JPH089533B2 - 浴 剤 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は入浴剤に関するものであ
る。

【０００２】

【従来の技術】従来の浴剤は、その保温作用によって血
行を良好にし、新陳代謝を高め、発汗作用を促進して老
排物を排泄し、又皮膚清浄作用によって皮膚表面の落屑
を溶解除去し肌をなめらかにし、更に界面活性剤等の洗
浄作用により皮脂および付着した汚れを適度に洗い落と
し、更には配合成分（イオウ、硫化物等）によっては静
菌、角質軟化作用により、慢性湿疹、脂漏性湿疹等に効
果があり、炭酸水素ナトリウム等のアルカリ塩は、その
角質軟化作用により、角化異常症、乾癬等に効果があ
る。又バスオイルの鉱物油、動植物油等によって、皮膚
をしっとりとなめらかにし(モイスチャ−作用）、心理
作用としては着色料と香料とによって入浴をゆたかな楽
しいものにするなどの効果がある。即ち浴剤は使用成分
によってその作用効果にも多小の相違が生ずるが、市販
の一般的な浴剤は、保温作用や皮膚清浄作用、皮膚疾患
治療作用の効果として具体的には、あせも、荒れ性、打
ち身、肩こり、くじき、神経痛、しっしん、しもやけ、
痔、冷え症、腰痛、リウマチ、ひび、あかぎれ、にきび
等々の局所あるいは全身性の疾患を緩解する効能がある
とされている。又特公平２−６７３６に開示されている
浴剤のように、ウ−ロン茶の湯煎殻を浴剤に利用し、ウ
−ロン茶成分による入浴後の保温持続という効果を得る
ものもあり、更に浴剤としては古来から温泉の副産物と
して得られる「湯の花」と称せられる天然温泉成分が各
地の温泉地等で販売され、又これら「湯の花」に含有さ
れる天然成分を人工的に製造して人造の「湯の花」が浴
剤として提供されている。 そして少くとも人工的に製
造された化合物又は混合物としての浴剤は概ねその成分
は医療補助品として厚生省から認められた浴剤で粉末
状、顆粒状、固形状等各種あり、浴槽に投入した場合溶
解し、その効果は前記したように入浴後の血行をよくし
体を温め或は各種局所的又は全身的疾患の緩解に効を奏
している。又どの浴剤にも人工的に香り（香料）をつけ
ていると供に着色料が添加されている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】前記した従来の浴剤に
ついて特別に問題点が存在してこれを解決せんとするの
が本発明提供の主たる目的ではない。本発明の目的は、
従来民間薬として使用された事実があるが、今日では、
この民間薬としても用いられることのなくなったイヌハ
ッカを、現代人のかかえる最大のなやみであり且つ健康
傷害の原因となっている心身のストレスの増加及び環境
（大気、水、食物その他）汚染を原因とする諸疾患を、
特に睡眠の導入による心身の疲労を完恢することにより
解消及び予防せんとするのがその最大の目的である。な
お、従来の浴剤特に化学合成によるもの又は各種成分の
混合した浴剤は前記のような局所的或は全身的な疾患の
緩解（消炎、鎮痛効果）を目的とし、この限りにおいて
は効を奏するものであるが、入浴本来の体をあたためる
ことによる完全な疲労感の回復や睡眠導入の効果を期待
したものは皆無であった。そして又香料（合成のものが
大部分）着色料によって皮膚に悪影響を及ぼすことも考
えられるのである。又切り傷、すり傷等の外傷があった
場合含有成分によっては刺戟が強くて使用に耐えないこ
ともあり、更に前記した香料の嗜好性にも個人差がある
ので、提供に際しては多種の香料を準備しなければなら
ないというわずらわしさもあり、又多くの浴剤には人工
着色料が使用され、これが皮膚に悪影響を及ぼし、アト
ピ−性皮膚炎の原因ともなると指摘されているところで
ある。次に生薬類も浴剤とし使用されているが特異な薬
草臭や皮膚刺戟が強かったりして一般的に普及しておら
ず、本願の前記目的を達成するものは存在しないのが現
状である。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本発明は前記の課題を解
決するため、イヌハッカの開花期において地上部全草を
刈り取り、乾燥したる後粉砕し、その適量を布袋又は透
過性の紙袋などに包装して浴槽内で浴湯抽出可能なるよ
うに構成する。又前記の乾燥粉砕物を湯煎しその抽出液
を濃縮加工又はパウダ−加工して適量を湯槽に投入可能
に包装してなる構成を有す。

【０００５】イヌハッカの地上部全部の刈り取り期は開
花期を最良とするが、開花期を幾分過ぎてもよい。刈り
取り後の乾燥は自然乾燥が最もよいが、高温熱乾燥を除
けば人工乾燥でもよい。又粉砕物の大きさも包装用袋に
包装し易い大きさであればよい。又濃縮加工又はパウダ
−加工する場合は、前記粉砕物の湯煎抽出液を、低温加
熱乾燥加工、冷風乾燥加工、スプレ−ドライ法、凍結乾
燥法、自然乾燥法等々によって濃縮又はパウダ−化する
ものとする。なお錠剤化の手段もある。なお、本発明に
おいては、人工着色料や香料は一切使用しないものと
し、濃縮加工後オイル状とする場合でも、ミネラルオイ
ル油、ヒマシ油、オリ−ブ油など自然の動植物油又はそ
れに近いものが増量剤として小量加入されるだけであ
る。又パウダ−化や顆粒化する場合でも最小限の水溶性
高分子剤を使用して製剤化するものとする。

【０００６】

【発明の作用】イヌハッカは高さ３０ｃｍ〜１００ｃｍ
の薬草で、その含有成分はカルバクロ−ル、ネペト−
ル、チモ−ル、ネペタラクト、シトロネロ−ル、ゲラニ
オ−ル等の精油成分とタンニンを含み、以前はその抽出
液（湯煎）は、ハ−ブティ−（薬草茶）として飲用さ
れ、胃腸痛とくに小児の腹痛や下痢の治療に効果がある
とされていた。 又開花期の乾燥した全草は鎮痙、止し
ゃ（下り止め）、駆風、健胃、弱い通経薬としても使用
され、切り傷、すり傷、打身などにも外用されたといわ
れる。そこで発明者は、生薬（薬草）を使用した入浴剤
の研究を重ねているうちに、このイヌハッカが生薬の中
でも香りが良くその嗜好性が普遍的で浴剤として特別の
香料を必要としないで万人に好かれるものであり、その
精油成分は刺乾性が極めて低く、外傷者の入浴にも適し
ており、且つ強力に発汗作用を促進し、更には神経系を
鎮静させる作用もあることをつきとめた。そしてこのイ
ヌハッカを浴剤として用いることにより前記課題を解決
することをみいだした。

【０００７】イヌハッカの成分は前記した通りである
が、その成分が多く含有されている生育期は開花期であ
り、従って刈り取りは開花期が最適である。刈り取った
イヌハッカの全草を乾燥粉砕して前記の方法で小袋詰め
又は液状或はパウダ−状（錠剤化してもよい。）として
使用するが、これを浴湯に投入した場合は、乾燥粉砕品
からは浴湯によって湯煎され、その成分は湯中に融出す
る。又液状とした浴剤はそのまま浴湯中に融け込む。そ
して精油成分の嗜好性に普遍的な香りは温湯中で揮散し
人に吸収され、又含有各成分特に前記チモ−ル、カルバ
クロ−ル等々を含む精油は入浴中の人体の皮膚面から経
皮吸収され精神生理的には鎮痙作用をなす。又外傷や打
身等にも刺戟は極めて少なく、その治療にも効を奏す
る。

【０００８】本願の最大目的は、鎮痙作用とその効果に
あるが、現在数多くの人々は、あらゆる生活環境からの
影響でストレスに悩まされていることは周知のことであ
り、ストレスの蓄積は不眠症を初め諸病の原因となり、
又諸病はさらにストレスを蓄積するという悪循環となっ
ていて、諸病恢復の障害となっている。古くから現在に
至る迄数多くの浴剤が提供され、この浴剤によって体が
温められ、よく眠れてストレスが解消され、又ストレス
による精神障害その他の諸病が治癒されたというような
ことは聞かないし、勿論現在提供されている浴剤にはそ
のような効果を期待することはできない。人間の精神的
肉体的組織が蘇生回復するのは、副交感神経が活発に活
動する時であり、副交感神経が活発な時期は睡眠中であ
って、大脳の新皮質の活動が弱められているときであ
る。そしてこの時間帯は人間が気持ちよくゆったりとし
た精神状態となって熟睡する。本発明は、以上の人体生
理的、精神生理的理論に基き、一日中のうちで人間がゆ
ったりした精神状態になる入浴時及び睡眠時にこれを深
める手段と時間を浴剤をもって得ようとするものであ
る。従来大脳新皮質の活動を弱めさせる方法としては、
例えば薬物の投与、アルコ−ルを飲む、音楽を聞くなど
の方法があるが、薬物投与は習慣性となったり副作用な
どがあり、アルコ−ル飲料は人間の健康を害する恐れが
ある。音楽を聞く方法は、ある種の音楽を継続的に聞く
ことによって大脳新皮質の活動が不活発になることはす
でに証明されているところであるが、音楽の種類やその
人の好み、音のＨＺ数の選択コントロ−ル等にも影響さ
れ万人一様のものではないので本願においては、いまだ
提供されていない浴剤による、然も副作用のない生薬を
浴剤に採用することによって副交感神経の活発化と大脳
新皮質の活動の不活発化現象を招来せしめ、人間の精神
的肉体的組織の蘇生回復を期せんとするものである。本
発明によるイヌハッカを材料とする浴剤を浴場に投入す
ると、前記のように揮散する香りは呼吸によって吸入さ
れ、浴湯中に融け込んだ精油は経皮吸収され、浴湯によ
る血行促進によって体が温まることによる疲労感の回復
は勿論のこと、精油（チモ−ル、カルバクロ−ル、ネペ
ト−ル、ネペタラクト、ネペタリン酸等々）の鎮痙作用
は睡眠導入の作用を有する。又この浴剤使用の風呂に入
ると精油によって強力に発汗作用が促進される。

【０００９】

【実施例】次に、不眠症患者に対する睡眠効果について
実施例を示して説明する。 試験方法（イヌハッカ粉砕品５ｇと１０ｇを使用、一般
家庭用浴槽。） 不眠症の患者および寝つきの悪いボランティア３０名
（男性１３名、女性１７名、年齢３２〜６８歳）につい
て、イヌハッカ浴剤（５ｇ包装品）、市販浴剤Ａ、及び
市販浴剤Ｂ（生薬）の３種類の浴剤を１日おきに入浴時
使用し、その夜の睡眠状態を翌日、問診にて５段階（非
常によく眠れた，適度に眠れた，少し眠れた，よく眠れ
なかった，全く眠れなかった）に評価した。又、入浴時
の浴剤の香りに対する嗜好性も同様に評価し、睡眠効果
と香りその他使用上総合評価を４段階（是非使いたい，
時々使いたい，余り使いたくない，使いたくない）に分
類した。 試験結果 試験結果は表１、表２及び表３に示す通りであるが不眠
症患者３０名に対する睡眠効果を検討した結果、イヌハ
ッカ浴剤では、非常に良く眠れたが５gで６.７％、１０
ｇで１６.７％、適度に眠れたが５ｇで２６.７％、１０
ｇで５３.３％(１６名）、少し眠れたが５ｇで５０％、
１０ｇで３０％であり、殆んどの人が睡眠が可能であっ
たことを示し、適度に眠れた以上では１０ｇで７０.０
％以上の高い回答率を得た。これに対し、市販浴剤Ａ及
びＢともに約６０％の人が少し眠れた以上であったが、
適度に眠れた以上では前者が４０％、後者が３３.３％
で、イヌハッカ浴剤の方が極めて有効であることが判明
した（表１）。次に浴剤の香りに対する嗜好試験を上記
と同一被験者を対象に実施した結果、普通以上ではイヌ
ハッカ浴剤１００％、市販浴剤Ａ９６.６％、市販浴剤Ｂ
６６.７％、良好以上ではイヌハッカ浴剤９３.３％、市
販浴剤Ａ６３.３％、市販浴剤Ｂ２６.７％の回答を得
た。又イヌハッカ浴剤は、８３.３％（２５名）が非常
に良好と答え、他の市販浴剤（Ａ２６.７％、Ｂ１０.０
％）に比較してはるかに高い嗜好性を示した。尚、市販
浴剤Ｂは、生薬由来の独特な香りの為に被験者間の嗜好
にバラツキがあった。(表２）。

【００１０】

【表１】

【表２】

【００１１】

【実施例】次に、日常普通に活動している者について実
施した場合の睡眠効果を示す。 試験方法 イヌハッカ粉砕品（浴剤） ５ｇ 実施対象者 普通に活動している大人３０名(男２０名 、 女１０名） 試験結果 試験結果は表３に示す通りであり、毎日普通に生業につ
いて活動している人では、入浴時に５ｇを浴湯に投入す
れば、適度に眠れた以上が９６.３％で、市販浴剤の７
０％〜８０％強に比して睡眠効果が大であることが認め
られた。

【表３】

【００１２】

【発明の効果】以上説明したように、本発明の浴剤を入
浴時に使用する場合は、生薬イヌハッカの含有成分であ
る精油の香り成分は揮散によって人体に吸入（呼吸する
ことによる）され良き香りによって神経系を鎮静し、非
揮発成分は経皮吸収によって体内に取り込まれ、精油の
鎮痙作用（鎮静剤として作用）によってより一層神経系
を鎮静して催眠作用を増幅し、実施例の効果に見られる
ように極めて良好な熟睡効果をもたらすものである。即
ち鎮痙作用によって熟睡することができ、副交感神経の
活動が活発となり、大脳の新皮質の活動が弱められか
ら、人間の精神的、肉体的組織の蘇生回復が人体生理学
的、精神生理学的な自然法則に従って促進されるという
大きな功を奏するものである。従って精神的には、スト
レスの蓄積が予防されると共に、蓄積されたストレスも
熟睡によって自然に解消され、諸病の緩解及び予防に効
を奏し、又血行促進と発汗作用の効果として、肉体的外
傷（あせも、荒れ性、打身、切り傷、すり傷、しもや
け、ひび、あかぎれ、痔、にきび等々局所及び全身性疾
患、炎症等）も自然に緩解の効を奏し、神経痛、腰痛、
冷え症、リウマチ等においても緩解の効を奏するもので
ある。更に鎮痙作用と強力な発汗作用により、風邪、イ
ンフルエンザ、はしか等の子供の感染症の治療にも優れ
た功を奏するものである。又、本発明の浴剤は、いわゆ
る生薬であるイヌハッカを化学的処理を行わず、又化学
合成などの香料や着色料を一切使用しないから、現在社
会的問題となっているアトピ−性皮膚炎の発症原因とも
ならないなど多くの利点を有する浴剤といわざるを得な
い。

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 イヌハッカを開花期において地上部全草
   を刈り取り、乾燥したる後粉砕し適量を布袋又は透過性
   紙袋などに包装し、浴槽内で浴湯抽出可能なるよう構成
   したことを特徴とする浴剤。
2. 【請求項２】 イヌハッカを開花期において地上部全草
   を刈り取り、乾燥したる後粗粉砕してこれを湯煎し、当
   該抽出液を濃縮又はパウダ−状に加工してなることを特
   徴とする浴剤。