JPH0886355A - 車両用ロックアップクラッチのスリップ制御装置 - Google Patents

車両用ロックアップクラッチのスリップ制御装置

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JPH0886355A
JPH0886355A JP17735595A JP17735595A JPH0886355A JP H0886355 A JPH0886355 A JP H0886355A JP 17735595 A JP17735595 A JP 17735595A JP 17735595 A JP17735595 A JP 17735595A JP H0886355 A JPH0886355 A JP H0886355A
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slip
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clutch
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 車両の走行路面が良路であるときにスリップ
制御が再開されることにより運転性が損なわれないよう
にした車両用ロックアップクラッチのスリップ制御装置
を提供する。 【構成】 回転変動検出手段198によりタービン翼車
22の回転速度NT の変動が検出された場合には、スリ
ップ制御中止手段200によりスリップ制御手段196
によるスリップ制御が中止させられる。スリップ制御再
実行手段204は、良路判定手段202により車両の走
行路が良路であることが判定された場合には、スリップ
制御中止手段200により中止されていたスリップ制御
を再び実行させる。このため、スリップ制御の中止およ
び再実施の繰り返しが解消され、車両の走行性が損なわ
れることがない。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、車両用ロックアッ
プクラッチのスリップ制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ロックアップクラッチ付トルクコンバー
タやロックアップクラッチ付フルードカップリングなど
のようなロックアップクラッチ付流体式伝動装置を備え
た車両においては、加速走行時におけるロックアップク
ラッチの回転損失を一層少なくして車両の燃費を改善す
ることを目的として、ロックアップクラッチの解放領域
と係合領域との間にスリップ領域を設け、そのスリップ
領域においてロックアップクラッチを半係合状態とする
ように実際のスリップ量すなわちポンプ翼車の回転速度
とタービン翼車の回転速度との差を、予め定められた目
標スリップ回転速度に追従するようにスリップ制御を実
行することが提案されている。また、減速走行中におい
てエンジン回転速度が予め設定されたフューエルカット
回転速度よりも高い領域ではそのエンジンに対する燃料
を遮断するフューエルカット装置を備えた車両において
は、その減速走行時にも、エンジン回転速度を引き上げ
てフューエルカット範囲を拡大するために、上記と同様
のスリップ制御を実行することが提案されている。
【0003】ところで、上記のスリップ制御中には、作
動油の劣化やロックアップクラッチの表面状態の変化に
よってロックアップクラッチの摩擦状態が不安定とな
り、スリップ回転速度が不連続に変化する所謂ジャダ現
象が発生することがある。このジャダ現象は、流体伝動
装置の出力軸回転速度の変動すなわちタービン回転速度
の変動に基づいて検出され得るが、車両の走行路面に凹
凸が存在するときにもタービン回転速度の変動が発生す
る。このため、タービン回転速度の変動に基づいて上記
ジャダが検出されたときにはスリップ制御を中止し、こ
の中止期間内においてもタービン回転速度の変動が継続
する場合には、ジャダではなくてそのタービン回転速度
の変動が路面状態に由来したものであると考えて、スリ
ップ制御を再開させるスリップ制御装置が提案されてい
る。たとえば、特開平4−224361号公報に記載さ
れたスリップ制御装置がそれである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来のスリップ制御装置では、たとえば継続的に走行路面
の凹凸に由来する振動が発生するような場合には、ター
ビン回転速度の変動の発生によりスリップ制御を中止
し、スリップ制御中止期間におけるタービン回転速度の
変動に基づいてジャダではなかったと判明したらスリッ
プ制御を再開すると言った作動が、連続的に繰り返され
る場合があるため、スリップ制御の中止および再実施の
繰り返しによって車両の走行性が損なわれる欠点があっ
た。
【0005】本発明は以上の事情を背景として為された
ものであり、その目的とするところは、車両の走行路面
が良路であるときにスリップ制御が再開されることによ
り運転性が損なわれないようにした車両用ロックアップ
クラッチのスリップ制御装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】斯る目的を達成するため
の、本発明の要旨とするところは、ポンプ翼車とタービ
ン翼車との間に設けられたロックアップクラッチを有す
る車両において、前記ロックアップクラッチのスリップ
回転速度が所定の目標スリップ回転速度と一致するよう
に制御するスリップ制御手段を備えた車両用ロックアッ
プクラッチのスリップ制御装置であって、(a) 前記ター
ビン翼車の回転速度の変動を検出する回転変動検出手段
と、(b) その回転変動検出手段により前記タービン翼車
の回転速度の変動が検出された場合には、前記スリップ
制御手段によるスリップ制御を中止させるスリップ制御
中止手段と、(c) スリップ制御の中止期間における前記
タービン翼車の回転速度の変動に基づいて、前記車両の
走行路面が凹凸のない良路であることを判定する良路判
定手段と、(d) その良路判定手段により車両の走行路が
良路であることが判定された場合には、前記スリップ制
御中止手段により中止されていたスリップ制御を再び実
行させるスリップ制御再実行手段とを、含むことにあ
る。
【0007】
【発明の効果】このようにすれば、回転変動検出手段に
より前記タービン翼車の回転速度の変動が検出された場
合には、スリップ制御中止手段により前記スリップ制御
手段によるスリップ制御が中止させられる。良路判定手
段は、スリップ制御の中止期間における前記タービン翼
車の回転速度の変動に基づいて車両の走行路面が凹凸の
ない良路であることを判定する。そして、スリップ制御
再実行手段は、良路判定手段により車両の走行路が良路
であることが判定された場合には、スリップ制御中止手
段により中止されていたスリップ制御を再び実行させ
る。
【0008】したがって、本発明によれば、良路判定手
段により車両の走行路が良路であることが判定された場
合に、スリップ制御中止手段により中止されていたスリ
ップ制御が再び実行させられるので、継続的に走行路面
の凹凸に由来する振動が発生するような場合のスリップ
制御の中止および再実施の繰り返しが解消され、車両の
走行性が損なわれることがない。
【0009】ここで、好適には、前記スリップ制御中止
手段によりスリップ制御が中止させられている期間にお
ける前記タービン翼車の回転速度の変動に基づいて前記
スリップ制御中におけるロックアップクラッチのジャダ
の発生を判定するジャダ判定手段と、そのジャダ判定手
段により前記ロックアップクラッチのジャダの発生が判
定された場合は、前記スリップ制御手段によるスリップ
制御を継続的に停止させるスリップ制御停止手段とがさ
らに含まれる。このようにすれば、ジャダが発生したと
きには、ロックアップクラッチの摩擦条件の変化が期待
できる車両状態、たとえば一旦エンジンが停止させられ
てから再始動されるときまで、スリップ制御が継続して
停止させられる利点がある。
【0010】また、好適には、前記タービン翼車の回転
速度の変動を予め設定された時間範囲内に計数する回転
変動カウンタを備え、前記回転変動検出手段は、その回
転変動カウンタの計数内容が予め設定された判断基準値
を超えたことに基づいて回転変動を検出するものであ
る。
【0011】また、好適には、前記スリップ制御中止手
段によりスリップ制御が中止されている期間内であっ
て、前記回転変動検出手段によりタービン翼車の回転変
動が検出されてからの所定の第1経過時間が経過した後
における前記タービン翼車の回転速度の変動を計数する
悪路判定カウンタを備え、前記ジャダ判定手段は、前記
第1経過時間よりも長い所定の第2経過時間が経過した
ときの悪路判定カウンタの計数内容が予め設定された悪
路判断基準値よりも低いことに基づいてジャダを判定す
る。
【0012】また、好適には、前記悪路判定カウンタは
前記第2経過時間が経過した後は予め設定された良路判
断基準値に到達する毎にクリアされるものである一方、
その悪路判定カウンタがクリアされてからの経過時間を
計数する良路判定タイマがさらに設けられ、前記良路判
定手段は、その良路判定タイマの計数内容が予め設定さ
れた第3経過時間を超えたことに基づいて良路を判定す
る。
【0013】
【発明の実施の形態】以下、本発明の一実施例を図面に
基づいて詳細に説明する。
【0014】図1は、本発明の一実施例が適用された車
両用動力伝達装置の骨子図である。図において、エンジ
ン10の動力はロックアップクラッチ付トルクコンバー
タ12、3組の遊星歯車ユニットなどから構成された有
段式自動変速機14を経て、図示しない差動歯車装置お
よび駆動輪へ伝達されるようになっている。
【0015】上記トルクコンバータ12は、エンジン1
0のクランク軸16と連結され、外周部において断面U
字状に曲成されるとともにエンジン10側へ向かう方向
成分を有する作動油の流れを発生させる羽根を有するポ
ンプ翼車18と、上記自動変速機14の入力軸20に固
定され、ポンプ翼車18の羽根に対向する羽根を有し、
そのポンプ翼車18の羽根からのオイルを受けて回転さ
せられるタービン翼車22と、一方向クラッチ24を介
して非回転部材であるハウジング26に固定されたステ
ータ翼車28と、軸方向に移動可能且つ軸まわりに相対
回転不能にタービン翼車22のハブ部に嵌合されたピス
トン30を介して上記入力軸20に連結されたロックア
ップクラッチ32とを備えている。
【0016】トルクコンバータ12内においては、ピス
トン30により分割された係合側油室35および解放側
油室33のうちの解放側油室33内の油圧が高められ且
つ係合側油室35内の油圧が解放されると、ピストン3
0が後退させられてロックアップクラッチ32が非係合
状態とされるので、トルクコンバータ12の入出力回転
速度比に応じた増幅率でトルクが伝達される。しかし、
係合側油室35内の油圧が高められ且つ解放側油室33
内の油圧が最低圧となると、上記ピストン30が前進さ
せられてロックアップクラッチ32がポンプ翼車18に
押圧されて係合状態とされるので、トルクコンバータ1
2の入出力部材、すなわちクランク軸16および入力軸
20が直結状態とされる。
【0017】自動変速機14は、同軸上に配設された3
組のシングルピニオン型遊星歯車装置34,36,38
と、前記入力軸20と、遊星歯車装置38のリングギヤ
とともに回転する出力歯車39と図示しない差動歯車装
置との間で動力を伝達するカウンタ軸(出力軸)40と
を備えている。それら遊星歯車装置34,36,38の
構成要素の一部は互いに一体的に連結されるだけでな
く、3つのクラッチC0,C1 ,C2 によって互いに選
択的に連結されている。また、上記遊星歯車装置34,
36,38の構成要素の一部は、4つのブレーキB0
1 ,B2 ,B3によってハウジング26に選択的に連
結されるとともに、さらに、構成要素の一部は3つの一
方向クラッチF0 ,F1 ,F2 によってその回転方向に
より相互に若しくはハウジング26と係合させられるよ
うになっている。
【0018】上記クラッチC0 ,C1 ,C2 、ブレーキ
0 ,B1 ,B2 ,B3 は、例えば多板式のクラッチや
1本または巻付け方向が反対の2本のバンドを備えたバ
ンドブレーキ等にて構成され、それぞれ油圧アクチュエ
ータによって作動させられるようになっており、後述の
変速用電子制御装置184によりそれ等の油圧アクチュ
エータの作動がそれぞれ制御されることにより、図2に
示されているように変速比I(=入力軸20の回転速度
/カウンタ軸40の回転速度)がそれぞれ異なる前進4
段・後進1段の変速段が得られる。図2において、「1
st」,「2nd」,「3rd」,「O/D(オーバドライブ)」
は、それぞれ前進側の第1速ギヤ段,第2速ギヤ段,第
3速ギヤ段,第4速ギヤ段を表しており、上記変速比は
第1速ギヤ段から第4速ギヤ段に向かうに従って順次小
さくなる。なお、上記トルクコンバータ12および自動
変速機14は、軸線に対して対称的に構成されているた
め、図1においては入力軸20の回転軸線の下側および
カウンタ軸40の回転軸線の上側を省略して示してあ
る。
【0019】図3は、車両の制御装置の構成を説明する
図である。図において、油圧制御回路44には、上記自
動変速機14のギヤ段を制御するための変速制御用油圧
制御回路と、ロックアップクラッチ32の係合を制御す
るためのロックアップクラッチ制御用油圧制御回路とが
設けられている。変速制御用油圧制御回路は、よく知ら
れているようにソレノイドNo.1およびソレノイドNo.2に
よってそれぞれオンオフ駆動される第1電磁弁S1およ
び第2電磁弁S2を備えており、それら第1電磁弁S1
および第2電磁弁S2の作動の組み合わせによって図2
に示すようにクラッチおよびブレーキが選択的に作動さ
せられて前記第1速ギヤ段乃至第4速ギヤ段のうちのい
ずれかが成立させられるようになっている。
【0020】また、上記ロックアップクラッチ制御用油
圧制御回路は、たとえば図4に示すように、ソレノイド
48によりオンオフ作動させられて切換用信号圧Psw
発生する第3電磁弁S3と、その切換用信号圧Pswに従
ってロックアップクラッチ32を解放状態とする解放側
位置とロックアップクラッチ32を係合状態とする係合
側位置とに切り換えられるロックアップリレー弁52
と、変速用電子制御装置184から供給される駆動電流
SLU に対応したスリップ制御用信号圧PSLU を発生す
るリニアソレノイド弁SLUと、リニアソレノイド弁S
LUから出力されるスリップ制御用信号圧PSLU に従っ
て係合側油室35および解放側油室33の圧力差ΔPを
調節し、ロックアップクラッチ32のスリップ量を制御
するロックアップコントロール弁56とを備えている。
【0021】上記図4において、図示しないタンクに還
流した作動油をストレーナ58を介して吸引して圧送す
るためのポンプ60はエンジン10によって回転駆動さ
れるようになっている。ポンプ60から圧送された作動
油圧は、オーバフロー形式の第1調圧弁62により第1
ライン圧Pl1に調圧されるようになっている。この第1
調圧弁62は、図示しないスロットル弁開度検知弁から
出力されたスロットル圧に対応して大きくなる第1ライ
ン圧Pl1を発生させ、第1ライン油路64を介して出力
する。第2調圧弁66は、オーバフロー形式の調圧弁で
あって、第1調圧弁62から流出させられた作動油を上
記スロットル圧に基づいて調圧することにより、エンジ
ン10の出力トルクに対応した第2ライン圧Pl2を発生
させる。第3調圧弁68は、上記第1ライン圧Pl1を元
圧とする減圧弁であって、一定の第3ライン圧Pl3を発
生させる。また、マニュアル弁70は、シフト操作レバ
ー174がRレンジであるときには、Rレンジ圧PR
発生する。そして、OR弁72は、第2速ギヤ段以上で
あるときに係合する前記ブレーキB2 を作動させる圧P
B2および上記Rレンジ圧PR のうちのいずれか高い側を
選択して出力する。
【0022】上記ロックアップリレー弁52は、解放側
油室33と連通する解放側ポート80、係合側油室35
と連通する係合側ポート82、第2ライン圧Pl2が供給
される入力ポート84、ロックアップクラッチ32の解
放時に係合側油室35内の作動油が排出される第1排出
ポート86、ロックアップクラッチ32の係合時に解放
側油室33内の作動油が排出される第2排出ポート8
8、第2調圧弁66から排出される作動油の一部がロッ
クアップクラッチ32の係合期間に冷却のために供給さ
れる供給ポート90と、それらのポートの接続状態を切
り換えるスプール弁子92と、そのスプール弁子92を
オフ側位置に向かって付勢するスプリング94と、スプ
ール弁子92のスプリング94側端部に当接可能に配置
されたプランジャ96と、それらスプール弁子92とプ
ランジャ96との端面にRレンジ圧PR を作用させるた
めにそれらの間に設けられた油室98と、プランジャ9
6の端面に作用させる第1ライン圧Pl1を受け入れる油
室100と、スプール弁子92の端面に第3電磁弁S3
からの切換用信号圧Pswを作用させてオン側位置へ向か
う推力を発生させるためにその切換用信号圧Pswを受け
入れる油室102とを備えている。
【0023】第3電磁弁S3は、非励磁状態(オフ状
態)では油室102とOR弁72との連通をその球状弁
子が遮断し且つ油室102をドレン圧とするが、励磁状
態(オン状態)では油室102とOR弁72とを連通さ
せて切換用信号圧Pswを油室102に作用させる。この
ため、第3電磁弁S3がオフ状態であるときには、油室
102には第3電磁弁S3からの切換用信号圧Pswが作
用させられず、スプール弁子92はスプリング94の付
勢力と油室100に作用する第1ライン圧Pl1とにした
がってオフ側位置に位置させられることから、入力ポー
ト84と解放側ポート80、係合側ポート82と第1排
出ポート86がそれぞれ連通させられるので、解放側油
室33内の油圧Poff は係合側油室35内の油圧Pon
りも高められてロックアップクラッチ32が解放される
と同時に、係合側油室35内の作動油は上記第1排出ポ
ート86、オイルクーラ104、および逆止弁106を
介してドレンへ排出される。
【0024】反対に、第3電磁弁S3がオン状態である
ときには、第3電磁弁S3からの切換用信号圧Pswが油
室102に作用させられてスプール弁子92はスプリン
グ94の付勢力と油室100に作用する第1ライン圧P
l1とに抗してオン側位置に位置させられることから、入
力ポート84と係合側ポート82、解放側ポート80と
第2排出ポート88、供給ポート90と第1排出ポート
86がそれぞれ連通させられるので、係合側油室35内
の油圧Ponは解放側油室33内の油圧Poff よりも高め
られてロックアップクラッチ32が係合されると同時
に、解放側油室33内の作動油は上記第2排出ポート8
8およびロックアップコントロール弁56を介してドレ
ンへ排出される。
【0025】前記リニアソレノイド弁SLUは、第3調
圧弁68で発生させられる一定の第3ライン圧Pl3を元
圧とする減圧弁であって、図5に示すように変速用電子
制御装置184からの駆動電流ISLU (すなわち駆動デ
ューティ比DSLU)に伴って大きくなるスリップ制御
用信号圧PSLU を発生させ、このスリップ制御用信号圧
SLU をロックアップコントロール弁56へ作用させ
る。リニアソレノイド弁SLUは、第3ライン圧Pl3
供給される供給ポート110およびスリップ制御用信号
圧PSLU を出力する出力ポート112と、それらを開閉
するスプール弁子114と、そのスプール弁子114を
閉弁方向へ付勢するスプリング115と、スプール弁子
114をスプリング115よりも小さい推力で開弁方向
へ付勢するスプリング116と、駆動電流ISLU に従っ
てスプール弁子114を開弁方向へ付勢するスリップ制
御用電磁ソレノイド118と、スプール弁子114に閉
弁方向の推力を発生させるためのフィードバック圧(ス
リップ制御用信号圧PSLU )を受け入れる油室120と
を備えており、スプール弁子114は電磁ソレノイド1
18およびスプリング116による開弁方向の付勢力と
スプリング115およびフィードバック圧による閉弁方
向の付勢力とが平衡するように作動させられる。
【0026】ロックアップコントロール弁56は、前記
第2ライン圧Pl2が供給されるライン圧ポート130、
前記第2排出ポート88から排出される解放側油室33
内の作動油を受け入れる受入ポート132、その受入ポ
ート132に受け入れられた作動油を排出するためのド
レンポート134と、受入ポート132とドレンポート
134との間を連通させて解放側油室33内の作動油を
排出させることにより係合側油室35および解放側油室
33の圧力差ΔP(=Pon−Poff )を増加させる第1
位置(図4の左側位置)へ向かう方向と受入ポート13
2とライン圧ポート130との間を連通させて解放側油
室33内に第2ライン圧Pl2を供給することにより上記
ΔPを減少させる第2位置(図4の右側位置)へ向かう
方向に向かって移動可能に設けられたスプール弁子13
6と、そのスプール弁子136を第1位置に向かって付
勢するためにそのスプール弁子136に当接可能に配置
されたプランジャ138と、そのプランジャ138にス
リップ制御用信号圧PSLUを作用させて第1位置に向か
う方向の推力を発生させるためにスリップ制御用信号圧
SLU を受け入れる信号圧油室140と、プランジャ1
38に解放側油室33内の油圧Poff を作用させてプラ
ンジャ138にスプール弁子136をその第1位置へ向
かう方向の推力を発生させるためにその油圧Poff を受
け入れる油室142と、スプール弁子136に係合側油
室35内の油圧Ponを作用させてスプール弁子136に
その第2位置へ向かう方向の推力を発生させるために油
圧Ponを受け入れる油室144と、この油室144内に
収容されてスプール弁子136をその第2位置へ向かう
方向へ付勢するスプリング146とを、備えている。
【0027】ここで、上記プランジャ138には、油室
142側から順に大きくなる断面積A1 およびA2 を有
する第1ランド148および第2ランド150が形成さ
れており、また、スプール弁子136には、信号圧油室
140側から断面積A3 である第3ランド152および
第4ランド154が形成されている。したがって、プラ
ンジャ138はスプール弁子136と当接して相互に一
体的に作動し、ピストン30の両側にスリップ制御用信
号圧PSLU に対応した大きさの圧力差ΔP(=Pon−P
off )が形成される。すなわち、A1 =A3 であるとす
ると、圧力差ΔPはスリップ制御用信号圧PSLU に対し
て数式1により傾き〔(A2 −A1 )/A1 〕に従って
変化する。なお、数式1において、Fs はスプリング1
46の付勢力である。
【0028】
【数1】
【0029】図6は、上記のように構成されているロッ
クアップコントロール弁56の作動により得られる圧力
差ΔPのスリップ制御用信号圧PSLU に対する変化特性
を示している。したがって、ロックアップリレー弁52
がオン状態にあるときは、スリップ制御用信号圧PSLU
が大きくなるに伴って係合側油室35と解放側油室33
との圧力差ΔPが大きくなるので、ロックアップクラッ
チ32のスリップ回転速度NSLPが小さくされるが、
反対に、スリップ制御用信号圧PSLU が小さくなるに伴
って係合側油室35と解放側油室33との圧力差ΔPが
小さくなるので、ロックアップクラッチ32のスリップ
回転速度NSLPが大きくされる。
【0030】図3に戻って、車両には、エンジン10の
回転速度NE すなわちポンプ翼車18の回転速度NP
検出するエンジン回転速度センサ160、吸気配管を通
してエンジン10へ吸気される吸入空気量Qを検出する
吸入空気量センサ162、吸気配管を通してエンジン1
0へ吸気される吸入空気の温度TAIR を検出する吸入空
気温度センサ164、アクセルペダル165の操作によ
り開閉されるスロットル弁166の全閉状態および開度
θ1 を検出するアイドルスイッチ付スロットルセンサ1
67、自動変速機14の出力軸の回転速度すなわち車速
Vを検出する車速センサ168、エンジン10の冷却水
温TWAを検出する冷却水温センサ170、ブレーキペダ
ルが操作されたことを検出するブレーキセンサ172、
シフト操作レバー174の操作位置Ps すなわちL、
S、D、N、R、Pレンジのいずれかを検出するための
操作位置センサ176、タービン翼車22の回転速度N
T すなわち自動変速機14の入力軸20の回転速度を検
出するタービン回転速度センサ178、油圧制御回路4
4の作動油の温度TOIL を検出する油温センサ180が
設けられている。そして、上記各センサから出力された
信号は、エンジン用の電子制御装置182および変速用
の電子制御装置184にそれぞれ直接または間接的に供
給されるようになっている。エンジン用の電子制御装置
182と変速用の電子制御装置184とは通信インター
フェイスを介して相互連結されており、入力信号などが
必要に応じて相互に供給されるようになっている。
【0031】変速用の電子制御装置184はCPU、R
OM、RAM、インターフェースなどから成る所謂マイ
クロコンピュータであって、そのCPUは、RAMの一
時記憶機能を利用しつつ予めROMに記憶されたプログ
ラムに従って入力信号を処理し、自動変速機14の変速
制御およびロックアップクラッチ32の係合制御を図示
しないメインルーチンに従って実行して、第1電磁弁S
1、第2電磁弁S2、第3電磁弁S3、およびリニアソ
レノイド弁SLUをそれぞれ制御する。
【0032】上記変速制御では、予めROMに記憶され
た複数種類の変速線図から実際の変速ギヤ段に対応した
変速線図が選択され、その変速線図から車両の走行状
態、たとえばスロットル弁開度θ1 と車速Vとに基づい
て変速ギヤ段が決定され、その変速ギヤ段が得られるよ
うに第1電磁弁S1、第2電磁弁S2が駆動されること
により、自動変速機14のクラッチC0 ,C1 ,C2
およびブレーキB0 ,B 1 ,B2 ,B3 の作動が制御さ
れて前進4段のうちのいずれかのギヤ段が成立させられ
る。
【0033】上記ロックアップクラッチ32の係合制御
は、たとえば第3速ギヤ段、および第4速ギヤ段での走
行中に実行されるものであり、その係合制御において
は、予めROMに記憶された図7に示す関係から、車両
の走行状態たとえば出力軸回転速度(車速)Nout およ
びスロットル弁開度TAPに基づいてロックアップクラ
ッチ32の解放領域、スリップ制御領域、係合領域のい
ずれであるかが判断される。このスリップ制御領域は、
運転性を損なうことなく燃費を可及的によくすることを
目的としてエンジン10のトルク変動を吸収しつつ連結
させるようにロックアップクラッチ32がスリップ状態
に維持される。図7は車両の加速走行中において用いら
れるものである。また、車両の減速惰行走行中でも、フ
ューエルカット制御の制御域を拡大することを目的とし
てロックアップクラッチ32のスリップ制御が実行され
る。すなわち、スロットル弁開度TAPが零である惰行
走行状態においてフューエルカット装置による燃料遮断
作動が終了させられるまでスリップ制御が実行される。
【0034】上記車両の走行状態が上記係合領域内にあ
ると判断されると、第3電磁弁S3が励磁されてロック
アップリレー弁52がオン状態とされると同時にリニア
ソレノイド弁SLUに対する駆動電流ISLU が最小駆動
電流(定格値)に設定されるので、ロックアップクラッ
チ32が係合させられる。また、車両の走行状態が上記
解放領域内にあると判断されると、第3電磁弁S3が非
励磁とされてロックアップリレー弁52がオフ状態とさ
れるので、リニアソレノイド弁SLUに対する駆動電流
SLU に拘わらず、ロックアップクラッチ32が解放さ
れる。そして、車両の走行状態が上記スリップ制御領域
内にあると判断されると、第3電磁弁S3が励磁されて
ロックアップリレー弁52がオン状態とされると同時
に、リニアソレノイド弁SLUに対する駆動電流ISLU
がたとえば数式2に従って調節される。すなわち、たと
えば目標スリップ回転速度TNSLPと実際のスリップ
回転速度NSLP(=NE −NT )との偏差ΔE(=N
SLP−TNSLP)が解消されるように駆動電流I
SLU すなわち駆動デューティ比DSLUが算出されて出
力される。
【0035】
【数2】
【0036】上記数式2の右辺のDFWDは、たとえば
エンジン10の出力トルクの函数であるフィードフォワ
ード値であり、KGDは機械毎の特性などに対応して形
成される学習制御値であり、DFBはたとえば数式3に
示すように偏差ΔEの比例値、微分値、積分値を加えた
フィードバック制御値である。
【0037】
【数3】
【0038】また、エンジン用の電子制御装置182
も、変速用の電子制御装置184と同様のマイクロコン
ピュータであって、そのCPUは予めROMに記憶され
たプログラムに従って入力信号を処理することにより種
々のエンジン制御を実行する。たとえば、燃料噴射量制
御では燃焼状態を最適とするために燃料噴射弁186を
制御し、点火時期制御では、遅角量を適切とするために
イグナイタ188を制御し、トラクション制御では、駆
動輪のスリップを防止して有効な駆動力および車両の安
定性を確保するためにスロットルアクチュエータ190
により第2スロットル弁192を制御し、フューエルカ
ット制御では、燃費を高めるために、惰行走行において
エンジン回転速度NE が予め設定されたフューエルカッ
ト回転速度NCUT を上まわる期間だけ燃料噴射弁186
を閉じる。
【0039】図8は、上記変速用電子制御装置184の
制御機能の要部を説明する機能ブロック線図である。図
8において、車両がたとえば図7のスリップ制御領域内
の走行状態或いは減速走行状態となると、スリップ制御
手段196が、ロックアップクラッチ32の実際のスリ
ップ回転速度NSLP(=NE −NT )と、予め設定さ
れた目標スリップ回転速度TNSLPとが一致するよう
に、数式2の制御式により算出された制御値DSLUを
出力する。回転変動検出手段198によりタービン翼車
22の回転速度NT の変動が検出された場合には、スリ
ップ制御中止手段200によりスリップ制御手段196
によるスリップ制御が中止させられる。良路判定手段2
02は、スリップ制御中止手段200によるスリップ制
御の中止期間におけるタービン翼車22の回転速度NT
の変動に基づいて車両の走行路面が凹凸のない良路であ
ることを判定する。すなわち、良路判定手段202は、
スリップ制御の中止期間におけるタービン翼車22の回
転速度NT の変動が継続している間は良路判定を行わな
いが、継続しなくなった場合は良路判定を行う。そし
て、スリップ制御再実行手段204は、良路判定手段2
02により車両の走行路が良路であることが判定された
場合には、スリップ制御中止手段200により中止され
ていたスリップ制御を再び実行させる。
【0040】また、ジャダ判定手段206は、スリップ
制御中止手段200によりスリップ制御が中止させられ
ている期間におけるタービン翼車22の回転速度NT
変動に基づいてスリップ制御中におけるロックアップク
ラッチ32のジャダの発生を判定する。スリップ制御停
止手段208は、そのジャダ判定手段206によりロッ
クアップクラッチ32のジャダの発生が判定された場合
は、スリップ制御手段196によるスリップ制御を継続
して停止させる。
【0041】また、回転変動検出手段198は、たとえ
ば、タービン翼車22の回転速度N T の変動数を予め設
定された時間範囲内に計数する回転変動カウンタCJA
DAの計数内容が予め設定された判断基準値tKNJA
DAを超えたことに基づいて回転変動を検出する。ま
た、スリップ制御中止手段200によりスリップ制御が
中止されている期間内であって、回転変動検出手段19
8によりタービン翼車22の回転変動が検出されてから
の所定の第1経過時間tKTJDC1が経過した後にお
けるタービン翼車22の回転速度の変動数を計数する悪
路判定カウンタCAKUROを備え、前記ジャダ判定手
段206は、第1経過時間tKTJDC1よりも長い所
定の第2経過時間tKTJDC2が経過したときの悪路
判定カウンタCAKUROの計数内容が予め設定された
悪路判断基準値tKNAKUROよりも低いことに基づ
いてジャダを判定する。
【0042】また、前記悪路判定カウンタCAKURO
は前記第2経過時間tKTJDC2が経過した後は予め
設定された良路判断基準値tKNRYOROに到達する
毎にクリアされるものである一方、その悪路判定カウン
タCAKUROがクリアされてからの経過時間を計数す
る良路判定タイマCTJDC3がさらに設けられ、前記
良路判定手段202は、その良路判定タイマCTJDC
3の計数内容が予め設定された第3経過時間tKTJD
C3を超えたことに基づいて良路を判定する。
【0043】図9および図10は、その変速用電子制御
装置184の制御作動の要部、すなわちスリップ制御ル
ーチンおよびフラグ切換ルーチンをそれぞれ示してお
り、それらのルーチンは相互に並列的或いは直列的に繰
り返し実行される。
【0044】図9のステップSN1(以下、ステップを
省略する)では、スリップ制御禁止フラグXJLB1の
内容が「1」にセットされているか否かが判断される。
このフラグXJLB1は、その内容が「1」にセットさ
れているときに、作動油の劣化或いはロックアップクラ
ッチ32の表面状態の悪化によってジャダなどが発生し
てスリップ制御がうまく実行されない状態であることを
示し、たとえばイグニッションキーが操作されることに
よりクリアされるようになっている。
【0045】上記SN1の判断が肯定された場合は、S
N8においてフラグXEXEの内容が「0」にクリアさ
れることによりスリップ制御が中止された後、SN9に
おいてロックアップリレー弁52がオフ状態とされるこ
とにより、ロックアップクラッチ32が解放状態とさ
れ、スリップ制御の実行が阻止される。しかし、上記S
N1の判断が否定された場合は、SN2においてスリッ
プ制御が実行中であるか否かがフラグXEXEの内容に
基づいて判断される。
【0046】当初は上記SN2の判断が否定されるの
で、SN3においてスリップ制御開始条件が満足された
か否かが判断される。このスリップ制御開始条件には、
図7のスリップ制御領域内であること或いは減速走行で
あること、およびスロットル弁開度TAPの変化が小さ
い定常状態であることなどが含まれる。このSN3の判
断が否定された場合は前記SN8以下が実行されるが、
肯定された場合は、前記スリップ制御手段196に対応
するSN4においてスリップ制御が実行されるとともに
前記フラグXEXEの内容が「1」にセットされる。こ
のスリップ制御では、数式2から実際の制御偏差ΔEが
解消されるように制御出力値DSLUが決定され且つ出
力される。
【0047】次いで、SN5において、ジャダ判定準備
フラグXJRDYの内容が「1」にセットされているか
否かが判断される。このSN5の判断が否定された場合
は、SN6においてロックアップリレー弁52がオン状
態に切り換えられるので、上記制御出力値DSLUに従
ってスリップ制御が実行される。しかし、SN5の判断
が肯定された場合は、SN9においてロックアップリレ
ー弁52がオフ状態に切り換えられるので、ロックアッ
プクラッチ32が解放状態とされて、上記制御出力値D
SLUの出力に拘わらずスリップ制御が中止される。
【0048】上記のようにしてフラグXEXEの内容が
一旦「1」にセットされると、次の制御サイクルにおけ
るSN2の判断が肯定されるので、SN7においてスリ
ップ制御の終了条件が満足されたか否かが判断される。
このスリップ制御の終了条件には、図7のスリップ制御
領域外であること或いは減速走行でないこと、およびス
ロットル弁開度TAPの変化が大きく過渡状態であるこ
となどが含まれる。そして、このSN7の判断が否定さ
れた場合は、前記SN4以下が実行されてスリップ制御
状態が継続されるが、SN7の判断が肯定された場合
は、前記SN8以下が実行されてスリップ制御が終了さ
せられる。
【0049】図10において、SO1では、スリップ制
御中であるか否かがフラグXEXEの内容に基づいて判
断される。このSO1の判断が否定された場合はSO2
において回転変動カウンタCJADAの内容が「0」に
クリアされた後に本ルーチンが終了させられ、上記SO
1以下の実行が繰り返される。上記SO1の判断が肯定
された場合は、SO3においてジャダ判定準備フラグX
JRDYの内容が「1」であるか否かが判断される。
【0050】上記SO3の判断が否定された場合は、S
O4、SO5、SO6において悪路判定カウンタCAK
URO、経過時間タイマCTJDC、良路判定タイマC
TJDC3の内容が「0」にクリアされ、SO7におい
て回転変動カウンタCJADAのカウントアップが行わ
れる。この回転変動カウンタCJADAは、予め設定さ
れた一定の時間間隔毎にクリアされ、その時間間隔内で
タービン回転速度NTの回転変動数たとえば回転変動の
上ピーク点および下ピーク点を繰り返し計数するもので
あり、その一定の時間間隔が相互にずらされた複数個が
用意されている。
【0051】次いで、前記回転変動検出手段198に対
応するSO8では、回転変動カウンタCJADAの内容
が予め設定された判断基準値tKNJADAに到達した
か否かが判断される。この判断基準値tKNJADA
は、スリップ制御に影響する程度の回転変動を検出する
ために予め実験的に求められた値である。このSO8の
判断が否定された場合は本ルーチンが終了させられる
が、肯定された場合は、前記スリップ制御中止手段20
0に対応するSO9においてジャダ判定準備フラグXJ
RDYの内容が「1」にセットされた後、本ルーチンが
終了させられる。このようにジャダ判定準備フラグXJ
RDYの内容が「1」にセットされると、前記SN5の
判断が肯定されてロックアップリレー弁52がオフ状態
に切り換えられ、実行中のスリップ制御が停止させられ
る。図11および図12のt1 時点はこの状態を示して
いる。なお、図11は、悪路判定が行われた場合の作動
を示すタイムチャートであり、図12は、ジャダ判定が
行われた場合の作動を示すタイムチャートである。
【0052】上記のようにしてジャダ判定準備フラグX
JRDYの内容が「1」にセットされると、次の制御サ
イクルではSO3の判断が肯定されるので、続くSO1
0において、前記SO8において回転変動が判定されて
からの経過時間を計数する経過時間タイマCTJDCの
内容に「1」が計数された後、SO11においてその経
過時間タイマCTJDCの内容が予め設定された第1経
過時間tKTJDC1以上となったか否かが判断され
る。この第1経過時間tKTJDC1は、スリップ制御
の中止が実行されてからロックアップクラッチ32が確
実に解放されるまでの遅れ時間に相当するように設定さ
れた値であり、たとえば0.2秒程度の値が採用され
る。これにより、悪路判定カウンタCAKUROにより
計数されるタービン回転速度の変動数に対するロックア
ップクラッチ32の摩擦変動の影響が除去され、専ら路
面による影響でタービン回転速度が変動させられるよう
になる。
【0053】当初は上記SO11の判断が否定されるの
で本ルーチンが終了させられるが、上記第1経過時間t
KTJDC1以上の時間が経過すると、それ以後の悪路
判定カウンタCAKUROの計数が許可されるので、S
O12において悪路判定カウンタCAKUROのカウン
トアップが行われる。図11および図12のt2 時点は
この状態を示す。この悪路判定カウンタCAKURO
は、回転変動カウンタCJADAと同様にタービン回転
速度NT の変動数を計数するものであるが、クリアの操
作があるまでは計数を継続する。次いで、SO13で
は、前記経過時間タイマCTJDCの内容が予め設定さ
れた第2経過時間tKTJDC2と同じ値となったか否
かが判断される。この第2経過時間tKTJDC2は、
路面の凹凸の影響を判定するために予め設定された必要
かつ充分な時間であり、たとえば0.7秒程度の値が採
用される。
【0054】当初は上記SO13の判断が否定されるの
で、SO14において経過時間タイマCTJDCの内容
が予め設定された第2経過時間tKTJDC2以上とな
ったか否かが判断される。当初はこのSO14の判断も
否定されるので、本ルーチンが終了させられる。
【0055】上記のステップが繰り返し実行されるう
ち、経過時間タイマCTJDCの内容が予め設定された
第2経過時間tKTJDC2に到達すると、SO13の
判断が肯定されて、SO15において悪路判定カウンタ
CAKUROの内容が予め設定された悪路判断基準値t
KNAKURO以上であるか否かが判断される。悪路で
ある場合は路面に凹凸が多く存在するために上記SO1
5の判断が肯定されるので、SO16において悪路判定
カウンタCAKUROの内容がクリアされた後、本ルー
チンが終了させられる。図11のt3 時点はこの状態を
示している。
【0056】一方、ジャダ判定準備フラグXJRDYの
内容が「1」とされているスリップ制御中止期間におい
て上記悪路判定カウンタCAKUROの内容が悪路判断
基準値tKNAKUROに到達しない場合は、前記SO
15の判断が否定される。このような場合は、前記回転
変動カウンタCJADAはロックアップクラッチ32の
ジャダ現象による回転変動を計数したものであることが
明らかであるから、SO17においてスリップ制御禁止
フラグXJLB1の内容が「1」にセットされる。図1
2のt3 時点はこの状態を示している。これにより、前
記SN1の判断が肯定されるので、それまでジャダ判定
準備フラグXJRDYの内容が「1」とされることによ
り中止されていたスリップ制御が、スリップ制御禁止フ
ラグXJLB1の内容が「1」とされることにより更に
継続してスリップ制御が停止される。本実施例では、上
記SO15はジャダ判定手段206に対応し、上記SO
17がスリップ制御停止手段208に対応している。
【0057】上記のようにSO13の判断が一旦肯定さ
れた以後では、SO14の判断条件が常に満足されるの
で、続くSO18において、悪路判定カウンタCAKU
ROの内容が予め設定された良路判断基準値tKNRY
ORO以上であるか否かが判断される。当初はこのSO
18の判断が否定されるので、SO19において良路判
定タイマCTJDC3の内容に「1」が加算された後、
前記良路判定手段202に対応するSO20において良
路判定タイマCTJDC3の内容が予め設定された第3
経過時間tKTJDC3以上となったか否かが判断され
る。この第3経過時間tKTJDC3は、路面の凹凸に
関連したタービン回転速度NT の回転変動数が良路と判
定できる程度に少ない状態か否かを判定できるように予
め定められた時間幅である。当初は、このSO20の判
断も否定されるので本ルーチンが終了させられる。
【0058】上記のステップが繰り返し実行されるう
ち、悪路判定カウンタCAKUROの内容が予め設定さ
れた良路判断基準値tKNRYORO以上となると、S
O18の判断が肯定されるので、SO22およびSO2
3において悪路判定カウンタCAKUROの内容および
上記良路判定タイマCTJDC3の内容がクリアされた
後、本ルーチンが終了させられる。図11のt4 時点は
この状態を示す。
【0059】しかし、以上のステップが繰り返し実行さ
れるうち、良路判定タイマCTJDC3の内容が予め設
定された第3経過時間tKTJDC3以上となると前記
SO20の判断が肯定されるので、前記スリップ制御再
実行手段204に対応するSO21においてジャダ判定
準備フラグXJRDYの内容が「0」にクリアされる。
これにより、前記SN5の判断が否定されてSN6のス
リップ制御が再開される。図11のt5 時点はこの状態
を示す。
【0060】上述のように、本実施例によれば、回転変
動検出手段198に対応するSO8によりタービン翼車
22の回転速度NT の変動が検出された場合には、スリ
ップ制御中止手段200に対応するSO9によりスリッ
プ制御手段196によるスリップ制御が中止させられ
る。良路判定手段202に対応するSO20は、スリッ
プ制御の中止期間におけるタービン翼車22の回転速度
T の変動に基づいて車両の走行路面が凹凸のない良路
であることを判定する。そして、スリップ制御再実行手
段204に対応するSO21は、良路判定手段202に
より車両の走行路が良路であることが判定された場合に
は、スリップ制御中止手段200により中止されていた
スリップ制御を再び実行させる。このように、良路判定
手段202により車両の走行路が良路であることが判定
された場合に、スリップ制御中止手段200により中止
されていたスリップ制御が再び実行させられるので、継
続的に走行路面の凹凸に由来する振動が発生するような
場合のスリップ制御の中止および再実施の繰り返しが解
消され、車両の走行性が損なわれることがない。
【0061】また、本実施例によれば、スリップ制御中
止手段200によりスリップ制御が中止させられている
期間におけるタービン翼車22の回転速度NT の変動に
基づいてスリップ制御中におけるロックアップクラッチ
32のジャダの発生を判定するジャダ判定手段206
(SO15)と、そのジャダ判定手段206によりロッ
クアップクラッチ32のジャダの発生が判定された場合
は、スリップ制御手段196によるスリップ制御を継続
して停止させるスリップ制御停止手段208(SO1
7)とがさらに含まれる。このため、ジャダが発生した
ときには、ロックアップクラッチ32の摩擦条件の変化
が期待できる車両状態、たとえば一旦エンジンが停止さ
せられてから再始動されるときまで、スリップ制御が停
止させられる利点がある。
【0062】また、本実施例によれば、悪路判定カウン
タCAKUROは第1経過時間tKTJDC1の経過後
において、ロックアップクラッチ32が確実に解放され
た状態で計数が許容されるので、悪路判定およびジャダ
判定の精度が高められる利点がある。
【0063】また、本実施例では、スリップ制御中止手
段200によりスリップ制御が中止されている期間内で
あって、回転変動検出手段198によりタービン翼車2
2の回転速度NT の変動が検出されてからの所定の第1
経過時間tKTJDC1が経過した後におけるタービン
翼車22の回転速度NT の変動を計数する悪路判定カウ
ンタCAKUROを備え、ジャダ判定手段206は、第
1経過時間tKTJDC1よりも長い所定の第2経過時
間tKTJDC2が経過したときの悪路判定カウンタC
AKUROの計数内容が予め設定された悪路判断基準値
tKNAKUROよりも低いことに基づいてジャダを判
定する。また悪路判定カウンタCAKUROは第2経過
時間tKTJDC2が経過した後は予め設定された良路
判断基準値tKNRYOROに到達する毎にクリアされ
るものである一方、その悪路判定カウンタCAKURO
がクリアされてからの経過時間を計数する良路判定タイ
マCTJDC3がさらに設けられ、前記良路判定手段2
02は、その良路判定タイマCTJDC3の計数内容が
予め設定された第3経過時間tKTJDC3を超えたこ
とに基づいて良路を判定する。このように、上記悪路判
定カウンタCAKUROは、悪路判定、良路判定にも用
いられるので、それぞれのカウンタを用意するに比較し
て制御ロジックが簡単となる利点がある。
【0064】以上、本発明の一実施例を図面に基づいて
説明したが、本発明はその他の態様においても適用され
る。
【0065】たとえば、前述の実施例においては、回転
変動検出手段198によってタービン翼車22の回転速
度NT の回転変動を検出するために、そのタービン翼車
22の回転速度NT すなわち自動変速機14の入力軸2
0の回転速度をタービン回転速度センサ178によって
直接的に検出していたが、回転速度NT を間接的に検出
することもできる。例えば、車速センサ168で検出さ
れたカウンタ軸(出力軸)40の回転速度Nout に、実
際に選択されている自動変速機14のギヤ段に対応する
変速比Iを乗ずれば回転速度NT が得られ、或いは、車
輪に回転速度センサが設けられている場合には、その回
転速度に終減速機の減速比および変速比Iを乗ずれば回
転速度NT が得られることから、何れにしても、タービ
ン翼車22の回転速度NT が実質的に検出されることに
なるため、必ずしも直接的に検出する必要はないのであ
る。なお、上記のように間接的に検出する場合には、タ
ービン回転速度センサ178は設けられなくとも良い。
【0066】また、上記のようにタービン翼車22の回
転速度NT を間接的に検出する場合には、検出したカウ
ンタ軸(出力軸)40の回転速度Nout や車輪の回転速
度をそのまま回転速度NT に代えて用いて、上記回転変
動検出手段198によってタービン翼車22の回転速度
T の変動を検出しても良い。すなわち、実質的にター
ビン翼車22の回転速度NT の変動が判定されれば差し
支えないのである。
【0067】なお、上述したのはあくまでも本発明の一
実施例であり、本発明はその主旨を逸脱しない範囲にお
いて種々変更が加えられ得るものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例のスリップ制御装置が適用さ
れた車両用動力伝達装置を示す図である。
【図2】図1のロックアップクラッチ付トルクコンバー
タを備えた自動変速機において、第1電磁弁および第2
電磁弁の作動の組み合わせとそれにより得られる変速段
との関係を説明する図表である。
【図3】図1の車両に備えられている制御装置の構成を
説明するブロック線図である。
【図4】図3の油圧制御回路の要部構成を説明する図で
ある。
【図5】図4のリニアソレノイド弁の出力特性を示す図
である。
【図6】図4の油圧制御回路に設けられたスリップ制御
弁の特性であって、係合用油室および解放用油室との圧
力差ΔPとスリップ制御用信号圧PSLU との関係を説明
する図である。
【図7】図3の変速用電子制御装置に記憶されている、
車両の走行状態とロックアップクラッチの係合状態との
関係を示す図である。
【図8】図3の変速用電子制御装置の制御機能の要部を
説明する機能ブロック線図である。
【図9】図3の変速用電子制御装置の制御機能の要部を
説明するフローチャートであって、スリップ制御ルーチ
ンを示す図である。
【図10】図3の変速用電子制御装置の制御機能の要部
を説明するフローチャートであって、フラグ切換ルーチ
ンを示す図である。
【図11】図9および図10の制御作動であって、悪路
判定された場合を説明するタイムチャートである。
【図12】図9および図10の制御作動であって、ジャ
ダ判定された場合を説明するタイムチャートである。
【符号の説明】
18:ポンプ翼車 22:タービン翼車 32:ロックアップクラッチ 196:スリップ制御手段 198:回転変動検出手段 200:スリップ制御中止手段 202:良路判定手段 204:スリップ制御再実行手段 206:ジャダ判定手段 208:スリップ制御停止手段

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポンプ翼車とタービン翼車との間に設け
    られたロックアップクラッチを有する車両において、前
    記ロックアップクラッチのスリップ回転速度が所定の目
    標スリップ回転速度と一致するように制御するスリップ
    制御手段を備えた車両用ロックアップクラッチのスリッ
    プ制御装置であって、 前記タービン翼車の回転速度の変動を検出する回転変動
    検出手段と、 該回転変動検出手段により前記タービン翼車の回転速度
    の変動が検出された場合には、前記スリップ制御手段に
    よるスリップ制御を中止させるスリップ制御中止手段
    と、 前記タービン翼車の回転速度の変動に基づいて、前記車
    両の走行路面が凹凸のない良路であることを判定する良
    路判定手段と、 該良路判定手段により車両の走行路が良路であることが
    判定された場合には、前記スリップ制御中止手段により
    中止されていたスリップ制御を再び実行させるスリップ
    制御再実行手段とを、含むことを特徴とする車両用ロッ
    クアップクラッチのスリップ制御装置。
  2. 【請求項2】 前記スリップ制御中止手段によりスリッ
    プ制御が中止させられている期間における前記タービン
    翼車の回転速度の変動に基づいて前記スリップ制御中に
    おけるロックアップクラッチのジャダの発生を判定する
    ジャダ判定手段と、 該ジャダ判定手段により前記ロックアップクラッチのジ
    ャダの発生が判定された場合は、前記スリップ制御手段
    によるスリップ制御を継続的に停止させるスリップ制御
    停止手段とを、さらに含むものである請求項1の車両用
    ロックアップクラッチのスリップ制御装置。
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