JPH08508710A - 新規処置方法 - Google Patents

新規処置方法

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JPH08508710A
JPH08508710A JP6506175A JP50617594A JPH08508710A JP H08508710 A JPH08508710 A JP H08508710A JP 6506175 A JP6506175 A JP 6506175A JP 50617594 A JP50617594 A JP 50617594A JP H08508710 A JPH08508710 A JP H08508710A
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Abstract

(57)【要約】 本発明は、多形核白血球の活性化に伴う、例えは菌血症、物理的外傷又はウイルス性感染によりもたらされる肺炎症反応の処置方法に関する。この方法はかかる処置に有効な速度でアデノシンを連続的に静脈内注入することを特徴とし、好ましくは2〜50μg/kg/分、より好ましくは5〜20μg/kg/分で中枢静脈に注入する。

Description

【発明の詳細な説明】 新規処置方法 発明の分野 本発明は、ヒト患者における多形核白血球の活性化に伴う肺炎症反応の処置方 法に関する。本発明は、さらに、このような処置のための医薬の製造のためのア デノシンの使用、並びにかかる医薬の投与量単位に関する。 本発明の目的は、ヒト患者における肺の損傷を防止するための、効果的な肺炎 症反応の予防及び/又は治癒のための薬理学的処置を提供することである。本発 明のさらなる目的は、菌血症、物理的外傷あるいはウイルス性感染をわずらう患 者のような危篤状態の患者用の上述のような処置を提供することである。 発明の背景 危篤状態の患者、例えば菌血症(敗血症)を伴う種々の形態の重篤な感染症や 血流不安定(haemodynamic instability)の患者は、しばしば呼吸補助、薬理学的 変力性処置及び抗生物質を必要とする。このような症状は高い致死率(〜30% )を招き、時には、いわゆる“成人呼吸困難症候群”(ARDS)のような重篤 な損傷に至る肺の炎症反応を伴う。また命をささえるのに必要な他の器官にまで 損傷をおよぼしかねない。多臓器不全を起こすと、致死率は70〜80%にもな る。敗血症や他の重篤な症状の結果として肺の組織にしばしば起こる生体炎症反 応に拮抗し、呼吸不全が防止できれば、臨床上極めて価値が高い。もしこれらが 達成できれば、異化作用や多臓器不全が最小限に抑えられる。 アデノシンは生体の全ての細胞タイプに存在する内因性ヌクレオシドである。 アデノシンは、酸素要求量/酸素供給量比が増加することを特徴とする生理学的 及び病理生理学的症状にある時に細胞内で生成され、細胞外に放出される。この ことは、アデノシンの生成が、高エネルギーリン酸塩の分解が増大した状態の時 に促進されることを意味する。アデノシンの生物学的作用には種々の細胞タイプ の細胞表面に存在する特異的アデノシン レセプターが介在している(1)。A2 −アデノシン レセプターが活性化されると、多形核(PMN)細胞安定化に よ って、血管拡張、血小板抗凝集及び抗炎症作用を誘起する。A1−レセプターの 活性化は、しばしばAV−伝導(房室伝導)の低下のような代謝プロセスの阻害 的影響及びイオンチャネルの流れの阻害につながる(2〜4)。 ここ10年で、血管拡張剤兼、AV−伝導調節剤として、外因性のアデノシン を投与する臨床的研究が行われてきている(2,5)。アデノシンを静脈内注射 投与するとピーク濃度が高く、一時的な(30秒未満)AV−伝導の阻害が起こ る。これはカリウム流の阻害が起こるせいで、これを臨床的には、過剰の経路の 所在をつきとめる診断剤として、又、AV−結節(房室結節)に関わる再入上室 性頻拍を停めるのに使用している。血管拡張剤としてアデノシンは末梢抵抗を改 善し、これにより麻酔下のコントロールされた血圧低下を誘起したり、外科手術 時の高血圧反応を防いだりするのに用いられてきた。80μg/kg/分以上の 投与量で末梢血管に投与した場合のアデノシンの強い血管拡張効果は、又、虚血 性心疾患(IHD)の診断に関連する極大冠血管拡張を行うのにも適用されてき た。さらに、ストレス負荷画像化灌流試験(stress imaging perfusion test)を 行う場合には、この化合物を約140μg/kg/分の投与量で注入投与する。 又、心エコー検査に関連する薬理学的なストレス負荷試験がIHD−患者に使わ れる。 アデノシンを非常に低い用量範囲(末梢血管注入投与では50μg/kg/分 以下、又、中枢血管注入投与では30μg/kg/分以下の投与速度)で、注入 投与すると、循環系の動脈部分の血管への効果は実質的に示されない。肺循環に おける血管拡張効果は、20〜30μg/kg/分の中枢血管への投与で認めら れる。この用量依存性の機構は、ヒトにおいて1〜10秒というアデノシンの血 漿中での半減期が短いことで説明がつく(2,5)。組織損傷におけるアデノシ ノンの抗炎症効果については、動物実験に基づいて理論的裏付けが確立されてい る。従って、種々の形態のアデノシン投与によって、異なる種において心筋層の 再灌流による損傷が有意に軽減されることが例証されている(7〜11)。この 種の損傷は主として炎症反応によるもので、組織壊死を促進すると考えられてい る。このようにアデノシン処置により、虚血性損傷を軽減し、好中球の浸潤程度 を低下させ、毛細管がつまるのを減らし、かつ心筋層中の内皮を保護できるかも しれないことを示唆する種々の動物モデルにおける実験データがある(6)。 一方で、アデノシンは炎症を進め、それにより組織の損傷を促進するかもしれ ないことを示唆する研究もある。これは、虚血状態の腸でアデノシン−レセプタ ー拮抗剤が損傷を実際に抑えた研究によって示されている(12)。さらに、ア デノシノンを投与すれば、炎症を進める内因性化合物であるタキキニンの放出が ラットの関節で促進されることが示されている(13)。従って、アデノシンは 研究された器官に対し、抗炎症効果と炎症促進効果の両効果を奏することを示唆 する実験データが先行技術にある。 米国特許第5104859号には、継続的にアデノシンを投与すると、肺の血 管の抵抗性が低下することと、さらにアデノシンの血管拡張作用に基づく治療的 適用について記載されている。 アデノシンによる肺の抗炎症作用は、従来、動物実験では記載されていなかっ た。公表された臨床研究のどこにもこのような効果について論じられてもいなけ れば記載もされていない。 発明の開示 本発明は、外因性のアデノシンを投与することにより、ヒトの患者の肺組織の 炎症を防ぐことができるという知見を得たことに基づくものである。 従って、本発明はヒト患者における多形核白血球の活性化に伴う肺炎症反応の 処置方法に関するものであり、この方法はかかる処置に有効な速度でアデノシン を連続的に静脈内注入することを特徴とする。本明細書において、“処置(tr eatment)”なる用語は、文脈上別の意味が明らかでない限り、予防のた めに行う処置と治癒のために行う処置の両方を含む意味に用いる。 特に、本発明は菌血症、物理的外傷又はウイルス性感染によってもたらされる 炎症反応の処置に関する。 本発明の好ましい態様では、アデノシンは、2〜50μg/kg/分の速度で 投与される。注入の用量は、最大の肺の血管拡張に必要な量より低く、又、体の 他の部分の血管に効果を及ぼすのに必要な用量よりも低い用量である。特に、ア デノシンは、5〜20μg/kg/分の投与量で、好ましくは中枢静脈、例えば 上大静脈、腕頭静脈又は鎖骨下静脈に投与される。低投与量でアデノシンを注入 することにより、該化合物が循環系のPMN−細胞、すなわち、好中球に効果を 及ぼし、敗血症時、内皮が損傷を受けることによってPMN−細胞が活性化され るのを妨げることができる。注入は通常、炎症反応の危険性が高い限り、例えば 、患者が敗血症の場合で普通24〜72時間の間にわたって続けられる。 本発明の目的のために、アデノシンは連続的静脈内注入に用いるのに適した医 薬的に許容される形態である限りどんな形態で患者に投与してもよい。好ましい 投与形態は、アデノシンの水溶液であり、より好ましくは等張生理食塩水にアデ ノシンを溶解した液である。溶液の濃度としては、過剰の注入速度にしなくてい いように、少なくとも5mM(又は約1.5mg/ml)の濃度が望ましい。濃 度の上限としては、アデノシンの溶解度(約20mM又は5.5〜6mg/ml )まであげることができる。 本発明に従って使用する際、アデノシンの単位投与量製剤は、代表的には50 〜1000ml、好ましくは100〜250mlの量である。アデノシン溶液は 、滅菌され、真菌や細菌を除いておくべきである。 このような溶液は、アデノシンを水性担体(例えば、水や等張溶液)及び他の 所望の成分と混合し、所望の濃度の溶液を得て、その後、溶液を滅菌することに よって得られる。 連続注入は、当該分野で知られている技術のいずれを用いて行ってもよい。ア デノシンは血漿中の半減期が非常に短く、しかも低い投与速度でも活性であるの で、血清アデノシンのレベルの上下変動を最小限に抑えるか、又は避ける方法で 注入するのが望ましい。従って、高精度ポンプを用いるのが好ましい。 処置例 実施例1 うっ血性心疾患をわずらう67才の女性に、穿孔腸と腹膜炎、敗血症並びに循 環系ショックのために緊急手術を行った。患者は、多量の変力性薬理学的サポー ト(アドレナリン、ノルアドレナリン、ドパーミン)、及び人工呼吸装置中での 呼吸補助を必要とし、種々の抗生物質の併用投与をした。術後、患者にはアデノ シンを上大静脈に20μg/kg/分で48時間投与した。24時間後、患者は もはや変力性サポートが必要なくなり、48時間後には人工呼吸器なしで自発呼 吸を行った。患者はX線検査の結果、肺の炎症の徴候は見うけられず、4日後に は集中治療室(ICU)から出ることができた。実施例2 アルコール乱用の経歴をもつ65才の女性が、結腸の穿孔による腹膜炎が原因 のショック状態であったので緊急手術を受けた。術後の患者の容体は多量の変力 性サポート(アドレナリン、ドブタミン、ノルアドレナリン、及びドパーミン) を投与し、人工呼吸器で呼吸を促し、かつ、抗生物質を併用投与しているにもか かわらず、最初循環系の状態が非常に悪かった。患者は外科手術を受けた12時 間後、上大静脈に10μg/kg/分の速度でアデノシン注入を受け始め、この アデノシン注入は72時間続けられた。循環系のサポートは24時間内に除き、 3日以内に人工呼吸器もはずした。肺のX線検査で炎症の徴候は何もみられなか った。患者は集中治療室(ICU)に入ってから5日後にICUを出た。実施例3 胆のう切除手術後の胆汁性腹膜炎にかかった48才の男性が敗血症の状態で手 術を受け、多量の胆汁もれがみつかった。腹腔内洗浄時に、おそらく手術部位か らの菌血症によるものと思われる極端な肺機能の低下が起こった。患者にアデノ シン注入(上大静脈に10μg/kg/分)を行い、ドパーミンと種々の抗生物 質を併用投与した。アデノシン処置は48時間続けられた。24時間内に人工呼 吸器中の酸素濃度が80%から35%に低下し、ICU入室4日後には人工呼吸 器をはずした。肺のX線検査で調べたところ、肺の炎症反応は何も見られなかっ た。文献目録 1.デリー,J.W.(Daly,J.W.),中枢神経系におけるアデノシン レセプタ ー:作用薬と拮抗薬に関する構造活性相関。ストーン,T.W.編、プリン化合 物:薬理学的及び生理学的役割、ロンドン:マクミラン,1985:5−15( Stone,T.W.ed.Purines: Pharmacological and physiological roles,London :Macmillan,1985: 5-15) 2.ベラルディネリ,L.,リンデン,J.,バーネ,R.(Belardinelli,L. ,Linden,J.,Berne,R.),アデノシンの心臓への効果。Prog.Cardi o Dis 1989:32:73 3.ウォード,P.,ブレイア,A.,ウォーカー,M.及びハーゲンロッカー ,B.E.(Ward,P.,Blair,A.,Walker,M.and Hagenlocker,B.E.),ヒト好 中球とATP,ATPγS及びアデノシンの間の相互作用の機能的結果。Ann NY Acad Sci 1990;603:108−19 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【手続補正書】特許法第184条の8 【提出日】1995年5月17日 【補正内容】 請求の範囲 1.肺炎症反応の処置に有効な速度で、アデノシンを連続的に静脈内注入するこ とを特徴とするヒト患者における多形核白血球の活性化に伴う肺炎症反応の処置 方法。 2.菌血症によってもたらされる炎症反応の処置を含む請求項1記載の方法。 3.物理的外傷によりもたらされる炎症反応の処置を含む請求項1記載の方法。 4.ウイルス性感染によりもたらされる炎症反応の処置を含む請求項1記載の方 法。 5.(補正後)アデノシンを2〜50μg/kg/分の速度で静脈内注入するこ とを含む請求項1〜4の少なくとも1項に記載の方法。 6.ヒト患者における多形核白血球の活性化に伴う肺炎症反応の処置用医薬の製 造のためのアデノシンの使用。 7.菌血症によりもたらされる炎症反応の処置用医薬の製造のための請求項6記 載の使用。 8.物理的外傷によりもたらされる炎症反応の処置用医薬の製造のための請求項 6記載の使用。 9.ウイルス性感染によりもたらされる炎症反応の処置用医薬の製造のための請 求項6記載の使用。 10.(補正後)アデノシンを2〜50μg/kg/分の速度で静脈内注入する ための医薬を製造するための請求項6〜9の少なくとも1項に記載の使用。 11.(補正後)アデノシンを5〜20μg/kg/分の速度で静脈内注入する ための医薬を製造するための請求項6〜9の少なくとも1項に記載の使用。 12.(補正後)有効成分としてアデノシンを含有する、ヒト患者における多形 核白血球の活性化に伴う肺炎症反応の処置剤。 13.(追加)菌血症によりもたらされる炎症反応処置用の請求項12記載の処 置剤。 14.(追加)物理的外傷によりもたらされる炎症反応処置用の請求項12記載 の処置剤。 15.(追加)ウイルス性感染によりもたらされる炎症反応処置用の請求項12 記載の処置剤。 16.(追加)2〜50μg/kg/分の速度でのアデノシン静脈内注入用であ る請求項12〜15の少なくとも1項に記載の処置剤。 17.(追加)5〜20μg/kg/分の速度でのアデノシン静脈内注入用であ る請求項12〜15の少なくとも1項に記載の処置剤。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE, DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG ,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN, TD,TG),AT,AU,BB,BG,BR,BY, CA,CH,CN,CZ,DE,DK,ES,FI,G B,HU,JP,KP,KR,KZ,LK,LU,LV ,MG,MN,MW,NL,NO,NZ,PL,PT, RO,RU,SD,SE,SK,UA,US,UZ,V N

Claims (1)

  1. 【特許請求の範囲】 1.肺炎症反応の処置に有効な速度で、アデノシンを連続的に静脈内注入するこ とを特徴とするヒト患者における多形核白血球の活性化に伴う肺炎症反応の処置 方法。 2.菌血症によってもたらされる炎症反応の処置を含む請求項1記載の方法。 3.物理的外傷によりもたらされる炎症反応の処置を含む請求項1記載の方法。 4.ウイルス性感染によりもたらされる炎症反応の処置を含む請求項1記載の方 法。 5.アデノシンを2〜50μg/ml/分の速度で静脈内注入することを含む請 求項1〜4の少なくとも1項に記載の方法。 6.ヒト患者における多形核白血球の活性化に伴う肺炎症反応の処置用医薬の製 造のためのアデノシンの使用。 7.菌血症によりもたらされる炎症反応の処置用医薬の製造のための請求項6記 載の使用。 8.物理的外傷によりもたらされる炎症反応の処置用医薬の製造のための請求項 6記載の使用。 9.ウイルス性感染によりもたらされる炎症反応の処置用医薬の製造のための請 求項6記載の使用。 10.アデノシンを2〜50μg/ml/分の速度で静脈内注入するための医薬 を製造するための請求項6〜9の少なくとも1項に記載の使用。 11.アデノシンを5〜20μg/ml/分の速度で静脈内注入するための医薬 を製造するための請求項6〜9の少なくとも1項に記載の使用。 12.少なくとも5mMからアデノシンの溶解度限度までの濃度のアデノシンの 水溶液を含有する、ヒト患者における多形核白血球の活性化に伴う肺炎症反応の 処置用医薬の投与量単位。
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