸Mg塩と、増粘剤としてエチルセルロース
と、有機溶媒としてブチルカービトールとを、例えばロ
ールミルを用いて混合攪拌して、比較例1のペーストを
得る。
【0064】このときの混合割合は、ペースト100重
量%に対して、MgO粒子X重量%、MgO前駆体Y重
量%、増粘剤5重量%、有機溶媒{100−X−Y−
5}重量%とする。X=12.5〜30.2とし、Mg
O前駆体の混合割合Y重量%は、ペースト中に混合する
MgO粒子100重量%に対して、MgOバインダー
5.61〜10.53重量%を生ずるように定める。
【0065】図2に、実施例1、比較例1のペースト及
びMgO前駆体なしのペーストを用いて作成したAC−
PDPの構造を、概略的に斜視図で示す。MgO前駆体
なしのペーストは、MgO前駆体を混合しないほかは、
実施例1のペーストと同様にして調製したペーストであ
る。
【0066】図2に示すAC−PDP10は面放電型の
PDPであって、このPDP10の背面板12上には、
表示電極14、誘電体16及び誘電体保護膜18を順次
に形成してある。表示電極14はAuペースト(エンゲ
ルハルド社製 A−3725)を用いて形成したAu厚
膜、誘電体16は誘電体ペースト(奥野製薬工業社製G
−0496)を用いて形成した誘電体厚膜、誘電体保護
膜18は実施例1のペーストにより形成したMgO膜で
ある。
【0067】またPDP10の前面板20上には、蛍光
体層22及び隔壁(図示せず)を順次に形成してある。
蛍光体層22はZn2 SiO4 :Mnを含有する蛍光体
ペースト(化成オプトニクス社製 P1−G1)を用い
て形成した緑色蛍光体層、隔壁は誘電体ペースト(デュ
ポン社製 9741)を用いて形成した誘電体厚膜であ
る。
【0068】そしてこれら背面板12及び前面板20の
間の放電空間24に、放電ガスとしてHe−5%Xeガ
スを500Torr封入して、PDP10を20KHz
で駆動して行なったパネル特性実験の結果を図3に示
す。実施例1、比較例1及びMgO粒子なしのいずれの
ペーストの場合も、パネル特性として、放電開始電圧V
f[V]、放電維持電圧Vs[V]、輝度[cd/m
2 ]、1セル当たりの放電電流[μA/cell]及び
発光効率[lm/W]を実験的に調べた。
【0069】図3からも理解できるように、比較例1の
放電開始電圧Vf及び放電維持電圧Vsは、MgO前駆
体なしの場合よりも低く、かつ、比較例1の発光効率
は、MgO前駆体なしの場合よりも高い。
【0070】そして実施例1の放電開始電圧Vfは比較
例1より75V低くなっており、また実施例1の放電開
始電圧Vsは比較例1より28V低くなっている。さら
に実施例1の発光効率も、比較例1より高くなってい
る。
【0071】この実施例1においては、Mgの組成比が
化学量論的に求まる組成比よりも大きなオクチル酸Mg
塩を、MgO前駆体に用いるので、MgO前駆体のMg
含有量は増大すると共に有機成分含有量は相対的に減少
する。従って焼成後に残渣として残存する有機成分の量
を減少させ、より純度が高くまたより緻密に結晶成長し
たMgOバインダーを得ることができる。この結果、M
gO粒子を相互により強くMgOバインダーでつなぎ止
めることができるので、放電開始電圧Vf及び放電維持
電圧Vsの低電圧化と発光効率の向上とを達成できると
考えられる。
【0072】このように実施例1によれば、放電開始電
圧Vf及び放電維持電圧Vsを低減しかつ発光効率を高
めることができる。しかもMgO誘電体保護膜18中の
MgOバインダーはより緻密に結晶成長しているので、
ACPDP10の誘電体16に対する保護機能が高まり
従ってACPDP10の長寿命化を期待できる。
【0073】上述したMgO前駆体なし及び実施例1の
ペーストを用いて形成したACPDPにおいて、放電ガ
スをNe−Xeとして寿命試験を行なった結果を、図4
に示す。図4にあっては、時間[hour]を対数軸で
横軸に及び相対輝度[a.u.]を縦軸に取り、MgO
前駆体なしの場合の相対輝度を白抜き三角で及び実施例
1の場合の相対輝度を白抜き丸でプロットして示した。
相対輝度は寿命試験開始時の輝度を1とした。
【0074】図4からも理解できるように、MgO前駆
体なしの場合は、ACPDP10の輝度劣化は著しく、
輝度半減期は800時間程度である。一方、実施例1の
場合は、ACPDP10の輝度劣化は少なく実用可能な
輝度半減期1万時間を越えることが期待できる。
【0075】以上のことから、MgO含有量の高いMg
O前駆体を含有する実施例1のペーストを用いることに
より、放電開始電圧Vf、放電維持電圧Vsが低く、発
光効率が高くかつ寿命の長いACPDPを得ることが可
能となる。
【0076】(実施例2)還流冷却管付き300ml反
応用ビーカー内に、炭素数6〜10の脂肪族モノカルボ
ン酸から成る出発原料としてN−ヘプタノイック酸70
重量%を含有するECR1770(エクソン社製)10
0g及び有機溶媒としてブチルカービトール36.6g
を入れ、これらを混合攪拌しながら、この反応用ビーカ
ー内にMg化合物としてMgO30.2gを混合する。
次いで反応用ビーカー内のECR1770及びMgO
を、70〜100℃で約1時間反応させる。次いでビー
カー内の混合物(反応生成物、有機溶媒)を、110℃
まで昇温した後に珪藻土を用いてろ過し、MgOを過剰
に反応させて得たMgO前駆体としてN−ヘプタノイッ
ク酸Mg塩を得る。このN−ヘプタノイック酸Mg塩
は、当該Mg塩100重量%に対し9.14重量%の割
合でMgを含有する。
【0077】次にMgO粒子として気相法によるMgO
超微粉末(宇部興産社製)と、MgO前駆体として前述
のN−ヘプタノイック酸Mg塩と、増粘剤としてエチル
セルロースと、有機溶媒としてブチルカービトールと
を、例えばロールミルを用いて混合攪拌して、実施例2
のペーストを得る。
【0078】このときの混合割合は、ペースト100重
量%に対して、MgO粒子X重量%、MgO前駆体Y重
量%、増粘剤5重量%、有機溶媒{100−X−Y−
5}重量%とする。X=12.5〜30.2とし、Mg
O前駆体の混合割合Y重量%は、ペースト中に混合する
MgO粒子100重量%に対して、MgOバインダー
5.61〜10.53重量%を生ずるように定める。
【0079】実施例2のペーストを用いて形成したPD
PのMgO誘電体保護膜においても、実施例1と同様に
実用に適したPDPパネル特性を期待できる。
【0080】(実施例3)還流冷却管付き300ml反
応用ビーカー内に、炭素数6〜10の脂肪族モノカルボ
ン酸から成る出発原料としてカプロン酸100g及び有
機溶媒としてブチルカービトール27.0gを入れ、こ
れらを混合攪拌しながら、この反応用ビーカー内にMg
化合物としてMgO27.4gを混合する。次いで反応
用ビーカー内のカプロン酸及びMgOを、70〜100
℃で約1時間反応させる。次いでビーカー内の混合物
(反応生成物、有機溶媒)を、110℃まで昇温した後
に珪藻土を用いてろ過し、MgOを過剰に反応させて得
たMgO前駆体としてカプロン酸Mg塩を得る。このカ
プロン酸Mg塩は、当該Mg塩100重量%に対し9.
06重量%の割合でMgを含有する。
【0081】次にMgO粒子として気相法によるMgO
超微粉末(宇部興産社製)と、MgO前駆体として前述
のカプロン酸Mg塩と、増粘材としてエチルセルロース
と、有機溶媒としてブチルカービトールとを、例えばロ
ールミルを用いて混合攪拌して、実施例3のペーストを
得る。
【0082】このときの混合割合は、ペースト100重
量%に対して、MgO粒子X重量%、MgO前駆体Y重
量%、増粘剤5重量%、有機溶媒{100−X−Y−
5}重量%とする。X=12.5〜30.2とし、Mg
O前駆体の混合割合Y重量%は、ペースト中に混合する
MgO粒子100重量%に対して、MgOバインダー
5.61〜10.53重量%を生ずるように定める。
【0083】実施例3のペーストを用いて形成したPD
PのMgO誘電体保護膜においても、実施例1と同様に
実用に適したPDPパネル特性を期待できる。
【0084】(実施例4)還流冷却管付き300ml反
応用ビーカー内に、炭素数6〜10の脂肪族モノカルボ
ン酸から成る出発原料としてバーサチック酸(シェル社
商品名)110g及び有機溶媒としてブチルカービトー
ル19.0gを入れ、これらを混合攪拌しながら、この
反応用ビーカー内にMg化合物としてMgO18.2g
を混合する。次いで反応用ビーカー内のバーサチック酸
及びMgOを、70〜100℃で約1時間反応させる。
次いでビーカー内の混合物(反応生成物、有機溶媒)
を、110℃まで昇温した後に珪藻土を用いてろ過し、
MgOを過剰に反応させて得たMgO前駆体としてバー
サチック酸Mg塩を得る。このバーサチック酸Mg塩
は、当該Mg塩100重量%に対し7.89重量%の割
合でMgを含有する。
【0085】次にMgO粒子として気相法によるMgO
超微粉末(宇部興産社製)と、MgO前駆体として前述
のバーサチック酸Mg塩と、増粘剤としてエチルセルロ
ースと、有機溶媒としてブチルカービトールとを、例え
ばロールミルを用いて混合攪拌して、実施例4のペース
トを得る。
【0086】このときの混合割合は、ペースト100重
量%に対して、MgO粒子X重量%、MgO前駆体Y重
量%、増粘剤5重量%、有機溶媒{100−X−Y−
5}重量%とする。X=12.5〜30.2とし、Mg
O前駆体の混合割合Y重量%は、ペースト中に混合する
MgO粒子100重量%に対して、MgOバインダー
5.61〜10.53重量%を生ずるように定める。
【0087】実施例4のペーストを用いて形成したPD
PのMgO誘電体保護膜においても、実施例1と同様に
実用に適したPDPパネル特性を期待できる。
【0088】(実施例5)還流冷却管付き300ml反
応用ビーカー内に、炭素数6〜10の脂肪族モノカルボ
ン酸及び炭素数5以下の脂肪族モノカルボン酸から成る
出発原料としてオクチル酸73g及び酢酸30g、及
び、有機溶媒としてブチルカービトール63.0gを入
れ、これらを混合攪拌しながら、この反応用ビーカー内
にMg化合物としてMgO31.9gを混合する。次い
で反応用ビーカー内のオクチル酸、酢酸及びMgOを、
70〜100℃で約1時間反応させる。次いでビーカー
内の混合物(反応生成物、有機溶媒)を、110℃まで
昇温した後に珪藻土を用いてろ過し、MgOを過剰に反
応させて得たMgO前駆体としてオクチル酸Mg塩及び
酢酸Mg塩の混合物を得る。このオクチル酸Mg塩及び
酢酸Mg塩の混合物は、当該混合物100重量%に対し
10.53重量%の割合でMgを含有する。
【0089】次にMgO粒子として気相法によるMgO
超微粉末(宇部興産社製)と、MgO前駆体として前述
のオクチル酸Mg塩及び酢酸Mg塩の混合物と、増粘剤
としてエチルセルロースと、有機溶媒としてブチルカー
ビトールとを、例えばロールミルを用いて混合攪拌し
て、実施例5のペーストを得る。
【0090】このときの混合割合は、ペースト100重
量%に対して、MgO粒子X重量%、MgO前駆体Y重
量%、増粘剤5重量%、有機溶媒{100−X−Y−
5}重量%とする。X=12.5〜30.2とし、Mg
O前駆体の混合割合Y重量%は、ペースト中に混合する
MgO粒子100重量%に対して、MgOバインダー
5.61〜10.53重量%を生ずるように定める。
【0091】実施例5のペーストを用いて形成したPD
PのMgO誘電体保護膜においても、実施例1と同様に
実用に適したPDPパネル特性を期待できる。
【0092】(実施例6)還流冷却管付き300ml反
応用ビーカー内に、炭素数6〜10の脂肪族モノカルボ
ン酸及び炭素数5以下の脂肪族モノカルボン酸から成る
出発原料としてバーサチック酸88g及び酢酸30g、
及び、有機溶媒としてブチルカービトール50.0gを
入れ、これらを混合攪拌しながら、この反応用ビーカー
内にMg化合物としてMgO31.9gを混合する。次
いで反応用ビーカー内のバーサチック酸、酢酸及びMg
Oを、70〜100℃で約1時間反応させる。然る後、
ビーカー内の混合物(反応生成物、有機溶媒)を、11
0℃まで昇温した後に珪藻土を用いてろ過し、MgOを
過剰に反応させて得たMgO前駆体としてバーサチック
酸Mg塩及び酢酸Mg塩の混合物を得る。このバーサチ
ック酸Mg塩及び酢酸Mg塩の混合物は、当該混合物1
00重量%に対し9.61重量%の割合でMgを含有す
る。
【0093】次にMgO粒子として気相法によるMgO
超微粉末(宇部興産社製)と、MgO前駆体として前述
のオクチル酸Mg塩及び酢酸Mg塩の混合物と、増粘剤
としてエチルセルロースと、有機溶媒としてブチルカー
ビトールとを、例えばロールミルを用いて混合攪拌し
て、実施例6のペーストを得る。
【0094】このときの混合割合は、ペースト100重
量%に対して、MgO粒子X重量%、MgO前駆体Y重
量%、増粘剤5重量%、有機溶媒{100−X−Y−
5}重量%とする。X=12.5〜30.2とし、Mg
O前駆体の混合割合Y重量%は、ペースト中に混合する
MgO粒子100重量%に対して、MgOバインダー
5.61〜10.53重量%を生ずるように定める。
【0095】実施例6のペーストを用いて形成したPD
PのMgO誘電体保護膜においても、実施例1と同様に
実用に適したPDPパネル特性を期待できる。
【0096】(比較例2)還流冷却管付き300ml反
応用ビーカー内に、炭素数6〜10の脂肪族モノカルボ
ン酸から成る出発原料としてバーサチック酸100g及
び有機溶媒としてブチルカービトール17.1gを入
れ、これらを混合攪拌しながら、この反応用ビーカー内
にMg化合物としてMgO12.5gを混合する。次い
で反応用ビーカー内のオクチル酸及びMgOを、70〜
100℃で約1時間反応させる。次いでビーカー内の混
合物(反応生成物、有機溶媒)を、110℃まで昇温し
た後に珪藻土を用いてろ過し、Mg組成比が化学量論的
に求まる組成比のMgO前駆体としてバーサチック酸M
g塩を得る。このバーサチック酸Mg塩は、当該Mg塩
100重量%に対し5.61重量%の割合でMgを含有
する。
【0097】次にMgO粒子として気相法によるMgO
超微粉末(宇部興産社製)と、MgO前駆体として前述
のオクチル酸Mg塩と、増粘剤としてエチルセルロース
と、有機溶媒としてブチルカルビトールとを、例えばロ
ールミルを用いて混合攪拌して、比較例2のペーストを
得る。
【0098】このときの混合割合は、ペースト100重
量%に対して、MgO粒子X重量%、MgO前駆体Y重
量%、増粘剤5重量%、有機溶媒{100−X−Y−
5}重量%とする。X=12.5〜30.2とし、Mg
O前駆体の混合割合Y重量%は、ペースト中に混合する
MgO粒子100重量%に対して、MgOバインダー
5.61〜10.53重量%を生ずるように定める。
【0099】
【発明の効果】上述した説明からも明らかなように請求
項1の発明によれば、MgO前駆体及び添加剤はそれぞ
れ有機物であり、これらの有機成分は焼成により気化し
て焼成雰囲気中へと散逸する。そしてMgO前駆体は焼
成によりMgと有機成分とに熱分解し、さらにMgが酸
化してMgOバインダーを生じる。従ってMgO粒子と
MgOバインダーとから成る誘電体保護膜すなわちMg
Oを主成分とした誘電体保護膜を形成できるので、PD
Pのパネル特性として実用上望まれる特性を得るのに適
した、誘電体保護膜を形成できる。
【0100】しかもMgO前駆体に、加水分解によるゲ
ル化を生じにくい脂肪族モノカルボン酸Mg塩を用いる
ので、ペーストの調製、保管或は印刷においてゲル化を
生じにくいペーストを提供できる。
【0101】このように請求項1の発明によれば、実用
に適したパネル特性が得られる誘電体保護膜を形成でき
しかもゲル化しにくいペーストを提供できる。
【0102】また請求項5の発明によれば、請求項1の
発明において、気相法により形成したMgO粒子を用
い、従って純度が高く結晶性が良好でありしかも粒子表
面が比較的に平滑であるMgO粒子を、MgOバインダ
ーの種結晶に用いることができるので、結晶性の良好な
(すなわち非晶質部分の少ない)MgOバインダーを形
成できる。MgOバインダーとして結晶性の良好なMg
Oを得ることができる結果、PDPのパネル特性をより
一層向上できる誘電体保護膜を形成できる。
【0103】また請求項6の発明によれば、請求項1の
発明において、粒子100重量%に対してMgOバイン
ダー5〜20重量%(5重量%以上20重量%以下)を
生じる割合で、粒子とMgO前駆体とを混合するので、
実用に適した放電開始電圧及び放電維持電圧を得ること
のできる誘電体保護膜を形成できる。
【0104】さらに請求項2の発明によれば、請求項1
の発明において、MgO前駆体に、Mgの組成比が化学
量論的に求まる組成比よりも大きな脂肪族モノカルボン
酸Mg塩を用いるので、MgO前駆体のMg含有量を相
対的に増加させると共に有機成分含有量を相対的に減少
させることができる。従って1回当りの印刷及び焼成で
得られるMgOバインダーの厚さを増加させることがで
きる。また焼成して得たMgOバインダー中に残渣とし
て残存する有機成分の量を減少させることができるの
で、より純度が高くより緻密に結晶成長したMgOバイ
ンダーを得ることができる。
【0105】従って請求項2の発明によれば、所望の膜
厚の誘電体保護膜をより少ない印刷回数で得ることがで
き、しかもより実用に適したパネル特性が得られる誘電
体保護膜を形成できるペーストを提供できる。
【0106】また請求項3の発明によれば、請求項2の
発明において、炭素数6〜10(6以上10以下)の脂
肪族モノカルボン酸から成る出発原料を用いて得た脂肪
族モノカルボン酸Mg塩を、MgO前駆体に用いるの
で、添加剤例えば増粘剤、有機溶媒或は消泡剤の有機成
分が気化する温度よりも高い温度で、MgO前駆体の熱
分解及びMgOバインダーの結晶成長を開始させること
ができる。その結果、添加剤の有機成分が、焼成により
得たMgOバインダー中に残渣として残存する量を減少
させてMgOバインダーの純度を高めることができるの
で、実用上望まれるパネル特性を得るのに、より適した
誘電体保護膜を形成できる。しかもPDPの製造に用い
るガラス基板が変形或は変質する温度よりも低い温度
で、MgO前駆体の熱分解及びMgOバインダーの結晶
成長を開始させることができる。
【0107】また請求項4の発明によれば、請求項2の
発明において、炭素数6〜10(炭素数6以上10以
下)の脂肪族モノカルボン酸及び炭素数5以下の脂肪族
モノカルボン酸から成る出発原料を用いて得た脂肪族モ
ノカルボン酸Mg塩を、MgO前駆体に用いる。
【0108】炭素数5以下の脂肪族モノカルボン酸を出
発原料の成分のひとつとして得たMgO前駆体を用いる
ことにより、MgO前駆体のMg含有量を増やすことが
できるので、1回の印刷及び焼成で得られるMgOバイ
ンダーの厚さを増やすことができる。
【0109】また炭素数5以下の脂肪族モノカルボン酸
のみから成る出発原料を用いた場合、MgO前駆体の熱
分解開始温度及びMgOバインダーの結晶成長開始温度
が低くなるので、純度の高いMgOバインダーを得るこ
とが難しくなる。しかしながら炭素数6〜10の脂肪族
モノカルボン酸も出発原料の成分として加えて得たMg
O前駆体を用いることにより、MgO前駆体の熱分解開
始温度及びMgOバインダーの結晶成長開始温度を、添
加剤例えば増粘剤、有機溶媒或は消泡剤の有機成分が気
化する温度よりも高い温度とし、しかもPDPの製造に
用いるガラス基板が変形或は変質する温度よりも低い温
度とすることができる。
【0110】このように請求項4の発明によれば、請求
項2の発明の効果に加え、実用に適したパネル特性が得
られる誘電体保護膜を、PDPの製造に適した焼成温度
で形成できるペーストを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例及び比較例の各場合について、MgO前
駆体の生成に供した塩基性Mg化合物、出発原料及び有
機溶媒の混合量と、生成したMgO前駆体のMg含有量
とを、示す図である。
【図2】パネル特性実験に供したAC−PDPの構造
を、概略的に斜視図で示す図である。
【図3】ACPDPのパネル特性実験の結果を示す図で
ある。
【図4】ACPDPの寿命試験を行なった結果を示す図
である。
【符号の説明】
10:AC−PDP 12:背面板 14:表示電極 16:誘電体 18:保護膜 20:前面板 22:蛍光体層 24:放電空間
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 金原 隆雄 東京都港区虎ノ門1丁目7番12号 沖電気 工業株式会社内 (72)発明者 高谷 和樹 兵庫県尼崎市南塚口町6丁目10番73号 神 東塗料株式会社内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 MgO粒子と焼成によりMgOバインダ
    ーを生じるMgO前躯体と有機物から成る添加剤とを含
    有して成る誘電体保護膜形成用ペーストにおいて、 MgO前躯体を、脂肪族モノカルボン酸Mg塩としたこ
    とを特徴とする誘電体保護膜形成用ペースト。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の誘電体保護膜形成用ペー
    ストにおいて、 MgO前駆体を、Mgの組成比が化学量論的に求まる組
    成比よりも大きな脂肪族モノカルボン酸Mg塩としたこ
    とを特徴とする誘電体保護膜形成用ペースト。
  3. 【請求項3】 請求項2記載の誘電体保護膜形成用ペー
    ストにおいて、 MgO前駆体を、炭素数6〜10(炭素数6以上10以
    下)の脂肪族モノカルボン酸から成る出発原料2モルに
    対してMg化合物を1.01モル以上過剰に反応させて
    得た脂肪族モノカルボン酸Mg塩としたことを特徴とす
    る誘電体保護膜形成用ペースト。
  4. 【請求項4】 請求項2記載の誘電体保護膜形成用ペー
    ストにおいて、 MgO前駆体を、炭素数6〜10(炭素数6以上10以
    下)の脂肪族モノカルボン酸及び炭素数5以下の脂肪族
    モノカルボン酸から成る出発原料2モルに対してMg化
    合物を1.01モル以上過剰に反応させて得た脂肪族モ
    ノカルボン酸Mg塩としたことを特徴とする誘電体保護
    膜形成用ペースト。
  5. 【請求項5】 請求項1記載の誘電体保護膜形成用ペー
    ストにおいて、 粒子を、気相法により形成したMgO粒子としたことを
    特徴とする誘電体保護膜形成用ペースト。
  6. 【請求項6】 請求項1記載の誘電体保護膜形成用ペー
    ストにおいて、 粒子100重量%に対してMgOバインダー5〜20重
    量%を生じる割合で、粒子とMgO前駆体とを混合する
    ことを特徴とする誘電体保護膜形成用ペースト。
JP7168944A 1995-07-04 1995-07-04 誘電体保護膜形成用ペースト Withdrawn JPH0912940A (ja)

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JP7168944A JPH0912940A (ja) 1995-07-04 1995-07-04 誘電体保護膜形成用ペースト

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JP7168944A JPH0912940A (ja) 1995-07-04 1995-07-04 誘電体保護膜形成用ペースト

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