JPH0912904A - 高分子材料、医学材料及び液状高分子組成物 - Google Patents

高分子材料、医学材料及び液状高分子組成物

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JPH0912904A
JPH0912904A JP8068469A JP6846996A JPH0912904A JP H0912904 A JPH0912904 A JP H0912904A JP 8068469 A JP8068469 A JP 8068469A JP 6846996 A JP6846996 A JP 6846996A JP H0912904 A JPH0912904 A JP H0912904A
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hydrophobic
meth
alkyl
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Kazunori Waki
一徳 脇
Taijirou Shiino
太二朗 椎野
Kazuo Matsuyama
一夫 松山
Norio Nakabayashi
宣男 中林
Kazuhiko Ishihara
一彦 石原
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Abstract

(57)【要約】 【課題】優れた生体適合性と、力学的性質、耐久性等の
機械的性質とを兼ね備えた高分子材料および医学材料、
並びにこれらの原材料としての長期的に安定な均一溶液
である液状高分子組成物を提供すること。 【解決手段】下記一般式(1) 【化1】 (R1,R2,R3;H、C1〜4のアルキル基)で示す
側鎖を有する単量体及び疎水性単量体を共重合した共重
合体Aと、共重合体A以外の1種以上の疎水性重合体B
とを含む混合材料であって、混合材料の構造が、共重合
体Aからなる数百μm以下のドメインが疎水性重合体B
からなる相に均一に分布した相分離を示している高分子
材料及び医学材料、並びにこれら重合体とハロゲン化炭
化水素溶剤及び低級アルコール溶剤の混合溶剤とを混合
した、濁度60%以下を示す液状高分子組成物。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、医学材料、化粧品
用素材、塗料素材等に利用できる重合体混合材料である
高分子材料及びその原材料としての液状高分子組成物、
並びに優れた生体適合性と力学的強度とを兼ね備えた重
合体混合物である医学材料及びその原材料としての医学
材料用高分子組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】ホスホリルコリン基を有する重合体は、
細胞膜を構成するリン脂質に類似した構造を有している
ことから生体適合性に優れ、血液凝固因子等の補体の非
活性化、タンパク質や細胞等の生体物質非吸着性、抗血
栓性、保湿性、脂質2分子膜安定化等を有する医学用高
分子材料として優れた性質を示すことが知られている
(Kazuhiko Ishihara, et.al., Journal of Biomedical
Materials Research, 24(1990)1069〜1077, Kazuhiko
Ishihara, et.al., Journal of Biomedical Materials
Research, 25(1991)1397〜1407)。
【0003】そこで、これらの特徴を生かした生体関連
材料の開発が最近活発に行われている。具体的には例え
ば、特開平3−39309号公報に、2−メタクリロイ
ルオキシエチルホスホリルコリンとメタクリル酸エステ
ルとの共重合体が、優れた生体適合性材料であることが
記載されている。WO93−01221号公報には、ホ
スホリルコリン基を有する重合体をコーティング材とし
て利用した場合、生体適合性表面を有する材料として生
体関連の各種用途に利用できることが記載されている。
WO93−16117号公報には、水溶性セルロースに
2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンをグ
ラフト重合した水溶性セルロース誘導体が、生体適合性
とセルロースに対する親和性との双方を有しているの
で、血液浄化等の生体適合性材料に利用できること等が
開示されている。特開昭59−43342号公報には、
ホスホリルコリン基を有する重合体からなる感湿材と水
溶性重合体としての薄膜化材料との高分子組成物が、湿
度センサー材料として有用であることが開示されてい
る。特表平7−504459号公報には、ホスホリルコ
リン基を有する重合体と、望ましい機械的及び/又は物
理的特性を有する重合体との高分子組成物が、生体医学
用材料として優れていることが開示されている。また、
ホスホリルコリン基を有する種々の単量体、単独重合
体、共重合体およびこれらの製造法については、例え
ば、特開昭54−63025号公報、特開昭58−15
4591号公報、特開昭63−222183号公報、特
開平5−107511号公報、特開平6−41157号
公報およびWO93−01221号公報に記載されてい
るように従来知られている。
【0004】前記ホスホリルコリン基を有する重合体又
は共重合体は、顕著な生体適合性を示すものの、医学用
材料としてみた場合、必ずしも力学強度、耐久性等の機
械的性質が十分であるとは言えない。そこで前述のとお
りホスホリルコリン基を有する単量体に、如何なる共重
合性単量体を共重合させるかについての検討が種々なさ
れている。また、力学的強度及び耐久性を有する疎水性
重合体を混合して改善する試みもなされている。しか
し、ホスホリルコリン基という従来にない顕著な水溶性
を示す官能基を有する重合体の場合は、従来一般に行な
われている疎水性重合体同士の混合とは異なって、十分
良好な結果に至っていないのが実状である。
【0005】一方、セグメント化ポリウレタンが力学的
性質に優れていること、並びに他の材料に比べると血液
適合性が良好なこと(特開昭57−139352号公
報、ヨーロッパ特許第68385号明細書、米国特許第
4379904号明細書、WO83−00695号公
報)が知られている。そしてこのようなセグメント化ポ
リウレタンは、医学材料として血液回路、人工心臓、各
種カテーテル、医学用センサー等に幅広く用いられてい
る(阿岸鉄三編集、「人工臓器」1994-95、中山書店発
刊)。しかし、これらを長期間生体内で使用すると炎症
反応や細胞粘着に基づく材料の劣化や石灰化が生じるた
め必ずしも理想的な抗血栓性を示すとは限らず、まだ満
足できる状態とは言えない。
【0006】また、性質の異なる2種類以上の高分子化
合物を混合して材料を改質する試みは、「ポリマー・ブ
レンド」と呼ばれ、一般に良く行なわれている。親水性
の高い高分子化合物と疎水性の高い高分子化合物との混
合、あるいは結晶性に優れた高分子化合物と非結晶性に
優れた高分子化合物との混合のように対照的な性質を有
する2種類の高分子化合物を混合して製膜すると、分子
運動により同じ性質を有する高分子化合物同士が集合し
て相分離が起こる。この相分離を利用した材料の改質
も、ポリマー・ブレンドの一般的な手法であり、相溶さ
せ得る高分子混合系の相分離機構を巧みに利用した多相
構造材料の開発も行なわれるようになっている。しか
し、親水性、疎水性が極端に異なる高分子化合物を混合
した場合には、相分離による凝集塊の生成や白化現象が
生じ、数μmオーダーの細胞の粘着を阻止するための生
体適合性材料の用途には適さない。
【0007】例えば、前述の特表平7−504459号
公報に記載された高分子組成物の製造法においては、2
−(メタクリロイル)オキシ−2’−(トリメチルアン
モニウム)エチルホスフェートとn−ドデシルメタクリ
レートとの1:2共重合体と、セグメント化ポリウレタ
ンとが、ジクロロメタンの単一溶剤や、酢酸エチルとプ
ロパン−2−オールとの混合溶剤で溶解が行なわれてい
る。しかし、このような高分子化合物の組合わせにおい
て前記溶媒を用いた場合には、一部が溶解するか、膨潤
するのみであって、均一な溶液を得ることができない。
従って、このような不均一溶液から溶剤を蒸発除去して
得られる膜は、凝集塊の生成や白化が生じるために、生
体適合性材料として利用することができない。親水性、
疎水性が極端に異なる高分子化合物の混合において、マ
クロ的に白濁の無い混合系を得ることは、両者が共有結
合で結合したブロック共重合体では知られているが、単
なる2種類の高分子化合物を混合した系では知られてい
ない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、優れ
た生体適合性と優れた力学的性質、耐久性等の機械的性
質とを兼ね備えた高分子材料および医学材料を提供する
ことにある。本発明の別の目的は、優れた生体適合性と
優れた力学的性質、耐久性等の機械的性質とを兼ね備え
た高分子材料および医学材料の原材料としての長期的に
安定な均一溶液である液状高分子組成物を提供すること
にある。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者らは前述の目的
を達成するために、疎水性単量体、混合する疎水性重合
体、溶剤及び混合方法等について種々検討を重ねた結
果、極性の著しく高いホスホリルコリン基含有共重合体
であっても、疎水性単量体と共重合して得られた共重合
体の場合には、疎水性重合体との混合物を特定の溶剤で
溶解することによって長期的に安定な均一溶液が得ら
れ、この溶剤を蒸発させた際に得られる高分子材料の構
造が、ホスホリルコリン基含有共重合体からなる数百μ
m以下のドメインが疎水性重合体からなる相に均一に分
布した相分離を示していることを見い出して本発明を完
成するに至った。
【0010】すなわち、本発明によれば、下記一般式
(1)
【0011】
【化7】
【0012】(式中R1、R2及びR3は、同一または異
なる基であって、水素原子または炭素数1〜4のアルキ
ル基を示す)で表される側鎖を有する単量体及び疎水性
単量体を含む単量体組成物を共重合した共重合体Aと、
共重合体A以外の1種以上の疎水性重合体Bとを含む混
合材料であって、前記混合材料の構造が、共重合体Aか
らなる数百μm以下のドメインが疎水性重合体Bからな
る相に均一に分布した相分離を示していることを特徴と
する高分子材料が提供される。また、本発明によれば、
高分子材料の原材料としての液状高分子組成物であっ
て、前記一般式(1)で表される側鎖を有する単量体及
び疎水性単量体を含む単量体組成物を共重合した共重合
体Aと、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートとポ
リエーテルジオールとの重付加反応により得られたセグ
メント化ポリウレタン、ジフェニルメタンジイソシアネ
ートとポリエーテルジオールとの重付加反応により得ら
れたセグメント化ポリウレタン及びこれらの混合物から
なる群より選択されるセグメント化ポリウレタンを含む
共重合体A以外の1種以上の疎水性重合体Bと、ハロゲ
ン化炭化水素溶剤及び低級アルコール溶剤からなる混合
溶剤とを含有し、濁度60%以下を示す液状高分子組成
物が提供される。更に、本発明によれば、前記一般式
(1)で表される側鎖を有する炭素数1〜4のアルキル
(メタ)アクリレートと、炭素数5〜15の分岐アルキ
ル(メタ)アクリレート、脂環式アルキル(メタ)アクリ
レート及びこれらの混合物からなる群より選択される疎
水性単量体とを含む単量体組成物を共重合した共重合体
Aと、共重合体A以外の1種以上の疎水性重合体Bとを
含む混合材料であって、前記混合材料が疎水性重合体B
としてジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及びポ
リエーテルジオールの重付加反応により得られたセグメ
ント化ポリウレタンを含み、前記混合材料の構造が、共
重合体Aからなる数百μm以下のドメインが疎水性重合
体Bからなる相に均一に分布した相分離を示しているこ
とを特徴とする医学材料が提供される。更にまた、本発
明によれば、前記一般式(1)で表される側鎖を有する
炭素数1〜4のアルキル(メタ)アクリレートと、疎水
性単量体であるウレタン結合を有するアルキル(メタ)
アクリレートとを含む単量体組成物を共重合した共重合
体Aと、共重合体A以外の1種以上の疎水性重合体Bと
を含む混合材料であって、前記混合材料が疎水性重合体
Bとしてジフェニルメタンジイソシアネートとポリエー
テルジオールとの重付加反応により得られるセグメント
化ポリウレタンを含み、前記混合材料の構造が、共重合
体Aからなる数百μm以下のドメインが疎水性重合体B
からなる相に均一に分布した相分離を示していることを
特徴とする医学材料が提供される。また、本発明によれ
ば、前記医学材料の原材料としての液状高分子組成物で
あって、前記医学材料の共重合体Aと、前記医学材料の
共重合体A以外の1種以上の疎水性重合体Bと、ハロゲ
ン化炭化水素溶剤及び低級アルコール溶剤からなる混合
溶剤とを含有し、濁度60%以下を示す医学材料用液状
高分子組成物が提供される。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明の高分子材料及び医学材料
は、組成として特定の側鎖を有する単量体と疎水性単量
体とを含む単量体組成物を共重合した特定の共重合体A
と、共重合体A以外の1種以上の疎水性重合体Bとを含
む混合材料であって、前記混合材料の構造が、共重合体
Aからなる数百μm以下、好ましくは100μm以下、
特に好ましくは0.01〜50μmのドメインが疎水性
重合体Bからなる相に均一に分布した相分離を示してい
るものである。ここで、均一に分布した相分離とは、共
重合体Aと疎水性重合体Bとが相分離を示しており、こ
の混合材料が、疎水性重合体Bが有する機械的強度等の
物性と、共重合体Aが有する生体適合性等の性質とを有
効に、且つ同時に発揮し得る程度に、疎水性重合体Bの
相に、特定大きさの共重合体Aのドメインが点在してい
ることをいう。
【0014】一方、このような高分子材料や医学材料の
原材料となりうる本発明の液状高分子組成物は、従来、
親水性がきわめて高いために、水や低級アルコール等の
きわめて水溶性の高い溶剤に限られ使用されているホス
ホリルコリン基を有する重合体を、疎水性重合体との混
合液とする際に、前記共重合体Aと前記疎水性重合体B
との組合せを特定なものとし、且つ特定な溶剤を選択し
たことによって、本発明の高分子材料や医学材料を製造
しうる均一な液体状態とすることができたものである。
ここで、均一な液体状態とは、濁度(完全に光を遮蔽し
た状態を100、溶剤のみをセルに入れた際(溶剤を用
いずに溶融状態の場合には空のセル)を0となるように
して求めた%)が、60%以下、好ましくは50%以下
を示す均一度を有する程度に共重合体Aと疎水性重合体
Bとが相溶性を示していることをいう。従って、このよ
うな液状高分子組成物は、そのまま液体状態にしておい
ても分離することが無く、長期保存が可能である。ま
た、本発明の液状高分子組成物に規定される以外の本発
明の高分子材料の原材料も前述の均一な液体状態とした
ものを用いることができる。例えば、共重合体Aと疎水
性重合体Bとの組合せ、並びに溶剤の種類を選択した
り、溶剤無しの溶融状態とすることによって適宜調製す
ることができる。
【0015】要するに、本発明においては、ホスホリン
コリン基が示す顕著な水溶性のために、このような基を
有する(共)重合体と他の重合体とを均一な液体状態と
することは困難であると考えられていたものを解決した
ものであって、且つこのような均一な液体状態の原材料
から溶剤を除去したり、乾燥させて固体状態とした混合
材料が、前述の特定構造を有している新規なものであっ
て、機械的強度及び生体適合性等を兼ね備えていること
を見い出したものである。本発明の液状高分子組成物を
乾燥等して溶剤を蒸発させることによって、前述の特定
な構造を形成するのは、疎水性重合体Bにおける疎水性
の環境下において、きわめて水溶性の高いホスホリルコ
リン基を有する共重合体Aが、均一に溶解した状態を維
持することが困難となり、固化する過程において徐々に
集合し、W/O型の乳化の如く相分離をして系内を安定
化するためと考えられる。
【0016】前記共重合体Aを調製するための単量体組
成物において必須成分としての特定の側鎖を有する単量
体は、前記一般式(1)で表される側鎖を有する単量体
である。この単量体は、分子中に重合性の二重結合と前
記一般式(1)で表される側鎖とを有する単量体であ
り、例えば、2−(メタクリロイルオキシ)エチル−
2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、
3−(メタクリロイルオキシ)プロピル−2’−(トリ
メチルアンモニオ)エチルホスフェート、4−(メタク
リロイルオキシ)ブチル−2’−(トリメチルアンモニ
オ)エチルホスフェート、5−(メタクリロイルオキ
シ)ペンチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチル
ホスフェート、6−(メタクリロイルオキシ)ヘキシル
−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェー
ト、2−(メタクリロイルオキシ)エチル−2’−(ト
リエチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタ
クリロイルオキシ)エチル−2’−(トリプロピルアン
モニオ)エチルホスフェート、2−(メタクリロイルオ
キシ)エチル−2’−(トリブチルアンモニオ)エチル
ホスフェート、2−(アクリロイルオキシ)エチル−
2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、
2−(アクリロイルオキシ)エチル−2’−(トリメチ
ルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(メタクリロ
イルオキシ)プロピル−2’−(トリメチルアンモニ
オ)エチルホスフェート、2−(メタクリロイルオキ
シ)ブチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホ
スフェート、2−(メタクリロイルオキシ)ペンチル−
2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、
2−(メタクリロイルオキシ)ヘキシル−2’−(トリ
メチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(ビニル
オキシ)エチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチ
ルホスフェート、2−(アリルロキシ)エチル−2’−
(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−
(p−ビニルベンジルオキシ)エチル−2’−(トリメ
チルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(p−ビニ
ルベンゾイルオキシ)エチル−2’−(トリメチルアン
モニオ)エチルホスフェート、2−(スチリルオキシ)
エチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフ
ェート、2−(p−ビニルベンジル)エチル−2’−
(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−
(ビニルオキシカルボニル)エチル−2’−(トリメチ
ルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(アリルオキ
シカルボニル)エチル−2’−(トリメチルアンモニ
オ)エチルホスフェート、2−(アクリロイルアミノ)
エチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフ
ェート、2−(ビニルカルボニルアミノ)エチル−2’
−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−
(アリルオキシカルボニルアミノ)エチル−2’−(ト
リメチルアンモニオ)エチルホスフェート、2−(ブテ
ロイルオキシ)エチル−2’−(トリメチルアンモニ
オ)エチルホスフェート、2−(クロトノイルオキシ)
エチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフ
ェート、エチル−(2’−トリメチルアンモニオエチル
ホスホリルエチル)フマレート、ブチル−(2’−トリ
メチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマレー
ト、ヒドロキシエチル−(2’−トリメチルアンモニオ
エチルホスホリルエチル)フマレート、エチル−(2’
−トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチル)フマ
レート、ブチル−(2’−トリメチルアンモニオエチル
ホスホリルエチル)フマレート、ヒドロキシエチル−
(2’−トリメチルアンモニオエチルホスホリルエチ
ル)フマレート等を挙げることができる。特に、本発明
の医学材料及びその原材料としての液状高分子組成物に
用いる場合には、一般式(1)で表される側鎖を有する
炭素数1〜4のアルキル(メタ)アクリレートを用い
る。この具体例は、好ましくは前記例示から選択するこ
とができる。
【0017】共重合体A中において、前記一般式(1)
で表される側鎖を有する単量体の構成単位の含有割合
は、得られる材料に生体適合性を十分に付与するため
に、少なくとも1モル%以上、好ましくは10モル%以
上、特に好ましくは10〜70モル%が望ましい。
【0018】前記共重合体Aを調製するための単量体組
成物の必須成分としての疎水性単量体は、高分子材料の
原材料を調製する際に、後述する疎水性重合体Bとの相
溶性を高める作用等を示すものである。この疎水性単量
体とは、水に対する溶解性が低く、前記一般式(1)の
側鎖を有する単量体と共重合可能な単量体である。具体
的には例えば、スチレン、メチルスチレン、クロロメチ
ルスチレン等のスチレン誘導体;メチル(メタ)アクリ
レート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)
アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等の直鎖
アルキル(メタ)アクリレート類;シクロヘキシル(メ
タ)アクリレート等の脂環式アルキル(メタ)アクリレ
ート類、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等の
炭素数5〜15の分岐アルキル(メタ)アクリレート
類;グリシジル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリ
ロイルオキシエチルトリメトキシシラン等の反応性官能
基を有するアルキル(メタ)アクリレート類;2−(メ
タ)アクリロイルオキシエチルブチルウレタン、2−
(メタ)アクリロイルオキシエチルベンジルウレタン、
2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフェニルウレタ
ン等のウレタン結合を有するアルキル(メタ)アクリレ
ート類;エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテ
ル、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、エチレ
ン、プロピレン、イソブチレン、ジエチルフマレート、
ジエチルマレート等を挙げることができる。特に、本発
明の医学材料やその原材料としての液状高分子組成物と
する場合には、後述する疎水性重合体Bに応じて、炭素
数5〜15の分枝アルキル(メタ)アクリレート、脂環
式アルキル(メタ)アクリレート及びこれらの混合物か
らなる群より選択される疎水性単量体、若しくはウレタ
ン結合を有するアルキル(メタ)アクリレートを用い
る。
【0019】共重合体A中において、前記疎水性単量体
の構成単位の含有割合は、30〜90モル%が好まし
い。
【0020】一般式(1)で表される側鎖を有する単量
体と疎水性単量体との組合わせは、共重合体Aと後述す
る疎水性重合体Bとが前述の均一な液体状態となるよう
に、共重合体A中において、それぞれの単量体の構成単
位がランダムに均一に分布する組合わせが好ましい。例
えば、重合性が高く制御が容易な(メタ)アクリレート
同士の組合わせが最適である。
【0021】前記共重合体Aを調製するための単量体組
成物には、前記必須成分以外に、一般式(1)で表され
る側鎖を有する単量体と重合可能な他の単量体をコモノ
マーとして用いることもできる。例えば、(メタ)アク
リル酸、(メタ)アクリル酸アミド、2−ヒドロキシエ
チル(メタ)アクリレート、N−ビニルピロリドン等の
水溶性の単量体を挙げることができる。このような他の
単量体の構成単位の共重合体A中における含有割合は、
10モル%以下が好ましい。
【0022】共重合体Aの製造は、前記単量体組成物
を、重合開始剤を用いる溶液重合、懸濁重合、乳化重合
又は塊状重合の通常用いる重合方法等によって行うこと
ができる。共重合体Aの分子量は、数平均分子量で30
00〜700000の範囲が好ましく、高分子化合物と
しての特性および溶剤への溶解性を考慮すると5000
〜400000の範囲が更に好ましい。
【0023】得られる共重合体Aの具体例としては、2
−(メタクリロイルオキシ)エチル−2’−(トリメチ
ルアンモニオ)エチルホスフェートとシクロヘキシルメ
タクリレートとの共重合体、2−(メタクリロイルオキ
シ)エチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホ
スフェートと2−エチルヘキシルメタクリレートとの共
重合体、2−(メタクリロイルオキシ)エチル−2’−
(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェートとn−ブ
チルメタクリレートとの共重合体、2−(メタクリロイ
ルオキシ)エチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エ
チルホスフェートとn−ドデシルメタクリレートとの共
重合体、2−(メタクリロイルオキシ)エチル−2’−
(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェートとスチレ
ンとの共重合体、2−(ブテロイルオキシ)エチル−
2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェートと
プロピレンとの共重合体、2−(クロトノイルオキシ)
エチル−2’−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフ
ェートとジエチルフマレートとの共重合体、2−(メタ
クリロイルオキシ)エチル−2’−(トリメチルアンモ
ニオ)エチルホスフェートとブチルメタクリレートと2
−メタクリロイルオキシエチルフェニルウレタンとの共
重合体、2−(メタクリロイルオキシ)エチル−2’−
(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェートと2−エ
チルヘキシルメタクリレートと2−メタクリロイルオキ
シエチルトリメトキシシランとの共重合体等を挙げるこ
とができる。
【0024】本発明の医学材料に用いる共重合体Aは、
前記一般式(1)で表される側鎖を有する炭素数1〜4
のアルキル(メタ)アクリレートと、炭素数5〜15の
分岐アルキル(メタ)アクリレート、脂環式アルキル
(メタ)アクリレート及びこれらの混合物からなる群よ
り選択される疎水性単量体とを含む単量体組成物を共重
合してなる共重合体、若しくは前記一般式(1)で表さ
れる側鎖を有する炭素数1〜4のアルキル(メタ)アク
リレートと、疎水性単量体であるウレタン結合を有する
アルキル(メタ)アクリレートとを含む単量体組成物を
共重合してなる共重合体である。これらの例示として
は、前述の高分子材料における共重合体Aの具体例のう
ちの相当する化合物を好ましく挙げることができる。
【0025】本発明の高分子材料やその原材料等に用い
る疎水性重合体Bとは、水に対する溶解性がきわめて低
く、得られる高分子材料に、力学的強度、耐久性等の機
械的性質を付与できるものである。そして、前記共重合
体Aとの組合わせによって液状高分子組成物とした場合
に前述の均一な液体状態となり、材料として固体状態と
することによって、前述の特定構造を形成することがで
きるものである。具体的には例えば、セグメント化ポリ
ウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリプロピレン、ポリスチ
レン、ポリエチレン、ABS樹脂、ポリメチルペンテ
ン、スチレン−ブタジエンブロック共重合体、ポリメチ
ルメタクリレート、ポリジメチルシロキサン、ポリエチ
レンテレフタレート、ポリアリルスルホン、ポリスルホ
ン、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリブチ
レンテレフタレート、ポリアセタール、ナイロン、ナイ
ロン−ABS共重合物、ポリスルホン−熱可塑性ポリエ
ステル共重合物、ポリテトラフルオロエチレン、セルロ
ース、天然ゴム、コラーゲン等の高分子材料;ヘパリン
固定化あるいは徐放性の材料、プロスタグライジン固定
化あるいは徐放性の材料等の生理活性物質を固定化した
医学材料用高分子材料等を例示することができる。ま
た、高分子化合物としての特性および溶剤への溶解性を
考慮すると、疎水性重合体Bの分子量は、数平均分子量
で3000〜700000の範囲が好ましいがこれに限
定されるものではない。
【0026】特に、疎水性重合体Bとして、セグメント
化ポリウレタンを採用することにより、血液回路、人工
心臓、各種カテーテル、医学材料用センサー、細胞培養
器材等の医学材料用としての優れた生体適合性と、実用
的な物性とを良好に兼ね備えた材料とすることができ
る。
【0027】セグメント化ポリウレタンとは、過剰のジ
イソシアネート類またはポリイソシアネート類と、ポリ
エーテル又はポリエステルのジオール類との重付加反応
の後に、鎖延長剤としてジオール又はジアミン類を重付
加させて得られるポリマー群をいう。ここでイソシアネ
ート類としては、ジフェニルメタンジイソシアネート、
ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が、ジオー
ル類としては、ポリエステルジオール、ポリエーテルジ
オール等が挙げられる。鎖延長剤としては、エチレンジ
アミン、4,4’−メチレンジアニリン、水、プロピレ
ンジアミン、ブタンジオール等が挙げられる。また例え
ば、商品名「Biomer」(Ethicon社製)、商品名「TM
シリーズ」(東洋紡社製)、商品名「Pellethane」(Up
john Chem.社製)、商品名「Angioflex」(Abiomed社
製)、商品名「Cardiothane」(Kontron社製)は、ジフ
ェニルメタンジイソシアネートとポリオキシテトラメチ
レングリコールとの重付加反応物であり、これら商品に
おいては種々の鎖延長剤が使用されている。また商品名
「Tecoflex」(Thermo Elec.社製)は、ジシクロヘキ
シルメタンジイソシアネートとポリオキシメチレングリ
コールとの重付加反応物であり、これら市販品を用いる
こともできる。
【0028】本発明の医学材料及びその原材料としての
液状高分子組成物に用いる疎水性重合体Bは、共重合体
Aが前記一般式(1)で表される側鎖を有する炭素数1
〜4のアルキル(メタ)アクリレートと、炭素数5〜1
5の分岐アルキル(メタ)アクリレート、脂環式アルキ
ル(メタ)アクリレート及びこれらの混合物からなる群
より選択される疎水性単量体とを含む単量体組成物を共
重合してなる共重合体である場合、ジシクロヘキシルメ
タンジイソシアネート及びポリエーテルジオールの重付
加反応により得られたセグメント化ポリウレタンを用い
る。一方、共重合体Aが前記一般式(1)で表される側
鎖を有する炭素数1〜4のアルキル(メタ)アクリレー
トと、疎水性単量体であるウレタン結合を有するアルキ
ル(メタ)アクリレートとを含む単量体組成物を共重合
してなる共重合体である場合には、ジフェニルメタンジ
イソシアネートとポリエーテルジオールとの重付加反応
により得られるセグメント化ポリウレタンを用いる。こ
れらの例示としては、前述の疎水性重合体Bの具体例の
うちの相当する化合物を好ましく挙げることができる。
【0029】本発明の高分子材料、医学材料及びこれら
の原材料としての液状高分子組成物において、共重合体
Aと疎水性重合体Bとの配合割合は、共重合体A及び疎
水性重合体Bの合計量に対して共重合体A0.5〜95
重量%、疎水性重合体B99.5〜5重量%の範囲が好
ましく、特に共重合体A1〜30重量%、疎水性重合体
B99〜70重量%の範囲が好ましい。共重合体Aが
0.5重量%未満では、一般式(1)で表される側鎖に
由来する生体適合性が発現し難い傾向にあり、95重量
%を超えると疎水性重合体Bに由来する力学的強度、耐
久性等が発現し難い傾向があるので好ましくない。
【0030】本発明の高分子材料を調製するには、共重
合体A及び該共重合体A以外の1種以上の他の疎水性重
合体Bを含む混合物を、前述の均一な液体状態(溶剤に
よる溶解状態又は加熱溶融状態)とし、その後、冷却固
化又は溶剤の蒸発除去により所望形状等の固体状態とす
る方法等により得ることができる。共重合体Aが疎水性
重合体Bと相溶するように、共重合体Aを構成する疎水
性単量体を適切に選択することによって、冷却固化の過
程において、きわめて極性の高いホスホリルコリン基を
有する共重合体Aが、疎水性の環境下において強く相互
作用して集合し、前述の特定な相分離を示している材料
とすることができる。特に溶剤を適切に選択して液体状
態とするのが好ましい。使用する溶剤は、各重合体との
相溶性を有することはもちろんであるが、コーティング
や製膜し易いように蒸発により容易に除去できる低分子
化合物が望ましく、混合溶剤であっても良い。例えば、
ジククロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタ
ン等のハロゲン化炭化水素溶剤;メタノール、エタノー
ル、n−プロパノール、プロパン−2−オール等の低級
アルコール;酢酸エチル、テトラヒドロフラン等を挙げ
ることができがこれらに限定されるものではない。相溶
性の良い溶剤の選択には、高分子材料を構成する重合体
の溶解性パラメータと溶剤の溶解性パラメーターが近似
するような最適な組合せを探索することにより行なうこ
とができる。
【0031】本発明の特定な高分子材料、即ち、前記一
般式(1)で表される側鎖を有する単量体及び疎水性単
量体の共重合体Aと、ジシクロヘキシルメタンジイソシ
アネートとポリエーテルジオールとの重付加反応により
得られたセグメント化ポリウレタン、ジフェニルメタン
ジイソシアネートとポリエーテルジオールとの重付加反
応により得られたセグメント化ポリウレタン及びこれら
の混合物からなる群より選択されるセグメント化ポリウ
レタンを含む共重合体A以外の1種以上の疎水性重合体
Bとを含む混合材料である高分子材料、若しくは本発明
の医学材料の原材料としての液状高分子組成物の場合の
溶剤は、これらを構成する特定の共重合体Aと特定の疎
水性重合体Bとを、ハロゲン化炭化水素溶剤及び低級ア
ルコール溶剤からなる混合溶剤を溶剤として用いること
により、前述の均一な液体状態とすることができる。こ
のような混合溶剤は、SP値(溶剤の溶解性パラメータ
(10-31/2-3/2)の値)が20〜24のものが好
ましい。例えば、クロロホルム/メタノール、クロロホ
ルム/エタノール、ジクロロメタン/メタノール、又は
ジクロロメタン/エタノールが、それぞれ体積比で8/
2〜6/4の範囲にある混合溶剤が適切であるがこれに
限定されるものではない。このような最適な溶剤の選択
を、2−(メタクリロイルオキシ)エチル−2’−(ト
リメチルアンモニウム)エチルホスフェート(以下MP
Cと略記)の重合体と、セグメント化ポリウレタン(商
品名「Tecoflex」、Thermo Elec.社製)との最適溶媒を
選択する例によって以下に説明する。
【0032】まず、表1に示すそれぞれの重合体1mg
を、各種溶剤1mlに溶解した際の溶解性を表1に示
す。
【0033】
【表1】
【0034】表1より、MPC単独重合体は、極性がき
わめて高いため、水やアルコールにしか溶解しないが、
疎水性単量体とMPCとの共重合体であるPMCやPM
Eは、ジクロロメタンやテトラヒドロフランに超音波を
照射することによって溶解若しくは膨潤するようにな
る。一方、セグメント化ポリウレタンは、もちろん水や
アルコールには不溶であるが、ジクロロメタンやテトラ
ヒドロフランに溶解する。更に、ジクロロメタンとエタ
ノールとの混合溶剤によって、それぞれの重合体の溶解
性を測定した結果、MPCの単独重合体以外は容易に溶
解した。従って、MPC重合体として、PMCやPME
を選択し、溶剤としてジクロロメタンとエタノールとの
混合溶剤を用いることにより、これらの混合物を前述の
均一な液体状態とすることが可能であることが判る。
【0035】均一な液体状態とする際に、超音波照射を
行なうことによって、均一度を更に高めることができ、
材料(固体状態)とした際に形成される共重合体Aから
なるドメインの大きさをより小さくし、ドメインの分布
をより均一化することができる。超音波の照射には、プ
ローブタイプの超音波発生器又は市販の超音波洗浄器を
用いることができる。照射時間は、5分間以上が望まし
い。また、溶剤を用いずに固体状態で各重合体混合物を
加熱溶解するには、ニーダー、バンバリーミキサー、ロ
ール、各種成形機等の通常利用されている機械装置を用
いて、濁度60%以下、好ましくは50%以下となるよ
うに溶融すれば良い。
【0036】本発明の液状高分子組成物において、前記
溶剤の使用量は、共重合体A及び疎水性重合体Bが溶解
して前述の均一な液体状態とすることができれば特に限
定されず、適宜選択することができる。
【0037】本発明の高分子材料及び医学材料は、本発
明の液状高分子組成物等の均一な液体状態物を、所望の
材料にあわせて成形若しくは材料表面に製膜等を行っ
て、各種材料に所望の機能を付与することができる。材
料表面へのコーティングの場合には、該材料と類似した
構造のものを疎水性重合体Bとして選択することによ
り、密着性、耐久性等を著しく向上させることができ
る。
【0038】
【発明の効果】本発明の高分子材料は、一般式(1)で
表される側鎖を有する単量体及び疎水性単量体を含む単
量体組成物を共重合した共重合体Aと、共重合体A以外
の疎水性重合体Bとを特定な構造において有しているの
で、一般式(1)で表される側鎖を有する単量体に起因
する優れた生体適合性と、疎水性重合体Bが備える実用
的な機械的強度等の物性とを兼ね備えている。また共重
合体Aからなる特定大きさのドメインが疎水性重合体B
からなる相に均一に分布した相分離を示しているので、
生体適合性と機械的性質との両者を兼ね備えた医学材料
等として有用である。疎水性重合体Bとしてセグメント
化ポリウレタンを採用することにより、特に耐久性を必
要とする場合や、可撓性等が要求され、かつ力学的変形
を受け易い血液循環系の医学材料への使用であっても基
材との密着性不足による剥がれの問題が解決でき、例え
ば血液回路、人工心臓、各種カテーテル、医学材料用セ
ンサー、細胞培養器材等の各種の医学用材料に有用であ
る。
【0039】
【実施例】以下、合成例、実施例及び比較例によって詳
細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものでは
ない。
【0040】合成例1〜5 CH2Cl2/C25OH(7/3)(重量比)の混合溶
剤中に、シクロヘキシルメタクリレート(以下CHMA
と略記)単独、2−エチルヘキシルメタクリレート(以
下EHMAと略記)単独、MPCと、CHMAまたはE
HMAとの単量体組成物(30/70)(モル%)を、
1モル/リットルの濃度となるように溶解し、また重合
開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリルを5ミリモ
ル/リットルの濃度となるように溶解し、60℃で表2
に示す重合時間において溶液重合を行った。
【0041】反応終了後、反応液をエーテルに滴下して
重合体を沈澱させ濾別し、残留単量体を除去した後減圧
乾燥し、重量測定により重合体の収率を求めた。それぞ
れの結果を合成例1〜4として表2に示す。合成例1及
び2は、それぞれCHMA及びEHMAの単独重合体
(それぞれPC及びPEと略記)である。合成例3及び
4の共重合体の同定は、IRスペクトルにより行った。
その結果、1600cm-1近辺のピークが消えているこ
とから炭素間二重結合の消失を、1200cm-1近辺に
+(CH33に由来するピーク、1400cm-1にP
−O−CH2結合ピークが見られることからホスホリル
コリン基の存在を、1730cm-1にC=O結合のピー
クがあることからエステル基の存在を、2800〜30
00cm-1近辺に−CH2−および−CH3のピークがあ
ることからアルキル基の存在を、1050cm-1にシク
ロ環のピークがあることからシクロヘキシル基の存在を
それぞれ確認した。以上のことから、合成例3ではMP
CとCHMAとの共重合体(以下PMCと略記)が、合
成例4ではMPCとEHMAとの共重合体(以下PME
と略記)が得られたことが確認できた。また、MPC/
EHMA/2−メタクリロイルオキシエチルトリメトキ
シシラン(以下MTSiと略記)の3成分をモル%で3
0:69:1の割合にした単量体組成物を合成例4と同
様に重合し、MPCとEHMAとMTSiとの共重合体
(以下PMESiと略記)を得、これを合成例5とし
た。収率等を表2に示す。
【0042】合成例6 CH2Cl2/C25OH(7/3)(重量比)の混合溶
剤中に、MPCと、n−ドデシルメタクリレート(以下
DMAと略記)との単量体組成物(33/67)(モル
%)を1モル/リットルの濃度となるように溶解し、ま
た重合開始剤としてのアゾビスイソブチロニトリルを5
ミリモル/リットルの濃度となるように溶解し、60℃
で表2に示す重合時間において溶液重合を行なった。
【0043】反応終了後、反応液をエーテルに滴下して
共重合体を沈澱させ濾別し、残留単量体を除去した後減
圧乾燥し、重量測定により共重合体の収率を求めた。そ
の結果を合成例6として表2に示す。共重合体の同定
は、IRスペクトルにより行なった。その結果、160
0cm-1近辺のピークが消えていることから炭素間二重
結合の消失を、1200cm-1近辺にN+(CH3)3に由
来するピーク、1400cm-1にP−O−CH2結合ピ
ークが見られることからホスホリルコリン基の存在を、
1730cm-1にC=O結合のピークがあることからエ
ステル基の存在を、2800〜3000cm-1近辺に−
CH2−及び−CH3のピークがあることからアルキル基
の存在が認められた。以上のことから、合成例6では、
MPCとDMAとの共重合体(以下PMDと略記)が得
られたことが確認できた。
【0044】合成例7 CH2Cl2/C25OH(7/3)(重量比)の混合溶
剤中に、MPC、n−ブチルメタクリレート(以下BM
Aと略記)及び2−メタクリロイルオキシエチルフェニ
ルウレタン(以下MBPUと略記)の単量体組成物(3
0/60/10)(モル%)を1モル/リットルの濃度
となるように溶解し、また重合開始剤としてのアゾビス
イソブチロニトリルを5ミリモル/リットルの濃度とな
るように溶解し、60℃で表2に示す重合時間において
溶液重合を行なった。
【0045】反応終了後、反応液をエーテルに滴下して
共重合体を沈澱させ濾別し、残留単量体を除去した後減
圧乾燥し、重量測定により共重合体の収率を求めた。そ
の結果を合成例7として表2に示す。共重合体の同定
は、IRスペクトルにより行なった。その結果、160
0cm-1近辺のピークが消えていることから炭素間二重
結合の消失を、1200cm-1近辺にN+(CH3)3に由
来するピーク、1400cm-1にP−O−CH2結合ピ
ークが見られることからホスホリルコリン基の存在を、
1730cm-1にC=O結合のピークがあることからエ
ステル基の存在を、2800〜3000cm-1近辺に−
CH2−及び−CH3のピークがあることからアルキル基
の存在を、1580cm-1に−NHCOO−基のピーク
があることからウレタン結合の存在をそれぞれ確認し
た。以上のことから、合成例7ではMPC、BMA及び
MBPU共重合体(以下PMUと略記)が得られたこと
が確認できた。
【0046】〔共重合体の分子量の測定〕得られた共重
合体の数平均分子量(Mn)は、TOSOH社のGPC
装置に、商品名「Asahipak GS-510カラム」を接続し、
クロロホルム/エタノール=8/2系でポリスチレンを
標準物質として測定した。結果を表2に示す。
【0047】〔共重合体中のMPCの配合量決定〕合成
例3〜7で得られた各々のMPC含有共重合体6mgを
10mlのエタノールに溶解し、この溶液50μlを7
5℃で乾固させた。次に70重量%過塩素酸260μl
を加えて180℃で20分間加熱することによって、有
機リンを無機リンに分解した。冷却後、蒸留水1.9m
l、1.25重量%モリブテン酸アンモニウム0.4m
l、5.0重量%アスコルビン酸0.4mlを加えて、
100℃で5分間加温し発色させた。次に、この溶液の
817.8nmにおける吸光度を測定することによって
リン濃度を定量した。なお、検量線はリン酸水素二ナト
リウムを用いて作成した。共重合組成の算出は使用共重
合体量(6mg)、リン濃度、MPCユニット分子量か
ら算出した。結果を表2に示す。
【0048】
【表2】
【0049】実施例1−1〜1−7 ジクロロメタンおよびエタノールを体積比7:3で混合
した溶剤を用い、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネ
ートとポリオキシテトラメチレングリコールとの重付加
反応物であるセグメント化ポリウレタン(商品名「Teco
flex60」、Thermedics社製、以下SPU−1と略記)、
PMC(合成例3)、PME(合成例4)、PMESi
(合成例5)及びPMD(合成例6)をそれぞれ別々に
溶解して5重量%溶液を調製した。次いで、SPU−1
溶液とPMC溶液、SPU−1溶液とPME溶液、SP
U−1溶液とPMESi溶液、並びにSPU−1溶液と
PMD溶液を、重量比で95:5および9:1の割合に
混合して30分間撹拌し均一溶液とし、これらの溶液の
濁度を後述する方法によって測定した。
【0050】続いて、これらの溶液をそれぞれ直径75
mmのテフロン皿に26.5g流延し乾燥機に入れ、6
0℃で1晩加熱して溶剤を除去した。さらに減圧乾燥し
て高分子膜を作製し、それぞれを実施例1−1〜1−7
としてその各組成を表3に示し、後述する各種測定を行
った。
【0051】実施例1−8及び1−9 ジクロロメタンおよびエタノールを体積比7:3で混合
した溶剤を用い、ジフェニルメタンジイソシアネートと
ポリオキシテトラメチレングリコールとの重付加反応物
であるセグメント化ポリウレタン(商品名「Pellethane
2363-90」、Upjohn Chem.社製、以下SPU−2と略
記)及びPMU(合成例7)をそれぞれ別々に溶解して
5重量%溶液を調製した。次いで、SPU−2溶液とP
MU溶液とを、重量比で95:5および9:1の割合に
混合して30分間撹拌し均一溶液とし、これらの溶液の
濁度を後述する方法によって測定した。
【0052】続いて、これらの溶液をそれぞれ直径75
mmのテフロン皿に26.5g流延し乾燥機に入れ、6
0℃で1晩加熱して溶剤を除去した。さらに減圧乾燥し
て高分子膜を作製し、それぞれを実施例1−8及び1−
9としてその各組成を表3に示し、後述する各種測定を
行った。
【0053】比較例1−1〜1−6 PMC(合成例3)、PME(合成例4)、PMESi
(合成例5)及びPMD(合成例6)の共重合体Aを用
いて、特表平7−504459号公報記載の高分子組成
物の膜を作製した。すなわち、前記それぞれの共重合体
A2.5gに、7.5gのSPU−1及びジクロロメタ
ン100gを混合し、それぞれの溶液の濁度を後述する
方法によって測定した。この際、目視により観察したと
ころ、SPU−1は膨潤した状態で完全には溶解してお
らず、共重合体Aも完全には溶解せず不均一な状態であ
った。次に溶剤をロータリー・エバポレータで除去し、
乾燥した物質をポリエチレンテレフタレート受けシート
間で0.3mm厚の膜に圧縮し(10トン/ft2、1
10℃、10分間)、それぞれを比較例1−1〜1−4
とした。また、5重量%SPU−1溶液のみを用いて、
実施例1−1に準じて同様に処理して膜を作製し、これ
を比較例1−5とした。更に、5重量%SPU−1溶液
と、5重量%PC(合成例1)溶液とを、95:5の割
合に混合し均一溶液とし、実施例1−1に準じて同様に
処理して膜を調製し、これを比較例1−6とした。この
ようにして得られた膜について、同様に後述する各種測
定を行なった。
【0054】比較例1−7 MPC1g、水溶性重合体としてポリビニルアルコール
(以下PVAと略記)0.5g及びN,N’−メチレン
ビスアクリルアミド0.05gを蒸留水8.5mlに撹
拌溶解し水溶液を調製した。得られた水溶液をガラスフ
ィルターを通して濾過した後減圧脱気し、比較例1−6
で作製した膜(セグメント化ポリウレタン膜)上にコー
トして薄膜を形成した。その後、250W高圧水銀灯を
3時間照射して重合させ、特開昭59−43342号公
報記載のMPCポリマーで表面処理したポリウレタン膜
を得た。即ち、疎水性単量体ユニットを含まないMPC
単独重合体と水溶性重合体であるポリビニルアルコール
との重合体混合物を、セグメント化ポリウレタン上にコ
ートしたものである。このようにして得られた膜につい
て、後述する各種測定を行なった。
【0055】比較例1−8 PME(合成例4)の共重合体Aを用いて、特表平7−
504459号公報記載の高分子膜を作製した。即ち、
1.1gのPME(合成例4)に、20gのSPU−
1、40gの酢酸エチル及び40gのプロパン−2−オ
ールを混合し、得られた溶液の濁度を後述する方法によ
って測定した。この際、目視で観察したところ、SPU
−1はわずかに膨潤した程度でほとんど溶けていない状
態であった。次に溶剤をロータリー・エバポレーターで
除去し、乾燥した物質をポリエチレンテレフタレート受
けシート間で0.3mm厚の膜に圧縮(10トン/ft
2、100℃、10分間)した。このようにして得られ
た膜について、後述する各種測定を行なった。
【0056】実施例2−1〜2−3 ジクロロメタンおよびエタノールを体積比7:3で混合
した溶剤を用い、SPU−1、SPU−2、PMC(合
成例3)、PME(合成例4)、PMU(合成例7)を
それぞれ別々に溶解して5重量%溶液を調製した。次い
で、SPU−1溶液とPMC溶液、SPU−1溶液とP
ME溶液、並びにSPU−2溶液とPMU溶液とを、重
量比で95:5の割合に混合して30分間撹拌し均一溶
液とした。更に30分間、プローブタイプの超音波発生
器(商品名「Sonifier 250」、Branson,Danbury,CT,US
A)を用いて、周波数20KHz、出力200Wの目盛6
で30分間超音波を照射した。得られたそれぞれの溶液
の濁度を後述する方法に従って測定した。
【0057】続いて、これらの溶液をそれぞれ直径75
mmのテフロン皿に26.5g流延し乾燥機に入れ、6
0℃で1晩加熱して溶剤を除去した。さらに減圧乾燥し
て高分子膜を作製し、それぞれを実施例2−1〜2−3
としてその各組成を表3に示し、後述する各種測定を行
った。
【0058】比較例2−1〜2−3 実施例2−1〜2−3において、溶剤をジクロロメタン
に代えた以外は、実施例2−1〜2−3と同様に膜を作
製し、各測定を行なった。各組成を表3に示す。
【0059】実施例3 実施例2−2で得られた混合均一溶液を、比較例1−5
で作製した膜(セグメント化ポリウレタン膜)上にコー
トして薄膜を形成した。この膜を乾燥機に入れ、60℃
で1晩加熱して溶剤を除去した。更に減圧乾燥してMP
C含有高分子組成物で表面処理したポリウレタン膜を得
た。得られた膜について後述する各測定を行なった。実
施例及び比較例について行なった各測定の方法を以下に
示す。
【0060】<濁度測定>日本電色工業(株)製測色色
差計ND-1001DP型を用い、完全に光を遮蔽した状態を1
00、溶剤のみをセルに入れた際を0となるようにして
濁度を求めた。結果を表3に示す。表3の結果から、実
施例の原材料としての液状物の濁度は60%以下と低い
が、電子顕微鏡での観察でMPC重合体部分の凝集が認
められるものでは大きい値となっている。
【0061】<膜のガラス転移温度の測定>示差走査熱
量計(DSC)測定からのガラス転移温度(Tg)を測
定した。具体的には、得られた高分子膜を約10mg採
取して、DSC用のアルミニウム製パンに封入し所定の
場所にセットした。その後、液体窒素で−100℃まで
冷却し、毎分10℃の昇温速度で300℃まで加熱して
熱量変化を測定し、ガラス転移温度(Tg)を求めた。
結果を表3に示す。表3の結果から、比較例1−5のS
PU−1単独膜では、ソフトセグメントに由来する低温
側のガラス転移温度と、ハードセグメントに由来する高
温側のガラス転移温度が確認できることから、相分離し
ていることが判る。また、実施例の高分子膜では、ガラ
ス転移温度がソフトセグメントおよびハードセグメント
共にSPU−1単独膜とほぼ一致していることから、ポ
リマーブレンドを行ってもSPU−1の特徴である相分
離が維持されていることが判り、SPU−1に由来する
優れた力学特性が維持されていることが証明できる。と
ころが、共重合体Aとして、MPCユニットを含まない
PCを用いた場合(比較例1−6)には、明確なガラス
転移温度が現れないことから両者の重合体が相溶化現象
を起こすためSPU−1に由来する優れた力学的特性が
発揮できないと推定される。
【0062】<電子顕微鏡による高分子膜表面の観察>
共重合体Aからなる数百μm以下のドメインが疎水性重
合体Bからなる相に均一分布した相分離を示している
か、否かの確認は、走査型電子顕微鏡(SEM,JSM-5400,J
EOL,東京)で行なった。まず、得られた各膜を室温で1
80分間四酸化オスミウムに曝し、MPC重合体部分を
染色し、炭素でスパッタリング(15〜20nm)した
後、電子顕微鏡で染色部分のドメインの大きさを観察し
た。ドメインの大きさを表3に示す。比較例1−5のS
PU−1単独の場合には、染色されたMPC重合体部分
のドメインは見られないが、実施例では白いスポットと
してMPC共重合体部分のドメインが見られた。ドメイ
ンの大きさは、およそ1〜50μmの範囲内にあり、相
分離した状態の各ドメインが均一に分布していることが
判った。この際、超音波処理(実施例2−1〜2−3)
によってドメインの大きさがいっそう小さくなることが
判った。比較例1−1〜1−4又は比較例2−1〜2−
3の場合には、原材料の液状物が均一に溶解していない
ためかMPC重合体部分が凝集塊として現れ、数百μm
以下のオーダーにおける相分離とはならなかった。比較
例1−6では、混合する重合体同士が完全に溶解してし
まうためか、ドメインを認めることができなかった。比
較例1−7は、ガラス転移温度からは、疎水性重合体B
の構造を維持できているが、その表面にコートされた重
合体混合物が相溶するため、MPC共重合体部分のドメ
インを検出することができなかった。
【0063】
【表3】
【0064】<XPS分析による高分子膜表面の解析>
表面解析にはXPS(X線光電子分光器)を用い、P2
PスペクトルおよびC1Sスペクトルのピーク面積より
算出したP/C値(試料表面のリン原子量を、リン原子
量と炭素原子量の和で除した値)を求め、各MPC共重
合体の配向の濃淡を確認した。深さ方向の情報を得るた
めに光電子放出角度を30度と90度にして分析した。
結果を表4に示す。表4のP/C値の比較より、SPU
−1にPMC(実施例1−1及び1−2)又はPME
(実施例1−3及び1−4)を混合することによって、
共に膜表面の浅い部分と深い部分においてMPC共重合
体のホスホリルコリン基に由来するリン原子が確認され
た。また、PMCを用いた高分子膜では深い部分(90
度)でのP/C値より、浅い部分(30度)でのP/C
値が大きくなることから、高分子膜中のホスホリルコリ
ン基部分が表面に配向濃縮していることが判る。しか
し、PMEを用いた高分子膜においては、90度と30
度でP/C値の差がないことからホスホリルコリン基の
顕著な表面配向がないことが判る。このように一般式
(1)で示される側鎖を有する単量体と疎水性単量体と
の組合せを選択することによって、種々の表面特性を有
する膜を設計できることが判明した。
【0065】<高分子膜からのMPC共重合体の溶出>
厚さ0.3mmの高分子膜を作製し、これらの膜を直径
1.5cmの円形に打ち抜き、各々10mlの蒸留水に
浸漬し静置した。水中に浸漬してから3日後と10日後
に膜が浸っている蒸留水を50μl採取し、リン濃度を
前記MPC共重合体の組成決定法に従い定量した。次い
で、リン濃度から膜単位体積当たりのMPC共重合体の
溶出量(mg/cm3)を求めた。結果を表4に示す。
表4より、実施例の高分子膜は水中に浸漬してから10
日後もほとんどMPC共重合体の溶出は見られず、8重
量%以内に収まっていた。これに対して比較例の膜で
は、MPC重合体の溶出が激しく、比較例1−7に示さ
れた水溶性重合体との混合物の場合には特に溶出が著し
い結果となった。このように、実施例の膜は安全性及び
耐久性の面において優れた性能を有していることが判明
した。
【0066】
【表4】
【0067】<膜の力学的性質>幅約5mm、長さ10
mmおよび厚さ約0.3mmの高分子膜の引張り試験
を、引張り速度2mm/分の条件下により行った。1種
類の膜試料につき3回測定し平均値をとり、応力−ひず
み曲線を求めた。その結果を図1及び図2に示す。また
比較例1−5のSPU−1単独膜、MPC共重合体部分
が凝集した不均一膜についても同様にして応力−ひずみ
曲線を求めた。その結果も合わせて図1及び図2に示
す。更に、合成例1及び2で得られた重合体単独膜につ
いても同様の試験を試みたが、柔らかすぎて測定に耐え
るものではなく、力学的強度の絶対的な不足が確認され
た。図1の応力−ひずみ曲線から、SPU−1にMPC
共重合体を均一に溶解し、溶剤を除去して膜とした際に
ドメインの大きさが数百μm以下の相分離を形成した高
分子膜(実施例1−1〜1−4)は、SPU−1単独膜
(比較例1−5)と同等またはそれ以上の力学的特性を
発揮することが判明した。また、図2の応力−ひずみ曲
線からシリル基を有する単量体を架橋成分として用いた
膜(実施例1−5)、超音波処理した膜(実施例2−
2)は、より優れた力学的性質を示したが、SPU−1
との相溶性の良くない直鎖のアルキルメタクリレートを
疎水性単量体として用いた膜(実施例1−7)では若干
力学的物性が劣っていた。比較例1−4及び2−2で示
したMPC含有重合体部分が凝集した不均一膜では途中
で破断が生じ脆いことが判った。更に、SPU−1とP
Cとから得られた相分離を示さない膜(比較例1−6)
も応力低下が見られ、良好な応力−ひずみ曲線が得られ
なかった。
【0068】<高分子膜に対する血漿蛋白質の吸着量の
測定>直径1.5cmの円形に打ち抜いた高分子膜を、
リン酸緩衝溶液10ml中に入れ一晩浸漬した。次に、
濃度がヒト血漿タンパク質濃度(アルブミン:4.5g
/dl、γ−グロブリン:1.6g/dl、フィブリノ
ーゲン:0.3g/dl)または1/10濃度であるア
ルブミン、γ−グロブリンおよびフィブリノーゲンのリ
ン酸緩衝溶液(NaCl 24.0g,KCl 0.6
g,Na2HPO4・12H2O 8.7gおよびKH2
4 0.6gを蒸留水3リットルに溶解し調製した)2
0mlに、この高分子膜を浸し30分間静置した。次
に、リン酸緩衝溶液10ml中で高分子膜を10回上下
してリンスし、高分子膜についた溶液をろ紙を用いて吸
い取った。次に1重量%ドデシル硫酸ナトリウム水溶液
5mlに浸すことによって吸着タンパク質を脱離させ
た。脱離したタンパク質を市販のタンパク質定量キット
を用いて定量し、単位面積当たりの吸着量を求めた。な
お、測定は各2回行い平均値を求めた。また実施例及び
SPU−1単独膜(比較例1−5)、SPU−1とPC
との混合膜(比較例1−6)、並びにSPU−1膜上へ
のMPC−PVAのコート膜(比較例1−7)等につい
ても同様に測定を行った。結果を表5に示す。表5の実
施例として示した高分子膜と、SPU−1単独膜(比較
例1−5)との比較より、実施例の方が血小板のような
血液中の細胞の粘着を促進するフィブリノーゲンの吸着
量が少なく、生体物質非吸着性に優れた材料であること
が判る。また、超音波処理もタンパク質の吸着量抑制に
有効であることが判った。
【0069】<高分子膜の生体適合性に関する評価>本
実験では生体適合性のうち、最も代表的な一つである血
液適合性に関して以下に示す評価を行った。直径1.5
cmに打ち抜いて作製した高分子膜をリン酸緩衝溶液に
一晩浸漬した。実験を行う直前にリン酸緩衝溶液を除去
し、予め調製したウサギの全血、またはウサギ多血小板
血漿(PRP:ウサギ血液9mlに対して3.8重量%
クエン酸ナトリウム水溶液1mlを加え、750rpm
で15分間遠心操作を行うことにより調製した)0.7
mlを加えて放置した。全血は60分と120分、PR
Pは60分間前記高分子膜と接触させた。次に、ウサギ
の全血またはPRPを除去し、リン酸緩衝溶液で3回リ
ンスし、2.5容量%のグルタルアルデヒド溶液を1.
0ml加え2時間静置して血球を固定した。グルタルア
ルデヒドを除去した後、蒸留水で3回リンスして液体窒
素に浸し凍結乾燥した。次に、金をスパッタリングし、
走査型電子顕微鏡で表面を観察した。結果を表5に示
す。また各実施例、SPU−1単独膜(比較例1−
5)、SPU−1とPCとの混合膜(比較例1−6)、
並びにSPU−1膜上へのMPC−PVAのコート膜
(比較例1−7)等についても同様に測定を行った。結
果を表5に示す。表5より実施例の高分子膜は、比較例
よりも血液細胞の粘着が抑制され、血液適合性が非常に
高い材料であり、医学材料用として有用であることが判
明した。
【0070】
【表5】
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で測定した高分子組成物の均一膜又は比
較例のSPU−1単独膜や不均一膜の応力−ひずみ曲線
を示すグラフである。
【図2】実施例で測定した高分子組成物の均一膜又は比
較例の不均一膜の応力−ひずみ曲線を示すグラフであ
る。
フロントページの続き (72)発明者 脇 一徳 茨城県つくば市梅園2−15−5 (72)発明者 椎野 太二朗 茨城県つくば市春日2−17−1 (72)発明者 松山 一夫 茨城県つくば市春日2−17−14 (72)発明者 中林 宣男 千葉県松戸市小金原5丁目6番20号 (72)発明者 石原 一彦 東京都小平市上水本町3−16−37

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記一般式(1) 【化1】 (式中R1、R2及びR3は、同一または異なる基であっ
    て、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す)
    で表される側鎖を有する単量体及び疎水性単量体を含む
    単量体組成物を共重合した共重合体Aと、共重合体A以
    外の1種以上の疎水性重合体Bとを含む混合材料であっ
    て、前記混合材料の構造が、共重合体Aからなる数百μ
    m以下のドメインが疎水性重合体Bからなる相に均一に
    分布した相分離を示していることを特徴とする高分子材
    料。
  2. 【請求項2】 共重合体Aが、一般式(1)で示される
    側鎖を有する炭素数1〜4のアルキル(メタ)アクリレ
    ートと、炭素数5〜15の分岐アルキル(メタ)アクリ
    レート、脂環式アルキル(メタ)アクリレート及びこれ
    らの混合物からなる群より選択される疎水性単量体との
    共重合体である請求項1に記載の高分子材料。
  3. 【請求項3】 疎水性重合体Bとして、ジシクロヘキシ
    ルメタンジイソシアネートとポリエーテルジオールとの
    重付加反応により得られたセグメント化ポリウレタン、
    ジフェニルメタンジイソシアネートとポリエーテルジオ
    ールとの重付加反応により得られたセグメント化ポリウ
    レタン及びこれらの混合物からなる群より選択されるセ
    グメント化ポリウレタンを含む請求項1又は2に記載の
    高分子材料。
  4. 【請求項4】 共重合体Aの含有量が、共重合体A及び
    疎水性重合体Bの合計量に対して1〜30重量%である
    請求項1〜3のいずれか1項に記載の高分子材料。
  5. 【請求項5】 請求項3に記載の高分子材料の原材料と
    しての液状高分子組成物であって、下記一般式(1) 【化2】 (式中R1、R2及びR3は、同一または異なる基であっ
    て、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す)
    で表される側鎖を有する単量体及び疎水性単量体を含む
    単量体組成物を共重合した共重合体Aと、ジシクロヘキ
    シルメタンジイソシアネートとポリエーテルジオールと
    の重付加反応により得られたセグメント化ポリウレタ
    ン、ジフェニルメタンジイソシアネートとポリエーテル
    ジオールとの重付加反応により得られたセグメント化ポ
    リウレタン及びこれらの混合物からなる群より選択され
    るセグメント化ポリウレタンを含む共重合体A以外の1
    種以上の疎水性重合体Bと、ハロゲン化炭化水素溶剤及
    び低級アルコール溶剤からなる混合溶剤とを含有し、濁
    度60%以下を示す液状高分子組成物。
  6. 【請求項6】 下記一般式(1) 【化3】 (式中R1、R2及びR3は、同一または異なる基であっ
    て、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す)
    で表される側鎖を有する炭素数1〜4のアルキル(メ
    タ)アクリレートと、炭素数5〜15の分岐アルキル
    (メタ)アクリレート、脂環式アルキル(メタ)アクリレ
    ート及びこれらの混合物からなる群より選択される疎水
    性単量体とを含む単量体組成物を共重合した共重合体A
    と、共重合体A以外の1種以上の疎水性重合体Bとを含
    む混合材料であって、前記混合材料が疎水性重合体Bと
    してジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及びポリ
    エーテルジオールの重付加反応により得られたセグメン
    ト化ポリウレタンを含み、前記混合材料の構造が、共重
    合体Aからなる数百μm以下のドメインが疎水性重合体
    Bからなる相に均一に分布した相分離を示していること
    を特徴とする医学材料。
  7. 【請求項7】 請求項6に記載の医学材料の原材料とし
    ての液状高分子組成物であって、下記一般式(1) 【化4】 (式中R1、R2及びR3は、同一または異なる基であっ
    て、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す)
    で表される側鎖を有する炭素数1〜4のアルキル(メ
    タ)アクリレートと、炭素数5〜15の分岐アルキル
    (メタ)アクリレート、脂環式アルキル(メタ)アクリレ
    ート及びこれらの混合物からなる群より選択される疎水
    性単量体とを含む単量体組成物を共重合した共重合体A
    と、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及びポリ
    エーテルジオールの重付加反応により得られたセグメン
    ト化ポリウレタンを含む共重合体A以外の1種以上の疎
    水性重合体Bと、ハロゲン化炭化水素溶剤及び低級アル
    コール溶剤からなる混合溶剤とを含有し、濁度60%以
    下を示す医学材料用液状高分子組成物。
  8. 【請求項8】 下記一般式(1) 【化5】 (式中R1、R2及びR3は、同一または異なる基であっ
    て、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す)
    で表される側鎖を有する炭素数1〜4のアルキル(メ
    タ)アクリレートと、疎水性単量体であるウレタン結合
    を有するアルキル(メタ)アクリレートとを含む単量体
    組成物を共重合した共重合体Aと、共重合体A以外の1
    種以上の疎水性重合体Bとを含む混合材料であって、前
    記混合材料が疎水性重合体Bとしてジフェニルメタンジ
    イソシアネートとポリエーテルジオールとの重付加反応
    により得られるセグメント化ポリウレタンを含み、前記
    混合材料の構造が、共重合体Aからなる数百μm以下の
    ドメインが疎水性重合体Bからなる相に均一に分布した
    相分離を示していることを特徴とする医学材料。
  9. 【請求項9】 請求項8に記載の医学材料の原材料とし
    ての液状高分子組成物であって、下記一般式(1) 【化6】 (式中R1、R2及びR3は、同一または異なる基であっ
    て、水素原子または炭素数1〜4のアルキル基を示す)
    で表される側鎖を有する炭素数1〜4のアルキル(メ
    タ)アクリレートと、疎水性単量体であるウレタン結合
    を有するアルキル(メタ)アクリレートとを含む単量体
    組成物を共重合した共重合体Aと、ジフェニルメタンジ
    イソシアネートとポリエーテルジオールとの重付加反応
    により得られるセグメント化ポリウレタンを含む共重合
    体A以外の1種以上の疎水性重合体Bと、ハロゲン化炭
    化水素溶剤及び低級アルコール溶剤からなる混合溶剤と
    を含有し、濁度60%以下を示す医学材料用液状高分子
    組成物。
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