JP2004168754A - 有機酸金属塩およびそれを含有する金属酸化物薄膜形成用塗布液 - Google Patents

有機酸金属塩およびそれを含有する金属酸化物薄膜形成用塗布液 Download PDF

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Abstract

【課題】 塗布成膜法により、膜強度、透明性、および実用に耐えうる膜厚の酸化マグネシウム薄膜を調製することが可能な手段を提供すること。
【解決手段】 飽和モノカルボン酸またはその塩と、無機マグネシウム化合物とを反応させて得られる有機酸金属塩であって、該飽和カルボン酸またはその塩が炭素数4〜10の飽和モノカルボン酸またはその塩を97重量%以上含有し、該有機酸金属塩が有機酸マグネシウム塩を99重量%以上含有する、有機酸金属塩。
【選択図】 なし

Description

本発明は、プラズマディスプレイパネル(PDP)用誘電体の保護膜等に用いられる酸化マグネシウム薄膜を塗布成膜法により形成するために適した有機酸マグネシウム塩に関する。
酸化マグネシウム薄膜は、PDP用保護膜、絶縁膜、触媒膜、表面保護膜など広い範囲に利用されている。従来、酸化マグネシウムをはじめとする金属酸化物の薄膜を形成する手法としては、スパッタ法、真空蒸着法などの物理的成膜法が用いられている。これらの手法では、均一で緻密な結晶性の高い薄膜が得られる反面、真空系で成膜を行うため、大型かつ複雑で、高価な装置が必要である。また、バッチ式での生産であるため生産効率が悪く、製造コストが高くなるという問題がある。
一方、上記物理的成膜法に対して、高価で複雑な装置の必要がなく、しかも簡単な工程で金属酸化物薄膜を形成できる方法として、塗布成膜法がある。
塗布成膜法には、種々のアルカリ土類金属の化合物が用いられている。例えば、MgO粒子および焼成によりMgOを形成するMgO前駆体(特許文献1および特許文献2)、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)のアルコキシド(特許文献3および特許文献4)などを含む、金属酸化物(酸化マグネシウム)薄膜形成用組成物が知られている。
しかしながら、上記金属酸化物薄膜形成用組成物(塗布液)は、一般に、経時安定性が悪く、均一な薄膜が得られない、あるいは膜厚の薄いものしか得られないなどの問題がある。
また、塗布成膜法に用いる組成物に含有される化合物としては、上記のマグネシウム化合物以外にも有機酸マグネシウム塩が知られているが、有機酸マグネシウム塩は溶媒に対する溶解性が一般に低く、例えばアルコール系溶媒を用いて塗布液とした場合に、白濁や沈殿が生じる場合がある。そのため、各種の添加剤を用いて、白濁や沈殿が生じない透明な塗布液が調製することが検討されている。
例えば、特許文献5においては、有機酸マグネシウム塩、溶媒としての多価アルコール酢酸誘導体、および増粘剤などの添加剤を含有する塗布液が調製されている。また、特許文献6では、有機酸マグネシウム塩、多価アルコール誘導体、有機酸、アミン、および増粘剤などの添加剤を含有する塗布液が調製されている。しかし、これらの塗布液の経時安定性は必ずしも充分でないという欠点がある。
このように、有機酸マグネシウム塩を含有する塗布液は、例えば、汎用のアルコール系溶媒などを用いた場合に白濁し、塗布膜に白濁が生じる、あるいは塗布膜を形成しないなどの欠点がある。さらに、上記公報の技術により透明な塗布液が形成された場合でも、その経時安定性は充分でないという問題がある。
特開平9−12940号公報 特開平9−208851号公報 特開平6−162920号公報 特開平8−329844号公報 特開平9−95627号公報 特開平9−129141号公報
本発明の課題は、上記従来の問題点を解決することにあり、その目的は、塗布成膜法により、膜強度、透明性、および実用に耐えうる膜厚の酸化マグネシウム薄膜を調製することが可能な手段を提供することにある。
本発明の有機酸金属塩は、飽和モノカルボン酸またはその塩と、無機マグネシウム化合物とを反応させて得られる有機酸金属塩であって、該飽和モノカルボン酸またはその塩が炭素数4〜10の飽和モノカルボン酸またはその塩を97重量%以上含有し、該有機酸金属塩が有機酸マグネシウム塩を99重量%以上含有する。
好ましい実施態様においては、上記炭素数4〜10の飽和モノカルボン酸は、直鎖飽和モノカルボン酸である。
好ましい実施態様においては、本発明の有機酸金属塩は、エタノールに40重量%となるように溶解し、30℃で1時間放置した場合に該溶液が透明である。
本発明の有機酸金属塩の製造方法は、無機マグネシウム化合物1モルと、飽和モノカルボン酸またはその塩2〜3モルとを反応させる工程を含み、該飽和モノカルボン酸またはその塩は、炭素数4〜10の飽和モノカルボン酸またはその塩を97重量%以上含有し、そして該有機酸金属塩は、有機酸マグネシウム塩を99重量%以上含有する。
好ましい実施態様においては、上記炭素数4〜10の飽和モノカルボン酸は、直鎖飽和モノカルボン酸である。
好ましい実施態様においては、上記飽和モノカルボン酸またはその塩は、飽和モノカルボン酸である。
好ましい実施態様においては、上記反応は、水または水を10重量%以上含有する有機溶媒中で行われる。
好ましい実施態様においては、上記方法は、さらに80℃以下で溶媒除去を行う工程を含む。
好ましい実施態様においては、上記無機マグネシウム化合物は、水酸化マグネシウムである。
本発明の酸化マグネシウム薄膜形成用塗布液は、アルコール系溶媒およびアルコール系溶媒を含む混合溶媒からなる群から選択される有機溶媒100重量部、および上記有機酸金属塩1〜100重量部を含有する。
好ましい実施態様においては、上記混合溶媒は、脂肪族炭化水素系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、およびハロゲン系溶媒からなる群から選択される溶媒とアルコール系溶媒との混合溶媒である。
好ましい実施態様においては、上記有機溶媒は、アルコール系溶媒を5重量%以上含有する混合溶媒である。
好ましい実施態様においては、上記アルコール系溶媒は、炭素数1〜8の一価あるいは多価アルコールである。
好ましい実施態様においては、上記アルコール系溶媒および混合溶媒に用いる有機溶媒の沸点は70℃以上200℃以下である。
本発明によれば、塗布成膜法により、膜強度、透明性、および実用に耐えうる膜厚の酸化マグネシウム薄膜を調製することが可能な、実質的に有機酸マグネシウム塩からなる有機酸金属塩、および該有機酸金属塩の製造方法が提供される。さらに、この有機酸金属塩を含有し、上記優れた性質を有する酸化マグネシウム薄膜を形成することが可能であり、経時安定性に優れた酸化マグネシウム薄膜形成用塗布液が提供される。
本発明の有機酸金属塩は、飽和モノカルボン酸またはその塩(a成分)と無機マグネシウム化合物(b成分)とから合成され、その99重量%以上が有機酸マグネシウム塩である、実質的に有機酸マグネシウム塩からなる。
上記a成分は、炭素数4〜10の飽和モノカルボン酸またはその塩を97重量%以上含有していることが必要である。好ましくは98重量%以上、より好ましくは99%重量以上含有している。
炭素数3以下の飽和カルボン酸を用いて得られる有機酸マグネシウム塩は、酸化マグネシウム薄膜形成用塗布液としたときに、結晶化し、白色の微小な粒子を形成しやすい傾向にある。そのため、塗布液が均一に塗布されにくい。あるいは、塗布時に有機酸マグネシウム塩は溶解しているが、塗膜後、乾燥により塗膜が白濁し、焼成して得られる酸化マグネシウム薄膜も白濁しやすくなる。炭素数11以上のカルボン酸を用いて得られる有機酸マグネシウム塩は、溶媒に対する溶解性が乏しく、塗布液を作ることが困難な傾向にある。
炭素数4〜10の飽和モノカルボン酸またはその塩は、天然から得られ、あるいは化学合成により製造されている。しかし、このようなカルボン酸またはその塩には、デカン、ドデカン、トリデカンなどのパラフィン系化合物、2−ウンデカノンなどのケトン系化合物、長鎖アルコール類、長鎖アルデヒド類など、精製段階で蒸留によって除去しきれない不純物が含有されている。さらに、合成時の原料に由来する炭素数3以下、あるいは11以上のカルボン酸が含まれる場合がある。
これらの不純物は、有機酸マグネシウム塩を合成する際、未反応の無機マグネシウム化合物および反応によって生じる有機酸マグネシウム塩を抱き込み、粘着性不純物を形成する。この粘着性不純物は、有機溶媒にも溶解しにくく、精製によっても除去されにくく、生成物中に残存する。このような不純物が合計で3重量%を超える場合、塗布液を調製する際に、沈澱、白濁などを生じるため、所定濃度の有機酸マグネシウム塩を調製できないという不具合が生じる。また、酸化マグネシウム薄膜が白濁する原因にもなり得る。
本発明には、炭素数4〜10の飽和モノカルボン酸が好ましく用いられる。炭素数4〜10の飽和モノカルボン酸としては、例えば、酪酸、イソ酪酸、吉草酸、イソ吉草酸、カプロン酸、2−エチル酪酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸などが挙げられる。好ましくは、炭素数4〜10の直鎖飽和モノカルボン酸である。分岐飽和モノカルボン酸を用いて合成された有機酸マグネシウム塩は、その構造上、分解しにくいため、熱分解開始温度および熱分解終了温度は、直鎖飽和モノカルボン酸を用いて合成された有機酸マグネシウム塩の熱分解開始温度および熱分解終了温度よりも、それぞれ、高くなる。従って、該塩を含む塗布液由来の塗膜の焼成に際して、より高温が要求され、経済的ではない。本発明に用いられる飽和モノカルボン酸は、単独の化合物であってもよいし、2種類以上の組み合わせであっても良い。
a成分として使用される飽和モノカルボン酸塩は、前述の飽和モノカルボン酸とアルカリとを、水系溶媒中で反応させて得られる化合物である。上記飽和モノカルボン酸塩としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩;アンモニウム塩;ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、エタノールアミン塩などのアミン塩などが挙げられる。特に好ましくはアンモニウム塩およびアミン塩である。アルカリ金属塩を用いた場合、最終的に得られる、実質的に有機酸マグネシウムからなる有機酸金属塩中に、飽和脂肪酸アルカリ金属塩が残留し、焼成後の酸化マグネシウム薄膜の電気特性および膜強度などに悪影響を及ぼす可能性がある。
本発明に用いられる飽和モノカルボン酸またはその塩の純度は、ガスクロマトグラフ、ガスクロマトグラフ質量分析装置などを用いて測定することができる。
a成分として飽和モノカルボン酸を用いる場合、上記b成分の無機マグネシウム化合物としては、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウムなどが採用される。反応時に溶液が取扱いやすく、均一に反応が進行しやすい点を考慮すると、水酸化マグネシウムが好ましく用いられる。他方、a成分として飽和モノカルボン酸の塩を用いる場合、b成分としては塩化マグネシウム、硫酸マグネシウムなどの水溶性無機マグネシウム化合物が用いられる。副生する塩の除去性などを考慮すると、水に溶解しやすい硫酸ナトリウムを形成し得る硫酸マグネシウムが好ましく用いられる。
通常、原料として用いられる無機マグネシウム化合物には、不純物として、カルシウム化合物などの金属化合物が含まれている。この不純物を含有する原料を用いて有機酸金属塩を合成した場合、これらの金属化合物も飽和モノカルボン酸と反応して有機酸金属塩を生成する。これらの生成した有機酸金属塩を有機酸マグネシウム塩から分離・除去するのは困難である。このため、無機マグネシウム化合物(b成分)に含まれる全金属に対するマグネシウムの割合は99重量%以上であることが好ましい。マグネシウムの含有量が、全金属量に対して99重量%未満である無機マグネシウム化合物を出発原料として用いると、得られる有機酸金属塩は、アルコール類をはじめとする溶媒に溶解したときに、白濁を生じる。このような有機酸金属塩を含有する塗布液は、経時安定性が悪く、沈殿物を生じる。さらに、この有機酸金属塩を含有する塗布液を用いて、酸化マグネシウム薄膜を成膜すると、得られる酸化マグネシウム薄膜は白濁やひび割れを生じる。
本発明の有機酸金属塩中のマグネシウム、およびその他の金属の含有量は、原子吸光分析法、蛍光X線分析法、誘導結合プラズマ発光分析法などを用いて測定することができる。
本発明の有機酸金属塩は、上記炭素数4〜10の飽和モノカルボン酸を97%重量以上含むa成分と無機マグネシウム化合物(b成分)とを、好ましくは、後述の方法で反応させることにより得られる。
本発明の有機酸金属塩には、有機酸マグネシウム塩が99重量%以上、より好ましくは99.5重量%以上含まれている。上記の通り、出発材料である飽和モノカルボン酸(a成分)と無機マグネシウム化合物(b成分)との反応では、これらの原料中の物質に由来する不純物が完全に除去されないため、マグネシウム以外の金属(例えば、カルシウム)に由来する有機酸金属塩などが存在する。この有機酸金属塩中の有機酸マグネシウム塩の含有量が99重量%未満であると、有機酸金属塩の溶媒への溶解性が悪く、白濁を生じる。さらに、この有機酸金属塩を含有する薄膜形成用塗布液を用いて、酸化マグネシウム薄膜を成膜すると、得られる薄膜は白濁やひび割れを生じる。
また、本発明の有機酸金属塩は、マグネシウムを全金属中の99重量%以上含むことが好ましい。より好ましくは99.5重量%以上である。マグネシウム以外の不純物金属が1重量%を超えて含まれると、上記のように、有機酸金属塩のの溶解時に白濁が生じる。さらに、このように不純物金属が多い有機酸金属塩を含有する塗布液は、経時安定性が悪く、沈殿物を生じやすい。さらに、塗布液から得られる酸化マグネシウム薄膜は白濁やひび割れを生じるおそれがある。
本発明の有機酸金属塩の製造方法は、上記炭素数4〜10の飽和モノカルボン酸を97重量%以上含有する飽和カルボン酸またはその塩(a成分)と、無機マグネシウム化合物(b成分)とを溶媒中で反応させる工程を包含する。この方法においては、通常、反応後に、用いられた溶媒が除去され、有機酸金属塩が単離される。
上記塩形成反応においては、無機マグネシウム化合物1モルに対して、炭素数4〜10の飽和モノカルボン酸またはその塩が2〜3モル、好ましくは2〜2.5モルを用いて反応が行なわれる。飽和モノカルボン酸またはその塩は、モル等量(すなわち、マグネシウム1モルに対して飽和モノカルボン酸またはその塩2モル)よりもわずかに過剰に(例えば、1〜数%程度過剰に;具体的には、2.02〜2.1モル程度)使用することが、残存する飽和モノカルボン酸量を極力少なくできるので、最も好ましい。無機マグネシウム化合物1モルに対して飽和モノカルボン酸またはその塩を2モル未満で反応させた場合、反応率が低下し、塗布液を調製したときに白濁を引き起こす原因となる虞がある。また、得られた塗布液を用いて酸化マグネシウム薄膜を形成し、焼成した場合、白濁やひび割れが発生する。無機マグネシウム化合物1モルに対して、飽和モノカルボン酸またはその塩を3モルを超えて反応させた場合には、過剰の飽和のカルボン酸またはその塩が残存し、生産効率やコストの点で不利である。
本発明の有機酸金属塩の製造方法には、直接法と複分解法がある。直接法は、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウムなどのマグネシウム化合物とカルボン酸とを直接反応させる方法である。複分解法は、塩化マグネシウムなどのマグネシウム塩の水溶液とカルボン酸ナトリウム塩などのカルボン酸塩の溶液とを混合し、塩交換を行う方法である。本発明においては、いずれの方法を用いてもよいが、直接法を用いることがより好ましい。その理由は、複分解法においては、マグネシウム塩以外の無機金属塩(例えば、塩化ナトリウム)が不純物として副生するのに対して、直接法においては、このような不純物を副生しないためである。
直接法を採用する場合、マグネシウム化合物としては、水酸化マグネシウムを用いることが好ましい。例えば、酸化マグネシウムを原料とする場合、反応が完全に進行しない可能性がある。このような場合、有機酸金属塩は、溶媒への溶解性が著しく低下する。
上記塩形成反応において、溶媒として、水、または水を10重量%以上含有する有機溶媒が好ましく用いられる。水には、反応を促進する触媒としての効果と、均一に反応を進行させるための溶媒としての効果がある。反応に用いる有機溶媒中に水を10重量%未満しか含有しない場合、触媒としての機能が十分発揮されず、反応の進行が著しく遅くなり、最終的に得られる有機酸金属塩は、有機溶媒への溶解性が劣る。
上記塩形成反応において、水と混合して用いられ得る有機溶媒としては、炭化水素系溶媒、アルコール系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒が好ましい。炭化水素系溶媒としては、n−ヘキサン、n−オクタン、シクロヘキサン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。アルコール系溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどが挙げられる。エステル系溶媒としては、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。エーテル系溶媒としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどが挙げられる。これらの溶媒は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
上記塩形成反応における反応温度は、40℃以上80℃以下であることが好ましい。さらに好ましくは40℃以上70℃以下である。40℃未満では、有機酸金属塩の合成反応は、ほとんど進行しない。80℃を超える温度で合成された有機酸金属塩を溶解して得られる酸化マグネシウム薄膜形成用塗布液は、濁りを生じやすい。さらに、この塗布液を基板に塗布し、乾燥、焼成した場合、形成される酸化マグネシウム薄膜に濁りを生じる場合がある。
上記塩形成反応後の溶媒除去工程においては、80℃以下の温度で溶媒除去を行うことが好ましい。より好ましくは70℃以下、特に好ましくは60℃以下で、溶媒除去を行う。80℃を超える温度で溶媒除去を行った場合、得られる有機酸金属塩は、有機溶媒への溶解速度が著しく低下する。また、得られた有機酸金属塩含む酸化マグネシウム薄膜形成用塗布液の経時安定性も悪くなる。溶媒除去方法としては、当業者が通常用いる方法が用いられる。例えば、減圧乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥、気流乾燥などが採用される。代表的には、反応溶液から結晶を析出させ、析出した結晶を取り出して減圧乾燥する方法などが好適に用いられる。溶媒除去は、できるだけ短時間で行うことが好ましい。
このようにして製造された有機酸金属塩は、99重量%以上の有機酸マグネシウム塩を含有し、酸化マグネシウム薄膜形成のために好適に用いることができる。
得られた有機酸金属塩は、アルコール系溶媒に高濃度に溶解させることが可能である。この有機酸金属塩を、エタノールに40重量%となるように溶解し、30℃で1時間放置した場合に、透明であり白濁を生じない。
本発明の酸化マグネシウム薄膜形成用塗布液は、本発明の有機酸金属塩を適切な有機溶媒に溶解することにより得られる。塗布液は、有機溶媒100重量部あたり、本発明の有機酸金属塩を、1〜100重量部の割合で含有する。有機酸金属塩の含有量が、1重量部未満の場合、成膜した酸化マグネシウム薄膜の膜厚が薄すぎて、実用に耐え得ない。また、膜厚を厚くするには、多数回塗布焼成を繰り返さなければならず、生産性が悪い。有機酸金属塩の含有量が100重量部を超える場合、有機酸マグネシウム塩が析出し、均一な塗膜ができず、均一な酸化マグネシウム薄膜を得ることができない。
塗布液を形成するための有機溶媒は、アルコール系溶媒およびアルコール溶媒を含む混合溶媒からなる群から選択される。上記アルコール系溶媒としては、炭素数1〜8の一価あるいは多価アルコールを用いることが好ましい。炭素数が9以上のアルコール系溶媒を用いた場合、本発明の有機酸金属塩を均一に溶解するのが困難になる虞がある。アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、テルピネオール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどが挙げられる。
本発明の酸化マグネシウム薄膜形成用塗布液がアルコール系溶媒単独であるいはアルコール系溶媒を含む混合溶媒で調製されている場合であっても、アルコール系溶媒としてメタノール、エタノールなどの比較的極性の高い溶媒を用いた場合、有機酸金属塩としては、好ましくは炭素数4〜6の飽和カルボン酸、より好ましくは炭素数4〜6の直鎖飽和モノカルボン酸由来の有機酸金属塩が用いられる。アルコール系溶媒として極性の高いアルコールを用いた場合、飽和カルボン酸の炭素数が少ないほど、塗布液中に有機酸金属塩を高濃度に含有することができる。
一方、アルコール系溶媒として、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノールなどの比較的極性の低いアルコールを用いた場合、有機酸金属塩としては、炭素数7〜10の飽和カルボン酸、より好ましくは炭素数7〜10の直鎖飽和モノカルボン酸由来の有機酸金属塩が用いられる。このように、比較的極性の低いアルコール系溶媒を用いた場合、上記のような有機酸金属塩を選択することにより、該金属塩を塗布液中に高濃度に含有することができる。
混合溶媒中のアルコール系溶媒以外の溶媒としては、脂肪族炭化水素系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、およびハロゲン系溶媒からなる群から選択される溶媒が好ましい。上記混合溶媒には、好ましくは、アルコール系溶媒が5重量%以上、より好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上含有される。アルコール系溶媒を5重量%以上含有する混合溶媒は、有機酸金属塩を均一に溶解し得る。
脂肪族炭化水素系溶媒としては、n−ヘキサン、オクタン、シクロヘキサンなどが挙げられる。
エステル系溶媒としては、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが挙げられる。
エーテル系溶媒としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、テトラヒドロフランなどが挙げられる。
ハロゲン系溶媒としては、ジクロロメタン、クロロホルムなどが挙げられる。
上記脂肪族炭化水素系溶媒、ハロゲン系溶媒、エステル系溶媒、およびエーテル系溶媒の各々は、単独であるいは2種類以上を組合せて、アルコール系溶媒と混合され得る。
上記溶媒のうち、アルコール系溶媒としては、エタノール、プロパノール、およびn−ブタノールが好ましく用いられる。上記混合溶媒に含有されるアルコール系溶媒以外の溶媒としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートなどが好適に用いられる。
上記アルコール系溶媒および混合溶媒に用いる有機溶媒の沸点は、各々50℃以上200℃以下であることが好ましい。特に70℃以上200℃以下が好ましい。沸点が50℃未満である溶媒を用いて塗布液を作成すると、この塗布液を基板に塗布する際に溶媒が揮発しやすく、塗布の際に塗り斑が発生しやすく、均一な膜を作成することが困難となる。沸点が200℃を超える溶媒を用いて塗布液を作成すると、該塗布液から得られる塗膜を焼成する際に、有機酸金属塩が分解し始める温度においても溶媒が完全に蒸発せずに塗布膜内に残存する。そのため、焼成の過程で残存した溶媒が分解し、得られる酸化マグネシウム薄膜の内部にその残渣が残存する。その結果、該薄膜の電気特性および膜強度に悪影響を及ぼす可能性がある。本発明で得られる有機酸マグネシウム塩は、各種溶剤に対する溶解性があるが、一部溶剤に対しては高い溶解性を持っている。例えば、カプロン酸と水酸化マグネシウムから合成される本発明の有機酸マグネシウム塩は、エタノール100gに対して、50gを溶解させることが可能である。
本発明で得られる有機酸マグネシウムを溶解させた溶液は着色のないのが特徴である。例えば、カプロン酸と水酸化マグネシウムから合成される本発明に含まれる有機酸マグネシウム塩は、その重量比50%エタノール溶液では、450nmよりも波長の長い領域でほとんど吸収が認められない。
本発明の塗布液には、本発明の効果を損なわない範囲で他の金属有機酸塩が含有されていてもよい。他の金属有機酸塩の金属としては、例えば、2族元素のカルシウム、ストロンチウム、およびバリウム;3族元素のイットリウムおよびランタン系列の元素(ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ユーロビウム、ガドリニウム、テルビウム、ジスプロシウム、ホルミウムなど);4族元素のチタンおよびジルコニウム;5族元素のバナジウムおよびニオブ;6族元素のクロム;7族元素のマンガン;、8族元素の鉄;9族元素のコバルト;10族元素のニッケル;11族元素の銅、銀、および金;12族元素の亜鉛;13族元素のホウ素、アルミニウム、ガリウム、およびインジウム;14族元素のケイ素、ゲルマニウム、およびスズ;15族元素のアンチモンおよびビスマスなどが挙げられる。金属有機酸塩を構成する酸としては、酢酸、オクチル酸、カプロン酸、ナフテン酸などが挙げられる。これらの元素を含む金属有機酸塩としては、酢酸コバルト、酢酸亜鉛、四酢酸ケイ素、オクチル酸スズ、カプロン酸スズ、ナフテン酸スズ、カプロン酸アルミニウムなどが挙げられる。
また、本発明の塗布液には、本発明の効果を損なわない範囲、すなわち塗布液の溶媒に対して均一に溶解する範囲で、増粘剤、消泡剤、レベリング剤などの添加剤が含有されてもよい。増粘剤としては、エチルセルロース、ニトロセルロースなどのセルロース系の増粘剤;あるいは、トリデカン酸マグネシウム、テトラデカン酸マグネシウム、ヘプタデカン酸マグネシウム、オクタデカン酸マグネシウムなどの炭素数13以上の有機酸マグネシウム塩などが挙げられる。消泡剤、レベリング剤としてはアニオン型活性剤、ノニオン型活性剤、カチオン型活性剤、ポリマー系レベリング剤などが挙げられる。
本発明の有機酸金属塩を基板表面に塗布する方法には、特に制限はない。例えば、刷毛塗り法、浸漬法、スピナー法、スプレー法、スクリーン印刷法、ロールコーター法、インクジェット方式によるパターン形成などが用いられる。これら塗布方法によって得られた膜を乾燥後、焼成することにより、酸化マグネシウム膜を作成することができる。また、本発明の有機酸金属塩を塗布した膜を金属酸化薄膜とするには、当業者が通常用いる方法が使用される。例えば、200℃以上の温度で焼成する方法、紫外光を薄膜上に照射する方法などを用いることができる。また、これらの方法を併用することもできる。
本発明の酸化マグネシウム薄膜を形成するための基板としては、通常当業者が用いる基板、例えば、ガラス基板、ポリカーボネートあるいはエポキシ樹脂などの樹脂でなる基板、樹脂フィルムなどが挙げられる。特に、高温、例えば200℃以上の温度で焼成を行って金属酸化薄膜を作成する場合には、ガラスが好適である。紫外光照射によって金属酸化薄膜を形成する場合には、樹脂基板あるいは樹脂フィルムが好適である。
焼成は、200℃以上が好ましく、350℃以上がさらに好ましく、450℃以上がさらに好ましい。
本発明によれば、このように、酸化マグネシウム薄膜を塗布法により形成するのに好適な有機酸金属塩が得られる。このような有機酸金属塩は、酸化マグネシウム薄膜形成用塗布液としたときに経時安定性に優れ、その結果、透明性の高い塗布成膜用塗布液を提供することができる。この塗布液を用いることにより透明性の高い薄膜が形成される。これを焼成することにより、透明性が高く、ひび割れのない、均一な酸化マグネシウム薄膜を得ることができる。
以下に、本発明の有機酸金属塩の製造方法並びにこの有機酸金属塩を用いる酸化マグネシウム薄膜の形成方法について、実施例を挙げて具体的に説明する。なお、実施例において「部」は重量部を示す。
(原料)
本発明に用いた原料(カルボン酸)およびその純度を、含有される他の成分(不純物)の含有率と共に表1に示す。なお、飽和モノカルボン酸中の不純物含有量は、ガスクロマトグラフィーにより定量した。
Figure 2004168754
なお、表1において、酪酸β、カプロン酸βは、その純度がそれぞれ97%未満であり、本発明に用いるa成分の要件をみたしていない。その他の飽和モノカルボン酸は、本発明に用いるa成分の要件をみたしている。
(有機酸金属塩の評価方法)
(1)有機酸金属塩中の金属(MgおよびCa)の含有量
蛍光X線分析により定量する。
(2)有機酸マグネシウム塩の含有量(有機酸金属塩の純度)
110℃で1時間乾燥した試料約10gを精秤し(A(g))、イオン交換水約200gを加え、液温を70℃に保ちながら約1時間攪拌して溶解し、0.5μmのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製メンブランフィルターを用いて濾過する。この濾液を減圧脱水後、110℃で1時間乾燥して得られた白色固体にアセトン約100gを加えて、25℃で10分間攪拌後、ブフナーロートを用いて減圧濾過する。ろ紙上に残った白色固体を80℃で3時間減圧乾燥し、精秤する(B(g))。この白色固体を灰化後、塩酸に溶解して原子吸光を測定して、全金属中のマグネシウムの割合を測定する(C)。有機酸マグネシウム塩の含有量(重量%)は、以下の式から算出する:
有機酸マグネシウム塩の含有量(重量%)={(B/A)×C}×100
(3)有機酸金属塩のエタノールへの溶解性
有機酸金属塩を、40重量%となるようにエタノールに溶解し、30℃で1時間放置した後、溶液の状態を目視により判断する。表2および表3における評価は、以下の意味を表す。
○・・・白濁が全く観察されなかった。
×・・・濁りまたは沈殿物が観察された。
(4)有機酸金属塩の有機溶媒への溶解性
所定量の有機酸金属塩を、表4Aまたは4Bに記載の溶媒に溶解し、30℃で1時間放置した後、溶液の状態を目視により判断する。表4Aおよび4Bにおける評価は、以下の意味を表す。
○・・・白濁が観察されなかった。
△・・・薄濁りが観察された。
×・・・沈殿物が観察された。
(5)有機酸金属塩を含有する塗布液の経時安定性
所定量の有機酸金属塩を、表4Aまたは4Bに記載の溶媒に溶解し、30℃で1時間放置した後、溶液を細孔径0.5μmのPTFE製メンブランフィルターを用いて濾過する。30℃で2週間放置し、溶液中の白色沈殿物の有無を目視により判断する。表4Aおよび4Bにおける評価は、以下の意味を表す。
○・・・白濁は観察されなかった。
△・・・薄濁りが観察された。
×・・・沈殿物が観察された。
(6)焼成により得られた酸化マグネシウム薄膜(MgO膜)の膜厚
株式会社ULVAC製 触針式表面形状測定器DEKTAC 3STを用いて膜厚を測定する。
(7)焼成により得られた酸化マグネシウム薄膜の表面状態
株式会社ULVAC製 触針式表面形状測定器DEKTAC 3STを用いて薄膜の表面を観察する。白濁およびひび割れの有無を観察し、白濁およびひび割れのいずれかが観察される場合を表4Aおよび4Bにおいて「あり」、いずれもが観察されない場合を「なし」とした。
(実施例1:有機酸金属塩の製造)
撹拌装置、冷却管、温度計、窒素導入管を取り付けた4つ口フラスコに、飽和モノカルボン酸(a成分)であるn−酪酸77.7g(0.88mol)と、無機マグネシウム化合物(b成分)である水酸化マグネシウム25.0g(0.43mol)、および溶媒である水300gを加え、窒素気流下、攪拌しながら、内温を60℃まで加熱して昇温させた。これをさらに3時間攪拌して、無色透明水溶液を得た。その後、内温が50℃になるまで冷却してから、溶媒を減圧留去し、有機酸金属塩86.2gを白色固体として得た。
この白色固体約10gを110℃で1時間乾燥し、得られた試料9.9874g(A)をフラスコに採取し、イオン交換水190gを加え、液温を70℃に保ちながら1時間攪拌して溶解した。この溶液を0.5μmのPTFE製メンブランフィルターを用いて濾過した。濾液をエバポレーターで減圧脱水後、110℃のオーブン中で1時間乾燥し、白色固体を得た。この白色固体にアセトン100gを加え、25℃で10分間攪拌後、ブフナーロートを用いて減圧濾過を行った。ろ紙上に残った固体を80℃で3時間減圧乾燥し、重量を測定したところ9.9773g(B)であった。この白色固体を800℃で1時間加熱灰化し、1N塩酸3mlに溶解し、原子吸光を測定したところ、全金属に対するマグネシウムの割合は0.996(マグネシウム含量:99.6重量%)(C)であった。上記(2)項の式から求めた有機酸マグネシウム塩の含有量(酪酸マグネシウムの純度)は、99.5重量%であった。
表2に、本実施例で使用した原料、使用溶媒、反応条件、および生成物である有機酸マグネシウム塩の詳細を示す。後述の実施例2〜7の結果も併せて表2に示す。同様に、比較例1〜10の結果を表3に示す。
(実施例2:有機酸金属塩の製造)
撹拌装置、冷却管、温度計、窒素導入管を取り付けた4つ口フラスコに、飽和モノカルボン酸(a成分)であるn−吉草酸89.3g(0.87mol)、無機マグネシウム化合物(b成分)である水酸化マグネシウム25.0g(0.43mol)、および溶媒である水300gを加え、窒素気流下、攪拌しながら、内温を60℃まで加熱し昇温させた。これをさらに3時間攪拌して、無色透明水溶液を得た。その後、この水溶液を冷却して結晶を析出させ、さらに、析出した結晶を濾別してステンレス製のバットに移し、50℃で減圧乾燥し、有機酸金属塩98.1gを白色固体として得た。
この白色固体約10gを110℃で1時間乾燥し、得られた試料10.0878g(A)について、実施例1と同様の操作を行ったところ、濾紙上に残った固体の乾燥重量(B)は10.0777g、マグネシウムの含有割合(C)は0.996であった。上記(2)項の式から求めた有機酸マグネシウム塩の含有量(吉草酸マグネシウムの純度)は、99.5重量%であった。
(実施例3:有機酸金属塩の製造)
撹拌装置、冷却管、温度計、窒素導入管を取り付けた4つ口フラスコに、飽和モノカルボン酸(a成分)であるn−カプロン酸101.6g(0.87mol)と、無機マグネシウム化合物(b成分)である水酸化マグネシウム25.0g(0.43mol)、および溶媒である水300gを加え、窒素気流下、攪拌しながら、内温を55℃まで加熱し昇温させた。これをさらに3時間攪拌して、無色透明水溶液を得た。この水溶液を放冷した後、凍結乾燥機で20時間脱溶媒を行い、有機酸金属塩101.3gを白色固体として得た。
この白色固体約10gを110℃で1時間乾燥し、得られた試料9.9564g(A)について、実施例1と同様の操作を行ったところ、濾紙上に残った固体の乾燥重量(B)は9.9464g、マグネシウムの含有割合(C)は0.996であった。上記(2)項の式から求めた有機酸マグネシウム塩の含有量(カプロン酸マグネシウムの純度)は、99.5重量%であった。
(実施例4および5)
表2記載の反応条件で、実施例1と同様の製造方法で有機酸マグネシウム塩の製造を行い、その評価を行なった。
(実施例6)
表2記載の反応条件で、実施例3と同様の製造方法で有機酸マグネシウム塩の製造を行い、その評価を行なった。
(実施例7)
表2記載の反応条件で、実施例1と同様の製造方法で有機酸マグネシウム塩の製造を行い、その評価を行なった。
(比較例1〜10)
表3に記載の反応条件で、実施例1と同様の製造方法で有機酸マグネシウム塩の製造し、その評価を行なった。
Figure 2004168754
Figure 2004168754
(塗布液1〜23の調製および酸化マグネシウム膜の調製)
各実施例1〜7および比較例1〜10で作成した有機酸金属塩を、表4Aまたは4Bに示す有機溶媒に室温で溶解し、塗布液を作成した。使用した有機溶媒の沸点は、次のとおりである:エタノール、78℃;1−プロパノール、97℃;1−ブタノール、117℃;1−ヘキサノール、156℃;1−オクタノール、196℃;エチレングリコール、197℃;オクタン、126℃;PGMEA、145℃;EGMEA、145℃;PGME、118℃;EGME、124℃;PGEE、132℃;およびEGBE、170℃。この塗布液を0.5μmPTFE製メンブランフィルターでろ過後、濾液を用い、スピンコーターによりガラス基板上に有機酸マグネシウム塩の薄膜を作成した。ただし、塗布液2では、メンブランフィルターでろ過を行っていない。このガラス基板を焼成炉に入れ、空気雰囲気下、5℃/min.で450℃まで加熱して金属酸化膜を得た。
本実施例で得られた有機酸金属(マグネシウム)塩を用いて作成された塗布液、および該塗布液由来の酸化マグネシウム薄膜について、前記記載の方法に基づいて評価を行った。表4Aおよび4Bに、有機酸金属塩の種類、溶媒、有機酸マグネシウム塩の濃度、有機酸金属塩の有機溶媒への溶解性、塗布液の経時安定性、焼成後の酸化マグネシウム薄膜の膜厚および表面状態を示す。
Figure 2004168754
Figure 2004168754
表2から明らかなように、実施例1〜7の有機酸金属塩は、いずれも、炭素数4〜10の飽和モノカルボン酸が97重量%以上である飽和モノカルボン酸と無機マグネシウム化合物とから得られる有機酸金属塩であり、かつ有機酸マグネシウム塩が99重量%以上含有されている。このような有機酸金属塩は、塗布液に用いられる各種溶媒への溶解性に優れ、かつ得られた塗布液の経時安定性も高い。表4Aに示すように、実施例1〜7の有機酸金属塩を含有する塗布液由来の塗膜を焼成することにより、白濁やひび割れのない透明な酸化マグネシウム膜を作成することができた。塗布液2では、メンブランフィルターでろ過を行っていないにもかかわらず、優れた薄膜が形成された。
また、表2から明らかなように、実施例1〜7の有機酸金属塩は、いずれも、無機マグネシウム化合物として水酸化マグネシウムを用い、その1モルに対して、やや過剰量の炭素数4〜10の飽和モノカルボン酸(2〜2.5モルの間)を反応させて、合成されたものである。いずれの実施例も、水を10重量%以上含有する有機溶媒中で合成反応が行われ、80℃以下の温度で溶媒除去を行う工程を含んでいた。
一方、表3から明かなように、比較例1および8の有機酸金属塩は、使用したa成分が、炭素数12の飽和モノカルボン酸である。比較例2、4および10の有機酸金属塩は、使用したa成分の飽和モノカルボン酸の純度が97重量%未満である。比較例3、5および9は、a成分である飽和モノカルボン酸の純度が97重量以上のものを使用したが、得られた有機酸金属塩の有機酸マグネシウム塩の含有量が99重量%未満であった。さらに、表4Bから明らかにように、このような有機酸マグネシウム塩の含有量が99重量%未満の有機酸金属塩は、溶媒への溶解性が低く、得られる塗布液の経時安定性も悪い。比較例3および5の有機酸金属塩を含有する塗布液由来の酸化マグネシウム薄膜は白濁およびひび割れが観察された。また、比較例1および8の有機酸金属塩は、アルコール系溶媒への溶解性が著しく悪く、塗布溶液を調製することができなかった。
また、比較例6は、無機マグネシウム化合物1モルに対して、2モル未満の飽和モノカルボン酸を反応させていた。比較例7は、無機マグネシウム化合物1モルに対して、3.0モルを超える飽和モノカルボン酸を反応させていた。
表4Bから明らかなように、比較例6および10の製造方法で得られた有機酸金属塩は、溶媒への溶解性が著しく悪く、また、得られる溶液の経時安定性も低い。これらの有機酸金属塩を溶解させた塗布液中には、不溶成分が多く残存していた。ガラス基板上に塗布する前にメンブランフィルターで濾過して、基板に塗布した。焼成後に得られた酸化マグネシウム薄膜は、非常に膜厚の薄いものであり、実用に耐えうるものではなかった。比較例7の製造方法で得られる有機酸金属塩は、溶媒への溶解性、得られる塗布液の経時安定性に問題はないが、合成段階で過剰のカルボン酸を用いているので、結果として金属含有量が非常に低い状態になっていた。したがって、比較例7の有機酸金属塩を用いて塗布液を調製し、それを用いて焼成後に得られる酸化マグネシウム薄膜は、膜厚の薄いものとなり、実用に耐えうるものではなかった。これは、純度が97%未満のカプロン酸(カプロン酸β)を用いたことに加えて、カプロン酸を過剰に(4モル)用いたことにより、反応しなかったカプロン酸が、そのまま塗布液中に持ちこまれたためと考えられる。
本発明の有機酸金属塩およびそれを含有する塗布液は、プラズマディスプレイパネル(PDP)用誘電体の保護膜、絶縁膜、触媒膜、表面保護膜などの製造をはじめとして、広い分野で利用され得る。

Claims (14)

  1. 飽和モノカルボン酸またはその塩と、無機マグネシウム化合物とを反応させて得られる有機酸金属塩であって、該飽和モノカルボン酸またはその塩が炭素数4〜10の飽和モノカルボン酸またはその塩を97重量%以上含有し、該有機酸金属塩が有機酸マグネシウム塩を99重量%以上含有する、有機酸金属塩。
  2. 前記炭素数4〜10の飽和モノカルボン酸が、直鎖飽和モノカルボン酸である、請求項1に記載の有機酸金属塩。
  3. 有機酸金属塩が、エタノールに40重量%となるように溶解し、30℃で1時間放置した場合に該溶液が透明であるという性質を有する、請求項1に記載の有機酸金属塩。
  4. 有機酸金属塩の製造方法であって、
    無機マグネシウム化合物と、飽和モノカルボン酸またはその塩とをモル比1:2〜1:3で反応させる工程を含み、
    該飽和モノカルボン酸またはその塩が、炭素数4〜10の飽和モノカルボン酸またはその塩を97重量%以上含有し、そして該有機酸金属塩が、有機酸マグネシウム塩を99重量%以上含有する、方法。
  5. 前記炭素数4〜10の飽和モノカルボン酸が、直鎖飽和モノカルボン酸である、請求項4に記載の方法。
  6. 前記飽和モノカルボン酸またはその塩が、飽和モノカルボン酸である、請求項4または5に記載の方法。
  7. 前記反応が、水または水を10重量%以上含有する有機溶媒中で行われる、請求項4から6のいずれかの項に記載の方法。
  8. さらに、80℃以下で溶媒除去を行う工程を含む、請求項7に記載の方法。
  9. 前記無機マグネシウム化合物が、水酸化マグネシウムである、請求項4から8のいずれかの項に記載の方法。
  10. アルコール系溶媒およびアルコール系溶媒を含む混合溶媒からなる群から選択される有機溶媒100重量部、および請求項1から4のいずれかの項に記載の有機酸金属塩1〜100重量部を含有する酸化マグネシウム薄膜形成用塗布液。
  11. 前記混合溶媒が、脂肪族炭化水素系溶媒、エステル系溶媒、エーテル系溶媒、およびハロゲン系溶媒からなる群から選択される溶媒とアルコール系溶媒との混合溶媒である、請求項10に記載の塗布液。
  12. 前記混合溶媒が、アルコール系溶媒を5重量%以上含有する混合溶媒である、請求項10または11に記載の塗布液。
  13. 前記アルコール系溶媒が炭素数1〜8の一価あるいは多価アルコールである、請求項10から12のいずれかの項に記載の塗布液。
  14. 前記アルコール系溶媒および混合溶媒に含まれる有機溶媒の沸点が70℃以上200℃以下である、請求項10から13のいずれかに記載の塗布液。
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