JP2535504B2 - 選択的冠血管拡張剤 - Google Patents

選択的冠血管拡張剤

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JP2535504B2 JP60504950A JP50495085A JP2535504B2 JP 2535504 B2 JP2535504 B2 JP 2535504B2 JP 60504950 A JP60504950 A JP 60504950A JP 50495085 A JP50495085 A JP 50495085A JP 2535504 B2 JP2535504 B2 JP 2535504B2
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    • C07H19/04Heterocyclic radicals containing only nitrogen atoms as ring hetero atom
    • C07H19/16Purine radicals

Description

【発明の詳細な説明】 本発明はアデノシンを有効成分として含有する選択的
冠血管拡張剤からなる。
アデノシンは、プリン、アデニンおよび糖であるD−
リボースによつて構成される天然に存在するヌクレオシ
ドである。アデノシンの正常な基礎血漿レベルは、約0.
1から0.2μモル/である。あらに、アデノシンは、通
常、体内にアデノシンモノフオスフエート(AMP)、ア
デノシンフオスフエート(ADP)、アデノシントリフオ
スフエート(ATP)の形で存在している。アデノシンは
体内で生産されるか、または体外より投与されるかの如
何により、多様な生物学的作用を持つていることが報告
されている。上記の生物学的作用には、中枢神経系に対
する鎮静および抗癲癇性作用、呼吸に及ぼす抑制作用、
房室伝導時間の延長及び洞結節でのインパルス形成を含
む心臓血管系に対する作用、血管拡張、抗凝集作用、遊
離脂肪酸の放出低下、胃における分泌抑制作用、そして
抗利尿作用があげられている。
しかしながら、一般に、アデノシンとその生成学的作
用は生理学的に大きな関心がもたれてきた。アデノシン
が医薬品として関心をもたれる限りでは、それは主とし
てアデノシンのフオスフエート誘導体に集中していた。
フオスフエート誘導体は現在、循環中にすみやかに代謝
されてアデノシンとフオスフエートを生じることが知ら
れている。(Sollevi氏他、Acta.Physiol.Scand.120:17
1−6(1984)参照)。しかし、フオスフエートは、好
ましくない副作用を起こす可能性がある。例えば、高レ
ベルのフオスフエートはマグネシウムおよびカルシウム
のキレート化に次いで不整脈を起こす可能性がある。
(Dedrick氏他、Anesthesiologi,53:3A,66(1982)参
照)。
さらに、アデノシンは房室結節(A−V)のブロツク
によつて、心ブロツクを生ずることが知られている。結
果として特に心虚血または低酸素症により放出されるア
デノシンによる心ブロツクを防止するために、テオフイ
リンのようなメチルキサンチン類を用いることが米国特
許第4,364,922号によつて提案されている。
さらに、頻泊性不整脈の治療にアデノシンを用いるこ
とによつてアデノシンの持つ房室伝導を妨げる能力を利
用することが提案されている。そのような利用には、ア
デノシンは、約37.5μg/Kgから約450μg/Kgまでのアデ
ノシンを含有する注入可能な静脈内ボーラス(bolus)
として投与される。そのような利用方法に於て、アデノ
シンは、検出可能な血管拡張作用を殆んど示さない。ア
デノシンは、10〜20秒程度の非常に短い血漿半減期を有
しているので(Fredholm及びSollevi,J.Physiol.313:35
1−62(1981))、注入されたアデノシンの濃度は急速
に正常な血清レベル(約0.15μmol/)まで減少する。
注入されたアデノシンの一時的存在はほとんど一過性の
血管拡張以外はもたらさない。
したがつて、アデノシンが血管拡張剤としての使用に
対し実用的な価値を有する為には、血管拡張を達成する
のに十分高い血漿レベルを保つため、連続的に投与しな
ければならない。しかし、かかる連続投与が好ましくな
い副作用、例えば上記の心ブロツクを引き起こすかもし
れないということが問題である。
また、血管拡張剤として一般に使用される化合物、例
えば、ニトロプルシドナトリウム、ニトログリセリン、
イソフルラン、ヒドララジン、プラゾシンなどは、種々
の副作用を有することが知られている。例えば、ニトロ
プルシドナトリウムは、タキフイラキシーや反動性高血
圧をおこす欠点を有し、これらの症状は明らかに、ニト
ロプルシドの血圧低下作用に逆らうアンギオテンシンの
自原的発生によつて引き起こされている。その結果ニト
ロプルシドの投薬量は、アンギオテンシンの血圧上昇作
用に打ち勝つ為連続使用によつて次第に増加しなければ
ならず、残つた過剰なアンギオテンシンの存在によるリ
バウンドの危険が存在する。ニトログリセリンとプラゾ
シンは作用開始が遅くそして作用が予想できない欠点が
ある。ニトロプルシド、ヒドララジンおよびプラゾシン
が心摶度数を増加するのに対し、イソフルランとニトロ
プルシドナトリウムは、心臓の血流を減少させる傾向を
有する。
したがつて、連続静脈内注入による投与に適した血管
拡張剤が依然として必要とされている。
本発明は有意な心ブロツクをおこすことなく、有意な
血管拡張が達成されるような条件下でアデノシンを患者
に投与できるという知見に基づいている。また、本発明
は、アデノシンが従来一般に用いられた血管拡張剤のプ
ロフイルとはかなり異なつた独特の今まで認められてい
なかつた、ヒトにおける活性プロフイルを有するという
知見に基づいている。この知見の結果として、アデノシ
ンは連続静脈内注入法によつて種々の状況の治療に使用
できることがわかつた。特に、アデノシンは、次の性質
を有することが見出された。
1. アデノシンはその作用が心臓後負荷効果に限定され
るという点において選択的血管拡張作用を有する。すな
わち、その作用は動脈の拡張に限定され、殆んど、ある
いは全く心臓前負荷の作用を有さず、換言すれば静脈の
拡張剤としての作用を有しない。
2. アデノシンはボーラス注入により房室系(A−V)
伝導を妨げるのに有効な作用を有するが、連続注入によ
り投与できそして有意のA−V作用をもたらすよりも少
ない投薬量で相当に有用な血管拡張作用を有する。
3. アデノシンは、有意なタキフイラキシーの発生なし
に、かなりの血圧低下作用を有する。明らかに、アデノ
シンが、腎臓のレニン−アンギオテンシン系を妨害し、
かくして、低血圧に応答したアンギオテンシンの生成に
よる高血圧を阻止する。
4. アデノシンは比較的少ない投与量で活性でありかつ
血漿半減期(10〜20秒)が短いことによりアデノシンの
作用は容易に制御される。さらに、アデノシンの活性
は、アデノシンの投与が中止されれば、速やかになくな
る。
5. アデノシンは心臓の仕事量を有意に増大させること
なく心臓摶出量をかなり増大させうる。
6. アデノシンは、本発明に従つて用いられる量では、
本質的に無毒性である。アデノシンは体内に迅速に吸収
されてATPを形成しそして分解する際の代謝産物は、肉
体運動で通常生じるレベルまたはそれ以下である。
前記の活性プロフイールは、手術中における低血圧の
コントロール、種々の形態の高血圧発症のコントロー
ル、虚血性心臓疾患を有する患者の手術中の冠循環の改
善、冠状バイパス手術に続く移植片の血流を増加させる
ことによる冠移植片の閉塞の発生頻度の減少、そして低
心臓摶出量状態で後負荷の減少のためのアデノシンの連
続投与を可能とする。また、心臓バイパス手術中にアデ
ノシンを連続注入することはかかる手術中の血小板損失
を減少させ得ることが判明した。
本発明によつて、アデノシンを連続静脈内注入によつ
て患者に投与してかなりの血管拡張を与えることがで
き、しかも2つの状況下で心ブロツクが存在しない。第
一に、アデノシンの心ブロツク作用は、麻酔中のアデノ
シンの投与量が体重1Kg当たり毎分0.35ミリグラムまた
はそれ以下の時には認められない。第二に、アデノシン
の心ブロツク作用は、意識のある患者に於てさえも、体
重1Kgあたり毎分約0.10ミリグラムまたはそれ以下のア
デノシン投与量では認められない。
本発明の目的では、アデノシンは連続静脈内注入にお
ける使用に適した製薬上許容できる形態で患者に投与す
ることができる。好ましい形態はアデノシンの水溶液で
あり、さらに好ましくは、等張食塩水中のアデノシンで
ある。少なくとも5ミリモル(あるいは約1.5mg/ml)の
溶液濃度が望ましい血清レベルを達成する為の過度の注
入率の必要性を回避するために望まれるが、溶液中のア
デノシンの濃度は厳密なものではない。所望により、濃
度はアデノシンの溶解限度(約20ミリモル/または5.
5〜6mg/ml)にまですることができる。
本発明によつて連続注入に用いられる場合アデノシン
の十分な供給を行なう為、典型的な単位投与形態物は少
なくとも250ml、好ましくは250〜500mlである。その結
果、通常、単位投与形態物は約0.4〜約3グラムのアデ
ノシンを含有する。
勿論、アデノシン溶液は滅菌しており、真菌類や細菌
が存在しないものである。かかる溶液は少なくとも2年
間室温で安定であつた。
そのような溶液は、アデノシンを水性担体、例えば水
または等張液および他の所望の成分と混合して所望の濃
度を有する溶液となした後溶液を滅菌することにより調
製される。
連続注入は当業者に知られた任意の技術によつて行な
うことができる。アデノシンは短い血漿半減期を有し、
そして比較的低い濃度で活性であるので、投与方法は血
清のアデノシンレベルの変動を最少にするかまたは回避
するものであることが望ましい。したがつて、高精度ロ
ーラーポンプの使用が好ましい。
上記のように、本発明はアデノシンの投与量やアデノ
シンが麻酔された患者あるいは意識のある患者に投与さ
れるか否かによつて、多くの詳細な適用を有する。適用
の第一の一般的分類は心ブロツクを引き起こさない投薬
量において全身麻酔下で手術中の患者にアデノシンを連
続的に投与することである。詳細な適用には手術特に脳
動脈瘤の離断とクリツピング中の低血圧のコントロー
ル、手術中の高血圧発症(例えば、クローム親和、細胞
腫手術中のカテコールアミンの放出に起因)のコントロ
ールおよび特に、虚血性心疾患の患者に於ける腹大動脈
瘤手術中の冠循環と後負荷減少の改善が挙げられる。か
かる場合には、体重1Kgあたり、毎分0.05〜0.3mg程度の
投与量が有効な量である。
連続的アデノシン注入適用の第二の一般的分類は、ア
デノシンが、有意な心ブロツク作用を示す以下のレベル
で意識のある患者に投与することである。これらのレベ
ルは典型的には毎分1Kg当たりアデノシン0.05mgまたは
それ以下の投与量によつて達成される。意識のある患者
がアデノシンによつて治療される状態の例としてはバイ
パス手術に伴なう心臓バイパス移植片の閉塞防止、心臓
摶出量の低い患者の心臓摶出量の増加およびシヨツクに
対するドーパミン治療の補助薬としてアデノジンの使用
が挙げられる。
以下の例によつて、本発明によるアデノシンの連続静
脈内注入の詳細な適用をより詳しく説明する。
例 I 麻酔中のコントロールされた低血圧 手術中、しばしば患者の血圧を減少させることが望ま
れる。例えば、脳動脈瘤の離断とクリツピングの場合、
破裂と出血の危険を最小限にするために動脈瘤壁の張力
を減少させるコントロールされた低血圧が望まれる。ま
た、コントロールされた低血圧は、他の形態の手術中で
の出血を少くさせるために用いられる。
本発明以前には血管拡張剤、例えは、ニトロプルシド
ナトリウムやニトログリセリンがこの目的に用いられて
いたが、両者とも欠点を有している。例えば、ニトロプ
ルシドナトリウムはタキフイラキシーを来たすかあるい
はアンギオテンシンの放出によつて、ニトロプルシドの
投与量を経時的に増加させる必要がある。さらに、ニト
ロプルシドの使用に伴つて反動性高血圧が認められてい
る。ニトログリセリンは作用開始の遅いことおよび予測
できない作用を有することを特徴とする。
アデノシンは手術中血圧を低くコントロールするのに
著しく効果的な薬剤であることが見出された。アデノシ
ンは、有効量で投与されると、その短い半減期のため迅
速に終了されうる、非常に速かな血圧低下作用を有して
いる。さらに、アデノシンは、明らかに腎臓のレニン−
アンギオテンシン系を遮断することにより、低血圧を妨
げるる傾向にあるアンギオテンシンの生成を妨害するの
でタキフイラシーを生じない。同じ理由で、注入中止後
の反動性高血圧は避けられる。
このために、典型的にはアデノシンは所望の低血圧作
用を達成するのに十分な量(あるいは割合)で左尺側皮
静脈または中心静脈から静脈内に投与される。左橈骨動
脈のカニユールによつて測定される平均動脈血圧の40mm
Hgまでの低下が、重大な副作用なしに容易に達成される
ことが見出されている。特に、患者が麻酔されている場
合は、房室系伝導のブロツクが全く認められない。
低血圧のコントロールに用いられるアデノシンの実際
の血漿レベルは個々の患者、患者の年令、そして所望さ
れる低血圧の程度のような要因によつて変わるだろう。
しかし、原則として40〜50mmHgまで平均動脈血圧を低下
させることは、体重1Kgあたり毎分約0.2〜約0.35mgの割
合でアデノシンを投与することにより達成される。所定
程度の血圧低下を達成するのに要求されるアデノシンの
量は、ジピリダモールの如きアデノシン吸収抑制剤が患
者に投与される場合には減少することができる。アデノ
シンが人間にコントロールされた低血圧を引き起こすの
に有用であるという可能性は、犬の実験に基づいたKass
ell他の「J.Neurosurg.,58:69−76(1983)」によつて
示唆されていた。しかし、この研究は、ジピリダモール
ール、すなわちアデノシンの細胞吸収を抑制することに
よつてアデノシンの作用を強化する別の血管拡張剤、の
投与中に行なわれた。ジピリダモールの投与量(1mg/K
g)は多く、事実平均動脈血圧を20%、減少させた。次
にアデノシンの血圧低下作用が、このジピリダモールの
血圧低下作用量に基づき研究された。平均動脈血圧40mm
/Hgまで血圧を低下させることは50μg/Kg/分の投与量
で、標準塩水100ml当り、アデノシン0.4gの注入で誘発
されかつ維持されたことが報告されている。試験でジピ
リダモールを行ない場合、低血圧を誘発させるのに5〜
10mg/Kg/分が必要とされ、それによつて負荷される液体
量が過剰になつた。Kasselらは犬に低血圧を誘発するの
は困難であり、そして「ジピリダモールの相乗作用なし
のアデノシン単独で、液体量を過剰にしなくても、人に
低血圧を誘発するのに十分であろう」と推測した。前記
したように、人での低血圧の効果的誘発はほんの0.2か
ら0.35mg/Kg/分すなわち、犬の有効量よりも30〜50倍低
いアデノシンの投薬レベルで達成される。このような低
い割合はKasselらの情報から予測することは困難であ
る。
ヒトに低血圧コントロールをなすためのアデノシンの
連続注入を示すための研究において、脳動脈瘤手術が予
定され、心肺の病歴のない10人の患者(7人は男性、3
人は女性、35〜58才)が選ばれた。
手術の1時間前に、患者にはジアゼパム(10〜20mg)
があらかじめ経口投与された、アトロピン(0.5mg)と
ドロペリドール(0.1mg/Kg)が、麻酔の誘発に先立ち静
注された。麻酔の招来はチオペンタール(5mg/Kg)、続
いて作用期間がより長く鎮痛作用が1/10であることを除
けば、フエンタニールと薬理作用の似た合成阿片剤であ
るフエノペリジン(1〜2mg)を用いて開始された。
臭化パンクロニウム(0.1mg/Kg)を投与して気管内挿
管法を容易にした。必要に応じ、麻酔はフエノペリジン
およびドロペリドールの追加投与によつて維持された。
ドロペリドールの総量は0.2mg/Kgを越えず、麻酔の最初
の2時間以内に投与された。フエノペリヂンは血圧が麻
酔前レベルを越えないようにする為に定期的に追加され
た(大体1mg/30〜60)。過渡呼吸を調節するために、Pa
Co2値を大体30mmHg(±1.5/SEM)に維持するため、酸素
中の60%N2Oの加湿ガス混合物を用いた。マンニトール
(1〜1.5g/Kg)が手術開始時(例えば、低血圧コント
ロールの1〜2時間前)に通常通り与えられた。患者は
水平抑臥位で手術された。
1.2mmのプラスチツク製カニユーレが全身動脈血圧(M
ABP)を監視し、動脈血を採取するため、左橈骨動脈に
挿入された。球状の先端で、流動方向を向いた4重の内
腔を有するSwan−Ganzカテーテル(型93A−831−7.5F,V
IP)が左尺側皮静脈を通して経皮的に挿入され、その肺
動脈に於ける正確な位置は圧力の追跡によつて定められ
た。カテーテルは、平均、右心房圧(RAP)、平均肺動
脈圧(PAP)、および平均肺毛細血管楔圧(PCWP)の監
視、心臓摶出量の測定と混合静脈血の採取、およびアデ
ノシンの注入のために用いられた。
もう1本のプラスチツク製カニユーレが血液採取のた
め、右頚静脈球に、逆方向に経皮的に挿入された。正確
な位置はX−線で確かめられた。
ECGは標準胸部(V5)誘導で監視された。心摶度数は
R−R間隔から測定された。血圧は、胸廓中央部におか
れた交換器により測定された。心臓摶出量(QT)は熱希
釈技術を用いた心摶出量計算機(Edwards Lab.model 95
10)を用いて3回測定された。1℃で10mlの等張ブドー
糖が、温度指示薬として用いられた。ECG、心摶度数、
血圧、および熱希釈曲線は、Grass ポリグラフに記録
された。
血液ガスは適当な電極を用いpH、PCO2およびPO2につ
いて測定された(Radiometer,Copenhagen)。血色素濃
度は分光測定により測定された。アデノシンとその代謝
産物の測定のための試料は、Sollevi氏他、「Acta Phys
iol.Scand.」120:171−76(1984)に記載された方法で
採取された。アデノシンおよびイノシンは、Fredholm氏
他の「J.Physiol.(London)313:351−67(1981)記載
のHPLCにより精製および分析された。ヒポキシサンチ
ン、キサンチン、および尿酸は、Schweinsberg氏他の
「J.Chromatogr.」181:103−7(1980)記載の方法に従
いHPLCにより分析した。ジピリダモールの動脈レベルは
HPLC(「J.Chromatogr.」162:98−103(1979))によつ
て測定された。血中乳酸塩は、Tfelt−HansenおよびSig
gard−Andersen(「Scand,Clin.Lab.Invest.」27:15−1
9(1971))の方法に従い測定された。
測定および血液試料採取は低血圧期の直前、低血圧期
中のできるだけ遅い時期(注入終了1〜5分前)、およ
び低血圧期後の大体30分に行なわれた。
ジピリダモール(5mg/ml)はコントロールされた低血
圧の導入約20分前に、(5〜10分間以上かけて、0.3〜
0.4mg/Kg)静脈内注入された。この量のジピリダモール
は、低血圧期中に血漿中に臨床的に適切なレベルを生ず
る(1.2±0.3μM,SEM)(Pedersen,「J.Chromatoge.」1
62:98−103(1979)参照)。
アデノシン(等張食塩溶液中5mM,1.34mg/ml)は連続
注入(Critikonローラーポンプ、2102A、上大静脈)に
よつて毎分0.01〜0.32mg/Kg(=0.14±0.04 SEM、8.0
±2.7mg/分に相当)の速度で12〜71分間(=33±3 SE
M)で投与された。注入は毎分0.01mg/Kgの割合で開始さ
れ、求められるMABPレベルである40〜50mmHgに達するま
で15秒間隔で2倍にされた。注入されるアデノシン溶液
の対応する容量は毎分0.5から17ml(=6±25 SEM)
の範囲であつた。平均低血圧期は32±8分であつた。総
アデノシン量は1.5gを越えなかつた。血清クレアチニン
は、手術前と手術に続く2日間測定された。標準ECGは
手術前日と手術翌日に記録された。
全身血管抵抗(SVR)は、式 により導かれ、肺血管抵抗(PVR)は式 より導かれた。
酸素含有は、式SO2*×1.34×Hb+PO2×0.03より(SO
2*は酸素飽和度)導かれた(Foex氏他の「Br.J.Anest
h.」42:803−4(1970)参照)。動静脈酸素含有量差
(AVDO2)が測定されそしてAVDO2およびQTの生成物とし
ての総酸素消費量(VO2)を計算するために用いられ
た。
本研究の結果は、表I〜IVにまとめてあり、表中のデ
ータは平均±SEMとして表示される。統計的有意性(対
照1対アデノシン、および対照1対対照2)は対のデー
タに対するスチユーデント(Student)のt−テストに
よつて判定された。0.05未満のP量が有意であるとみな
された。
9人の患者のプリンレベルはアデノシンによるコント
ロールされた低血圧期の前、中および後に測定された。
結果は表Iにまとめられている。
表Iから明らかなように、アデノシンは基礎状態で10
-7Mの範囲で存在している。アデノシンの連続注入は、
動脈のアデノシンレベルを2.45±0.65μMに増大させ
た。キサンチンと尿酸レベルは影響を受けなかつたのに
対し、アデノシンの代謝産物であるイノシンおよびヒポ
キサンチンは注入中に増加した。一度所望の血圧レベル
に到達すると、注入速度は低血圧期全体を通じて一定に
保持できた。注入終了後、動脈アデノシンレベルは、3
〜9分以内に対照値まで戻つた。イノシンは循環から比
較的ゆつくりと排出され、注入後20〜40分間は基礎レベ
ルよりも少し上であつた。
中心血行力学的変数は10人の患者全員においてコント
ロールされた低血圧期前、中及び30分後に測定され、表
IIにまとめられている。
ジピリダモールの注入は、5人の患者で約10mmHgずつ
MABPを減少させた。アデノシン注入開始時において、MA
BPは、表IIに示されるように、前ジピリダモールレベル
とは有意に相異してはいない。アデノシンは、1〜2分
以内で46mmHg(43±3%)にMABPを減少させている。
MABPの減少は、収縮期及び拡張期圧の両者の並行した
減少によつて引き起こされた。MABPは、低血圧期全体を
通じて安定していた。心臓摶出量は、心摶度数の9±2
打/分なる小さい増加と並行して4.9から6.9/分(44
±9%)に増加した。PVRが変化しなかつたのに対し、S
VRは16.7から6.2mmHg/.分に減少し、これは61±3%
の減少に相当する。RAP、PAP、及びPCWPはアデノシンの
影響を受けなかつた。
注入中止後、MABPは1〜5分以内にもとに戻つた。MA
BPはコントロールされた期間中よりも、低血圧期間後に
一貫して大体10mmHg高かつたが、反動性高血圧は起こら
なかつた。しかし、低血圧期後のMABPはジピリダモール
投与前のMABPよりも有意に高くなかつた。心摶度数、QT
およびSVRはMABPの回復と同時に速やかに対照レベルに
戻つた。
コントロールされた低血圧期の前、中、及び30分後の
9人の患者の酸素含有量、消費量、及び乳酸塩濃度は表
IIIにまとめられている。
表IIIより、動脈酸素圧は、アデノシンによる低血圧
期の間、変化しないままであることがわかる。VO2は、A
VDO2が37±5%減少しているのに伴い13±4%減少して
いる。動脈乳酸塩濃度は低血圧の影響を受けなかつた。
脳のAVDO2は同様に37±13%減少しているが一方動脈−
頚静脈の乳酸塩含有有量差は未変化であつた。
低血圧機経過後、代謝変数は、動脈乳酸塩濃度におけ
る少量の増加を除けば対照レベルに戻つた。
手術翌日のECGは変化しなかつた。平均血清クレアニ
ンレベルは術前83±4μMであり、術後の最初の2日間
は70±3および71±4μMであつた。
アデノシン注入割合は低血圧期間中一定であり、この
ことはタキフイラシーが生じなかつたことを示唆する。
上記のテスト後、等張食塩中の20mMアデノシン溶液
が、ジピリダモールでの前処理が省略された以外は前記
と同様の方法を用いて50人の外科手術患者に投与され
た。上記と同様の血行力学的作用が0.2〜0.25mg/Kg/分
なるアデノシン量で観察された。表IVに示されるように
左右心臓充填圧の維持と結びついたアデノシンを用いて
得られた心臓摶出量の高まりはニトロプルシドナトリウ
ムまたはニトログリセリンを用いて得られたコントロー
ルされた低血圧下の血行力学的効果と対照的である。
前記の記載から、麻酔中のアデノシンの連続注入は同
時に末梢血管抵抗を減少させ、心臓摶出量を増加させ、
心摶度数を穏やかに増加させる一方でタキフイラキシー
の形跡なしに血圧を有意に減少させうることが明らかで
ある。
このことは、アデノシンが動脈抵抗血管系の拡張によ
つて血圧低下剤として作用することを示唆する。対照的
に、ニトロプルシドナトリウムおよびニトログリセリン
は前−および後−毛細血管拡張の両者による血圧低下を
引き起こす。加えて、アデノシンによるコントロールさ
れた低血圧は、ニトロピルシドによつてもたらされた低
血圧よりも良好に組織の酸素圧を保持する。
使用されたアデノシンレベルに於て、麻酔中にこれら
患者の房室伝導遮断が起こらなかつたことは特筆すべき
である。事実、アデノシンはボーラスの形態でA−V伝
導を特異的にブロツクする為に用いられる。明らかにア
デノシンの最大血漿濃度は、ボーラス注入による場合は
これらの連続注入中に得られる定常状態レベルよりもか
なり高い。
例 II 高血圧発症のコントロール アデノシンの連続注入または、外科手術中に発生する
高血圧発症のコントロールにも用いられ得る。かかる発
症は、例えば肺浮腫および死を惹起しうるカテコールア
ミンの存在によつて特徴づけられるクローム親和細胞腫
の手術中にカテコールアミンが放出される結果としてお
こり得る。現在、この状況は、α−及びβ−アドレノセ
プター遮断剤または血管拡張剤を予め投与することによ
つて予防的に処置されるが、作用はしばしば不十分であ
る。今、カテコールアミンにより引き起こされた高血圧
発症の場合に、アデノシンの迅速な注入により速やかに
血圧が正常値に戻り、そして発症が去るまで容易に正常
圧を維持し得ることが見出された。かかる高血圧発症の
制御に効果的なアデノシン量は、高血圧の程度の如何に
よるであろう。しかし、一般に低血圧のコントロールに
有用であると判明した量の約半分、すなわち毎分アデノ
シン約0.1〜約2.0mg/Kgの範囲である。
例 III 虚血性心疾患における冠循環の改善 腹部血管手段、例えば大動脈瘤の手術を要する患者も
またかかる手術中に、しばしば虚血性心疾患、または心
臓組織への血流不全という望ましくない合併症を招来す
る可能性がある。従つてイソフルランおよびニトロプル
シドのような血管拡張性質を有する薬物についてかかる
手術中に心筋血流を増加させそして未詳血管抵抗を減少
(後負荷減少)させるための使用の可能性が研究されて
きている。しかし、それらは冠血流については何ら有利
な作用を有していないことが見出されており、事実冠血
流を減少させうる。これと対照的に、連続注入により投
与されたアデノシンは、心筋血流の増加に非常に効果的
であることが見出されており、そしてかかる使用に於
て、心摶出量の増大を伴つている。
かかる応用に対し、アデノシンの投与割合は、10〜20
%より多い血圧減少がないようにすべきである。一般的
には、これはアデノシン0.05〜約0.1mg/Kg/分の準位の
投与割合を用いることによつて達成される。かかる場
合、心筋血流は2倍になることが見出されており、心摶
出量は10〜20%増加し、そして血圧は10〜20%減少し、
全てにおいて酸素消費量の変化及び心電図に虚血の徴候
はなかつた。
例 IV 冠血管拡張 アデノシンが、有意な血圧低下を引き起こさない割合
での注入により投与される場合、麻酔されていない、及
び麻酔下の患者に於て臨床的に有用な局所作用を有する
ことが見出された。
例えば血圧低下レベルの10〜15%の準位の投薬量(例
えば、0.02〜0.05mg/Kg/分)のアデノシンは、明らかに
選択的冠血管拡張ゆえに冠バイパス手術に対する有効な
補助薬であり得る。手術中における移植片の血流が低い
場合に冠動脈移植片が手術後によりしばしば閉塞するこ
とが報告されている(Groudin氏他の「Circulation」4
2:Suppl3:106−111(1970)参照)。手術後に投与され
た低薬量のアデノシンは、房室伝導に有意な作用を及ぼ
すことなく移植片の血流を増加させることが判明した。
この目的のためのアデノシンの低薬量投与は適当な移植
片血流を生じさせて閉塞の危険を減少させる必要のある
間、実施され得るが、通常その期間は手術後の48時間を
超える必要はない。
冠移植片の閉塞を抑制する為のアデノシンの使用を調
査する為に計画された研究において、9人の患者(45〜
65才、全員β−遮断剤を服用)が、冠動脈手術中に調査
された。モルヒネ(10〜15mg)及びスコポラミン(0.4
〜0.6mg)を予め投薬した後、フエンタニル(30mcg/Kg
体重)によつて麻酔した。パンクロニウム(0.1mg/Kg体
重)が気管内挿管を容易にする為に与えられた。麻酔は
フエンタニール毎時0.5mg、酸素中のN2O(50%)及びド
ロペリドール(0.1mg/Kg体重)を用いて維持された。バ
イパス期間中にチオメブマール(5mg/Kg体重)が与えら
れた。亜酸化窒素はバイパス後は用いられなかつた。体
外循環(ECC)は、ローラー・ポンプ及び結晶質溶液を
備えたShileyのバブブ酸素供給器を用いて行なわれた。
ECG(修正されたV5)、動脈線及びSwan−Ganzカテーテ
ルが監視及び血行力学的測定に用いられた。バイパス移
植片(n=15、内側乳房及び静脈移植片)に於ける血流
は、適切な寸法の矩形波電磁流量探針(Nycotron 732)
を用いて測定された。調査はECC終了後20〜30分間行な
われた。対照期(5分)後、アデノシン(5.3mg/ml、臨
床溶液)が、平均動脈血圧の約10%の減少を誘発させる
ために中心静脈に連続注入された(約30〜50μg/Kg/
分)移植片の血流はアデノシンの注入前及び10または30
分の注入中、そして最後に続く5分間の対照期中に連続
的に測定された。データは平均±SEMであらわされ、相
異は先行する期間に対するStudent′sの対t−テスト
を用いて検査された。
本研究の結果は表Vにまとめられている。
表Vから明らかなように、平均動脈圧を12%を減少さ
せるレベルである49±4μg/Kg/分のアデノシン量が心
臓摶出量を12%増加させそして移植片の血流を倍加させ
た。同時に、心摶度数、平均肺動脈圧、中心静脈圧、摶
動指数及び左心室摶動仕事指数は実質的に未変化のまま
であつた。移植片の血流量はアデノシン投与を終了する
とその本来の量に回復した。不整脈は観察されなかつ
た。
このことは、低い投与割合(30〜50μg/Kg/分)での
静脈内アデノシンは、明らかに冠血管系のアデノシンの
選択的血管拡張作用ゆえに、心筋の仕事量を増大させる
ことなく移植片血流の著しくそして再現可能な増大を引
き起こすことを示す。
例 V 心臓摶出量の増加 前記のデータから明らかなように、静脈内注入された
アデノシンは心臓の仕事を増大させることなしに、心臓
摶出量を増加させる能力を有する。このことは、患者の
血行力学的状態に応じて心臓摶出量を減少させうる他の
血管拡張剤、例えばニトロプルシド・ナトリウムと対照
的である。結果として、アデノシンは、例えば心臓手
術、梗塞などの為、心臓摶出量が低い状態にある患者の
心臓摶出を刺激するために用いられ得る。これは明らか
に前負荷への有意な作用を及ぼすことなく後負荷を減少
させるアデノシンの能力の為である。対照的に、ニトロ
プルシドは、後負荷と前負荷の両者を減少させ、そして
ニトログリセリンは主として(90%)前負荷を減少させ
ることに効果があり、後負荷に対しては最低の作用しか
有していない。
この適用にとつての有効量は、移植片血流の増加に用
いられる量と低血圧コントロールの為に用いられる量の
中間である。典型的には、有効量は40〜80μg/Kg/分の
準位である。治療期間は、心臓を援助するのに要するだ
けの期間にし得る。また、アデノシン投与を終了した場
合に心臓摶出量は、アデノシンでの処置期間中における
量以下であるが、しばしば処理前の心臓摶出量以上のま
まであることも見出された。
この点で、アデノシンは心臓原性シヨツクに対するド
ーパミン治療の補助薬として価置がある。ドーパミンは
心臓活動を刺激し、それによつて血圧を増大させる為に
シヨツクの患者にしばしば与えられる。アデノシンは全
身血圧に累を及ぼすことなしに末梢抵抗を調節し、それ
により心摶出量を増大させるために心臓ドーパミンと一
緒に投与され得る。
アデノシンは心摶度数を有意に増大させることなしに
後負荷を減少させ得るので、この点に関してその活性が
独特である。これと対照的に、心臓後負荷を減少させる
ためにこれまで用いられた薬剤例えば、ヒドララジン及
びプラゾシンは心摶度数を増大させる。
例 VI 心肺バイパス期間中の血小板保護 アデノシンの連続注入は、また心肺バイパス期間中血
小板の保護に有用であることも見出されている。そのよ
うな使用の為には、アデノシンの投薬量を有意な血管拡
張を生ずる量以下に維持することが望ましく、約100μg
/Kg/分の投与割合が効果的であることが見出されてい
る。これと対照的に、血小板凝集を阻害する為に用いら
れるプロスタグランジンであるプロスタサイクリンは冠
バイパス手術中重い全身的血管拡張及び低血圧を生ず
る。
冠動脈バイパス手術の予定された25人の患者が無作為
に2つのグループに割り当てられた。一方のグループに
はアデノシンが注入され(n=13)、他方のグループに
はプラシーボが注入された(n=12)。
凝固状態についてのルーチンテストは全ての患者に於
て正常であり、誰も、血小板機能に影響することが知ら
れた薬物を摂取しなかつた。高投薬量のフエンタニル
(100〜150μg/Kg)または平衡麻酔(チオペンタール、
フエンタニル、ジアゼパム及びN2O/O2)のどちらかによ
る静脈麻酔が用いられた。
心肺バイパス(CPB)中、70mmHg以上の平均動脈血圧
(MABP)は、最終段階または再び暖める時を除いて、血
管拡張剤ニトロプルシドナトリウム(SNP)を用いて治
療された。CPBはSARNローラーポンプ、及び2000mlの結
晶質溶液(75mgヘパリン)を備えたShiley酸素供給器
(100A)を用いて行なわれた。潅流速度は体表面1m2
り約1.8mlに保たれた。穏やかな低体温(25℃)が導入
された。心臓の麻痺は(カリウムを20mM/迄加えた)
リンゲル液を用いて得られた。ヘパリン(3mg/Kg)がカ
ニユーレ挿入前にボーラス注射として投与された。ヘパ
リンの作用は活性凝固時間の測定により監視された(He
mocron Int.Technidyne Corp,USA)。この時間(AC
T)は、CPB中、全ての患者で400秒よりも大であつた。C
PB終了時に、ヘパリンの作用は、プロタミン(c.1.3mg/
mgヘパリン)で中和された。ACTはプロタミン注射後10
〜20分間検査された。ACT値は120秒で十分であると見な
された。
血小板数(Linson 431A細胞計数器)およびヘマトク
リツト値が、麻酔前、開胸術後、CPB期間中10、20、4
0、60、80及び100分、CPB後30分及び手術翌日に動脈か
ら採取した試料で測定された。血小板数は麻酔前レベル
の百分率で表わされそして血液希釈に対し補正された。
MABPは、橈骨動脈に導入されたカテーテルを通し連続的
に監視された。すべての患者はCPB中高張マンニトール
(1〜1.5g/Kg)が投与されそして尿の産生をCPB1分当
りのmlとして計算した(表VI)。
手術中の血液損失及び輸血は研究例の少なさおよび多
くの外科医が関与しなければならないため、グループ間
で比較できなかつた。術後の出血量は手術の終了から翌
朝迄チユーブドレナージから血液損失として測定され
た。アデノシンを投与されたグループの患者の1人は、
CPB後6時間以内の外科的の理由(移植片の吻合での縫
合不全による大量出血のため)による再手術のため除外
された。
アデノシン(5.3mg/ml、臨床溶液)がCPB期間中、上
大静脈中に100μg/Kg/分の割合で注入された。アデノシ
ン量は、血管拡張投薬量−応答が観察された5つのパイ
ロツト例に基づく。全身の血管拡張を生じない最大注入
割合が本研究に選ばれた。6例に於て血漿アデノシンレ
ベルは、高性能液体クロマトグラフイー(HPLC)(Fred
holm氏他、「J.Phisiol.」(London),313:351−67(19
81))により、動脈及び静脈(酸素供給器への静脈ライ
ン)血で測定された。アデノシンの代謝産物であるイノ
シシ、ヒポキサンチン、及び尿酸もHPLCにより測定され
た。試料は、CPB期間中の10、20、40及び80分、およびC
PB期間の20分後に、前述(Sollevi,「Acta.Phisiol.Sca
nd.」121:165−72(1984)のようにして採取された。
結果は、以下の表VI及びVIIにまとめられており、表
中でデータは平均±SEMで表示されている。統計的有意
性(対照対アデノシン群)は、不対データに対するStud
entのt−テストで判定された。グループ内の有意性に
ついては、Wilcoxon Pank Sumテストが用いられた。P
が0.05未満のとき、有意であるとみなされた。
表VIIIに示されるように、血小板数は2つのグループ
で麻酔前と同じでありそして麻酔と開胸術により変化し
ていない。対照グループでは血小板数は、CPBのはじめ
の40分間、速やかにそして著しく低下しそしてCPB期間
中および後に有意に減少したままであつた。アデノシン
注入中、初期の血小板減少は少なく、そしてCPB中20及
び40分でのみ顕著であつた。CPBの60分からCPB終了時ま
でと、CPB後30分に於て、血小板数は麻酔前の値と有意
に異なつてはいなかつた。CPB期間全体およびCPB後30分
で血小板数に、有意なグループ間の差が存在した。手術
翌日に血小板数は両方のグループで、グループ間の有意
な差なしに、著しく減少した。
表VIIに示されるように、動脈及び静脈のアデノシン
レベルは、CPB前は正常な0.3μMの範囲であつた。アデ
ノシン注入で静脈血漿濃度が2〜10μMに上昇したが、
動脈レベルでは最初のCPB期間中大体2倍になつた。最
初のアデノシンの代謝産物であるイノシンだけが注入中
一貫して上昇した。
全てのパラメーターは、CPB後20分以内に対照レベル
まで戻つた。
平均動脈血圧(MABP)は、CPB中2つのグループ間で
有意には異なつていなかつた。しかし、プラシーボグル
ープでは、7人の患者が、MABPを70mmHg以下に保つた
め、ニトロプルシドナトリウムの注入(<5μg/Kg/
分)を要した。アデノシンを注入したグループではどの
患者も血管拡張剤による治療を要しなかつた。CPB後、
アデノシングループの患者は、やや低いMABPを示した
が、手術の終了時でグループ間に何ら差異がなかつた。
CPB中の尿産生は、アデノシン・グループで250ml/時で
あり、対照グループでは500ml/時(P<0.01,表VI)で
あつた。血清クレアチニンレベルの一過性上昇(正常範
囲より10〜20%上)が、術後2日間、アデノシン・グル
ープの2人の患者と、対照グループと1人の患者に見出
された。術後血液損失はグループ間で異なつていなかつ
た。
患者は全員、術後24時間以内に抜管されそしてすべて
が正常に回復した。神経学的合併症の臨床的徴候は何ら
みられずそしてすべての患者が退院した。
例 VII 心臓麻痺液へのアデノシンの添加 心臓麻痺は、心臓を止め、心肺バイパス期間中の心筋
酸素消費を減少させるために開心手術の間誘発される。
これは現在一般に、冠血管に注入される高濃度のカリウ
ム(20ミリモル/、正常血清レベルの4倍)を含有す
る氷冷溶液によつて達成される。高濃度のカリウムは効
果的に不全収縮を起こすが、また、血管内皮に損傷を引
き起こすこともよく知られている。後者は、永久的な冠
血管狭窄症を引き起こす可能性がある。
前記のデータは、人間の患者に於て、アデノシンが冠
血管拡張剤として有効であり、循環している血小板を保
護することを明確に示している。アデノシンは、また、
種々の組織中で、高エネルギー燐酸塩(ATP)中に組み
込まれることが知られている。さらに、DruryおよSzent
Gyorgyi(「J.Physiol.」(London)68:213(1929)の
早期の研究以来、高濃度のアデノシンは心ブロツクを生
じ得ることがよく知られている。
これらの4つのアデノシンの作用は全てヒトの患者に
心臓麻痺を誘発させている間有用である。第一に、血管
拡張作用は、カリウムの血管収縮作用を打ち消し、それ
によつて心臓麻痺液の投与に要する時間を減少させ得
る。このことは、より速やかな冷却およびそれによるよ
り速やかな不全収縮をもたらすであろう。第二に、血小
板活性化に及ぼすアデノシンの抑制作用により、この冷
却期中の冠循環における血小板凝集が阻止され得る。第
三に、心臓が適切な酸素供給を得ることなしに摶動して
いる場合、アデノシンは、この状態下で、基質として役
立ちそして、心筋のATP中に組み込まれ得る。最後に、
高濃度のアデノシンのよく知られたA−Vブロツク作用
は、不全収縮の導入に用いられ得る。かくして心臓麻痺
液中のカリウム濃度は、血管内皮を損傷しないレベルに
まで減少され得る。
これらの4つのアデノシンの作用はすべて心臓麻痺の
導入中に冠循環中へ0.5〜1.5mg/mlのアデノシンを含有
する心臓麻痺液を投与することにより、達成され得る。
通常、アデノシンが、この目的のために大動脈根を通し
て投与される場合、心臓麻痺液は毎分50〜150mlの割合
で約10から約20分間にわたり投与されよう。

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】アデノシンを有効成分として含有する選択
    的冠血管拡張剤。
  2. 【請求項2】有意な低血圧を生起させない請求の範囲第
    1項記載の選択的冠血管拡張剤。
  3. 【請求項3】冠動脈移植片の血流を増加させる請求の範
    囲第1項または第2項記載の選択的冠血管拡張剤。
  4. 【請求項4】心摶出量を増加させる請求の範囲第2項記
    載の選択的冠血管拡張剤。
  5. 【請求項5】心臓麻痺用カリウム溶液に添加するための
    請求の範囲第1項記載の選択的冠血管拡張剤。
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