JPH0883687A - 分散型電場発光素子 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】蛍光物質が水分により劣化することがなく長寿
命の分散型電場発光素子を得る。 【構成】発光層または誘電層の少なくとも１つに水和性
物質６の粉体粒子を分散させる。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は分散型エレクトロルミネ
ッセンス素子（以下、分散型電場発光素子と称する）の
発光層と誘電層に係わり、特にこれらの層に使用される
乾燥用物質に関する。

【０００２】

【従来の技術】分散型電場発光素子は発光物質をバイン
ダで結着してなる素子である。図２は従来の分散型電場
発光素子を示す断面図である。一般に、分散型電場発光
素子は透明電極４と対向電極１との間に硫化亜鉛（Ｚｎ
Ｓ）に銅（Ｃｕ）、マンガン（Ｍｎ）、銀（Ａｇ）、ア
ルミニウム（Ａｌ），ヨウ素（Ｉ）、臭素（Ｂｒ）、塩
素（Ｃｌ）等を添加した電界発光性蛍光体を高誘導電率
を有する有機インダ−樹脂中に分散した発光層３と、チ
タン酸バリウム（ＢａＴｉＯ₃ ）等の高誘電性無機物を
高誘電率を有する有機バインダ−樹脂中に分散した誘電
層２を設け、さらにこれを外皮フィルム５で包んだ構成
によりなり、該透明電極４と対向電極１との間に交流電
界を印加することによって、発光層３を発光させるもの
である。

【０００３】これらの分散型電場発光素子は厚さ１ｍｍ
以下と薄く、製造が容易であること、安価であること、
任意の形状の素子が製造可能であること等の利点を生か
して、液晶表示素子のバックライト、各種照明、装飾用
等として実用化が進められている。実用化に際しては、
連続駆動に伴う輝度低下が最も重要な開発課題であり初
期輝度を高く設定することにより、輝度半減寿命の大幅
な減少をきたす。従って、輝度を抑えて使用しなければ
ならず、これらに伴う適用範囲の制約が、分散型電場発
光素子のより一層の用途拡大の障害となっている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】この輝度の低下につい
ての解析を鋭意検討してきたが未だ十分な原因解明はな
されていない。ただし、劣化部位については素子を構成
する材料ごとに実験を重ねたところ電界発光性蛍光物
質、高誘電性無機質、有機バインダー樹脂のいずれも変
化していると思われる結果を得た。特に電界発光性蛍光
物質については電界印加による熱、または共存する酸素
もしくは水分により結晶構造が変化することがわかっ
た。この中でも電界印加状態における水分による電界発
光性蛍光物質の構造変化が最も大きい影響を与えること
が明らかになった。

【０００５】有機バインダー樹脂は元来、水分を含有し
ているものでありさらに外部からの水分の侵入が加わっ
て電界発光性蛍光物質の構造変化が起きるものである。
有機バインダは発光層と誘電層の両者に含まれている。
この発明は上述の点に鑑みてなされ、その目的は蛍光物
質周囲の水分を低減させて蛍光物質の劣化を防止し，も
って高輝度かつ、長寿命の分散型電場発光素子を提供す
ることにある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】上述の目的はこの発明に
よれば透明電極と対向電極の間に発光物質をバインダで
結着した発光層と誘電体をバインダで結着した誘電層を
配した分散型電場発光素子において、発光層と誘電層の
少なくとも１つに水和性物質の粉体粒子を分散してなる
とすることにより達成される。

【０００７】また上述の素子は、その周囲が外皮フィル
ムで被覆されてなるとすること、または水和性物質は塩
化カルシウム，臭化カルシウム，硫酸ナトリウム，硫酸
カルシウム，硫酸マグネシウム，硫酸銅，炭酸ナトリウ
ム，炭酸カリウムの群から選ばれた少なくとも１つであ
るとすることが有効である。

【０００８】

【作用】水和性物質の粉体粒子は有機バインダに含まれ
る水分や外部から侵入してきた水分を水和により吸着
し、電界発光性蛍光物質の周囲から水分をとり除く。粉
体粒子は表面積が大きく水和の効果が大きい。外皮フィ
ルムは外部からの水分の侵入を防止し、水和性粉体粒子
が水分で飽和するのを防ぐ。

【０００９】

【実施例】図１は本発明の実施例に係る分散型電場発光
素子を示す断面図である。１は対向電極、２は誘電層、
３は発光層、４は透明電極（ＩＴＯ−ＰＥＴフィル
ム）、５は外皮フィルムである。対向電極１はアルミニ
ウム（Ａｌ）等の金属シート、Ａｌ等の金属やＩＴＯ等
の導電性を有する金属酸化物をプラスチックシート上に
真空蒸着により被着させるほか、Ａｌ等の金属粉末を樹
脂中に分散させた導電性ペーストを塗布することにより
形成することができる。

【００１０】誘電層２に用いられる高誘電性無機物は、
従来より、公知のものでよく、例えばチタン酸バリウム
（ＢａＴｉＯ₃ ）、チタン酸鉛（ＰｂＴｉＯ₃ ），酸化
タンタル（Ｔａ₂ Ｏ₃ ）、酸化珪素（ＳｉＯ₂ ），酸化
チタン（ＴｉＯ₂ ）等が挙げられるが、チタン酸バリウ
ム（ＢａＴｉＯ₃ ）が最も一般的であり、その平均粒径
として、１〜５μｍ、特に１μｍのものが好ましい。誘
電層の作製は次のような方法で行われる。すなわち、上
記高誘電性無機物と高誘電率を有するシアノエチル化バ
インダー樹脂とをアセトン，エチレングリコール，モノ
メチルエーテル，ジメチルホルムアミド，ジメチルアセ
トン，シクロヘキサノン等のうちの１種かあるいは２種
以上混合した有機溶剤中で攪拌分散し、均一分散した誘
電塗料を対向電極１上に塗布、乾燥して形成する。この
誘電層の高誘電性無機物の含有量はバインダー樹脂に対
して、１０〜８０体積％が好ましい。さらに、この誘電
層の膜厚は１０〜５０μｍ、特に２０〜３０μｍのもの
が好ましい。

【００１１】発光層３に用いられる電界発光性蛍光物質
も従来より公知のものでよく、例えば、硫化亜鉛（Ｚｎ
Ｓ）を母体材料とし、賦活剤として、銅（Ｃｕ）、マン
ガン（Ｍｎ）、銀（Ａｇ）、供賦活剤として、アルミニ
ウム（Ａｌ），ヨウ素（Ｉ）、臭素（Ｂｒ）、塩素（Ｃ
ｌ）等を添加した電界発光性蛍光物質などがあるが、こ
れらは分散型電場発光素子としたときの発光特性から平
均粒径が３０μｍ以下が好適である。

【００１２】また、発光層３には、発光色を変化させる
ため蛍光色素を含有させてもよく、例えばローダミン６
Ｇ，ローダミンＢ，フロキシンＢ，ローズベンガル，メ
チルレッド，アクリジンオレンジ，アクリジンイエロー
等が挙げられる。発光層の形成は誘電層の作製と同様な
方法で塗布形成される。すなわち、上記蛍光物質粉末と
蛍光色素と高誘電率を有するシアノエチル化バインダー
樹脂をアセトン，エチレングリコール，モノメチルエー
テル，ジメチルホルムアミド，ジメチルアセトン，シク
ロヘキサノン等のうちの１種かあるいは２種以上混合し
た有機溶剤中で攪拌分散し、均一分散した発光塗料を誘
電層を塗布した透明電極上に塗布・乾燥して発光層が得
られる。

【００１３】この発光層の硫化亜鉛（ＺｎＳ）の含有量
はバインダー樹脂に対して、１０〜８０体積％が好まし
い。発光色素１種あたりの含有量はバインダー樹脂に対
して、０．００１〜１重量％が好ましい。さらに、この
発光層の膜厚は１０〜１００μｍ、特に４０〜７０μｍ
のものが好ましい。上記発光層と誘電層の少なくとも一
方または両方に水和性物質の粉体粒子を加える。水和性
物質として例えば、塩化カルシウム，臭化カルシウム，
硫酸ナトリウム，硫酸カルシウム，硫酸マグネシウム，
硫酸銅，炭酸ナトリウム，炭酸カリウム等を１種あるい
は２種以上が用いられる。含有量は、発光層に含まれる
場合は電界発光性蛍光物質に対して０．１から１０重量
％が好ましく、誘電層に含まれる場合には、高誘電性無
機物に対して０．１から２０重量％が好ましい。

【００１４】透明電極４はガラス，フィルム等からなる
透明基板の片面に酸化インジウム・スズ（ＩＴＯ）を真
空蒸着したものからなる透明電極が用いられる。外皮フ
ィルム５に用いられる外皮フィルム材料は公知の材料、
例えば、耐湿性の良い三フッ化エチレンフィルムが挙げ
られる。なお、捕水層として該三フッ化エチレンフィル
ムの内側に吸湿性の高い６−ナイロンフィルム等が用い
られる場合がある。

【００１５】以下、本発明の実施例について説明する。 実施例１ 高誘電性無機物としてチタン酸バリウム（ＢａＴｉ
Ｏ₃ ）４０重量部と、バインダー樹脂としてシアノエチ
ル化プルラン１０重量部とをジメチルホルムアミド（Ｄ
ＭＦ）１００重量部とともに混合分散して得られた誘電
塗料を、１００μｍのＡｌ箔の対向電極１上に塗布し、
１００℃、２時間乾燥して、膜厚２５μｍ誘電層２を形
成した。

【００１６】次いで、この誘電体層上にＺｎＳ：Ｃｕか
らなる電界発光性蛍光物質４０重量部と、水和性物質と
して硫酸ナトリウム２重量部と、バインダー樹脂とし
て、シアノエチル化プルラン１０重量部をＤＭＦ４００
重量部に溶解，混合分散して調製した発光塗料を塗布
し、１００℃、５時間乾燥して、膜厚６５μｍの発光層
３を形成した。

【００１７】しかるのちに、インジウム・スズ酸化物
（ＩＴＯ）を真空蒸着した７５μｍポリエステルテレフ
タレートフィルム（ＰＥＦ）を加熱圧着して、透明電極
４を形成した。これらの素子上に、さらに捕水層として
１５０μｍの接着剤付き６−ナイロンフィルムを、最外
層にパッケージフィルムとして、２５０μｍの接着剤付
き三フッ化エチレンフィルム（ＰＣＴＦＥ）を設けて外
皮フィルム５とし分散型電場発光素子を作製した。 実施例２ 実施例１における発光層３中の水和性物質である硫酸ナ
トリウムの代わりに、硫酸マグネシウムを使用した以外
は実施例１と同様にして分散型電場発光素子を作製し
た。 実施例３ 実施例１における発光層３中の水和性物質である硫酸ナ
トリウムの代わりに、塩化カルシウムを使用した以外は
実施例１と同様にして分散型電場発光素子を作製した。 実施例４ 実施例１における発光層３中の水和性物質である硫酸ナ
トリウム２重量部の代わりに、硫酸ナトリウム１重量部
と硫酸マグネシウム１重量部を使用した以外は実施例１
と同様にして分散型電場発光素子を作製した。 実施例５ 実施例１における発光層３中の水和性物質を省き、実施
例１における誘電塗料に乾燥剤として硫酸ナトリウム４
重量部を加えて、誘電層２を形成した以外は実施例１と
同様に分散型電場発光素子を作製した。 実施例６ 実施例１における発光層３中の水和性物質を省き、実施
例１における誘電塗料に乾燥剤として塩化カルシウム４
重量部を加えて、誘電層２を形成した以外は実施例１と
同様に分散型電場発光素子を作製した。 実施例７ 実施例１における誘電塗料に水和性物質として硫酸ナト
リウム４重量部を加えて、誘電層２を形成した以外は実
施例１と同様に分散型電場発光素子を作製した。 実施例８ 実施例１における発光層３中の水和性物質である硫酸ナ
トリウム２重量部の代わりに、硫酸ナトリウム１重量部
と硫酸マグネシウム１重量部を使用し、実施例１におけ
る誘電塗料に水和性物質として硫酸ナトリウム２重量部
と硫酸マグネシウム２重量部を加えて、誘電層２を形成
した以外は実施例１と同様に分散型電場発光素子を製作
した。 実施例９ 実施例１における発光層３中の水和性物質である硫酸ナ
トリウム２重量部の代わりに、塩化カルシウム２重量部
を使用し、実施例１における誘電塗料に水和性物質とし
て塩化カルシウム４重量部を加えて、誘電層２を形成し
た以外は実施例１と同様に分散型電場発光素子を作製し
た。 比較例１ 実施例１における発光層３中の水和性物質を省いた以外
は、すべて実施例１と同様に分散型電場発光素子を作製
した。

【００１８】実施例および比較例で得られた分散型電場
発光素子の透明電極４と対向電極１からそれぞれあらか
じめ取り出しておいた図示しないリード電極に交流電源
を接続し１５０Ｖ，８００Ｈｚの駆動条件で、２５℃、
７０％ＲＨにおける初期輝度が初期値の半分になるまで
の輝度半減時間を測定して寿命とした。その結果を表１
に示す。

【００１９】

【表１】 表１の結果から水和性物質を発光層または誘電層に用い
ると寿命時間が延長していることがわかる。

【００２０】

【発明の効果】この発明によれば発光層と誘電層の少な
くとも１つに水和性物質の粉体粒子を分散して用いるの
で、蛍光物質の周囲の水分が水和性物質に吸着されて除
去され、蛍光物質の水分による劣化がなくなり、寿命に
優れる分散型電場発光素子が得られる。

【００２１】素子の周囲を外皮フィルムで被覆すると水
分の素子への侵入が減少し、寿命がさらに増大する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の実施例にかかる分散型電場発光素子を
示す断面図

【図２】従来の分散型電場発光素子を示す断面図

【符号の説明】

１ 対向電極 ２ 誘電層 ３ 発光層 ４ 透明電極 ５ 外皮フィルム ５ａ 捕水層 ６ 水和性物質

Claims (3)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】透明電極と対向電極の間に発光物質をバイ
   ンダで結着した発光層と誘電体をバインダで結着した誘
   電層を配した分散型電場発光素子において、発光層と誘
   電層の少なくとも１つに水和性物質の粉体粒子を分散し
   ていることを特徴とする分散型電場発光素子。
2. 【請求項２】請求項１記載の素子において、発光素子は
   その周囲が外皮フィルムで被覆されてなることを特徴と
   する分散型電場発光素子。
3. 【請求項３】請求項１記載の素子において、水和性物質
   は塩化カルシウム，臭化カルシウム，硫酸ナトリウム，
   硫酸カルシウム，硫酸マグネシウム，硫酸銅，炭酸ナト
   リウム，炭酸カリウムの群から選ばれた少なくとも１つ
   であることを特徴とする分散型電場発光素子。