JPH0897672A - 弾性表面波デバイス - Google Patents

弾性表面波デバイス

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JPH0897672A
JPH0897672A JP6233550A JP23355094A JPH0897672A JP H0897672 A JPH0897672 A JP H0897672A JP 6233550 A JP6233550 A JP 6233550A JP 23355094 A JP23355094 A JP 23355094A JP H0897672 A JPH0897672 A JP H0897672A
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electrodes
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裕之 小田川
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    • H03H9/125Driving means, e.g. electrodes, coils
    • H03H9/145Driving means, e.g. electrodes, coils for networks using surface acoustic waves
    • H03H9/14502Surface acoustic wave [SAW] transducers for a particular purpose
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    • HELECTRICITY
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 挿入損失が小さく、位相および周波数特性が
優れているとともに製造し易い弾性表面波デバイスを提
供する。 【構成】 リチウムテトラボレートの単結晶より成り、
オイラー角(ψ,θ,φ)で表されるカット角をψ=+5
°〜-5°、θ=9°〜29°、32°〜86°、φ=85 °〜95°
となるようにカットおよび伝搬方向を選んだ基板の上
に、この基板の異方性と相俟ってナチュラル単相形一方
向性変換器特性を出現させる構造の電極を配置する。弾
性表面波の波長をλとして、電極幅がλ/4の正規形電極
やλ/8のダブル電極を使用できるので、製造が容易とな
る。θ=51 °以外の角度に設定したときの一方向性のず
れは電極構造を変更することにより修正できる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、SAWフィルタやSA
W共振器のような弾性表面波デバイスに関するものであ
り、特にナチュラル単相形一方向性変換器(Natural Si
ngle-Phase Unidirectional Transducerを省略してNSPU
DTと呼ばれている) 特性を利用した弾性表面波デバイス
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、弾性表面波デバイスの一つとし
て、圧電性基板の上に単相信号源の位相が180 °異なる
2端子にそれぞれ接続される電極である正電極および負
電極をインターディジタル形(すだれ状) に組み合わせ
た送信側変換器と、同じく正電極および負電極をインタ
ーディジタルに組み合わせた受信側変換器とを配置し、
特定の周波数帯域の信号のみを選択的に取り出すトラン
スバーサル型SAWフィルタが広く実用化されている。
【0003】このようなSAWフィルタにおいては、挿
入損失を低く抑えるとともに帯域内でのリップルを小さ
く抑えることが要求されている。通常のインターディジ
タル形の電極構造を使用する場合には、両方向性となる
ため、理論的な最小損失が6dB となり、挿入損失を低く
抑えることができない欠点がある。一方、このような欠
点を解消するために、複数の受信側変換器を複数の送信
側変換器の両側に配置した多電極構造方式( マルチトラ
ンスデューサ方式) が提案されている。このような多電
極構造方式のSAWフィルタでは、挿入損失を1.5 〜2d
B 程度まで低くすることができるが、これら変換器の制
御が非常に難しく良好な位相特性や周波数特性が得られ
ないばかりでなく、製造も非常に難しいという欠点があ
る。弾性表面波デバイスの性能を向上するには、低損失
化のみでなく位相特性の平坦化および通過域のリップ
ル、阻止域の抑圧といった周波数特性の改善も重要な問
題である。
【0004】上述した要求を満たすために、理想的には
1dB以下の挿入損失と良好な位相および周波数特性が
可能となる一方向性変換器が使用されている。この一方
向性変換器としては、種々の型式のものが提案されてい
るが、大別して(a) 多相形一方向性変換器と、(b) 単相
形一方向性変換器とがある。さらに、後者の単相形一方
向性変換器としては、電極構造の非対称性、質量負荷効
果による内部反射を用いた単相形一方向性変換器、励振
電極の間に反射バンクを配置した反射バンク形一方向性
変換器、浮き電極による反射を用いた単相形一方向性変
換器や基板の異方性を利用するナチュラル単相形一方向
性変換器などが提案されている。これらの一方向性変換
器を用いた弾性表面波デバイスでは、励振波と反射波と
の位相差が、前進方向では同相となり、それと反対の方
向では逆相となることによって方向性を持たせるように
している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上述したナチュラル単
相形一方向性変換器以外の単相形一方向性変換器におい
ては、いずれも電極構造が複雑となり、特に電極エッジ
間の間隔および電極幅はλ/4よりも狭くする必要があ
り、動作周波数が高くなるのに伴ってこの寸法はきわめ
て小さくなり、所望の寸法を有する電極を正確に製造す
ることが困難となる欠点がある。
【0006】このような欠点を解消する手段の一つとし
て、圧電性基板自体の異方性によって電極エッジ間隔や
電極幅がλ/4の通常の電極を使用するにも拘らず、一方
向特性を持たせたナチュラル単相形一方向性変換器(NS
PUDT) が提案されている。このNSPUDT動作を採用した弾
性表面波デバイスにおいては、基板自体の異方性を利用
しているが、このような異方性により一方向性特性(NSP
UDT 特性)を示す圧電性基板としては、従来から水晶基
板、LiNbO3基板、LiTaO3基板が知られている。しかしな
がら、これら従来の基板を用いたNSPUDTでは、電気機械
結合係数K2が小さいこと、零遅延時間温度係数がないこ
と、パワーフロー角が零でないこと、方向性反転電極が
容易に実現できないことなどの理由のため、理想的な弾
性表面波デバイスを得るのが難しく、実用上の制約を受
ける欠点がある。
【0007】本発明の目的はこのような従来のNSPUDTを
用いる弾性表面波デバイスの欠点を解消もしくは軽減
し、十分実用に供する優れた特性を有する弾性表面波デ
バイスを提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明による弾性表面波
デバイスは、リチウムテトラボレートの単結晶より成
り、(ψ,θ,φ)で表されるカット角をψ=+5°〜-5
°、θ=9°〜29°、32°〜86°、φ=85 °〜95°となる
ようにカットおよび伝搬方向を選んだ基板と、この基板
上に形成され、基板の異方性と相俟ってNSPUDT特性を出
現させる構造を有する少なくとも1つの電極とを具える
ことを特徴とするものである。
【0009】
【作用】本発明による弾性表面波デバイスの圧電性基板
を構成するリチウムテトラボレートを弾性表面波デバイ
スの基板として用いること自体は既知であり、例えば特
開平2-44169 号公報や「1994年電子情報通信学会春季大
会」予稿集の1-446 ページに記載されている。特に後者
の文献に記載されているリチウムテトラボレート基板の
カット角は(0 °, 47.3°, 90°) となっており、上述
した本発明の範囲内に入っている。しかしながら、従来
のリチウムテトラボレート基板を用いた弾性表面波デバ
イスでは、この基板が「異方性による一方向性特性を有
すること(NSPUDT動作)」を利用していない。すなわ
ち、リチウムテトラボレート基板の異方性と相俟って一
方向性を出現させるような電極との組み合わせを採用し
ていない。これに対し、本発明においては、上述した範
囲のカット角を有する異方性を有するリチウムテトラボ
レート基板と、この基板の異方性と相俟って一方向性を
出現させるような電極とを組み合わせたものである。こ
のように基板の異方性を利用して一方向性を持たせるに
は、例えばλ/4の幅を有する正電極および負電極をλ/4
のエッジ間隔を以て交互に配置した通常の正規形電極を
使用することができるが、従来のリチウムテトラボレー
ト基板を用いた弾性表面波デバイスにおいては、このよ
うに基板の異方性と相俟って一方向性を出現させるよう
な電極、例えば正規形電極を用いておらず、したがって
NSPUDT動作とはなっていない。
【0010】また、本発明においては、リチウムテトラ
ボレート基板のカット角を、オイラー角(ψ,θ,φ)
で表したときに、ψ=+5°〜-5°、θ=9°〜29°、32〜
86°、φ=85 〜95°の範囲内の値としたが、このような
数値範囲を選定した理由は次の通りである。これらの角
度の内、ψおよびφはそれぞれ0°および90°が理想で
あるが、製造上の誤差を考慮して範囲を持たせた。すな
わち、ψおよびφについては± 5°までの誤差範囲の中
であれば、本発明の所期の目的を達成することができる
ことを確かめた。角度θは異方性に関係するパラメータ
であり、これを0 °、30°、90°近傍の値とするとどの
ような電極と組み合わせてもNSPUDT特性による一方向性
を得ることができないことを確かめた。すなわち、角度
θが30°付近では、一方向性を得るために重要な電極の
反射が弱く、また0 °および90°付近では反射波の位相
と励振波の位相との位相差の関係からNSPUDT動作が得ら
れず、電極の位置をずらしても一方向性の実現が困難で
あることがわかった。
【0011】
【実施例】図1は本発明による弾性表面波デバイスに用
いるリチウムテトラボレート基板の結晶軸と座標系との
関係を示すものである。リチウムテトラボレート基板1
のカット角をオイラー角表示で表すと、本発明において
は、(ψ,θ,φ)の内、ψを0°を中心として± 5°
の範囲内の値とし、φを90°を中心として± 5°の範囲
内の値とするが、図1でこれらの角度ψおよびφはそれ
ぞれ0°および90°の理想的な値を有するものとする。
また、NSPUDT特性に最も影響を与える角θ、すなわち結
晶軸Zと座標系zとの成す角度は本発明においては、9
°〜29°、32°〜86°の範囲内の値とする。
【0012】リチウムテトラボレート基板1において、
NSPUDTが現れるカット角を見出すためには、電極の摂動
効果を1次の効果として変換器の動作解析に反映させた
モード結合理論と、モード結合パラメータの弾性表面波
粒子速度や電位、電極の材質、電極構造依存性を閉じた
形の式で表すことのできる摂動論との2つの理論を組み
合わせた解析方法が非常に有力であり、本発明において
もこの解析方法を採用した。モード結合方程式を支配す
る4つのパラメータ、すなわち自己結合係数κ11, モー
ド間結合係数κ12,変換係数ζ,単位長当たりすなわち
1対当たりの静電容量Cの内、モード間結合係数κ12
電極反射に直接関係し、NSPUDT動作の中核をなすもので
ある。通常の両方向性インターディジタル形電極より成
る変換器では、このモード間結合係数κ12は実数である
が、構造の非対称性を用いた一方向性インターディジタ
ル形電極やNSPUDTでは複素数となる。
【0013】1次のオーダーの摂動論によれば、弾性表
面波の波長λで規格化したモード間結合係数κ12は次式
で表される。
【数1】 ここで、hは電極膜厚、右辺の第1項のK E は電極の電
気的摂動を表し、第2項は弾性的摂動を表すものであ
る。また、モード間結合係数κ12と電極の1波長当たり
の反射係数とは次の関係がある。
【数2】 r+ = - j κ12 * λ r- = - jκ12λ (2) ここで、 r+ と r- は、それぞれ+x向きと−x向きに
見たときの反射係数で、NSPUDTの場合、 r+ ≠ r- であ
る。またκ12* は複素共役を表すものである。最適のNS
PUDT動作が得られる位相条件は、次式で与えられる。
【数3】 arg(κ12λ )=±90°, ( φ0 =±45°) (3) ここで、複合は順方向が図1の+x向きのとき+符号、
−x向きのとき−符号をとる。電極の膜厚が十分厚く、
電気的摂動が無視できるような場合には、モード間結合
係数κ12の位相角2φ0 は弾性的摂動項の位相角2φM
で決まり、φM =±45°のとき最適なNSPUDT動作が得ら
れることになる。また、NSPDUTの方向性D(dB)は、(3)
式の位相条件が満足されるとき、反射係数またはモード
間結合係数κ12の大きさに比例することになる。
【0014】本発明者等は、電極をアルミニウムとし、
反射係数が大きく、上述した位相条件を満たすリチウム
テトラボレート基板のカット角を、オイラー角表示で(0
°, 90°, φ) 、(0°, θ, 90°) および( ψ, 90°,
90°) で表される3つの基板について、既知の定数を用
いて理論的に探索した。なお、電極幅はλ/4とした。
その結果、図1に示すようなカット角(0°, θ, 90°)
のリチウムテトラボレート基板についてNSPUDT動作が存
在することを確認した。
【0015】図2は、このカット角におけるK E , K
M , φM の値を角θをパラメータとして示したもので
ある。これらのパラメータの内、φM が方向性に最も大
きく寄与するパラメータであり、本発明においては、15
°≦|φM |≦60°でかつ反射が無くなるθ = 30 °の
近傍の値を除くようにθの範囲を設定したものである。
【0016】図3は、SAW速度 VR , 電気機械結合定
数 K2,遅延時間温度係数TCD をともに角度θを横軸にと
って示すものである。以上より、θ=18 °でφM=+45
°、θ=51°でφM =−45°となっていることがわか
る。これら2つの角度におけるK2の値には大差はない
が、θ=18 °の近傍ではK M が小さく、方向性を大きく
するためには電極をかなり厚くする必要があることがわ
かる。また、θ= 50°〜86°の範囲においては、TCD も
比較的小さく良好なNSPUDTが期待できることがわかる。
また、θ<30°の領域と、θ>30°の領域とではφM
符号が異なるため、例えばθ=18°とθ=51°の場合で
は、同じ電極構造で得られるNSPUDT特性の順方向は逆と
なる。
【0017】本発明による角度θの範囲内において、特
に51°<θの領域ではθが大きくなるにしたがって、φ
M が−45°からずれるが、電極の構造を変えることによ
ってずれの補正が可能であり、K M が大きいので、電極
膜厚が薄くても相当大きな方向性が得られるものであ
る。また、この角度範囲は、零TCD カット(θ=78°)
を含んでいるところからも有用であることがわかる。カ
ット角(0°,θ, 90°) の基板のパワーフロー角(PFA)
は零であり、この点でも実用上有利である。
【0018】表1は、最適な位相条件を満足する(0°,
51°, 90°) カットと零TCD が得られる(0°, 78°,90
°) カットにおいて正規形電極を用いた場合のモード結
合パラメータとSAW特性を示すものであり、参考のた
めに水晶とLiTaO3基板の数値も示した。
【表1】
【0019】図4および図5はλ=15μm 、対数が50、
開口長が200 λの正規形電極を設けたNSPUDTの変換損失
を表1のパラメータを用いて計算したものであり、図4
は(0°, 51°,90 °) カットの基板を用い、h/λ=0.02
5 の場合、図5は(0°, 78°,90 °) カットの基板を用
い、h/λ=0.01の場合である。これら図4および図5並
びに後述する図9,11, 13および15において、実線は図
1において−xの向きでの変換損失を表し、破線は+x
の向きでの変換損失を表している。中心周波数において
は、順方向と逆方向との変換損失差が大きくなり、一方
向性が現れている。これらのグラフを比較するとわかる
ように、図4の場合では理想的な一方向性特性が得られ
ており、図5の零TCD カット、すなわち(0°, 78°,90
°) カットでは方向性のずれが若干認められるが電極膜
厚が薄くても(h/ λ=0.01)、かなり強い一方向性が得ら
れている。
【0020】上述したように本発明によるリチウムテト
ラボレート基板は優れた一方向性を示すものであるが、
例えばこれをSAWフィルタとして用いる場合には、電
極の構成が問題となる。すなわち、NSPUDT基板の難点
は、同じ電極構造の変換器では送受の順方向が互いに向
き合ったフィルタ( 一方向性変換器の組) が得られず、
挿入損失が大きくなることである。この点を解決する方
法としては、一方の変換器の方向性を逆転するか、λ/8
ダブル電極を用いて反射を打ち消して方向性をなくすこ
とである。例えば、(0°, 78°,90 °) カットのリチウ
ムテトラボレート基板を用い、受信側および送信側の電
極をともにλ/4の正規形電極を以て構成する場合には、
フィルタとしての周波数特性、すなわち挿入損失は図6
に示すようなものとなり、送受の変換器を対向させたト
ランスバーサルフィルタとしてはそのままでは実用には
ならない。また、(0°, 78°,90 °) カットのリチウム
テトラボレート基板を用い、受信側および送信側の電極
をともにλ/8のダブル電極を設けたSAWフィルタの周
波数特性は図7に示すように図6の場合に比べてかなり
の改善が見られるが、所望の周波数の近傍において大き
なリップルが含まれている。また、電極の両方向性のた
め理論的な最小挿入損失は6dB であり、低挿入損失のS
AWフィルタの実現は難しい。このような傾向は(0°,
51°,90 °) の理想的なカットのリチウムテトラボレー
ト基板を用いた場合にも現れる。
【0021】図8a は理想的な(0°,51 °,90 °) カッ
トのリチウムテトラボレート基板に送信側変換器として
λ/4の正規形電極を設け、受信側変換器として10対のダ
ブル電極を設けて構成した本発明によるSAWフィルタ
第1の実施例の構成を示すものである。このようなSA
Wフィルタの一方向性特性を確認するために、図8bに
示すように(0°,51 °,90 °) カットのリチウムテトラ
ボレート基板を面内で180 °回転し、λ/4の正規形電極
12の送り方向(+x方向)をλ/8のダブル電極13に向き
合わせた構造を製作した。図9の実線はλ/4の正規形電
極の順方向(−x方向)に受信電極を配置したときの挿
入損失の実測値を示すものであり、破線は逆方向(+x
方向)に受信電極を配置したときの挿入損失の実測値を
示すものである。これから、図8aに示したSAWフィ
ルタの、ダブル電極の変換損失(11.9dB)を差し引いた中
心周波数における変換損失は3.7dB 、方向性は18dBとな
り、図4に示す理論値( 変換損失3.03dB, 方向性14dB)
ときわめて良い一致を見た。
【0022】図8aに示すように、(0°,51 °,90 °)
カットのリチウムテトラボレート基板11の表面に膜厚が
0.37μm のアルミ膜を一様に堆積した後、フォトリソグ
ラフの技術を用いて送信側変換器12および受信側変換器
13を形成した。送信側変換器12は、正規形のインターデ
ィジタル構造を有する電極で構成されており、それぞれ
ほぼλ/4、すなわち15/4μm の電極幅を有する正電極12
a および負電極12b をほぼλ/4のエッジ間隔で交互に配
列したものであり、対の個数は50とした。また、電極の
重なる部分の長さとして定義される開口長Aはほぼ200
λ、すなわち15×200 μm とした。本例では受信側変換
器13をダブル電極を以て構成した。すなわち、それぞれ
電極幅がほぼλ/8の正電極13a および負電極13bを2本
づつエッジ間隔がほぼλ/8となるように交互に配置し
た。対の個数は10とし、開口長Aはほぼ200 λとした。
なお、図8aおよび8bにおいては、図面を明瞭とする
ために電極はほぼ1周期(λ)だけを拡大して示した。
【0023】図10はSAWフィルタとして構成した本発
明による弾性表面波デバイスの第2の実施例の構成を示
すものである。本例においても、基板21としては、(0
°,51 °,90 °) の角度でカットしたリチウムテトラボ
レート基板を用い、その上に第1の実施例と同様にλ/4
の正規形電極よりなる送信側変換器22を形成するととも
に、受信側電極23としては方向性反転電極を配置した。
この方向性反転電極23は、それぞれλ/8の電極幅を有す
る正電極23a および負電極23b をλのピッチで、エッジ
間隔がλ/8となるように配置し、或る対の負電極23b と
次の対の正電極23a との間に、幅が 3λ/8の浮き電極23
c を両側の電極との間にλ/8のエッジ間隔が得られるよ
うに配置した構造のものである。図10においても、明瞭
とするために電極はほぼ1周期のみ示した。このような
方向性反転電極23を用いることにより、正規形電極より
なる送信側変換器22から伝搬される弾性表面波を効率良
く受信することができる。本例の方向性反転電極23の変
換損失は図11に示すように破線は+x方向を示し、図4
に示した送信側変換器22の方向性に対して逆の方向性を
持つため図10に示す構成により、挿入損失が少なくリッ
プルも少ない優れた位相特性を有するSAWフィルタが
得られることが予想される。
【0024】図5に示した(0°, 78°, 90°) カットの
リチウムテトラボレート基板を用いる場合には、図4に
示した(0°, 51°, 90°) カットのリチウムテトラボレ
ート基板を用いる場合よりも方向性がずれて幾分特性が
劣化している。しかしながら、本発明によればθ=18°
およびθ=51°の理想的な値より大きくずれ、特性の劣
化がある場合でも、このような基板の方向性の劣化は電
極の構成を多少変更することによって補正することがで
きる。次に、θ=78°とした場合の実施例を説明する。
図12は、(0°, 78°, 90°) カットのリチウムテトラボ
レート基板を用い、受信側の電極としてλ/8のダブル電
極を用い、送信側電極としてλ/4の正規形電極を基本と
し、これを図5に示す方向性のずれを補正できるように
修正した電極を用いた本発明による弾性表面波デバイス
の第3の実施例を示すものである。(0°, 78°, 90°)
カットのリチウムテトラボレート基板31の上に形成した
受信側変換器32は、それぞれ電極幅がλ/8の正電極32a
および負電極32b を2本づつエッジ間隔がλ/8となるよ
うに交互に配置したダブル電極を以て構成する。対の個
数は10とし、電極の重なる部分の長さとして定義される
開口長Aは200 λとした。送信側変換器33は、λ/4の幅
を有する正電極33a をλのピッチで配列し、その間に弾
性表面波の伝播方向に見て 1.5λ/16 のエッジ間隔を置
いて配置したλ/8の幅の第1の電極と、これからλ/8の
エッジ間隔を置いて配置され、λ/8の幅の第2の電極と
を有する負電極33b を配列して構成する。したがって、
負電極33b の第2の電極と正電極33a とのエッジ間隔は
2.25λ/8となる。
【0025】図13は、本例の送信側変換器33の変換損失
の周波数依存性を示すものであり、図5に示した変換損
失に比べて方向性が良好に補正されていることがわか
る。このように、本例のSAWフィルタでは(0°, 78
°, 90°) カットのリチウムテトラボレート基板31を用
いるにも拘らず、電極構造を修正することによって良好
な周波数特性が得られることがわかる。
【0026】図14は、前例と同様に図5に示した(0°,
78°, 90°) カットのリチウムテトラボレート基板を用
い、方向性のずれを補正するために、送信側変換器に方
向性修正電極を用い、受信側変換器に修正した方向性反
転電極を用いる本発明による弾性表面波デバイスの第4
の実施例を示すものである。すなわち、(0°, 78°, 90
°) カットのリチウムテトラボレート基板41の上に、送
信側変換器42として図12の送信側変換器33の方向性を修
正した電極を設ける。すなわち、λ/4の電極幅を有する
正電極をλのピッチで配列した正電極42a と、これから
1.5λ/16 のエッジ間隔を置いて配置され、λ/8の幅を
有する第1の電極およびこれからλ/8のエッジ間隔を置
いて配置され、λ/8の電極幅を有する第2の電極を有す
る負電極42b とを以て構成する。また、受信側変換器43
は、図10に示した方向性反転電極と同様に正電極43a 、
負電極43b および浮き電極43c を有するものであるが、
浮き電極43c を図10に示した場合に比べて負電極43b 側
に、すなわち入射側に2/56λだけ寄せたものである。し
たがって、負電極43b と浮き電極43c との間のエッジ間
隔は、λ(1/8−2/56) となり、浮き電極43c と正電極43
a との間のエッジ間隔は、λ(1/8+2/56) となる。
【0027】図15は、上述した受信側変換器43として用
いる修正した方向性反転電極の変換損失を示すものであ
り、方向性が反転しているのみならず、図5に示す変換
損失において見られる方向性のずれが良好に補正されて
いることがわかる。図16は、本例のSAWフィルタの挿
入損失の周波数依存性を示すものであり、図7に比べて
リップルが無くなっているとともに挿入損失も小さくな
っていることがわかる。
【0028】本発明において使用するリチウムテトラボ
レート基板では、図2に示すようにθが9 °〜29°、32
°〜86°の範囲においては、NSPUDT特性に大きく寄与す
るφM の値の変化は比較的緩やかであることと、上述し
たように電極構造を僅かに変更することによって方向性
のずれを修正できることと相俟って、本発明において
は、カット角θを上述した範囲の値とすることによって
実用上良好な特性を有する弾性表面波デバイスが得られ
ることになる。
【0029】本発明は上述した実施例に限定されるもの
ではなく、幾多の変更や変形が可能である。上述した実
施例においては、リチウムテトラボレート基板として理
想的な方向性が得られる(0°, 51°, 90°) カットおよ
び零TCD が得られる(0°, 78°, 90°) カットのものを
用いたが、勿論上述した範囲内における他のカットのリ
チウムテトラボレート基板を用いることができる。この
場合、理想的な方向性が得られる(0°, 51°, 90°) お
よび (0 °, 18°, 90°) カット以外のカットのリチウ
ムテトラボレート基板を用いる場合には、電極構造を上
述した手法と同様の手法によって変更したり電極位置を
変更したりして修正することにより、方向性のずれを補
正することができる。また、上述した実施例において
は、本発明による弾性表面波デバイスをSAWフィルタ
として構成したが、本発明の弾性表面波デバイスはSA
Wフィルタに限られるものではなく、例えば弾性表面波
共振器として構成することもできる。この場合には、λ
/4の正規型電極または方向性を修正した電極あるいは方
向性反転電極の両側にグレーティング反射器を配置する
ことができる。また、上述した実施例においては、電極
材料を全てアルミニウムとしたが、他の電極材料を用い
ることもできるが、一つのリチウムテトラボレート基板
の上に形成される電極は全て同じ材料で形成する。さら
に、送信側電極と受信側電極とは可逆的に動作するもの
であるから、上述した実施例においてこれらを相互に入
れ換えることもできる。例えば、第1および第2の実施
例においては、送信側変換器を正規形の電極構造を有す
る電極とし、受信側変換器をダブル電極または方向性反
転電極としたが、これらの関係を逆転し、送信側変換器
をダブル電極または方向性反転電極とし、受信側変換器
を正規形電極とすることもできる。さらに、電極幅およ
び電極間隔について微細加工の精度上±10% 程度以内の
ずれがあっても本発明の所期の目的を達成することがで
きるものである。
【0030】
【発明の効果】上述したように本発明の弾性表面波デバ
イスによれば、リチウムテトラボレート基板の異方性と
電極との組み合わせによってNSPUDT動作、すなわちナチ
ュラル単相形一方向性変換器動作が可能となり、挿入損
失が小さく、位相特性も優れている弾性表面波デバイス
を得ることができる。また、このような異方性を呈する
基板と協働する電極構造は、λ/4を基本寸法とする正規
形の電極やλ/8のダブル電極あるいはNSPUDT特性による
方向性を反転する電極とすることができ、正確な寸法に
容易に製造することができ、歩留りが向上することにな
る。さらに、SAWフィルタを構成する場合、送信側電
極と受信側電極とを別個の材料で製造しなくても、NSPU
DT特性の方向性を反転する特性が得られるので、設計や
製造は非常に簡単となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は、本発明による弾性表面波デバイスのリ
チウムテトラボレート基板のカット角を説明するための
図である。
【図2】図2は、本発明による弾性表面波デバイスの基
板上のλ/4の正規形電極による弾性表面波の反射を表す
幾つかのパラメータの、カット角θに対する変化を示す
グラフである。
【図3】図3は、本発明による弾性表面波デバイスの基
板の幾つかの特性の、カット角θに対する変化を示すグ
ラフである。
【図4】図4はθ=51 °とした場合のNSPUDTの変換損失
の理論値を示すグラフである。
【図5】図5はθ=78 °とした場合のNSPUDTの変換損失
の理論値を示すグラフである。
【図6】図6は、θ=78 °とした基板上に、送信および
受信側変換器としてλ/4の正規形電極を設けたSAWフ
ィルタの挿入損失の理論値を示すグラフである。
【図7】図7は、同じ基板上に送信および受信側変換器
としてλ/8のダブル電極を設けたSAWフィルタの挿入
損失の理論値を示すグラフである。
【図8】図8aは、θ=51 °とした基板を用いる本発明
による弾性表面波デバイスの第1の実施例の電極構造を
示す平面図、図8bは図8aの基板を面内で180 °回転
した弾性表面波デバイスを示す平面図である。
【図9】図9は、同じく第1の実施例の挿入損失の実測
値を示すグラフである。
【図10】図10は、θ=51 °とした基板を用いる本発明
による弾性表面波デバイスの第2の実施例の電極構造を
示す平面図である。
【図11】図11は、同じく第2の実施例の方向性反転電
極の変換損失の理論値を示すグラフである。
【図12】図12は、θ=78 °とした基板を用いる本発明
による弾性表面波デバイスの第3の実施例の電極構造を
示す平面図である。
【図13】図13は、同じく第3の実施例の方向性を修正
した電極の変換損失の理論値を示すグラフである。
【図14】図14は、θ=78 °とした基板を用いる本発明
による弾性表面波デバイスの第4の実施例の電極構造を
示す平面図である。
【図15】図15は、同じく第4の実施例の修正した方向
性反転電極の変換損失の理論値を示すグラフである。
【図16】図16は、同じく第4の実施例の挿入損失の理
論値を示すグラフである。
【符号の説明】
1 …リチウムテトラボレート基板 11…(0°, 51°,90
°) カットのリチウムテトラボレート基板 12 …送信側
変換器 12a, 12b…正、負電極 13…受信側変換器 13
a, 13b…正および負電極 21…(0°, 78°,90 °) カッ
トのリチウムテトラボレート基板 22 …送信側変換器
22a, 22b…正、負電極 23…受信側変換器 23a, 23b…正、負電極 23c …フローティング電極 32
…受信側変換器 32a, 32b …正、負電極 33…送信側
変換器 33a, 33b…正、負電極41…(0°, 78°,90 °)
カットのリチウムテトラボレート基板 42 …送信側変換
器 42a, 42b…正、負電極 43…受信側変換器 43a, 4
3b…正、負電極 43c …浮き電極
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 山之内 和彦 宮城県仙台市太白区松が丘37−13 (72)発明者 小田川 裕之 宮城県仙台市太白区富沢4−15−23 フラ ワーコート101 (72)発明者 田中 光浩 愛知県名古屋市瑞穂区須田町2番56号 日 本碍子株式会社内

Claims (9)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 リチウムテトラボレート(Li2B4O7) の単
    結晶より成り、オイラー角(ψ,θ,φ)で表されるカ
    ット角をψ=+5°〜-5°、θ=9°〜29°、32°〜86°、
    φ=85 °〜95°となるようにカットおよび伝搬方向を選
    んだ基板と、この基板上に形成され、基板の異方性と相
    俟ってナチュラル単相形一方向性変換器特性を出現させ
    る構造を有する少なくとも1つの電極とを具えることを
    特徴とする弾性表面波デバイス。
  2. 【請求項2】 前記基板の異方性と相俟ってナチュラル
    単相形一方向性変換器特性を出現させる構造を有する電
    極を、弾性表面波の波長をλ、単相信号源あるいは負荷
    の位相が180 °異なる2端子に接続される電極をそれぞ
    れ正電極および負電極とするとき、電極幅がともにほぼ
    λ/4の正電極および負電極をエッジ間隔がほぼλ/4とな
    るように交互に配置した正規形構造の電極としたことを
    特徴とする請求項1に記載の弾性表面波デバイス。
  3. 【請求項3】 前記正規形構造の電極を送信側または受
    信側変換器として設け、受信側または送信側変換器とし
    て、電極幅がともにほぼλ/8の正電極および負電極を2
    本づつエッジ間隔がほぼλ/8となるように交互に配置し
    たダブル電極構造を有する電極を設けたことを特徴とす
    る請求項2に記載の弾性表面波デバイス。
  4. 【請求項4】 前記正規形構造の電極を送信側または受
    信側変換器として設け、受信側または送信側変換器とし
    て、電極幅はともにほぼλ/8の正電極および負電極をエ
    ッジ間隔がほぼλ/8となるように順次に配置し、さらに
    電極幅がほぼ3λ/8で、正負いずれの電極にも接続され
    ない浮き電極をほぼλ/8のエッジ間隔を以て配置した方
    向性反転電極を設けたことを特徴とする請求項2に記載
    の弾性表面波デバイス。
  5. 【請求項5】 前記基板の異方性と相俟ってナチュラル
    単相形一方向性変換器特性を出現させる構造を有する電
    極を、弾性表面波の波長をλ、単相信号源あるいは負荷
    の位相が180 °異なる2端子に接続される電極をそれぞ
    れ正電極および負電極とするとき、電極幅がほぼλ/4で
    λのピッチで配列された正電極と、この正電極からほぼ
    1.5λ/16 のエッジ間隔を置いて配置され、ほぼλ/8の
    電極幅を有する第1の電極およびこの第1の電極からほ
    ぼλ/8の間隔を置いて配置され、ほぼλ/8の電極幅を有
    する第2の電極を有する負電極を有し、方向性を修正し
    た電極としたことを特徴とする請求項1に記載の弾性表
    面波デバイス。
  6. 【請求項6】 前記方向性を修正した電極を送信側また
    は受信側変換器として設け、受信側または送信側変換器
    として、電極幅がともにほぼλ/8の正電極および負電極
    を2本づつエッジ間隔がほぼλ/8となるように交互に配
    置したダブル電極構造を有する電極を設けたことを特徴
    とする請求項5に記載の弾性表面波デバイス。
  7. 【請求項7】 前記方向性を修正した電極を送信側また
    は受信側変換器として設け、受信側または送信側変換器
    として、電極幅はともにほぼλ/8の正電極および負電極
    をエッジ間隔がほぼλ/8でそれぞれピッチがほぼλとな
    るように順次に配置し、さらに電極幅がほぼ 3λ/8の浮
    き電極をほぼλ/8のエッジ間隔を以て配置した方向性反
    転電極を設けたことを特徴とする請求項5に記載の弾性
    表面波デバイス。
  8. 【請求項8】 前記方向性を修正した電極を送信側また
    は受信側変換器として設け、受信側または送信側変換器
    として、電極幅がほぼλ/8でほぼλのピッチで配列され
    た正電極と、この正電極からほぼλ/8のエッジ間隔を置
    いて配置され、ほぼλ/8の電極幅を有する負電極と、こ
    の負電極からほぼλ(1/8-2/56)のエッジ間隔を置いて配
    置されたほぼ 3λ/8の電極幅を有し、正負いずれの電極
    にも接続されない浮き電極とを有し、方向性を修正でき
    る方向性反転電極を設けたことを特徴とする請求項5に
    記載の弾性表面波デバイス。
  9. 【請求項9】 前記送信側および受信側変換器の電極
    を、全て同一の材料で形成したことを特徴とする請求項
    3,4,6,7または8に記載の弾性表面波デバイス。
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