JPH086209B2 - 耐炎性ポリエステル複合繊維 - Google Patents

耐炎性ポリエステル複合繊維

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JPH086209B2
JPH086209B2 JP2077996A JP7799690A JPH086209B2 JP H086209 B2 JPH086209 B2 JP H086209B2 JP 2077996 A JP2077996 A JP 2077996A JP 7799690 A JP7799690 A JP 7799690A JP H086209 B2 JPH086209 B2 JP H086209B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は,耐炎性ポリエステル複合繊維に関するもの
である。
(従来の技術) 一般に,ポリエステル,特にポリエチレンテレフタレ
ートは優れた機械的特性及び化学的特性を有し,衣料
用,産業用等の繊維として広く利用されている。
ところで,近年,火災予防の観点から合成繊維の耐炎
性への要請が強まっている。特にポリエチレンテレフタ
レート繊維は衣料やカーペット,カーテン,車両用座席
シート等に大量に使用されているため,対応策の確立が
急がれている。
従来,ポリエステルに耐炎性を付与する試みは種々な
されており,ポリエステルにリン化合物を含有させる方
法が有効であるとされている。
しかし,ポリエステルにリン化合物を含有させる場
合,一般に,(a)ポリエステルのゲル化が生じる,
(b)リン化合物の添加によりポリエステルの融点やガ
ラス転移点が低下する,(c)リン化合物の残存率が低
い,(d)ポリエステルの色調が悪化する,(e)紡
糸,延伸,成形等の各工程で有毒ガスを発生しやすいと
いった問題があった。
特開昭62−172017号公報には,予め不飽和化合物を共
重合したポリエステルに特定のホスフィン酸化合物を反
応させて耐炎性ポリエステルを製造する方法が提案され
ている。この方法によれば非常に安価に耐炎性ポリエス
テルを製造することができるが,活性なP−H結合を有
するリン化合物を高温でポリエステルと反応させるた
め,反応条件によっては,得られるポリエステルが若干
三次元化し,紡糸の操業性が悪化したり,得られる繊維
の物性が損なわれたりするという問題があった。
一方,本発明者らは,先に特定のリン化合物をポリエ
ステルに添加することにより上記問題点を解消すること
のできる耐炎性ポリエステルの製造法を提案した(特開
平2−1730号)。この方法で得られるポリエステルは優
れた耐炎性と良好な物性を示すが,前記方法に比べ製造
コストの点では十分ではなかった。
(発明が解決しようとする課題) 本発明は,優れた耐炎性を示すとともに,強度特性に
優れた耐炎性ポリエステル繊維を経済的に製造する方法
を提供しようとするものである。
(課題を解決するための手段) 本発明の要旨は,次のとおりである。
ポリエチレンテレフタレート又はこれを主成分とする
非含リンポリエステルAと下記一般式で表される有機
リン化合物が共重合されたリン原子を500ppm以上含有す
るポリエステルBとからなる複合繊維であって,ポリエ
ステルAの少なくとも一部が繊維表面に露出しているこ
とを特徴とする耐炎性ポリエステル複合繊維。
(Eは−CH2CH2−,Arは芳香族基を表し,ベンゼン環
は低級アルキル基又はハロゲンから選ばれた置換基を有
していてもよい。また,m,nはそれらの和が1〜20となる
整数を表す。) 本発明において,ポリエステルAとしては,常法によ
って得られるポリエチレンテレフタレート又はこれを主
成分とする非含リンポリエステルが用いられる。(な
お,ポリエステルAには,ポリエステル製造時に安定剤
等として添加されるリン化合物に起因するリン原子を少
量含有するものも含まれる。) また,ポリエステルBは,ジカルボン酸成分とジオー
ル成分,及び/又はヒドロキシカルボン酸成分からポリ
エステルを製造する際に前記有機リン化合物を添加する
ことにより得られる。そして,ジカルボン酸成分として
はテレフタル酸,ジオール成分としてはエチレングリコ
ール,ヒドロキシカルボン酸成分としては4−ヒドロキ
シ安息香酸(これらのエステル形成性誘導体を含む。)
が好ましく用いられる。必要に応じてこれらとともに共
重合成分として,イソフタル酸,5−ナトリウムスルホイ
ソフタル酸,アジピン酸,トリメリット酸,ジエチレン
グリコール,プロピレングリコール,1,4−シクロヘキサ
ンジメタノール,ペンタエリスリトール等を少量併用し
てもよい。
また,本発明における式で表されるリン化合物にお
いて,Arは3価の芳香族基であり,ベンゼン環基及びナ
フタレン環基が好ましい。
このリン化合物は,下記式で表されるジフェニルホ
スフィンオキシド(PPAと略記する。)と芳香族ジヒド
ロキシ化合物に相当するキノンとをエチルセロソルブ等
の溶媒中で加熱反応させた後,エチレングリコールジエ
チルエーテル等の溶媒中でエチレンカーボネート又はエ
チレンオキシドを反応させることによって合成すること
ができる。
上記芳香族ジヒドロキシ化合物としては,レゾルシ
ン,ハイドロキノン,1,4−ジヒドロキシナフタレン,2,6
−ジヒドロキシナフタレン,2,2−ジヒドロキシジフェニ
ル,4,4′−ジヒドロキシジフェニル,4,4′−ジヒドロキ
シジフェニルエーテル,ビス(4−ヒドロキシ−2−メ
チルフェニル)エーテル,2,2−ビス(4′−ヒドロキシ
フェニル)プロパン等が挙げられるが,特に好ましいも
のはハイドロキノン及び1,4−ジヒドロキシナフタレン
である。
上記のようなリン化合物をポリエステルに共重合させ
る方法としては,ポリエステルを製造する際に,リン化
合物をそのまま反応系に添加して反応させてもよいし,
テレフタル酸,イソフタル酸等のジカルボン酸成分と反
応させて,モノマー,オリゴマー又はポリマーの形にし
て添加してもよい。
リン化合物の添加量は,ポリエステル中のリン原子の
量が500ppm以上となるようにすることが必要であり,好
ましくは1000〜20000ppm,最適には2500〜10000ppmとな
るようにするのがよい。リン化合物の添加物があまり少
ないとポリエステルの耐炎性が不十分となり,多すぎる
とポリエステル本来の望ましい物性が損なわれるといっ
た問題があり,好ましくない。
リン化合物の添加時期は,ジカルボン酸成分とジオー
ル成分及び/又はヒドロキシカルボン酸成分からポリエ
ステルを製造する際に,エステル化反応又はエステル交
換反応から重縮合反応初期までの任意の段階とすること
ができる。
ポリエステルを製造する際の重縮合反応は,通常,0.0
1〜10トル程度の減圧下で,260〜310℃,好ましくは275
〜290℃の温度で所定の重合度のポリエステルが得られ
るまで行われる。
また,重縮合反応は触媒の存在下に行われ,触媒とし
ては,従来一般に用いられているアンチモン,ゲルマニ
ウム,スズ,チタン,亜鉛,アルミニウム,マグネシウ
ム,カルシウム,マンガン,コバルト等の金属化合物や
スルホサリチル酸,o−スルホ安息香酸無水物等の有機ス
ルホン酸化合物が用いられる。
触媒の添加量は,ポリエステルを構成する酸成分1モ
ルに対して1×10-5〜5×10-2モル,好ましくは5×10
-5〜5×10-3モル,より好ましくは1×10-4〜3×10-4
モルである。
鞘成分のポリエステルとしては,常法によって得られ
るポリエチレンテレフタレート又はこれを主成分とする
が用いられる。
なお,ポリエステルA及び/又はポリエステルBにヒ
ンダードフェノール化合物のような安定剤,蛍光剤,染
料のような色調改良剤,二酸化チタンのような顔料等の
添加物を共存させても差し支えない。
このようにして得られたポリエステルを常法によって
複合糸用紡糸装置を用いて製糸することにより,本発明
の繊維が得られる。
本発明の複合繊維の形態は,鞘芯型,サイドバイサイ
ド型,海島型,多層型等いずれでもよいが,耐炎性能及
び風合い等の点で最も好ましいものは鞘芯型(同心型で
も偏心型でもよい)である。いずれの場合も,ポリエス
テルAの少なくとも一部が繊維表面に露出するようにポ
リエステルA及びポリエステルBが配置されていること
が必要である。
また,ポリエステルAとポリエステルBとの複合比
は,5/95〜95/5,好ましくは20/80〜80/20となる割合が適
当であり,紡糸温度は270〜310℃,好ましくは290〜300
℃がよく,複合流を形成してから吐出されるまでの時間
は1〜240秒,好ましくは5〜120秒,最適には60〜90秒
が適当である。
紡出された複合繊維は必要に応じて,連続的に又は別
工程で延伸,熱処理され,捲縮加工,薬液による処理等
の高次加工に付される。
(作 用) 本発明のポリエステル複合繊維が優れた耐炎性を示す
理由は明らかではないが,接炎時に一方の成分であるポ
リエステルAが着火しても,他方の成分でポリエステル
B中のリン化合物がポリエステルの熱分解を促進して溶
融落下を助長し,良好な耐炎性が発現するものと考えら
れる。したがって,本発明の複合繊維は,一部が通常の
ポリエステルであるにもかかわらず,リン化合物が繊維
中で偏在しているためか,繊維全体のリン原子の含有量
が同一である場合,繊維全体にリン化合物が分布する繊
維と同等以上の耐炎性を示すことは驚くべきことであ
る。
また,その結果,高価なリン化合物の使用量の低減を
図ることができる。
なお,リン化合物により耐炎性を付与する場合,その
効果はリン原子の含有量と共に,リン化合物の構造によ
り大きな影響を受けるが,本発明で用いる有機リン化合
物は芳香族のホスフィンオキシドであるためか,リン酸
系やホスホン酸系のリン化合物に較べて極めて熱的に安
定で,かつポリエステルをゲル化させることがなく,し
かも顕著な耐炎性付与効果を発揮するのである。
(実施例) 次に,実施例をあげて本発明を記述する。
なお,実施例においてポリエステルの特性値は次のよ
うにして測定した。
極限粘度〔η〕 フェノールと四塩化エタンとの等重量混合物を溶媒と
して,温度20.0℃で測定した。
リン原子含有量 蛍光X線法により定量した。
耐炎性 常法に従って溶融紡糸,延伸して得た糸を筒編地に
し,その1gを長さ10.0cmに丸めて10.0mm径の針金コイル
中に挿入し,45度の角度に保持して,下端から口径0.64m
mのミクロバーナーで点火し,火源を遠ざけて消火した
場合は再び点火を繰り返し,全試料が燃焼しつくすまで
に要する点火回数を求め,5個の試料についての点火回数
(接炎回数と記す)で表した。
着火性 次の4段階で評価した。
◎:きわめて着火しにくい。
○:着火しにくい。
△:やや着火しにくい。
×:着火しやすい。
限界酸素指数(LDI) JIS K 7201に準拠して測定した。
参考例 (1) PPAとp−ベンゾキノンとをエチルセロソルブ
中で,125℃で2時間反応させて,ホスフィンオキシド
(PPQと略記する。)を得た。
このPPQ0.1モルとエチレンカーボネート0.3モルとを
ガラスフラスコに仕込み,触媒として炭酸カリウム0.01
モル,溶媒としてエチレングリコールジエチルエーテル
0.5モルを加え,100℃で6時間攪拌しながら反応させて
白色の結晶を得た。
この結晶は,次の式(a)で表される化合物であっ
た。
(2) p−ベンゾキノンの代わりに1,4−ナフトキノ
ンを使用して,上記と同様にして,次の式(b)で表さ
れる化合物を得た。
実施例1〜6 ビス(β−ヒドロキシエチルテレフタレート)及びそ
のオリゴマー(BHET)の存在するエステル化反応槽にテ
レフタル酸(TPA)とエチレングリコール(EG)とのス
ラリー(EG/TPAのモル比1.6)を連続的に供給し,250℃,
0.05kg/cm2Gで滞留時間8時間で反応させて,反応率95
%のBHETを連続的に得た。
得られたBHETを重合槽に移送し,280℃に加熱し,参考
例で得られたリン化合物(a)又は(b)の30重量%EG
溶液をリン化合物の量が第1表に示す添加量となるよう
に添加し,触媒として酸成分1モルに対して2×10-4
ルのジメチルスズマレエートを加え,285℃,0.4トルで重
縮合反応を行って,含リンポリエステルを得た。
一方,前記と同じようにBHETを重合槽に移し,リン化
合物を添加することなく,同様に重縮合を行って〔η〕
0.67のポリエチレンテレフタレートを得た。
ポリエチレンテレフタレートを鞘,含リンポリエステ
ルを芯とする鞘芯型複合繊維を常法により295℃で紡糸
し,延伸して第1表に示す複合重量比(ポリエチレンテ
レフタレート/含リンポリエステル)の鞘芯型複合繊維
を得た。
比較例1 実施例1で芯部に使用した含リンポリエステルのみを
使用して,常法に従って295℃で紡糸し,延伸してポリ
エステル繊維を得た。
比較例2 実施例1の方法で得られたBHETを重合槽に移送し,280
℃に加熱し,参考例で得られたリン化合物(a)の30重
量%EG溶液をリン化合物の量が酸成分1モルに対して2.
5×10-2モルとなるように添加し,触媒として酸成分1
モルに対して2×10-4モルのジメチルスズマレエートを
加え,285℃,0.4トルで重縮合反応を行って含リンポリエ
ステルを得た。
この含リンポリエステルを常法に従って295℃で紡糸
し,延伸してポリエステル繊維を得た。
比較例3 実施例1における含リンポリエステルを鞘部に,ポリ
エチレンテレフタレートを芯部に用いた以外は実施例1
と同様にして鞘芯型複合繊維を得た。
比較例4 リン化合物の添加量を第1表に示す量とした以外は実
施例1と同様にして鞘芯型複合繊維を得た。
実施例7 実施例1におけるポリエチレンテレフタレートと含リ
ンポリエステルとを複合重量比50/50でサイドバイサイ
ド型に複合紡糸し,延伸して複合繊維を得た。
実施例8 実施例1におけるポリエチレンテレフタレートを海,
含リンポリエステルを島とする複合重量比50/50の海島
型複合繊維を紡糸し,延伸して複合繊維を得た。
実施例9 実施例1におけるポリエチレンテレフタレートと含リ
ンポリエステルとを重量比50/50で,紡糸口金から吐出
直前に静的混合器を用いて混合して紡糸し,延伸して多
層状複合繊維を得た。
以上の各実施例及び比較例で得られた繊維の特性値及
び耐炎性能を第1表に示す。
(発明の効果) 本発明によれば,優れた耐炎性を有し,かつ強度特性
の優れた耐炎性ポリエステル繊維が提供される。
また,リン化合物は一般に高価であるが,本発明によ
れば,リン化合物を一部に含有させるだけで良好な耐炎
性を示すため,リン化合物の使用量を減らし,コストダ
ウンすることが可能となる。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ポリエチレンテレフタレート又はこれを主
    成分とする非含リンポリエステルAと下記一般式で表
    される有機リン化合物が共重合されたリン原子を500ppm
    以上含有するポリエステルBとからなる複合繊維であっ
    て,ポリエステルAの少なくとも一部が繊維表面に露出
    していることを特徴とする耐炎性ポリエステル複合繊
    維。 (Eは−CH2CH2−,Arは芳香族基を表し,ベンゼン環は
    低級アルキル基又はハロゲンから選ばれた置換基を有し
    ていてもよい。また,m,nはそれらの和が1〜20となる整
    数を表す。)
  2. 【請求項2】ポリエステルAを鞘成分,ポリエステルB
    を芯成分とする鞘芯型複合繊維である請求項1記載の耐
    炎性ポリエステル複合繊維。
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