JP2004298223A - 生体適合性材料 - Google Patents

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Abstract

【課題】血小板の粘着、活性化を十分に抑制し、長期にわたり抗凝固活性を有する生体由来材料を安定に存在させることができ、かつ安全性が高いこと、そして用途の制限が少なく、製造方法が煩雑ではないためコストが小さくできる生体適合性組成物、およびそれを用いた生体適合性医療用具を提供することを目的とする。
【解決手段】(A)抗凝固活性を示す生体由来材料と、(B)ガラス転移点が300K以下であるノニオン性重合体とを含み、該生体由来材料と該ノニオン性重合体とが、化学結合していない生体適合性組成物。
【選択図】図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、生体適合性組成物、およびそれを用いた生体適合性医療用具に関する。詳しくは、血液等の体液と接触した時に、血小板の粘着、活性化の抑制効果を有する生体適合性組成物で、医療用具表面に該組成物を安定に存在させることができる生体適合性医療用具に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、各種の高分子材料を利用した医用材料の検討が進められており、人工腎臓用膜、血漿分離用膜、カテーテル、ステント、人工肺用膜および人工血管等への利用が期待されている。生体にとって異物である合成材料を生体内組織や血液と接触させて使用することとなるため、医用材料が生体適合性を有していることが要求される。この際に使用される生体適合性は、目的や使用方法によって意味が異なるが、以下に例を挙げて説明する。
【0003】
医用材料を血液と接触する材料として使用する場合、(a)血液凝固の抑制、(b)血小板の粘着および活性化の抑制が生体適合性として重要な項目となる。例えば、比較的短時間血液と接触する体外循環用医用材料(人工腎臓や血漿分離用膜など)として使用する場合、一般にヘパリンやクエン酸ナトリウム等の抗凝固剤を同時に使用するため、(b)に記載した血小板の活性化の抑制が重要な課題となっていた。
【0004】
(b)血小板の粘着・活性化の抑制については、ミクロ相分離した表面(以下、ミクロ相分離表面と略す)や親水性表面、特に水溶性高分子を表面に結合させたゲル化表面が優れており、ポリプロピレンなどの疎水性表面は劣っていると言われている(例えば、非特許文献1、2参照)。しかし、ミクロ相分離構造を有するミクロ相分離表面は、適度な相分離状態にコントロールすることにより良好な血液適合性を発現することが可能となるが、そのような相分離を作製できる条件が限られており、製造方法に制限のあるものであった。また、水溶性高分子を表面に結合させたゲル化表面では、血小板の粘着は抑制されるが、材料表面で活性化された血小板や微小血栓が体内に返還され、しばしば異常な血球成分(血小板)の変動が観察されることがあった。したがって、従来の生体内組織や血液と接触させて使用することとなる医用材料においては、血小板の粘着および活性化の抑制といった機能を満たす合成高分子材料を容易に得ることができなかった。
【0005】
この他、現在提案されている抗血栓性を付与する方法として、高分子材料とヘパリン等の抗凝血性物質とを、非常に細かい粒子にして混錬して塗布する方法が提唱されている(例えば、特許文献1参照)。しかし、この方法では、抗凝血性物質が血中へそのまま溶出されるため、初期の溶出速度が大きく、長期間にわたる抗血栓性を得ることが困難である。
【0006】
また、特許文献2には、カチオン性を有するポリマーを溶剤に溶解して医療用具に塗布した後、ヘパリン水溶液を接触させてイオン的に結合させる方法が記載されている。しかし、この方法においては、長期間にわたり高い抗血栓性を示す医用材料を得ることができるが、カチオン性を有するポリマーを医療用具にコーティングする工程とヘパリンを結合させる2つの工程が必要となり、製造方法が煩雑でコストが大きくなる欠点が指摘されている。
【0007】
さらに、特許文献3には、ヘパリンに化学修飾によりアミノ基またはアルデヒド基を導入し、これらの官能基と反応可能な官能基を基材である医療用具表面に導入して、官能基同士を反応させ固定化させる方法が記載されている。この方法を用いると、半永久的に医療用具表面にヘパリンを固定化することができ、そのため長期間にわたり抗血栓性を得ることができるが、共有結合であるため、ヘパリンの移動自由度が小さくなる。したがって、ヘパリンとアンチトロンビンIIIとの結合効率が小さく、医療用具表面で十分な抗血栓性を発現することが難しい。
【0008】
この他に、化学修飾によりヘパリンを有機溶媒に溶解可能とした後、医療用具表面に塗布する方法がある(例えば、特許文献4参照)。この方法により製造されたベンザルコニウム塩とヘパリンとのイオンコンプレックスを、イソプロピルアルコールに溶解した溶液が、既に上市されている。しかし、ベンザルコニウム塩は、芳香族系のハロゲン化物を原料として合成されるので、残留時にハロゲン元素の安全性の問題がある。また、得られたベンザルコニウム塩は、手術時に殺菌剤として使用されるように、細胞に対する毒性が高く、血中に溶出した場合、溶血等の問題があった。
【0009】
【特許文献1】
特開平3−297469号公報
【特許文献2】
特開昭63−119774号公報
【特許文献3】
特開平2−119867号公報
【特許文献4】
特開昭62−172961号公報
【非特許文献1】
Andrade JD 他4名、「Surface and Blood Compatibility」,Trans.Am.Soc.Artif.Intern.Organs、米国、1987年、第XXXIII号、p.75−84
【非特許文献2】
竹本喜一著、「高分子と医療」、日本国、三田出版会、1989年、p.73
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、血小板の粘着、活性化を十分に抑制し、長期にわたり抗凝固活性を有する生体由来材料を安定に存在させることができ、かつ安全性が高いこと、そして用途の制限が少なく、製造方法が煩雑ではないためコストが小さくできる生体適合性組成物、およびそれを用いた生体適合性医療用具を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、下記(1)〜(9)の生体適合性組成物およびそれを用いた医療用具を提供する。
【0012】
(1)(A)抗凝固活性を示す生体由来材料と、(B)ガラス転移点が300K以下であるノニオン性重合体とを含み、該生体由来材料とが該ノニオン性重合体とが、化学結合していない生体適合性組成物。
【0013】
(2)(B)ノニオン性重合体が、さらに平衡含水率が10%以下である(1)に記載の生体適合性組成物。
【0014】
(3)(B)ノニオン性重合体が、水が50質量%以上含まれる溶媒には不溶で、50質量%未満である溶媒には可溶である(1)または(2)に記載の生体適合性組成物。
【0015】
(4)前記(A)生体由来材料が、ヘパリンおよび/またはウロキナーゼである(1)〜(3)のいずれかに記載の生体適合性組成物。
【0016】
(5)前記生体適合性組成物が、生理的等張液に1週間以上浸漬した後でも、該(A)生体由来材料が存在している(1)〜(4)のいずれかに記載の生体適合性組成物。
【0017】
(6)前記(B)ノニオン性重合体が、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートの単量体からなる重合体を主成分とする(1)〜(5)のいずれかに記載の生体適合性組成物。
【0018】
(7)前記アルコキシアルキル(メタ)アクリレートが、2−メトキシエチルアクリレートである(1)〜(6)のいずれかに記載の生体適合性組成物。
【0019】
(8)(1)〜(7)のいずれかに記載の生体適合性組成物を、医療用具に含有させる生体適合性医療用具。
【0020】
(9)前記医療用具が、人工腎臓用膜、血漿分離用膜、人工肺用膜、人工血管、カテーテルおよびステントからなる群から選択される少なくとも1つである(8)に記載の生体適合性医療用具。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明の生体適合性組成物(以下、本発明の組成物とも表記する)および生体適合性医療用具(以下、本発明の医療用具とも表記する)について、詳細に説明する。
【0022】
本発明の組成物は、(A)抗凝固活性を示す生体由来材料と、(B)ガラス転移点が300K以下であるノニオン性重合体とを含み、該生体由来材料と該ノニオン性重合体とが、化学結合していない生体適合性組成物である。そして、該ノニオン性重合体が、水が50質量%以上含まれる溶媒には不溶で、50質量%未満である溶媒には可溶であったり、また該生体由来材料が該ノニオン性重合体と化学結合していないが、生理的等張液に4週間以上浸漬した後でも、該生体由来材料が存在している生体適合性組成物である。また、本発明の医療用具は、本発明の組成物を含有している生体適合性医療用具である。
【0023】
本発明に用いられる(A)抗凝固活性を有する生体由来材料(以下、生体由来材料とも表記する)について説明する。
【0024】
ここで、「生体由来材料」とは、それが生物、より多くの場合は哺乳類、特にはヒトの体内に元来存在する物質のことである。本発明においては、生体由来材料が、生物体から直接抽出・精製された天然物であっても、遺伝子組み換え、化学合成等の方法により作製された人工物であっても構わない。好ましくは、生物体から抽出された生体由来材料である。
【0025】
このような生体由来材料であれば、生体由来材料が、元来生物体内で存在する状態に、より近い形態であるので、本発明の組成物の生体適合性という特性が、特によく現れるからである。このような生体由来材料は、公知の方法により調製されたものを、制限なく本発明で用いることができる。
【0026】
本発明で言うところの「抗凝固活性」とは、組織液、骨髄液、関節液、血液、血漿等の流動性のある体液が凝固するのを防止または抑制することができる、または、いったん凝固しても、凝固した部分が再溶解して再び流動性がある状態に、全体的または部分的に戻るような活性を有するという意味である。
【0027】
一例として血液凝固について具体的に説明する。血液は血管外に出ると、ゲル状となって流動性を失う。これは、血漿中の可溶性蛋白質フィブリノゲンが、不溶性のフィブリンに転化し,これが網状となって赤血球、白血球、血小板等の血球成分を取り込んでゲル化するからである。この現象を血液凝固(凝血)と呼ぶ。この凝血反応は、15種の凝固因子が関与した複雑な反応である。
【0028】
まず、血液凝固は、傷ついた血管壁に血小板等の血球、フォン・ヴィレブランド因子、第I因子(フィブリノゲン)等を粘着、凝集させることから始まる(一次止血)。血管の損傷を合図に周囲の組織から血液中に流入してきた第III因子(組織因子)により、二次止血の反応が始まる。第III因子と結合した活性型第VII因子(安定因子)は、第IX因子(クリスマス因子)を活性型に変化させ、活性型第IX因子は、第VIII因子(抗血友病因子)の助けを借りて第X因子を活性型に変化させる。
【0029】
次に、活性型となった第X因子(Xa)が第V因子(不安定因子)と共に、第II因子(プロトロンビン)を切断してトロンビンにし、このトロンビンが第I因子(フィブリノゲン)の一部を分解してフィブリンにする。そして最終段階で、第XIII(フィブリン安定化因子)がトロンビンにより活性化され、血栓が生じる。
【0030】
血液凝固における「抗凝固活性」とは、上記の血液凝固の各段階の少なくとも1つの過程を阻害あるいは抑制するか、またはフィブリンや血栓を溶解するような活性のことである。上記の血液凝固の過程から、より血液凝固を効率的に抑制するには、血液凝固の初期段階である血小板等の血球による血管壁への粘着、凝集を防止または抑制したり、生成した血栓を溶解させることである。前者の段階を抑制することができれば、その後に起こる凝血反応のすべてを防ぐことができ、本発明の組成物を使用する目的と、特に適合する。また、後者の段階であれば、血栓が生成しても溶解することができるので、長期にわたり本発明の組成物の特性である抗凝固活性能を示すことができる。
【0031】
本発明で用いることができる(A)抗凝固活性を有する生体由来材料は、広く公知のものを使用することができる。(A)抗凝固活性を有する生体由来材料として具体的には、ヘパリンナトリウム、低分子ヘパリン(ダルテパリンナトリウム) 、ヘパリンカルシウム等のヘパリン;デキストラン硫酸、アンチトロンビンIII(ATIII等の抗凝固因子剤;ウロキナーゼ等の血栓溶解剤;蛋白分解酵素剤、抗血小板凝集阻害剤、またはこれらの誘導体、他の化合物との混合体、複合体等が挙げられる。
【0032】
このような(A)抗凝固活性を有する生体由来材料の中でも、ヘパリン、低分子ヘパリン、ウロキナーゼ、およびこれらの誘導体、複合体が好ましい。
【0033】
(A)生体由来材料は、親水性溶媒に溶解させるのが好ましい。元来、生体由来材料は、体液等の水溶液と接触して存在していることが多いので、疎水性残基を有する生体由来材料であっても、親水性溶媒中に溶解させることができる。ここで親水性溶媒とは、水(HO)との相互作用が大きく、親和性が大きい溶媒のことをいう。具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール等の炭素数1〜3の低級脂肪族アルコール;アセトン、テトラハイドロフラン等のケトン類;ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド等の低級脂肪族アルデヒド;等が挙げられる。
【0034】
これらの親水性溶媒の中でも、(A)生体由来材料の溶解度が高く、さらに後述の(B)ノニオン性重合体の溶解性をも考慮すると、水と混合させる溶媒として、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、テトラハイドロフランが好ましい。
【0035】
本発明の組成物に用いられる(B)ノニオン性重合体とは、親水性溶媒に溶解したときにイオン化しない親水基を持っている重合体のことである。(B)ノニオン性重合体であれば、上記の主に水溶性である(A)生体由来材料と化学結合することなく混合できるので、製造方法が煩雑にならずコストも小さくできる。なお、本発明では、親水性溶媒に溶解したときにイオン化しない親水基を持っている単量体をノニオン性単量体と表記する。
【0036】
(B)ノニオン性重合体として具体的には、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート等のノニオン性単量体を重合させて合成されたものが好適に挙げられる。これらノニオン性単量体を重合することにより得られる重合体は、1種の単量体からなるホモポリマー、さらには2種以上の単量体からなるランダム共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体等のどのような共重合体であってもよい。本明細書においては、アクリレートとメタアクリレートとを総称して(メタ)アクリレートと表記する。
【0037】
さらに、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートとして具体的には、メトキシメチル(メタ)アクリレート、メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシイソプロピル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレート、エトキシメチル(メタ)アクリレート、エトキシエチル(メタ)アクリレート、エトキシプロピル(メタ)アクリレート、エトキシイソプロピル(メタ)アクリレート、エトキシブチル(メタ)アクリレート、プロポキシメチル(メタ)アクリレート、イソプロポキシメチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート等を例示できる。
【0038】
このようなアルコキシアルキル(メタ)アクリレートの中でも、経済性や操作性の点よりメトキシエチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシブチル(メタ)アクリレートが好ましい。より好ましくは、2−メトキシエチルアクリレートである。実使用上のおいては、重合体にしたときに、水が50質量%以上含まれる溶媒には不溶で、50質量%未満である溶媒には可溶であるノニオン性重合体も好ましい。(A)生体由来材料と混合するときに、親水性溶媒に溶解した(A)生体由来材料と、有機溶媒に溶解した(B)ノニオン性重合体とを混合することで、容易に本発明の組成物を調製することができるからである。
【0039】
また、(B)ノニオン性重合体は、独自に合成されたものでも、上市されているものでも使用することができる。上市されているノニオン性単量体としては、例えば、大阪有機化学工業社製の2−メトキシエチルアクリレート、メトキシトリエチレングリコールアクリレート、2−エトキシエチルアクリレート等が挙げられる。
【0040】
本発明の組成物に用いられる(B)ノニオン性重合体の性質として、ガラス転移点が300K以下であることが好ましい。このようなノニオン性重合体であれば、(A)生体由来材料が溶出した、または剥離した後に残る空孔を、ノニオン性重合体が伸縮することで自然に埋めることができる。したがって、血球成分が空孔に堆積、蓄積することによる血栓の発生を抑制することができる。より好ましくは、ガラス転移点273K以下のノニオン性重合体である。
ここでガラス転移点とは、重合体の非結晶部分の運動性が低い状態(ガラス状態)から、運動性の大きい状態(ゴム状態)に変化するときの境界温度を指す。一般に、ガラス転移点は、その重合体の分子量や結晶部分の量(結晶化度)により若干変化する。ここで、本発明でいうところのガラス転移点とは、示差走査型熱量測定法で測定したときの温度のことを指す。
【0041】
また、上記液体との親和性を保つ観点から、(B)ノニオン性重合体の平衡含水率が、ノニオン性重合体の質量に対して、10質量%以下であるものが好ましい。このようなノニオン性重合体であれば、後述の医療用具等の器材に塗着して液体と接触したときに、液体との親和性を保持することができ、また(A)生体由来材料の安定性が良好であるからである。より好ましくは、平衡含水率が8質量%以下である。この範囲であれば、本発明の組成物を水を含んだ溶媒に溶解したときに、(B)ノニオン性重合体の周囲に水分子が捕捉されるので、溶媒への溶解性が良好だからである。特に好ましくは、平衡含水率が5質量%である。なお、ここでいう平衡含水率は、重量法を用いて測定した。
【0042】
上記の(B)ノニオン性重合体の中でも、さらに好ましくは、ガラス転移点が300K以下で、かつ平衡含水率が10%以下、特に好ましくは、ガラス転移点が273K以下で、かつ平衡含水率が10%以下であるノニオン性重合体である。このような性質を有するものであれば、上記の特性に加えて、本発明の組成物としたときに、生体適合性が特に優れているからである。
【0043】
(B)ノニオン性重合体を合成するときの単量体には、上記の特性を損なわない範囲で、機械的物性または重合体の機能のさらなる改善を目的として、上記のアルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の単量体と組み合わせて、以下に例示されるようなノニオン性の単量体を用いることもできる。
【0044】
具体的には、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、アミノメチルアクリレート、アミノエチルアクリレート、アミノイソプロピルアクリレート、ジアミノメチルアクリレート、ジアミノエチルアクリレート、ジアミノブチルアクリレート、メタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、アミノメチルメタクリレート、アミノエチルメタクリレート、ジアミノメチルメタクリレート、ジアミノエチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、メチルメタアクリレート、エチルメタアクリレート、ブチルメタアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘキシルメタアクリレート等が挙げられる。これらの単量体は、1種単独でも2種以上を併用して使用することができる。
【0045】
これらの単量体の中でも、メチルアクリレート、エチルアクリレートが好ましい。このような単量体は、このような単量体は、容易に入手でき、器材との接着性も高く、さらには容易に重合できるからである。
【0046】
本発明に用いられる(B)ノニオン性重合体を溶解する溶媒に特に制限はないが、(A)生体由来材料が溶解した親水性溶媒と相溶な有機溶媒に溶解することが好ましい。後述する本発明の組成物の好ましい調製方法のなかで、親水性溶媒に溶解した(A)生体由来材料と有機溶媒に溶解した(B)ノニオン性重合体とを混合する方法もあるので、親水性溶媒と相溶な有機溶媒であれば、その他の相溶化剤等を使用しなくても、本発明の組成物を容易に調製することができるからである。また、このとき(A)生体由来材料および(B)ノニオン性重合体は、親水性溶媒と有機溶媒の混合溶媒中で析出することが少ない。
【0047】
このような親水性溶媒と相溶な有機溶媒の具体例としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられ、このうち、経済性や操作性の点より、特にメタノールが好ましい。これらの有機溶媒は、1種単独でも2種以上を併用して使用することができる。
【0048】
本発明では、上記の(A)生体由来材料と、(B)ノニオン性重合体とが溶解した溶液を、本発明ではコーティング溶液として用いることができる。このコーティング溶液中の(A)生体由来材料および(B)ノニオン性重合体の濃度は、本発明の特性に合う範囲であればよい。
【0049】
通常、本発明の組成物であるコーティング溶液における(A)生体由来材料の濃度は、0.01〜10.0質量%である。この範囲であれば、(B)ノニオン性重合体の濃度に関係なく、(A)生体由来材料がコーティング溶液中で析出することなく存在できる範囲だからである。好ましくは、0.05〜5.0質量%、より好ましくは0.10〜2.0質量%である。この範囲であれば、コーティング溶液の粘度がそれほど高くないので、後述の医療用具等にムラなく塗布できるからである。
【0050】
本発明の組成物を調製する方法に特に制限はない。(A)生体由来材料と(B)ノニオン性重合体の両方を含む組成物を調製する、広く公知の方法を用いることができる。具体的には、(A)生体由来材料を溶解した溶液と、(B)ノニオン性重合体を溶解した溶液とを混合する方法、(A)生体由来材料を(B)ノニオン性重合体と混錬し、混錬した組成物を溶媒に溶解する方法、(A)生体由来材料を溶解した溶液に(B)ノニオン性重合体を溶解させる方法、(B)ノニオン性重合体を溶解した溶液に(A)生体由来材料を溶解させる方法等が挙げられる。これらの中でも、(A)生体由来材料を溶解した溶液と、(B)ノニオン性重合体を溶解した溶液とを混合する方法が好ましい。これらの方法は、(A)生体由来材料と(B)ノニオン性重合体の少なくとも1つが溶液状態になっているので、混合した状態の混合溶液を上記のコーティング溶液として使用することができるからである。
【0051】
本発明の組成物は、抗凝固活性を要求することが好ましい器材に塗布して使用することができる。このような器材の代表例としては、医療用具が挙げられる。
医療用具として具体的には、人工腎臓用膜、血漿分離用膜、人工肺用膜、人工血管、カテーテル、ステント、スタイレット、シース、ガイドワイヤー等が挙げられる。
【0052】
これらの医療用具の中でも、好ましくは、人工腎臓用膜、血漿分離用膜、人工肺用膜、人工血管、カテーテル、ステントである。これらの医療用具は、血液との接触頻度が高く、本発明の組成物の特性を十分に生かせるからである。より好ましくは、人工肺用膜、カテーテルである。これらは、医療用具表面に血液との接触部位があるので、医療用具の表面に抗凝固活性を付与させるために、本発明の組成物を塗着させるのが容易だからである。ここで「塗着」とは、本発明の組成物を器材に導入することを指す。
【0053】
本発明の組成物を上記の医療用具等の器材に塗着させる方法に特に制限はない。塗着方法として具体的には、器材に組成物を長期間浸漬させる浸漬法、スプレーを使用して器材に吹き付ける方法、刷毛・植毛等により塗布する方法、器材を本発明の組成物が溶解した溶液と接触させる方法等が挙げられる。このような方法の中でも、器材を本発明の組成物が溶解した溶液と接触させる方法が好ましい。何故なら、コーティング層の制御等が容易だからである。このような塗着方法は、本発明の組成物を器材に塗着するために、1種の方法を複数回行っても、2種以上の方法を組み合わせて複数回行うこともできる。
【0054】
また、本発明の組成物を塗着する器材の材質に特に制限はない。本発明の組成物は、接触した被着体に対する酸化性、還元性等の変性活性を有さないので、幅広い材質の器材に塗着することが可能である。器材の材質として具体的には、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、熱可塑性ポリウレタン、熱硬化性ポリウレタン、架橋部を有するポリジメチルシロキサン等のシリコーンゴム、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニリデン、四フッ化ポリエチレン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアセタール、ポリスチレン、ABS樹脂およびこれらの樹脂の混合物;ステンレス、チタニウム、アルミニウム等の金属などが挙げられる。
【0055】
このような材質の中でも、本発明の組成物の接着性、耐久性等の観点から、ポリ塩化ビニル、熱可塑性ポリウレタン、ポリスルホン、ポリエーテルスルホンが好ましい。より好ましくは、熱可塑性ポリウレタン、ポリ塩化ビニルである。なお、上記の器材を構成する材料は、1種単独でも2種以上を併用して使用することができる。
【0056】
本発明の組成物を塗着させた(コーティングした)医療用具について、これを溶液と接触したときの抗凝固活性の保持期間は、通常、1週間以上である。これだけの保持期間があれば、本発明の組成物をコーティングした医療用具の寿命が良好であるからである。好ましくは、4週間以上である。この保持期間以上であれば、上記の医療用具を交換する期間を長くすることができ、患者の負担する医療費を大きく低減させることができるからである。この保持期間は、生理食塩水等の生理的等張液に、本発明の組成物を塗着させた医療用具を浸漬させることで測定することができる。
【0057】
本発明の組成物には、本発明の特性を損なわない範囲で広く公知の添加剤を使用することができる。このような添加剤は、本発明の組成物の性質を考慮して用いてもよいし、器材として使用する医療用具によって変化させることもできる。添加剤として具体的には、担体、賦形剤、防腐剤、安定剤、結合剤、酸化防止剤、膨化剤、等張剤、溶解補助剤、保存剤、緩衝剤、希釈剤等が挙げられる。これらの添加剤は、1種単独でも2種以上を併用して使用することができる。
【0058】
【実施例】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0059】
<実施例1>
2−メトキシエチルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製)15gを、1,4−ジオキサン(和光純薬工業(株)製)100g中に加え、開始剤であるアゾビスイソブチロニトリル(和光純薬工業(株)製)が0.1質量%となるように添加し、80℃、6時間重合を行った。得られたポリマー溶液をn−ヘキサン(和光純薬工業(株)製)中で沈殿させて、2−メトキシエチルアクリレートのポリマー(PMEA)を得た。
このPMEA0.05gを、メタノール(和光純薬工業(株)製)8gに溶解しA液とした。これとは別に、ヘパリンナトリウム(サイエンティフィック プロテイン ラボラトリーズ社製)0.004gを純水2gに溶解し、B液とした。このA液とB液とを混合し、PMEA濃度が約0.5質量%、ヘパリンナトリウムが約0.2質量%となる、本発明の組成物であるコーティング溶液を作製した。
【0060】
<実施例2>
2−メトキシエチルアクリレート20gと、ブチルメタアクリレート(和光純薬工業(株)製)0.5gを、1,4−ジオキサン100g中に加え、開始剤であるアゾビスイソブチロニトリルが0.1質量%となるように添加し、80℃、6時間重合を行った。得られたポリマー溶液をn−ヘキサン中で沈殿させて、2−メトキシエチルアクリレートとブチルメタアクリレートの含有モル比が、20対1であるノニオン性共重合体(P(MEA−BMA))を得た。
このP(MEA−BMA)0.05gを、メタノール8gに溶解しA液とした。このA液と、上記B液とを混合し、P(MEA−BMA)の濃度が約0.5質量%、ヘパリンナトリウムが約0.2質量%となる本発明の組成物であるコーティング溶液を作製した。
【0061】
<実施例3>
メトキシブチルアクリレート(大阪有機化学工業(株)製)15gを、1,4−ジオキサン100g中に加え、開始剤であるアゾビスイソブチロニトリルが0.1質量%となるように添加し、80℃、12時間重合を行った。得られたポリマー溶液をn−ヘキサン中で沈殿させて、ポリメトキシブチルアクリレート(PMBA)を得た。
このPMBA0.05gを、メタノール8gに溶解し、A液とした。このA液と、上記B液とを混合し、最終的にPMBA濃度が約0.5質量%、ヘパリンナトリウムが約0.2質量%となる本発明の組成物であるコーティング溶液を作製した。
【0062】
<実施例4>
実施例2において、2−メトキシエチルアクリレートの代わりに、実施例3で使用したメトキシブチルアクリレートを用いて、ブチルメタアクリレートとの含有モル比が、15対1であるノニオン性共重合体(P(MBA−BMA)を合成した。その他の方法は、実施例2と全く同一にして、コーティング溶液を作製した。
【0063】
<比較例1>
実施例1と同様にして、2−メトキシエチルアクリレート15gを、1,4−ジオキサン100g中に加え、開始剤であるアゾビスイソブチロニトリルが0.1質量%となるように添加するが、重合は行わなかった。この溶液をC液とする。そして、C液と、上記B液とを混合し、最終的にヘパリンナトリウムが約0.2質量%となるように、コーティング溶液を作製した。
【0064】
<比較例2>
N,N−ジメチルアクリルアミド(和光純薬工業(株)製)15gを、1,4−ジオキサン100g中に加え、開始剤であるアゾビスイソブチロニトリルが0.1質量%となるように添加し、80℃、6時間重合を行った。得られたポリマー溶液をn−ヘキサン中で沈殿させて、N,N−ジメチルアクリルアミドのポリマー(PDMAA)を得た。
このPDMAA0.05gを、エタノール(和光純薬工業(株)製)8gに溶解し、C液とした。このC液と、上記B液とを混合し、PDMAA濃度が約0.5質量%、ヘパリンナトリウムが約0.2質量%となる、コーティング溶液を作製した。
【0065】
<比較例3>
N,N−ジメチルアクリルアミド20gと、ブチルメタアクリレート0.5gとを、1,4−ジオキサン100g中に加え、開始剤であるアゾビスイソブチロニトリルが0.1質量%となるように添加し、80℃、6時間重合を行った。
得られたポリマー溶液を、n−ヘキサン中で沈殿させて、N,N−ジメチルアクリルアミドとブチルメタアクリレートの含有モル比が、30対1であるノニオン性共重合体(P(DMAA−BMA))を得た。
このP(DMAA−BMA)0.05gを、エタノール8gに溶解し、C液とした。このC液と、上記B液とを混合し、P(DMAA−BMA) 濃度が約0.5質量%、ヘパリンナトリウムが約0.2質量%となる、コーティング溶液を作製した。
【0066】
上記の実施例1〜4、比較例1〜3で作製したコーティング溶液について、以下の(I)血小板粘着試験、(II)表面ヘパリン活性の測定、(III)トロンビン−アンチトロンビン複合体(TAT)生成量の測定、(IV)血栓付着状態の観察を行った。
また、それぞれの実施例1〜4、比較例2〜3(比較例1を除く)で使用したポリマー(重合体)について、(V)平衡含水率、(VI)ガラス転移点を測定した。以下に、試験方法の詳細を記す。
【0067】
(I)血小板粘着試験
実施例1〜4、比較例1〜3のコーティング溶液を、ポリ塩化ビニル製のシート(テルモ(株)製)上にコーティングし、コート皮膜を形成させた(以下、コーティングシートと表記する)。このコーティングシートの表面に、クエン酸ナトリウムで抗凝固させたヒトの新鮮多血小板血漿を30分間接触させ、生理食塩水(テルモ(株)製)でリンスした。その後、グルタルアルデヒド(和光純薬工業(株)製)で固定し、コーティングシートの0.5mm×0.5mm四方に粘着している血小板の形状と数を電子顕微鏡で観察・計数し、以下のモルフォロジカルスコア(MS)を算出した。
まず、血小板の形態変化の進行度により、1型、2型、3型(1→2→3)に分類し、それぞれの形状を示す血小板の数をn,n,nとする。そして、以下の数式に従い、MSを算出した。結果を、下記の第1表に示す。
MS=n×1+n×2+n×3
【0068】
【表1】
Figure 2004298223
【0069】
(II)表面ヘパリン活性の測定
(i)試料の調製
実施例1〜4、比較例1〜3で調製したコーティング溶液を、直径1.5mm×長さ70mmのポリウレタン製のカテーテル(ペレセン、ダウケミカル社製)に、ディップ法によりコーティングした(以下、コーティングカテーテルと表記する)。このコーティングカテーテルを、直径4.0mm×長さ30cmの塩化ビニル製のチューブ(PVCチューブ)(テルモ(株)製)に入れて、ここに生理食塩水(テルモ(株)製)2mlを入れた。そして、このチューブを円状にまるめ両端をコネクターでつなぎ、生理食塩水が漏出しないようにシールする。その後、チューブを固定し、37℃50RH%の条件下、1200cm/minの速度で1ヶ月間回転させた。1ヶ月後に、チューブからコーティングカテーテルを取り出し、チューブ内に残った溶液と、塩化ビニル製のチューブに入れる前のカテーテルを、発色性合成基質法の試料とした。
【0070】
(ii)発色性合成基質法
この発色性合成基質法は、CHROMOGENIX社製の「テストチーム ヘパリンS」キットを用い、添付されている説明書に従い行った。
日立U4000形分光光度計を用いて、波長405nmの吸光度を測定することにより、試料のヘパリン活性を測定した。これとは別に、基質の標準液を同様に調製して吸光度を測定し、得られた標準直線から、試料中のヘパリン活性を算出した。
下記に標準直線の数式(1)を、表面ヘパリン活性の測定結果を上記の第1表に示す。
【0071】
Y=αX+β・・・・・・(1)
X:標準物質の活性(IU/cm)、Y:波長405nmにおける吸光度
α=−0.5966(傾き)
β=0.5768(切片)
r=0.9993(相関係数)
【0072】
(III)トロンビン−アンチトロンビン複合体(TAT)生成量の測定
(i)試料の調製
(II)で作製したコーティングカテーテルを、血液と接触する部分が全長25cmとなるように、ポリ塩化ビニル製の内径3.1mmチューブ(PVCチューブ)に入れた。次に、チューブ両端に三方活栓を接合しシールした。三方活栓に血液バック(内容量50ml)(テルモ(株)製)から導入されたシリコーンチューブをつなぎ、循環速度13ml/min、ヘパリン添加量0.75U/mlの条件で、ペリフェラルポンプを使用して血液を3時間循環させた。3時間経過後、チューブから溶液を回収した。
【0073】
(ii)TAT生成量の測定方法
SRL社製TAT測定用容器に、所定時間毎に回路より血液を採取し、SRL社処方の方法に従い血漿を採取した。得られた血漿は凍結保存し、酵素免疫測定法(EIA法)によりTAT生成量を測定した。
結果を、上記の第1表に示す。
【0074】
(IV)血栓付着状態の観察
(III)で、チューブから回収したコーティングカテーテルについて、その表面に付着した血栓を、光学顕微鏡(キーエンス社製)を使用して観察した。実施例1〜4の結果を図1に、比較例1〜3の結果を図2に示す。
【0075】
(V)平衡含水率の測定
実施例1〜4、比較例2〜3で使用したポリマー(重合体)約0.1gをとり、7日間順水中に浸して膨潤させた(以下、含水ポリマーと表記する)。この含水ポリマー0.05gを取り、あらかじめ質量を測定しておいた酸化アルミ板の底に薄く広げた。酸化アルミ板にピンホール(直径1mm程度)を開け、真空乾燥後、その質量減少分を含水量とした。そして、平衡含水率(Wc:質量%)は、以下の数式(2)に従い算出した。結果を、下記の第2表に示す。
【0076】
Wc(質量%)=[(W−W)/W]×100・・・・・・(2)
:ポリマーの乾燥質量(g)、W:含水ポリマーの質量(g)
【0077】
【表2】
Figure 2004298223
【0078】
(VI)ガラス転移点の測定
(V)平衡含水率の測定で使用した含水ポリマー0.5gを、同様に酸化アルミ板の底に薄く広げた。示差走査熱量計(DSC−50、島津製作所製)を用いて、降温速度2.5℃/minで、室温から−100℃まで冷却し、その状態で10分間保持した。その後、昇温速度2.5℃/minで−100℃から50℃まで昇温し、ガラス転移点を測定した。結果を、上記の第2表に示す。
【0079】
実施例1〜4については、血小板粘着試験でのMS値が20以下と小さく、表面ヘパリン活性は0.001IU/cm以上で、TAT生成量は180分後の値で、100ng/ml以下となっており、生体適合性組成物として好適である。
また、使用したポリマーの平衡含水率は10%以下であり、かつガラス転移点が273K(0℃)以下であることも確認できた。
【0080】
一方、比較例1〜3については、血小板粘着性の比較的小さい組成物(比較例3)も存在するが、生体由来材料であるヘパリンの保持力に影響を与える、ポリマーの平衡含水率が80%以上と大きいので、生体適合性組成物として好適ではないことが示されている。
【0081】
【発明の効果】
本発明の生体適合性組成物は、医療用具等の器材に使用したときに、血小板の粘着、活性化を十分に抑制し、長期にわたり抗凝固活性を有する生体由来材料を安定に存在させることができている。また、生体由来材料を使用しているが、血液等の感染性の高い生体由来材料から採取しているのではないので、安全性は、比較的高い。そして、医療用具等の器材に適用しても用途の制限が少なく、製造方法が煩雑ではないためコストが小さくできる生体適合性組成物となっている。
【0082】
さらに、本発明の組成物は、固体、溶液の状態でも使用することができ、また、本発明の組成物を、(A)生体由来材料、(B)ノニオン性重合体を混合した状態でも、それぞれ別々の状態でも提供することができる。特に、本発明の組成物は、生体適合性に優れているので、医療用具に塗着することができる。したがって、本発明の生体適合性組成物は、医療用生体適合性材料として好適である。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、TAT生成量を測定するために、実施例1〜4のコーティング溶液を使用したコーティングカテーテル表面に付着した血栓の付着状態を観察した写真像である。
(a)実施例1のコーティング溶液を塗着させたコーティングカテーテル表面に付着した血栓の付着状態を観察した写真像である。
(b)実施例2のコーティング溶液を塗着させたコーティングカテーテル表面に付着した血栓の付着状態を観察した写真像である。
(c)実施例3のコーティング溶液を塗着させたコーティングカテーテル表面に付着した血栓の付着状態を観察した写真像である。
(d)実施例4のコーティング溶液を塗着させたコーティングカテーテル表面に付着した血栓の付着状態を観察した写真像である。
【図2】図2は、TAT生成量を測定するために、比較例1〜3のコーティング溶液を使用したコーティングカテーテル表面に付着した血栓の付着状態を観察した写真像である。
(e)比較例1のコーティング溶液を塗着させたコーティングカテーテル表面に付着した血栓の付着状態を観察した写真像である。
(f)比較例2のコーティング溶液を塗着させたコーティングカテーテル表面に付着した血栓の付着状態を観察した写真像である。
(g)比較例3のコーティング溶液を塗着させたコーティングカテーテル表面に付着した血栓の付着状態を観察した写真像である。

Claims (9)

  1. (A)抗凝固活性を示す生体由来材料と、(B)ガラス転移点が300K以下であるノニオン性重合体とを含み、該生体由来材料と該ノニオン性重合体とが、化学結合していない生体適合性組成物。
  2. (B)ノニオン性重合体が、さらに平衡含水率が10%以下である請求項1に記載の生体適合性組成物。
  3. (B)ノニオン性重合体が、水が50質量%以上含まれる溶媒には不溶で、50質量%未満である溶媒には可溶である請求項1または2に記載の生体適合性組成物。
  4. 前記(A)生体由来材料が、ヘパリンおよび/またはウロキナーゼである請求項1〜3のいずれかに記載の生体適合性組成物。
  5. 前記生体適合性組成物が、生理的等張液に1週間以上浸漬した後でも、該生体由来材料が存在している請求項1〜4のいずれかに生体適合性組成物。
  6. 前記(B)ノニオン性重合体が、アルコキシアルキル(メタ)アクリレートの単量体からなる重合体を主成分とする請求項1〜5のいずれかに記載の生体適合性組成物。
  7. 前記アルコキシアルキル(メタ)アクリレートが、2−メトキシエチルアクリレートである請求項1〜6のいずれかに記載の生体適合性組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載の生体適合性組成物を、医療用具に含有させる生体適合性医療用具。
  9. 前記医療用具が、人工腎臓用膜、血漿分離用膜、人工肺用膜、人工血管、カテーテルおよびステントからなる群から選択される少なくとも1つである請求項8に記載の生体適合性医療用具。
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