【発明の詳細な説明】
サイクリン複合体の転位およびそれに関連する使用
発明の背景
腫瘍形成は調整解除された細胞の成長および分裂に特徴がある。必然的に細胞
成長を制御する分子経路はこれら細胞分裂を調整する経路と相互作用するはずで
ある。しかし最近までそのような関連性に光があたる実験的証拠が得られなかっ
た。サイクリンAはウイルス的に形質転換した細胞中のアデノウイルス発癌性タ
ンパク質E1Aに関連して見い出された(Giordonaら、Cell 58:981(1989):
およびPineaら、Nature 346:760(1990))。初期の肝細胞腫瘍では、ヒトサイ
クリンA遺伝子が肝炎Bウイルスの断片の組込み部位にあり、この断片がサイク
リン転写およびインビトロで分解しないキメラウイルスサイクリンAタンパク質
の活性化を導くことが判明した(Wangら、Nature 343:555(1990))。細胞周期
遺伝子は当然最も強く発癌遺伝子に関連しており、これはヒトサイクリンD1に
もあてはまる。これは、始めは酵母G1サイクリン欠失株(Xiongら、Cell 65:6
91-(1991):およびLewら、Cell 66:1197(1991))の遺伝的相補を介して、そ
の転写がマウスマクロファージ中のCSF−1により刺激される細胞性遺伝子と
して(Matsushineら、Cell 65:701(1991))、および副甲状腺腫瘍中で転位し
た推定される発癌遺伝子PRAD1中から単離された(Montokuraら、Nature 35 0
:512(1991))。さらに2つのヒトD−型サイクリン、サイクリンD2および
D3が引き続きPCRおよび低ストリンジェンシーハイブリダイゼーション法を
使用して同定された(Inabaら、Genomics 13:565(1992);およびXiongら、Gen omics
13:575(1992))。サイクリンD1は遺伝的にbcl−1発癌遺伝
子に結合し(数種のB−細胞リンパ腫および白血病において免疫グロブリン遺伝
子エンハンサーへの転座により活性化される遺伝子座)、そしてヒト乳癌の15
−10%および頭部および頸部由来の偏平上皮細胞癌の25−48%で遺伝子増
幅部位に位置していた。
サイクリンは海中無脊椎動物の卵の受精後にその強力な合成に起因して発見さ
れたタンパク質である(Rosenthal,E.T.ら、Cell 20:487-494(1980))。引き
続き有糸分裂時におけるポリペプチドの急激なタンパク質分解のために、初期の
開裂分裂中に2種のサイクリンAおよびBの量の変動が観察され、そこでそれら
の名前が付いた(Evans.Tら、Cell 33:389-396(1983);Swenson,K.I.らCell 47
:867-870(1986);Standart,N.ら、Dev.Biol.124:248-258(1987))。続いてサ
イクリン遺伝子がほとんどすべての真核種から単離され、多遺伝子族を構成して
いる(総説としてXiongら、Curr Biology 1:362(1991)を参照にされたい)。
細胞分裂の調整においてはサイクリンの受動的というよりむしろ能動的な関与
が、静的なサイクリンmRNAがカエル卵母細胞の活性化を引き起こし、そして
これらの細胞をM期に導入できたという観察により明らかになった(Swenson,K.
I.らCell 47:867-870(1986))。カエル卵母細胞の活性化はMPFとして知ら
れているM期誘導因子の合成と関連している(Masui,Y.およびC.L.Markert,J.Ex p.Zool
177:129-146(1971);Smith,L.D.およびR.E.Ecker,Dev.Biol.25:232-247
(1971))。MPFは触媒サブユニットがcdcプロテインキナーゼのカエル相
同物であるプロテインキナーゼである(Dunphy,W.Gら、Cell 54:423-431(1988
);Gautier,J.ら、Cell 54:433-439(1988);Arion,D.ら、Cell 55:371-378(19
88))。
現在までに同定されているサイクリンの中で、B−型サイクリンはc
dc2プロテインキナーゼの組込みサブユニットとして働くことにより有糸分裂
に作用することが示されている(Booher,R.およびD.Beach,EMBO J.6:3441-3447
(1987);Draetta,Gら、Cell 56:829-838(1989);Labbe,J.C.ら、Cell 57:253-
263(1989);Labbe,J.C.らEMBO JM.8:3053(1989);Meier,L.ら、EMBO J.8:2275
-2282(1989);Gautier,J.ら、Cell 60:487-494(1990))。A−型サイクリン
もcdc2キナーゼと独立して関与し、有糸分裂よりも分裂周期の初期に作用す
ると思われる酵素を形成する(Draetta,G.ら、Cell 56:829-838(1989);Minshu
ll,J.ら、EMBO J.9:2865-2875(1990):Giordano,A.ら、Cell 58:981-990(1989
);Pines,J.およびT.Hunter,Nature 346:760-763(1990))。無脊椎または脊椎
動物胚中の細胞の、および分子の研究は、特に子嚢菌酵母での遺伝的研究により
なされて来た。分裂酵母では、cdc13遺伝子はcdc2と共同作用して有糸
分裂への導入を調整するB−型サイクリンをコードする(Booher,R.およびD.Bea
ch,EMBO J.6:3411-3447(1987);Booher,R.およびD.Beach,EMBO J.7:2321-2327
(1988);Hagan,I.ら、J.Cell Sci.91:587-595(1988);Solomon,M.,Cell 54:73
8-740(1988);Gobel,M.およびB.Byers,Cell 54;433-439(1988);Booher,R.N.
ら、Cell 58:485-497(1989))。出芽酵母および分裂酵母の両方の遺伝的研究
では、cdc2(または出芽酵母のCDC28)が細胞周期中の2つの独立した
点で作用することが明らかになった、それは有糸分裂点およびいわゆる細胞周期
の“開始”点である(Hartwell,L.H.,J.Mol.Biol.,104:803-817(1971);Nurse,
P.およびY.Bissett,Nature 292:558-560(1981);Piggot,J.R.ら、Nature 298:3
91-393(1982);Reed,S.I.およびC.Wittenberg,Proc.Nat.Acad.Sci.USA 87:5697
-5701(1990))。出芽酵母ではCDC28タンパク質の開始機能は、
プロテインキナーゼの触媒サブユニットが、構造的に関連するAおよびB−型サ
イクリンの補助タンパク質と会合する必要もある。この第三クラスのサイクリン
はCLNクラスと呼ばれ、部分的に重複する遺伝子一族を含んで成る3つの遺伝
子が記載されている(Nash,R.ら、EMBO J.7:4335-4346(1988);Hadwiger,J.A.
ら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:62556259(1989);Richardson,H.E.ら、Cell 5 9
:1127-1133(1989))。CLN遺伝子は開始を実行するために必須であり、そ
してそれらが不在である場合は、細胞は細胞周期のG1期で休止することになる
。CLNIおよびCLN2転写物は細胞周期を通じて大量に振動するが、CLN
3転写物はしない。さらに、CLN2タンパク質はそのmRNAと平衡して変動
することが示された(Nash,R.ら、EMBO J.7:4335-4346(1988);Cross,F.R.Mol.Cell.Biol
.8:4675-4684(1988);Richardson,H.E.ら、Cell 59:1127-1133(1988
);Wittenbergら、(1990))。種々のサイクリンと関連することによりcdc
2/CDC28に与えられる正確な生化学的特性は完全に明らかではないが、サ
イクリン突然変異体の遺伝的研究は、それらが触媒サブユニットに“G1”およ
び“G2”特性を付与しているということを明らかに立証している(Booher,R.
およびD.Beach.EMBO J.6:3441-3447(1987);Nash,R.ら、EMBO J.7.:4335-4346
(1988);Richardson,H.E.ら、Cell 56:1127-1133(1989))。
cdc2およびサイクリンは胚および酵母中に見いだされただけではなく、ヒ
ト体細胞中にも見いだされた。cdc2/サイクリンB酵素の機能はヒト細胞中
でも他の種類の細胞中と同じであると思われる(Riabowol,K.ら、Cell 57:393-4
01(1989))。ヒトA型サイクリンもcdc2と関連して発見された。哺乳類細
胞中のCLN型サイクリンは未だに記
載されていない。細胞周期の調整およびそれらの相互作用に関与する要素をより
よく理解することは細胞複製をより理解し、そしてさらにその過程を変更または
制御することに貢献するだろう。
発明の要約
本発明は新規種類のサイクリン(D−型サイクリンと呼ぶ)の使用に関し、こ
れは哺乳類起源であり、すでに記載されたA、B、またはCLN型サイクリンに
関連するが明らかに別個のものである。特に本発明は酵母の細胞周期が開始する
のに必須なCLN−型遺伝子と置換することができると示された遺伝子によりコ
ードされているヒトサイクリンに関し、これは細胞周期が開始するのに必須なタ
ンパク質の欠失を相補し、そしてそのタンパク質構造に基づきA、B、またはC
LN型サイクリンの進化系図から異なる分枝に存在する。D−型サイクリンは真
核細胞中で、特にヒト細胞中で多くのサイクリン依存性キナーゼと会合すること
が示された。それらは3つのポリペプチドと共沈殿することも示された。それら
はサイクリン−依存性キナーゼ、特性がよく知られているDNA複製および修復
因子(すなわち増殖性細胞核抗原(proliferating cellnuclear antigen)すな
わちPCNA)およびみかけの分子量が21kDaであるポリペプチドである。
結果によるとD−型サイクリンCDK、PCNAおよびp21は四量体複合体で
存在し、これは成分(例えばサイクリンD1またはD3およびCDK2、CDK
4およびCDK5)の多くの種類の組み合わせ変異体をインビボで集合し、そし
て各四量体複合体は種々の細胞型の細胞周期で難解な種々の役割をもつことがで
きることが示唆されている。さらに、SV40のようなDNA腫瘍ウイルスによ
る細胞の形質転換はサイクリンD複合体の選択的なサブユニット転
位に関連することが発見された。サイクリンD、PCNA、CDKs(CDK2
、CDK4およびCPK5を含む)およびp21間の会合はDNA腫瘍ウイルス
またはその発癌遺伝子産物を哺乳類細胞中に導入することにより破壊される。特
に本明細書に記載するように、サイクリンD、PCNA、CDKs(CDK2、
CDK4およびCDK5を含む)およびp21間の会合はSV40腫瘍ウイルス
またはその発癌遺伝子産物である巨大T抗原(large T antigen)をヒト二倍体
細胞中(正常ヒト二倍体繊維芽細胞に例示される)に導入することにより破壊さ
れる。CDK4はサイクリンDおよびp21からの解離後、16kD(p16)
の新規ポリペプチドと会合するようになる。同様にサイクリンA複合体もサブユ
ニット転位を受ける。SV40の形質転換後、p21のサイクリンAとの会合は
減少するか、または完全に解離する。サイクリンAは次に19kDAポリペプチ
ド(p19)との複合体中に現れる。
したがって今、p21は正常な非形質転換細胞中でのみサイクリンキナーゼと
会合し、そしてp16およびp19ならびに他の関連したタンパク質は形質転換
細胞中に存在する細胞周期調整因子中に現れることが分かる。この知見はサイク
リンの活性を変化させて(直接的または間接的に)細胞分裂をモジュレート(mo
dulating)するためのさまざまな研究法の基礎として役立つ。これは細胞中のサ
イクリンの発現特異性、ならびにサイクリン、CDK、PCNAおよびp21に
より形成されると思われる四量体複合体の成分の多くの可能な組み合わせから、
細胞分裂のモジュレート(すなわち特定の細胞型での細胞分裂またはサイクル中
の特定の点を選択的に変化する能力)において特異性を提供する。特定の態様で
は、D−型サイクリンまたはA−型サイクリンが構成物である
四量体複合体の共通成分を妨害することにより(PCNAの妨害などにより)、
細胞分裂を非特異的に変化させることができる手段を提供する。
例えば本発明の治療法の一つの態様では、細胞分裂を変化させる方法として上
記四量体複合体を妨害または増強するか、あるいは複合体の構成員の活性を変化
させる。ここで直接的または間接的に複合体の形成を妨害または増強するか、あ
るいは構成物の活性を変化させる試薬を使用できる。例えば、上記のように触媒
活性をプロテインキナーゼの活性化を妨害することにより阻害することができる
。あるいはPCNA阻害剤を細胞周期の開始が阻害される細胞中に導入し、その
結果細胞分裂を抑制できる。PCNA阻害剤は間接的に(例えば転写または翻訳
を妨害することによりPCNAの生産を減少させる)、または直接的(例えばP
CNAに結合し、そして他の複合体の員と結合するのを妨害する)に作用できる
。p21の阻害剤も細胞中に導入でき、そして間接的または直接的にp21機能
および/または複合体の構成員に結合するのを妨害できる。タンパク質−タンパ
ク質相互作用(複合体成分間(2つ)または中(3つ以上))も変化させて(減
少または増強)、細胞周期に所望の効果を持つことができる(細胞分裂を減少ま
たは増加させる)。そのようなタンパク質−タンパク質相互作用を遮断する試薬
を使用できる。これらには低分子量阻害剤、複合体成分に結合する試薬(例えば
抗体)および成分の複合体を形成する能力を他のタンパク質で分解または破壊す
る試薬がある。もし四量体複合体の形成の増強を望むならば、試薬は複合体の構
成員が相互作用または結合する能力を増強する(例えば複合体の形成に必要なタ
ンパク質−タンパク質相互作用がより得られるように複合体の成分の構造を変化
させる試薬を細胞中に導入できる)。増強さ
れた複合体の形成は細胞中の四量体複合体の特定の構成員(1つまたは複数)の
数、活性または利用性を上昇させることによりもたらすことができ、すなわち形
成される割合およびその作用の利用性が増加する。
さらに、本発明は細胞の形質転換を診断する方法に関する。CDKs、サイク
リン、PCNAおよび低分子量ポリペプチド(例えばp21、p19およびp1
6)の間の相互作用を認識するモノクローナル抗体のような試薬を開発できる。
例えばp16およびCDK4の間の相互作用を認識する抗体を多くの細胞型の形
質転換を検出または診断するために使用できる。あるいは、CDC2、CDK2
、サイクリンAまたはサイクリンDを認識する抗体のような試薬をサイクリン複
合体のサブユニット組成(すなわちこれは細胞の形質転換の状態)を同定するた
めに使用できる。
本発明はまた記載した単離、診断または治療法に有用な試薬(例えばオリゴヌ
クレオチド、抗体、ペプチド)に関する。
発明の詳細な記述
サイクリンはサイクリン−依存性プロテインキナーゼ類(CDKs)と調和し
て、細胞周期進行中の極めて重要な転移および/または制限点を支配するために
機能する鍵となるタンパク質である。本発明は特定の細胞−サイクル過程の阻害
剤および/または活性化剤を開発するための方法および試薬を提供する。本明細
書に記載するように、正常な真核細胞中で、特にヒト細胞中で様々な種類のサイ
クリン(例えばA、BおよびDクラス)は多くの種々のCDKs、ならびに増殖
性細胞核抗原(PCNA)およびみかけ分子量が21kdのポリペプチド(p2
1)と、多くの型の複合体を形成するように会合することができる。例えば以下
に与える結果は、サイクリン類およびCDKsの組み合わせが、PCNAおよび
p21と一緒に少なくとも1つの四量体複合体の状態で存在し、成分の多くの組
み合わせの変更体がインビボで集合することを示し、(例えばサイクリンD1ま
たはD3とCDK2、CDK4およびCDk5との種々の組み合わせ)、そして
生成した各四量体複合体は、細胞周期または種々の細胞型中で複雑な様々な役割
を持つことができることを示している。したがって以下に記載するように、例え
ばサイクリンおよびCDKsとの間に形成された特定の複合体を選択的に破壊で
きる試薬を同定するためのアッセイを作成できる。
さらに、本発明は形質転換細胞を検出するための診断的アッセイおよび試薬を
可能にし、これは癌の検出に有用でありうる。以下では細胞形質転換がサイクリ
ン−CDK複合体の選択的なサブユニット転位と関連することを実証する。説明
するために、形質転換した細胞(ウイルス的または遺伝的異常による)では、サ
イクリンD/p21/CDK/PCNA複合体は破壊されている。例えばウイル
ス的に形質転換した細胞では、CDK4はサイクリンD、PCNAおよびp21
から完全に解離し、代わりに16Kdポリペプチド(今後“p16”という)と
会合する。サイクリンAまたはB1およびp21/CDK/PCNAを含む四量
体複合体も形質転換細胞中ではサブユニット転位を受ける。例えばPCNAおよ
びp21の両方はもはやCDC2−サイクリンB1二複合体とは会合せず、そし
てサイクリンA複合体はもはやp21を含まず、これは代わりに19kdタンパ
ク質(p19)に置き換わる。したがってそのような異常なサブユニット複合体
は細胞の形質転換を検出するために予報的に使用できる。例えば本発明は形質転
換細胞を同定するために、変
化した複合体の形成および/またはp16の発現レベルの上昇を検出するために
、抗体および核酸プローブを含む試薬を入手可能にする。
さらにp16は以下のサイクリン/CDK複合体、特にCDK4を含む複合体
の活性に対して阻害効果を発揮する。例えばp16はサイクリンD1/CDK複
合体のインビボ活性を阻害する。一般的に知られているように、サイクリンD1
は多種多様な増殖性疾患に関連してきた。したがって本発明はサイクリンD1の
発癌的な発現から生じる細胞の増殖の有力な阻害剤を同定する。
逆に、p16をp16のCDK4に結合する能力を減少させる試薬を同定する
アッセイに使用でき、これによりサイクリン/CDK4複合体の阻害を軽減でき
る。この態様では、CDK4/サイクリン複合体の再活性化は形質転換細胞中で
起こる細胞性の事象を破壊するか、あるいは平衡を失わせる。そのような薬剤は
腫瘍ウイルスにより形質転換した細胞中のCDK4複合体の活性化において治療
的使用に有効であり、例えば種々のウイルスが抑制した細胞周期チェクポイント
が増大し(p53のように)、そしてチェックポイントでの感染細胞を蓄積させ
るか、あるいはRbリン酸化の場合には細胞の死を引き起こすチェックポイント
を通過した未成熟な生育が起こるかもしれない。CDK5と命名されたサイクリ
ン−依存性キナーゼおよびCDK5をコードするDNAも本明細書に記載された
研究成果として利用可能である。CDK5はD−型サイクリン、PCNAおよび
p21と共沈殿することが示された。したがって本発明はCDK5機能および/
または複合体の他の構成員との会合を変化(増強または減少)させて、細胞の増
殖に影響を与えることができる。CDK5がD−型サイクリンに結合することを
妨害されるならば、
キナーゼの活性化が妨害されるであろう。これは以下に記載するように行うこと
ができた。1.正常細胞中でのサイクリン複合体
以下は、各々が細胞周期の中で、あるいは様々な細胞型で異なる役割をもつこ
とができる複合体をもたらす多くの組み合わせ変異体を有する可能性がある四量
体複合体を存在するとみなす上でD−型サイクリン変異体が少なくとも3つのさ
らなるペプチド(CDK、PCNAおよびp21)と関連しているとの発明につ
いて説明するものである。
以下の説明および実施例1に記載するように、免疫的手法はD−型サイクリン
が真核細胞中で有力な触媒サブユニット(例えばCDK2、CDK4およびCD
K5のようなCDKs)と会合することを明らかにするために使用された。さら
にこれらの方法ではD−型サイクリンおよびCDKは複製因子PCNAおよびみ
かけ分子量21kDaのポリペプチドと会合することが示された。
ヒトサイクリンD1は広範囲の増殖性疾患と関連して来た。本明細書に記載す
るようにヒト二倍体細胞において、特にヒト二倍体繊維芽細胞においてサイクリ
ンD1は多くの他の細胞タンパク質と複合体を形成する。それらは触媒サブユニ
ットCDK2、CDK4(以前はPSK−J3と呼ばれた)およびCDK5(同
じくPSSALREと呼ばれた)である。さらに21kDaおよび36kDaの
ポリペプチドはサイクリンD1と会合した状態で確認される。実施例1に記載す
るように、36kDaのタンパク質は増殖性細胞核抗原(Proliferating Cell N
uclear Antigen:PCNA)である。PCNAはデルタ−ポリメラーゼの必須のアク
セサリー因子であると説明されてきており、これはDNA複製の鎖を導き、
そしてDNAの修復に必要である。サイクリンD3も多くのプロテインキナーゼ
、本明細書に示すようにp21およびPCNAに会合する。D−型サイクリン、
CDK、PCNAおよびp21の四量体複合体の存在、ならびに多くの組み合わ
せ変異体(サイクリンD1、D3とCDK2、4および5との)がインビボで集
合できることが提案されている。これらの知見により、発癌と関連している推定
のヒトとG1サイクリンと、特性がよく知られているDNA複製および修復因子
とを結び付けて考えらる。(i)サイクリンDと会合するタンパク質の調査
サイクリンDと特異的に会合するタンパク質を確認するために、[35S]メチ
オニン−標識W138ヒト二倍体繊維芽細胞溶解物の抗−サイクリンD1免疫沈
降物を調査した(実施例1、実験法を参照のこと)。W138細胞をはじめにこ
の実験のために選択したのは、それらが合理的な高レベルのサイクリンD1およ
び低レベルのサイクリンD3 mRNAを発現する比較的正常な細胞系だからで
ある(Wonら、Proc.Natl Acad.Sci.(1992))。ヒト293の形質転換した第一
期胎児性腎臓細胞はすべての3種のDサイクリンmRNAおよび極めて低レベル
のタンパク質を発現するので対照として使用した(Xiongら、Cell 65:691-699(
1991))。W138細胞は容易に検出しうる、抗−サイクリンD1抗血清で免疫
沈降させることができる35kDaポリペプチドを発現する。サイクリンD1と
しての35kDaタンパク質の同定は、同じW138細胞溶解物と前−抗血清と
の免疫沈降物とを、同様な293細胞溶解物質と同様な抗−サイクリンD1抗血
清との免疫沈降物を比較することにより確認した。ヒト細胞中の3つの親密に関
連したサイクリンD遺伝子の存
在により、そして抗−サイクリンD1抗体の他のサイクリンDタンパク質に対す
る弱い交差反応から、35kDaバンドの確認はさらに部分的タンパク質溶解マ
ッピングにより調査された。エス.アウレウス(S.aureus)V8部分タンパク質
溶解物の35kDaバンドは、同様に開裂したインビトロで合成されたサイクリ
ンD1のパターンと同様であることが示されたが、サイクリンD2またはD3の
ものとは同様ではなかった。
サイクリンD1に対応する強い35kDaバンドに加えて、3つの他の主要バ
ンド(p36、p33およびp21)、ならびに1つの弱いバンドp31(ここ
で数字は外見上の分子量を示す)が抗−サイクリンD1沈降物中に特異的に出現
した。これらのポリペプチドは前−抗血清を使用したW138細胞溶解物の沈降
物、あるいは293細胞溶解物と同様な抗−サイクリンD1抗体との免疫沈降物
には無い。これら4つのバンドのいずれも、特にp31およびp33が、おそら
くサイクリンD2またはD3である可能性は、それらのV8タンパク質溶解パタ
ーンをインビトロ翻訳されたD2およびD3のパターンと比較することにより除
外された。これらのタンパク質は同じ抗体を使用したウエスタンブロッティング
を組み合わせた免疫沈降法の後には検出されないので、これらポリペプチドと抗
−サイクリンD1血清との免疫沈降物はこれらのいずれのタンパク質中の交差−
反応性エピトープの存在によるものではないであろう。サイクリンD1−会合タ
ンパク質の同定は以下に記載する。(ii)CKD5はD−型サイクリンと会合する
マウスマクロファージではサイクリンD1/cyllがシゾサッカロミセス ポン ベ
(G8)(Schizosaccharomyces pombe(G8))の全長p34cdc2に対する抗体と
交差−反応するポリペプチドに会合するが、ヒトp34cdc2
のC−末端に対して調製された抗体には会合しないことがすでに報告されている
(Draettaら、Cell 50:319-325(1987):DraettaおよびBeach,Ce11 54:17-26(1
988);Matsushimeら、Cell 65:701-713(19919))。本質的に同一の結果は現在
はヒトW138細胞にて得られ、サイクリンD1がヒトCDC2関連物に会合す
ることを示唆している。
G8抗体は、推定されているD−型サイクリン会合キナーゼを単離するために
ヒトcDNA発現ライブラリーをスクリーニングするために使用された(実施例
1、実験法を参照のこと)。34個のG8−陽性cDNAクローンがHeLa細
胞cDNAライブラリーから同定された。その中で、17個のクローンがCDC
2をコードし、そして別の14個がCDK2をコードしていた。残りのクローン
の1つは予想される分子量が33,283ダルトンの292アミノ酸残基(配列
番号1および2)のORFをコードする。このクローンは既知のサイクリンー依
存性キナーゼ類(CDKs)と広範囲のアミノ酸同一性(エス.ポンベ(S.pomb e
)CDC2(53.4%)、エス.セルビシエ(S.cerevisiae)CDC28(
55.9%)、ヒトCDC2(56.8%)およびヒトCDK2(60.3%)
)を共有し、そしてヒトD−型サイクリン類と会合する(以下参照)のでCDK
5と命名する。CDK5はアミノ酸配列86−92でDLKKYFDの配列をコ
ードし、一方対応するヒトCDC2の領域はDLKKYLDを有し、そしてCD
K2はDLKKFMDを有する。
CDK5がDサイクリン類と会合するのかどうかを決定するために、CDK5
の独自なカルボキシ−末端に対応するペプチドに対して抗血清を生成した(実施
例1、実験法を参照のこと)。この血清はヒトCDC
2、CDK2またはCDK4とは交差反応しない。免疫沈降法または免疫沈降後
のウエスタンブロッティングでは、この抗血清が細胞溶解物中にみかけ分子量3
1kDa(p31)のポリペプチドを検出し、このポリペプチドはインビトロで
合成されたCDK5ポリペプチドと一緒に移動し、そしてその信号(signal)は
CDK5抗原性ペプチドにより効果的に競合排除される。抗−CDK5抗体で沈
殿する31kDaタンパク質の同定は、さらにp31の部分V8タンパク質溶解
マッピングをインビトロ翻訳されたCDK5と比較することによりCDK5であ
ると確認された。
抗−CDK5抗血清を使用した35S−メチオニン標識W138細胞の細胞溶解
物の免疫沈降法では、p31CDK5に加えてさらに数個のポリペプチドを明らかに
した。その中でポリペプチド36kDa(p36)、p35kDa(p35)、
33kDa(p33)および21kDa(p21)は最も顕著であり、抗−CD
K5抗血清と特異的に共沈殿した。これら4個のすべてのポリペプチドは前−抗
血清との、または過剰量のCDK5カルボキシ末端ペプチドの存在下の沈殿には
ない。
p35およびp33の電気泳動的移動度はインビトロ翻訳されたヒトサイクリ
ンD1およびD3とそれぞれ同じであることが分かった。CDK5−会合p35
がサイクリンD1に対応するであろうということを直接試験するために、CDK
5の免疫沈降物を抗−サイクリンD1抗血清とブロットした。p35cyclinD1と
一緒に移動する35kDaのポリペプチドを、抗−サイクリンD1抗血清により
検出した。CDK5抗血清での相互の抗−サイクリンD1免疫複合体のブロッテ
ィングでは、p31CDK5と同じ移動度を持つ31kDaのポリペプチドの存在も
明らかに
なった。同様にCDK5も抗−サイクリンD3免疫沈降物中に検出された。これ
らのデータはCDK57会合p35がサイクリンD1であり、そしてCDK5−
会合p33がサイクリンD3であることを示している。
CDK5−会合p35およびp33タンパク質の同定の決定的証拠を求めるた
めに、部分的タンパク質溶解マッピングを使用した(Clevelandら、J.Biol.Chem
252:1102-1106(1977))。抗−CDK5免疫沈降物から精製した35S−標識p
35を、エス.アウレウス(S.aureus)V8プロテアーゼ部分消化に供し、同様
に処理したインビトロ翻訳または抗−サイクリンD1免疫沈降物から得たヒトp
35cyclinD1と比較した。抗−CDK5免疫沈降物からのp35のV8タンパク
質溶解パターンは、サイクリンD1のパターンと同一であったが、サイクリンD
3とは異なった。同様な実験をp33の同一性を確認するためにも行った。CD
K5−会合p33の部分的タンパク質溶解パターンは、ビトロ翻訳されたヒトサ
イクリンD3のパターンと同一であったが、D1とは異なった。逆にサイクリン
D1−会合p31の部分的V8消化パターンは、インビトロ翻訳された、あるい
は抗−CDK5免疫沈降物のいずれかから得たCDK5と同一であることも決定
された。(iii)CDK2はサイクリンDと会合する
サイクリンD1−会合p33(例えば抗−サイクリンD1沈降物中)のみかけ
分子量、ならびにp33CDK2とG8抗体との交差反応性は、p33がCDK2で
ある可能性を示唆している。これを試験するために、[35S]−メチオニン標識
W138細胞溶解物の抗−CDK2沈降物を、抗−サイクリンD1沈降物と比較
した。予想どおり抗−C末端CDK2血清はp33CDK2であると確認された(3
3kDaバンドの部分的エス.アルレウス
(S.aureus)V8タンパク質溶解パターンとインビトロ翻訳CDK2
とのパターンとを比較することにより)33kDAタンパク質を沈殿させた。さ
らにp33CDK2は抗−サイクリンD1沈降物中に存在するp33と一緒に移動し
た。相互的に、抗−CDK2抗血清もサイクリンD1と一緒に移動する35kD
aタンパク質を沈殿させた。
CDK2とサイクリンD1との間に会合の可能性が存在することについて、さ
らに証拠を探すために、W138細胞溶解物をSDS−PAGEで分離した抗−
サイクリンD1で免疫沈降させた。そして抗CDK2抗血清とイムノブロットし
た。抗−CDK2抗体をカルボキシ−末端ペプチドに対して生成させ(Paganoら
、EMBO J.11:961-971(1992))、その特異性を細菌的に発現させたヒトCDC
2、CDK2、CDK3、CDK4およびCDK5をイムノブロッティングする
ことにより検査した。他の4つのCDKタンパク質でなく唯−CDK2だけがこ
の抗体により認識された。CDK2タンパク質は、抗−CDK2または抗−サイ
クリンD1のいずれかと免疫沈降するW138細胞溶解物中に検出されたか、前
−抗血清と沈降した溶解物または競合抗原性ペプチドと予めインキュベーション
した抗−CDK2中には検出されなかった。相互のウエスタンブロット実験では
、細胞溶解物は抗−CDK2と免疫沈降し、そして抗−サイクリンD1とブロッ
トされた。サイクリンD1は抗−サイクリンD1および抗−CDK2免疫沈降物
中に検出されるが、前−抗血清からの沈降物または競合抗原性ペプチドと予めイ
ンキュベーションした抗−CDK2抗血清中には検出されなかった。
CDK2もサイクリンD3と会合するかどうかについて試験するために、ヒト
サイクリンD3のC−末端ペプチドに対する抗血清を使用して
(実施例1、実験法を参照のこと)形成した免疫沈降物を抗−CDK2抗血清と
ブロットした。CDK2は抗一サイクリンD3沈殿物中に弱く検出されたが、競
合抗原ペプチドと予めインキュベーションした抗−サイクリンD3抗血清との対
照沈殿物中には検出されなかった。
最後にCDK2とサイクリンDとの間の会合を確認するために、部分的タンパ
ク質溶解マッピングを行った。始めにサイクリンD1−会合p33のタンパク質
溶解マップの作成が試みられ、それをCDK2と比較した。しかしCDK2と、
抗−サイクリンD1沈降物中のさらに別の優勢なプロテインキナーゼとが一緒に
移動するために、異なるタンパク質溶解パターンを得た。したがって逆の実験を
行った。抗−CDK2免疫沈降物中の35kDaバンドをSDS−ポリアクリル
アミドゲルから切り出し、V8プロテアーゼで部分消化し、そして電気泳動的に
分離し、そしてインビトロ翻訳由来、あるいは抗−サイクリンD1免疫沈降物由
来のV8消化p35cyclinD1と比較した。タンパク質開裂パターンは各々の場合
で同じだった。(iv)pSK−J3/CDK4はサイクリンD1に会合した優勢なp33タンパ ク質である
サイクリンD1−会合p33のタンパク質溶解パターンとCDK2パターンと
の差異は、D1−会合p33の大部分がCDK2以外のタンパク質に対応するこ
とを示唆した。PSK−J3と呼ばれるプロテインキナーゼ(はじめにセリン/
トレオニンキナーゼの保存領域由来の混合オリゴヌクレオチドプローブにるスク
リーニングで同定された:Hanks.S.K.Proc.Natl Acad.Sci.USA 84:388-392(198
7))は、サイクリンD結合特性を有するものと考えられた。PSK−J3の予
想された分子量は、
34kDaであり、p33の分子量に近い。以下に示すこのDサイクリンとの会
合ゆえに、PSK−J3は本明細書ではCDK4と呼ぶ。インビトロ翻訳CDK
4、および抗−CDK4血清との細胞溶解物からの沈殿物はCDK2およびD1
−会合p33と同じ電気泳動的移動度を示した。抗−CDK4抗血清によるCD
K4沈殿物の同定は、その部分的V8マッピングパターンとインビトロ翻訳CD
K4とのパターンを比較することにより確認した。
サイクリンD1−会合p33がCDK4であるかどうかを直接的に試験するた
めに、免疫沈降−ウエスタンブロッティング実験を行った。抗−CDK4血清は
、抗−CDK4で沈殿するCDK4と同じ移動度を持つ抗−サイクリンD1免疫
沈降物中の33kDaタンパク質と反応したが、CDK2またはCDK5のいず
れの細胞溶解物とも反応しなかった。相互的に抗−CDK4抗血清はまた、抗−
サイクリンD1抗体で検出される35kDaタンパク質を沈殿させる。サイクリ
ンD1−会合p33の同一性をさらに確認するために、p33の部分的V8消化
パターンをCDK4とCDK2との免疫沈降物と比較した。サイクリンD1−会
合p33はCDK4ときわめて同様なパターンを示したが、CDK2のパターン
とは極めて異なった。この結果はW138細胞の抗−サイクリンD1沈殿物中に
CDK2よりもCDK4がかなり豊富である(少なくともメチオニン標識で大ざ
っぱにアッセイした場合)ことを示している。同様に抗−CDK4免疫沈降物中
に見られる33kDaポリペプチド(p33)は、部分V8ペプチドマッピング
によりサイクリンD3であると同定された。(v)p21のサイクリンD1およびCDK2との会合
抗−サイクリンD1血清で沈殿した[35S]−メチオニン標識W138溶解物
中で、21kDaタンノ、々ク質(p21)が特異的にサイクリンD1と特異的
に会合することが見られた。p21は前−抗血清での沈殿物、または293細胞
由来の抗−サイクリンD1沈殿物中(未検出レベルのサイクリンD1を含有する
)のいずれにも存在しなかった。p21とサイクリンD1との特異的会合は、C
DK2、CDK4およびCDK5に対する血清で形成された免疫沈降物中で一緒
に移動する21kDAタンパク質の存在により支持された。抗−CDK2抗血清
が競合するCDK2ペプチドにより予めブロックされた時、p21バンド、なら
びにp33CDK2およびp35cyclinD1も見られなかった。同様にp21は、もし
抗血清がCDK5カルボキシ−末端抗原ペプチドと予めインキュベーションされ
るならば抗−CDK5免疫沈降物中にも無かった。p21はこの実験で使用した
いずれの抗−CDKまたは抗−サイクリンD抗体よるウエスタンブロットでも認
識されなかった。さらに293個の細胞中、全免疫沈降性CDK2はW138と
同じであったが、p21バンドは293細胞溶解物からのCDK2免疫沈降物中
には存在しなかった。この知見はCDK2およびp21がサイクリンDに依存し
ていることを示唆している。
サイクリンD1免疫沈降物およびCDK2免疫沈降物由来のp21が同じポリ
ペプチドであるかどうかを決定するため、各源から精製したp21の部分的V8
タンパク質溶解パターンを比較した。それらは全く同じであった。抗−CDK5
抗血清で沈殿したp21は、サイクリンD1−会合p21と同じであることも分
かった。抗−CDK4免疫沈降物中のp21もタンパク質溶解的マッピングを行
った。これはサイクリンD
1−会合p21のパターンと同一であった。p21はその電気泳動的移動度がヒ
トマックスタンパク質、(max protein)またはp21rasのいずれよりも早く、
そしてウエスタンブロットで抗−ヒトras抗体により認識されないので、ヒト
マックスタンパク質またはp21rasには対応しない[p21配列を加えるべき
か?]。(vi)サイクリンD1−会合p36はPCNAである
上記に説明したように、W138細胞の抗−サイクリンD1沈殿物は、会合ポ
リペプチド21kDa、31kDaおよび33kDa、ならびにまた36kDa
の優勢タンパク質を示す。p36は前抗血清または293溶解物を使用した対照
沈殿物中には検出されなかった。より少量のみ36kDaタンパク質も、CDK
2、CDK4およびCDK5免疫沈降物中に検出されたが、競合ペプチドで予め
インキュベーションした抗血清との免疫沈降物中には検出されなかった。
p36の同定を確立することを試みている間、4つの考察によりこれはヒト増
殖性核抗原(Proliferating nuclear antigen:PCNA)であるかもしれないという
可能性が示唆された。第一に増殖しているW138細胞の非同時的な一群(asyn
chronous popul ation)では、サイクリンD1が主要な核タンパク質であること
が観察されているが、その分布はPCNAのスペックルドパターン(speckled p
attern)と同一ではない(Bravo,RおよびH.MacDona1d-Bravo,EMBO J. 4:655-661
(1985):Madsen.P.およびJ.E.Celis.FEBS Lett.193:5-11(1985)。第二にサイ
クリンD1のレベルはマイトジェン活性化W138細胞中で比較的一定している
が、[35S]メチオニン−標識サイクリンD1免疫沈降物のp36は休止細胞中
で低く、刺激10−14時間後に増加した。血清刺激10−14時
間後、多くのW138細胞が後期G1にあり、この時期は血清−刺激3T3繊維
芽細胞中でPCNA合成の開始に一致する(Bravo,R.およびH.MacDonald-Bravo,EMBO J.
,3:3177-3181(1984);Celis,J.E.およびA.Celis,Proc.Natl Acad.Sci.U SA
82:3262-3268(1985):Madsen P.およびJ.E.Celis,FEBS Lett.193:5-11(198
5))。第三にp36の外見上の分子量はPCNAの分子量と同様である。最後
に抗−PCNA抗体は、電気泳動的移動度がp35cyclinD1の移動度と同じであ
る35kDaポリペプチドを沈殿させる。抗−PCNA抗体で沈殿するp36の
同定は、そのV8ペプチドマップをインビトロ翻訳PCNAのペプチドマップと
比較することによりPCNAとして確認された。
p36がPCNAであることの可能性を直接的に試験するために免疫沈降−ウ
エスタンブロット実験を行った。PCNAは抗−サイクリンD1、サイクリンD
3、CDK2およびCDK5免疫沈降物中に容易に検出されるが、対照沈殿物中
には現れなかった。また相互の実験でサイクリンD1およびCDK2は抗−PC
NA免疫沈降物中に検出された。おそらくW138細胞中での両タンパク質の存
在の低さ、およびウエスタンブロットでのD3およびCDK5の相対的な感度の
悪さから、PCNA沈殿物中にサイクリンD3またはCDK5を納得できるよう
に検出することは不可能だった。
PCNAと、サイクリンD1およびCDK2に会合するp36ポリペプチドと
の間の類似性をさらに評価するために、p36バンドをサイクリンD1およびC
DK2免疫沈降物から精製し、SDS−PAGEで分離し、そしてそれらの部分
的V8タンパク質溶解マッピングパターンをPCNAのパターンと比較した。V
8プロテアーゼでサイクリンD1−
会合p36を消化すると、抗−PCNA免疫沈降物およびインビトロ翻訳PCN
Aに由来するPCNAのパターンと同じであることが明らかになった。同様に、
CDK2−およびCDK5−会合p36の消化パターンもPCNAのパターンと
一致した。サイクリンD1に会合するp36はPCNAである。さらに抗−PC
NA免疫沈降物中で検出されたp21のタンパク質溶解マッピングにより、p2
1が上記のサイクリンD1−会合p21と同じであることが実証された。(viii)他のサイクリン類のサブユニット複合体
上記のようにPCNAおよびp21はサイクリンD−CDKと会合して四量体
複合体を形成するだけでなく、多くの他の正常細胞例の中でサイクリン−CDK
複合体の普遍成分としても存在する。抗−サイクリンA抗体と免疫沈降したW1
38細胞およびHSF43細胞の溶解物中で、サイクリンAがPCNA、CDC
2、CDK2およびp21と会合することが分かった。
同様にしてW138およびHSF43溶解物由来の35S−メチオニン−標識抗
−サイクリンB1免疫沈降物の分析では、サイクリンB1、CDK、p21およ
びPCNAを含んで成る四量体複合体が明らかになった。
本調査で使用した実験技術は、公式には各タンパク質間で多くの対を形成する
相互作用の存在を区別しないが、このデータでDサイクリン、PCNA、CDK
およびp21が四量体複合体を形成するかもしれないことを最も端的に説明して
いる。免疫沈降反応のメチオニン−標識バンドの強さを比較することにより、す
べてのサイクリンDが複合体中に存在するのではなく、またすべてPCNAが存
在するわけでもないことが
示唆された。しかし抗−サイクリンD沈降物中のp36(PCNA)、p33(
CDK4)およびp21バンドの相対的な強さは、大変似ている。本明細書で与
える結果はサイクリンD(本明細書に記載するタンパク質と会合している、また
はしていない)がさらにインビボのパートナーと会合するの可能性を除外するも
のではない。特に、97kDの分子量マーカーのいずれかの側に移動する2つの
ポリペプチドは抗−サイクリンD沈降反応中に現れる。
PCNAは、DNA−鎖の複製を導き、そしてDNA修復の両方に必要なデル
タポリメラーゼの必須なアクセサリー因子であると説明されて来た(Prelich,G
ら、Nature 326:517-520(1987):Prelich,G.およびB.Stillman,Cell 53:117-12
6(1988);Toschi,L.およびR.Bravo J.Cell Biol. 107:1623-1628(1988);M.K.
K.Shivijiら、Cell 69:367-374(1922))。PCNAは核中の活性なDNA合成
部位に位置し、そしてPCNAの位置は(その合成ではない)DNA合成に依存
している。インビトロのキナーゼ反応において、任意の各サブユニットのリン酸
化を検出することは不可能であり、これはPCNAおよびp21のいずれもがサ
イクリンD/CDKの第一基質であることを示唆している。
PCNAおよびp21と会合するサイクリンD/CDK酵素はインビトロでよ
り複雑な多−タンパク質−DNA合成複合体に集合し、その中の1成分がサイク
リンD/CDKの生理的基質であるかもしれない。PCNAは一般的に細胞から
他のタンパク質とは会合していない単量体で生化学的に精製された(Prelich,G
ら、Nature 346:760-763(1987))。本明細書に記載された研究では、多−タン
パク質複合体が細胞性PCNAの大部分を含んでいないため見過ごされた可能性
がある。あるいはP
CNAがこれまでに記載されたことがない、サイクリンDおよびCDKタンパク
質を含む非−DNA合成細胞周期制御の役割を持つ、ということも可能である。
しかし本研究は第一の生化学的指標としてD−型サイクリンに可能な機能として
PCNA機能のモジュレーター(modulator)を提供するものである。
四量体複合体の重要性は、細胞のDNA腫瘍ウイルスによる形質転換が、サイ
クリンA、CDC2、CDK2、CDK4およびCDK5を含む他の細胞周期複
合体と同様にサイクリンD複合体の選択的なサブユニット転位に関連するという
新たな知見により強調される。特にSV40DNA腫瘍ウイルス、またはその発
癌性遺伝子産物巨大T抗原の正常ヒトニ倍体繊維芽細胞(HDF)への導入は、
サイクリンDおよびPCNA、CDKs(CDK2、CDK4およびCDK5の
ような)ならびにp21間の会合の破壊を引き起こす。サイクリンDおよびp2
1からの解離後、CDK4キナーゼが16kDaポリペプチド(p16)に会合
するようになる。同様にSV40形質転換はHDF中、そしてアデノウイルスー
(293細胞系)またはヒトパピローマウイルスー(HeLa細胞系)で形質転
換した細胞中でp21とサイクリンAとの会合の減少を引き起こし、p21はサ
イクリンAから完全に解離する。19kDaペプチド、p19が次にサイクリン
Aとの複合体中に現れる。したがってp21は正常な非形質転換細胞中でのみサ
イクリンキナーゼと会合し、一方p16およびp19、ならびにおそらく他の関
連するタンパク質は形質転換細胞中のサイクリン複合体に存在する。II.形質転換細胞中のサイクリン複合体
以下に説明するように、本考察は細胞分裂の多くの鍵となる段階で作
用するサイクリン/CDK酵素の一族は、発癌的に形質転換した種々の細胞中で
おおざっぱに変化するという衝撃的な証拠を提供する。調査したサイクリン/C
DK−族の各員は、PCNAおよびp21と会合する。しかしDNA腫瘍ウイル
スSV40で形質転換すると、またはその形質転換抗原(T)で形質転換すると
、サイクリンD/CDK/PCNA/p21複合体は破壊される。形質転換細胞
では、CDK4はサイクリンD、PCNAおよびp21とは全体的に解離してお
り、そして代わりに排他的に16kd(p16)ポリペプチドと会合している。
サイクリンAまたはB1およびp21/CDK/PCNAを含有する四量体複合
体も、形質転換細胞中でサブユニットの転位を受ける。PCNAおよびp21の
両方はもはやCDC2−サイクリンB1二量体複合体とは会合しない。サイクリ
ンA複合体はもはやp21を含有せず、むしろ新な19kdポリペプチド(p1
9)がサイクリンAに会合して見いだされる。サイクリン−CDK複合体のサブ
ユニット転位がSV40−形質転換細胞中だけでなく、アデノウイルスまたはパ
ピローマウイルスで形質転換された細胞中でも見いだされたならば、このパター
ン。さらにサイクリン−CDK−族のサブユニット組成パターンは非−ウイルス
形質転換細胞中(リーフローメニ患者(Li-Fraumeni patients)由来のp53−
欠失細胞、ならびに上皮A−431癌細胞、および咽頭偏平上皮細胞癌細胞Fa
Duのような)では大まかには異常である。
(i)SV40−形質転換細胞中でのサイクリンD/CDK/PCNA/p21
複合体の破壊
サイクリンD/CDK/PCNA/p21四量体複合体は上記のように正常な
繊維芽細胞(例えばW138adHS68)中で検出されたが、
このような複合体はウイルスで形質転換された数種の他の細胞系(例えばヒト2
93細胞系)では検出されなかった。与えられた明らかな差異、正常な二倍体繊
維芽細胞中のサイクリンD複合体のサブユニット組成、およびそれらの形質転換
された誘導体をより詳細に比較した。W138VA13、2RAサブライン(今
後、本明細書にてVA13と呼ぶ)はW138細胞系由来のSV40ウイルスで
形質転換した誘導体である。35Sメチオニン−標識W138およびVA13溶解
物の抗−サイクリンD1免疫沈降物を調査した。W138細胞について上述した
ように、抗−サイクリンD1抗血清はサイクリンD1に対応する優勢な35−k
Dバンド、および3つの主要会合タンパク質p36PCNA、p33CDK4およびp2
1を沈殿させる。SV40−形質転換VA13細胞において、サイクリンD1の
レベルは、35Sメチオニン−標識免疫沈降物のオートラジオグラフイー、および
ウエスタンブロッティングにより測定すると、2−から3倍まで減少する。しか
し3つの主要サイクリンD1−会合タンパク質のいずれもSV40で形質転換し
たVA13細胞中のサイクリンD1と視覚的に会合することは無かった。観察さ
れたSV40で形質転換した細胞中のサイクリンD複合体の破壊を確認するため
に、相互の免疫沈降を抗−CDK4および抗−CDK2抗血清を使用して行った
。W138細胞では抗−CDK4抗体は3つの主要会合タンパク質、p36PCNA
p33cyclinD1およびp21に加えてCDK4を沈殿させた。SV40で形質転
換したVA13細胞では、CDK4は非形質転換W138細胞と比較して同様な
レベルで存在するが、抗−CDK4免疫沈降物中に検出しうるPCNA、サイク
リンD1またはp21は存在しなかった。また同様な結果が抗−CDK2(別の
サイクリン−D会合キナーゼ
触媒サブユニット)との免疫沈降物中にも観察された。サイクリンD1はW13
8細胞中の主要CDK2−会合タンパク質の1つであるが、たとえCDK2のレ
ベルが形質転換細胞中で同様、またはわずかに高くてもSV40−形質転換VA
13細胞中で会合は検出されない。またCDK2−会合p21のレベルは形質転
換細胞中では減少したが、検出しうるレベルで存在する。
さらに数種の正常ヒト二倍体繊維芽細胞系およびそのSV40−形質転換誘導
体を調査した。HSF43は新生児包皮から派生した二倍体繊維芽細胞であり、
そしてCT10−2C−T1(今後、本明細書でCT10と呼ぶ)はHSP43
からSV40巨大腫瘍抗原遺伝子をラウス肉腫ウイルス(RSV)プロモーター
を駆動させることにより導入して得た(Rayら、J.Cell Biochem 42:13-31(1990
))。正常および形質転換細胞のサブユニット組成ならびに解離パターンは、W
138およびVA13細胞で観察されるパターンと極めて近かった。T−形質転
換CT10細胞から調製された抗−CDK4、抗−CDK2および抗−CDC2
免疫沈降物中にはサイクリンD1は見られなかったが、HSF43細胞中には出
現した。相互的に、CDK4はCT10細胞の抗−サイクリンD1沈殿物には見
られなかった。CDK4−会合PCNAおよびp21もCT10細胞中に検出さ
れなかった。T−形質転換細胞中のp21はVA13細胞系のように、新に同定
されたp16タンパク質により置き換えられると思われた。さらに本質的に同一
の結果がヒト繊維芽細胞系であるIMR−90、正常ヒト肺二倍体細胞系および
そのT−形質転換誘導体IDH4の別の対でも得られ(Shayら、Biochem Biophy s Acta
1072:1-7(1992))ならびにサル細胞系CV−1、擬二倍体腎臓細胞系
、お
よびそのSV40−形質転換誘導体COS−1の対でも得られた。
形質転換細胞中で観察されたサイクリンD複合体の解離をさらに確認するため
に、イムノブロッティングと組み合わせた免疫沈降法がしばしば代謝的標識実験
において生じる可能性があるアーティファクトを避けるために行われた。非形質
転換W138またはSV40−形質転換VA13細胞のいずれかから調製した全
溶解物を、電気泳動的に分離した抗体の一群で免疫沈降させ、そして種々の第二
抗体とブロットした。CDK4、CDK2およびPCNAは検出されないか(C
DK4)、またはSV40−形質転換細胞由来の抗−サイクリンD1沈殿物中で
は劇的に減少したレベルで存在する(CDK2およびPCNA)かのいずれかで
あった。それぞれの場合において、直接的なイムノブロッティングにより、CD
K4、CDK2およびPCNAの絶対的レベルは正常および形質転換細胞中で同
様であることが確認された。相互的に、サイクリンD1は形質転換VA13細胞
に由来する抗−CDK2または抗−CDK4沈殿物のいずれにも検出されなかっ
た。同じ結果が別の細胞系の対のそれぞれ(HSF43およびCT10)からも
得られた。(ii)形質転換細胞中のサイクリンAおよびB複合体のサブユニット転位
非形質転換W138細胞およびSV40−形質転換VA13細胞中のサイクリ
ンA複合体のサブユニット組成を調査した。上記のように、サイクリンAはW1
38細胞中のp36PCNA、p33CDC2、p33CDK2およびp21と会合する。S
V40−形質転換VA13細胞では、サイクリンAそれ自体、およびサイクリン
A−会合CDC2/CDK2の両方のレベルが約3倍に増加した。相互にCDC
2−およびCDK2−会合
サイクリンAのレベルも2−から3倍に増加した。
サイクリンA−会合p21のレベルは35S−メチオニン標識細胞溶解物の免
疫沈降により測定したように、W138細胞と比較してVA13細胞中では減少
する。p21のレベルはCDK2(サイクリンAの主要触媒パートナー)に対す
る抗血清を使用するVA13細胞から調製した免疫沈降物中でも低い。正常IM
R−90細胞対そのT形質転換IDH細胞、およびサルCV−1/COS−1対
細胞系に加えて、HSF43およびCT10細胞を使用して、同様な結果が一貫
して得られた。
非形質転換細胞に特異的な、または形質転換細胞に特異的な別の多くのポリペ
プチドがサイクリンA沈殿物中に見られた。例えば分子量が42kDであるタン
パク質は非形質転換W138またはHSF43細胞中に優勢に見られるが、形質
転換VA13またはCT10細胞中には見られない。逆に、T抗原に対応するか
もしれない95kDのポリペプチドは、19kDのポリペプチドのように(以下
に考察する)形質転換細胞中にのみ見られる。
正常および形質転換細胞中のサイクリンB1複合体のサブユニット組成も調査
した。D1と同じように、サイクリンB1/CDK/p21/PCNAの四量体
複合体は、非形質転換W138およびHSF43細胞を比較した時、SV40−
形質転換VA13細胞およびT−形質転換CT10細胞中の両方で変化する。し
たがってPCNAおよびp21のいずれもサイクリンB/CDKとは形質転換細
胞中で会合しない。しかし予想通り、CDC2はサイクリンB1(p62)とV
A13、CT10、293およびHeLa細胞中で会合している。(iii)他のDNA腫瘍ウイルス−形質転換細胞中のサイクリンおよびC DK複合体
他のヒト腫瘍細胞中でもサイクリン−CDK複合体が変化するのかどうかを調
査するために、パピローマウイルス−含有頸頚部腫瘍HeLa細胞およびアデノ
ウイルス−形質転換第一期腎臓293細胞を、種々のサイクリンおよびCDK複
合体のサブユニット組成について調査した。両方のこれら細胞系は哺乳細胞周期
の生化学的研究に広く利用されてきた。サイクリンD1はHeLa細胞中で低レ
ベルで発現し、そして293細胞中でわずかに検出できる。しかし他のサイクリ
ン/CDK複合体のサブユニット組成を調査できる。よく確立されたCDC2−
サイクリンB1、CDC2−サイクリンAおよびCDK2−サイクリンAの会合
は、すべてHeLaおよび293細胞中の両方で容易に検出された。しかし第p
21は、HeLaまたは293細胞のいずれかからの抗−CDC2、抗−CDK
2、抗−サイクリンAまたは抗−サイクリンB1免疫沈降物中に見られた。した
がってサイクリンA/CDK/p21/PCNAおよびサイクリンB1/CDK
/p21/PCNAの四量体複合体は、集合していないか、あるいはこれらのD
NA腫瘍ウイルス−形質転換細胞中では極めて低レベルで存在しているかのいず
れかである。事実、複合体中のp21が19kDのポリペプチドに置換されたと
思われる新規サイクリンA複合体が出現した。同じ19kDのポリペプチドはS
V40−形質転換ヒトVA13、CT10、IDH4およびさらにサルCOS−
1細胞由来の抗−サイクリンA沈殿物中に存在する。さらに293およびHeL
a細胞では、CDK4のサブユニット組成はT−抗原−形質転換細胞のサブユニ
ット組成と同一である。サイクリンD1はCDK4とは会合しないが(種に起因
する細胞からのサイクリンDの
不在)、PCNAおよびp21も存在しない。p21はHeLaおよび293細
胞ではp16により置換された。おもしろいことには、CDK4−会合p16は
非形質転換W138またはHSF43細胞では極めて低レベルで検出される。そ
れぞれのタンパク質溶解開裂マッピングでは、HeLa)293、VA13およ
びW138細胞からのCDK4−会合p16は同一であるが、p21とは異なる
ことが明らかになった。3つの異なるウイルスにより形質転換した細胞中のp1
9およびp16の存在、ならびに非形質転換細胞中のp16の存在はそれらがウ
イルスにコードされているタンパク質ではないことを示している。(iv)リーフラウメニ細胞中のサイクリンおよびCDK複合体の変化
リーフラウメニ患者の一族由来の繊維芽は、異数性および不滅化を高い割合で
含む自然発生的異常を現す(Liら、J.Natl Cancer Inst 43:1365-1373(1969)
:ならびにBischoffら、Cancer Res 50:7979-7984(1990))。これらの細胞は
いかなる既知のウイルスをも含まない;代わりに腫瘍サプレッサー遺伝子p53
の単一−塩基のヘテロ接合体的突然変異(heterozygous mutations)がグラム系
の変化として報告されているだけである。連続的したインビトロでの継代中にリ
ーフラウメニ繊維芽が老化現象および自然発生的な不滅化から逃れるのは、野生
型p53対立遺伝子の第二欠失に関連している。自然に発生した不滅化リーフラ
ウメニ細胞系、LCS041(継代>170)由来の35S−メチオニン−標識細
胞溶解物を、種々の抗体と免疫沈降させ、そしてSDS−PAGEで分析した。
LCS041細胞中のほとんどのこれらタンパク質のレベルは、サイクリンAが
正常繊維芽と比較するとかなり低レベルで発現することを除いて、代謝標識およ
びイムノブロッティングにより測定されるよう
に正常二倍体繊維芽中のレベルと同様である。サイクリンおよびCDK複合体の
サブユニット組成は、LCS041細胞中では大まかに異常であり、HeLaお
よび293細胞中のようにサイクリンB1−CDC2複合体が存在し、そしてp
21またはPCNAと会合しない。サイクリンD1−CDK4会合はLCS04
1細胞中ではほとんど検出されないレベルまで減少し、そしてPCNAおよびp
21の両方が存在しない。p21はLCS041細胞中で調査したいずれのサイ
クリン−CDK複合体中にも検出されず、そしてT−抗原−形質転換繊維芽で生
じたようなp16またはp19タンパク質による置換は無いように思われた。サ
イクリン−CDK複合体に会合したPCNAのレベルも、各場合について劇的に
減少した。直接的イムノブロッティングではPCNAの量は正常繊維芽と比較し
てLCS041細胞よりも高いが、抗−CDC2、CDK2、CDK4、サイク
リンA、サイクリンB1およびサイクリンD1で単離した免疫複合体中ではPC
NAは劇的に減少するか、または全く無かった。本質的に同一の結果が別のリー
フラウメニ細胞系、LCS087を使用しても得られた。III.p16およびCDK4の阻害剤のクローニング
ヒトCDK4と相互作用できるタンパク質を調査し、より特別にはp16をコ
ードするcDNAを単離するために、2−ハイブリッドスクリーニングシステム
(two-hybrid screening system:Fieldsら、Nature 340:254(1989))を利用し
た。2−ハイブリッドスクリーニングは機能的なGAL4活性化因子を2つの別
個の融合タンパク質から再構成させることによる:それはCDK4に融合するG
AL4 DNA−結合ドメイン、GAL4db−CDK4;およびHeLa c
DNAsによりコー
ドされるタンパク質に融合するGAL4活性化ドメイン、GAL4ad−cDN
Aである。YPB2は2つの異なるGAL4−依存性プロモーター(HIS3お
よびLacZ)の制御下の2つの染色体遺伝子を含む株であるので、受容体酵母
として使用した。YPB2をそれぞれGAL4db−CDK4およびGAL4a
d−cDNA融合物をコードする2つのプラスミドの混合物で形質転換させた。
ヒスチジンの不在で成長し、そしてβ−galの存在で青色に変わる数個のクロ
ーンを得た。DNAのシークエンシングデータから、各陽性クローンは同じ遺伝
子から派生したものと決定したが、1つの群はより短い3’末端を持つmRNA
を示すことが明らかになった。これらのcDNAs配列はGAL4adのフェイ
ズ中で、予想される分子量が15,845ダルトンである148アミノ酸(配列
番号3および4)のタンパク質をコードする読み取り枠を含んだ。このタンパク
質をINK4(CDK4の阻害剤:以下参照)と呼ぶ。p16INK4の配列を
標準的な方法で現在入手できるデータバンクにある配列と比較し、そして有意な
相同性は見いだされなかった。
p16INK4が特異的にCDK4に結合するのかどうかを試験するために、
YPB2をGAL4ad−p16INK4融合体、ならびにそれそれcdc2、
CDK2、CDK4、CDK5、PCNAおよびSnfl(分裂酵母キナーゼ)
をそれそれ含む数個の標的GAL4db融合構造体とを一緒にコートランスホー
ム(cotransform)した。形質転換した細胞をヒスチジンの有無でプレートにま
いた。GAL4db−CDK4融合体のみがGAL4ad−p16INK4とあ
る程度相互反応し、ヒスチジン無しでも生育できたが、これはこの融合タンパク
質対がHIS3遺伝子の発現を増強できる機能的GAL4活性化剤を特異的に再
構
築したことを示す。同じ結果がβ−ガラクトシダーゼ遺伝子の発現をトランス活
性化する能力をアッセイした時にも得られた。
この相互作用の特異性をさらに無細胞系で、インビトロ翻訳(35S)−標識C
DKsとp16INK4(17)に連結したグルタチオン−Sトランスフェラー
ゼ(GST)から成る精製した細菌生産融合タンパク質とを混合することにより
実証した。GST−p16INK4融合体はグルタチオンーセファロースビーズ
に結合させて回収し、そして各CDKの会合をゲル電気泳動により分析した。以
前の観察と一致して、GST−p16INK4はcdc2、CDK2またはCD
K5よりも効率的にCDK4に結合した。
p16INK4の予想された分子量は16Kdに近かったので、p16INK
4を形質転換細胞系(上記)中に見られたCDK4−会合p16タンパク質との
同一性が測定された。2つのインビトロ翻訳生産物、15KDおよび17KD生
産物をp16INK4 cDNAから得た。これらの生産物、ならびにHeLa
細胞由来のCDK4−会合p16タンパク質をN−クロロスクシンイミドで処理
した。17KDのcDNAINK4−誘導産物の部分的なNCS−タンパク質溶
解パターンは、HeLa細胞由来のCDK4−会合p16タンパク質と大変似て
いた。これはp16INK4 cDNAが実際p16に相当することを強力に指
示している。17KD cDNAINK4−誘導産物およびp16のV8プロテ
アーゼ部分消化も同様なパターンを生じた。昆虫細胞中で過剰発現したp16I
NK4タンパク質は15KDの電気泳動的移動度を持ち、そしてNCSタンパク
質溶解マップが15KD cDNA誘導産物で得たマップと同一であることに注
目することは興味深い。これはヒト
細胞中および17KDインビトロ翻訳産物中に見られる実際のp16INK4が
、翻訳後に修飾されたタンパク質に相当することを示唆している。昆虫細胞中で
過剰発現したp16INK4タンパク質がCDK4と相互作用するという事実は
、この修飾が相互作用に必須ではないことを示唆している(以下参照)。
p16INK4とCDK4−会合タンパク質p16との間の同一性は、精製し
たGST−p16INK4融合タンパク質に対して生成した抗体を使用してさら
に確認した。数種のヒト細胞系をこの実験に使用した。それらは正常肺繊維芽由
来の正常細胞系W138;SV40 T抗原で形質転換したW138由来のVA
13細胞系;そしてHeLa細胞である。上記に説明したようにW138の抗−
CDK4免疫沈降物は、CDK4とサイクリンD1、PCNA、p21およびp
16との会合を明らかにした。対照的にVA13およびHeLa細胞CDK4は
p16にのみ会合した。抗−p16INK4免疫沈降物は、外見上の分子量が1
6KDであり、2つの形質転換細胞系(VA13およびHeLa)で容易に検出
できるが、正常細胞系W138でははるかに少ないタンパク質を含んでいた。こ
のタンパク質は抗−CDK4血清と一緒に免疫沈降するp16タンパク質と同じ
電気泳動的移動度を持つだけでなく、同一のNCS部分タンパク質溶解パターン
を有した。p16INK4に加えて、33Kdのタンパク質が抗−p16同時免
疫沈降物(coimmunoprecipitates)中に観察され、これはV8タンパク質溶解マ
ッピングによりCDK4と同一であることが示された。
W138およびVA13細胞中に存在する転写物のノーザン分析では、何回も
p16INK4 mRNAの量はW138細胞中ではVA13細
胞中と比較して少ないことが示された。この差異は、2つの細胞間で観察された
p16タンパク質の量の差異におよそ相当し、これはp16INK4発現が転写
または転写後に制御されているかもしれないことを示唆している。実際、3つの
非ウイルス的に形質転換した細胞系ではp16INK4の発現はゲルを過剰に露
出させた後でも検出できなかった。
p16INK4とCDK4との相互作用の生化学的帰結を調査するために、活
性なCDK4−サイクリンD複合体を標準的な方法でインビトロで再構成した(
Katoら、Genes Der 7:331(1993);およびEwenら、Cell 73:487(1993))。3
つの関連する成分、CDK4、p16INK4およびサイクリンD1をバキュロ
ウイルス−感染昆虫細胞中で発現させた。別個にp16INK4、CDK4また
はサイクリンD1を過剰発現した代謝的に(35S)−標識した昆虫細胞から、な
らびにCDK4およびサイクリンD1の両方を過剰発現している細胞から抽出物
を調製した。p16INK4の量の増加に反応して、対応するCDK4がRbを
リン酸化する能力の減少が観察された。この抑制は免疫沈降法で検出されるよう
なp16INK4とCDK4との間の会合に相関した。CDK2−サイクリンD
2複合体を同じアッセイに使用した時は抑制は観察されなかった。CDK4の抑
制がp16INK4によるものであることを確認するために、His−標識(ta
gged)p16INK4融合タンパク質(His−p16INK4)を、6ヒスチ
ジン残基域を含有する20アミノ酸のアミノ末端の広がりを有するように作成し
た。この融合タンパク質をバキュロウイルス−感染昆虫細胞中で過剰発現させ、
そしてニッケル−アガロースビーズに対するヒスチジン域の高い親和会合性によ
り精製した。このHis−p16INK4タンパク質調製物は90%より高い純
度を示し、全溶解物による抑制に使用したのと同じ条件下でCDK4−サイクリ
ンD1複合体の活性を抑制した。IV.本発明の使用
本明細書に記載された操作に基づき、血液、尿、便、粘膜、唾液またはバイオ
プシー(細胞学的標本を含む)のような組織または生物学的試料から得た細胞中
のサイクリンCDK、PCNA、p21、p19およびp16が変化した複合体
を検出することが可能である。これは例えば複合体の組成のサブユニット組成の
変化と、細胞性の形質転換または異常な細胞増殖との間にある明らかな関連から
、診断および予知を目的とした使用に有力である。本明細書に記載した診断およ
び治療法は、個人の疾患状態または複合体サブユニットのそのような転位に関連
する、または示される症状の発生の可能性を評価するために、ならびに治療効果
をモニターする(薬剤の効果、またはサブユニット転位に関する薬剤の効果や評
価することにより)ために使用できる。
例えばCDKs、サイクリン、PCNAおよび低分子量ポリペプチド(p21
、p19およびp16)との間の相互作用を認識する薬剤を開発できる。薬剤を
次に形質転換状態を試験する細胞試料と接触させることができ、複合体中の特定
のサブユニットの存在により形質転換を指示するであろう。例えばCDK4−p
16複合体はサイクリンA−p19複合体のように形質転換を示す。あるいはサ
ブユニット間の相互作用の存在を測定するために、種々のサブユニットを認識す
る薬剤を組み合わせて使用できる。例えばp21を認識する薬剤をサイクリンま
たはサイクリンキナーゼを認識する薬剤と組み合わせて、p21がサイクリンま
たはサイクリンキナーゼと複合体を形成しているかどうかを測定できる。
四量体複合体の化合物に特異的な反応性の抗体を本方法の試薬として使用する
ために、既知の手法により作成できる。例えば抗血清は適当な宿主(例えばウサ
ギ、マウス、ラット、ブタ)に所望の抗血清に対するD−型サイクリンを注射し
、そして抗体が形成されるのに十分な時間が経過し後、宿主動物から採血する。
モノクローナル抗体も既知の手法により作成できる、Sambrook,J.ら、モレキュ ラークローニング
:ア ラボラトリー マニュアル(Molecular Cloning:A Labo ratory
Manual)、コールド スプリングハーバーラボラトリー、コールドスプ
リングハーバー:NY.(1989)、Hallow,E.およびD.Lane、抗体(Antibodies):アラボラトリー
マニュアル、コールド スプリングハーバー出版、ニューヨー
ク、(1988)。CDK5、CDK4および他の一般的CDKs、p21、p19
、p16およびサイクリン類に特異的に反応性である抗体も既知の手法を使用し
て作成できる。
説明を目的とした態様では、抗体をCDK4/p16複合体に対して生成させ
る。免疫原性の状態でそのような複合体を作成するのを容易にするために、CD
K4/p16複合体を化学的架橋により作成できる。別の態様では、CDK4/
p16融合タンパク質は、各タンパク質由来のポリペプチド配列間に非構造化ポ
リペプチドリンカー領域を導入するために、単一鎖抗体法(single chain antib
ody technology)を使用して作成できる。このリンカーにより融合タンパク質の
柔軟性の増加を利用でき、2つの断片の間の立体障害を減らして各サブユニット
が自由に互いに作用できるようにし、ならびに各断片の適切な折りたたみが起こ
ることを可能にする。リンカーはタンパク質の2つのドメインの間にランダムコ
イル状態で存在すると決定された配列のような天然起源のもの
であることができる。あるいはリンカーは合成されたものであることができる。
例えば配列(Gly4Ser)3を合成の非構造化リンカーとして使用できる。こ
の種類のリンカーはHustonら、(1988)、PNAS 85:4879;および米国特許第5,09
1,513号明細書に記載されている。したがってCDK4/p16複合体に似てい
る免疫原性複合体を作成でき、引き続きこの複合体を認識するが単離したサブユ
ニットは認識しない抗体を単離できる。
さらに別の態様では、特に本発明は細胞中のp16レベルを検出するためのア
ッセイおよびキットを意図するものである。p16(本明細書に記載するように
)に特異的な抗体、またはp16転写物のmRNAレベルを検出するための核酸
プローブを、形質転換細胞を検出するために使用できる。上記のように、p16
mRNAレベル、およびおそらくp16タンパク質は正常細胞に比べて形質転換
細胞中では上昇する。したがってp16遺伝子発現のレベルの検出は形質転換細
胞の存在を決定するのに診断的に有用である。説明のための態様では、in situ
ハイブリダイゼーションアッセイをp16配列に対する核酸プローブを使用して
、標準的手法(例えば、Taubら、米国特許第4,820,630号明細書;Falkowら、米
国特許第4,358,935号明細書;およびBresserら、米国特許第5,225,326号明細書
を参照)により行うことができる。
本発明の好適なアッセイではp16/CDK4複合体が特徴である形質転換細
胞と、非形質転換細胞との間のp16レベルの定量的差異を確認することができ
る。簡単に述べると単一細胞懸濁液または組織片のいずれかの細胞を、スライド
ガラスのような支持体上に付着させることができる。あるいは細胞を1mlあた
り約105−106細胞の単一細胞懸
濁液中に置く。細胞を細胞に最高の空間的識別距離を提供し、そして核酸プロー
ブを使用するときに至瀾なハイブリダイゼーション効率を与えるか、あるいは抗
−p16Absを使用するときには至適な結合親和性および特異性を与える定着
薬を選択して固定する。
核酸プローブについては、ハイブリダイゼーションは固定化を行ったものと同
じ溶液で行うことができる。この溶液は定着薬およびホルムアミドのようなカオ
トロピック試薬の両方を含有する。また濃塩化リチウムまたは酢酸アンモニウム
溶液のようなハイブリッド安定化試薬、緩衝液、低分子量DNAおよび/または
リボゾームRNA(50塩基までの大きさ)が非特異的結合を無くすために含ま
れ、そして孔形成剤(poreforming agent)でプローブが細胞中に入りやすくす
る。バナジル リボヌクレオシド複合体のようなヌクレアーゼ阻害剤を含有して
もよい。
標的ポリペプチドとハイブリダイズさせるために、ハイブリダイゼーション溶
液にp16プローブを加える。最も好ましいプローブは一本鎖のアンチーセンス
プローブである。細胞mRNAにハイブリダイゼーションするために、約75−
150塩基長のプローブが使用される。プローブを含むハイブリダイゼーション
溶液を固定化した細胞を使用するときは細胞を覆うのに十分な量で加える。細胞
を次に至適温度でインキュべーションする。
プローブはハイブリダイゼーション反応前に検出できるように標識してもよい
。あるいはハイブリダイゼーション生成物に結合する検出しうる標識を選んでも
よい。本発明で実験に使用するために任意の検出可能な群によりプローブを標識
してもよい。そのような検出可能な群は検出しうる物理的または化学的特性を持
つ任意の物質であることができる。
そのような検出可能な標識はイムノアッセイの分野でよく開発されてきており、
一般的にそのような方法に有用なほとんどの標識を本発明に応用できる。特に有
用なものは例えば酵素(Clin.Chem.,22:1243(1976)を参照)、酵素基質(英国
特許第1,548,741号明細書を参照)、補酵素(米国特許第4,230,797号明細書およ
び同第4,238,565号明細書を参照)および酵素阻害剤(米国特許第4,134,792号明
細書)のような酵素的に活性な群;蛍光マーカー(Clin. Chem. 25:353(1989)
):発色団;化学的発光物および生物的発光物マーカーのような発光化合物(Cl in. Chem
.,25:512(1979));特異的に結合できるリガンド;近接作用対(pro
ximal interacting pairs);そして3H、35S、32P、125Iおよび14Cのよう
な放射性同位体。
同様な様式で、抗−p16抗体を標識してp16タンパク質の存在を細胞試料
から検出するために使用できる。
本発明は細胞形質転換を阻害または抑制する化合物または分子ヲスクリーニン
グする方法も含む。形質転換を阻害する能力をアッセイする化合物または分子を
細胞と、その化合物または分子が細胞に入るのに適当な条件下で接触させる。細
胞の形質転換によりサイクリン複合体中のサブユニットの選択的な転位が起こる
だろう。化合物または分子の存在中での転位の割合または程度の比較は、適当な
対照(例えば試験薬を加えていない同種の細胞)の割合または程度をアッセイし
て行われ、この比較により化合物または分子のサブユニット転位を阻害できる能
力または無能力を実証できるだろう。サブユニット転位を阻害する薬剤も本発明
の主題である。
例えばプロテインキナーゼ−D型サイクリン複合体の形成は直接的な
方法により妨害できる。例えばそれはプロテインキナーゼまたはD型サイクリン
に結合する薬剤または他の試薬を細胞に導入するか、あるいはサイクリンとプロ
テインキナーゼとの間の物理的会合を妨害して活性化(挿入により)するか、ま
たは酵素の触媒活性を破壊する。これはキナーゼまたはサイクリンまたは低分子
量有機化合物(これは内因性のD−型サイクリンのように、プロテインキナーゼ
に結合するが、その結合により酵素の活性化が起こらず、または酵素を無能にし
たり分解したりしない)に結合する抗体により行うことができる。この目的に使
用するペプチドおよび小さい有機化合物は、D−型サイクリンのアミノ酸配列の
分析に基づき(結合に必要な残基を含み、そしてその存在により活性を生じるよ
うな残基を排除して)設計することができる。例えばこれは結合部位(1つまた
は複数)を系統的マッピングし、そして活性に必要な部位(1つまたは複数)を
認識する、または会合するが活性化はしない分子を設計することにより行うこと
ができる。本明細書に記載するように、D−型サイクリンならびにCDKsと形
成された複合体の組織中での特異形態発現がある。したがって活性および/また
は特定のD型サイクリンおよびCDKを含んで成る複合体レベルを妨害(阻害)
するように設計された試薬(例えば抗体またはアンチセンスまたは他の核酸分子
)を使用することにより、細胞の有糸分裂能力を選択的に減少させることが可能
である。例えば中枢神経系あるいは他の非造血組織を含む腫瘍の治療において、
D1は特異形態的に発現するので(神経起源の細胞中での特に高レベルの発現)
、サイクリンD1を選択的に阻害する試薬は特に有用であると考えられる。
D−型サイクリン、CDK、PCNAおよびp21の複合体の形成も、
CDK/D−型サイクリン複合体形成に関して上記に記載したような同様な様式
で妨害できる。すなわち複合体の形成は直接的に妨害できる(例えば、複合体の
成分に結合するか、あるいか複合体成分の物理的会合を妨害する薬剤または試薬
による)。複合体の形成も、例えば複合体の成分をコードするDNAおよび/ま
たはRNAの転写および/または翻訳を妨害することにより、D−型サイクリン
−プロテインキナーゼ複合体形成の遮断について上述したものと同様な様式で直
接的な様式により妨害できる。あるいは複合体形成はその構成物の1つ以上を分
解することにより間接的に妨害できる。
例えば、サイクリンD2またはサイクリンD3が四量体複合体を形成する能力
を選択的に阻害する薬剤を使用できる。複合体形成の機能または利用性を変更で
きる他の複合体構成物の各々も標的とされる。例えば、D−型サイクリンと複合
体を形成するCDK2、CDK4、CDK5および他のサイクリン依存性キナー
ゼは、それらの機能あるいはそれらの四量体複合体中への取り込みに関する利用
性という意味のいずれかにおいて、阻害されるかまたは増強されることができる
。PCNAの機能または利用性、あるいはp21の機能または利用性、あるいは
p16の機能または利用性を変化させる薬剤または試薬も、細胞分裂を阻害また
は増強させるために使用できる。各々の四量体複合体構成物の場合は、小さいペ
プチドまたは他の有機分子(これは結合するという意味で複合体構成物を模すか
、その活性領域(1つまたは複数)を欠く)を細胞中に導入することが可能であ
り、これにより活性または正常に生産された複合体との相互作用を欠く複合体の
形成を生じることができる。
複合体形成の直接的阻害も非特異的であることがでる(すなわち中で
D−型サイクリン−含有四量体複合体が形成される大部分の細胞または全細胞に
影響することがでる)。、これは例えば四量体複合体の共通成分(例えばPCN
A)の機能または利用性を阻害する薬剤を細胞に導入することにより、あるいは
一緒にすべてのD−型サイクリンを阻害する薬剤の混合物またはカクテル(cock
tail)を導入することにより行うことができる。
あるいは四量体複合体の直接的阻害が可能である。すなわち入手できるより少
ない複合体構成物(例えばD−型サイクリン、CDK、PCNAまたはp21)
を生成するために作用する薬剤または試薬を使用できる。そのような薬剤または
試薬にはアンチ−センスオリゴヌクレオチド(これは転写または翻訳をブロック
する)のようなもの、および四量体複合体中に取り込まれる前、または後に複合
体構成物を分解する酵素のようなものがある。
特に細胞周期の開始を阻害し、したがって細胞分裂を阻害して変化させる本方
法に有用な薬剤または試薬は、存在する化合物または分子(例えば小さい有機分
子、アンチ−センスオリゴヌクレオチドおよび無機物質)、あるいは本方法の使
用に設計された物質であることができる。いずれの場合でもそのような薬剤は本
発明の方法により確認できる。
本発明の特別な態様で、相互反応トラップアッセイはサイクリン、特にD−型
サイクリンでの複合体形成ならびにp16/CDK4複合体形成を破壊すること
ができる試薬を同定することができる。例えば上記の2つのハイブリッドアッセ
イはそのようなアッセイに使用できる。説明を目的とした態様では、本明細書に
記載されるようなCDK4およびp16を含むGAL4活性化因子融合構造物を
、CDK4/p16複合体
の形成を破壊する候補薬剤の能力を測定するために使用する。各構造物でトラン
スフェクトされた細胞を候補薬剤と接触させ、そしてレポーター遺伝子(上記の
β−ガラクトシダーゼ)の発現レベルを検出する。発現の減少は複合体の阻害を
示している。
さらにCDK/サイクリン複合体を阻害しないCDK4/p16の阻害剤を検
出するために、3つのハイブリッドアッセイを行うことができる。例えばp16
およびD−型サイクリンの各々が、異なるDNA配列を認識する別個の融合タン
パク質のDNA結合ドメインを構成する融合タンパク質の部分である構造物を作
成できる。CDK4は次に活性化ドメインとの融合タンパク質として生成され、
そのようなp16融合タンパク質との相互作用は1つのレポーター遺伝子の発現
を生じ、一方サイクリンD融合タンパク質との相互作用は種々の遺伝子の発現を
進める。例えばp16融合タンパク質はルシフェラーゼ遺伝子の発現を進めるこ
とができ、一方サイクリンD構造物は薬剤−耐性マーカーの発現を提供する。従
ってp16/CDK4相互作用を阻害する試薬の存在中て、薬剤耐性マーカーの
発現はサイクリンD/CDK4複合体が破壊されていないことを示している。
さらにp16の阻害能力を仮定すると、本発明はさらに抗−増殖試薬として使
用できるp16の特定部分のペプチドミメトリック類似体(peptidomimetric an
alogs)を作成するような知識の使用を意図する。p16とのCDK4結合相互
作用は、突然変異誘発法および上記の相互作用トラップアッセイを使用して容易
に確認できる。同様にp16由来のペプチド断片を、CDK4/サイクリン複合
体を上記のように破壊する能力についてアッセイすることができる。
いったん適当な薬剤または試薬が同定されたら、それを個体、特にヒトまたは
他の脊椎動物に、薬剤または試薬が細胞中に所望の効果(すなわち細胞分裂の変
化)を得るために十分な量で導入する任意の経路により投与することができる。
例えば選択した薬剤を静脈内に、筋肉内に、腫瘍に直接的に注入することにより
、胃腸管を介して(例えば経口的)、腹腔的に、または鼻腔内に投与できる。場
合によってはex vivo投与(例えば血液または骨髄を身体から取り出して処置し
、そして身体に戻す)が適当なこともある。
一般的に細胞分裂を変化させるために使用する薬剤または試薬は、生理的キャ
リアー(例えば緩衝液または生理食塩水)、安定化剤、助剤および芳香剤を含む
ことができる配合物中に含まれるであろう。投与する薬剤の量は経験的に定める
ことができ、そして受容者の年齢、体重および身長、ならびに治療すべき症状の
重症度に応じて考慮して変化するであろう。
本発明のD−型サイクリンに特異的に反応する抗体も、周知方法を使用して作
成できる。例えば抗−D型サイクリン抗血清は適当な宿主(例えばウサギ、マウ
ス、ラット、ブタ)に所望の抗血清に対するD−型サイクリンを注射して、抗体
が生成されるに十分な時間後に宿主動物から採血することにより作成される。モ
ノクローナル抗体も周知方法により作成できる、Sambrook,J.ら、モレキュラー クローニング
:ア ラボラトリー マニュアル(Molecular Cloning:A Laborato ry
Manual)、コールド スプリングハーバー ラボラトリー(Cold Sring Harb
or Laboratory):コールド スプリングハーバー NY.(1989)、Hallow,E.
およびD.Lane、抗体(Antibodies):ア ラボラトリー マニュアル、コー
ルド スプリングハーバー出版、ニューヨーク、(1988)。CDK5に特異的に
反応性である抗体も既知の手法を使用して作成できる。
本発明はまたサイクリン、特にD−型サイクリンの機能を阻害または抑制する
能力について、化合物または分子をスクリーニングする方法も含む。例えば本明
細書に記載する突然変異細胞(その中でD1またはD3のようなD−型サイクリ
ンが発現している)を使用できる。D−型サイクリンを阻害する能力について評
価する化合物または分子を、化合物または分子が細胞に導入されるのに適当な条
件下で細胞と接触させる。サイクリンの阻害は細胞の生育停止または細胞分裂の
割合の減少を生じる。化合物または分子の存在下での細胞分裂の割合または程度
を、適当な対照(例えば試験薬剤が存在しない同じ型の細胞)と比較して評価す
ることにより、化合物または分子がサイクリンを阻害する能力または無能力を実
証できるであろう。存在する化合物または分子(例えば発酵ブロスまたは化学品
“ライブラリー”に存在するもの)、あるいはサイクリンのプロテインキナーゼ
活性化を阻害するために開発された化合物または分子は、本方法を使用してその
効果をスクリーニングすることができる。D−型サイクリンを阻害する薬剤も本
発明の主題である。
本発明は本明細書に記載した四量体複合体を形成を変化させる能力について、
化合物または分子をスクリーニングする方法も含む。この方法はD−型サイクリ
ンを阻害する化合物または分子を同定するために上記に記載した方法とほとんど
同じように行う。本主題の方法では、試験する化合物または分子および細胞(そ
の中でD−型サイクリン−含有複合体が形成されている)を、複合体形成が生じ
、かつ試験する化合物または分子が細胞に導入される適当な条件下混合する。複
合体形成は本明細
書に記載したように測定できる。複合体構成または複合体形成の阻害は、細胞の
生育停止または細胞分裂の割合の減少を生じる。試験する化合物または分子の存
在下での細胞分裂の割合または程度を、化合物または分子が存在しない割合また
は程度と比較することにより、化合物または分子が細胞分裂に影響したかどうか
を実証するだろう(すなわち試験する化合物または分子が存在しない場合よりも
化合物または分子が存在する方が分裂の程度が少ない場合は阻害剤である)。複
合体形成を阻害する薬剤または試薬、ならびにその結果としての細胞分裂も本発
明の主題である。
本発明を以下の実施例で説明するが、それは限定することを意味するものでは
ない。
実施例1 多くのプロテインキナーゼならびにDNA複製および修復因子PCNAに会合し たD−型サイクリンの実証 (i)実験法 細胞
ヒト二倍体肺繊維芽W138細胞をアメリカンタイプカルチャーコレクション
(American Type Culture Collection)の第13継代から得、そして10%のウ
シ胎児血清を補充したダルベッコ−改良イーグル培地中で成長させ、第16−2
2継代間を使用した。293細胞を同様に培養した。抗体
抗−サイクリンD1抗体を生成するために、ヒトサイクリンD1アミノ−末端
領域の202アミノ酸残基(〜25kDa)をコードする60
9bpDNA制限断片(Xiongら、Cell 65:691-699(1991)の第2図のヌクレオ
チド143−751のNColI断片:およびCurrent Biology1:362-364(1991
))を、ファージT7発現ベクター、pET−3d(Studierら、Methods in En zymology
,185:60-89(1990))中にサブクローン化し、そしてE.Coli BL21(DE
3)株中に導入した。細菌抽出物を溶解緩衝液(150mM NaC1、50m
M Tris−HCl、pH7.5および10%グリセロール)中に超音波によ
り細胞を破壊することにより調製し、上澄みを20,000gで10分間遠心す
ることにより清澄化した。不溶性のサイクリンDタンパク質を含有するペレット
を8M尿素を補充した溶解緩衝液に再懸濁し、室温で30分間浸透した後、懸濁
液を再度20,000gで10分間遠心した。不溶性のサイクリンDタンパク質
を含有するペレットをSDS試料緩衝液に再懸濁し、10%SDS−ポリアクリ
ルアミドゲルで分離した。低温室中で0.25M KClでゲルを染色した後、
25kDaのサイクリンDタンパク質が視覚化され、切り出された。ゲル切片を
18ゲイジの針に繰り返して通して細分化し、そしてサイクリンDタンパク質は
細分化したゲル粒子を0.1%SDSを含有するPBS中で42℃に数時間イン
キュベーションして抽出し、ウサギの注射に使用した。抗−サイクリンD1免疫
グロブリンをアフィニティ精製するために、細菌が生産したp25タンパク質を
Reaci−Gel(6X)に製造元の仕様に従い架橋結合させた。アフィニテ
ィカラムを過剰容量のPBS(0.05%Tween20を含有する)で、血清
をカラムに添加する前後に洗浄した。グリシン−NaCl(pH2.5)で溶出
した結合した免疫グロブリンは、すぐに抗体を中和化するために1.5M Tr
is−HCl、pH8.5に入れた。
免疫グロブリンタンパク質により起こる高いバックグラウンドを減少するために
、アフィニティ精製しな抗−サイクリンD1をプロテインA−アガロースビーズ
にHarlowおよびLaneに従い架橋結合した(抗体(Antibodies):ア ラボラトリ ー
マニュアル(A Laboratory Manual)、コールドスプリングハーバー出版、
NY(1988))。ウエスタンブロットで、この抗−サイクリンD1抗血清は
細菌が生産したヒトサイクリンD2と弱く交差反応し、細菌が生産したヒトサイ
クリンD3とは極めてわずかに反応し、そして全W138細胞溶解物から単一バ
ンドを検出する。RIPA緩衝液(0.1%SDS)での免疫沈降物において、
90%より多くのサイクリンD1−会合p36、p33、p31およびp21が
消失するが、一方サイクリンD1はNP−40(0.5%)緩衝液での免疫沈降
物中の量と同量のままであった。
抗−CDK5抗体生産に関して、ペプチドCYESDFCPP(下線のアミノ
酸残基はCDK5のカルボキシ末端領域に対応する)を合成した。ペプチドをカ
ギアナカサガイ ヘモシアニン(ピアス:Pierce)にカップルさせ、これを次に
標準法によるウサギの免疫化のために使用した(Greenら、Cell 28:477-487(19
82))。
抗−サイクリンD3ペプチド抗体を同様に合成ペプチドCDELDOASTP TDVRDIDL
(下線の領域はヒトサイクリンD3のカルボキシ末端領域に対
応する)に対して生成した。後にウサギを細菌が生産した完全長のヒトサイクリ
ンD3で剌激した。サイクリンD3特異的免疫グロブリンをアフィニティカラム
(17−merのサイクリンD3ペプチドがReati−Gel(6X)に架橋
結合している)で精製した。アフィニティ精製抗−サイクリンD3ペプチド抗体
は細菌が生産したサ
イクリンD1またはD2とは、ウエスタンブロットで交差反応せず、W138細
胞溶解物由来サイクリンD1とも免疫沈降しない。
エス.ポンベ(S.pombe)p34cdc2(G8)抗血清は以前に記載された(Dr
aettaら、Cell 50:319-325(1987))。ヒト自己−免疫抗−PCNA抗血清は一
般的に知られている。ウエスタンブロットに使用したアフィニティ精製した抗−
PCNAモノクローナル抗体はベーリンガーマンハイム(Boehringer Mannheim
)から購入した。免疫沈降法に使用したアフィニティ精製した抗−PCNAモノ
クローナル抗体はオンコジーンサイエンス(Oncogene Science)から購入した。
抗−CDK2ペプチド抗血清はすでに記載され(Pagnoら、EMBO J 11:961-971(
1992))、そしてCDC2、CDK4およびCDK5ポリペプチドとは交差反応
しない。抗−CDK4抗血清はグルタチオントランスフェラーゼ(GST)およ
びCDK4のC−末端部分の融合タンパク質に対して生成された。これはCDK
2およびCDK5とは交差反応しない。(ii)ヒトcDNA発現ライブラリーのスクリーニング
ラムダZAP II(#936201)で構築されたヒトHeLa細胞cDNA
発現ライブラリーはストラタジーン(Stratagene)からのものであった。ヒトp
34cdc2は細菌から生産した時は高度に不溶性であった。便利な抗体スクリーニ
ング法(YoungおよびDavis、Proc.Natl.Acad.Sci. 80:1194-1198(1983))
はファージプラーク中に十分な量の可溶性組換えタンパク質が存在する場合にの
み適する。したがってスクリーニング法は、組換えタンパク質をニトロセルロー
ス膜に移し取った後に溶解するために6Mグアニジンを使用することを含む工程
を入れて変更し、この方法は最初に特定の活性を持つリホールド(refolded)さ
れた
組換えタンパク質を生産するために開発された(Vinsonら、Gene Dev.2:801-806
(1988))。λZAPII、HeLa cDNAライブラリー由来の2百万個のフ
ァージプラークを、エス.ポンベ(S.pomb p34cdc2(G8)に対する抗血
清でスクリーニングした。ファージプラークをIPTG−を含浸させたニトロセ
ルロースフィルターで42℃で4時間覆い、フィルターをカルチャーの皿から除
去し、そして次に6Mグアニジン−HCl(25mM Hepes、pH7.0
、50mM NaCl、2mM DTTを含有する緩衝液中)で25℃にて10
分間処理した。フィルターをグアニジン無しのTris−緩衝化生理食塩水で抗
体とインキュベーションする前に洗浄した。この方法は抗体検出信号を大いに増
強し、これはおそらくグアニジンによる細菌生産ポリペプチド沈殿の可溶化によ
るものであろう。G8−陽性cDNAクローンをpBluescript SK
ベクター(ストラタジーン)中にクローン化し、そしてABI全自動DNA合
成機(モデル373A)で両方向から配列決定した。配列相同性の調査について
は、FASTAプログラムを使用した(PearsonおよびLipman、Proc.Natl.Acad. Sci.
85:2444-2448(1988))。(iii)免疫沈降およびウエスタン−ブロッティング
[35S]メチオニンでの代謝標識に関しては、サブ−コンフルエント(sub-co
nfluent:40−60%)細胞を、予め温めた標識媒質(10%透析ウシ胎児血清
[ギブコ:GIBCO]を補充したメチオニン−、システイン−無しのDMEM
[ICN]で2回標識した。標識媒質で30分間、インキュベーションした後、
[35S]メチオニン(Trans35S−標識、ICN)を媒質に加え(約200
μCi/ml)、そし
て溶解前に4−6時間インキュベーションし続けた。免疫沈降のすべての工程は
冷室にて行った。40−60%コンフルエントの150mMの皿からの細胞を、
冷PBSで2回洗浄し、そしてNP−40溶解緩衝液(50mM Tris−H
Cl、pH7.4、150mM NaCl、20mM EDTA 0,5% N
P−40,1mM PMSF 25μg/mlロイペプチン、25μg/mlア
プロチニン、1mM ベンズアミジンおよび10μg/mlトリプシンインヒビ
ター)中で解体し、そして15−30分間回転させながら溶解する。核を15,
000gで5分間遠心することにより取り出し、そして溶解物を前抗血清または
正常ウサギ血清およびIgGソルブ(sorb)のいずれかと20−30分間インキ
ュベーションすることにより前−清澄化し、続いて10分間、15,000gで
遠心した。プロテインA−アガロースビーズ(ピアス)と予めカップルした抗体
を清澄化した溶解物に加え、そして6−8時間インキュベーションした。免疫沈
降物を3−4回室温で、溶解緩衝液により洗浄し、SDS試料緩衝液に再懸濁し
、そしてSDS−ポリアクリルアミドゲルで分離した。
35Sメチオニン−標識沈殿物については、ポリアクリルアミドゲル(V8タン
パク質溶解マッピング実験についてはこれを除く)を10%氷酢酸および30%
メタノールて30分から1時間固定し、30分間オートラジオグラフィー増感剤
(デュポン:Du pont)を含浸させることにより増感させ、そして水中で15−
30分間沈殿させる。増感ゲルは乾燥させ、X−線フィルムに−70℃で暴露さ
せる。ウエスタンーブロッティングについては、ポリペプチドをニトロセルロー
ス膜にSDS電気ブロッティングシステム(ミリポア:Millipore)を使用して
400mAの定
電流で45分間写し取った。フィルターを5%乾燥ミルクを含有するTBST(
20mM Tris−HCl、pH7.5、137mM NaCl 0.1%
Tween−20)で1−3時間ブロックし、5%乾燥ミルクを含有するTBS
T中で4時間から一晩第一抗体とインキュベーションし、そして4回、10分間
、それぞれTBSTで洗浄した。適当な第二抗体(1:10,000希釈のシー
ト抗−マウスIgに結合した西洋ワサビペルオキシダーゼまたはロバ抗−ラビッ
トIg、アマシャム)をフィルターと1時間インキュベーションし、そして特異
的タンパク質を増感化学発光システム(ECL、アマシャム)により検出した。
(iv)部分的タンパク質溶解ペプチドマッピング
網状赤血球溶解システム(プロメガ)をカップルさせたTNTを使用するT7
RNAポリメラーゼでのインビトロ翻訳については、ヒト サイクリンD1、サ
イクリンD2、サイクリンD3、CDC2、CDK2、CDK3、CDK4、C
DK5およびPCNAをpBluescriptベクター(ストラタジーン)中
にサブクローン化した。[35S]メチオニン−標識溶解物の免疫沈降およびSD
S−ポリアクリルアミドゲル電気泳動は上記と同じである。ポリアクリルアミド
ゲルを予め固定および増感処理することなく乾燥させ、フジ 画像プレートに露
出させ、そしてフジ バイオーイメージング アナライザー(Fuji bio-imaging
analyzer)BAS2000で視覚化した。画像出力を鋳型として使用して、1
7.5%SDS−PAGEで分離したゲルからゲル中の適当なタンパク質バンド
を、種々の量のエス.アウレウス(S.aureus)V8プロテアーゼで(Cleveland
ら、J.Biol.Chem 252:1102-1106(1977))および(HarlowおよびLane,抗体(A ntibodies
):アラボラトリーマニュア
ル(A Laboratory Manual)、コールドスプリングハーバーラボラトリ−出版、N
Y(1988))に従い消化し、切り出した。ゲルを乾燥し、そしてX−線フィルム
に2週間暴露するか、またはフジ画像分析機BAS2000で分析した。実施例2 DNA腫瘍ウイルスまたはその発癌性産物による細胞の形質転換に関連した細胞 周期複合体の選択的サブユニット転位の実証
(i)DNA腫瘍ウイルスSV40での細胞の形質転換は細胞周期複合体の転位
に関連する
[35S]メチオニン−標識細胞溶解物の調製およびポリアクリルアミドゲル電
気泳動は上記、および国際出願公開第92/2076号明細書のように行った。細胞溶
解物はヒト正常二倍体繊維芽細胞W318またはDNA腫瘍ウイルスSV40形
質転換W138細胞VA13のいずれかから調製した。細胞は各細胞周期遺伝子
産物に対する抗体と免疫沈降した。(ii)2つの異なる細胞系対中の細胞周期複合体のサブユニット転位
細胞溶解物の調製法は上記記載のものと同じである。2つの異なる細胞対系を
これらの実験に使用した。HSF43は正常ヒト二倍体繊維芽細胞系であり、そ
してCT10(完全な名前はCT10−2C−T1)はSV4O巨大腫瘍抗原で
形質転換したHSF43由来のものである。CV−1はアフリカミドリサル腎臓
細胞系であり、そしてCOS−1はSV40で形質転換したCV−1由来のもの
である。(iii)DNA腫瘍ウイルスSV40にる細胞形質転換は細胞周期複合体のPC NAサブユニットの転位に関連する
細胞溶解物の調製、電気泳動およびウエスタンブロッティング条件は、上記と
同様である。正常ヒト二倍体細胞系およびそのSV40形質転換細胞系は上記に
記載したものと同様である。各抗体での免疫沈降物はポリアクリルアミドゲルで
分離し、そして抗−PCNA抗体とブロットした。(iv)DNA腫瘍ウイルスSV40による細胞形質転換は細胞周期複合体のCD K4サブユニットの転位に関連する
細胞溶解物の調製、電気泳動およびウエスタンブロッティング条件は、上記と
同様である。正常ヒト二倍体細胞系およびそのSV40形質転換細胞系は上記に
記載したものと同様である。各抗体由来の免疫沈降物はポリアクリルアミドゲル
で分離し、そして抗−CDK4抗体とブロットした。
実施例3
CDK4活性の阻害剤16IlNK4のクローニング (i)2つのハイブリッドアッセイを使用する16IlNK4のクローニング
サッカロミセス セルビシエ(Saccharomyces cerevisiae)YPB2細胞をG
AL4db−p16INK4融合体を含有するプラスミド、ならびにそれぞれc
dc2(CDK1)、CDK2、CDK4、CDK5、PCNA(増殖性細胞核
抗原)および分裂酵母Snf1に融合したGAL4adを含有するプラスミドで
同時に形質転換した。両方のプラスミドに選択的な培地(トリプトファンマイナ
ス、およびロイシンマイナス)で細胞を生育させた後、2つのコロニーを無作為
に取り出し、ヒスチジンを含む、または欠いたプレートに画線培養した。ヒスチ
ジン無しでの生育は、GAL4−反応性プロモーター下のHIS3遺伝子の発現
に依
存し、従って機能的GAL4活性化因子がp16INK4が対応する標的タンパ
ク質との相互反応を介レて再構成されたことを示している。(ii)p16INK4CDKsの相互反応
精製した細菌生産GSTp16INK4融合タンパク質を、(35S)−標識イ
ンビトロ翻訳cdc2、CDK2、CDK4およびCDK5と混合した。混合物
は0.5μgの精製GST−p16INK4および等量のインビトロ翻訳タンパ
ク質(0.5−5μl;TNTプロメガ)を最終容量が200μlの緩衝液(5
0mM Tris−HCI,pH8、120mM NaC1および0.5% N
onidet P−40を含有する)中に含有した。4℃で1時間後、15μl
のグルタチオンーアガロースビーズを加え、そしてインキュベーションをさらに
1時間再開した。ビーズを遠心により取り出し、インキュベーション緩衝液で4
回洗浄し、そして標準的なタンパク質−ゲル添加緩衝液と混合した。試料を15
%のポリアクリルアミドゲルに添加し。そして(35S)標識タンパク質はフルオ
ログラフィーで検出した。GSTp16INK4融合タンパク質をpGEX−K
Gベクターで過剰発現させ、標準法で精製した。インビトロ翻訳鋳型はpB1u
escriptベクター(スタシタジーン)から得た。(iii)p16INK4のタンパク質溶解マッピング
インビトロ翻訳(35S)−標識p16INK4(TNTプロメガ)を、pBl
uescriptベクター(ストラタジーン)中にクローン化したp16INK
4 cDNAを鋳型として使用して得、そしてCDK4−会合p16タンパク質
を代謝的に(35S)−標識HeLa細胞溶解物由来の抗−CDK4血清と一緒に
免疫沈降させた。部分的タンパク質溶
解は対応するゲル切片について、緩衝液による徹底的な平衡化後に行い、そして
消化はNCSを種々の濃度で加えて行った。生成物を17.5%のポリアクリル
アミドゲルで泳動し、そしてホスホイメージャー(phosphoimager)Fuji 2000で
分析した。(iv)p16INK4のCDK4−サイクリンD複合体に対する効果の検出
p16INK4、CDK4、サイクリンD1またはCDKおよびサイクリンD
1の両方を一緒に過剰発現しているバキュロウイルス−感染細胞を、代謝的に(35
S)−標識した。種々のインキュベーション混合物をp16INK4、CDK
4、サイクリンD1、ならびにCDKおよびサイクリンD1の両方を含有する抽
出物により構成し、そして抗−p16INK4血清、抗−CDK4血清と、予め
プレインキュベーションすることなく免疫沈降させ、そして抗−CDK血清は元
に抗血清および抗−サイクリンD1血清を生成するために使用したペプチドとプ
レインキュベーションした。免疫沈降物はSDS−PAGEで分析した。
すべての上述の引用例および報告は引用することにより本明細書に含まれる。
均等物
当業者は日常的な実験を使用するだけで、本明細書に記載された本発明の特別
な態様の多くの均等物を確認することができると理解するであろう。そのような
均等物は以下の請求の範囲により包含されるものである。
配列表
(1)一般情報:
(i)出願人:
(A)名前:コールドスプリングハーバーラボラトリー
(B)通り:100 バングタウン ロード
(C)市:コールドスプリングハーバー
(D)州:ニューヨーク
(E)国:米国
(F)郵便番号(ZIP):11724
(G)電話番号:(617)227−7400
(H)ファックス:(617)227−5941
(ii)発明の名称:サイクリン複合体の転位、およびそれに関連する使用
(iii)配列の数:4
(iv)コンピューター読み取り先:
(A)媒体の種類:フロッピーディスク
(B)コンピューター:IBM PCコンパチブル
(C)実行システムPC−DOS/MS−DOS
(D)ソフトウェア:ASCII(テキスト)
(iv)先願データ:
(A)出願番号:米国07/963,308
(B)出願日:1992年10月16日
(vi)先願データ:
(A)出願番号:米国07/991,997
(B)出願日:1992年12月17日
(2)配列番号1に関する情報:
(i)配列特性
(A)長さ:1089塩基対
(B)型:核酸
(C)鎖の数:二本鎖
(D)トポロジー:直線
(ii)分子の型:DNA(ゲノム)
(ix)特徴
(A)名前/キー:CDS
(B)位置:13..888
(xi)配列の記載:配列番号1:
(2)配列番号2に関する情報:
(i)配列特性:
(A)長さ:292アミノ酸
(B)型:アミノ酸
(C)トポロジー:直線
(ii)分子の型:タンパク質
(xi)配列の記載:配列番号2:
(2)配列番号3に関する情報:
(i)配列特性
(A)長さ:948塩基対
(B)型:核酸
(C)鎖の数:両方
(D)トポロジー:直線
(ii)分子の型:cDNA
(ix)特徴
(A)名前/キー:CDS
(B)位置:19..465
(xi)配列の記載:配列番号3:
(2)配列番号4に関する情報:
(i)配列特性:
(A)長さ:148アミノ酸
(B)型:アミノ酸
(C)トポロジー:直線
(ii)分子の型:タンパク質
(xi)配列の記載:配列番号4:
【手続補正書】特許法第184条の8
【提出日】1994年5月16日
【補正内容】
請求の範囲
1.p21が
a)サイクリンキナーゼ、サイクリンまたは両方と複合体を形成するか、あるい
は
b)サイクリンキナーゼ、サイクリンまたは両方と複合体を形成しないか、のい
ずれかを測定することを含んで成る細胞の形質転換を診断する方法であって、p
21がサイクリンキナーゼ、サイクリンまたは両方と複合体を形成しないときは
細胞の形質転換を示す該方法。
2.p21がサイクリンキナーゼ、サイクリンまたは両方と複合体を形成するか
またはしないかを測定するために抗体を使用する、請求の範囲第1項記載の方法
。
3.サイクリンがD−型サイクリンまたはA−型サイクリンであり、そしてサイ
クリンキナーゼがCDK4である請求の範囲第1項記載の方法。
4.p16が
a)サイクリンキナーゼと複合体を形成するか、あるいは
b)サイクリンキナーゼと複合体を形成しないかを測定することを含んで成る細
胞の形質転換を診断する方法であって、p16がサイクリンキナーゼと複合体を
形成するならばそれは細胞の形質転換を示す該方法。
5.p16がサイクリンキナーゼと複合体を形成するか、またはしないかを測定
するために抗体が使用される請求の範囲第4項記載の方法。
6.サイクリンキナーゼがCDK4である請求の範囲第4項記載の方法。
7.p19が
a)サイクリンと複合体を形成するか、あるいは
b)サイクリンと複合体を形成しないかを測定することを含んで成る細胞の形質
転換を診断する方法であって、p19がサイクリンと複合体するときは細胞の形
質転換を示す該方法。
8.p19がサイクリンと複合体を形成するか、またはしないかを測定するため
に抗体が使用される請求の範囲第7項記載の方法。
9.サイクリンがサイクリンAである請求の範囲第7項記載の方法。
10.配列番号2のアミノ酸配列を有する組換えCDK5。
11.CDK5をコードするcDNA。
12.配列番号1またはその部分のヌクレオチド配列により表される単離DNA
。
13.配列番号4またはその部分のアミノ酸配列を含んで成る組換え的に生産し
たp16INK4タンパク質。
14.上記p16INK4タンパク質が融合タンパク質である請求の範囲第13項記
載の組換え的に生産したタンパク質。
15.上記p16INK4融合タンパク質が2つのハイブリッドアッセイで機能する
請求の範囲第14項記載の組換え的に生産したタンパク質。
16.上記断片がcdk4に結合する請求の範囲第13項記載の組換え的に生産
したタンパク質。
17.配列番号4に表されるタンパク質の免疫原性部分。
18.配列番号4またはその部分により表されるp16INK4タンパク質をコード
する核酸。
19.上記p16INK4タンパク質の上記部分がcdk4に結合する請求の範囲第
18項記載の核酸。
20.配列番号3またはその部分により表されるヌクレオチド配列を含
んで成る範囲第18項記載の核酸。
21.配列番号3により表されるヌクレオチド配列を含んて成る単離核酸。
22.p16INK4タンパク質に特異的に免疫反応性である抗体。
23.患者から単離した細胞試料中の、細胞中のp16タンパク質レベルを測定
するために、p16INK4に特異的な抗体を含んで成る形質転換細胞を同定するた
めの診断試験キット。
24.p16INK4に特異的な抗体が配列番号4のアミノ酸配列を有するタンパク
質に特異的である請求の範囲第23項記載の診断キット。
25.患者から単離した細胞試料中のp16タンパク質をコードする核酸の存在
または不在を測定するために、p16INK4核酸配列に特異的な核酸プローブを含
んで成る、形質転換細胞を同定するための診断試験キット。
26.核酸プローブが配列番号3の核酸由来である請求の範囲第25項記載の診
断試験キット。
27.配列番号4により表されるアミノ酸配列の部分を含んで成り、かつcdk
4/サイクリン複合体の結合を破壊するペプチドミメティック。
28.
i.サイクリン、サイクリン−依存性キナーゼ(cdk)およびp21を含んで
成るcdk−複合体を提供し、ここでcdk−複合体はcdk複合体が自然に生
じる細胞中でcdk−複合体と通常存在する他のタンパク質を実質的に含まずに
単離されており、
ii.cdk−複合体をcdk−複合体がリン酸化できる基質、および候補阻害剤
と接触させ、
iii.基質のリン酸化レベルを測定し、そして
iv.候補阻害剤の存在下での基質のリン酸化レベルを候補阻害剤が不在下での基
質のリン酸化レベルと比較する
工程を含んで成るサイクリン−依存性キナーゼの阻害剤を同定するアッセイであ
って、候補阻害剤存在下でのリン酸化レベルの減少は候補阻害剤のcdk阻害活
性を示すものである、該アッセイ。
29.阻害剤が正常細胞の増殖に比べて選択的に形質転換細胞の増殖を阻害でき
るサイクリン−依存性キナーゼの阻害剤を同定するアッセイであって
i.サイクリン、サイクリン−依存性キナーゼ(cdk)およびp21を含んで
成る正常細胞由来の第一cdk−複合体、ならびにサイクリンおよびcdkを含
んで成る形質転換細胞由来の第二cdk−複合体
を提供し、
ここで各々の第一および第二cdk−複合体はcdk複合体が由来する細胞中
で通常cdk−複合体と存在する他のタンパク質を実質的に含まずに単離されて
おり、
ii.各cdk−複合体をcdk−複合体がリン酸化できる基質、および候補阻害
剤と接触させ、
iii.基質のリン酸化レベルを測定し、そして
iv.各cdk−複合体の候補阻害剤の存在下での基質のリン酸化レベルを候補阻
害剤が不在下での基質のリン酸化レベルと比較する、
工程を含んて成り、候補阻害剤存在下てのリン酸化レベルの減少は候補阻害剤の
cdk阻害活性を示すものてあり、そして阻害剤の選択性は第
一および第二cdk−複合体の間のcdk阻害活性の差異を比較することにより
測定される該アッセイ。
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(51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI
C12N 9/12 9359−4B
C12Q 1/68 A 9453−4B
G01N 33/53 D 8310−2J
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),AU,CA,JP,KR