JPH0853119A - 耐熱及び耐圧性自立容器 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 耐熱及び耐圧性自立容器を得る。 【構成】 二軸延伸ブロー成形された合成樹脂製の容器
において、前記底部は底部中心部の周りに複数の脚部を
放射状に膨出し、これらの脚部と脚部との間に谷線部を
形成した自立可能な構造を有し、少なくとも底部中心
部、底部中心部の周辺部及び谷線部の底部中心部に近い
部分が結晶化され、かつ底部中心部の周辺部と脚部の前
記周辺部の縁より接地部にいたる部分のなす角度が８〜
３０゜であり、かつ底部中心部の周辺部の外径が容器最
大胴径の４０％以下である耐熱及び耐圧性自立容器。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、例えば炭酸飲料や清涼
飲料水などを充填するのに好適な二軸延伸ブロー成形さ
れた合成樹脂製の自立容器に関し、さらに詳細には、内
容物の加熱殺菌時の耐熱及び耐圧性を高め、耐衝撃性に
も優れた耐熱及び耐圧性自立容器に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来、耐熱及び耐圧性容器としては、容
器本体の耐内圧性を高めるため底部を半球殻状に膨出成
形し、これに有底筒状に成形されたベースカップを装着
して、容器に自立機能を付与したものが主流であった。
しかしながら、ベースカップの使用は、別途ベースカッ
プを成形し装着固定を行わなければならないこと、容器
の重量が大きくなり、形状も大型化すること、加熱殺菌
工程で温水が容器底部に十分に達しないため内容物の加
熱殺菌をスムーズに行うことができないこと、また、こ
のとき、ベースカップ内に水が溜まり、速やかに排水さ
れにくいこと、など様々な問題があった。

【０００３】さらに、省資源や環境問題の観点から使用
済みの空容器を有効再利用することが望まれているが、
ベースカップを装着した容器では通常、容器本体とベー
スカップや接着剤の材料が異なるため、再利用する場合
にはこれらを分離しなければならず、プロセス的にコス
ト高となるという問題も抱えている。

【０００４】このような問題から、ベースカップを必要
としない耐熱及び耐圧性容器が望まれていた。ベースカ
ップを必要としない耐圧性容器としては、いくつかの提
案がなされており、一般的には底部中心部の周りに複数
の脚部を放射状に膨出し、これらの脚部の間に谷線部を
形成した構造か、あるいはシャンペンタイプの構造かの
いずれかであり、例えば、特公昭４８−５７０８号公
報、同５９−４０６９３号公報、同６１−９１７０号公
報、特開昭６３−２０２４２４号公報及び特開平３−４
３３４２号公報に記載されている。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、これら
各公報に記載された容器は、耐圧性容器としては満足す
る性能を得ることができるものの、加熱殺菌工程を行う
耐熱及び耐圧性容器として使用した場合には十分な性能
を得ることができない。すなわち、前記各公報に記載さ
れた容器は、底部中心部および該中心部周辺に未延伸領
域あるいは低延伸領域が存在しているため、加熱殺菌時
に内容物の温度が５０℃から７０℃程度に上昇すると、
内圧が増大すること、また容器材料自体もクリープ変形
を起こしやすくなることにより、底部中心部および該中
心部周辺の低延伸領域がクリープ変形を起こして突出
し、容器は自立安定性を失うことになる。

【０００６】この問題を解決する方法として、例えば、
特開平５−８５５３５号公報に記載された容器を使用す
ることが考えられる。この容器は、底部中心部を結晶化
し、中心部周辺を十分に延伸した容器であるため、加熱
殺菌時に内圧が増大した場合の底部のクリープ変形をあ
る程度抑制することができると考えられる。しかしなが
ら、この容器の場合においても、脚部と脚部との間に形
成された谷線部を十分に延伸することは困難でこの部分
に低延伸領域が残るため、加熱殺菌時に該部分がクリー
プ変形を起こし、底部が突出して自立安定性を失うか、
または、自立安定性は保持されても、入り味線が大幅に
降下し、実用性を失うという問題が生じる。また、谷線
部以外にも、脚部の底部中心部の周辺部の縁より接地部
にいたる部分や、谷線部の底部中心部に近い部分と脚部
の底部中心部の周辺部の縁より接地部にいたる部分の間
の部分の低延伸部分も、加熱殺菌時に該部分がクリープ
変形を起こし、底部突出に関与する。

【０００７】本発明はこのような問題点を解決したもの
であり、少なくとも底部中心部、その周辺部及び谷線部
の底部中心部に近い部分が結晶化され、かつ底部中心部
の周辺部と脚部の前記周辺部の縁より接地部にいたる部
分のなす角度が８〜３０゜であり、かつ底部中心部の周
辺部の外径が容器最大胴径の４０％以下であることを特
徴とする耐熱及び耐圧性自立容器である。また、容器の
口頸部及び首部の上方部を白化結晶化することで口部の
耐熱圧性を向上させた容器を提供するものである。

【０００８】

【課題を解決するための手段】すなわち、本発明の第１
の発明は、口頸部、首部、胴部及び底部からなる二軸延
伸ブロー成形された合成樹脂製の容器において、前記底
部は底部中心部の周りに複数の脚部を放射状に膨出し、
これらの脚部と脚部との間に谷線部を形成した自立可能
な構造を有し、少なくとも底部中心部、底部中心部の周
辺部及び谷線部の底部中心部に近い部分が結晶化され、
かつ底部中心部の周辺部と脚部の前記周辺部の縁より接
地部にいたる部分のなす角度が８〜３０゜であり、かつ
底部中心部の周辺部の外径が容器最大胴径の４０％以下
であることを特徴とする耐熱及び耐圧性自立容器であ
り、第２の発明は、容器の口頸部及び首部の上方部が白
化結晶化されている第１の発明の耐熱及び耐圧性自立容
器である。

【０００９】本発明の自立容器に用いる合成樹脂は、主
たる繰り返し単位がエチレンテレフタレートである熱可
塑性ポリエステル樹脂が好ましく、該熱可塑性ポリエス
テル樹脂としては、ポリエチレンテレフタレートのホモ
ポリマーを主たる成分とするものが用いられる。更に、
本発明に用いる合成樹脂として、二軸延伸成形により機
械的な強度が向上し、かつ結晶性を有する合成樹脂であ
るポリプロピレン樹脂を挙げることができる。

【００１０】熱可塑性ポリエステル樹脂としては、テレ
フタル酸成分の一部を例えば、イソフタル酸、ナフタリ
ンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、ジフェノキ
シエタンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン
酸、ジフェニルスルホンジカルボン酸等の芳香族ジカル
ボン酸；ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソ
フタル酸等の脂環族ジカルボン酸；アジピン酸、セバチ
ン酸、アゼライン酸等の脂肪族ジカルボン酸；Ｐ−β−
ヒドロキシエトキシ安息香酸、ε−オキシカプロン酸等
のオキシ酸等の他の二官能性カルボン酸の１種以上で置
換して共重合したものが使用できる。

【００１１】また、熱可塑性ポリエステル樹脂は、エチ
レングリコール成分の一部を例えば、トリメチレングリ
コール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレング
リコール、デカメチレングリコール、ネオペンチレング
リコール、ジエチレングリコール、１，１−シクロヘキ
サンジメチロール、１，４−シクロヘキサンジメチロー
ル、２，２（４’−β−ヒドロキシエトキシフェニル）
スルホン酸等の他のグリコール及びこれらの機能的誘導
体の多官能化合物の１種以上で置換して共重合した共重
合体でもよい。

【００１２】また、本発明の容器に使用する熱可塑性ポ
リエステル樹脂は、固有粘度（ＩＶと略記する）が０．
７〜０．９、好ましくは０．７５〜０．８５である。

【００１３】更に、本発明に使用する熱可塑性ポリエス
テル樹脂は、着色剤、熱劣化防止剤、酸化防止剤、紫外
線吸収剤、帯電防止剤、抗菌剤、滑剤等の添加剤を適宜
含有することができる。

【００１４】本発明の自立容器は、底部中心部の周辺部
と脚部の前記周辺部の縁より接地部にいたる部分のなす
角度が８〜３０゜であり、特に好ましくは、１３〜２５
°である。８゜未満では、内容物の熱殺菌工程（温水処
理工程とも言う）でクリープ変形を起こし自立安定性を
失う。３０゜を越えるとブロー成形工程での脚部の賦形
性が劣り、容器の落下時に亀裂が発生しやすい。又、底
部中心部の周辺部の外径は容器最大胴径の４０％以下で
あり、特に好ましくは、５〜３５％であり、４０％を越
えると、ブロー成形工程での脚部の賦形性が劣る。

【００１５】本発明において、（Ａ）底部中心部、
（Ｂ）底部中心部の周辺部、（Ｃ）谷線部の底部中心部
に近い部分、（Ｄ）脚部の前記周辺部の縁より接地部に
いたる部分、（Ｅ）前記（Ｃ）と（Ｄ）の間の部分、は
低延伸部分である。本発明の容器において、これらの中
で少なくとも（Ａ）底部中心部、（Ｂ）その周辺部及び
（Ｃ）谷線部の底部中心部に近い部分が結晶化され、か
つ底部中心部の周辺部の外径を容器の最大胴径の４０％
以下とし、かつ底部中心部の周辺部と脚部の前記周辺部
の縁より接地部にいたる部分のなす角度が８〜３０゜で
ある形状とすることにより、内容物の熱殺菌工程（清涼
飲料水の製造基準等に記載される条件）で生じる容器の
クリープ変形を抑制し、また容器の自立安定性を保持す
ることが可能となり、また容器の落下時の底部の破損を
防止することができる。さらに、底部の部分結晶化した
部分は星形に白化されており、容器のデザイン性にも優
れている。

【００１６】次に、自立容器の底部の各部分について説
明する。（Ａ）底部中心部とは、例えば図４の７の格子
状の部分をいう。（Ｂ）底部中心部の周辺部とは、例え
ば図４の８の斜線の部分をいう。（Ｃ）谷線部の底部中
心部に近い部分とは、谷線部の内中心部に近い部分で、
谷線部全体の５〜６５％、例えば、図４の１０で示す部
分である。（Ｄ）脚部の底部中心部の周辺部の縁より接
地部にいたる部分とは、脚部の内、脚部の底部中心部の
周辺部の縁より接地部にいたる部分をいい、例えば、図
４の１１で示す部分である。（Ｅ）前記谷線部の底部中
心部に近い部分と脚部の前記周辺部の縁より接地部にい
たる部分の間の部分とは、例えば、図４の１２で示す部
分である。

【００１７】本発明の耐熱及び耐圧性自立容器は二軸延
伸ブロー成形にて製造されるが、容器のブロー成形工程
で、金型を加熱し熱固定することにより胴部の耐熱性を
高めることができる。ポリエチレンテレフタレート樹脂
の場合には、そのガラス転移温度以上が好ましい。また
容器の経時収縮などを抑制する場合には５０℃以上の金
型温度でもよい。

【００１８】

【実施例】以下、実施例により本発明を説明する。 実施例１ ポリエチレンテレフタレート（ＩＶ＝０．８５）を射出
成形して得た有底プリフォームの口頸部及び首部上方部
を赤外線ヒーターを用いて、局部加熱により白化結晶化
した。次にプリフォーム胴部を延伸適温まで加熱し、ブ
ロー金型内に配置し、二軸延伸ブロー成形した。この時
ブロー金型の胴部を６０〜７０℃に保ち、２秒間熱固定
した。熱固定後に金型から容器を取り出した。次に容器
の底部を赤外線ヒーターを用い加熱した。この時、特定
部分のみ熱が通過する構造を有する遮蔽板を使用し、容
器の底部の底部中心部、底部中心部の周辺部及び谷線部
の底部中心部に近い部分を結晶化し、１．５リットルの
自立容器を得た。得られた自立容器は、底部中心部の周
辺部の外径の最大胴径に対する割合（底部中心部の周辺
部の割合と略記する）が３０％であり、底部中心部の周
辺部と脚部の前記周辺部の縁より接地部にいたる部分の
なす角度（脚部角度と略記する）が２５゜であった。
（図１、図２及び図３に示す）

【００１９】この容器に炭酸水を入れ耐クリープ性（耐
熱圧性試験）及び自立安定性試験を行った。その結果、
供試容器の底部は自立安定性を失うことはなかった。ま
たこの試験での、容器の全高及び容器の胴部の変形はわ
ずかであり、実用性能の範囲内であった。次に、耐落下
衝撃性試験を行ったところ、全ての容器に破壊はなく、
もちろん底部の亀裂はなかった。評価結果を表１に示
す。

【００２０】

【表１】

【００２１】実施例２〜１０ 実施例１において、自立容器の底部中心部の周辺部の外
径の最大胴径に対する割合及び底部中心部の周辺部と脚
部の周辺部の縁より接地部にいたる部分のなす角度を変
更した容器とした以外は同様におこなった。評価結果を
表１に示す。

【００２２】比較例１〜３ 実施例１おいて、自立容器の底部中心部の周辺部の外径
の最大胴径に対する割合及び底部中心部の周辺部と脚部
の周辺部の縁より接地部にいたる部分のなす角度を変更
した容器とした以外は同様におこなった。評価結果を表
１に示す。この容器は、熱殺菌後の自立安定性試験では
自立安定性を失い、容器の転倒が観察された。耐落下衝
撃性試験では底部の一部に微少クラックが観察され、ま
たは底部の破損が発生し、実用的でなかった。評価結果
を表１に示す。

【００２３】以下に自立容器の各種評価法を示す。 （１）耐クリープ性 （ａ）評価方法 １．５リットルの自立容器に２．５ガスボリュームの炭
酸水を入味線４３mmまで充填して、キャッピングした
後、７０℃の温水シャワーを３０分間かけた後、２０℃
の水で１０分間冷却し、この時の寸法変化を測定した。 （ｂ）評価基準 ・容器の全高：冷却後の容器（充填状態）の全高−空容
器の全高を空容器の全高で割った数値が、０．０２以下
の場合を実用性ありと評価した。 ・容器の胴径：冷却後の容器（充填状態）の胴径−空容
器の胴径を空容器の胴径で割った数値が、０．０１５以
下の場合を実用性ありと評価した。 尚、表示方法は、以下のとおりとした。（自立安定性及
び耐落下衝撃性も同様の表示方法とした。 ○ ：全ての試験容器において性能が良好である。 △ ：試験容器の一部に性能が劣るものがあった。 × ：全ての試験容器において性能が満足できなかっ
た。

【００２４】（２）自立安定性 （ａ）評価方法 ・耐クリープ性の評価と同様に充填し、充填容器を水平
面上に置き評価を行った。 （ｂ）評価基準 ・充填容器を水平面上に置いたときに、自立し、ロッカ
ーボトムになっていない状態を良好と判定した。

【００２５】（３）耐落下衝撃性 （ａ）評価方法 耐クリープ性の評価と同様に充填した後、冷却し、この
容器を直立状態で２．０ｍの高さからコンクリート上に
落下させた。 （ｂ）評価基準 容器の破損がなく、底部等に亀裂がないものを良好と判
定した。

【００２６】

【発明の効果】以上の通り、本発明により、例えば炭酸
飲料や清涼飲料水などを充填するのに好適な二軸延伸ブ
ロー成形された合成樹脂製の自立容器で、耐熱及び耐圧
性自立容器を提供することができる。本発明による容器
はベースカップを必要としないため、加熱殺菌処理時の
熱水が容器底部に十分に達し、内容物の加熱殺菌をスム
ーズに行うことができ、さらには、使用済み容器の再利
用も容易となる。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の容器本体図である。

【図２】本発明の容器の底部の図である。

【図３】本発明の容器の底部の断面図である。

【図４】本発明の容器の底部の各部分を示す図である。

【符号の説明】

１ 合成樹脂製の自立容器 ２ 口頸部 ３ 首部上方部 ４ 胴部 ５ 底部 ６ 脚部 ７ 底部中心部 ８ 底部中心部の周辺部 ９ 谷線部 １０ 谷線部の中心部に近い部分 １１ 脚部の底部中心部の周辺部の縁より接地部にいた
る部分 １２ 谷線部の底部中心部に近い部分と脚部の底部中心
部の周辺部の縁より接地部にいたる部分の間の部分 １３ 底部中心部の周辺部と脚部の前記周辺部の縁より
接地部にいたる部分のなす角度 １４ 接地部 １５ 底部中心部の周辺部の外径

Claims (2)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 口頸部、首部、胴部及び底部からなる二
   軸延伸ブロー成形された合成樹脂製の容器において、前
   記底部は底部中心部の周りに複数の脚部を放射状に膨出
   し、これらの脚部と脚部との間に谷線部を形成した自立
   可能な構造を有し、少なくとも底部中心部、底部中心部
   の周辺部及び谷線部の底部中心部に近い部分が結晶化さ
   れ、かつ底部中心部の周辺部と脚部の前記周辺部の縁よ
   り接地部にいたる部分のなす角度が８〜３０゜であり、
   かつ底部中心部の周辺部の外径が容器最大胴径の４０％
   以下であることを特徴とする耐熱及び耐圧性自立容器。
2. 【請求項２】 容器の口頸部及び首部の上方部が白化結
   晶化されていることを特徴とする請求項１記載の耐熱及
   び耐圧性自立容器。