JPH0886287A - スクロール流体機械 - Google Patents

スクロール流体機械

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JPH0886287A
JPH0886287A JP22139194A JP22139194A JPH0886287A JP H0886287 A JPH0886287 A JP H0886287A JP 22139194 A JP22139194 A JP 22139194A JP 22139194 A JP22139194 A JP 22139194A JP H0886287 A JPH0886287 A JP H0886287A
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Isamu Tsubono
勇 坪野
Masahiro Takebayashi
昌寛 竹林
Hirokatsu Kosokabe
弘勝 香曽我部
Kazuo Sekigami
和夫 関上
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Abstract

(57)【要約】 【目的】スクロール部材の一方を自転せずに旋回運動
し、もう一方を軸方向のみに可動とし、ラップの歯先と
歯底の圧接を回避させるために両スクロールの最小距離
を規定する機構を設けることにより、高効率化を図るこ
とを目的とする。 【構成】スクロールラップ2b、3b、200b、30
0bの厚さを中央から外周へ向かうにつれて減少させ、
スクロールラップ部材の背面をスラスト軸受とした。ま
た、両スクロールラップ2b、3bの歯先のみに段差加
工を行った。また、フロートスクロール部材2が旋回ス
クロール部材に近づき過ぎないように固定台9を設け
た。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、一方のスクロール部材
が固定され、他方のスクロール部材が自転を阻止された
状態で旋回運動を行う形式スクロール流体機械、あるい
は両方のスクロール部材がスクロールラップの幾何学的
中心をずらせて配置され、両方のスクロール部材が共に
同一方向に同一速度で回転するいわゆる両回転形のスク
ロール流体機械に係り、特に両方のスクロールラップの
歯先と歯底との間のシール性を保つようにし、かつその
箇所の荷重を低減するために好適なスクロール流体機械
に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の装置としては、特開平5−263
776号公報に記載のように、旋回しない方のスクロー
ル部材の鏡板と、旋回するスクロール部材の背面で圧縮
ガス荷重を受ける対向面に固定されて配置された支持フ
レームとの当接面を圧縮室とは反対側に向かって拡大す
るようにテーパ面を形成し、両スクロールラップの歯先
と歯底との間のシール性を保ち、かつその箇所での荷重
を低減するように構成しているスクロール流体機械があ
る。また、特開平3−11102号公報に記載のよう
に、スクロ−ルラップ厚さを変化させて、スクロ−ルラ
ップ厚さを一定にしているスクロール流体機械では実現
できない三日月形状の閉空間の容積を変化させるように
したスクロール流体機械がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】特開平5−26377
6号公報に記載の従来技術では、旋回するスクロール部
材の旋回運動面と平行なある軸を中心に、旋回しない方
のスクロール部材が、圧縮ガスの作用により回転運動す
る点について十分考慮されていなく、圧縮室のシール性
が損なわれ、圧縮効率が低下するという問題がある。ま
た、特開平3−11102号公報に記載の従来技術で
は、スクロールラップの強度や漏れ性能に関して十分考
慮されていない。すなわち、スクロールラップの内外面
の間の圧力差が大きい上に、高温になるため熱膨張でラ
ップの歯先と歯底との間の圧接が生じやすいスクロール
ラップ中央部において、スクロ−ルラップを薄く形成し
ている。その結果、スクロールラップ中央部におけるス
クロールラップの強度が問題となる上に、中央部におけ
る歯先と歯底との間の漏れが大きくなり、流体機械の信
頼性および圧縮効率が低下するという問題がある。
【0004】本発明の第1の目的は、上記の従来の技術
の問題点を解決して、特定の運転範囲において高効率の
スクロール流体機械を提供することにある。
【0005】本発明の第2の目的は、構造が簡単で信頼
性が高く、機械加工の容易なスクロール流体機械を提供
することにある。
【0006】本発明の第4の目的は、スクロールラップ
厚さが一様な従来のスクロール流体機械と比較して小形
軽量で高効率のスクロール流体機械を提供することにあ
る。
【0007】本発明の第5の目的は、加工が容易で高信
頼性で高効率のスクロール流体機械を提供することにあ
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記第1の目的を達成す
るために、本発明のスクロール流体機械は、鏡板に立設
するスクロールラップを有する旋回スクロ−ル部材と、
該旋回スクロ−ル部材を駆動するシャフトと、該シャフ
トを回転駆動するためのモ−タと、前記旋回スクロ−ル
部材を第二のスクロール部材に対して自転を阻止して旋
回運動させるための自転防止部材と、それらを収納した
ケ−シングとを備えたスクロール流体機械において、前
記第二スクロール部材が回転防止部材により前記ケーシ
ングに対して回転を阻止され、かつ前記シャフトの軸線
方向に移動可能なフロ−ト式スクロール部材であって、
前記旋回スクロール部材のスクロールラップを立設した
鏡板の面と反対の面側に、該旋回スクロ−ルを支持する
スラスト軸受を設け、前記フロ−ト式スクロ−ル部材と
に前記旋回スクロール部材とのシャフトの軸線方向の最
小距離を規定するフロ−トストッパを設けたことを特徴
とするものである。
【0009】又、鏡板に立設するスクロールラップを有
する旋回スクロ−ル部材と、該旋回スクロ−ル部材を駆
動するシャフトと、該シャフトを回転駆動するためのモ
−タと、前記旋回スクロ−ル部材を第二のスクロール部
材に対して自転を阻止して旋回運動させるための自転防
止部材と、それらを収納したケ−シングとを備えたスク
ロール流体機械において、前記第二スクロール部材が、
回転防止部材により前記ケーシングに対して回転を阻止
され、前記シャフトを軸受支持するフレ−ムに固定され
た固定台内に隙間を有して嵌合されて該固定台に取り付
けられた外周カバ−によって軸線方向の移動範囲を規制
された移動可能なフロ−ト式スクロール部材であって、
前記旋回スクロール部材のスクロールラップを立設した
鏡板の面と反対の面側に該旋回スクロ−ル部材を支持す
るスラスト軸受を設けるとともに、前記フロ−ト式スク
ロ−ル部材の背面側に前記旋回スクロ−ル部材とフロ−
ト式スクロ−ル部材とにより形成される圧縮室の圧力を
導入する空間を設けたことを特徴とするものである。
【0010】又、鏡板に立設するスクロールラップを有
する旋回スクロ−ル部材と、該旋回スクロ−ル部材を駆
動するシャフトと、該シャフトを回転駆動するためのモ
−タと、前記旋回スクロ−ル部材を第二のスクロール部
材に対して自転を阻止して旋回運動させるための自転防
止部材と、それらを収納したケ−シングとを備えたスク
ロール流体機械において、前記第二スクロール部材が回
転防止部材により前記ケーシングに対して回転を阻止さ
れ、かつ前記シャフトの軸線方向に移動可能なフロ−ト
式スクロール部材であって、前記旋回スクロール部材の
スクロールラップを立設した鏡板の面と反対の面側に該
旋回スクロ−ルを支持するスラスト軸受を設け、前記フ
ロ−ト式スクロ−ル部材のスクロールラップを立設した
鏡板の面と反対の面の内周側に前記旋回スクロ−ル部材
とフロ−ト式スクロ−ル部材とにより形成される圧縮室
の圧力を導入する空間を、その外周側に吸入側と連通す
る空間を形成したことを特徴とするものである。
【0011】又、鏡板に立設するスクロールラップを有
する旋回スクロ−ル部材と、該旋回スクロ−ル部材を駆
動するシャフトと、該シャフトを回転駆動するためのモ
−タと、前記旋回スクロ−ル部材を固定スクロール部材
に対して自転を阻止して旋回運動させるための自転防止
部材と、それらを収納したケ−シングとを備えたスクロ
ール流体機械において、前記旋回スクロール部材のスク
ロールラップを立設した鏡板の面と反対の面側に、旋回
スクロ−ルを支持するスラスト軸受が形成され前記シャ
フトの軸線方向に移動可能なフロ−ト支持部材と支持ス
トッパが配置され、かつ該支持ストッパにより前記フロ
−ト支持部材のスラスト面位置を規定していることを特
徴とするものである。
【0012】又、鏡板とそれに立設するスクロールラッ
プを有する第一および第二のスクロール部材を具備し、
該第一及び第二のスクロール部材を組み合わせて圧縮室
を形成するポンプ部と、前記第一のスクロール部材と第
二のスクロール部材とが自転を伴わない旋回運動となる
ように相対運動を与える駆動部と、前記ポンプ部と前記
駆動部をケーシング内に収納したスクロール流体機械に
おいて、前記第一及び第二のスクロール部材を軸方向に
移動可能に構成するとともに、前記第一及び第二のスク
ロールラップを立設した面と反対側の面側にスラスト軸
受を設け、該スラスト軸受により前記スクロ−ル部材を
移動範囲を規制するとともに支持することを特徴とする
ものである。
【0013】上記第2の目的を達成するために、本発明
のスクロール流体機械は、第1の目的を達成するための
手段とともに、前記フロ−トストッパが、前記フロ−ト
式スクロール部材に対して固定配置されたスクロールス
トッパ面とスラストストッパ面とにより構成されている
ものである。
【0014】又、前記スクロール部材の背面側に均圧孔
を介して導かれた吐出圧力が作用する空間が形成されて
いるものである。又、前記旋回スクロ−ルの鏡板のラッ
プを設けられた面側に切欠き部が設けられているもので
ある。又、前記自転防止部材がオルダムリングであっ
て、前記フロ−トストッパの旋回スクロ−ル側にオルダ
ム溝が、その反対側に回転止め溝が設けられているもの
である。又、前記圧縮室の圧力を導入する空間にリリ−
ス弁が設けられているものである。
【0015】上記第3の目的を達成するために、本発明
のスクロール流体機械は、鏡板に立設するスクロールラ
ップを有する旋回スクロ−ル部材と、該旋回スクロ−ル
部材を駆動するシャフトと、該シャフトを回転駆動する
ためのモ−タと、前記旋回スクロ−ル部材を固定スクロ
ール部材に対して自転を阻止して旋回運動させるための
自転防止部材と、それらを収納したケ−シングとを備え
たスクロール流体機械において、前記旋回スクロール部
材のスクロールラップを立設した鏡板の面と反対の面側
に、旋回スクロ−ルを支持するスラスト軸受が形成され
前記シャフトの軸線方向に移動可能なフロ−ト支持部材
と支持ストッパが配置され、かつ該支持ストッパにより
前記フロ−ト支持部材のスラスト面位置を規定している
ことを特徴とするものである。
【0016】又、前記旋回スクロール部材のスラスト軸
受をすべり軸受で構成し、該スラスト軸受面を除いた少
なくとも一部の表面になじみ性のある被膜を設けたもの
である。
【0017】上記第4の目的を達成するために、本発明
のスクロール流体機械は、前記旋回スクロール部材のス
ラスト軸受をすべり軸受とし、その軸受面を除いた全表
面または一部の表面に、なじみ性のある被膜を設けたも
のである。
【0018】上記第5の目的を達成するために、本発明
のスクロール流体機械は、前記スクロールラップのラッ
プ厚さが、該スクロールラップの中央側および外周側の
端部を除き、中央から外周へ行くにつれて減少するよう
に形成されているものである。又、前記スクロールラッ
プのラップ厚さを、該スクロールラップの中央側および
外周側の端部を除き、中央側から外周側に変化させると
ともに、前記両スクロールラップのラップ高さをスクロ
ールラップの外周側から中央側に段階的または連続的に
減少させたものである。
【0019】
【作用】上記のように構成しているので、圧縮室内の圧
縮ガスの作用により、両方のスクロール部材が離れよう
とするが、上記のように構成しているので、上記した接
近力により、両方のスクロール部材が離れるのを阻止す
ることができ、効率の良い圧縮動作を継続することでき
る。
【0020】又、前前記距離規定機構によって、ラップ
の歯先と歯底との間が接触しない運転が可能となり、歯
先と歯底の間の摩擦ロスが少なく高効率を得ることがで
きる。また、前記距離規定機構によって規定する前記フ
ロ−ト式スクロール部材と前記旋回スクロ−ルとの対向
面の距離を、歯先と歯底との間が圧接しないように隙間
を小さく設定することができ、歯先と歯底との間の摩擦
ロスが少なく、かつ漏れが少なくなるため、高い効率を
得ることができる。実際の運転条件の場合、フロ−ト式
スクロール部材と旋回スクロ−ル部材の対向面の設定距
離は、各部の圧力変形や熱変形が生じるために運転条件
で変化するが、設定した初期の距離を適正に設定するこ
とにより、その特定の運転条件の範囲で高い効率を得る
ことができる。このため、高頻度の運転条件時で距離を
設定することにより、高効率な運転を高頻度で行うこと
ができる。
【0021】又、異なる運転条件で、フロ−ト式スクロ
ール部材と旋回スクロ−ルのラップの歯先と歯底との間
で圧接する場合が生じるような場合にも、両ラップが離
れてラップの破損や摩耗を回避できるため、高い信頼性
を得ることができる。
【0022】又、前記スクロールストッパ面と前記スラ
ストストッパ面が接触すると、前記フロ−ト式スクロー
ル部材と旋回スクロ−ルの対向面間の距離が規定される
ため、簡単な構成により前記距離規定機構を得ることが
できる。
【0023】又、前記フロート支持部材は前記旋回運動
面内の任意の方向に移動してもかまわないため、前記フ
ロート支持部材の支持が容易となり、構成が単純とな
る。
【0024】又、前記スラスト軸受を滑り軸受としたの
で機構的に単純となるうえに、単位面積あたりの負荷が
小さくなるため、信頼性を高くできる。又、両スクロー
ルラップの機械加工精度を下げても被膜のなじみにより
形状精度が補正されるため、性能を低下させることなく
機械加工を容易にできる。ここで、スラスト軸受面に被
膜を設けないのは、その軸受面被膜を設けると、それが
なじむ前にスクロールラップの歯先と歯底の被膜がなじ
んで削られてしまい、軸受面被膜がなじみ終えたときに
はスクロールラップの歯先歯底間に隙間が生じて性能が
低下するためである。
【0025】又、過酷な条件下に有るスクロールラップ
中央部のラップ強度の向上とともにラップの歯先と歯底
との間の漏れが抑制できる。また、スクロールラップ厚
さの一様な従来のスクロール流体機械と比較して、ラッ
プ外周部のラップ厚さを薄くする分だけスクロールラッ
プの立設する最外周位置を中央寄りにできるため、スク
ロールラップ径を小さくできる。このことは同時に、ス
クロール部材にかかるスクロールラップ立設方向のガス
力を小さくする効果も奏するため、スラスト軸受の負荷
荷重が小さくなり、摩擦ロスが小さくなる。この結果、
流体機械を、高信頼性、高効率で小形軽量にできる。
【0026】ラップ厚さが一様でないスクロール部材を
用いると、吸い込み行程や圧縮行程や吐出行程における
圧縮室の体積変化の傾向を変えることができるため、最
適設計を行うことにより流体機械の性能向上が可能とな
る。また、スクロール部材の小径化も可能となる。
【0027】ラップ厚さが一様でないスクロール部材
は、概して溝幅も一様でなくなるため、そのエンドミル
加工はラップの内線と外線を別に加工しなければならな
いため、歯底を精度良く掘り下げる加工は、困難とな
る。一方、歯先高さの加工は、最大ラップ厚さ以上の直
径のエンドミルを用いることにより、容易に加工でき
る。このため、熱膨張によるラップ中央部のスクロール
ラップ歯先歯底間の圧接を、歯底を掘り下げることなく
回避できる。この結果、高効率化や小径化が可能なラッ
プ厚さが一様でないスクロール部材を用いた流体機械に
おいて、高信頼性と高効率を容易に得ることができる。
【0028】
【実施例】本発明の第1の実施例を図1から図14によ
り説明する。本実施例は、第一スクロール部材が旋回運
動し、第二スクロール部材が上下方向に可動なフロート
式旋回形スクロール圧縮機を例にとり説明する。図1は
圧縮機の縦断面図、図2はラップ外線とラップ内線との
関係を説明する図、図3は旋回スクロール部材を上方か
らみた斜視図、図4は旋回スクロール部材を下方からみ
た斜視図、図5はフロートスクロール部材を上方からみ
た斜視図、図6はフロートスクロール部材を下方からみ
た斜視図、図7はフロートスクロール部材の底面図、図
8は旋回スクロール部材の上面図、図9は図1において
矢視IーIでのポンプ部の横断面図、図10はオルダム
リングを上方からみた斜視図、図11はフロートストッ
パの上面図、図12はフロートストッパを上方からみた
斜視図、図13はフレームのスラスト軸受面の概略を示
す平面図、図14はフロートスクロール部材の上面図で
ある。
【0029】本実施例のスクロール流体機械の全体構造
は、図1、図3、図4に示されるようになっている。旋
回スクロール部材3は、鏡板3aにスクロールラップ3
bが立設されており、反対の面の中央部にボス部3c
が、その面の外周部にはすべり軸受で構成されたスラス
ト軸受3dが設けられている。鏡板3aの外周部にはオ
ルダム突起部3e、3fが突出され、そのオルダム突起
部3e、3fには旋回オルダム溝3g、3hが設けられ
ている。又、鏡板3aの外周部にはオルダム支持突起部
3i、3jが設けられている。図8に示すように、スク
ロールラップ3bは、中央側の端部3l、外周側の端部
3mを除いて、中央から外周へ向かうにつれてラップの
厚さが減少するように形成されている。ここで、このス
クロールラップ3bの厚さは、図2に示すように、ラッ
プ外線とラップ内線とのなす角度αとβとが等しくなる
線分A1、B1の長さに設定している。また、スクロー
ルラップ3bのバランスをとるために、鏡板3aの上面
を直線上に切欠いたバランス切欠き部3kを設けてい
る。鏡板3aの下面の外周は、円筒状になっているた
め、スクロールラップの加工時や搬送時のチャッキング
面として用いることができ、加工時の取扱いが容易とな
り、圧縮機の加工性を向上できるようになっている。
【0030】図5から図7に示すように、フロートスク
ロール部材2は、鏡板2aにスクロールラップ2bが立
設されており、上面の中央部にはシール突起部2cが設
けられている。このシール突起部2cの内部には、中央
付近に吐出穴2dが形成されており、その外周側に過圧
縮防止用のリリース穴2eが2個設けられている。図1
4に二点鎖線で示すように、一体化したリリース弁23
が、リリース穴2eを覆うようにねじ50によりフロー
トスクロール部材2に固定されており、圧縮過程での圧
縮室の圧力が吐出圧力より大きくなったとき、リリース
弁23が開いて圧縮されたガスをリリースするようにな
っている。リリース穴2eは、図14にハッチング部と
して示すように、ねじ50のねじ穴2iとほぼ同一の面
上に開口部が位置するように形成されている。ここで、
中央カバー24により、リリース弁23の最大リフト、
すなわち開口度が規定されている。また、シール突起部
2cの外部側には均圧穴2fが設けられている。鏡板2
aの下面側には回転止め2g、2hが突出している。ス
クロールラップ2bは、中央側の端部2l及び外周側の
端部2mを除いて、中央から外周に向かうにしたがって
ラップの厚さが次第に減少するように形成されている。
ここで、運転される頻度が高い条件で、フロートスクロ
ール部材2が上方に動かないように、かつストッパ面7
fに鏡板2aの下面を押付ける状態になるようにスクロ
ールラップ2b、3bの高さを設定している。なお、こ
のリリース弁23とフロートスクロール2との固定は、
ネジ止めする代わりに、かしめピン、接着、溶接または
銀ロウ付けで固定してもよい。
【0031】図11、図12に示されるように、フロー
トストッパ7には、上面側に回転止め溝7a、7bが設
けられており、下面側には固定オルダム溝7c、7dが
設けられている。この回転止め溝7a、7bと固定オル
ダム溝7c、7dとはほぼ同じ幅に形成されており、溝
の両側の面は同時に加工することができるようになって
いる。また、旋回スクロール部材3が旋回運動を行うこ
とによって、スクロールラップ3bの外周部と干渉する
ことを回避するために、内周切り欠き部7eが設けられ
ている。このフロートストッパ7は、上部固定台8と台
ネジ52でねじ止めされて、固定台9を形成する。な
お、このフロートストッパ7と上部固定台8はネジ止め
によって固定する方法でなくてもよく、かしめピン、接
着、溶接または銀ロウ付けによって固定してもよく、一
体的に成形してもよい。
【0032】シール突起部2cの上部から外周側にかけ
て外周カバー25が設けられており、外周カバー25の
内周部にはカバー押さえ25a、そのカバー押さえ25
a下部にはリング溝25bが設けられている。このリン
グ溝25には耐熱性を有し柔軟な材質のシールリング5
1が挿入されている。
【0033】図10に示すように、オルダムリング5に
は、上面側に固定突起部5a、5bが設けられ、下面側
には旋回突起部5c、5dが設けられている。
【0034】図1、図13に示すように、フレーム4に
は、スラスト面4mに油溝4bが設けられており、この
油溝4bには背面室4dに連通している給油孔4cの開
口部が設けられている。本実施例では、この給油孔4c
を4個設けた場合を示しているが、背面室4dの圧力を
高めに設定したいときには、給油孔4cの数を少なくす
るか、給油孔4cの径を細くする。また、給油孔4c
は、垂直な穴と水平な穴とを交差させて構成してもよ
い。このように構成した場合は、給油孔4cを設置する
位置の制約が少なくなる。また、フレーム4の内周面に
は、旋回スクロール3に設けたオルダム突起部3e、3
fの逃げ部として内周溝4e、4fが設けられている。
さらにその外周面には、ガスの流路であるガス溝4hが
設けられ、吸込み穴4iが側面側に設けられている。
【0035】フレーム4の主軸受4aにシャフト12が
挿入されており、このシャフト12にロータ15が固定
されている。旋回スクロール部材3のボス3cは、旋回
軸受12cに挿入されている。フレーム4のスラスト面
4mには、滑り軸受であるスラスト軸受3dが載置され
ている。又、旋回スクロール部材3の背面には、フレー
ム4との間に背面室11が形成される。オルダムリング
5は、旋回オルダム溝3g、3hに旋回突起部5c、5
dを挿入するようにして、鏡板3aの上面に載置されて
いる。固定台9は、固定オルダム溝7c、7dに固定突
起部5a、5bを挿入するようにしてフレーム上面に載
置されている。旋回スクロール部材3の周囲には吸込み
室60が形成される。フロートスクロール部材8は、回
転止め溝7a、7bに回転止め2g、2hを挿入するよ
うにして、固定台9を形成するフロートストッパ7のス
トッパ面7fに載置されている。フロートスクロール部
材8の外周と上部固定台8の内周とは、直径差にして5
μm程度のすきまばめにする。外周カバー25は、シー
ル突起部2cの外周面のリング溝25b内に設けたシー
ルリング51が摺動するようにして、その固定台9の上
面に載置されている。外周カバー25の内周部に配置し
ているカバー押さえ25aにより、中央カバー24がシ
ール突起部2cの内周から外れるのを防止している。
又、固定台9および外周カバー25は、カバーねじ53
によりフレーム4に固定されるが、この固定を行うとき
シャフト12かロータ15を回しながらトルク管理が行
われる。フロートスクロール部材3の上面と外周カバー
25の間には、上面室10が形成されている。
【0036】シャフト12の内部にはシャフト12を貫
通するように給油孔12aが設けられ、シャフト12の
下端部には給油パイプ12dが固定されている。フレー
ム4に設けられた主軸受部の位置で、給油孔12aと連
通する横給油孔12bが設けら、この横給油孔12bと
連通して主軸受部には螺線溝12eが設けられている。
シャフト12と旋回スクロール部材との係合部には、シ
ャフト12より径が大きい形成された軸受保持部12f
がシャフト12と一体的に形成されており、軸受保持部
12fには、偏心した位置に旋回軸受12cが圧入され
ている。
【0037】ロータ15は、内側の積層鋼板15aと外
側の未着磁の永久磁石15bから構成されており、ロー
タ15の上面には上部バランスウエイト15cが固定さ
れている。このバランスウエイト15cは円筒形状に形
成され、バランスウエイト15cよりも比重の小さい材
料の上部補正バランスウエイト15eを上部バランスウ
エイト15cに固定している。また、ロータ15の下面
には下部バランスウエイト15dが固定されている。こ
の下部バランスウエイト15dは円筒形状に形成され、
下部バランスウエイト15dよりも比重の小さい材料の
下部補正バランスウエイト15fを下部バランスウエイ
ト15dに固定している。バランスウエイト15c、1
5dの材質としては、亜鉛または黄銅を、補正バランス
ウエイト15e、15fの材質としてはアルミ合金が選
定される。また、補正バランスウエイト15e、15f
を直接に積層鋼板15aに固定してもよい。
【0038】ステータ16には、積層鋼板16bの外周
部に油溝16cが設けられている。また、この油溝16
cの代わりに積層鋼板16bの内部に縦穴を設けて油流
路としてもよい。
【0039】フレーム4及びステータ16は焼きばめ、
あるいは圧入することにより円筒ケーシング1内に挿入
固定される。ステータ16に取り付けられている配線1
6aは、ガス溝4hの中の1個を通って、フレーム4の
上部側で予めハーメチック端子22が溶接されている上
ケーシング20のハーメチック端子22の内部端子に配
線16aの配線端子を挿入して結線されている。上ケー
シング20と円筒ケーシング1とは溶接又はロー付けに
より固定されている。吸込みパイプ54は、吸込み穴4
iに挿入され、溶接又はロー付けにより円筒ケーシング
1に固定されている。吐出パイプ55も円筒ケーシング
1に固定されている。外周カバー25の上部には、上部
室61が形成されている。シャフト12の下部は、副軸
受17の内輪に挿入されており、その副軸受17が固定
されている軸受支持部18は、円筒ケーシング1に固定
されている。下ケーシング21は、円筒ケーシング1に
溶接又はロー付けにより固定され、底部に潤滑油56が
貯められている。フレーム4と下部カバー21の間には
モータ室62が形成されているが、モータ19は、ステ
ータ16に電流を流し、未着磁のロータ15内部の永久
磁石15bを着磁させている。
【0040】以上のように構成されたスクロール流体機
械の動作について説明する。モータ19に通電してロー
タ15が回転すると、吸い込みパイプ54から吸込み室
60へ吸い込まれたガスは、旋回スクロール部材3の旋
回運動により圧縮室6内で圧縮され、吐出孔2dからフ
ロートスクロール部材2の上部に形成された上部室61
に吐出される。吐出されたガスは、モータ室62に流入
し、モータの冷却とガス内に含まれる潤滑油を分離した
後、吐出パイプ55より圧縮機外部へ吐出される。又、
圧力比が低い運転条件では、リリース弁23が開いて過
圧縮が生じるのを回避する。
【0041】圧縮室6内部のガス圧力により、旋回スク
ロール部材3は、フロートスクロール部材2から離れる
方向の力を受けるが、スラスト軸受3dがスラスト面2
mとともにスラスト力を受けるため、旋回スクロール部
材3は軸方向に離れるのを防止できるようになってい
る。その結果、スクロール部材の歯先と歯底の隙間は、
大きくならず漏れの少ない圧縮動作を持続することがで
きる。
【0042】スクロールラップ2b、3bの内線および
外線は、偏角の増大とともに原点との距離が上に凸の状
態で増大する螺線を基準とし、その螺線上の任意の点か
ら同一距離だけ離れた点を連ねて形成される螺線で形成
している。ここで、螺線S上の任意の点Aから同一距離
bだけ離れた点とは、点Aにおける法線上であって螺線
Sからbだけ離れた点である。又、上記したような偏角
の増大とともに、原点との距離が上に凸の状態で増大す
る螺線としては、例えば代数螺線、対数螺線、偏角の増
大とともに原点との距離が双曲線に沿って変化して増大
していく螺線が考えられる。このようにして形成された
ラップは、中央部から外周部へ向かうにつれて厚さが減
少するものとなる。このようなラップ形状は、ラップの
厚さが一様なスクロールラップと比較して、ラップ外周
部のラップ厚さが薄くなっているため、スクロールラッ
プを立設する最外周の直径を小さくできので、圧縮機を
小形軽量化できるという効果がある。又、スクロールラ
ップの最外周の直径を小さくできので、スラスト軸受3
dに作用する軸方向負荷を大きく低減できる。その結
果、スラスト軸受3dにおける摩擦ロスを低減できるた
め、圧縮機を高効率でき、信頼性を高めることができる
効果がある。
【0043】また、フロートスクロール部材2を用いて
いるため、圧縮機の運転時にスクロールラップが変形し
てラップの歯先と歯底との間で圧接が生じるような場合
でも、フロートスクロール部材2が上方に動くため、歯
先と歯底との間で圧接することは生じなく、圧縮機の信
頼性を高めることができるという効果がある。また、ラ
ップ中央部が高温になり、熱膨張が大きいため、ラップ
中央部で歯先と歯底との接触が生じやすいが、中央部の
ラップは厚く形成されているため、圧縮機の信頼性を確
保できるという効果もある。
【0044】また、フロートストッパ7を用いているた
め、運転する頻度が高い条件下ではラップの歯先と歯底
とが強く接触することなく運転できる。そのため、ラッ
プの歯先と歯底との摩擦ロスを低減できるので、圧縮機
を高効率化できるという効果がある。また、なじみ性を
有する表面被膜を、旋回スクロール部材3に設けること
により高性能な圧縮機を容易に機械加工できるという効
果がある。
【0045】また、フロートスクロール部材2に、シー
ル突起部2cの内周部に作用する吐出圧力によって下方
向に作用する力を付与しているので、専用の部品が不要
となり、圧縮機の部品点数を少なくできるという効果が
ある。又、シール突起部2cの外周部は吸込み圧力とな
るため、鏡板2aの中央部は吐出圧で外周部は吸込み圧
となり、鏡板2aの下面と上面は同様の圧力分布となる
ため、この鏡板2aの圧力変形が抑制される。この結
果、圧縮機は広い運転範囲で高効率化できるという効果
がある。
【0046】また、リリース弁を設けているので、圧力
比の低い運転条件でも高効率化できるという効果があ
る。また、オルダムリング5を鏡板3aの上面に載置し
ているので、圧縮機を小径化できるという効果がある。
【0047】圧縮機の底部に溜っている潤滑油56は、
モータ室62の吐出圧力と、フレーム4に設けられた給
油孔4cを介して吸込み室60と導通している背面室1
1の吸込み圧力との圧力差により、シャフト給油孔12
aを通って旋回軸受12cに給油され、横給油孔12b
を経由して主軸受4aに給油される。潤滑油56は、背
圧室11および給油孔4cを通って油溝4bに入り、ス
ラスト軸受3dを潤滑する。油溝4bは、図13で示す
ように、複数の油溝のうちの一箇所が常に吸込み室60
と通じているため、潤滑油56は常時吸込み室60に流
入され、吹込みガスと一緒になって圧縮室6へ入り、圧
縮ガスとともに吐出孔2dから上部室61へ吐出され、
上記したようにモータ室62でガスと分離されて再び底
部に貯められる。
【0048】なお、油溝4bの形状をを主軸受中心から
偏心した円形の形状としてもよく、この場合は、偏心し
た角度において油溝4bは、吸込み室60から遮断され
て、背面室11の圧力を高める。スラスト面4mに作用
する負荷が大きい場合には、こうのように旋回軸受中心
位置へ油溝4bの中心を偏心させることにより、スラス
ト面4mに作用する負荷を小さくでき均一化できるた
め、圧縮機の信頼性を向上できる効果がある。
【0049】また、旋回軸受12cおよびスラスト軸受
3dへ給油を行うため、ボス12cの背面は吐出圧とな
り、旋回スクロール部材3の背面中央部に吐出圧力が作
用するため、スラスト軸受3dの負荷を低減でき、スラ
スト軸受3dでの摩擦ロスを低減できるため、圧縮機が
高効率となるという効果がある。又、背面室11は吸込
み圧力であるため、鏡板3aの下面の中央部は吐出圧で
外周部は吸込み圧となり、鏡板3aの下面と上面は同様
の圧力分布となるため、鏡板3aの圧力変形が抑制され
る。この結果、圧縮機は広い運転範囲で高効率化できる
という効果がある。
【0050】背面室11内の潤滑油56は常時排出され
るので、旋回保持部12fの回転に伴う粘性ロスを低減
できる効果がある。また、旋回保持部12fは、円筒形
状に形成した場合は、旋回保持部12fの回転に伴う粘
性ロスを一層低減できる効果がある。また、中央カバー
24および外周カバー25は、その下部にガス層を形成
するため、上面室61内の高温の吐出ガスからの熱が圧
縮室6へ伝わることを防止できる効果がある。
【0051】また、中央カバー24および外周カバー2
5は、リリース弁23が開閉することに伴う衝撃音を遮
断する効果がある。また、固定台9をフロートストッパ
7のストッパ面7fと上部固定台8の下面との2つ平面
を重ねてねじ止めしているため、ストッパ面7fの高さ
とフレーム4の高さが同一となり、スクロールラップ2
b、3bの歯先と歯底の間の隙間の管理が容易になる効
果がある。又、回転止め溝7a、7bとオルダム溝7
c、7dとの幅をほぼ同一に形成しているため、同時加
工が可能となり、2つのスクロール部材の配置角度の精
度を向上できる効果がある。又、回転止め2g、2hを
鏡板上に一体的に形成しているので、スクロールラップ
2bとの位置関係の精度が向上する効果がある。
【0052】ところで、スクロールラップ2b、3bの
側面に作用するガス圧力によりスクロールラップ2b、
3bが外周側に向かって倒れようとするため、鏡板2
a、3aに湾曲が生じ、ラップ間の径方向の隙間が大き
くなる。この鏡板の湾曲は、鏡板中央とスクロールラッ
プの巻終わり付近を通る線を中心として左右に湾曲する
ようなモードとなる。本実施例では、オルダム支持突起
部3i、3jをこの位置に設けているため、鏡板3aの
変形を抑制できる効果がある。また、リリース弁23の
外周は、シール突起部2cの内周とほぼ同一の寸法に設
定しているため、リリース弁23の位置決めを容易にお
こなえるという効果がある。
【0053】また、旋回スクロール部材3の鏡板3aの
上面およびスクロールラップ3bの全表面に、なじみ性
と潤滑性を有する表面被膜、例えば浸硫窒化処理や燐酸
マンガン被膜処理による表面被膜を設けてもよく、スク
ロールラップ3b、2bの側面間および歯先と歯底との
間の隙間を小さくでき、内部漏れが少なく摩擦ロスを小
さくできるとともに、スクロールラップ3b、2bの接
触部における摺動性を向上できるので、圧縮機の性能を
向上できる効果がある。
【0054】また、フロートスクロール部材2の鏡板2
aの下面およびスクロールラップ2bの全表面に、なじ
み性と潤滑性を有する表面被膜、例えば浸硫窒化処理や
燐酸マンガン被膜処理による表面被膜を設けてもよく、
スクロールラップ3b、2bの側面間および歯先と歯底
との間の隙間を小さくでき、スクロールラップ3b、2
bの接触部における摺動性を向上できるので、内部漏れ
が少なく摩擦ロスを小さくできる。この結果、圧縮機の
性能を向上できる効果がある。
【0055】また、旋回スクロール部材3の鏡板3aの
上面およびスクロールラップ3bの全表面、さらにはフ
ロートスクロール部材2の鏡板2aの下面およびスクロ
ールラップ2bの全表面になじみ性と潤滑性を有する表
面被膜、例えば浸硫窒化処理や燐酸マンガン被膜処理に
よる表面被膜を設けてもよく、スクロールラップ3b、
2bの側面間および歯先と歯底との間の隙間を容易に小
さでき、さらにスクロールラップ3b、2bの接触部に
おける摺動性を一層向上できるので、内部漏れが少なく
摩擦ロスを小さくできる。この結果、圧縮機のなじみ運
転期間を短縮できるとともに性能を一層向上できる効果
がある。
【0056】また、フロートストッパ7のストッパ面7
fと圧接する鏡板2aの面上に、運転時間の経過ととも
に厚さが減少する表面被膜を設けるてもよい。このよう
な表面被膜として、例えば浸硫窒化処理や燐酸マンガン
被膜処理による表面被膜があり、これらの被膜は内部に
空孔を有しているため、長時間力が作用すると内部の空
孔が徐々につぶれていくため、運転時間の経過とともに
厚さが減少することになる。このように構成することに
より、2つスクロール部材2、3の歯先と歯底との間の
硬い層が運転時間の経過とともに除々に接近するため、
偶発的に2つのスクロール部材2、3の歯先と歯底との
間の接触して摩耗することを少なくでき、歯先と歯底と
の間の隙間を縮小することが可能となるため、長期間に
わたって高性能を維持できる効果がある。
【0057】また、このフロートスクロール部材2の全
表面に、浸硫窒化処理や燐酸マンガン被膜処理による表
面被膜を設けてもよく、フロートスクロール部材2の被
膜処理をマスキングなく行うことが可能となる。又、ス
クロールラップ3b、2bの側面間および歯先と歯底と
の間の隙間を小さくでき、スクロールラップ3b、2b
の接触部における摺動性を向上できるとともに、両スク
ロール部材2、3の歯先と歯底との間の硬い層が運転時
間の経過とともに除々に接近するため、偶発的に2つの
スクロール部材2、3の歯先と歯底との間の接触して摩
耗することを少なくでき、歯先と歯底との間の隙間を縮
小することが可能となるため、、高性能でさらに長期間
にわたって高性能を維持できる圧縮機を容易に制作でき
る効果がある。
【0058】また、フロートストッパ7のストッパ面7
fと圧接する鏡板2aの面上に、運転時間の経過ととも
に厚さが減少する表面被膜を設けるてもよい。このよう
な表面被膜として、例えば浸硫窒化処理や燐酸マンガン
被膜処理による表面被膜があり、これらの被膜は内部に
空孔を有しているため、長時間力が作用すると内部の空
孔が徐々につぶれていくため、運転時間の経過とともに
厚さが減少することになる。このように構成することに
より、2つスクロール部材2、3の歯先と歯底との間の
硬い層が運転時間の経過とともに除々に接近するため、
偶発的に2つのスクロール部材2、3の歯先と歯底との
間の接触して摩耗することを少なくでき、歯先と歯底と
の間の隙間を縮小することが可能となるため、長期間に
わたって高性能を維持できる効果がある。
【0059】また、このフロートスクロール部材2の全
表面に、浸硫窒化処理や燐酸マンガン被膜処理による表
面被膜を設けてもよく、フロートスクロール部材2の被
膜処理をマスキングなく行うことが可能となる。又、ス
クロールラップ3b、2bの側面間および歯先と歯底と
の間の隙間を小さくでき、スクロールラップ3b、2b
の接触部における摺動性を向上できるとともに、両スク
ロール部材2、3の歯先と歯底との間の硬い層が運転時
間の経過とともに除々に接近するため、偶発的に2つの
スクロール部材2、3の歯先と歯底との間の接触して摩
耗することを少なくでき、歯先と歯底との間の隙間を縮
小することが可能となるため、、高性能でさらに長期間
にわたって高性能を維持できる圧縮機を容易に制作でき
る効果がある。
【0060】また、フロートスクロール部材2の全表面
に、浸硫窒化処理や燐酸マンガン被膜処理による表面被
膜を設けた後、ねじ穴2iと同一の高さに形成された図
14にハッチング部で示した面上を平面状に研磨しても
よく、リリース弁23によりリリース穴2fの遮蔽が確
実となる。この結果、過圧縮条件での圧縮機の性能を向
上できる効果がある。
【0061】また、旋回スクロール部材3の滑りスラス
ト軸受3dに、耐摩耗性の表面被膜または熱処理による
耐摩耗性の組織または耐摩耗性の物質を設けてもよい。
これにより、両スクロール部材2、3の歯先と歯との底
間の離間が抑制されるので、長期間に渡って高性能を維
持できるという特有の効果がある。
【0062】また、スラスト軸受3dに、潤滑性の良い
表面被膜または熱処理による潤滑性の良い組織または潤
滑性の良い物質を設けてもよい。これにより、スラスト
軸受3dの摺動ロスが低減されるので、圧縮機の性能を
向上できる効果がある。
【0063】また、フロートスクロール部材2の回転止
め2g、2hを溝で形成し、フロートストッパ7の回転
止め溝7a、7bを突起部としてもよく、この場合は、
フロートストッパ7の強度が増大するため、圧縮機の信
頼性を向上できる効果がある。 また、中央カバー24
の材質を鏡板2aの材質よりも熱膨張率が大きい材質で
形成し、中央カバー24の外周とシール突起部2cの内
周とを最大10μm程度のすきまばめにしてもよく、こ
の場合は、運転時の温度上昇により中央カバー24が熱
膨張して、シール突起部2cを拡張する方向に変形する
ため、鏡板2aの上面がその下面と比較して相対的に伸
びる。この結果、鏡板2aが上に凸の変形を起こすこと
によって、スクロールラップの中央部が高温になるため
に生じる熱膨張よるラップ歯先と歯底との間の接触を回
避でき、圧縮機の高効率化、高信頼性を実現できる効果
がある。例えば、フロートスクロール部材2を鋳鉄製、
中央カバー24を黄銅製、亜鉛製、アルミ合金製で形成
するとよく、特にシリコン含有量が10〜30%程度で
あり、ヤング率の大きいアルミ合金製とすればよい。
【0064】また、フロートストッパ7の外周面とフレ
ーム4の内周面との間を5μm程度のすきまばめとし、
フロートストッパ7の外周面の軸と上部固定台8の内周
面の軸を合わせて、フロートストッパ7と上部固定台8
を固定して固定台9を構成してもよい。このように構成
することにより、フロートスクロール部材2の位置決め
が部品により決定されるため、カバーねじ53により固
定台9および外周カバー25をフレーム4に固定すると
きに、シャフト12かロータ15を回してトルク管理を
行う過程を省略することができ、組立てが容易になる効
果がある。
【0065】また、旋回スクロール部材3のボス3cの
表面に、耐摩耗性の被膜または熱処理による耐摩耗性の
組織または耐摩耗性の物質を設けてもよい。これによ
り、ボス3cの耐久性が向上するので、圧縮機の信頼性
を向上できる効果がある。
【0066】また、旋回スクロール部材3のボス3cの
表面に、潤滑性の良い被膜または熱処理による耐摩耗性
の組織または耐摩耗性の物質を設けてもよい。これによ
り、旋回軸受の摺動ロスが低減されるので、圧縮機の性
能を向上できる効果がある。
【0067】また、旋回スクロール部材3のボス3c
を、耐摩耗性の材質からなる別部材を機械的に固定する
か溶接や接着により固定してもよい。これにより、耐久
性のあるボス3cの加工が容易となるので、圧縮機の加
工性を向上できる効果がある。
【0068】本発明の第2の実施例を、図15から図2
2により説明する。本実施例は、フロ−トスクロ−ル部
材と旋回スクロ−ルに関するものであり、図15はフロ
ートスクロ−ル部材の下面図、図16は旋回スクロ−ル
部材の上面図、図17は、フロートスクロ−ル部材の下
面図、図18は、フロートスクロ−ル部材の下面図、図
19はフロートスクロ−ル部材の下面図、図20はフロ
ートストッパ7の上方からの斜視図、図21はフロート
スクロ−ル部材の下面図、図22はフロートストッパ7
の上面図である。
【0069】本実施例は、第1の実施例と比較して、ス
クロ−ルラップ2bの中央側の形状、スクロ−ルラップ
3bの中央側および外周側の形状が異なるものであり、
それ以外は第1の実施例と同様に構成されている。本実
施例では、スクロールラップ2b、3bの中央部2l、
3lの外線を局部的に外側へ膨らませた曲線を用いてい
る。このように構成することにより、ラップの厚さの極
小部2s、3sがスクロールラップの途中に形成される
が、容積比を確保したままで吐出ポート2dの径を大き
くできる。この結果、吐出流路抵抗が低減できるため、
吐出過程での圧力損失が減少し、圧縮機を高効率化でき
るという効果がある。又、本実施例では、スクロールラ
ップ3bおいて圧縮室6を形成するためには関与しない
外線の外周部3rを同一の厚さに形成している。このた
めに、外周部の端部3nには直線部または円弧部を設け
た。この結果、スクロールラップ外周部の厚さを確保で
きるため、スクロールラップの信頼性を向上できる効果
がある。
【0070】変形例を図17により説明する。この例で
は、図15、図16に示す例と同様に構成されている
が、スクロ−ルラップ2bの外周側の形状が異なる。す
なわち、スクロールラップ2bにおいて圧縮室6の形成
に関与しない外線の外周部2tのラップ厚さを増大させ
ている。この結果、スクロールラップ2bの強度が向上
するため、圧縮機の信頼性を高くできる効果がある。
【0071】さらに変形例を、図18により説明する。
この例では、図17に示す例と同様に構成されている
が、外周部に摺接部2uを設け均圧穴2fを除いてい
る。この結果、固定台9とのはめ合いが容易となるた
め、圧縮機の組立てを容易にできる効果がある。また、
外周の隙間により吸込み室60と上面室10が導通する
ため、均圧穴2fの加工が不要になる効果がある。
【0072】さらに変形例を、図19から図20により
説明する。この例では、図18に示す例と同様に構成さ
れているが、鏡板下面に位置決めのための突起部2vを
設け、フロート位置決め溝7gを設けている。このよう
に構成した結果、固定台9と外周部でのはめ合いが不要
となるので、圧縮機の組立てを容易にできる効果があ
る。また、この位置決めのための突起部2vおよびフロ
ート位置決め溝7gは、1個でも3個以上でもよい。
【0073】さらに変形例を、図21により説明する。
この例では、図18に示す例とと同様に構成されている
が、回転止め2g、2hを別体の回転止めピン2w、2
xとしている。このように構成することにより、フロー
トスクロール部材2の加工性が向上する効果がある。
【0074】さらに変形例を、図22により説明する。
この例では、図15に示す例と同様に構成されている
が、外周部に摺接部7hを設けている。この結果、フレ
ーム4とのはめ合いが容易となるため、圧縮機の組立て
が容易になる効果がある。
【0075】本発明の第3の実施例を、図23から図2
5により説明する。図23はフロートスクロール部材2
のリリース穴付近の底面図、図24はフロートスクロー
ル部材2の上面図、図25はフロートスクロール部材2
の上面図である。
【0076】本実施例は、第1の実施例と同様に構成さ
れているが、リリース穴を横長リリース穴2yとしてい
る。この結果、異なる圧力の圧縮室を通じさせることな
く、断面積の大きいリリース穴を開口できるため、過圧
縮を容易に回避できる効果がある。ラップの厚さを変化
させたスクロールラップを搭載した圧縮機では、中央付
近を除いてスクロールラップの厚さが薄くなる場合が多
いため、円形のリリース穴では断面積を大きく確保する
することが困難であるため、本実施例の横長リリース穴
2yはリリースさせるときの圧力損失を低減するのに特
に有効である。
【0077】変形例を、図25により説明する。この例
では、図24に示す例と同様に構成されているが、リリ
ース穴を接近した2個の並列リリース穴2zで構成して
いる。このように構成することにより、異なる圧力の圧
縮室を通じさせることなく、断面積の大きいリリース穴
を容易に開口できるため、過圧縮を容易に回避できる効
果がある。ラップ厚さを変化させたスクロールラップを
搭載した圧縮機では、中央付近を除いてスクロールラッ
プの厚さが薄くなる場合が多いため、円形のリリース穴
では断面積の大きな穴を開口することが困難となり、こ
の並列リリース穴2zは特に有効である。
【0078】本発明の第4の実施例を、図26により説
明する。図26はフロートスクロール部材2とフロート
ストッパ7の組立て底面図である。
【0079】本実施例は、第1の実施例と同様に構成さ
れているが、回転止め溝7a、7bと回転止め2g、2
hの間にバネ59、60を挿入して構成している。この
結果、フロートスクロール部材2の回転方向の位置を精
度よく規定できるため、圧縮機の効率を向上できる効果
がある。
【0080】なお、図27に示すような波状の板バネを
上面室10に配置してもよく、この結果、吐出圧が非常
に低く、上部室61のガス圧力だけではフロートスクロ
ール部材2を押し下げられない場合でも、この板バネ6
1の弾性力でフロートスクロール部材2を押し下げるこ
とが可能となるため、圧縮機の高効率の運転範囲を広域
化できる効果がある。
【0081】本発明の第5の実施例を、図28から図2
9により説明する。図28は旋回スクロ−ル部材3の上
方からの斜視図、図29はオルダムリング5の上方から
の斜視図である。
【0082】本実施例は、第1の実施例と同様に構成さ
れているが、鏡板3aの上面にオルダム摺動突起部3
t、3u(3uは図示せず)を設け、オルダムリング5
に旋回溝5e、5fを設けている。この結果、旋回スク
ロール部材におけるオルダムリングとの摺接部が溝でな
いために、スクロールラップ3bを加工した径の大きい
エンドミルカッタと同一のカッタで加工できるため、ス
クロールラップ3bとオルダムリング5との位置関係を
精度良く確保できる。この結果、圧縮機を高効率化でき
る効果がある。
【0083】本発明の第6の実施例を、図30から図3
1により説明する。図30はフロートスクロール部材2
の上面図、図31は旋回スクロ−ル部材3の上面図であ
る。
【0084】本実施例は、第1の実施例と同様に構成さ
れているが、鏡板2a、3aの上面に吸込み段差2α、
3αを設けている。この結果、吸込み時のガス流路抵抗
が低減するため、圧縮機を高効率化できる効果がある。
ここで、吸込み段差2α、3αを円形状としたが、これ
に限らず、楕円形状でも多角形状でもよい。
【0085】本発明の第7の実施例を、図32から図3
6により説明する。図32はフロートスクロール部材2
の下方からの斜視図、図33は旋回スクロール部材3の
上方からの斜視図、図34はフロートスクロール部材2
のラップ先端の拡大図、図35はフロートスクロール部
材2のラップ先端の拡大図、図36はフロートスクロー
ル部材2の下方からの斜視図である。
【0086】本実施例は、第1の実施例と同様に構成さ
れているが、スクロールラップ2bに直線的な歯先段差
2vを設け、スクロールラップ3bの歯先にも同様な直
線的な歯先段差3vを設けている。この結果、歯底に段
差を加工することなく、スクロールラップ2b、3bの
かみあいで形成される二個所の歯先歯底接触部に初期隙
間を与えることができるため、高効率な圧縮機を容易に
製作できるという効果がある。通常は、1μm〜10μ
m程度の段差とする。また、本実施例は2段または3段
となっているが、これに限らず、何段でもよく、また連
続的にラップ高さを変化させてもよい。
【0087】変形例を、図35により説明する。この例
では、図34に示す例と同様に構成されているが、スク
ロールラップ2bに円弧状歯先段差2λを設け、スクロ
ールラップ3bの歯先にも同様な円弧状歯先段差3λ
(図示せず)を設けている。この結果、ラップの厚さ以
上の直径を有するエンドミルカッタをラップ厚さの概略
中心に沿って移動させながらそのエンドミルカッタの高
さを変えることで段差加工が可能になるため、圧縮機を
容易に加工できる効果がある。
【0088】変形例を、図36により説明する。この例
では、フロートスクロール部材2のラップ先端の拡大図
である図34および図35に示した例と同様に構成され
ているが、スクロールラップ2bに外周部2tを設けて
いる。このため、スクロールラップ2bの強度が向上す
るため、圧縮機の信頼性を高くできる効果がある。
【0089】本発明の第8の実施例を、図37により説
明する。図37は旋回スクロール部材3の上面図であ
る。
【0090】本実施例は、第1の実施例と同様に構成さ
れているが、鏡板3aの中央付近に貫通しない歯底穴3
δを設けている。この歯底穴3δとスクロールラップ3
bの相対的位置関係は、フロートスクロール部材2にお
ける吐出穴2dとスクロールラップ2bの相対的位置関
係と同一とする。この結果、旋回スクロール部材3の内
線によって形成される圧縮室6内のガスの吐出経路とし
てこの歯底穴3δを介した流路が新たに加わるため、吐
出流路抵抗が低減されるので圧縮機を高効率化できる効
果がある。
【0091】本発明の第9の実施例を、図38により説
明する。図38は旋回スクロール部材3の上面図であ
る。
【0092】本実施例は、第1の実施例と同様に構成さ
れているが、スクロールラップ3bの歯先にチップシー
ル3p、3qを設けている。この結果、歯先と歯底との
間の漏れが低減されるため、圧縮機を高効率化できる効
果がある。また、本実施例では、中央部に外周部のチッ
プシール3pと異なる幅の広いチップシール3qを用い
たため、シール性が向上し、圧縮機をさらに高効率化で
きる効果がある。
【0093】本発明の第10の実施例を、図39から図
42により説明する。図39は旋回スクロール部材3の
上面図、図40は旋回スクロール部材3の縦断面図、図
41は旋回スクロール部材3の縦断面図、図42は旋回
スクロール部材3の下方からの斜視図である。
【0094】本実施例は、図39に示す例と同様に構成
されているが、オルダム支持突起部3i、3jが設けら
れている。この結果、旋回スクロール部材の加工性が向
上するため、圧縮機を容易に加工できる効果がある。ま
た、歯底穴3δを除いてももちろんよい。
【0095】変形例を、図40により説明する。この例
は、第1の実施例と同様に構成されているが、外周溝3
wを設けている。この外周溝3wに図40中の二点鎖線
で示したキャップをかけて表面処理することが可能とな
り、スラスト軸受3dおよびボス部3cを除いた表面上
になじみ性のある被膜を確実に形成することが容易とな
る。また、スクロールラップ3bの加工時のチャッキン
グにも用いることができる。この結果、高効率な圧縮機
を容易に製作できる効果がある。
【0096】さらに変形例を、図41により説明する。
この例は、第1の実施例と同様に構成されているが、ボ
ス溝3βを設けている。この結果、このボス溝3βはボ
ス部3cの表面を研磨するときの砥石の逃げとなるた
め、研磨加工が用意となる。よって、高効率な圧縮機を
容易に製作できる効果がある。
【0097】変形例を、図42により説明する。図この
例では、第1の実施例と同様に構成されているが、軸受
溝3を設けている。軸受溝3xに潤滑油が流入するので
スラスト軸受3dでの潤滑がさらに良くなるため、そこ
での摩擦ロスが低減される。この結果、圧縮機の効率を
向上できる効果がある。
【0098】本発明の第11の実施例を、図43により
説明する。図43は給油穴4c付近の縦断面図である。
【0099】本実施例は、第1の実施例と同様に構成さ
れているが、給油穴4c内部に絞り4kを設けている。
絞り4kにより、背面室11の圧力が上昇するため、ス
ラスト軸受3dの負荷荷重が低下するため、そこでの摩
擦ロスが低減される。この結果、圧縮機を高効率化でき
る効果がある。
【0100】本発明の第12の実施例を、図44から図
46により説明する。図44は固定台9の上面図、図4
5は縦断面図、図46は下方からの斜視図である。
【0101】本実施例は、第1の実施例と同様に構成さ
れているが、フロートストッパ7と上固定台8を一体化
している。これにより、フロートストッパ7と上固定台
8の組立てが不要となるため、圧縮機の組立て性を向上
できる効果がある。
【0102】本発明の第13の実施例を、図47から図
48により説明する。図47は縦断面図、図48は軸受
支持部の平面図である。
【0103】本実施例は、横置き型の圧縮機の例であ
り、油を貯める機構と油を供給する機構以外は第1の実
施例と同様に構成されている。上部に通気孔18bと通
気フタ18e、下部に導油孔18a、さらに、中央部に
軸受穴18cを設けた軸受支持部18を円筒ケーシング
1に固定して、貯油室80を形成する。また、吐出管5
5をこの貯油室80から出す。また、軸受穴18cに静
止給油管71を固定した軸受ハウジング70を圧入す
る。モータ室62の圧縮ガスは通気フタ18eに衝突し
ながら通気孔18bを通過して貯油室80に流入する。
これにより、モータ室62の圧力は貯油室80の圧力に
比較し高くなるので、モータ室62の潤滑油56は導油
孔18aを通って貯油室80に流入する。潤滑油56
は、静止給油管71を通って、副軸受72を潤滑すると
ともに、給油孔12aへ流入する。この結果、モータ室
62の油面をロータ15やシャフト12へかかることな
く、潤滑油56を小形の圧縮機内部に蓄えることが可能
となるため、高信頼性の横置き圧縮機を小形で実現でき
る効果がある。
【0104】本発明の第14の実施例を、図49により
説明する。図49は貯油室付近の縦断面図である。
【0105】本実施例は、図47、図48に示す実施例
と同様に構成されているが、静止給油管71の端部を閉
じ導油孔18aと反対側に油穴71aを設けさらに導油
フタ18dを設けている。導油孔18aから潤滑油とと
もにガスも流入するので、貯油室80の潤滑油56の下
部から上部へ向かってガスが流れる。このため、ガスが
静止給油管71の内部へ流入すし軸受への給油を阻害す
る危険が生じる。本実施例は、静止給油管71の導油孔
18aと反対側の側面に油穴71aを設けているので、
ガスが静止給油管71の内部へ流入する危険が低減され
る。さらに、導油フタ18dを設けたためにガスは軸受
支持部18に沿って上昇するため、ガスが静止給油管7
1の内部へ流入する危険が低減される。この結果、圧縮
機の信頼性を向上できる効果がある。ここで、本実施例
は、油穴71aと導油フタ18dを両方設けたが、片方
のみ設けても、信頼性を向上させることができる。
【0106】本発明の第15の実施例を、図50から図
55により説明する。図50から図53は、それぞれ圧
縮機の縦断面図、図54、図55はフロートスクロール
部材の上方からの斜視図である。
【0107】本実施例は、第1の実施例と同様に構成さ
れているが、旋回スクロール部材3に中間的な圧力の圧
縮室6と背面室11を導通する旋回中間圧孔32を設
け、給油穴4cを除いている。また、図50から図55
には縦置きの場合を示しているが、図47から図49に
示したような横置きの場合にも適用できる。このように
構成することにより、背面室11の圧力が吸込み圧と連
動した中間圧となり、スラスト軸受3dの負荷荷重が過
小にならずに低下するため、旋回スクロール部材3の運
動の安定性を損なうことなくスラスト軸受3dでの摩擦
ロスを低減できる。この結果、高効率な運転範囲を広域
化できる効果がある。また、潤滑油の全量が吸込み室6
0に入らなくなるため、吸込みガスの加熱が抑制され
る。この結果、圧縮機の効率を向上できる効果がある。
【0108】さらに変形例を、図51により説明する。
図51に示すように、この例は、図50に示す実施例と
同様に構成されているが、フロートスクロール部材2に
中間的な圧力の圧縮室6と上面室10を導通するフロー
ト中間圧孔33とシール溝2rおよびシール57を設け
ている。このように構成することにより、上面室10の
圧力が吸込み圧と連動した中間圧となるため、適当な力
でフロートスクロール部2を押し下げて運転できる範囲
が広くなる。この結果、高効率な運転範囲を広域化でき
る効果がある。
【0109】さらに変形例を、図52により説明する。
図52に示すように、この例は、図50に示す実施例と
同様に構成されているが、フレーム4に熱伝導率の小さ
い材質でできた上部断熱カバー34と下部断熱カバー3
5を被せている。また、本実施例は上面室10を中間圧
に保つ構造であるが、第1の実施例に示すような上面室
10を吸込み圧に保つ構造または図50に示すような背
面室11を中間圧に保つ構造でも同様である。さらに、
図47から図51に示す実施例のような横置きにも適用
できる。このように構成することにより、吸込み室60
の加熱が抑制できるので、圧縮機を高効率化できる効果
がある。また、上部断熱カバー34と下部断熱カバー3
5のうち片方だけを被せてもよい。断熱カバー34、3
5の材質としては、耐熱性のプラスチックが考えられ
る。ここで、両断熱カバー34、35とも挿入端部の内
側に突起部34a、35aが設けられ、それに対応する
フレーム4の外周位置に溝4xが設けられている。よっ
て、両断熱カバー34、35の弾性を利用して、両断熱
カバー34、35を、突起部34a、35aが溝4xへ
達するまでフレーム4へ押し込むことで、両断熱カバー
34、35の装着が完了する。この結果、圧縮機の組立
て性を向上できる効果がある。
【0110】さらに変形例を、図53により説明する。
図53に示すように、本実施例は、第1の実施例と同様
に構成されているが、図54に示すようにフロートスク
ロール部材2の外周部に外周溝2mを設け、そこに弾性
リング77を装着している。ここで、弾性リング77の
材質としては、ゴムやプラスチックや金属が考えられ
る。これにより、フロートスクロール部材2が、このフ
ロートスクロール部材2の外周と固定台9の内周の隙間
だけ水平方向に可動となるため、スクロールラップ2
b、3bの側面がその形状精度誤差や変形により圧接し
た場合にそこで発生する力を緩和でき、圧縮機の信頼性
を向上できる効果がある。
【0111】なお、フロートスクロール部材は、図55
に上方からの斜視図として示すように、外周溝2mを二
本設け、そこに弾性リング77を装着している。これに
より、フロートスクロール部材2の姿勢が、安定するの
で、圧縮機の信頼性を一層向上できる効果がある。本実
施例では、外周溝2mを二本設けた場合を示したが、三
本以上でももちろんよい。
【0112】本発明の第16の実施例を、図56から図
59により説明する。図56は縦断面図、図57から図
59は、それぞれ接続管の縦断面図である。
【0113】本実施例は、第1の実施例と同様に構成さ
れているが、中央カバー24の替わりに吐出管31aを
有する接続管31を設け、両端を上部ケーシング20と
円筒ケーシング1に固定したダイレクトパス99を設け
ている。これにより、大部分の吐出ガスはダイレクトパ
ス31を通り、モータ室62に入るので、吸込み室60
の加熱が防止され、圧縮機を高効率化できる効果があ
る。また、吐出管31aは、先端31dを上部ケーシン
グ20に差し込むだけであるため、組立てが容易である
効果がある。
【0114】なお、接続管は、図58、図59に示すよ
うに構成することもでき、図58に示す例では、接続管
は、油溝31eと油穴31fとシール31gを設けてい
る。これにより、ほとんどの吐出ガスはダイレクトパス
31を通り、モータ室62に流入するので、吸込み室6
0の加熱が一層防止され、圧縮機を一層高効率化できる
効果がある。また、上部室61に溜った潤滑油は、油溝
31eおよび油穴31fを通って吐出ガスに混入されモ
ータ室62下部に戻る。この結果、潤滑油の不足を回避
できるので、圧縮機の信頼性を向上できる効果がある。
【0115】又、図59に示す接続管では、均圧孔31
hを設けている。これにより、リリース弁23上面の圧
力は吐出圧力に等しくなるので過圧縮時のリリース弁2
3の動作が確実に行われる。この結果、過圧縮を確実に
回避できるので、圧縮機の低圧力比運転時での効率を向
上できる効果がある。
【0116】本発明の第17の実施例を、図60により
説明する。図60は圧縮機の側面図である。
【0117】本実施例は、図56から図59に示す実施
例と同様に構成されているが、円筒ケーシング1の外周
にフィン70を固定している。これにより、圧縮機の温
度が低下するので、圧縮機を高効率化できる効果があ
る。また、据付け台71をフィンの下部を用いてケーシ
ングに固定したので、圧縮機を容易に製作できる効果が
ある。
【0118】本発明の第18の実施例を、図61、図6
2により説明する。図61、図62は圧縮機の縦断面図
である。
【0119】本実施例は、図47、図48に示す実施例
と同様に構成されているが、中央カバー24の替わりに
吐出管31aを有する接続管31を設け、両端を上部ケ
ーシング20と円筒ケーシング1に固定したダイレクト
パス99を設けている。また、静止給油管71や軸受支
持部18を第26の実施例の様にしてもよい。これによ
り、大部分の吐出ガスはダイレクトパス99を通り、モ
ータ室62に入るので、吸込み室60の加熱が防止さ
れ、圧縮機を高効率化できる効果がある。また、吐出管
31aは、先端31dを上部ケーシング20に差し込む
だけであるため、組立てが容易である効果がある。
【0120】又、図62に示すように、円筒ケーシング
1に固定するダイレクトパス99の位置をモータ室62
の貯油室80側としている。また、静止給油管71や軸
受支持部18を第26の実施例の様にしてもよい。これ
により、大部分の吐出ガスはダイレクトパス99を通
り、モータ室62の貯油室80側に入るので、フレーム
4の加熱が抑制され、吸込み室60の加熱が防止される
ため、圧縮機を高効率化できる効果がある。
【0121】本発明の第19の実施例を、図63から図
65により説明する。本実施例は、一方のスクロール部
材がケーシングに対して固定する旋回形スクロール圧縮
機に適用したもので、図63から図65はそれぞれ圧縮
機の縦断面図である。
【0122】本実施例は、第1の実施例と同様な構成で
あるが、フロートスクロール部材の替わりに固定スクリ
ール部材2を設け、固定台を除いている。これにより、
構造が簡単になるため、圧縮機の組立て性を向上できる
効果がある。また、オルダムリング5との摺接部である
固定オルダム溝2nをこの固定スクロール部材2に設け
たため、旋回スクロール部材3とこの固定スクロール部
材2との角度関係の精度が向上する。この結果、圧縮機
の効率を向上できる効果がある。
【0123】又、図64に示すように、固定スクロール
部材2および旋回スクロール部材3の歯先にチップシー
ルを設けている。これにより、運転時のスクロールラッ
プの変形による歯先と歯底との間の圧接を回避するため
に、歯先と歯底との間に与えた隙間のシール性が向上す
るため、圧縮機の効率を向上できる効果がある。
【0124】又、図65に示すように、旋回スクロール
部材3の背面にフロート支持部材40と支持ストッパ4
1設けている。フロート支持部材40は、上面がスラス
ト面40aとなっており、そこには油溝40bが設けら
れる。油溝40bと背面室11の間には給油孔40cが
設けられる。側面にはシール溝40d、40eが設けら
れ、各々にシール97、98が装着される。このフロー
ト支持部材40の背面には、支持背面室73が形成さ
れ、均圧孔4uによって、吐出圧となる。このフロート
支持部材40は、支持ストッパ41によって、スラスト
面40aの位置を規定する。この結果、運転時のスクロ
ール部材の変形により、ラップの歯先と歯底との間が圧
接しようとしたとき、このフロート支持部材40が下方
へ移動するため、ラップの歯先と歯底との間の圧接が回
避される。よって、圧縮機の信頼性を向上できるという
効果がある。ここで、支持背面室73に板バネ61を配
置してもよい。この結果、吐出圧が非常に低く、支持背
面室73のガス圧力だけではフロート支持部材40を押
し上げられない場合でも、この板バネ61の弾性力でフ
ロート支持部材40を押し上げることが可能となるた
め、圧縮機の高効率の運転範囲を広域化できるという効
果がある。また、支持ストッパ41を取り除いてもよ
い。この結果、旋回スクロール部材3が常時固定スクロ
ール部材2に押しつけられ、歯先と歯底との間の隙間が
常時小さいため、圧縮機の性能を向上できるという効果
がある。
【0125】本発明の第20の実施例を、図66により
説明する。本実施例は、両スクロール部材が互いに回転
中心を偏心させて同一方向に同一速度で回転する回転形
スクロール圧縮機に適用した例を示している。図66
は、圧縮機の縦断面図である。
【0126】本実施例のスクロ−ル圧縮機は第一および
第二スクロール部材300、200のスクロールラップ
300b、200bの形状は、各々第1の実施例のスク
ロールラップ3b、2bの形状と同様に構成されてい
る。その他の個所に関する構成および動作を主に説明す
る。
【0127】第一スクロール部材300の鏡板300a
のスクロールラップ300aと反対側にスクロールボス
部300qが設けられ、第一フレーム104に圧入され
た第一主軸受104aに挿入されている。この第一スク
ロール部材300は、スクロールボス部300qの内側
のスプライン軸継ぎ手により、第一シャフト112と連
結される。第一ロータ115が第一シャフト112に固
定されて配置されており、第一密閉容器101に固定さ
れて配置された第一ステータ116と組み合わされて、
第一スクロール部材300の回転駆動部であるモータを
形成する。第一シャフト112の端部は、第一副軸受1
17で軸支される。この第一副軸受117は、第一軸受
支持部118により第一密閉容器101に固定されて配
置されている。また、第一シャフト112の中央には貫
通穴112eが設けられ、吐出孔300kと通じる。ま
た、第一シャフト112には、2個のバランスリング1
30が固定配置され、第一スクロール部材300と第一
シャフト112の連結状態で動バランスがとられてい
る。また、第一フレーム104と鏡板300aとの間に
は動圧形スラスト軸受105が設けられている。さら
に、第一モータ室121内には潤滑油56が蓄えられ、
給油孔104cにより主軸受104aに給油される。ま
た、第一モータ室121と外部とを連結する吐出パイプ
122が設けられている。
【0128】第二スクロール部材200の鏡板200a
のスクロールラップ200aと反対側にはスクロールボ
ス部200qが設けられており、第二フレーム204に
圧入された第二主軸受204aに挿入される。この第二
スクロール部材200は、スクロールボス部200qの
内側のスプライン軸継ぎ手により、第二シャフト212
と連結されている。第二ロータ215は第二シャフト2
12に固定されて配置されており、第二密閉容器201
に固定されて配置された第二ステータ216と組み合わ
されて、第二スクロール部材200の回転駆動部である
モータを形成する。第二シャフト212の端部は、第二
副軸受217で軸支されている。この第二副軸受217
は、第二軸受支持部218により第二密閉容器201に
固定され配置されている。また、第二シャフト212の
中央には貫通穴212eが設けられ、吐出孔200kと
通じている。第二シャフト212には二個のバランスリ
ング230が固定されて配置されており、第二スクロー
ル部材200と第二シャフト212の連結状態で動バラ
ンスがとられている。また、第二フレーム204と鏡板
200aの間には動圧形スラスト軸受205が設けられ
ている。第二モータ室221内には潤滑油19が蓄えら
れ、給油孔204cにより主軸受204aに給油され
る。また、第二モータ室221と外部を連結する吐出パ
イプ222を設ける。
【0129】このように構成された第一スクロール側お
よび第二スクロール側をスクロール部材の中心軸が互い
に偏心するように組合せ、チップシール300pを有す
る第一スクロールラップ300bおよびチップシール2
00pを有する第二スクロールラップ200bとの間に
圧縮室6および吐出孔200k、300kが開口する吐
出空間6aを形成する。吸い込み室60と圧縮機外部を
連結する吸い込みパイプ54を設ける。
【0130】次に、以上のように構成されたスクロール
流体機械の動作を説明する。2個のモータによりシャフ
ト112、212が回転され、スクロール部材200、
300が回転する。この結果、ガスは圧縮機の外部よ
り、吸い込みパイプ54を通って吸い込み室60に吸入
され、スクロール部材200、300によって形成され
る圧縮室6へ入る。圧縮室6は体積を減少させながら回
転中心へ移動するため、ガスは圧縮され、ロータ11
5、215を冷却しながら貫通孔112e、212eを
通りモータ室121、221へ流入する。そして、吐出
パイプ122、222から圧縮機の外部へ吐出される。
ガスの圧力により鏡板200a、300aは各々フレー
ム104、105へ近付く向きに移動しようとするが、
動圧形スラスト軸受105、205によりその動きは阻
止されるため、ガスは正常に圧縮される。このスクロー
ルラップ背面にある動圧形スラスト軸受105、205
にかかる負荷は、スクロールラップの厚さが均一の場合
に比べて小さくなるので、そこでの摩擦ロスは低減され
るるため、圧縮機の効率を向上できるという効果があ
る。また、潤滑油56は、差圧により給油孔104c、
204cを通って主軸受300q、200qに流入し主
軸受部を潤滑する。その後、動圧形スラスト軸受10
5、205を潤滑し、吸込室19から圧縮室6へ流入
し、スクロールラップ間のシールおよび潤滑を行った
後、圧縮ガスとともにモータ室121、221へ戻され
て溜められる。
【0131】本実施例によれば、2個のスクロール部材
200、300とも回転運動となるため、高速運転が可
能となり、小形だが能力の大きい圧縮機を提供できる効
果がある。また、本実施例では2個のスクロール部材を
同期回転させるためにスクロールラップ200b、30
0bを噛み合わせているが、二個のスクロール部材間に
オルダム継ぎ手を設けても良い。また、本実施例では、
第一スクロール側および第二スクロール側をスクロール
部材の中心軸が互いに垂直方向に偏心するように組合せ
ているが、水平方向に組み合わせ、モータ室121、2
21の底面をつなぐパイプを設けてもよい。これによ
り、両モータ室121、221内部の潤滑油56の液面
を同一にできるので、ロータ115、215と貯留した
潤滑油56が接触する可能性を低減でき、運転時の圧縮
性能低下を回避できる。また、スクロール部材の材質に
関して言及していないが、両スクロールを鋳鉄製にする
場合が考えられる。この場合は、製作費用が低減できコ
ストが低いうえに、強度も確保でき信頼性の高い圧縮機
を提供できる効果がある。また、鋳鉄の内でも、金型で
冷却速度を大きくして形成した材質を用いることもで
き、この場合には、切削性が向上するためコストの一層
低い圧縮機を提供できる効果がある。又、スクロール部
材200、300をアルミ合金にすることでき、この場
合には、遠心力が低減するため、スクロールラップ20
0b、300bの鏡板200a、300aに対する倒れ
が低減し、スクロールラップ間の局部的な接触を回避で
きる。また、加工性が向上するとともに重量が低減でき
る。以上より、信頼性が高く一層低コストで軽量の圧縮
機を提供できる効果がある。
【0132】また、以上説明した各実施例において、両
スクロール部材をアルミ合金製とすることが考えられ
る。その中でも、シリコンの重量含有量が少なくて鋳造
可能なアルミ合金を用いることもできる。一般には、こ
の材料同士が長時間圧接すると凝着が生じるため、固定
台9がなくスクロールラップの歯先と歯底とがほぼ常時
圧接する構造では、両スクロールラップを上記した鋳造
可能なアルミ合金製とすることはできなかった。しか
し、本実施例で述べたように、スクロールラップの歯先
と歯底とが圧接することを回避するため固定台9を用い
ているので、両スクロール部材を鋳造可能なアルミ合金
製とすることができる。このように、両スクロール部材
をアルミ合金製とすることによって、圧縮機を軽量化で
きる効果がある。また、旋回スクロール3にかかる遠心
力を低減できるため、旋回スクロール背面のスラスト軸
受3dの負荷荷重の分布を均一化できる。この結果、ス
ラスト軸受3dの摩耗が平均化する。又、摩耗が進行し
た後でも、両鏡板2a、3aの平行を保つことが可能と
なり、スクロールラップ2b、3bの局部的な圧接や隙
間の拡大が回避され、圧縮機の性能を維持できる効果が
ある。又、鋳造可能なアルミ合金製とする場合には、鋳
造により作成が容易になるとともに材料が低価格である
ため、製作コストを低減できる効果がある。
【0133】本発明の第21の実施例を、図67から図
69により説明する。本実施例は、これまで述べた各実
施例のうちの縦置きの圧縮機をエアコン用として用いた
例であり、図67、図68は、室外機の斜視図である。
又、図69は家屋の外壁に取り付けたときの縦断面図で
ある。
【0134】本実施例の圧縮機は、ダイレクトパス99
を設けているが、これを設けない圧縮機でももちろんよ
い。ケース303の内部に圧縮機302、熱交換器30
0、ファン301さらに圧縮機ファン304を設ける。
そして、冷房運転時には、圧縮機ファン304を常時回
し、暖房運転時には、運転開始直後で圧縮機の温度が低
いときには圧縮機ファン304を回さず、圧縮機の温度
が高くなったときには圧縮機ファン304を回す。ま
た、熱交換器300の除霜を行う運転時には圧縮機ファ
ン304の回転方向を逆にする。この結果、暖房運転開
始直後および除霜運転時を除き、圧縮機ファン304に
より、圧縮機302が冷却されるので、圧縮機302の
性能が向上する効果がある。また、暖房運転の開始直後
は、圧縮機ファン304を回さないので、圧縮機302
は短時間で温度が上昇するため、暖房運転の開始から温
風を送風するまでにかかる時間を短縮できる効果があ
る。また、除霜運転時には圧縮機ファン304の回転方
向を逆にするため、熱交換器300に圧縮機302の周
囲を通って温められた空気が吹き付けられる。これによ
り、除霜運転時間を短縮できるので、暖房運転時間を長
くできる効果がある。ここで、暖房運転時には、暖房運
転の開始直後を除き、常時圧縮機ファン304の回転方
向を逆にしてもよい。この結果、圧縮機302を冷却で
きるとともに蒸発器となっている熱交換器300を加熱
することが可能となるので、暖房運転の効率を向上でき
る効果がある。また、圧縮機のケーシング外面にフィン
を設けてもよい。この場合、圧縮機の冷却が容易になる
ため、圧縮機ファン304を小形にしたり、そこでの消
費電力を低減したりできる。
【0135】又、図68に示すように、横置きの圧縮機
をエアコン用として用いることもでき、圧縮機302は
横置きにしており、熱交換器300がコの字型となった
以外は、図67に示す実施例と同様なので、その他の部
分の構成および動作の説明は省略する。このように構成
することにより、熱交換器300の伝熱面積を大きくで
きるので、室外機を小さくできる効果がある。
【0136】又、図69は、小形軽量の横置きの圧縮機
を壁かけタイプの室外機へ用いた例であり、本実施例の
圧縮機302は横置きであるが、縦置きであってももち
ろんよい。室外機の内部は図68に示す実施例と同様で
あるが、つり下げ台305上に据付け台71を介して圧
縮機302を載せ、そのつり下げ台305をつり下げボ
ルト306にかけることで、室外機を据え付けている。
このため、室外機の据え付け作業が容易になる効果があ
る。また、軒下のスペースを使わずに室外機を据え付け
ることが可能となるため、軒下のスペースを有効活用で
きる効果がある。また、横置きの圧縮機搭載の室外機の
場合、重量がほぼ均等にかかるため、つり下げボルト3
06の必要強度を低減できる効果もある。
【0137】本発明の第22の実施例を、図70により
説明する。本実施例は、小形軽量の横置きの圧縮機を電
気自動車へ用いた例であり、図70は、自動車の斜視図
である。ここで、本実施例の圧縮機302は横置きであ
るが、縦置きであってももちろんよい。室外熱交換器3
08、室内熱交換器309、四方弁307を自動車の後
部にまとめて配置している。従来のカーエアコンシステ
ムの圧縮機の動力はエンジンから駆動ベルトを介して付
与されていたため、圧縮機を設置する位置は限定されて
いたが、本実施例の圧縮機はモータを内蔵しているの
で、他のエアコンシステム要素の配置する位置付近に圧
縮機を配置することができる。この結果、エアコンシス
テム全体を一箇所に集めることが可能となるため、自動
車内部のレイアウトの自由度が増す効果がある。
【0138】
【発明の効果】本発明によれば、信頼性が高く、高効率
の上に、小型軽量となり、さらに構造が単純で部品点数
の少ない流体機械を提供できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施例であるスクロール流体機
械の縦断面図である。
【図2】本実施例のスクロールラップのラップ幅および
チップシール挿入溝幅の説明図である。
【図3】本実施例の旋回スクロ−ル部材を上方からみた
斜視図である。
【図4】本実施例の旋回スクロ−ル部材を下方からみた
斜視図である。
【図5】本実施例のフロートスクロ−ル部材を下方から
みた斜視図である。
【図6】本実施例のフロートスクロ−ル部材を上方から
みた斜視図である。
【図7】本実施例のフロートスクロ−ル部材の底面図で
ある。
【図8】本実施例の旋回スクロ−ル部材の上面図であ
る。
【図9】本実施例の図1中にI−I矢視で示した横断面
図である。
【図10】本実施例のオルダムリングを上方からみた斜
視図である。
【図11】本実施例のフロートストッパの上面図であ
る。
【図12】本実施例のフロートストッパを上方からみた
斜視図である。
【図13】本実施例の油溝位置の説明図である。
【図14】本実施例のフロートスクロ−ル部材の上面図
である。
【図15】本発明の第2の実施例であるフロートスクロ
−ル部材の底面図である。
【図16】本実施例の旋回スクロ−ル部材の上面図であ
る。
【図17】本実施例であるフロートスクロ−ル部材の底
面図である。
【図18】本実施例であるフロートスクロ−ル部材の底
面図である。
【図19】本実施例であるフロートスクロ−ル部材の底
面図である。
【図20】本実施例のフロートストッパを上方からみた
斜視図である。
【図21】本実施例であるフロートスクロ−ル部材の底
面図である。
【図22】本実施例であるフロートストッパの上面図で
ある。
【図23】本発明の第3の実施例であるフロートスクロ
−ル部材のリリース穴付近の底面図である。
【図24】本実施例のフロートスクロ−ル部材の上面図
である。
【図25】本実施例であるフロートスクロ−ル部材の上
面図である。
【図26】本発明の第4の実施例であるフロートスクロ
−ル部材とフロートストッパの組立て底面図である。
【図27】本実施例である板ばねの斜視図である。
【図28】本発明の第5の実施例の旋回スクロ−ル部材
を上方からみた斜視図である。
【図29】本実施例のオルダムリングを上方からみた斜
視図である。
【図30】本発明の第6の実施例であるフロートスクロ
−ル部材の底面図である。
【図31】本実施例の旋回スクロ−ル部材の上面図であ
る。
【図32】本発明の第7の実施例であるフロートスクロ
−ル部材を下方からみた斜視図である。
【図33】本実施例の旋回スクロ−ル部材を上方からみ
た斜視図である。
【図34】本実施例のフロートスクロ−ル部材のラップ
先端の下方からの拡大斜視図である。
【図35】本実施例のフロートスクロ−ル部材のラップ
先端の下方からの拡大斜視図である。
【図36】本実施例のフロートスクロ−ル部材を下方か
らみた斜視図である。
【図37】本発明の第9の実施例である旋回スクロ−ル
部材の上面図である。
【図38】本発明の第10の実施例である旋回スクロ−
ル部材の上面図である。
【図39】本実施例の旋回スクロ−ル部材の上面図であ
る。
【図40】本実施例である旋回スクロ−ル部材の縦断面
図である。
【図41】本実施例である旋回スクロ−ル部材の縦断面
図である。
【図42】本実施例である旋回スクロ−ル部材を下方か
らみた斜視図である。
【図43】本発明の第11の実施例である給油穴付近の
縦断面図である。
【図44】本発明の第12の実施例である固定台の上面
図である。
【図45】本実施例の固定台の縦断面図である。
【図46】本実施例の固定台を下方からみた斜視図であ
る。
【図47】本発明の第13の実施例である縦断面図であ
る。
【図48】本実施例の軸受支持部の平面図である。
【図49】本発明の第14の実施例である貯油室付近の
縦断面図である。
【図50】本発明の第15の実施例であるスクロ−ル流
体機械の縦断面図である。
【図51】本実施例であるスクロ−ル流体機械の縦断面
図である。
【図52】本実施例であるスクロ−ル流体機械の縦断面
図である。
【図53】本実施例であるスクロ−ル流体機械の縦断面
図である。
【図54】本実施例のフロートスクロ−ル部材を上方か
らみた斜視図である。
【図55】本実施例のフロートスクロ−ル部材を上方か
らみた斜視図である。
【図56】本発明の第16の実施例である縦断面図であ
る。
【図57】本実施例の接続管の縦断面図である。
【図58】本実施例である接続管の縦断面図である。
【図59】本実施例である接続管の縦断面図である。
【図60】本発明の第17の実施例のスクロ−ル流体機
械の側面図である。
【図61】本発明の第18の実施例のスクロ−ル流体機
械の縦断面図である。
【図62】本実施例のスクロ−ル流体機械の縦断面図で
ある。
【図63】本発明の第19の実施例であるスクロ−ル流
体機械の縦断面図である。
【図64】本実施例のスクロ−ル流体機械の縦断面図で
ある。
【図65】本実施例のスクロ−ル流体機械の縦断面図で
ある。
【図66】本発明の第20の実施例であるスクロ−ル流
体機械の縦断面図である。
【図67】本発明の第21の実施例である縦置き圧縮機
を室外機へ配置した室外機斜視図である。
【図68】本実施例である横置き圧縮機を室外機へ配置
した室外機斜視図である。
【図69】本実施例である横置き圧縮機を搭載した室外
機を家屋の壁に取り付けた室外機縦断面図である。
【図70】本発明の第22の実施例である横置き圧縮機
を搭載したカーエアコンシステムを電気自動車へ配置し
た自動車斜視図である。
【符号の説明】
3…旋回スクロ−ル部材、2…フロートスクロ−ル部
材、固定スクロール部材、9…固定台、3d…滑りスラ
スト軸受、3b、2b…スクロ−ルラップ、304…圧
縮機ファン。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 関上 和夫 栃木県下都賀郡大平町大字富田800番地 株式会社日立製作所リビング機器事業部内

Claims (13)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】鏡板に立設するスクロールラップを有する
    旋回スクロ−ル部材と、該旋回スクロ−ル部材を駆動す
    るシャフトと、該シャフトを回転駆動するためのモ−タ
    と、前記旋回スクロ−ル部材を第二のスクロール部材に
    対して自転を阻止して旋回運動させるための自転防止部
    材と、それらを収納したケ−シングとを備えたスクロー
    ル流体機械において、前記第二スクロール部材が回転防
    止部材により前記ケーシングに対して回転を阻止され、
    かつ前記シャフトの軸線方向に移動可能なフロ−ト式ス
    クロール部材であって、前記旋回スクロール部材のスク
    ロールラップを立設した鏡板の面と反対の面側に、該旋
    回スクロ−ルを支持するスラスト軸受を設け、前記フロ
    −ト式スクロ−ル部材とに前記旋回スクロール部材との
    シャフトの軸線方向の最小距離を規定するフロ−トスト
    ッパを設けたことを特徴とするスクロール流体機械。
  2. 【請求項2】鏡板に立設するスクロールラップを有する
    旋回スクロ−ル部材と、該旋回スクロ−ル部材を駆動す
    るシャフトと、該シャフトを回転駆動するためのモ−タ
    と、前記旋回スクロ−ル部材を第二のスクロール部材に
    対して自転を阻止して旋回運動させるための自転防止部
    材と、それらを収納したケ−シングとを備えたスクロー
    ル流体機械において、前記第二スクロール部材が、回転
    防止部材により前記ケーシングに対して回転を阻止さ
    れ、前記シャフトを軸受支持するフレ−ムに固定された
    固定台内に隙間を有して嵌合されて該固定台に取り付け
    られた外周カバ−によって軸線方向の移動範囲を規制さ
    れた移動可能なフロ−ト式スクロール部材であって、前
    記旋回スクロール部材のスクロールラップを立設した鏡
    板の面と反対の面側に該旋回スクロ−ル部材を支持する
    スラスト軸受を設けるとともに、前記フロ−ト式スクロ
    −ル部材の背面側に前記旋回スクロ−ル部材とフロ−ト
    式スクロ−ル部材とにより形成される圧縮室の圧力を導
    入する空間を設けたことを特徴とするスクロール流体機
    械。
  3. 【請求項3】鏡板に立設するスクロールラップを有する
    旋回スクロ−ル部材と、該旋回スクロ−ル部材を駆動す
    るシャフトと、該シャフトを回転駆動するためのモ−タ
    と、前記旋回スクロ−ル部材を第二のスクロール部材に
    対して自転を阻止して旋回運動させるための自転防止部
    材と、それらを収納したケ−シングとを備えたスクロー
    ル流体機械において、前記第二スクロール部材が回転防
    止部材により前記ケーシングに対して回転を阻止され、
    かつ前記シャフトの軸線方向に移動可能なフロ−ト式ス
    クロール部材であって、前記旋回スクロール部材のスク
    ロールラップを立設した鏡板の面と反対の面側に該旋回
    スクロ−ルを支持するスラスト軸受を設け、前記フロ−
    ト式スクロ−ル部材のスクロールラップを立設した鏡板
    の面と反対の面の内周側に前記旋回スクロ−ル部材とフ
    ロ−ト式スクロ−ル部材とにより形成される圧縮室の圧
    力を導入する空間を、その外周側に吸入側と連通する空
    間を形成したことを特徴とするスクロール流体機械。
  4. 【請求項4】鏡板に立設するスクロールラップを有する
    旋回スクロ−ル部材と、該旋回スクロ−ル部材を駆動す
    るシャフトと、該シャフトを回転駆動するためのモ−タ
    と、前記旋回スクロ−ル部材を固定スクロール部材に対
    して自転を阻止して旋回運動させるための自転防止部材
    と、それらを収納したケ−シングとを備えたスクロール
    流体機械において、前記旋回スクロール部材のスクロー
    ルラップを立設した鏡板の面と反対の面側に、旋回スク
    ロ−ルを支持するスラスト軸受が形成され前記シャフト
    の軸線方向に移動可能なフロ−ト支持部材と支持ストッ
    パが配置され、かつ該支持ストッパにより前記フロ−ト
    支持部材のスラスト面位置を規定していることを特徴と
    するスクロール流体機械。
  5. 【請求項5】鏡板とそれに立設するスクロールラップを
    有する第一および第二のスクロール部材を具備し、該第
    一及び第二のスクロール部材を組み合わせて圧縮室を形
    成するポンプ部と、前記第一のスクロール部材と第二の
    スクロール部材とが自転を伴わない旋回運動となるよう
    に相対運動を与える駆動部と、前記ポンプ部と前記駆動
    部をケーシング内に収納したスクロール流体機械におい
    て、前記第一及び第二のスクロール部材を軸方向に移動
    可能に構成するとともに、前記第一及び第二のスクロー
    ルラップを立設した面と反対側の面側にスラスト軸受を
    設け、該スラスト軸受により前記スクロ−ル部材を移動
    範囲を規制するとともに支持することを特徴とするスク
    ロール流体機械。
  6. 【請求項6】前記フロ−トストッパが、前記フロ−ト式
    スクロール部材に対して固定配置されたスクロールスト
    ッパ面とスラストストッパ面とにより構成されている請
    求項1に記載のスクロール流体機械。
  7. 【請求項7】前記スクロール部材の背面側に均圧孔を介
    して導かれた吐出圧力が作用する空間が形成されている
    請求項4に記載のスクロール流体機械。
  8. 【請求項8】前記旋回スクロール部材のスラスト軸受を
    すべり軸受で構成し、該スラスト軸受面を除いた少なく
    とも一部の表面になじみ性のある被膜を設けた請求項1
    ないし3のいずれかに記載のスクロール流体機械。
  9. 【請求項9】前記旋回スクロ−ルの鏡板のラップを設け
    られた面側に切欠き部が設けられている請求項1から4
    のいずれかに記載のスクロール流体機械。
  10. 【請求項10】前記自転防止部材がオルダムリングであ
    って、前記フロ−トストッパの旋回スクロ−ル側にオル
    ダム溝が、その反対側に回転止め溝が設けられている請
    求項1に記載のスクロール流体機械。
  11. 【請求項11】前記スクロールラップのラップ厚さが、
    該スクロールラップの中央側および外周側の端部を除
    き、中央から外周へ行くにつれて減少するように形成さ
    れている請求項1から8のいずれかに記載のスクロ−ル
    流体機械。
  12. 【請求項12】前記スクロールラップのラップ厚さを、
    該スクロールラップの中央側および外周側の端部を除
    き、中央側から外周側に変化させるとともに、前記両ス
    クロールラップのラップ高さをスクロールラップの外周
    側から中央側に段階的または連続的に減少させた請求項
    1から8のいずれかに記載のスクロール流体機械。
  13. 【請求項13】前記圧縮室の圧力を導入する空間にリリ
    −ス弁が設けられている請求項3に記載のスクロール流
    体機械。
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