JPH085340Y2 - フューエルインジェクタ - Google Patents

Description

【考案の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本考案は、例えば電子制御式燃料噴射装置等に好適に
用いられるフューエルインジェクタに関し、特に、長期
在庫時にニードル弁が弁座に付着して、所謂固着現象が
生じるのを防止できるようにしたフューエルインジェク
タに関する。

〔従来の技術〕

第２図および第３図に従来技術のフューエルインジェ
クタを示す。

図において、１は段付筒状に形成されたインジェクタ
本体（以下は、本体１という）、２は該本体１の先端側
に設けられた段付筒状の噴射ノズルを示し、該噴射ノズ
ル２の先端側内周には弁座2Aを有する噴射口2Bが形成さ
れ、該弁座2Aには後述するニードル弁４の弁部4Cが離着
座するようになっている。また、該噴射ノズル２の基端
には略Ｕ字形またはＣ字形の板材によって形成されたス
トッパ３が本体１の段部1Aとの間に位置して設けられ、
該ストッパ３はニードル弁４の開弁位置を規制するよう
になっている。

４は噴射ノズル２内に軸方向に可動に設けられたニー
ドル弁を示し、該ニードル弁４の基端側は本体１の段部
1A内へと伸長し、後述のアンカー９と一体的に変位する
ように該アンカー９に固着されている。そして、該ニー
ドル弁４の先端側は噴射ノズル２との間に燃料通路５を
確保した状態で該噴射ノズル２内を伸長し、その先端は
弁座2Aに離着座して、噴射口2Bの開閉を行なうようにな
っている。また、該ニードル弁４の軸方向中間部には環
状の突起4Aが形成され、該突起4Aはニードル弁４の開弁
時にストッパ３と当接して、開弁位置の規制を行なうよ
うになっている。ここで、該ニードル弁４の先端側には
噴射口2Bから軸方向に突出した小径のピントル4Bがテー
パ状の弁部4Cを介して一体に設けられ、該ピントル4Bは
噴射口2Bからの燃料を所定の噴射パターンをもって噴射
させるようになっている。

６は本体１内に軸方向に伸長して設けられた筒状のコ
ア部材を示し、該コア部材６は電磁ステンレス鋼等の磁
性材料によって段付筒状に形成され、基端側に位置し、
本体１から図中上向きに突出した突出部6Aと、軸方向中
間部に位置し、本体１の基端側を施蓋すべく、該本体１
の基端側にカシメ等の手段で固着されたフランジ部6B
と、該フランジ部6Bから図中下向きに伸長し、先端側内
周に拡径穴6Cが形成されたコア部6Dとから大略構成され
ている。そして、該コア部6Dの外周には電磁コイル７が
巻回されたコイルボビン８が本体１との間に位置して設
けられ、これらはアンカー９を図中上向きに吸引してニ
ードル弁４を開弁させる電磁アクチュエータを構成して
いる。

９はコア部材６とニードル弁４との間に位置して本体
１内に可動に配設されたアンカーを示し、該アンカー９
はコア部材６と同様の磁性材料によって有蓋筒状に形成
され、その先端部（下端側）内周にはニードル弁４の基
端側がカシメ等の手段を用いて固着されている。そし
て、該アンカー９の基端側端面はコア部6Dの先端面と所
定寸法の隙間を介して対面し、該コア部6Dからの磁力に
よって図中上向きに吸引されるようになっている。ま
た、該アンカー９の外周側にはコイルボビン８、本体１
の段部1Aとの間に小さな隙間が形成され、後述の燃料パ
イプ10からの燃料はこの隙間を介して前記燃料通路５内
へと流通するようになっている。

10はコア部材６内に軸方向に嵌挿して固着された燃料
パイプ、11は該燃料パイプ10の先端とアンカー９の端面
との間に配設された弁ばねを示し、該弁ばね11はアンカ
ー９を図中下向きに押圧することによって、ニードル弁
４を常時閉弁方向に付勢している。そして、該弁ばね11
のばね荷重は燃料パイプ10によって調整され、該燃料パ
イプ10はばね荷重の調整後にカシメ等の手段でコア部材
６に固着されている。

12はコア部材６の突出部6Aに接続された燃料ホースを
示し、該ホース12は燃料ポンプ（図示せず）から圧送さ
れる燃料をフィルタ13を介して燃料パイプ10内等に供給
するようになっている。14は本体１の基端側に位置して
突出部6A外周に一体化されたコネクタを示し、該コネク
タ14は電磁コイル７に外部から噴射パルスを入力し、コ
ア部6Dの先端面側に磁力を発生させるようになってい
る。

さらに、15は噴射ノズル２の噴射口2Bから突出したニ
ードル弁４のピントル4Bを保護するプロテクタを示し、
該プロテクタ15は樹脂材料等によって有底筒状に形成さ
れ、その基端側は噴射ノズル２の外周側に嵌着されてい
る。そして、該プロテクタ15の先端側に位置する底部15
Aにはピントル4Bの突出端側周囲を取囲むように噴出穴1
5Bが形成され、該噴出穴15Bは噴射口2Bから噴射される
燃料が接触しない程度に大径となっている。

従来技術のフューエルインジェクタは上述の如き構成
を有するもので、燃料ポンプからの燃料は燃料ホース1
2、燃料パイプ10等を介して本体１内へと所定の燃圧を
もって供給され、アンカー９とコイルボビン８、本体１
の段部1Aとの間の隙間を通って燃料通路５内へと達す
る。そして、外部からの噴射パルスによってコネクタ14
を介して電磁コイル７に給電を行なうと、コア部材６は
励磁され、コア部6Dの先端面側にアンカー９を弁ばね11
に抗して吸引し、ニードル弁４を開弁させ、噴射ノズル
２の噴射口2Bから外部に向けて燃料を噴射させる。そし
て、前記給電の停止時には弁ばね11によってアンカー９
が押圧され、ニードル弁４は弁座2Aに着座して、燃料の
噴射を停止させる。

一方、フューエルインジェクタを出荷する場合、プロ
テクタ15の先端側には第３図に示す如く樹脂材料等によ
って有底筒状に形成されたキャップ16を被着し、この状
態で本体1,噴射ノズル２内に灯油等の油液を充填するこ
とによって、フューエルインジェクタの長期在庫時等に
本体1,噴射ノズル２の内面等に錆が発生するのを防止す
るようにしている。

〔考案が解決しようとする課題〕

ところで、上述した従来技術では、フューエルインジ
ェクタの出荷時にプロテクタ15の先端側にキャップ16を
被着し、ニードル弁４を閉弁させた状態で本体1,噴射ノ
ズル２内等に油液を充填して長期在庫に備えるようにし
ているから、例えば在庫期間が４〜６ケ月以上に及んだ
場合に、前記油液の一部が噴射ノズル２の弁座2Aとニー
ドル弁４との間にガム質状になって沈澱し、該ニードル
弁４の弁部4Cを弁座2Aに付着させ、所謂固着現象が生じ
ることがある。

このため従来技術では、長期在庫したフューエルイン
ジェクタのニードル弁４が弁座2Aに固着して作動不良を
起こすという問題がある。また、この作動不良を防止す
べく、長期在庫品については定期的にコネクタ14から電
圧を印加し、ニードル弁４を開，閉弁させる所謂定期慣
し等も行なっているが、この定期慣しを各フューエルイ
ンジェクタ毎に行うには非常に手間がかかり、作業性が
悪いという問題がある。

本考案は上述した従来技術の問題に鑑みなされたもの
で、本考案は長期在庫品の作動不良を効果的に防止で
き、所謂定期慣し等を不要にできるようにしたフューエ
ルインジェクタを提供することを目的としている。

〔課題を解決するための手段〕

上述した課題を解決するために本考案が採用する構成
の特徴は、プロテクタの外周側に、有底筒状に形成さ
れ、該プロテクタの先端側を覆うキャップを係脱可能に
設け、該キャップの底部には前記プロテクタの噴出穴内
に突出してピントルの先端に当接し、ニードル弁を開弁
状態にリフトさせるリフト用突起を設けたことにある。

〔作用〕

上記構成により、当該フューエルインジェクタの出荷
時にキャップをプロテクタに被着すれば、該キャップの
底部に設けたリフト用突起がニードル弁のピントル先端
に当接して、ニードル弁を開弁状態に保持でき、長期在
庫中に該ニードル弁が噴射ノズルの弁座に閉弁状態で固
着するのを防止できる。

〔実施例〕

以下、本考案の実施例を第１図に基づき説明する。な
お、実施例では前述した第２図，第３図に示す従来技術
と同一の構成要素に同一の符号を付し、その説明を省略
するものとする。

図中、21はニードル弁４のピントル4Bを保護すべく噴
射ノズル２の外周側に嵌着されたプロテクタを示し、該
プロテクタ21は従来技術で述べたプロテクタ15とほぼ同
様に有底筒状に形成され、底部21Aには噴出穴21Bが形成
されているものの、該プロテクタ21の筒部21C外周には
環状の係止突起21Dが設けられている。

22は当該フューエルインジェクタの出荷時にプロテク
タ21の外周側に被着されるキャップを示し、該キャップ
22は樹脂材料によって有底筒状に形成され、プロテクタ
21の筒部21C外周に嵌合する筒状部22Aと、該筒状部22A
の下端側に一体形成され、プロテクタ21の底部21Aを下
側から隙間Ｓを介して覆う円板状の底板部22Bと、該底
板部22Bの中心部から上向きに突設され、前記ピントル4
Bの先端に当接する凹部22Cが形成されたリフト用突起22
Dと、筒状部22Aの内周に形成され、プロテクタ21の係止
突起21Dに係脱可能に係止する環状の係止溝22Eとから大
略構成されている。

そして、該キャップ22のリフト用突起22Dは、プロテ
クタ21に該キャップ22を被着して係止溝22Eを係止突起2
1Dに図示の如く係止させたときに、プロテクタ21の噴出
穴21B内に嵌入し、凹部22Cがピントル4Bの先端に当接す
ることによりニードル弁４を弁ばね11（第２図参照）に
抗して上向きにリフトさせ、弁部4Cを弁座2Aから離座さ
せるようになっている。また、該キャップ22の底板部22
Bには中心部から下向きに突部22Fが突設され、該突部22
Fはリフト用突起22Dと上，下で対向する位置に配設され
ている。

本実施例によるフューエルインジェクタは上述のごと
き構成を有するもので、その基本的作動については従来
技術によるものと格別差異はない。

然るに本実施例では、当該フューエルインジェクタの
出荷時にプロテクタ21に被着するキャップ22を、筒状部
22A,底板部22B,凹部22C,リフト用突起22Dおよび係止溝2
2E等から構成し、該係止溝22Eをプロテクタ21の係止突
起21Dに係脱可能に係止させたときに、リフト用突起22D
により凹部22Cを介してニードル弁４を上向きにリフト
させ、弁部4Cを弁座2Aから強制的に離座させるようにし
たから、当該フューエルインジェクタの出荷時に本体1,
噴出ノズル２内に灯油等の油液を充填し、長期在庫用に
防錆対策を施した場合でも、長期在庫中にこの油液の一
部が噴射ノズル２の弁座2A上にガム質状になって沈澱
し、ニードル弁４の弁部4Cを弁座2Aに固着させるのを防
止でき、長期在庫品の作動不良等の問題を解消できる。

そして、弁座2A上にガム質状の沈澱物が付着したとし
ても、キャップ22をプロテクタ21から取外したときに、
リフト用突起22Dによるニードル弁４のリフト状態を自
動的に解除できるから、該ニードル弁４は弁ばね11（第
２図参照）によって弁座2A上に衝突して、該弁座2A上の
沈澱物に振動を与えるようになり、この沈澱物を弁座2A
から剥離させて噴射口2Bから外部に自動排出させること
ができる。また、長期在庫中に弁座2A上に多量の沈澱物
が付着し、開弁状態に保持されたニードル弁４の弁部4C
に付着するような場合でも、キャップ22の底板部22Bに
設けた突部22Fを隙間Ｓ分だけ外部から押動すれば、リ
フト用突起22Dを介してニードル弁４に振動を与えるこ
とができ、弁座2Aと弁部4Cとの間の沈澱物を簡単に剥離
させることができる。

従って、本実施例によれば、長期在庫品の作動不良を
効果的に防止でき、長期在庫中に所謂定期慣し等を行う
必要がなくなり、在庫管理等を大幅に簡略化できる。そ
して、ニードル弁４に仮りに固着現象が生じたとして
も、キャップ22の突部22Fを外側から上向きに押動する
だけで、ニードル弁４の固着を簡単に解除でき、当該フ
ューエルインジェクタの信頼性を大幅に向上できる等、
種々の効果を奏する。

なお、前記実施例では、プロテクタ21の筒部21C外周
に係止突起21Dを設け、キャップ22の筒状部22A内周に該
係止突起21Dに係脱可能に係止する係止溝22Eを設けるも
のとして述べたが、これに替えて、キャップ22の筒状部
22A内周に係止突起を設け、プロテクタ21の筒部21C外周
に係止溝を設けるようにしてもよく、これらの係止突
起、係止溝は周方向に複数個設けてもよい。

また、前記実施例では、キャップ22のリフト用突起22
Dに凹部22Cを設け、該凹部22Cの底部をピントル4Bの先
端に当接させるものとして述べたが、これに替えて、凹
部22Cを省略し、リフト用突起22Dの上端面をピントル4B
の先端に当接させ、ニードル弁４を開弁状態にリフトさ
せるようにしてもよい。

〔考案の効果〕

以上詳述した通り本考案によれば、キャップの底部に
リフト用突起を設け、プロテクタへの取付時に該リフト
用突起をピントルの先端に当接させ、ニードル弁を開弁
状態にリフトさせる構成としたから、長期在庫中にはニ
ードル弁を開弁状態に保持でき、防錆用の油液からの沈
澱物によってニードル弁が固着されるのを効果的に防止
できる。従って、長期在庫品の作動不良を防止でき、定
期慣し等を不要にでき、在庫管理を大幅に簡略化できる
等、種々の効果を奏する。

【図面の簡単な説明】

第１図は本考案の実施例を示すフューエルインジェクタ
の要部縦断面図、第２図および第３図は従来技術を示
し、第２図はフューエルインジェクタの縦断面図、第３
図はキャップを被着した状態を示すフューエルインジェ
クタの要部拡大縦断面図である。 １…インジェクタ本体、２…噴射ノズル、2A…弁座、2B
…噴射口、４…ニードル弁、4B…ピントル、６…コア部
材、７…電磁コイル、11…弁ばね、21…プロテクタ、21
A…底部、21B…噴出穴、21D…係止突起、22…キャッ
プ、22B…底板部、22C…凹部、22D…リフト用突起、22E
…係止溝。

Claims (1)

【実用新案登録請求の範囲】
1. 【請求項１】インジェクタ本体と、該インジェクタ本体
   に設けられ、先端側が噴射口となった噴射ノズルと、該
   噴射ノズルの噴射口を開、閉すべく該噴射ノズル内に軸
   方向に可動に設けられ、先端側に該噴射ノズルの噴射口
   から軸方向に突出するピントルが設けられたニードル弁
   と、該ニードル弁を開、閉弁させるべく、前記インジェ
   クタ本体内に設けられた電磁アクチュエータと、前記ニ
   ードル弁のピントルを保護すべく有底筒状に形成され、
   基端側が前記噴射ノズルの外周側に固着され、先端側の
   底部には該ピントルの突出端側周囲を取囲む噴出穴が形
   成されたプロテクタとからなるフューエルインジェクタ
   において、前記プロテクタの外周側には、有底筒状に形
   成され、該プロテクタの先端側を覆うキャップを係脱可
   能に設け、該キャップの底部には前記プロテクタの噴出
   穴内に突出して前記ピントルの先端に当接し、前記ニー
   ドル弁を開弁状態にリフトさせるリフト用突起を設けた
   ことを特徴とするフューエルインジェクタ。