JP2012096951A - 酸化マグネシウム薄膜の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】結晶性及び透明性に優れた酸化マグネシウム薄膜を低温、非真空下で形成することが可能な、酸化マグネシウム薄膜の製造方法を提供する。
【解決手段】酸化マグネシウム粒子の分散液を基材上に塗布し、50〜500℃で加熱することで乾燥させ、酸化マグネシウム粒子を基材上に堆積させる。別途準備したマグネシウム溶液を、酸化マグネシウム粒子が堆積した基材上に塗布し、100〜600℃で焼成することで、酸化マグネシウム薄膜を得る。
【選択図】なし
【解決手段】酸化マグネシウム粒子の分散液を基材上に塗布し、50〜500℃で加熱することで乾燥させ、酸化マグネシウム粒子を基材上に堆積させる。別途準備したマグネシウム溶液を、酸化マグネシウム粒子が堆積した基材上に塗布し、100〜600℃で焼成することで、酸化マグネシウム薄膜を得る。
【選択図】なし
Description
本発明は、結晶性に優れる酸化マグネシウム薄膜の製造方法、及びそれにより得られる酸化マグネシウム薄膜に関する。
交流型プラズマディスプレイ(AC型PDP)では、ガス放電空間を挟んで背面基板と前面基板が対向配置され、一方の基板又は両方の基板表面には、互いに対となる電極が形成され、さらにその表面が誘電体層により被覆され、当該誘電体層の上には保護層が形成されている(例えば特許文献2を参照)。この保護層は、作動電圧を低減させ、かつ、ガス放電空間に生成するプラズマから誘電体層を保護するためのものである。従来、当該保護層を形成するための材料としては、二次電子放出係数が高く、耐スパッタ性に優れる酸化マグネシウムが広く利用されている。
保護層たる酸化マグネシウム膜を成膜するにあたっては、従来、真空蒸着、スパッタリング、電子ビーム蒸着等が用いられてきたが、これらの方法では1000℃を超える高温下での成膜工程が必要になり、生産性が低いという問題があった。さらに、真空チャンバー内で成膜をする必要があり、大画面のパネルを製造する場合、大規模な設備投資が必要になるという問題もあった。
これらの問題を回避するために塗布法による成膜が行なわれている。例えば、特許文献1では、酸化マグネシウム粒子と脂肪族モノカルボン酸Mgと有機系添加剤とを含有してなるペーストを、スクリーン印刷法で塗布乾燥した後、400〜700℃で焼成することにより、PDPの誘電体保護膜を形成することが開示されている。
また、特許文献2では、酸化マグネシウム及び/又は水酸化マグネシウムゾルと、ケイ素、アルコール又はジルコニウムの酸化物ゾル(バインダー成分)とを含有するコーティング液を用いるか、あるいは、前記バインダー成分のコーティング液と、次いで酸化マグネシウム及び/又は水酸化マグネシウムゾルを含むコーティング液とを用いて誘電体層表面を塗布した後、300〜600℃で焼成することで、PDPの誘電体保護膜を形成することが開示されている。
しかしながら、これらの方法で形成される酸化マグネシウム膜は、低温での成膜が可能となる利点があるものの、結晶性及び透明性の点で十分な性能を達成できないという問題があった。
本発明は、上記現状に鑑み、結晶性及び透明性に優れた酸化マグネシウム薄膜を低温、非真空下で形成することが可能な、酸化マグネシウム薄膜の製造方法、及び、当該方法により得られる結晶性及び透明性の高い酸化マグネシウム薄膜を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく種々検討を重ねた結果、酸化マグネシウム粒子分散液を基板上に塗布し、加熱して乾燥させ、分散媒を蒸散させることで酸化マグネシウム粒子を基材上に配置した後、その上にマグネシウム溶液を塗布し、焼成すると、結晶性及び透明性の優れた酸化マグネシウム薄膜が形成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、酸化マグネシウム粒子の分散液を準備する工程(A)、
前記分散液を、基材上に塗布する工程(B)、
前記分散液が塗布された前記基材を、50〜500℃の範囲の温度で加熱することで、乾燥させ、前記酸化マグネシウム粒子を前記基材上に堆積させる工程(C)、
マグネシウム溶液を準備する工程(D)、
前記マグネシウム溶液を、前記酸化マグネシウム粒子が堆積した前記基材上に塗布して、前記基材上に塗布膜を形成する工程(E)、及び
前記塗布膜を100〜600℃の範囲の温度で焼成することで、酸化マグネシウム薄膜を得る工程(F)、を含む、酸化マグネシウム薄膜の製造方法に関する。
前記分散液を、基材上に塗布する工程(B)、
前記分散液が塗布された前記基材を、50〜500℃の範囲の温度で加熱することで、乾燥させ、前記酸化マグネシウム粒子を前記基材上に堆積させる工程(C)、
マグネシウム溶液を準備する工程(D)、
前記マグネシウム溶液を、前記酸化マグネシウム粒子が堆積した前記基材上に塗布して、前記基材上に塗布膜を形成する工程(E)、及び
前記塗布膜を100〜600℃の範囲の温度で焼成することで、酸化マグネシウム薄膜を得る工程(F)、を含む、酸化マグネシウム薄膜の製造方法に関する。
本発明では、まず基板上に酸化マグネシウム粒子の堆積層を形成することにより、種結晶となる酸化マグネシウム粒子を、従来法と比較して、基板上に凝集なく均一に分散配置する。これにより、続く酸化マグネシウムバインダー層形成時に効率的にエピタキシャル結晶成長を行ない、結晶性及び透明性に優れた酸化マグネシウム薄膜を製造することを可能とした。
さらに本発明は、基板面に平行に(200)面が配向した、酸化マグネシウム粒子の形状を残した粒界が存在することを特徴とする酸化マグネシウム薄膜にも関する。
本発明によれば、結晶性及び透明性に優れた酸化マグネシウム薄膜を非真空下で製造することができる。
しかも、本発明によれば、酸化マグネシウム薄膜の製造が1000℃以下の低温でも可能である。真空蒸着、スパッタリング、又は電子ビーム蒸着等の成膜法では、酸化物薄膜の結晶成長には1000℃を超える高温が必要であったが、本発明では結晶性に優れた酸化マグネシウム薄膜の製造が600℃以下という低温で可能になったことから、融点の低いガラスや樹脂材料からなる基材表面に酸化マグネシウム薄膜を製造する用途において本発明は特に有用である。
以下に本発明を詳細に説明する。
工程(A)
まず、本工程では、酸化マグネシウム粒子の分散液を準備する。
まず、本工程では、酸化マグネシウム粒子の分散液を準備する。
ここで使用する酸化マグネシウム粒子は粒径が小さいものが好ましく、動的光散乱式粒度分布測定による体積基準の累積50%粒子径(D50)が10nm〜1500nmであるものが好ましい。より好ましくは50〜1000nmである。この範囲の粒径を持つ酸化マグネシウム粒子を使用することで、分散液中の酸化マグネシウム粒子の分散性を良好なものとすることができ、結果、基材上に酸化マグネシウム粒子を均一に分散させて配置することが可能となるため、結晶性及び透明性の高い酸化マグネシウム薄膜を製造することができる。このとき、酸化マグネシウム粒子のD50が10nm〜1500nmの範囲となるよう、平均粒子径が異なる2種類以上の酸化マグネシウム粒子を混合して使用してもよい。
さらに、前記酸化マグネシウム粒子は粒径のバラツキが小さいものが好ましく、動的光散乱式粒度分布測定による体積基準の累積10%粒子径(D10)と体積基準の累積90%粒子径(D90)との比D90/D10が5以下であることが好ましい。より好ましくは3以下である。このような粒径のバラツキが小さい酸化マグネシウム粒子を用いることで、後の焼成工程で均一な結晶成長を促進でき、結晶性及び透明性がより高い酸化マグネシウム薄膜を製造することができる。
ここで使用する酸化マグネシウム粒子は高純度の酸化マグネシウムからなるものであってもよいが、酸化マグネシウムに対し微量の添加物を添加してもよい。これにより、最終的に得られる酸化マグネシウム薄膜の物性を調整、向上させることが可能となる。
前記添加物としては特に限定されないが、価数が2価、3価、4価又は5価の金属元素を含む少なくとも1種の金属化合物が挙げられる。具体的な元素の種類としては、ベリリウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、モリブテン、タングステン、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、セリウム、ネオジウム、サマリウム、ユウロピウム、ガドリニウム及びジスプロシウム等が挙げられ、中でも、アルミニウム、及びカルシウムが好適である。金属化合物としては、前記金属元素の酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩等が挙げられ、中でも、酸化物が好適である。これら添加物の添加量としては、酸化マグネシウム量に対して10000ppm以下程度が好ましい。より好ましくは1000ppm以下である。添加量がこの範囲であれば、結晶性や透明性がより高い酸化マグネシウム薄膜を得ることができる。
本工程では、このような酸化マグネシウム粒子を有機溶媒と混合し、当該有機溶媒中で粒子を分散させることで、酸化マグネシウム粒子の分散液を準備することができる。このとき、有機溶媒中の酸化マグネシウム粒子濃度は0.1〜10質量%程度が好ましく、より好ましくは0.3〜5.0質量%程度である。酸化マグネシウム粒子濃度がこの範囲であると、次の工程(B)で分散液の塗布を容易に行なうことができ、基材上に酸化マグネシウム粒子を均一に分散性よく配置できるので、最終的に、結晶性及び透明性に優れた酸化マグネシウム薄膜を製造することができる。
工程(A)で使用する有機溶媒としては酸化マグネシウム粒子を分散できるものであれば特に限定されない。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、アセトン、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
分散液を形成する際の条件は特に限定されないが、例えば、超音波攪拌機を用いて、1〜30分程度、混合物を撹拌すればよい。
分散液は、酸化マグネシウム粒子とは別に、金属化合物からなる添加物を添加してもよい。金属化合物は上述したものであってよく、また、その添加量は、酸化マグネシウム量に対して10000ppm以下程度が好ましい。より好ましくは1000ppm以下である。この場合、金属化合物は、分散性を確保するため、酸化マグネシウム粒子と同程度の大きさを持つ粒子であるか、又は、分散液に溶解していることが好ましい。分散液を製造する時には、酸化マグネシウム粒子と、金属化合物添加物と、有機溶媒を混合した後、分散すればよい。
工程(B)
次の工程(B)では、工程(A)で得られた酸化マグネシウム粒子分散液を、基材上に塗布する。この場合の塗布方法としては特に限定されず、例えば、ディップ、スプレー、パイロゾル、印刷、スピンコート、刷毛塗り等が挙げられる。中でも、薄く均一に塗布することができるためスピンコートが好ましい。
次の工程(B)では、工程(A)で得られた酸化マグネシウム粒子分散液を、基材上に塗布する。この場合の塗布方法としては特に限定されず、例えば、ディップ、スプレー、パイロゾル、印刷、スピンコート、刷毛塗り等が挙げられる。中でも、薄く均一に塗布することができるためスピンコートが好ましい。
以上により形成される分散液膜の厚みは特に限定されず、所望の酸化マグネシウム粒子付着量に応じて適宜決定すればよいが、例えば、100〜1500nm程度である。
分散液が塗布される基材としては特に限定されない。有機材料からなる基材であってもよいし、ガラスやセラミックス等の無機材料からなる基材であってもよい。また、単層のものであってもよいし、複層のものであってもよい。本発明は低温で結晶性の高い酸化マグネシウム薄膜を形成することが可能となるため、融点の低い有機材料又はガラスからなる基材も好適に使用することができる。
本発明により形成される酸化マグネシウム薄膜が、プラズマディスプレイの誘電体層用保護膜である場合には、基材は、ガラス基板表面に電極と誘電体層が形成されたものである。当該誘電体層表面に対し、本発明により酸化マグネシウム薄膜を形成する。
工程(C)
次の工程(C)では、工程(B)で得られた表面に酸化マグネシウム粒子分散液が塗布された基材を、50〜500℃の範囲の温度で加熱して乾燥させる。これにより、分散液に含まれていた有機溶媒を蒸散させ、分散液に含まれていた酸化マグネシウム粒子が基材表面に堆積するようにする。これにより、基材表面に酸化マグネシウム粒子堆積膜を形成する。
次の工程(C)では、工程(B)で得られた表面に酸化マグネシウム粒子分散液が塗布された基材を、50〜500℃の範囲の温度で加熱して乾燥させる。これにより、分散液に含まれていた有機溶媒を蒸散させ、分散液に含まれていた酸化マグネシウム粒子が基材表面に堆積するようにする。これにより、基材表面に酸化マグネシウム粒子堆積膜を形成する。
この時の乾燥方法は特に限定されないが、例えば、基材を加熱炉に入れる方法であってもよいし、基材表面に熱風を吹き付ける方法であってもよい。乾燥温度は50〜500℃の範囲が好ましい。より好ましくは、300℃〜400℃である。この工程により、酸化マグネシウム粒子を基材上に均一に、分散性よく配置する。
また、所望の厚さの酸化マグネシウム粒子堆積膜を得るために、工程(C)が完了した後、同じ基材表面に対し工程(B)及び工程(C)を繰り返してもよい。
得られる堆積膜における酸化マグネシウム粒子の付着量は、最終的に得られる酸化マグネシウム薄膜の付着量に対して5〜50質量%であることが好ましい。より好ましくは、10〜30質量%である。この範囲であると、後の工程(F)で、酸化マグネシウム粒子が種結晶となって、酸化マグネシウム薄膜の結晶成長が促進されるため、結晶性及び透明性に優れた酸化マグネシウム薄膜を製造することができる。酸化マグネシウム粒子の付着量が少なすぎると、種結晶の量が少なくなるため結晶性の改善効果が期待できず、逆に付着量が多すぎると後の焼成工程での結晶成長量が少なくなるため良好な薄膜結晶性を達成できない。
工程(D)
工程(D)は、工程(A)−(C)とは別に、マグネシウム溶液を準備する工程である。
工程(D)は、工程(A)−(C)とは別に、マグネシウム溶液を準備する工程である。
マグネシウム溶液とは、マグネシウム含有化合物が溶媒に溶解して含まれている液体をいう。具体的には、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、蓚酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、りん酸マグネシウム等の、有機酸又は無機酸のマグネシウム塩を水及び/又は有機溶媒に溶解したものが挙げられる。その他、マグネシウムエトキシド、ビスアセチルアセトナトマグネシウム、ビスジピバロイルメタナトマグネシウム等の有機マグネシウム等を有機溶媒に溶解したものも使用できる。また、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム等を酸に溶解して使用してすることもできる。
マグネシウム溶液に含まれるマグネシウム含有化合物は後の焼成工程により熱分解して酸化マグネシウムを生じる。その結果、前記酸化マグネシウム粒子を基材上に固定するための酸化マグネシウムバインダーを形成する。
マグネシウム溶液の濃度は、マグネシウム基準で0.1〜20質量%程度が好ましい。より好ましくは、0.5〜10質量%である。マグネシウム溶液の濃度がこの範囲であると、酸化マグネシウム粒子が配置された基材表面に対しマグネシウム溶液を容易に塗布することができる。
マグネシウム溶液に用いる有機溶媒としては上述したマグネシウム含有化合物を溶解できるものであれば特に限定されない。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、アセトン、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
また、必要であれば、一般的な安定化剤、及び/又は粘度調整剤をマグネシウム溶液に添加しても良い。
当該マグネシウム溶液は、上述したマグネシウム含有化合物の他、金属化合物からなる添加物を添加してもよい。金属化合物は上述したものであってよく、また、その含量は、マグネシウム溶液に含まれるマグネシウムを酸化マグネシウムに換算した量に対して10000ppm程度以下が好ましい。より好ましくは1000ppm以下である。
マグネシウム溶液を形成する際の条件は特に限定されないが、例えば、超音波攪拌機を用いて、1〜30分程度、混合物を撹拌すればよい。
工程(E)
この工程では、工程(D)で調製したマグネシウム溶液を、工程(C)で形成された基材上の酸化マグネシウム粒子堆積膜表面に塗布して、基材上に塗布膜を形成する。この場合の塗布方法としては特に限定されず、例えば、ディップ、スプレー、パイロゾル、印刷、スピンコート、刷毛塗り等が挙げられる。中でも、薄く均一に塗布することができるためスピンコートが好ましい。
この工程では、工程(D)で調製したマグネシウム溶液を、工程(C)で形成された基材上の酸化マグネシウム粒子堆積膜表面に塗布して、基材上に塗布膜を形成する。この場合の塗布方法としては特に限定されず、例えば、ディップ、スプレー、パイロゾル、印刷、スピンコート、刷毛塗り等が挙げられる。中でも、薄く均一に塗布することができるためスピンコートが好ましい。
得られた塗布膜では、工程(D)で調製したマグネシウム溶液からなる膜の中に、工程(C)で堆積した酸化マグネシウム粒子が含まれる状態となっている。
塗布膜の厚みは特に限定されず、最終的に製造する酸化マグネシウム薄膜の厚みに応じて適宜決定すればよいが、例えば、100〜1500nm程度である。
工程(F)
最後にこの工程では、工程(E)で得られた塗布膜を100〜600℃の範囲の温度で焼成する。これにより、塗布膜に含まれていた有機溶媒を蒸散させると共に、上述したマグネシウム含有化合物を熱分解して酸化マグネシウムに変換し、その結晶成長を促進することで酸化マグネシウムからなる薄膜を形成する。
最後にこの工程では、工程(E)で得られた塗布膜を100〜600℃の範囲の温度で焼成する。これにより、塗布膜に含まれていた有機溶媒を蒸散させると共に、上述したマグネシウム含有化合物を熱分解して酸化マグネシウムに変換し、その結晶成長を促進することで酸化マグネシウムからなる薄膜を形成する。
具体的には、塗布膜を100〜400℃の温度で仮焼成して有機溶媒を蒸散させた後、さらに、100℃〜600℃の温度で本焼成することで結晶成長を行なうことが好ましい。より好ましくは300℃〜600℃の温度での本焼成である。この焼成により、基材上にあらかじめ配置された酸化マグネシウム粒子を核として酸化マグネシウムバインダー層の結晶成長が進行し、酸化マグネシウム薄膜が形成される。工程(C)で酸化マグネシウム粒子が基材上に分散性よく配置されているので、当該粒子を核とする結晶成長が基材全面にわたって均一に進行し、その結果、結晶性の高い酸化マグネシウム薄膜が形成される。
この時の焼成方法は特に限定されないが、例えば、基材を焼成炉に入れる方法であってもよいし、基材表面に熱風を吹き付ける方法であってもよい。
また、酸化マグネシウム薄膜を目的の厚さにするために、工程(F)が完了した後、同じ基材表面に対し工程(E)及び工程(F)を繰り返してもよい。
得られる酸化マグネシウム薄膜の厚みは特に限定されず、用途に応じて適宜選択することができるが、本発明により200〜1500nm程度の厚みの酸化マグネシウム薄膜を好適に製造することができる。酸化マグネシウム薄膜がPDPの誘電体層保護膜である場合には、その膜厚は400〜1500nm程度好ましい。より好ましくは600〜1000nm程度である。
本発明により、600℃以下という低温での焼成にも関わらず、結晶性の高い酸化マグネシウム薄膜を製造することができる。具体的には、Cu−Kα線を用いたX線回折法における、(200)面のピーク強度が100cps以上と高く、半価幅が0.35°(度)未満の範囲にある結晶性が高い酸化マグネシウム薄膜が得られる。従来法により得られる酸化マグネシウム薄膜は、前記ピーク強度が100cps未満と低く、半価幅が0.35°(度)以上と結晶性が低いものであった。前記ピーク強度が100cps以上と高く、半価幅が0.35°(度)未満の範囲にある結晶性が高い酸化マグネシウム薄膜は本発明の製造方法により初めて可能となったものである。
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
以下の実施例及び比較例では、以下に示す手順に沿って各種物性等を測定した。
(1)動的光散乱式粒度分布測定
動的光散乱式粒度分布測定装置(商品名:UPA−EX250:日機装製)を使用して、体積基準の累積10%粒子径(D10)、体積基準の累積50%粒子径(D50)及び体積基準の累積90%粒子径(D90)を測定した。
動的光散乱式粒度分布測定装置(商品名:UPA−EX250:日機装製)を使用して、体積基準の累積10%粒子径(D10)、体積基準の累積50%粒子径(D50)及び体積基準の累積90%粒子径(D90)を測定した。
(2)純度測定法
酸化マグネシウム粒子の純度は、添加元素を除いた100質量%から下記の「酸化マグネシウム不純物元素の質量測定法」で測定した不純物元素の質量の合計を差し引いた値として算出した。
酸化マグネシウム粒子の純度は、添加元素を除いた100質量%から下記の「酸化マグネシウム不純物元素の質量測定法」で測定した不純物元素の質量の合計を差し引いた値として算出した。
(3)酸化マグネシウム不純物元素の質量測定法
測定対象となる不純物元素(Ag、Al、B、Ba、Bi、Be、Ca、Hf、Nb、Nd、Sm、Ta、W、Ce、Eu、Gd、Dy、Cd、Co、Cr、Cu、Fe、Ga、In、K、Li、Mn、Mo、Na、Ni、P、Pb、S、Si、Sr、Tl、V、Zn、Ti及びZr)は、ICP発光分析装置(商品名:SPS−5100、セイコーインスツルメンツ製)を使用して、試料を酸に溶解した後、質量を測定した。
測定対象となる不純物元素(Ag、Al、B、Ba、Bi、Be、Ca、Hf、Nb、Nd、Sm、Ta、W、Ce、Eu、Gd、Dy、Cd、Co、Cr、Cu、Fe、Ga、In、K、Li、Mn、Mo、Na、Ni、P、Pb、S、Si、Sr、Tl、V、Zn、Ti及びZr)は、ICP発光分析装置(商品名:SPS−5100、セイコーインスツルメンツ製)を使用して、試料を酸に溶解した後、質量を測定した。
Cl量は、分光光度計(商品名:UV−2550、島津製作所製)を使用して、試料を酸に溶解した後、質量を測定した。
(4)酸化マグネシウム薄膜の添加物残留元素の質量測定法
測定対象となる添加物残留元素(Al、Ba、Be、Ca、Hf、Nb、Nd、Sm、Ta、W、Ce、Eu、Gd、Dy、Co、Cr、Mn、Mo、Ni、Sr、及びZr)は、ICP発光分析装置(商品名:SPS−5100、セイコーインスツルメンツ製)を使用して、酸化マグネシウム薄膜を酸に溶解した後、質量を測定した。
測定対象となる添加物残留元素(Al、Ba、Be、Ca、Hf、Nb、Nd、Sm、Ta、W、Ce、Eu、Gd、Dy、Co、Cr、Mn、Mo、Ni、Sr、及びZr)は、ICP発光分析装置(商品名:SPS−5100、セイコーインスツルメンツ製)を使用して、酸化マグネシウム薄膜を酸に溶解した後、質量を測定した。
(5)X線回折の測定方法
X線回折装置(商品名:RINT−Ultima III、リガク製)を使用して、Cu−Kα線を用いたX線回折法により酸化マグネシウム薄膜を測定した。解析ソフト(商品名:Jade 6、リガク製)を用いて2θ=42.9deg付近のピーク値を(200)面のピーク値として、ピーク強度を測定し、半価幅を算出した。
X線回折装置(商品名:RINT−Ultima III、リガク製)を使用して、Cu−Kα線を用いたX線回折法により酸化マグネシウム薄膜を測定した。解析ソフト(商品名:Jade 6、リガク製)を用いて2θ=42.9deg付近のピーク値を(200)面のピーク値として、ピーク強度を測定し、半価幅を算出した。
(6)酸化マグネシウム薄膜の透過率の測定方法
透過率測定装置(オーシャンオプティクス製)に、光源としてタングステンハロゲンランプLS−1を、分光器としてUSB4000を使用し、発光強度を50000〜60000countsに設定して、波長600nm近傍の透過率を測定した。
透過率測定装置(オーシャンオプティクス製)に、光源としてタングステンハロゲンランプLS−1を、分光器としてUSB4000を使用し、発光強度を50000〜60000countsに設定して、波長600nm近傍の透過率を測定した。
以下に各実施例及び比較例での酸化マグネシウム薄膜の製造手順について説明する。
(実施例1)
純度99.9質量%以上の酸化マグネシウム粒子(D50:260nm)を、エタノール中に投入し、超音波攪拌機で5分間混合し、0.5質量%の酸化マグネシウム粒子の分散液を得た。
純度99.9質量%以上の酸化マグネシウム粒子(D50:260nm)を、エタノール中に投入し、超音波攪拌機で5分間混合し、0.5質量%の酸化マグネシウム粒子の分散液を得た。
得られた酸化マグネシウム粒子分散液をガラス基材上に滴下し、スピンコーティング法(3000回転で30秒)により分散液を基材表面に均一に広げた。
分散液が広く塗布された基材を電気炉に入れ、300℃で乾燥することによりエタノールを蒸散させ、酸化マグネシウム粒子のみを基材上に堆積させた。酸化マグネシウムの付着量は0.000027g/cm2であった。
別途、純度99%以上の酢酸マグネシウムを、エタノール中に投入し、超音波攪拌機で5分間混合し、マグネシウム基準で3.0質量%濃度のマグネシウム溶液を調製した。
酸化マグネシウム粒子を堆積させた基材表面にマグネシウム溶液を滴下し、スピンコーティング法(3000回転で30秒)を用いて塗布膜を形成した。
次に、塗布膜が形成された基材を、電気炉を使用し300℃で仮焼成させ、エタノールを蒸散させた。次いで、電気炉を使用し600℃で本焼成することで、膜厚800nmの酸化マグネシウム薄膜を得た。酸化マグネシウムの付着量は0.00023g/cm2であった。
得られた酸化マグネシウム薄膜は透明性が高く、また、X線回折法における(200)面のピーク強度は180cpsと結晶性が極めて高いものであった。
(実施例2)
酸化マグネシウム粒子のD50を1240nmに変更し、酢酸マグネシウムを硝酸マグネシウムに変更し、最終的な酸化マグネシウムの付着量が0.00021g/cm2、となった以外は、実施例1と同様に行なった。
酸化マグネシウム粒子のD50を1240nmに変更し、酢酸マグネシウムを硝酸マグネシウムに変更し、最終的な酸化マグネシウムの付着量が0.00021g/cm2、となった以外は、実施例1と同様に行なった。
(実施例3)
酸化マグネシウム粒子のD50を68nmに変更し、最終的な酸化マグネシウムの付着量が0.00024g/cm2、となった以外は、実施例1と同様に行なった。
酸化マグネシウム粒子のD50を68nmに変更し、最終的な酸化マグネシウムの付着量が0.00024g/cm2、となった以外は、実施例1と同様に行なった。
(実施例4)
最終の酸化マグネシウム薄膜にAl金属元素が500ppm程度残留するような量で酸化アルミニウムをマグネシウム溶液中に添加し、最終的な酸化マグネシウムの付着量が0.00020g/cm2、となった以外は、実施例1と同様に行なった。
最終の酸化マグネシウム薄膜にAl金属元素が500ppm程度残留するような量で酸化アルミニウムをマグネシウム溶液中に添加し、最終的な酸化マグネシウムの付着量が0.00020g/cm2、となった以外は、実施例1と同様に行なった。
(実施例5)
最終の酸化マグネシウム薄膜にCa金属元素が500ppm程度残留するような量で酸化カルシウムをマグネシウム溶液中に添加し、最終的な酸化マグネシウムの付着量が0.00023g/cm2、となった以外は、実施例1と同様に行なった。
最終の酸化マグネシウム薄膜にCa金属元素が500ppm程度残留するような量で酸化カルシウムをマグネシウム溶液中に添加し、最終的な酸化マグネシウムの付着量が0.00023g/cm2、となった以外は、実施例1と同様に行なった。
(比較例1)
酸化マグネシウム粒子のD50を1840nmに変更し、本焼成の温度を700℃に変更し、酸化マグネシウムの付着量が0.00025g/cm2、となった以外は実施例1と同様に実施した。
酸化マグネシウム粒子のD50を1840nmに変更し、本焼成の温度を700℃に変更し、酸化マグネシウムの付着量が0.00025g/cm2、となった以外は実施例1と同様に実施した。
(比較例2)
実施例1で作成したマグネシウム溶液中に、純度99.9質量%以上の酸化マグネシウム粒子(D50:260nm)を投入し、超音波攪拌機で5分間混合し、3.5質量%の酸化マグネシウム粒子の分散液を得た。得られた酸化マグネシウム粒子分散液をガラス基材上に滴下し、スピンコーティング法により分散液を基材表面に均一に広げた。
実施例1で作成したマグネシウム溶液中に、純度99.9質量%以上の酸化マグネシウム粒子(D50:260nm)を投入し、超音波攪拌機で5分間混合し、3.5質量%の酸化マグネシウム粒子の分散液を得た。得られた酸化マグネシウム粒子分散液をガラス基材上に滴下し、スピンコーティング法により分散液を基材表面に均一に広げた。
分散液が広く塗布された基材を電気炉に入れ、300℃で乾燥することによりエタノールを蒸散させ、次いで、600℃で焼成することで、膜厚800nmの酸化マグネシウム薄膜を得た。酸化マグネシウムの付着量は0.00026g/cm2であった。
(比較例3)
実施例1で作成したマグネシウム溶液を、ガラス基材上に滴下し、スピンコーティング法によりマグネシウム液を基材表面に均一に広げた。
実施例1で作成したマグネシウム溶液を、ガラス基材上に滴下し、スピンコーティング法によりマグネシウム液を基材表面に均一に広げた。
マグネシウム溶液が広く塗布された基材を電気炉に入れ、300℃で乾燥することによりエタノールを蒸散させ、次いで、600℃で焼成することで、膜厚800nmの酸化マグネシウム薄膜を得た。酸化マグネシウムの付着量は0.00018g/cm2であった。
以上の結果を表1に示す。
表1より、実施例1〜5では、透過率が高く、しかも、X線回折法における(200)面のピーク強度が100cps以上と高く、半価幅が0.35°(度)未満の範囲にある結晶性が高い酸化マグネシウム薄膜が得られたことが分かる。一方、D50が大きい酸化マグネシウム粒子を用いた比較例1、及び、マグネシウム溶液に酸化マグネシウム粒子を加えて塗布した比較例2では、ピーク強度及び半価幅双方の点で、得られた酸化マグネシウム薄膜の結晶性が不十分であり、透過率も低いものであった。また、マグネシウム溶液のみを用いた比較例3では、透過性は高かったものの、ピーク強度及び半価幅双方の点で、得られた酸化マグネシウム薄膜の結晶性が不十分であった。
Claims (11)
- 酸化マグネシウム粒子の分散液を準備する工程(A)、
前記分散液を、基材上に塗布する工程(B)、
前記分散液が塗布された前記基材を、50〜500℃の範囲の温度で加熱することで、乾燥させ、前記酸化マグネシウム粒子を前記基材上に堆積させる工程(C)、
マグネシウム溶液を準備する工程(D)、
前記マグネシウム溶液を、前記酸化マグネシウム粒子が堆積した前記基材上に塗布して、前記基材上に塗布膜を形成する工程(E)、及び
前記塗布膜を100〜600℃の範囲の温度で焼成することで、酸化マグネシウム薄膜を得る工程(F)、を含む、酸化マグネシウム薄膜の製造方法。 - 工程(A)が、前記酸化マグネシウム粒子を、0.1〜10質量%の量で有機溶媒と混合し、前記有機溶媒中で前記酸化マグネシウム粒子を分散させることで、前記分散液を得る工程である、請求項1記載の酸化マグネシウム薄膜の製造方法。
- 前記工程(A)において、前記酸化マグネシウム粒子は、動的光散乱式粒度分布測定による体積基準の累積50%粒子径(D50)が10〜1500nmである、請求項1又は2記載の酸化マグネシウム薄膜の製造方法。
- 前記工程(A)において、前記酸化マグネシウム粒子が、動的光散乱式粒度分布測定による体積基準の累積10%粒子径(D10)と体積基準の累積90%粒子径(D90)との比D90/D10が5以下である、請求項1〜3のいずれかに記載の酸化マグネシウム薄膜の製造方法。
- 前記酸化マグネシウム粒子及び/又は前記分散液が、価数が2価、3価、4価又は5価の金属元素を含む少なくとも1種の金属化合物を、酸化マグネシウム量に対して10000ppm以下含有する、請求項1〜4のいずれかに記載の酸化マグネシウム薄膜の製造方法。
- 工程(D)が、マグネシウム塩を、マグネシウム基準の濃度が0.1〜20質量%になるように、有機溶媒と混合し、マグネシウム溶液を調製する工程である、請求項1〜5のいずれかに記載の酸化マグネシウム薄膜の製造方法。
- 前記マグネシウム溶液が、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、蓚酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、りん酸マグネシウムからなる群より選ばれる一種類以上のマグネシウム塩の溶液である、請求項1〜6のいずれかに記載の酸化マグネシウム薄膜の製造方法。
- 前記マグネシウム溶液が、価数が2価、3価、4価又は5価の金属元素を含む少なくとも1種類の金属化合物を、酸化マグネシウム換算量に対して10000ppm以下含有する、請求項1〜7のいずれかに記載の酸化マグネシウム薄膜の製造方法。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法により成膜された酸化マグネシウム薄膜。
- 基板面に平行に(200)面が配向した、酸化マグネシウム粒子の形状を残した粒界が存在することを特徴とする酸化マグネシウム薄膜。
- 請求項9又は10記載の酸化マグネシウム薄膜からなる、プラズマディスプレイの誘電体層用保護膜。
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