JPH0871815A - クランプバイト - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【構成】 クランプバイトのくさび溝の奥方、すなわち
上顎と下顎のそれぞれの付け根部位に円形溝を形成し且
つ該円形溝の間に上斜前方向へ２°〜１５°のテーパー
角を有するストッパ突起を形成した。 【効果】 切削インサートの挿入深さや刃先位置が大き
く変化するのを防ぎ、もって加工精度を向上させるとと
もに、切削時の応力が上顎側あるいは下顎側に偏ること
なく、且つ適当に吸収されるので剛性が大きく、欠損し
にくい。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、突っ切り加工などを行
う切削インサートを工具本体に取りつけるため、先端隅
角部にこれを保持するクランプバイトに関するものであ
る。

【０００２】

【従来の技術】従来より、突っ切り加工などを行う工具
に上記クランプバイトが用いられており、その中には例
えば実開平１ー９２３０４に示すクランプバイトの如
く、図６に示すようにクランプバイト２０にストッパ機
構を有しないもの、或いは特開昭６２ー２６４８０８に
示されるクランプバイトの如く、図７に示すようにくさ
び溝３１の上顎３２側にストッパ機構３３を有するクラ
ンプバイト３０や、図８及び図９に示すように下顎４１
側にストッパ機構４２を有するクランプバイト４０など
が用いられてきた。

【０００３】

【従来技術の課題】しかしながら、上記従来技術には以
下のような問題点があった。

【０００４】すなわち、上記従来のクランプバイト２
０、３０、４０のうち、ストッパ機構を有していないク
ランプバイト２０は切削インサート２１が切削時の応力
が大きいと内方に大きく押し込まれるので送り速度や被
削材の種類などの諸条件により挿入深さが異なるという
不具合があり、さらに切削インサート２１の挿入位置が
決まらないため切削深さの精度が悪く、溝入れ工具とし
て不向きであった。また、突っ切り工具として使用した
場合、芯高が大きく変化し切削インサート２１が欠損す
る等のトラブルの原因となり易かった。

【０００５】また、上顎３２側にストッパ機構３３のあ
る前記クランプバイト３０はストッパ機構３３により最
大挿入深さが決まり、刃先位置が安定するので精度は向
上するが、切削時の応力が上顎３２側に集中する為、こ
の部分から破損してしまう場合があった。

【０００６】また、下顎４１側にストッパ機構４２を有
する前記クランプバイト４０の場合、反対に下顎４１側
に応力が集中する為、下顎４１側が損傷し易い（例え
ば、下顎４１のインサート保持面に変形が生じ、切削イ
ンサート２１を適切に保持できなくなるなど）、という
不具合があった。

【０００７】

【課題を解決するための手段】上記従来の課題を解決す
る為、本発明はクランプバイトのくさび溝の奥方、すな
わち上顎と下顎のそれぞれの付け根部位に円形溝を形成
し且つ該円形溝の間に上斜前方向へ２°〜１５°のテー
パー角を有するストッパ突起を形成するとともに、上記
下顎の傾斜角を１５°〜２５°と設定した。

【０００８】

【実施例】以下、本発明の実施例を図を用いて説明す
る。図１および図２に本発明のクランプバイト１を示
し、このクランプバイト１は図１に示すように平面視略
長方形をなすブレード型のもので、先端上隅角部とその
対称位置の２コーナーに突っ切り加工などを行う切削イ
ンサート２を保持するくさび溝３、３が形成され、この
クランプバイト１を介して上記切削インナートを工具本
体（不図示）に取りつけるためのものであり、上記くさ
び溝３に切削インサート２を自己拘束的に保持する、す
なわち切削インサート２が切削時の応力によりくさび溝
３内に差し込まれる構造となっている。

【０００９】図２は一方のくさび溝３を拡大して示し、
同図に示すように、くさび溝３は上顎４と下顎５に挟ま
れ、外方に拡大してゆく空間として形成されており、さ
らにこのくさび溝３の奥方、すなわち上記上顎４と下顎
５の付け根部位のそれぞれに、円形溝６が形成されると
ともに、これら円形溝６、６の間にはストッパ突起７が
形成されている。

【００１０】上記ストッパ突起７は、先端が上斜前方向
（＝下斜後方向）のテーパーとなった当接面８を具備
し、且つそのテーパー角βが２°〜１５°に設定されて
いる。

【００１１】また、前記下顎５は傾斜角αを持ってお
り、その傾斜角αが１５°〜２５°に設定されている。

【００１２】このように構成される本実施例のクランプ
バイト１は、以下のような作用を有している。まず、上
記のクランプバイト１は特定部位に応力集中することを
防ぎ、もって破損、欠損などを起こさない、剛性の大き
いものである。すなわち、くさび溝３の奥方の上顎４と
下顎５の付け根部位に円形溝６を形成したが、これら円
形溝６が適度に応力を吸収し、また発生する応力を多方
向に分散させ、かつ円形溝６が上下にあるので過大な応
力が特定の部位に集中するのを防ぐ。なお、下顎５側の
円形溝６は切削インサート２を取り外すため治具を差し
込む場所としても利用できる。

【００１３】また、前記ストッパ突起７は、上記両円
形溝６、６の間にあることにより、半島状をなしてい
るので、それ自体弾性を持っていることにより、さらに
先端の当接面８を上斜前方向のテーパーとし且つその
テーパー角βを２°〜１５°としたので、切削インサー
ト２の後部がワークの回転により持ち上げられる動きを
抑制し且つその応力を当接面８で受け、上顎４に対する
応力を軽減したことにより、応力が適当に分散される。

【００１４】次に、前記クランプバイト１は刃先の位置
変化を抑え、よって精密な加工を可能たらしめる。すな
わち、上記ストッパ突起７により、切削インサート２の
挿入深さの変位が小さくなるのは言うに及ばず、前述
のように前記ストッパ突起７の先端にあって、上斜前方
向のテーパーが付与された当接面８により切削インサー
ト２の後部が持ち上げられるのが防がれ、また下顎５
の傾斜角αを１５°〜２５°と大きくして切削インサー
ト２の挿入角を大きくしたので、切削送り量による刃先
位置の変位がほとんど無くなった、ことにより極めて高
い加工精度が実現する。

【００１５】なお、前記ストッパ突起７の当接面８にお
けるテーパー角βは２°〜１５°が好ましいが、このテ
ーパー角βが２°より小さいと切削インサート２の後部
を持ち上げようとする動きを抑える効果が小さくなると
ともに、上顎４側に応力が集中し易くなり、他方１５°
より大きいとストッパ突起７に発生する応力が大きくな
り、この部分に応力が集中し易くなる。

【００１６】また、下顎５の傾斜角αとしては１５°〜
２５°が好ましいが、この傾斜角αが１５°より小さい
時には芯高の変位を抑える効果が小さく、他方２５°よ
り大きいと、下顎５側の強度が小さくなってしまう。

【００１７】なお、本実施例ではブレード型のクランプ
バイト１を示したが、本発明のクランプバイトはブレー
ド型のものに限定されるわけでなく、例えばシャンク／
ホルダ一体型のものなどであっても良い。

【００１８】実施例１ 図１および図２に示す本実施例のクランプバイト１（ス
トッパ突起７の当接面８のテーパー角β＝５°、下顎５
の傾斜角α＝２０°）を用い、又比較例として図７に示
すように上顎３２側にストッパ機構３３を具備したクラ
ンプバイト３０を用い、以下の条件で且つ図３に示す送
り量により溝入れ加工を行った。

【００１９】〔条件〕 Ｖ＝１５０ｍ／ｍｉｎ． ｄ（溝深さ）＝１５ｍｍ 被削材： ＳＣＭ４３５（φ５４丸棒） 各送り１０本溝入れ 図３のグラフは、その結果を示し、同グラフに示すよう
に比較例では送り０．３５ｍｍの時に切削半ばでクラン
プバイト３０が欠損したのに対し、本実施例のクランプ
バイト１では、送り０．４５ｍｍでも欠損がなかった。

【００２０】実施例２ 図１及び図２に示すクランプバイト１（下顎５の傾斜角
α＝２０°）であってストッパ突起７の当接面８におけ
るテーパー角βを図４のように変え、実施例１の条件で
溝入れ加工を行った。その結果を図４のグラフに示す。

【００２１】同グラフに示すように、上記テーパー角β
が２°〜１５°の場合、クランプバイト１に欠損はな
く、しかも５〜１０°の時にはビビリの発生も一切認め
られなかった。

【００２２】これに対して上記テーパー角βが２°より
小さい場合、そして負の場合、或いは１５°より大きい
場合、いずれも欠損が発生した。

【００２３】実施例３ 図１及び図２に示すクランプバイト１（ストッパ突起７
の当接面８のテーパー角β＝５°）であって、下顎５の
傾斜角αを図５のように変え、且つ図５に示すように切
削送り量を変え、且つ実施例１の条件で溝入れ加工を行
い、それぞれの芯高を測定した。その結果を図５のグラ
フに示す。

【００２４】同グラフに示すように、上記傾斜角αが１
５°〜２５°の場合、基準値（切削インサート２がスト
ッパ突起７に当たっている状態）と芯高の差が小さいこ
とが判った。なお、上記傾斜角αが３０°を越えると下
顎５側に欠損が生じる事例があった。

【００２５】

【発明の効果】叙上のように本発明は、クランプバイト
のくさび溝の奥方、すなわち上顎と下顎のそれぞれの付
け根部位に円形溝を形成し且つ該円形溝の間に上斜前方
向へ２°〜１５°のテーパー角を有するストッパ突起を
形成したことにより、切削インサートの挿入深さや刃先
位置が大きく変化するのを防ぎ、もって加工精度を向上
させるとともに、切削時の応力が上記円形溝及び当接面
の構成により上顎側あるいは下顎側に偏ることなく、且
つ適当に吸収されるので剛性が大きく、欠損しにくい。

【００２６】また、下顎の傾斜角を１５°〜２５°と大
きくしたことにより切削送り量による刃先位置の変位が
非常に小さく、もって精度の高い加工が保証されるとい
う優れた効果を奏するものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明実施例のクランプバイトの平面図であ
る。

【図２】図１のクランプバイトにおけるくさび溝を示す
拡大図である。

【図３】本発明実施例と比較例による耐久性試験の結果
を示すグラフである。

【図４】図１のクランプバイトにおいてストッパ突起の
当接面のテーパー角を変えて行った耐久性試験の結果を
示すグラフである。

【図５】図１のクランプバイトにおいて下顎の傾斜角に
よる切削送り量と芯高さの関係を示すグラフである。

【図６】従来のクランプバイトの部分平面図である。

【図７】従来のクランプバイトの部分平面図である。

【図８】従来のクランプバイトの部分平面図である。

【図９】図８のクランプバイトの上面図である。

【符号の説明】

１ クランプバイト ２ 切削インサート ３ くさび溝 ４ 上顎 ５ 下顎 ６ 円形溝 ７ ストッパ突起 ８ 当接面 α テーパー角 β 傾斜角

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 先端部位に、上顎と下顎に挟まれ且つ外
   方に向かって拡大するくさび溝を設け、該くさび溝内に
   切削インサートを自己拘束的に保持するクランプバイト
   であって、上記くさび溝の奥方の上顎側と下顎側にそれ
   ぞれ円形溝を形成し且つこれら円形溝の間に上斜前方向
   へ２°〜１５°のテーパー角を有するストッパ突起を形
   成したことを特徴とするクランプバイト。
2. 【請求項２】 前記下顎の傾斜角が１５°〜２５°であ
   ることを特徴とする請求項１記載のクランプバイト。