JPH0885857A - 溶融めっき浴表面の不純物除去方法及び装置 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 被めっき体の溶融金属浸漬前後の表面ドロス
を自動的に除去し、めっき製品の品質向上及び作業環境
改善を計り、且つ、生産性向上が図れる溶融めっき浴表
面の不純物除去方法を提供する。 【構成】 釜７内の溶融金属浴表層部に変質していない
純粋な溶融金属８を浴中のポンプ９により噴射ノズル１
１から送り込み、この溶融金属の流れ１２を利用してド
ロス掻取装置１３で前記表層部に形成している不純物を
釜７外に排出，除去することを特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、溶融亜鉛，溶融アルミ
ニウム等の溶融金属めっき浴表面に発生するドロス（酸
化物、他の金属との金属間化合物）を自動的に除去する
方法及び装置に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】溶融金属めっきは、近年鉄鋼材料の防食
あるいは装飾を目的として急速に普及しつつある。この
溶融金属めっきは大別して２種類の方法で施工されてい
る。すなわち、自動車，家庭電気製品及び建築用材料等
には鉄鋼メーカで鋼板に連続的に行う方法と、ボルト，
ナット，各種鉄鋼構造物等のように個々にめっき槽に浸
漬するバッチ式とがある。

【０００３】前車の場合は、図５に示すように、表面を
清浄活性化された鋼板１をスナウト２を介して溶融金属
槽３中に浸漬し、浴中のシンクロール４、サポートロー
ル５を通過して溶融金属槽３から引き上げられた後、ワ
イピング装置６により過剰のめっき金属を絞り取ってめ
っき付着量を調整して所定の溶融金属めっき鋼板を得る
ものである。

【０００４】このプロセスの場合、被めっき体（鋼板）
の浸漬部はスナウトと呼ばれるものが浴内に浸漬されて
おり直接大気と接触することがなく、且つ、スナウト内
に不活性ガスを流しているため浴表面は酸化されない。
また、出口側においては浴直上で不活性ガスによる余剰
金属のワイピングを行うため、結局、鋼板の入口側、出
口側双方共にドロスの付着は起こらない。

【０００５】しかし、バッチタイプの場合は被めっき体
の大きさ、形状が様々であるため前者のような処置がと
れない。従って、方法としては被めっき体浸漬直前及び
取り出し直前に人手により溶融金属表面のドロスの掻き
取りを行っている。この方法では、人手によるため完全
な表面ドロスの除去は不可能であること、及び高熱作業
のため作業環境が非常に悪い等の欠点がある。更に、こ
の方法によれば自動化が困難である。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】バッチタイプにおける
溶融金属表面のドロス除去方法としては前述したとお
り、被めっき体浸漬前後に人手により掻き取りを行って
いる。溶融金属めっき浴槽は大小さまざまであるが、大
きいもので長さ１４ｍ、幅１．５ｍのものが現在使用さ
れている。このような場合、被めっき体浸漬前後に表面
に生成しているドロスを除去するには数名の作業者が短
時間に掻き取りを行う必要がある。

【０００７】しかし、溶融金属槽の近辺は非常に高温で
あり浴表面全体にわたって完全にドロスを除去すること
が困難であると同時に大物を浸漬及び引上げする場合一
度掻き取った浴表面が再度酸化によりドロスが生成され
る等の欠点を有している。そのため、引上げ時に被めっ
き体が浴面を出ると同時に付着酸化物を還元させるため
にフラックスを人手により散布する方法が採られてい
る。このフラックスが熱分解することにより、有害なガ
スが発生し、人体はもちろん周辺の機器、建物を腐食さ
せる等製品の品質悪化のみならず、職場環境を悪化する
等の欠点を有しいる。また、溶融金属表面のドロス除去
を人手で行っているため自動化ができず、生産性向上に
対して大きなネックとなっている。

【０００８】本発明の目的は、被めっき体の溶融金属浸
漬前後の表面ドロスを自動的に除去し、めっき製品の品
質向上及び作業環境改善を計り、且つ、生産性向上が図
れる溶融めっき浴表面の不純物除去方法及び装置を提供
するところにある。

【０００９】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明は除去方法は、溶融金属浴表層部に変質して
いない純粋な溶融金属を強制的に送り込み、この溶融金
属の流れを利用して表層に形成している不純物を除去す
ることを特徴とする。また、前記溶融金属の流れを与え
る手段として、同一浴の内部より循環ポンプを使用して
溶融金属浴表層部に設けた吐出口より純粋な溶融金属を
送り込むと好適である。また、前記溶融金属の流れを与
える手段として、めっき浴に波動を起こさせて浴表面に
純粋な金属を送り込むと好適である。また、純粋な溶融
金属を送り込んだ後、ドロス掻取装置により不純物を除
去すると好適である。

【００１０】本発明の除去装置は、釜中の溶融金属浴表
層部に釜中の変質していない純粋な溶融金属を強制的に
送り込む圧送手段を備えたことを特徴とする。また、前
記圧送手段に循環ポンプを用いると好適である。また、
前記圧送手段により除去された不純物を釜外に排出する
ドロス掻取装置を備えると好適である。

【００１１】次に、本発明の概念図である図１及び図２
を用いて、溶融金属表面に生成したドロスを自動で除去
する方法を説明する。ここで、図１は平面図、図２は図
１のＡ−Ａ断面図である。

【００１２】溶融金属溶解用釜７内に溶解用金属を投入
し外部より加熱溶解して溶融金属８とする。この溶融金
属８を溶融金属浴中ポンプ９より吸引し配管１０を通し
て噴射ノズル１１に送り込む。送り込まれた溶融金属８
は噴射ノズル１１より浴面上に噴射され溶融の流れ１２
を形成する。この流れにより浴表面に生成している表面
ドロスをドロス掻取装置１３側へ移動させる。移動した
ドロスはドロス掻取装置１３によって槽の左右方向に集
められ槽外に排出される。

【００１３】すなわち、溶融金属８は凝固しないように
常にゆるやかに循環する程度でポンプ９を運転してお
き、被めっき体を挿入する直前でポンプ出力を上げて浴
表面のドロスを除去して被めっき体を浸漬する。被めっ
き体引き上げ時においても引き上げ直前にポンプ出力を
揚げ浴表面のドロスを除去して被めっき体を引き上げる
のである。

【００１４】以上のように本発明の溶融金属表面に生成
したドロスを除去する装置は、無人で処理が可能であ
り、この結果、溶融金属めっき作業が全自動で可能とさ
せたことを特徴とするものである。

【００１５】

【作用】以下、本発明の作用について詳細に説明する。
溶融金属、例えば溶融亜鉛は大気中に曝されると容易に
酸化膜を形成し時間と共に成長する。また、この酸化皮
膜は再表層は一部固体化しており圧縮空気あるいは不活
性ガス等では除去することは困難である。従って現状は
金属板で人手で機械的に掻取っている。そこで本発明は
このように生成した溶融金属表面の酸化皮膜を無人で自
動的に除去するものである。

【００１６】即ち、表面に浮遊している酸化皮膜は非常
に粘度が高く、かつ、最表層は一部固体化しているため
圧縮空気や各種ガスを使用しても除去できないが、溶融
金属を流すことにより溶融金属自体が高い粘度を有して
いること及び同一系の物質であることから容易に表面の
酸化皮膜を破り他方へ移動させる作用を有している。

【００１７】溶融金属を表面の酸化皮膜に流す方法とし
ては同一金属浴の内部より浴中ポンプで吸引して噴射ノ
ズルより噴射する方法が最も効果的である。

【００１８】しかし、酸化皮膜が全面に生成されていた
場合は溶融金属を表面に噴射しても容易に酸化皮膜が他
方へ移動しないため、移動先の一部の酸化皮膜を機械的
に除去する必要があり、そのために他方に酸化皮膜掻取
り用装置を設置し、常に他方の一部はこの掻取り装置に
より表面に酸化皮膜がない状態を維持することが重要で
ある。この結果、被めっき体の浸漬及び引上げ直前にポ
ンプ出力を上げると、瞬間に大半の浴表面の酸化皮膜が
除去できる。

【００１９】更に、浴表面に波動を与えることによりそ
の効果は倍加される。すなわち、掻取装置は通常に作動
させておき、被めっき体浸漬及び引上げ直前に噴射ノズ
ルより溶融金属を噴射する場合、噴射ノズルを上下に移
動することにより浴表面に波を形成させて酸化皮膜に破
壊力を与えて膜を細分化して酸化膜の移動を加速させる
ものである。

【００２０】ここで、溶融金属浴中ポンプは工業界で一
般に使用されいてるポンプが流用できるが、長寿命化の
ためにはセラミックス製が適している。ポンプは出力可
変型とし、容量は十分余裕のあるものを使用することが
好ましい。

【００２１】また、噴射ノズルの材質は、ポンプ及び配
管の寿命に合わせて選定すればよいが、長寿命化のため
にはセラミックス製が優れている。更に、噴射ノズルの
形状、大きさ及び配置については、溶融金属溶解用釜の
大きさに応じて設計、製作することが好ましい。

【００２２】

【実施例】

＜第一実施例＞本発明の溶融金属表面の酸化皮膜（ドロ
ス）除去に関する基礎データを取得するため図３及び図
４に示す装置を作製した。ここで、図３は平面図、図４
は図３のＢ−Ｂ断面図を示す。

【００２３】すなわち、浴槽の間口が１，０００ｍｍ×
１，０００ｍｍ、深さ８００ｍｍの溶融亜鉛用溶解釜１
５とし、浴中ポンプ１６は二相ステンレス製で能力は、
揚程Ｍａｘ．２ｍ、吐出し量Ｍａｘ．１，２００Ｋｇ／
ｍｉｎ．とし、噴射ノズル１７取付けの反対側に掻取装
置１８を取り付けた。溶融金属１９は亜鉛とし、噴射ノ
ズル１７は表面の酸化皮膜除去性能特性を把握するため
形状、大きさを試験のパラメータとした。また、溶融亜
鉛の吐出し量も試験のパラメータとした。各パラメータ
での試験結果を下記の表１に示す。この結果、溶融亜鉛
の吐出し量、ノズルの形状、大きさにはかなりの自由度
があることが判明し、基本的に本プロセスで溶融金属表
面の酸化皮膜を除去できることが立証された。

【００２４】

【表１】

【００２５】ここで、ノズルの数１は釜の幅方向全体に
吐出口を一体で１個とし、ノズルの数３は幅方向を３分
割、ノズルの数５は幅方向を５分割とした。噴射口面積
はこれらノズル先端の面積を合計したものである。吐出
し量は各設定値になるようにポンプの出力を調整して行
った。酸化皮膜除去時間はポンプ出力が一定になって表
面の酸化皮膜全体が掻取り装置の作動範囲まで移動する
までの時間である。噴射口面積が小さい場合は酸化皮膜
除去能力は非常に優れているが、波立ちが激しく新たな
酸化皮膜が生成する恐れがある。最も良い結果を示した
のは、試験Ｎｏ．２，３及び５であった。すなわち、酸
化膜除去時間はポンプ出力が一定にあって数秒以内であ
れば操業上支障はなく自動化が可能である。

【００２６】＜第二実施例＞本発明の他の特徴であるめ
っき浴に波動を起こさせて表面に純粋な金属を送り込む
方法の実施例を以下に示す。装置は基本的には実施例１
と同様の装置とし、この装置に溶融金属噴射ノズルを上
下に可動できるように改良したものである。

【００２７】すなわち、溶融金属噴射時に噴射ノズルを
上下移動させて溶融金属浴表面に波を起こさせ、この波
により表面に生成している酸化皮膜を破壊して移動させ
るものである。種々実験の結果、ノズルの数を３、噴射
口面積９５ｃｍ² 、噴射角度２５度、吐出し量３００Ｋ
ｇ／ｍｉｎ．で噴射ノズルの上下移動距離を±１０ｍ
ｍ、移動ピッチを０．５ｓｅｃ／１サイクルなる条件が
表面酸化皮膜除去にとって最も良好であった。尚、この
条件を多少外れても特に酸化皮膜除去性には影響を受け
ない。

【００２８】

【発明の効果】以上説明したように、本発明の溶融めっ
き浴表面の不純物除去方法及び装置を採用することによ
り以下の効果がある。 （１）短時間で自動除去が可能となる。 （２）人手に代わって機械的に実施するため確実、かつ
再現性がよい。 （３）溶融金属めっき全体の自動化が計れる。 （４）溶融金属浴からの被めっき体引上げ時に実施する
フラックス散布が省略できるため環境改善が計れる。 本発明はこのような特徴を有しており、長期間にわたっ
て安定した操業を可能することはもちろん、製品の品
質、生産性の向上、保守点検作業の軽減をはじめ、コス
ト低減に大きく寄与でき工業上価値あるものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の溶融金属浴表面に生成した酸化皮膜
（ドロス）を除去する装置の概念図である。

【図２】図１のＡ−Ａ断面図である。

【図３】本発明の溶融金属浴表面に生成した酸化皮膜
（ドロス）を除去する装置の一例を示す図である。

【図４】図３のＢ−Ｂ断面図である。

【図５】鋼板の連続溶融亜鉛めっき装置の概要を示す図
である。

【符号の説明】

７ 釜 ８ 溶融金属 ９ ポンプ １０ 配管 １１ 噴射ノズル １２ 噴射溶融金属の流れ １３ ドロス掻取装置

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 荒中 龍彦 広島県広島市西区観音新町四丁目６番22号 三菱重工業株式会社広島製作所内

Claims (7)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 溶融金属浴表層部に変質していない純粋
   な溶融金属を強制的に送り込み、この溶融金属の流れを
   利用して表層に形成している不純物を除去することを特
   徴とする溶融めっき浴表面の不純物除去方法。
2. 【請求項２】 前記溶融金属の流れを与える手段とし
   て、同一浴の内部より循環ポンプを使用して溶融金属浴
   表層部に設けた吐出口より純粋な溶融金属を送り込む請
   求項１記載の溶融めっき浴表面の不純物除去方法。
3. 【請求項３】 前記溶融金属の流れを与える手段とし
   て、めっき浴に波動を起こさせて浴表面に純粋な金属を
   送り込む請求項１記載の溶融めっき浴表面の不純物除去
   方法。
4. 【請求項４】 純粋な溶融金属を送り込んだ後、ドロス
   掻取装置により不純物を除去する請求項１，２又は３記
   載の溶融めっき浴表面の不純物除去方法。
5. 【請求項５】 釜中の溶融金属浴表層部に釜中の変質し
   ていない純粋な溶融金属を強制的に送り込む圧送手段を
   備えたことを特徴とする溶融めっき浴表面の不純物除去
   装置。
6. 【請求項６】 前記圧送手段は、循環ポンプである請求
   項５記載の溶融めっき浴表面の不純物除去装置。
7. 【請求項７】 前記圧送手段により除去された不純物を
   釜外に排出するドロス掻取装置を備えた請求項５又は６
   記載の溶融めっき浴表面の不純物除去装置。