JPH0874121A - メタ型芳香族ポリアミド繊維の製造法 - Google Patents

メタ型芳香族ポリアミド繊維の製造法

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JPH0874121A
JPH0874121A JP20501994A JP20501994A JPH0874121A JP H0874121 A JPH0874121 A JP H0874121A JP 20501994 A JP20501994 A JP 20501994A JP 20501994 A JP20501994 A JP 20501994A JP H0874121 A JPH0874121 A JP H0874121A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 N−メチル−2−ピロリドン(MNP)を溶
媒として溶液重合により得たメタ型芳香族ポリアミド溶
液を中和して調製した紡糸用重合体溶液から直接に湿式
紡糸によって良好な繊維特性を持つメタ型芳香族ポリア
ミド繊維を製造する方法を提供する。 【構成】 NMPを溶媒として溶液重合により得たメタ
型芳香族ポリアミドの溶液を水酸化カルシウム、酸化カ
ルシウム又は炭酸カルシウムで中和してなる等モルの塩
化カルシウムを含みかつ特定量の重合体及び水を含む溶
液を、下記組成の塩化カルシウム含有NMP水溶液から
なり重合体濃度に応じて決定される特定温度の制御され
た凝固浴中に紡出し、ボイドのない透明性の良好なメタ
型芳香族ポリアミド繊維を得る。この繊維を延伸すれば
優れた力学特性のメタ型芳香族ポリアミド延伸繊維とな
る。 塩化カルシウム/水=35/65〜65/35(重量
比) NMP/(塩化カルシウム+水)=5/95〜35/6
5(重量比)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は溶液重合法により得たメ
タ型芳香族ポリアミド重合体(以下、「メタ型アラミ
ド」と略称することがある)の溶液から湿式紡糸法によ
り力学特性、耐熱性等の良好なメタ型アラミド繊維を製
造する方法に関するものである。
【0002】さらに詳細には、アミド系溶媒中でメタ型
芳香族ジアミンとイソフタル酸クロライドとを反応させ
たのち、副生する塩酸を中和して生成する塩化カルシウ
ムと水とを含有する重合体溶液から、特殊な凝固浴を使
用する新規な湿式紡糸法により、優れた力学特性を有し
かつ耐熱性、難燃性も良好なメタ型アラミド繊維を良好
な生産性にて製造する方法に関するものである。
【0003】
【従来の技術】芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸ク
ロライドとから製造される芳香族ポリアミド(アラミ
ド)が耐熱性に優れかつ難燃性にも富むことは従来周知
であり、また、これらのアラミドが一連のアミド系溶媒
に可溶であり、乾式紡糸法、湿式紡糸法、半乾半湿式紡
糸法などによって繊維となし得ることもよく知られてい
る。
【0004】かかるアラミドのうち、ポリメタフェニレ
ニイソフタラミドで代表されるメタ型アラミドの繊維
は、耐熱性・難燃性繊維として特に有用なものであり、
現在、主に次の(a)(b)の2つの方法によって工業的な生
産が行われている。さらに、これ以外にもメタ系アラミ
ド繊維の製造法として、次の(c)(d)のような方法が提案
されている。 (a) メタフェニレンジアミンとイソフタル酸クロライド
とをN,N−ジメチルアセトアミド中で低温溶液重合さ
せるによってポリメタフェニレンイソフタラミド溶液を
調製し、しかる後、溶液中に副生した塩酸を水酸化カル
シウムで中和して得た塩化カルシウムを含む重合体溶液
を、乾式紡糸して繊維を製造する方法(特公昭 35-1439
9 号公報、米国特許 3360595号明細書など参照)。 (b) メタフェニレンジアミン塩とイソフタル酸クロライ
ドとを含む生成ポリアミドの良溶媒ではない有機溶剤系
(例えばテトラヒドロフラン)と無機の酸受容剤ならび
に可溶性中性塩を含む水溶液系とを接触させることによ
ってポリメタフェニレンイソフタラミド重合体の粉末を
単離し(特公昭 47-10863 号公報参照)、この重合体粉
末をアミド系溶媒に再溶解した後、無機塩含有水性凝固
浴中に湿式紡糸する方法(特公昭 48-17551 号公報など
参照)。 (c) 溶液重合法で合成したメタ型アラミドをアミド系溶
媒に溶解した、無機塩を含まないか又は僅かな量(2〜
3%)の塩化リチウムを含むメタ型アラミド溶液から、
湿式成形法によって繊維等の成形物を製造する方法(特
開昭 50-52167 号公報参照)。 (d) アミド系溶媒中で溶液重合し、水酸化カルシウム、
酸化カルシウム等で中和して生成した塩化カルシウムと
水とを含むメタ型アラミド重合体溶液を、オリフィスか
ら気体中に押し出して、気体中を通過せしめた後、水性
凝固浴に導入し、次いで、塩化カルシウム等の無機塩水
溶液中を通過せしめて糸条物に成形する方法(特開昭 5
6-31009 号公報参照)。
【0005】上記(a) の方法は、ポリマーを単離せずに
紡糸用溶液を調製できる利点はあるが、沸点の高いアミ
ド系溶媒を用いる乾式紡糸のため、製造上のエネルギー
コストが高く、しかも紡糸口金当たりの孔数を増大する
と紡糸安定性が急速に低下する。また、この重合体溶液
を水性凝固浴中に湿式紡糸しようとしても失透の多い弱
い繊維しか得られないことが多いため、未だに溶液重合
によるメタ型アラミド重合体溶液を水性凝固浴を用いて
湿式紡糸する方法は、多くの困難があると考えられお
り、いまだに工業的に実施されていない。
【0006】一方、(b)(c)の方法は、上述した乾式紡糸
の問題は回避されるが、重合系と紡糸系とで溶媒が異な
ること、ーたん単離された重合体を再溶解するための工
程を要すること、再溶解して安定な溶液を得るには特別
の配慮と細心の工程管理が要求されること、等の問題が
ある(特公昭 48-4661号公報参照)。
【0007】また、(d) の方法は、紡糸口金から空気中
に出糸する場合、口金当たりの孔数を増大すると紡糸安
定性が著しく低下するため、生産性が低く効率的でな
い。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述のごと
き従来のメタ型アラミド繊維の製造法における問題点を
解消し、溶液重合によって得た重合体溶液から、生産性
の優れた湿式紡糸によって、失透が少なく均質で透明性
に優れ、力学特性、熱的性質の良好なメタ型アラミド繊
維を良好な生産性にて工業的に有利に生産する新規な方
法を提供しようとするものである。
【0009】したがって、本発明の目的は、アミド系溶
媒中でメタ型芳香族ジアミンとイソフタル酸クロライド
を主成分とする芳香族ジカルボン酸とを反応させた後、
副生する塩酸を中和して生成する塩化カルシウムと水を
含む重合体溶液を直接に湿式紡糸することにより、光
沢、力学特性の良好なメタ型アラミド繊維を、良好な生
産性にて工業的に製造し得る新規な方法を提供すること
にある。
【0010】
【課題を解決するための手段】上述のごとき本発明の目
的は、アミド系溶媒の存在下で芳香族ジアミンと芳香族
ジカルボン酸クロライドとを反応せしめた後、副生する
塩酸(HCl)を中和することにより得た塩化カルシウ
ム(CaCl2 )と水とを含有するメタ型アラミド重合
体溶液を湿式紡糸してメタ型アラミド繊維を製造する方
法において、(1) アミド系溶媒としてN−メチル−2−
ピロリドン(NMP)を用い、メタ型フェニレンジアミ
ンを主体とする芳香族ジアミンとイソフタル酸クロライ
ドを主体とする芳香族ジカルボン酸クロライドとを反応
せしめた後、副生する塩酸(HCl)を水酸化カルシウ
ム、酸化カルシウム及び炭酸カルシウムの中から選ばれ
る少なくとも1種の中和剤を用いて中和して、中和によ
り生成した塩化カルシウムと水とを含むメタ型アラミド
重合体溶液であって、かつ、該重合体溶液における重合
体の濃度(重合体とN−メチル−2−ピロリドンとの合
計100重量部に対する重合体の重量部)が15〜30
(重量部)、塩化カルシウムの濃度(重合体100重量
部に対する重量)が40〜47(重量部)、水の濃度
(重合体100重量部に対する重量)が13〜60(重
量部)であるメタ型アラミド重合体溶液を調製するこ
と、(2) 上記重合体溶液を、N−メチル−2−ピロリド
ンを含有する塩化カルシウム水溶液からなり、塩化カル
シウム/水の重量比が35/65〜65/35で、N−
メチル−2−ピロリドン/(塩化カルシウム+水)の重
量比が5/95〜35/65の組成を有する凝固浴中に
紡出し、かつ、この際、凝固浴温度(T℃)を重合体溶
液における上記重合体濃度(PN )に応じて下記の範囲
に調整すること、 15< PN ≦20のとき 85≦ T ≦110 20< PN ≦25のとき 100≦ T ≦125 25< PN ≦30のとき 110≦ T ≦135 (3) 次いで、凝固浴中で形成された糸条物を水洗浴中に
導入して水洗すること、を特徴とする本発明のメタ型ア
ラミド繊維の製造方法によって達成される。
【0011】本発明の方法は、 (i)メタ型芳香族ジアミ
ンとメタ型芳香族ジカルボン酸クロライドとをアミド系
溶媒中で反応せしめる溶液重合−(ii)重合で副生する塩
酸を中和する中和反応− (iii)得られた重合体溶液の湿
式紡糸、の各工程により、好ましくはこれらの工程を連
続的に実施することにより、優れた力学特性と耐熱性を
兼備するメタ型アラミド繊維を低コストにて効率的に良
好な生産性にて製造する方法である。
【0012】以下、本発明方法で使用する原料及び溶
媒、溶液重合、中和反応、湿式紡糸、ならびに洗浄・乾
燥・延伸について、順を追って詳細に説明する。
【0013】(ア)原料及び溶媒 本発明方法において使用される原料の一つであるメタ型
芳香族ジアミンとしては、主として下記式で示されるジ
アミンが使用される。
【0014】
【化1】
【0015】(式中、Rはハロゲン又は炭素数1〜3の
アルキルキ基、nは0又は1) かかるメタ型芳香族ジアミンの具体例としては、メタフ
ェニレンジアミン、2,4-トルエンジアミン、2,6-トルエ
ンジアミン、2,4-ジアミノクロルベンゼン、2,6-ジアミ
ノクロルベンゼンなどが挙げられる。その他のメタ型芳
香族ジアミンとしては、3,4´- ジアミノジフェニルエ
ーテル、3,4´- ジアミノジフェニルスルホンなどが挙
げられる。
【0016】本発明方法では、なかでも、メタフェニレ
ンジアミン又はこれを主体とする混合ジアミンが好まし
い。メタフェニレンジアミンと併用する他の芳香族ジア
ミンとしては、上記のメタ型芳香族ジアミンのほかにパ
ラフェニレンジアミン、2,5-ジアミノクロルベンゼン、
2,5-ジアミノブロムベンゼン、アミノアニシジンなどの
ようなベンゼン誘導体、1,5-パラナフチレンジアミン、
4,4´- ジアミノジフェニルエーテル、4,4´- ジアミノ
ジフェニケトン、ビス(アミノフェニル)フェニルアミ
ン、ビス(パラアミノフェニル)メタンなどが用いられ
る。
【0017】溶解性の良い重合体が望まれる場合には、
このような他の芳香族ジアミンは全体の20モル%程度
まで使用可能であるが、高結晶性の重合体が望まれる場
合には、メタフェニレンジアミンが90モル%以上、と
くに95モル%以上、含まれることが好ましい。
【0018】一方、本発明方法で使用する芳香族ジカル
ボン酸クロライドは、イソフタル酸クロライド又はこれ
を主体とする芳香族ジカルボン酸クロライドである。イ
ソフタル酸クロライドと併用し得る他の芳香族ジカルボ
ン酸クロライドとしては、テレフタル酸クロライド、1,
4-ナフタレンジカルボン酸クロライド、2,6-ナフタレン
ジカルボン酸クロライド、4,4´- ビフェニルジカルボ
ン酸クロライド、3-クロルイソフタル酸クロライド、3-
メトキシイソフタル酸クロライド、ビス(クロロカルボ
ニルフェニル)エーテルなどが挙げられる。
【0019】本発明方法の実施に当たって、溶解性の良
好な重合体が望まれる場合は、これらの他の芳香族ジカ
ルボン酸の高率(20モル%程度まで)混合も可能であ
るが、高結晶性の重合体が望まれる場合は、イソフタル
酸クロライドが90モル%以上、とくに95モル%以上
含まれることが好ましい。
【0020】メタ型芳香族ポリアミドの溶液重合に用い
るアミド系溶媒としては、N,N−ジメチルホルムアミ
ド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−
ピロリドンなどが知られているが、本発明方法では溶液
重合から湿式紡糸工程に至るまでの重合体溶液の安定性
などから、N−メチル−2−ピロリドン(本発明では
「NMP」と略す)が使用される。
【0021】(イ)溶液重合 本発明方法では、上記の原料及び溶媒を使用して溶液重
合を行う。次に、この溶液重合の操作について詳述す
る。
【0022】重合工程では、重合溶媒として前述のよう
にNMPが使用されるが、これをできるだけ脱水乾燥し
少なくとも溶媒中の水分を50ppm 以下となし、これに
メタ型芳香族ジアミンを溶解させた後、この溶液にイソ
フタル酸クロライドを主成分とする芳香族ジカルボン酸
クロライドを粉末状態もしくは溶融状態で十分な撹拌下
に加えて反応させる。反応温度は−10℃〜100℃が
好ましく、さらに好ましくは0℃〜100℃とする。
【0023】重合体の重合度は、反応温度、反応時間、
撹拌効果等によって影響されるが、重合反応に使用され
る芳香族ジアミンと芳香族ジカルボン酸クロライドの純
度及びこの両者の使用割合によっても大きく影響され
る。一般的には、芳香族ジアミン/芳香族ジカルボン酸
クロライドのモル比が1.00において最高の重合度が
得られるとされているが、実際には十分に精製された原
料を使用しても、芳香族ジカルボン酸クロライドの微量
分解があり、重合体が最高の重合度を示すモル比は芳香
族ジカルボン酸クロライドの微増のところにある。すな
わち、芳香族ジカルボン酸クロライド/芳香族ジアミン
のモル比=1.000/1〜1.002/1の範囲で最
高の重合度を示す場合が多い。しかし、両成分の精製度
の差異によってもこのモル比の値が変化することもある
ので、この両成分の関係は予め実験によって検証してお
くのが望ましい。
【0024】重合体の重合度は、重合体又はその溶液が
使用される目的や繊維の用途などによってその要求水準
が設定されるので、必要に応じ、従来公知の方法によっ
て重合度を制御することができる。その代表的な方法の
1つとして、末端停止剤(アニリン、トルイジン等のア
ルキルアニリン、安息香酸クロライド等)を用いて重合
度を調節することができる。
【0025】本発明方法において、上記のごときメタ型
芳香族ポリアミドから力学的特性の良好な耐熱繊維を製
造するには重合度の調節が重要である。とりわけ、ポリ
メタフェニレンイソフタラミド系重合体から性能が良好
な繊維を得るには、30℃の濃硫酸中、ポリマー濃度
0.5g /100mlで測定した値から求めた固有粘度
(I.V.)が0.8〜4.0、とくに1.0〜3.
0、なかでも1.3〜2.2の重合体が好適である。
【0026】本発明方法は、溶液重合工程−中和反応工
程−湿式紡糸工程を含む一連のプロセスで優れた性能の
メタ型アラミド繊維を製造する方法であるが、これを達
成するためには、紡糸原液における重合体濃度の調整が
重要である。紡糸原液の重合体濃度は次の中和反応工程
でも調整可能であるが、溶液重合工程において中和反応
工程で調節可能な範囲も含めて、重合体濃度を設定して
重合反応を行うことが重要である。
【0027】本発明における重合溶液中の重合体濃度
は、重合体と溶媒(NMP)との合計100重量部に対
する重量部(本発明では「PN 濃度」と称する。なお、
以下の説明ではPN 濃度の単位である重量部は省略す
る。)にして15〜30、好ましくは16〜30であ
る。PN 濃度が15未満では、濃度が小さすぎて溶液の
曳糸性が悪くなり、これに伴い繊維性能が低下するばか
りでなく、低濃度のため、さらに溶媒(NMP)の使用
循環比が高くなり経済的にも好ましくない。また、P N
濃度が高いほど成形物(繊維)の透明性は良好になる傾
向があるが、PN 濃度が30を超えると粘度が高くなり
過ぎて、重合反応及びとくに中和反応が順調に行えない
などの問題が生じる。したがって、重合反応で高濃度
(例えばPN 濃度30以上で)重合を行った場合、中和
反応工程で中和剤である水酸化カルシウムをNMPの適
当量(例えば、最終的にPN 濃度が25になる量)に分
散させたスラリーを添加すると、中和反応が容易になる
と同時に重合体濃度(PN 濃度)の調整を行うことがこ
とができる。
【0028】(ウ)中和反応 上記のごとく、溶液重合反応を行った溶液中には重合反
応に使用したジカルボン酸クロライドに対応する量のH
Clが副生するので、このHClの実質的に全部をCa
Cl2 などの可溶性塩を形成する中和剤を用いて中和す
る。
【0029】中和剤としては、一般に、周期律表第I族
及び/又は第II族の金属の酸化物、水酸化物、水素化
物、炭酸塩などを用いることができるが、本発明方法に
おいては、中和後の重合体溶液の安定性及び中和で生成
する金属塩化物の可溶性や経済的観点などから、中和剤
として、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カル
シウム又はこれらの混合物が用いられる。
【0030】この中和反応の好ましい温度範囲は、重合
体の化学組成、溶媒の種類、重合体と溶媒の混合比、中
和すべきHClの含有量などによって異なるため一概に
は言い難いが、0〜150℃の範囲内から一連の実験検
討によって選択することができる。なお、好適温度は中
和反応進行の各段階、すなわち中和反応初期、中期及び
終期の各ステップに応じて、好ましい条件範囲を選択す
るのがよい。
【0031】中和反応時の重合溶液は十分に混和混練さ
れ、均一化されていることが好ましく、したがって撹拌
下で実施するのが適当である。この中和反応工程におけ
るHClの中和率は実質的に100%とすることが好ま
しい。この場合、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、
炭酸カルシウムなどの水に不溶な固体を用いると、粘度
の高い溶液(又は高濃度溶液)では、これら中和剤の微
粒子がわずかに残存することがある。このときは、酸化
カルシウムや水酸化カルシウムを用いてHClの95〜
98%を中和した後、残りの5〜2%を水酸化ナトリウ
ムの如き水溶性アルカリ溶液と所定量のNMPの混合溶
液を用い、生成するNaClの沈殿物が発生しないよう
に中和することができる。
【0032】この中和反応工程において、系にNMPを
加えることによって溶液の重合体濃度を調節することも
できる。
【0033】すでに述べたように、本発明方法は、中和
剤として、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、炭酸カ
ルシウムのうちの少なくとも1種を使用する。したがっ
て、重合反応で副生するHClを中和することで塩化カ
ルシウム(CaCl2 )が生成する。重合反応で副生す
るHClの量は、重合体の化学構造、最小単位の平均分
子量によって異なるが、例えばポリメタフェニレンイソ
フタラミドの重合反応で副生するHClを上記化合物で
100%中和する場合、重合体100(重量)部につい
てCaCl2 が46.64(重量)部生成する。この中
和反応で生成したCaCl2 は重合体溶液中に溶存し、
重合体溶液の安定性を高める働きをするが(特公昭 35-
16027 号参照)、逆に、この多量に溶存するCaCl2
のため、従来はかかる重合体溶液からの湿式紡糸が困難
であった。
【0034】一方、中和反応によって生成する水の量
は、中和剤の種類によって異なり、水酸化カルシウムに
よって中和すると重合体100(重量)部に対して1
5.13(重量)部の水が生成する。一方、酸化カルシ
ウム、炭酸カルシウムによって中和すると重合体100
部に対して7.56部の水が生成する。
【0035】ここで生成した水も、重合体溶液に溶存し
ているが、上記の程度の量では溶液の安定性や中和後の
組成物の特性をほとんど損なわない。むしろ、水の含有
によって低粘度化などの好ましい特性を持たせることも
あるが、余り多いと溶液の安定性を著しく低下させる
(ゲル化する)ことになる。
【0036】中和反応工程において添加する水の適量
は、重合体濃度によって異なる。本発明方法における重
合体濃度は前述したように、PN 濃度にして15〜3
0、好ましくは16〜30である。したがって、例え
ば、ポリメタフェニレニソフタラミド重合体溶液の場
合、PN 濃度=16における水の溶存量(重量)は、重
合工程で副生するHClをCa(OH)2 で100%中
和したとき約2.42(重合体100部に対して15
部)で、この水量の約6倍すなわち重合体100部に対
して約90部まで溶解可能であるが、溶液の安定領域は
重合体100部に対して水が2.42〜9.7部(水/
重合体=15〜60)の範囲である。また、例えばPN
濃度=20のときも上記PN 濃度=16のときとほぼ同
様で、重合体100部に対し約15〜60部であり、P
N 濃度=25での安定領域は15〜45部となり、PN
濃度=30では15〜30部である。
【0037】上記の範囲は重合体溶液を60〜70℃で
静置した場合の概略値であり、重合体の重合度、静置保
存温度などの条件によって幾分異なってくる。いずれに
しても重合体溶液の水の溶存許容濃度は重合体濃度の増
加に伴い限定されてくるが、本発明方法の実施に当って
は予め全重合体溶液組成物中の水の濃度8%以下を目安
に実験検討を実施することによって、溶液のゲル化を防
止可能な溶存許容濃度範囲を知ることができる。
【0038】(エ)重合体溶液の湿式紡糸 前述のごとく溶液重合(HClが副生)した後、塩基性
カルシウム化合物による中和(CaCl2 が生成)を行
った重合体溶液は、重合体を単離することなく、そのま
ま、或いは必要に応じ濃度調整後、湿式紡糸工程に供給
し、繊維化するが、本発明方法では、湿式紡糸において
特殊な水性凝固浴を使用することにより、優れた力学特
性、耐熱性を有するメタ型アラミド繊維を効率的に良好
な生産性で製造することができる。
【0039】従来、等モル含CaCl2 メタ型アラミド
重合体溶液は湿式紡糸によって繊維化することが困難な
ため、従来はこれを紡糸する方法として乾式紡糸や半乾
半湿式紡糸が採用されてきた。また、これを湿式紡糸す
るには、溶液重合、界面重合のいずれの場合も副生する
HClの中和によって生成した塩化物塩類(CaC
2 、NaCl、NH4 Cl等)を何等かの手段で少な
くとも70%以下まで、好ましくは20%以下まで、減
少させた減塩重合体溶液を調製する必要があった。しか
しながら、これらの手段による塩化物の除去は工業的に
困難なことが多く、例えば、界面重合で重合体を合成し
た場合、重合溶媒と紡糸用溶媒とが異なるため、それら
の回収に別々の回収装置を要するとか、あるいは溶液重
合で合成した重合体溶液を同一溶媒を用いて紡糸する場
合でも中和によって副生する無機塩化物を加圧濾過によ
って除去する(高粘度のため工業的に極めて困難)と
か、重合体溶液に水を加えて無機塩化物を水洗除去した
後、重合体を乾燥して再溶解するなど、困難な工程を必
要とするため、エネルギーコスト的にも、環境汚染的に
も難点が多く、いずれも好ましい方法とは言い難い。
【0040】本発明方法は従来実施困難とされていた、
この等モル含CaCl2 重合体溶液を、紡糸孔数300
〜30000個を有する多ホールの紡糸口金を通じて、
凝固浴中に直接紡出する湿式紡糸法によって、光沢や力
学特性、耐熱性などに優れたメタ型アラミド繊維を製造
することを、初めて可能にするものである。
【0041】前述したCaCl2 などの金属塩を含まな
い無塩の重合体溶液や金属塩の一部を除去した減塩重合
体溶液の場合は、例えば特公昭 48-17551 号公報に記載
のごとくCaCl2 水溶液からなる1段の凝固浴で透明
な糸条物が形成され、その後の水洗工程、延伸工程で優
れた性能の繊維を製造することができる。しかし、等モ
ルのCaCl2 を含む重合体溶液の湿式紡糸の場合、従
来のような1段の凝固浴では凝固が速く失透が著しいた
め、透明な糸条物を得ることができず、そのため、その
後の水洗、延伸などの処理工程を経ても、失透した力学
特性の劣った繊維しか得られない。また、紡糸の出糸時
点で断糸が多く紡糸が全くできないケースも多々ある。
【0042】また、NMPを含むCaCl2 水溶液から
なる凝固浴を用いて湿式紡糸する際、メタ型アラミド重
合体紡糸原液中にCaCl2 を含まない(数%程度含有
していても同様)いわゆる無塩の重合体溶液を使用する
場合にあっては、凝固浴中のNMP濃度を0〜4(重
量)%に抑えない限り、高性能のメタ型アラミド繊維は
得られない。
【0043】これに対して、本発明方法のごとく等モル
含CaCl2 重合体溶液からなる紡糸原液を使用する場
合は、上述した無塩の重合体溶液とは逆に、凝固浴中の
NMP濃度が実質的にゼロの場合は、引っ張り強度4.
0g/de以上の満足な力学特性を持つメタ型アラミド
繊維は得られない。
【0044】本発明方法では、この問題を解決するため
に、特殊な組成の水性1凝固浴を使用する。すなわち、
本発明方法では、先に述べた溶液重合−中和反応による
重合体溶液を、好ましくは85〜135℃の範囲内で凝
固浴温度に対応する温度に調整した後、上記紡糸口金か
ら後述する組成、温度の凝固浴中に紡出(出糸)し、糸
条物を形成せしめた後、この糸条物を凝固浴から引き出
し、引き続き水洗して繊維化する。
【0045】[凝固浴の組成、温度]本発明方法におい
て、等モル含CaCl2 重合体溶液の組成と凝固浴組成
との間には密接な関係があり、これらは繊維性能に大き
く影響する。このため、凝固浴の組成と温度条件の選定
は極めて重要である。
【0046】本発明方法における凝固浴は、塩化カルシ
ウム(CaCl2 )とN−メチル−2−ピロリドン(N
MP)と水(H2 O)との3成分からなる水溶液で構成
さるが、この凝固浴組成において、上記3成分は次の条
件をすべて満足する範囲内にあることが必要である。
【0047】CaCl2 /H2 O(重量比)=35/6
5〜65/35(好ましくは40/60〜60/4
0)。
【0048】NMP/(CaCl2 +H2 O)(重量
比)=5/95〜35/65(好ましくは10/90〜
40/60)。
【0049】凝固浴の組成がこの範囲外では、糸条物の
形成は出来ても断糸して紡糸が出来なくなったり、ま
た、紡糸が出来ても後続の温水延伸で断糸が生じるとか
乾熱延伸で断糸毛羽などが発生するという問題がある。
【0050】例えば、CaCl2 又はNMPのいずれか
でも上記範囲より少ないと、繊維が失透して、紡糸段階
あるいは延伸段階で断糸が生じる。また、CaCl2
はNMPが上記範囲より多いと、糸条物の凝固が不十分
となり、最終的に得られる繊維は性能の劣ったものとな
る。
【0051】したがって、本発明方法では、紡糸開始時
から凝固浴組成が常に上記の範囲内にあるよう厳密に維
持管理しなければならない。
【0052】凝固浴温度は、紡糸原液における重合体濃
度に応じて変化し、紡糸原液のPN濃度(重合体とMN
Pとの合計量100重量部当りの重合体重量)によって
下記(1) 〜(3) の範囲内に調整する。
【0053】 (1) 15< PN ≦20のとき: 85〜110℃ (2) 20< PN ≦25のとき:100〜125℃ (3) 25< PN ≦30のとき:110〜135℃ 凝固浴温度がこの(1) 〜(3) の下限より低温では、紡糸
段階で失透が生じ延伸倍率が上がらないため、良好な物
性の繊維を得ることができない。また、上限を越える高
温にする必要はなく、このような高温ではかえってエネ
ルギーロスが多くなり生産コストの上昇を招く。
【0054】凝固浴中での糸条物の浸漬時間は0.1〜
30秒が好ましい。浸漬時間が短かすぎると糸条物の形
成が不十分となり断糸が発生する。
【0055】(オ)水洗・乾燥・延伸 凝固浴上がりの糸条物は、次に、30℃以下の冷水で洗
浄後、さらに50〜90℃の温水で洗浄し、引き続き、
90〜100℃の温水浴中で、延伸倍率1.5〜3.0
で延伸しつつ温水洗浄した後、加熱ローラー、熱風など
によって100℃以上の温度で乾燥し、次いで、熱板、
熱ローラなどを用いて270〜350℃の温度で乾熱延
伸する。後者の乾熱延伸の倍率は前者の温水延伸を含め
て全延伸倍率が3.0〜7.0、好ましくは4.0〜
6.0となるように設定する。
【0056】本発明方法によるメタ型アラミド繊維は、
延伸性がよく、温水浴延伸、乾熱延伸時に断糸や毛羽の
発生をともなうことなく円滑に高倍率まで延伸すること
ができる。
【0057】本発明方法では上述した溶液重合−中和反
応−湿式紡糸−洗浄・乾燥・延伸をすべて連続した一貫
工程で実施することができ、これが本発明方法の利点の
一つでもあるが、場合よっては、幾つかの工程に分割し
て実施してもよい。
【0058】かくして、優れた耐熱性、力学特性を有す
るメタ型アラミド繊維が、生産性よく製造される。例え
ば、本発明方法では、従来の溶液重合によるメタ型アラ
ミド溶液からの湿式紡糸では実現不能であった引張強度
が4.5g/deを越えるメタ型アラミド繊維を容易に
製造することが可能となる。
【0059】このようにして製造された繊維は、必要に
応じて捲縮加工が施され、適当な繊維長に切断され、次
工程に提供される。
【0060】以上のごとき本発明方法によるメタ型芳香
族ポリアミド(メタ型アラミド)繊維は、その耐熱性、
耐炎性、力学特性を生かした各種の用途に応用すること
ができ、例えば、単独あるいは他の繊維と組み合わせ、
織編物にして消防服、防護服などの耐熱耐炎衣料、耐炎
性の寝具、インテリア材料として有用であり、不織布と
してフィルターなど各種工業材料、あるいは合成紙、複
合材料の原料として有効に使用することができる。
【0061】
【実施例】以下、実施例及び比較例により本発明方法を
更に詳しく具体的に説明する。ただし、これらの実施例
及び比較例は本発明の理解を助けるためのものであっ
て、これらの記載によって本発明の範囲が限定されるの
ものではない。
【0062】なお、実施例及び比較例中、固有粘度
(I.V.)は重合体溶液から芳香族ポリアミドポリマ
ーを単離して乾燥した後、濃硫酸中、ポリマー濃度0.
5g /100mlで30℃において測定した値である。ま
た、「部」及び「%」は特に断らない限りすべて重量に
基づくものであり、量比は特に断らない限り重量比を示
す。さらに、重合体溶液における重合体濃度(PN
度)は、重合体と溶媒(との合計100重量部に対する
重合体の重量部[=重合体/(重合体+溶媒)×10
0]であり、塩化カルシウム及び水の濃度はそれぞれ重
合体100重量部に対する重量部である。
【0063】[実施例1] (a)溶液重合紡糸原液の調製 温度計、攪拌装置及び原料投入口を備えた反応容器に、
モレキュラーシーブスで脱水したNMP815部を入
れ、このNMP中にメタフェニレンジアミン(以下、m
PDAと略す)108部を溶解した後、0℃に冷却し
た。この冷却したジアミン溶液に、蒸留精製し窒素雰囲
気中で粉砕したイソフタル酸クロライド(以下、IPC
と略す)203部を攪拌下に添加して反応せしめた。反
応温度は約50℃に上昇し、この温度で60分間攪拌を
継続し、さらに60℃に加温して60分間反応させた。
反応終了後、水酸化カルシウム70部を微粉末状で添加
して60分かけ中和溶解した(1次中和)。残りの水酸
化カルシウム4部をNMP83部に分散したスラリー液
を調製し、この水酸化カルシウム含有スラリー(中和
剤)を重合溶液に攪拌しながら添加した(2次中和)。
この2次中和は40〜60℃で約60分間攪拌して実施
し、水酸化カルシウムを完全に溶解させた紡糸原液を調
製した。
【0064】この溶液(紡糸原液)の重合体濃度(PN
濃度、すなわち重合体とNMPの合計100重量部に対
する重合体の重量部)は21であり、生成したポリメタ
フェニレンイソフタラミド重合体のI.V.は1.75
であった。また、この重合体溶液の塩化カルシウム濃度
及び水の濃度は、重合体100部に対し塩化カルシウム
46.6部、水15.1部であった。
【0065】(b)湿式紡糸・水洗・延伸 上記(a)で調製した紡糸原液を孔径0.09mm、孔数
50の口金より浴温度113〜115℃の凝固浴中に吐
出して紡糸した。この凝固浴は、塩化カルシウム/水/
NMP=60/40/30の組成の浴を用い、浸漬長
(有効凝固浴長)80cmにて糸速4m/分で通過させた
後、いったん空気中に引き出し、引き続き、冷水(20
℃)の水洗浴に導入した。冷水による水洗を十分に行っ
た後、さらに70℃の温水で洗浄し、次いで、95〜9
8℃の温水浴中で2.4倍に延伸しつつ洗浄した。引き
続き、この温水延伸糸を表面温度120℃の乾燥ローラ
ーで乾燥し、320〜340℃の熱板上で1.8倍に乾
熱延伸して、巻き取った。本実施例における全延伸倍率
は4.32で、延伸繊維の最終巻き取り速度は17.3
m/分であった。
【0066】得られたポリメタフェニレンイソフタラミ
ド延伸繊維の力学的特性は、繊度1.9de、引張強度
5.1g/de、伸度38%、ヤング率98g/deで
あり、良好な力学特性を示した。
【0067】[実施例2〜3,比較例1〜3] (a)溶液重合紡糸原液の調製 実施例1において用いたと同様な反応容器と原材料、溶
媒を用いて重合反応を行った。まず、NMP1000部
にmPDA108部を溶解した後、5℃に冷却した。こ
の冷却したジアミン溶液に実施例1と同様に精製したI
PC203部を撹拌下に添加して反応を行った。反応温
度は約50℃に上昇し、この温度で1時間撹拌を続け、
さらに60℃に加温して1時間反応させた。
【0068】反応終了後、1次中和として水酸化カルシ
ウムの微粉末72部を撹拌しながら重合溶液に添加し
た。中和反応工程では40〜60℃で1時間30分撹拌
し、水酸化カルシウムを完全に溶解させた(1次中
和)。この段階で中和率は約97.3%であり、残り
2.7%相当は水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液で
中和(2次中和)した。すなわち、NaOHの2.1部
を水36部に溶解し、これにNMP246部を加えて第
2次中和剤を調製し、この2次中和剤を1時間かけて上
記1次中和済みの重合溶液に撹拌下に添加して中和を完
結させ、紡糸用重合体溶液(紡糸原液)を調製した。
【0069】この紡糸原液の重合体濃度(PN 濃度)は
16で、生成した重合体のI.V.は1.97であっ
た。また、この紡糸原液の重合体100部に対するCa
Cl2濃度は45.1、NaCl濃度は1.3、そして
水の濃度は30.3であった。
【0070】(b)湿式紡糸・水洗・延伸 上記溶液重合反応にて調製した紡糸原液を、孔径0.0
9mm、孔数50の紡糸口金より、浴温度94〜95℃の
凝固浴中に吐出して糸条物を形成させた。この際、凝固
浴としてCaCl2 /水/NMP=45/55/5の組
成の浴(実施例1)及びCaCl2 /水/NMP=45
/55/10の組成の浴(実施例2)を用い、上記糸条
物を浸漬長50cmで糸速4m/分で通過させた後、実施
例1と同様な操作で冷水洗浄、温水洗浄、温水延伸、乾
燥、乾熱延伸して、ポリメタフェニレンイソフタラミド
繊維を得た。
【0071】一方、比較例として、実施例2〜3と同じ
重合体濃度(PN 濃度)=16の紡糸原液を用いて、凝
固浴組成及び/又は温度を表1に示すように変更して、
同様に湿式紡糸を実施した。
【0072】これらの条件ならびに得られた繊維の力学
特性を表1に示す。
【0073】
【表1】
【0074】表1から、本発明方法(実施例2〜3)に
よる繊維は、強度が5g/de以上であるのに対し、凝
固浴の組成又は温度が本発明の範囲外になる場合におい
ては、紡糸できない場合(比較例1)もあり、紡糸でき
た場合(比較例2〜3)でも延伸繊維の強度が4.0g
/de付近に止まり、強度が本発明方法によるものに比
べて20%も低いことがわかる。
【0075】[実施例4〜5、比較例4〜6] (a)溶液重合紡糸原液の調製 実施例1と同様の原料及び装置、操作方法により、溶液
重合を行い、重合体濃度(PN 濃度)=26の紡糸原液
を調製した。この際、中和温度は90〜110℃とな
し、水酸化カルシウムを完全に溶解させた。
【0076】この紡糸原液の塩化カルシウムの濃度及び
水の濃度は、それぞれ、重合体100部に対して46.
6部、15.1部であり、重合体のI.V.は1.55
であった。 (b)湿式紡糸・水洗・延伸 上記(a)で調製した紡糸原液を、実施例1の操作方法
により、ただし、表2に示す凝固浴組成、温度条件、延
伸倍率に変更して、紡糸・水洗・延伸し、メタ型アラミ
ド繊維を製造した。
【0077】それぞれの凝固浴組成、温度条件、延伸倍
率と得られた繊維の力学特性を表2に示す。
【0078】
【表2】
【0079】比較例6では、凝固浴温度が低いと温水延
伸倍率が上がらず、繊維の強度が著しく低下した。
【0080】[実施例6] (a)溶液重合紡糸原液の調製 実施例1と同様の原料及び重合装置、操作方法により、
溶液重合を行い、重合体濃度(PN 濃度)=19の重合
体溶液(紡糸原液)を調製した。
【0081】この重合体溶液(紡糸原液)の塩化カルシ
ウム濃度及び水の濃度は、それぞれ、重合体100部に
対して46.6部、22.6部であり、重合体のI.
V.は1.75であった。
【0082】(b)湿式紡糸・水洗・延伸 上記(a)で調製した紡糸原液を、実施例1と同様の装
置及び操作方法により、湿式紡糸・水洗・延伸して、メ
タ型アラミド繊維を製造した。
【0083】湿式紡糸における凝固浴組成を、CaCl
2 /水/NMP=50/50/10のものを用い、凝固
浴温度を98〜100℃とする以外は、実施例1と同様
の条件で紡糸した。
【0084】得られた糸条物を、実施例1と同様に洗浄
後、95〜98℃の温水浴で延伸倍率2.4倍に延伸
し、乾燥後、320〜340と℃の熱板で1.8倍に延
伸し、巻き取った。
【0085】得られた繊維の性能は、繊度1.8de、
強度5.2g/de、伸度41%であった。
【0086】また、実施例1〜6で得られた繊維は、い
ずれも光沢に優れ、耐熱性についても250℃の加熱空
気中で300時間暴露テストした後でも、最初の強度の
90%を保持しており非常に優れた耐熱性を示した。
【0087】
【発明の効果】本発明による溶液重合−中和−湿式紡糸
方法によれば、従来の方法に比べ、 1.中和によって生成する無機塩を除去する工程が不要
になること、 2.重合溶媒と紡糸用重合体溶液(紡糸原液)の溶媒を
一元化できるため回収工程が容易になること、 3.乾式紡糸のごとき大きな紡糸塔とそれに伴う熱エネ
ルギーの損失が無くなること、そして、 4.紡糸機1錐辺りの生産量が多いこと、などの観点か
ら、効率的で生産性が良く、優れた繊維性能を有する繊
維を低コストで生産することが可能となる。

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 アミド系溶媒の存在下で芳香族ジアミン
    と芳香族ジカルボン酸クロライドとを反応せしめた後、
    副生する塩酸(HCl)を中和して生成する塩化カルシ
    ウムと水を含有するメタ型芳香族ポリアミド重合体溶液
    を湿式紡糸することによりメタ型芳香族ポリアミド繊維
    を製造する方法において、(1) アミド系溶媒としてN−
    メチル−2−ピロリドンを用い、メタ型フェニレンジア
    ミンを主体とする芳香族ジアミンとイソフタル酸クロラ
    イドを主体とする芳香族ジカルボン酸クロライドとを反
    応せしめた後、副生する塩酸(HCl)を水酸化カルシ
    ウム、酸化カルシウム及び炭酸カルシウムの中から選ば
    れる少なくとも1種の中和剤を用いて中和し、生成した
    塩化カルシウムと水を含むメタ型芳香族ポリアミド重合
    体溶液であって、かつ、該溶液における重合体の濃度
    (重合体とN−メチル−2−ピロリドンとの合計100
    重量部に対する重合体の重量部)が15〜30(重量
    部)、塩化カルシウムの濃度(重合体100重量部に対
    する重量)が40〜47(重量部)、水の濃度(重合体
    100重量部に対する重量)が13〜60(重量部)で
    あるメタ型芳香族ポリアミド重合体溶液を調製するこ
    と、(2) 上記重合体溶液を、N−メチル−2−ピロリド
    ンを含有する塩化カルシウム水溶液からなり、塩化カル
    シウム/水の重量比が35/65〜65/35で、N−
    メチル−2−ピロリドン/(塩化カルシウム+水)の重
    量比が5/95〜35/65の組成を有する凝固浴中に
    紡出し、かつ、この際、凝固浴温度(T℃)を上記重合
    体溶液における上記重合体濃度(PN )に応じて下記の
    範囲内に調整すること、 15< PN ≦20のとき 85≦ T ≦110 20< PN ≦25のとき 100≦ T ≦125 25< PN ≦30のとき 110≦ T ≦135 (3) 次いで、凝固浴中で形成された糸条物を水洗浴中に
    導入して水洗すること、を特徴とするメタ型アラミド繊
    維の製造法。
  2. 【請求項2】 凝固浴中へ紡出時の重合体溶液の温度を
    85〜135℃とすることを特徴とする請求項1記載の
    メタ型芳香族ポリアミド繊維の製造法。
  3. 【請求項3】 紡糸口金1個当りの吐出孔数が300〜
    30000個であることを特徴とする請求項1又は請求
    項2記載のメタ型芳香族ポリアミド繊維の製造法。
  4. 【請求項4】 凝固浴上がりの糸条物を、まず温度30
    ℃以下の水で水洗した後、温度50〜90℃の温水で水
    洗を行い、引き続き、90〜100℃の温水浴で延伸す
    ると同時に水洗を行うことを特徴とする請求項1、請求
    項2又は請求項3記載のメタ型芳香族ポリアミド繊維の
    製造法。
  5. 【請求項5】 温水浴延伸に引き続き、さらに270〜
    350℃の乾熱で延伸することを特徴とする請求項1又
    は請求項4に記載のメタ型芳香族ポリアミド繊維の製造
    法。
  6. 【請求項6】 温水延伸と乾熱延伸との合計延伸倍率を
    3〜7倍とすることを特徴とする請求項5記載のメタ型
    芳香族ポリアミド繊維の製造法。
  7. 【請求項7】 湿式紡糸、水洗、温水延伸及び乾熱延伸
    を連続的した一連の工程で行うことを特徴とする請求項
    5又は請求項6に記載のメタ型芳香族ポリアミド繊維の
    製造法。
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