JPH09105050A - パイル織機におけるパイル倍率測定方法および装置 - Google Patents

パイル織機におけるパイル倍率測定方法および装置

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JPH09105050A
JPH09105050A JP1820496A JP1820496A JPH09105050A JP H09105050 A JPH09105050 A JP H09105050A JP 1820496 A JP1820496 A JP 1820496A JP 1820496 A JP1820496 A JP 1820496A JP H09105050 A JPH09105050 A JP H09105050A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 簡単な手段で容易にパイル倍率を得ることに
ある。 【解決手段】 パイル織機におけるパイル倍率測定方法
は、パイル織物の地製織時にはそのときの地経糸ビーム
の回転量に関する第1のデータおよびパイル経糸ビーム
の回転量に関する第2のデータをメモリに記憶してお
き、パイル製織時には前記メモリに記憶されている第1
および第2のデータを読み出し、読み出した第1および
第2のデータと、パイル製織時の地経糸ビームの回転量
に関する第3のデータおよびパイル経糸ビームの回転量
に関する第4のデータとから、パイル倍率を算出するこ
とを含む。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、パイル織機におけ
るパイル織物のパイル倍率を測定する方法および装置に
関する。
【0002】
【従来の技術】パイル織物の品質管理のパラメータの1
つとして、パイルの重さがある。このパイルの重さは、
パイル経糸の消費量と地経糸の消費量との比、すなわち
パイル倍率によって把握することができる。一方、パイ
ルの重さを決定する要因の1つとしてパイルの高さがあ
る。このパイルの高さが規格通りに揃っていることがパ
イル織物の品質の良否を決める重要な要素になってい
る。このため、パイルの重さが所定の目標値になるよう
に、織機をパイル倍率の測定結果に基づいて制御するこ
とが行われている。パイル倍率は、パイル布地の単位長
さ当たりの地経糸の使用量に対するパイル経糸の使用量
の比率によって定義される。
【0003】この種のパイル倍率を測定する方法および
装置の1つとして、地経糸が巻かれているいわゆる地経
糸ビームおよびパイル経糸が巻かれているいわゆるパイ
ル経糸ビームの回転数をそれぞれセンサで検出し、検出
した回転数から経糸ビーム毎の巻径を求め、求めた巻径
と糸送出用減速比とからビーム毎の経糸送出速度を求
め、求めた経糸送出速度からパイル倍率を得る方法およ
び装置がある(特開平3−27150号公報、特開平4
−289242号公報)。
【0004】この従来技術は、経糸送出速度が経糸の使
用量に比例することから、経糸送出速度の比をパイル倍
率として利用している。しかし、このような従来技術で
は、パイル倍率の算出に、減速比、モータの回転数等、
多くのパラメータを必要とし、その分センサの数も多く
なり、その結果装置が複雑化し、高価になる。
【0005】
【解決しようとする課題】本発明は、簡単な手段で容易
にパイル倍率を得ることができるようにするものであ
る。
【0006】
【解決手段、作用、効果】本発明のパイル倍率測定方法
は、パイル織物の地製織時にはそのときの地経糸ビーム
の回転量に関する第1のデータおよびパイル経糸ビーム
の回転量に関する第2のデータをメモリに記憶してお
き、パイル製織時には前記メモリに記憶されている第1
および第2のデータを読み出し、読み出した第1および
第2のデータと、パイル製織時の地経糸ビームの回転量
に関する第3のデータおよびパイル経糸ビームの回転量
に関する第4のデータとから、パイル倍率を算出するこ
とを含む。
【0007】本発明のパイル倍率測定装置は、地経糸ビ
ームの回転量に関するデータを測定する第1の測定手段
と、パイル経糸ビームの回転量に関するデータを測定す
る第2の測定手段と、パイル織物の地製織時に前記第1
および第2の測定手段から出力される両データを記憶す
るメモリと、パイル製織時に、前記メモリに記憶されて
いる両データを読み出し、読み出した両データと、パイ
ル製織時に前記第1および第2の測定手段から出力され
る両データとから、パイル倍率を算出するパイル倍率計
算手段とを含む。
【0008】本発明において、用語「地」とはパイル織
物のパイルに形成されない部分のことをいい、用語「地
経糸」とはパイル経糸を把持する地組織を形成する経糸
のことをいい、用語「パイル経糸」とはパイルに形成さ
れる経糸のことをいう。「経糸ビームの回転量」とは、
経糸が巻かれている経糸ビーム自体、モータのような経
糸ビーム駆動用回転源、歯車のような経糸ビーム用回転
伝達手段等、経糸ビームの回転に関係する回転体の回転
量とすることができる。
【0009】「経糸ビームの回転量に関するデータ」と
は、たとえば、回転体の回転速度、その逆数等、回転体
の回転数に関係するデータとすることができる。具体的
には、たとえば、単位製織長さ当たりの回転体の回転
数、単位ピック数当たりの回転体の回転数、単位時間当
たりの回転体の回転数、回転体の単位回転数当たりの製
織長さ、回転体の単位回転数当たりのピック数、回転体
の単位回転数当たりの時間等とすることができる。
【0010】地経糸ビームの回転量に関するデータおよ
びパイル経糸ビームの回転量に関するデータは、たとえ
ば、経糸送出用モータ毎に設けられているパルス発生器
から出力されるパルスを単位期間毎に計数することによ
り、経糸送出用モータの単位期間当たりの回転数のよう
な値として得ることができる。「単位期間」とは、単位
製織長さ、単位ピック数(単位緯入れ回数)、単位経過
時間等とすることができる。
【0011】本発明は、タオルのようなパイル織物を単
位製織長(たとえば、1枚)だけ製織する間に経糸ビー
ムの巻径がほとんど変化しないことに着目して、地の製
織時の地経糸送出用モータおよびパイル経糸送出用モー
タの回転量(たとえば、単位期間当たりの回転数)等、
地経糸ビームおよびパイル経糸ビームの回転量に関する
データをそれぞれNBbおよびNTbとし、パイルの製織時
の地経糸送出用モータおよびパイル経糸送出用モータの
回転量(たとえば、単位期間当たりの回転数)をそれぞ
れNBpおよびNTpとしたとき、以下の式の演算をするこ
とによりパイル倍率Pを得る。
【0012】P=(NTp÷NBp)×(NBb÷NTb)
【0013】上記のように、本発明によれば、地製織時
の地経糸ビームの回転量に関する第1のデータおよびパ
イル経糸ビームの回転量に関する第2のデータと、パイ
ル製織時の地経糸ビームの回転量に関する第3のデータ
およびパイル経糸ビームの回転量に関する第4のデータ
とからパイル倍率を算出するようにしたから、単位製織
長当たりのより具体的にはタオルを1枚製織する間の経
糸ビームの巻径はほとんど変化しないこととあいまっ
て、経糸の消費長さを算出するために経糸ビームの巻径
を求める必要がない。したがって、経糸ビームの巻径を
検出する特殊なセンサおよび減速比等を用いることな
く、少ない演算回数でパイル倍率を正確に得ることがで
きる。
【0014】地経糸およびパイル経糸の消費量は、それ
ら経糸の準備条件およびパイル織物の製織条件等の相違
に起因して互いに相違する。このため、さらに、地製織
時の地経糸の消費長さとパイル経糸の消費長さとの比に
応じた修正値Kbをパイル倍率の算出に用いることが好
ましい。これにより、パイル倍率を正確な得ることがで
きる。
【0015】パイル倍率は、パイル製織中の一定時間毎
に算出してもよいし、製品単位長さの製織をするたびに
算出してもよい。修正値Kbは、1程度または1以上の
値、たとえば1〜2の値、好ましくは1.1程度の値と
することができ、さらには試織時等において予め求めた
値とすることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】図1および図2を参照するに、パ
イル織機は、パイルに形成されるパイル経糸12を送り
出す送出し装置14と、パイル経糸を把持する地組織を
形成する地経糸16を送り出す張力制御系の送出し装置
18とを含む。
【0017】図1に示すパイル経糸12用の送出し装置
14は、位置制御系の装置である。パイル経糸12は、
トップビームすなわちパイル経糸ビーム20に巻き付け
られており、テンションロール22を経て、織り前24
の方向へ送り出される。テンションロール22は、揺動
アーム26の一端部に回転可能に支持されている。テン
ションロール22は、その他端部において支点軸28に
揺動運動可能に支持されている。
【0018】揺動アーム26の揺動位置は、近接センサ
のような位置検出器30により電気信号として検出され
る。位置検出器30の検出信号は、増幅器32を介して
加え合わせ点34に負帰還される。揺動アーム26の目
標位置は、目標位置設定器36から加え合わせ点34に
与えられる。加え合わせ点34からの信号は、揺動アー
ム26の位置ひいてはテンションロール26の位置と目
標位置との偏差に対応する位置偏差信号であり、PI制
御器38に供給される。
【0019】PI制御器38は、比例・積分・微分動作
をするいわゆるPID制御器のような、少なくとも比例
動作および積分動作をする制御器であり、上記位置偏差
信号を基に速度指令信号を、加え合わせ点40を介して
駆動増幅器42に供給する。速度指令信号は、パイル経
糸送出し用の電動機44の回転速度を制御する信号であ
り、駆動増幅器42において増幅されて電動機44を回
転させる駆動信号として作用する。電動機44は、駆動
増幅器42から出力される駆動信号により回転されて、
歯車46を介してパイル経糸ビーム20を送出し方向に
回転させる。
【0020】電動機44の回転量は、パルス発生器48
により検出される。パルス発生器48から出力されるパ
ルス信号P1 は、入力するパルス信号P1 をその周波数
に比例した電圧に変換するF/V変換器50と、電動機
44の実際の回転速度VT を算出する速度計算器52と
に供給される。F/V変換器50で変換された信号は、
電動機44の回転速度に対応するフィードバック信号と
して、加え合わせ点40に負帰還される。
【0021】速度計算器52から出力される回転速度V
T は、パイル経糸ビーム20の回転量に対応する信号す
なわちデータであり、またパイル経糸12の単位時間当
たりの送り量に比例する信号すなわちデータである。こ
のため、速度計算器52から出力される回転速度VT
は、パイル倍率Pの算出に用いる数値すなわちデータN
T としてパイル倍率計算器54の一方の入力端子に供給
される。
【0022】速度計算器52としては、たとえば、図3
に示すように、一定時間T毎にパルス信号P2 を発生す
るタイマ56と、パルス発生器48からのパルス信号P
1 を計数しかつパルス信号P2 がタイマ56から供給さ
れるたびに計数値をリセットされるカウンタ58とを用
いることができる。これの代わりに、図4に示すよう
に、パルス発生器48からのパルス信号P1 を計数しか
つ製品単位長さの製織の開始または終了に対応する製品
単位信号Bが供給されるたびに計数値をリセットされる
カウンタ60を速度計算器52として用いることができ
る。
【0023】図3に示す速度計算器52を用いる場合、
カウンタ58の計数値が電動機44の実際の回転速度V
T に対応したパイル経糸ビームの回転量に関するデータ
NTとしてパイル倍率計算器54に供給されるととも
に、タイマ56からのパルス信号P2 がタイミング信号
としてパイル倍率計算器54に供給される。これに対
し、図4に示す速度計算器52を用いる場合、カウンタ
60の計数値が電動機44の実際の回転速度VT に対応
したパイル経糸ビームの回転量に関するデータNTとし
てパイル倍率計算器54に供給され、製品単位信号Bが
開口パターンコントローラ62からカウンタ60および
パイル倍率計算器54に供給される。
【0024】地経糸16用の送出し装置18は、張力制
御系の装置である。地経糸16は、図2に示すように、
ボトムビームすなわち地経糸ビーム64に巻き付けられ
ており、テンションロール66を経て、織り前24の方
向へ送り出される。地経糸16に作用する張力は、テン
ションロール66に加わる荷重をロードセル70により
電気信号として検出される。
【0025】ロードセル70の検出信号は、増幅器72
を介して加え合わせ点74に負帰還される。送出し時に
おける地経糸16の張力の目標値は、張力設定器76か
ら加え合わせ点74に与えられる。加え合わせ点74か
らの信号は、地経糸16の張力と目標張力との偏差に対
応する張力偏差信号であり、PI制御器78に供給され
る。
【0026】PI制御器78は、比例・積分・微分動作
をするいわゆるPID制御器のような、少なくとも比例
動作および積分動作をする制御器であり、上記張力偏差
信号を基に速度指令信号を、加え合わせ点80を介して
駆動増幅器82に供給する。速度指令信号は、地経糸送
出し用の電動機84の回転速度を制御する信号であり、
駆動増幅器82において増幅されて電動機84を回転さ
せる駆動信号として作用する。電動機84は、駆動増幅
器82から出力される駆動信号により回転されて、歯車
86を介して地経糸ビーム64を送出し方向に回転させ
る。
【0027】電動機84の回転量は、パルス発生器88
により検出される。パルス発生器88から出力されるパ
ルス信号P3 は、入力するパルス信号P3 をその周波数
に比例した電圧に変換するF/V変換器90と、電動機
84の実際の回転速度VB を算出する速度計算器92と
に供給される。F/V変換器90で変換された信号は、
電動機84の回転量に対応するフィードバック信号とし
て、加え合わせ点80に負帰還される。
【0028】速度計算器92から出力される回転速度V
B は、地経糸ビーム64の回転量に対応する信号すなわ
ちデータであり、また地経糸16の単位時間当たりの送
り量に比例する信号すなわちデータである。このため、
速度計算器92から出力される回転速度VB は、パイル
倍率Pの算出に用いる数値すなわちデータNB としてパ
イル倍率計算器54の他方の入力端子に供給される。速
度計算器92も、速度計算器52と同様に、タイマ56
とカウンタ58とを備えた図3に示す回路、または、カ
ウンタ60を備えた図4に示す回路を用いることができ
る。
【0029】開口パターンコントローラ62は、一対の
センサ94で検出した織機の主軸96の回転角度を基
に、経糸の開口パターンを開口装置に指令する装置であ
り、またパイルを形成することを指示するパイル指令A
と製品単位信号Bとを発生する。図5(A)において、
「地」はパイルが形成されない布地部分を示し、「パイ
ル」はパイルが形成される布地部分を示す。
【0030】パイル指令Aと製品単位信号Bとは、図5
(A)に示す入力パターン例のように設定されるものと
する。すなわち、ステップ1〜nを1リピートとした場
合、製品単位信号Bは1つのリピートの始まりを示すス
テップ1においてのみ発生され、各パイル指令Bは1つ
のリピート内のパイル製織期間内の各ステップにおいて
発生されるように、設定される。そして、パイル織機
は、公知の方法により、たとえばこのパイル指令に基づ
いてパイル布地を製織する。具体的には、このパイル指
令が発生されると、パイル織機は、パイル経糸を緯入れ
毎に周期的に送り、筬打ちを変化させて製織することに
より、パイル布地を製織する。
【0031】図5(B)に示すように、パイル倍率計算
器54は、地製織時には両速度計算器52,92から供
給される回転速度VTb,VBbを地製織時の経糸ビームの
回転量に関するデータNBb,NTbとしてメモリ94に記
憶する。次いで、パイル指令Aを受けたことにより、地
製織時のデータNBb,NTbをメモリ94から読み出し、
また速度計算器52,92から供給される回転速度VT
p,VBpをパイル製織時の経糸ビームの回転量に関する
データNTp,NBpとして所定の周期で取り込み、読み出
したデータNBb,NTbと取り込んだデータNTp,NBpと
を用いて式(1)の演算を行うことにより、パイル倍率
Pを算出する。
【0032】 P=(NTp÷NBp)×(NBb÷NTb) ・・・(1)
【0033】式(1)によりパイル倍率が得られる理由
は、次のとおりである。
【0034】パイル経糸12用の電動機44の回転数を
NT 、ビーム20の巻径をBT 、歯車46の減速比をG
T とすると、パイル経糸12の送り速度VT は式(2)
により得られる。
【0035】 VT =NT ・BT ・GT ・・・・・(2)
【0036】同様に、地経糸16用の電動機84の回転
数をNB 、ビーム64の巻径をBB、歯車86の減速比
をGB とすると、地経糸16の送り速度VB は式(3)
により得られる。
【0037】 VB =NB ・BB ・GB ・・・・・(3)
【0038】ここで、パイル製織時の式(2)および
(3)のパラメータに添え字"p" を付し、地製織時の式
(2)および(3)のパラメータに添え字"b" を付し
て、パイル製織時のパイル経糸送出し速度VTpおよび地
経糸送出し速度VBpならびに地製織時のパイル経糸送出
し速度VTbおよび地経糸送出し速度VBbを表わすと、そ
れぞれ、式(4),(5),(6)および(7)とな
る。
【0039】 VTp=NTp・BTp・GT ・・・・・(4)
【0040】 VBp=NBp・BBp・GB ・・・・・(5)
【0041】 VTb=NTb・BTb・GT ・・・・・(6)
【0042】 VBb=NBb・BBb・GB ・・・・・(7)
【0043】ところで、パイル製織時におけるパイル経
糸12の送り量(消費量)と地経糸16の送り量との比
Kp 、および地製織時におけるパイル経糸12の送り量
と地経糸16の送り量との比Kb は、それぞれ、式
(8)および(9)により得られる。
【0044】
【数1】
【0045】
【数2】
【0046】また、式(9)から式(10)を得ること
ができる。
【0047】
【数3】
【0048】ここで、単位製織長(1枚)のタオルを製
織中の各ビームの巻径BT ,BB の変化は、要求される
パイル倍率の精度に比べて微々たるものであることか
ら、巻径の変化がないものと考えれば、式(11)およ
び(12)が得られる。
【0049】BTp=BTb ・・・・・(11)
【0050】BBp=BBb ・・・・・(12)
【0051】また、パイル倍率PはKp そのものである
から、P=Kp である。よって、パイル倍率Pは、式
(13)により得られる。
【0052】
【数4】
【0053】さらに、地の部分では一般に平組織に近い
状態であることから、地製織時におけるパイル経糸およ
び地経糸の消費量の比Kb を1とすることができる。そ
の結果、パイル倍率Pは、前記した式(1)により得る
ことができる。
【0054】ところで、Kb =1、としたが、より正確
には、Kb ≧1である。この理由として、以下のことが
考えられる。
【0055】地経糸およびパイル経糸は、一般に、準備
条件(糸の種類、用いる糊の材料等)や、製織条件(経
糸の張力等)等が互いに異なるから、経糸が繰り出され
てから織り込まれるまでの経糸の伸び度合いや経糸の屈
曲度合いが互いに異なり、地製織時に張力制御をされて
いる経糸ビームの回転量も互いに異なる。
【0056】なぜならば、地経糸に作用する張力はパイ
ル経糸に作用する張力より大きくなるように設定されて
おり、地経糸が経糸ビームから繰り出されて織り込まれ
るまでの時間はパイル経糸のそれに比べて非常に大きい
ため、地経糸は織り込まれる時点においてパイル経糸に
比べ大きく伸びている。このため、地経糸は、この伸び
た分だけ消費されない。
【0057】また、パイル経糸に対する張力の設定値は
地経糸に対するそれよりも低いから、緯糸が織り込まれ
たときの経糸の屈曲率がパイル経糸と地経糸とで異な
る。実際には、経糸の張力が高いと、緯糸が屈曲し、経
糸の張力が低いと、経糸が屈曲する。このため、地製織
時であっても、低い張力に設定されたパイル経糸の消費
量は、緯糸により屈曲された分だけ、地経糸の消費量に
比べて多くなる。
【0058】上記のような理由から、地製織時の経糸の
消費長さの比Kbは、1以上、より具体的には1よりも
大きくなる。
【0059】計数Kbは、予め求めた値であってもよ
い。たとえば、製織に先立って行われる試織時(たとえ
ば、織機の調整時)に計数Kbを求める、織付け・調整
時に製織された織物を分解して地経糸およびパイル経糸
の長さを実際に測定することにより計数Kbを求める、
同種のパイル織地の過去の製織時に用いた各種の値から
計数Kbを選択する、類似のパイル織地の過去の製織時
の経験から得た値を計数Kbとして用いる、およびそれ
らの組み合わせにより計数Kbを決定する等の手法によ
り、計数Kbを予め求めることができる。
【0060】具体的には、Kbを求める手法として、以
下の2つが好適である。
【0061】1つは、地製織時の経糸ビームの回転速度
をそれぞれ求めて式(14)の演算をする方法である。
【0062】Kb =VTb÷VBb ・・・・・(14)
【0063】具体的には、回転源の回転数NT および経
糸ビームの巻径Bを実測し、それらと歯車の減速比Gと
を式(9)代入してKbを得る方法である。
【0064】他の1つは、地製織時のパイル経糸の消費
長さLTbと地経糸の消費長さLBbとを実測し、式(1
5)の演算をすることにより得る方法である。
【0065】Kb=LTb÷LBb ・・・・・(15)
【0066】つまり、Δtを消費長さの差とすると、V
TbおよびVBbはそれぞれ式(16)および(17)の関
係にある。
【0067】VTb=LTb÷Δt ・・・・・(16)
【0068】VBb=LBb÷Δt ・・・・・(17)
【0069】したがって、LTb=VTb×Δt,LBb=V
Bb×Δtとなるから、式(14)および(15)のいず
れを用いても、Δtが消去されて、より正しいKbを得
ることができる。
【0070】消費長さLTbおよびLBbは、いずれも、す
でに述べたように、試織時、織付け時等に製織した地織
部分をたとえば1〜20cm程度分解してそれぞれの経
糸を取り出し、各経糸の長さを計測することにより、予
め求めることができる。
【0071】計数Kbは、たとえば、1〜2程度の値、
好ましくは1.1程度の値とすることができる。
【0072】パイル倍率計算器60におけるパイル倍率
の演算は、速度計算器52,92が図3に示す回路であ
る場合はパルス信号P2 が供給されるたびに行われ、図
4に示す回路である場合は製品単位信号Bが供給される
たびに行われる。得られたパイル倍率Kp は、表示器9
8に目視可能に表示される。
【0073】パイル経糸ビームの回転量および地経糸ビ
ームの回転量を検出し記憶する時期つまり地の製織にお
いて、紋織り等の変わり織り組織等が行われ、パイル経
糸の送り量と地経糸の送り量とが厳密には同じ値となら
ないことがある。このような場合、地製織中のそれぞれ
の経糸が同じ量消費される織り組織(たとえば、平組織
に近い組織)の製織時に、回転量記憶指令を開口パター
ンコントローラ62から出力させ、その指令をパイル倍
率計算器54に供給して、経糸ビームの回転量を検出し
記憶するようにすれば、より高精度のパイル倍率Pを求
めることができる。
【0074】このようにして得られたパイル倍率Pは、
たとえば、本出願人の提案による特開平4−28924
2号公報に記載された技術のように、以下の応用が可能
である。
【0075】(1)パイル製織中の期間に求めた実際のパ
イル倍率とパイル倍率の許容範囲の上下限とを比較し、
その結果に応じて警報を発する。
【0076】(2)実際のパイル倍率Pと目標のパイル倍
率pとの偏差ΔKを求め、この偏差を解消する方向にテ
リー装置を調整し筬逃げ量を自動的に増減させたり、あ
るいはこの偏差でパイル形成時のパイル経糸側の経糸張
力を適切に調節することで、パイル倍率を目標のパイル
倍率に近づけ、パイルの重さ(パイルの高さ)を自動的
に一定に保つ。
【0077】上記のように、パイル倍率Pは、歯車4
6,86の減速比GT ,GB ,ビーム20,64の巻径
BT ,BB 等の各種のパラメータが含まれている実測し
た電動機44,84の回転数を地経糸およびパイル経糸
の送り量に対応する情報として用いて式(1)の演算を
することにより、少ない演算回数でパイル倍率を正確に
得ることができる。
【0078】上記実施例のように、経糸送出用電動機4
4,64毎に設けられているパルス発生器48,68か
ら出力されるパルスを基に、経糸ビーム20,64の回
転量に関するデータを得るならば、経糸ビーム20,6
4の回転量を測定する手段を新たに設ける必要がない。
【0079】しかし、パイル倍率の算出に用いる経糸ビ
ームの回転量としては、電動機44,84のような回転
源自体の回転量のみならず、経糸ビーム自体、歯車4
6,86のようなビーム用回転伝達手段、経糸ビーム自
体の回転量等、経糸ビームの回転に関係する回転体の回
転量、換言すれば、経糸ビーム20,64からの経糸の
送り量に比例する値とすることができる。
【0080】経糸ビームの回転量に関するデータとして
は、回転体の回転速度、その逆数等、回転体の回転数に
関係するデータを上げることができる。回転体の回転速
度としては、単位製織長さ当たりの回転体の回転数、単
位ピック数当たりの回転体の回転数、単位時間当たりの
回転体の回転数等を上げることができる。回転体の回転
速度の逆数としては、回転体の単位回転数当たりの製織
長さ、回転体の単位回転数当たりのピック数、回転体の
単位回転数当たりの時間等を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のパイル倍率測定装置を備えた織機のパ
イル経糸送出し装置のブロック図である。
【図2】本発明のパイル倍率測定装置を備えた織機の地
経糸送出し装置のブロック図である。
【図3】速度計算器の一実施例を示す図である。
【図4】速度計算器の他の実施例を示す図である。
【図5】信号の入力パターンとパイル倍率計算器の動作
を説明するための図である。
【符号の説明】
12 パイル経糸 14 パイル経糸の送出し装置 16 地経糸 18 地経糸の送出し装置 20 パイル経糸ビーム 24 織り前 44,84 電動機 48,88 パルス発生器 64 地経糸ビーム

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 パイル織物の地製織時にはそのときの地
    経糸ビームの回転量に関する第1のデータおよびパイル
    経糸ビームの回転量に関する第2のデータをメモリに記
    憶しておき、パイル製織時には前記メモリに記憶されて
    いる第1および第2のデータを読み出し、読み出した第
    1および第2のデータと、パイル製織時の地経糸ビーム
    の回転量に関する第3のデータおよびパイル経糸ビーム
    の回転量に関する第4のデータとから、パイル倍率を算
    出することを含む、パイル織機におけるパイル倍率測定
    方法。
  2. 【請求項2】 さらに、地製織時の地経糸の消費長さと
    パイル経糸の消費長さとの比に応じた修正値を前記パイ
    ル倍率の算出に用いる、請求項1に記載のパイル倍率測
    定方法。
  3. 【請求項3】 前記第1および第2のデータの比と前記
    第3および第4のデータの比とから前記パイル倍率を周
    期的に算出する、請求項1または2に記載のパイル倍率
    測定方法。
  4. 【請求項4】 地経糸ビームの回転量に関するデータを
    測定する第1の測定手段と、パイル経糸ビームの回転量
    に関するデータを測定する第2の測定手段と、パイル織
    物の地製織時に前記第1および第2の測定手段から出力
    される両データを記憶するメモリと、パイル製織時に、
    前記メモリに記憶されている両データを読み出し、読み
    出した両データと、パイル製織時に前記第1および第2
    の測定手段から出力される両データとから、パイル倍率
    を算出するパイル倍率計算手段とを含む、パイル織機に
    おけるパイル倍率測定装置。
  5. 【請求項5】 前記パイル倍率計算手段は、さらに、地
    製織時の地経糸の消費長さとパイル経糸の消費長さとの
    比に応じた修正値を前記パイル倍率の算出に用いる、請
    求項4に記載のパイル倍率測定装置。
  6. 【請求項6】 前記パイル倍率計算手段は、地製織時の
    地経糸ビームの回転量に関する第1のデータおよびパイ
    ル経糸ビームの回転量に関する第2のデータの比と、パ
    イル製織時の地経糸ビームの回転量に関する第3のデー
    タおよびパイル経糸ビームの回転量に関する第4のデー
    タの比とから前記パイル倍率を周期的に算出する手段で
    ある、請求項4または5に記載のパイル倍率測定装置。
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