【発明の詳細な説明】ルイス酸で促進される、改良された転移アルミナ触媒、およびこれらの触媒を用 いたイソパラフィンのアルキル化プロセス 発明の分野
本発明は:a)触媒系、b)特定量の水を含有する、改良された触媒系、c)
ルイス酸(好ましくはBF3)で促進される、特定の転移アルミナを含有する成
分、およびd)イソパラフィンとオレフィン類とのアルキル化のための触媒ブロ
セス、に関する。触媒成分は、比較的低い温度で、転移アルミナをルイス酸と接
触することにより生成される。この触媒系は、上記成分、および付加的な量の遊
離のルイス酸を含有する。このプロセスは、この触媒成分およびその同類の触媒
系を用いて、オレフィン/イソパラフィンのアルキル化を引き起こす。発明の背景
強酸アルキル化プロセスを用いた、モーター用燃料のための高オクタン価(oc
tane)ブレンド成分の処方は、周知である(ここで、強酸とは、フッ化水素酸ま
たは硫酸である)。アルキル化は、アルキル基を有機分子、典型的には芳香族分
子またはオレフィン分子、に付加する反応である。ガソリンブレンドのストック
の処方のためには、この反応はイソパラフ
ィンとオレフィンとの間の反応である。アルキル化プロセスは、高い圧縮比また
は過給飛行機エンジンといった要求を満足させるオクタン価の高いガソリンが必
要とされた、第二次大戦から広く普及した。初期のアルキル化装置(unit)は、
クラッキング装置からの軽質の最終副生成物(イソパラフィンおよびオレフィン
)を利用するために、液体(fluid)触媒クラッキング装置と組み合わせて建造
された。流動(fluidized)触媒クラッキング装置は、いまだにガソリンのアル
キル化装置のフィードストックの主要な源である。強酸アルキル化の技術は完成
された状態であるにもかかわらず、フッ化水素酸および硫酸を用いた技術に関わ
る問題点はいまだに、厳しい状態である。すなわち、使用した酸の廃棄、使用中
または貯蔵中の、故意ではない酸の放出、酸触媒系のかなりの腐食性、および他
の環境に関わる問題点である。
腐食性の成分をほとんど含まないか、あるいは全く含まない固体酸触媒を用い
た実用的なアルキル化プロセスが、かなり前から目標を達成しているとはいえ、
商業的に実施可能なプロセスは存在していない。
公開文献は、種々の炭化水素フィードストックをアルキル化するために用いら
れるいくつかの系を示している。
The American Oil Companyは、C2〜C12(好ましくはC2〜C3)オレフィン
およびC4〜C8イソパラフィンを包含するアルキル化プロセスに関する一連の特
許を、1950年代の中頃に取得している。ここで用いられている触媒は、BF3処
理
固体であり、そしてこの触媒系(このアルキル化プロセスで用いられているよう
に)はまた、遊離のBF3も含んでいる。これらの特許を以下の一覧にまとめた
。
上記特許はいずれも、BF3で処理された適切なアルミナを用いた、オレフィン
およびイソパラフィンのアルキル化のためのプロセスを開示していない。
関連する触媒が、オレフィンのオリゴマー化に用いられてきた。Watkinsの米
国特許第2,748,090号は、VIII族金属(好ましくはニッケル)、リン酸(好まし
くは亜リン酸ペントキシドを含む)(これらはすべて、アルミナ吸着剤上に載せ
られており、そしてBF3で前処理されている)から成り立つ触媒の利用を示唆
している。芳香族のアルキル化が示唆されている。
Thomasの米国特許第2,976,338号は、BF3またはH3PO4の複合体を含有し、
任意に吸着剤(例えば活性炭)上またはモレキュラーシーブ上に担持され、任意
に酸フルオライドカリウム(potassium acid fluoride)を含む、ポリマー化触
媒を示唆している。
いくつかの参考文献が、芳香族化のアルキル化のためのアルミナ含有触媒の使
用を示唆している。Hervertらの米国特許第3,068,301号は「オレフィン作用(ol
efin-acting)化合物」を用いた芳香族のアルキル化のための触媒を示唆してい
る。この触媒は固体の、SiO2を10%まで含むシリカ安定化アルミナであり、
これらはすべて、100重量%までのBF3で改質されている。これらの先行文献は
いずれも、本明細書で開示されているプロセスまたはこのプロセスで用いられる
物質のいずれも示唆しない。
他のBF3処理アルミナが知られている。例えば、Hervertらの米国特許第3,11
4,785号はBF3で改質された、実質的に無水のアルミナを用いて1-ブテンの二
重結合を移動させて2-ブテンを生成することを示唆している。好ましいアルミナ
は、実質的に無水のγ−アルミナ、η−アルミナ、またはθ−アルミナである。
これらの種々のアルミナは、アルミナのタイプおよび処理温度に依存して、約19
重量%までのフッ素を、吸着するか、あるいは、複合体を形成する。このアルミ
ナは、高温で、BF3により処理される。Hervertらはこれらの触媒をアルキル化
反応に使用することを開示しない。
さらに、Hervertらの米国特許第3,131,230号は、三フッ化ホウ素および三フッ
化ホウ素で修飾された実質的に無水のアルミナを含有する触媒を用いた、芳香族
化合物のアルキル化プロセスを記載している。この参考文献は、炭化水素原料中
に、水を100万あたり400部(重量モル(molal))の量で、そして三フッ化ホウ
素を100万あたり3200部(重量モル)の量で炭化水素原料に導入することによっ
て、触媒の活性が維持されることを教示している。この参考文献は、三フッ化ホ
ウ素ガスによるアルミナの改質が室温から約300℃までの範囲で行われることを
教示しているが、この工程は非常に発熱的であることが注目される。例えば、改
質が室温で行われる場合、温度波はアルミナを通して移動し、その結果、温度は
約150℃またはそれ以上まで上昇する。
Imaiの米国特許第4,407,731号においては、アルミナ(好ま
しくは、γ−アルミナ、η−アルミナ、θ−アルミナ、シリカ、またはシリカ−
アルミナ)のような高表面積の金属酸化物を、BF3の基材(base)または支持
体(support)として使用している。このBF3処理された金属酸化物は、一般的
なオリゴマー化反応およびアルキル化反応に用いられる。この金属酸化物は、B
F3による処理に先だって、複雑な方法で処理される。第1の工程で、金属酸化
物を酸溶液および塩基水溶液で処理する。この支持体を、硝酸アンモニウムのよ
うな水分解性の塩で洗浄する。この支持体を、洗浄水の濾液中にアルカリまたは
アルカリ土類金属が見いだされなくなるまで、脱イオンH2Oで洗浄する。この
支持体を乾燥し、か焼する。この開示は、次にBF3が、この処理された金属酸
化物支持体に導入されることを、包括的に示唆している。実施例はBF3を、高
温、例えば300℃から350℃で導入することを示している。
同様に、Mialeらの米国特許第4,427,791号は無機酸化物材料(例えば、アルミ
ナまたは酸化ガリウム)の酸触媒活性が、この材料をフッ化アンモニウムまたは
フッ化ホウ素と接触させ、この処理された無機酸化物を水酸化アンモニウム水溶
液または塩溶液と接触させ、そして得られた材料をか焼することによって増大す
ることを示唆する。このような方法で処理された無機酸化物は高められたブレン
ステッド酸性を示すといわれ、そして、そのため多くの反応(例えば、種々の炭
化水素化合物のアルキル化および異性体化)の触媒としての、改良された酸活性
を有するといわれている。この処理された
無機酸化物の使用法として特に示唆されているのは、種々のゼオライト材料のた
めのマトリックスまたは支持体であり、最終的には酸触媒される有機化合物転換
プロセスに使用される。
Rodewaldの米国特許第4,751,341号は、ZSM-5タイプのゼオライトをBF3で処
理して、その孔のサイズを減少させ、その形状選択性を増大させ、そしてオレフ
ィンのオリゴマー化反応に対するその活性を増加させることを示している。この
特許はまた、これらの材料を芳香族化合物のアルキル化に使用することも示唆し
ている。
いくつかのソビエトの刊行物は、Al2O3をアルキル化プロセスに使用するこ
とを示唆している。これらの触媒(3ppmから5ppmの水と、BF3の周期的な添加
とを伴う)を用いたベンゼンのアルキル化が、Yagubov,Kh.M.ら、Azerb.Khi m.Zh.
,1984,(5)p.58に示されている。同様に、Kozorezov,YuおよびLevits
kii,E.A.,Zh.Print.Khim.(Leningrad),1984,57,(12),p.2681に、
比較的高温で加熱し、そして100℃でBF3により改質したアルミナの使用が示さ
れている。BF3を過剰量で維持することについての示唆はない。Al2O3/BF3
触媒を用いた、イソブタンのアルキル化が、Neftekhimiya,1977,17(3),p.
396; 1979,19(3),p.385に示唆されている。このオレフィンはエチレンで
ある。反応の間、BF3を過剰量で維持することについての示唆はない。アルミ
ナの結晶形は記載されていない。
Chouらの米国特許第4,918,255号は、「ルイス酸および大孔径ゼオライトおよ
び/またはゼオライトではない無機酸化物」として記載される複合体を用いたイ
ソパラフィンおよびオレフィンのアルキル化のためのプロセスを示唆している。
この開示されたプロセスは、α−オレフィン原料の実質的な含量を低減する異性
体化が必要とし、そしてさらに、このアルキル化プロセスに水を添加することで
、プロセスの操作性が向上することを示唆している。この無機酸化物(特にSi
O2)を用いて得られた最も実験オクタン価(Reserch Octane Number)(RON)
が高い生成物はこの特許中の表6に示され、94.0である。
同様に、PCT公開公報WO90/00533号および90/00534号(これらは、前記のChou
らの米国特許の一部に基づいている)はChouらのプロセスと同様のプロセスを示
唆している。WO90/00534は、三フッ化ホウ素処理された無機化合物を用いたプロ
セスに限定されており、この無機化合物は「アルミナ、シリカ、ボリア(boria
)、リンの酸化物、酸化チタン、酸化ジルコニウム、クロミア(chromia)、酸
化亜鉛、マグネシア、酸化カルシウム、シリカ−アルミナ−ジルコニア、クロミ
ア−アルミナ、アルミナ−ボリア、シリカ−ジルコニア、および種々の純度状態
の、天然由来の種々の無機酸化物(例えば、ボーキサイト、クレーおよびケイソ
ウ土)」を包含する。特に注目される点は「好ましい無機酸化物は非晶質の二酸
化ケイ素および酸化アルミニウムである」という記述である。実施例
は、非晶質シリカ(およびBF3)を用いて、RONが94を超えないアルキル化物(
alkylate)を生成することを示してる。
これらの開示はいずれも、低温でルイス酸により促進される結晶性転移アルミ
ナも、このような処理がNMRスペクトルに及ぼす効果も開示しない。これらの開
示は、これらをイソパラフィン/オレフィンのアルキル化に使用することも示し
ていない。これらの開示は、さらに、これらの特別に処理されたアルミナをイソ
パラフィンおよびオレフィンを用いるアルキル化のいかなる利点をも示していな
い。図面の簡単な説明
図1A〜1Dは、ある温度範囲でBF3によって処理された、ある転移アルミ
ナについての核磁気共鳴(NMR)プロットである。
図2は、本発明のプロセスに対するオクタン価の感度をオレフィン原料含量の
関数として示した、三次元グラフである。
図3は、γ−アルミナの遊離水の含量(1500〜1650cm-1のバンド)およびヒド
ロキシル基含量(3300〜3800cm-1)に対する熱処理の影響を温度の関数として示
した、FTIRスペクトルである。
図4Aおよび図4Bは、イソブテンおよび混合ブテンの原料ストリーム(stre
am)のアルキル化において達成される触媒寿命(処理されたオレフィンの量、ま
たは触媒齢(aged))および式量オクタン価(formula octane number)(FON、
またはR
+M/2)に対するアルミナ表面上の特定量の遊離水の効果を示すグラフである。
図5は、アルキル化における初期の水の影響および成果を、アルキル化生成物
のC8%、混合物中のアルキル化物のRON、触媒寿命(処理されたオレフィンの量
または齢(age))、およびC8の収率が顕著に低下する前のオレフィンの総処理
量に関して示したグラフである。発明の要旨
本発明は、1種またはそれ以上の転移アルミナを含有する触媒成分(これは、
望ましくはこの成分が特定のNMRスペクトルを示すような、かなり低い温度で1
種またはそれ以上のルイス酸(好ましくはBF3)で処理される)、転移アルミ
ナおよび1種またはそれ以上のルイス酸および限定された量の水を含有する、改
良された触媒系、この触媒成分を遊離ルイス酸と共に含有する触媒系、およびこ
れらの触媒系を用いるオレフィン/イソパラフィンのアルキル化プロセスの工程
である。
この触媒系、すなわち遊離ルイス酸と組み合わせた触媒成分、の使用によって
、-30℃と40℃との間の多様な反応温度において、高オクタン価のアルキル化物
がイソブタンおよびブテンから生成する。この触媒の高い活性により、操作コス
トが低くなり得る。なぜなら、その、高い空間速度で操作する能力、およびアル
キル化物の生成の増加による。発明の説明
本発明は:
A)ルイス酸で処理された特定の転移アルミナを含有する触媒成分、
B)少なくとも少量の遊離ルイス酸と組み合わせた上記触媒成分を含有する触
媒系、
C)限定された量の水を含む、触媒成分(A)または触媒系(B)、および
D)この触媒系を用いて、オレフィンおよびイソパラフインから分枝パラフィ
ン生成物を生成するためのアルキル化プロセスである。触媒成分
本発明の触媒成分は、ルイス酸、好ましくはBF3で処理されている、主要量
の転移アルミナ(好ましくは、η−、またはγ−アルミナ)を含有するか、ある
いは本質的にこれから成る。この触媒成分は、好ましくは、ルイス酸またはアル
ミナ中に微量で存在し得る不純物の金属を除いては、いかなる金属(もちろん、
アルミニウム、および、半金属のホウ素のようなルイス酸に結びつく任意の金属
を除く)をも、原料中に存在する炭化水素を水素化することを可能とするような
触媒量では含まない。アルミナ
酸化アルミニウム(アルミナ)は、天然に豊富に存在し、通常、鉱物ボーキサ
イト中に水酸化物の形態で存在し、TiO2、Fe2O3、およびSiO2などの他
の酸化物の不純物を伴う。バイヤー法を用いて、少量のNa2Oを有する、相応
な純Al2O3が生成される。バイヤー法は、種々の水酸化アルミニウムを生成す
るために用いられ得る。
次に、水酸化アルミニウムは熱処理され、種々の活性アルミナまたは転移アル
ミナを生成する。例えば、ベーマイトのような水酸化アルミニウムは、加熱され
て、一連の転移相(transition phase)のアルミナ類(γ、δ、θ、および最終
的に、α)を生成する(Wefersらの「アルミナの酸化物および水酸化物」、Tech
nical Paper No.19,Aluminum Company ofAmerica,Pittsburgh,PA,1972,1
〜51頁参照)。
転移アルミナ(およびその結晶形)には、以下が包含される:
γ 正方晶
δ 斜方晶/正方晶
η 立方晶
θ 単斜晶
χ 立方晶/六方晶
κ 六方晶
λ 斜方晶
活性アルミナおよび水酸化アルミニウムは種々の化学プロセスにおいて触媒およ
び吸着剤として用いられる。
このプロセスにおいて使用されるのに適したアルミナは、上記の転移アルミナ
(γ、δ、η、θ、χ、κ、ρ、またはλ)を包含する。特に、好ましいのは、
γ−およびη−アルミナである。これらの2種の混合物もまた望ましい。
実質的に純粋な単相の転移アルミナを生成することは困難
であるため、種々のアルミナの混合物が触媒中に存在することは、特定のアルミ
ナが主要量で(例えば、そのアルミナが約50重量%を越える量で)が触媒中に存
在する限りは、許容できる。例えば、η−アルミナを製造すると、得られる生成
物中にはγ−アルミナがしばしば共存する。実際、X線回折分析では、この2種
の相の違いを検出するのは非常に困難である。水酸化アルミニウム(ベーマイト
、ギブス石など)は、所望のアルキル化反応に実質的に影響しない限りは、主要
な転移相生成物中に、わずかの量よりも多く存在し得る。
アルミナの表面積は、使用する転移アルミナの特定のタイプに依存して、適切
に、広範囲に変化し得るが、本発明のアルキル化プロセスにおいて最も良好な結
果を与えるのは、約160m2/gを上回る表面積を有するアルミナを使用した場合で
ある。従って、約160m2/gを超える表面積を有する転移アルミナが好ましく、約2
00から約400m2/gの表面積を有するアルミナが、より好ましい。
アルミナは、任意の適切な形態、例えば、ペレット、顆粒、ビーズ、球体、粉
体、または、固定床、移動床、スラリー、または流動床の反応器に使用すること
に適した、他の形態で製造され得る。ルイス酸
本発明の触媒成分は、上記のアルミナと組み合わせて、1種またはそれ以上の
ルイス酸を含む。ルイス酸は、第2の分
子またはイオンから2個の電子を受容して錯体を形成することによって、他の分
子またはイオンを形成し得る分子である。典型的な強ルイス酸は、BF3、BC
l3、BBr3およびBI3のようなハロゲン化ホウ素;五フッ化アンチモン(S
bF5);ハロゲン化アルミニウム(AlCl。およびAlBr3);TiBr4
、TiCl4、およびTiCl3のようなハロゲン化チタン;四塩化ジルコニウム
(ZrCl4);五フッ化リン(PF5);FeCl3およびFeBr3のようなハ
ロゲン化鉄;などを包含する。弱ルイス酸、例えば、スズ、インジウム、ビスマ
ス、亜鉛、または水銀のハロゲン化物もまた、受け入れられる。好ましいルイス
酸はホウ素含有物質(BF3、BCl3、BBr3およびBI3)、SbF5、およ
びAlCl3である;最も好ましくはBF3である。
ルイス酸は、アルミナ基質と共に、錯体または表面化合物を形成すると考えら
れている。特に、BF3は、アルミナ表面に見いだされるヒドロキシル基の近傍
に、強く吸着し、そしてさらに、アルミナ表面に物理吸着されると考えている。
アルミナ表面のルイス酸の総量は、触媒の0.5重量%と40重量%との間であり
、2つの要因(選択されたルイス酸、およびアルミナ表面が化学吸着または物理
吸着によってルイス酸を受け入れる、受け入れ易さ)に大きく依存する。BF3
の場合、アルミナ触媒成分の5〜20重量%がBF3生成物(例えば、フッ化ホウ素
酸アルミニウムまたは類似の化合物)に起因し、そして残りが物理吸着したBF3
であると、本発明者らは考え
ている。好ましくは、添加されるBF3生成物の総量は(BF3生成物として)、
アルミナ触媒成分の7重量%を上回り、最も好ましくは、アルミナ触媒成分の約1
0重量%から約20重量%である。
触媒組成物上に十分なルイス酸が存在することを維持するためには、少なくと
も少量のルイス酸をアルミナ表面の近傍、好ましくは反応流体中に維持すること
が望ましいことを見いだした。この量は、少なくとも、アルミナ上のルイス酸の
濃度を上記で特定した量に維持するために十分な量である。アルキル化反応に関
して以下で規定するWHSV範囲では、アルミナ上のルイス酸のレベルを維持するた
めには、通常、少なくとも0.5重量%(炭化水素を基準にして)のルイス酸で十
分であることを見いだした。BF3については、約0.8重量%から約15重量%(炭
化水素を基準にして)のBF3濃度を用いることが好ましく、約1.5重量%から約
6.0重量%の範囲のBF3量が最も好ましい。アルミナを基準にすると、遊離ルイ
ス酸(これは、アルミナの近傍にあるが、化学吸着または物理吸着によってアル
ミナに結びついていないルイス酸である)アルミナに対する比率は、1gのAl2
O3に対してルイス酸0.05〜30gの範囲である。BF3の場合、好ましい範囲は、1
gのAl2O3に対してBF3は0.08〜10gであり、より好ましくは、1gのAl2O3
に対してBF3は0.10〜8gの範囲である。触媒成分の調製
触媒成分は、その場(in situ)での調製(例えばアルキル化反応器中で、気
体状のルイス酸を転移アルミナが入った容器中に通すことによって)を包含する
種々の方法によって調製し得る。あるいは、アルミナをルイス酸に接触させ、そ
の後反応器中に導入し得る。
いずれの場合でも、アルミナは、ルイス酸と接触する前には実質的に乾燥して
いるか、あるいは無水であり得、乾燥状態に維持され得る。すなわち、非常に低
い遊離H2O含量で維持され得る。アルミナ相は、アルミナの適切な処理と組み
合わせて選択され、アルミナの表面積100Å2当たりヒドロキシル基が約4〜10個
と成るように、ヒドロキシル基の存在を維持する(通常、前処理の間、アルミナ
を450℃より低い温度に維持する)。好ましくは、アルミナの表面積100Å2当た
りヒドロキシル基は6〜10個である。アルミナは、好ましくは、完全にヒドロキ
シル化されている。なぜならこのヒドロキシル化により、次に、最大量のAl−
OH−ルイス酸錯体が形成され、これが、アルミナ表面の活性なアルキル化触媒
の、ひとつの要素になると考えられているからである。アルミナは、部分的に、
または実質的に脱ヒドロキシル化され得るが、この触媒は有効ではない。
アルミナは、製造者から入手したまま、あるいはかなりの期間、大気に曝され
ると、相当量の水を取り込む、あるいは吸着する。従って、注意深い加熱と、ア
ルミナの周囲の雰囲気の制御が望ましい。適切には、500℃より低い温度で、そ
し
て好ましくは、約50℃から約400℃の範囲の温度で、ルイス酸での処理の前にア
ルミナを加熱する。
さらに、遊離水(アルミナ表面のヒドロキシル基として同定され得る水とは区
別して)が、限定された量で、アルミナ中に存在し得る。アルミナ中のこの遊離
水の含量は、適切には約15重量%より少ないが、好ましくは約8.0重量%より少
ない。最も好ましくは、アルミナ中の遊離水の含量は0.5重量%と6.0重量%との
間である。水の含量が高いと、明らかに、触媒は性能が低下し、かつアルキル化
反応に使用する場合の触媒の有効性が低下する。水の含量が高いと、また、BF3
水和物のような、腐食性で、従って望ましくない化合物が形成される傾向にあ
る。
上記のように、限定された量の遊離水含量を有する、ルイス酸で促進された転
移アルミナを、イソブタンで低級オレフィンをアルキル化するプロセスに使用す
ることは、いくつかの驚くべき利点を有する。この触媒成分または触媒組成物は
得られるアルキル化物のオクタン価、アルキル化物中のC8の割合、および再生
前の触媒の有効寿命を向上させる。このような利点は、水をアルキル化プロセス
のフィードストック中に添加した場合には観察されなかった。
ルイス酸−アルミナの接触温度は、-25℃と約150℃より低い温度との間の温度
が受容可能であり;-25℃と100℃との間の温度が望ましく;-30℃と30℃との間
の温度が好ましい。十分な量のルイス酸をアルミナに添加するのであれば、アル
ミナに添加する気体状のルイス酸の分圧は特に重要ではない。上記の温度で、ア
ルミナをBF3で処理することにより、アルキル化を行うのに十分なBF3を含有
するアルミナ−BF3錯体となることが見いだされた。アルミナは、0.5重量%と
30重量%との間のBF3を含有する。触媒成分の、固体ホウ素−核磁気共鳴(11B
-NMR)分析が、より低い温度で生成する触媒複合物中の正方晶ホウ素の証拠(約
-21.27ppmのホウ酸に関連する明白なピーク)を提供することが観察された。150
℃およびそれより高い温度でBF3処理されたアルミナは、ホウ素に関する三方
晶の対照性が存在することを示唆するスペクトルを示す。三方晶ホウ素:正方晶
ホウ素の相対量(それぞれの11B-NMRスペクトルの積分値から計算される)が0
:1から1:1の範囲である触媒が、好ましい。より好ましくは、この範囲は0
:1から0.25:1である;最も好ましくは、0:1から0.1:1である。
明らかに、このアルミナは、ルイス酸による処理に先だって、バインダー中に
取り入れられ得る。このバインダーはクレー(モンモリロナイトおよびカオリン
など)またはシリカベースの材料(ゲルまたは他のゼラチン状の沈殿物)であり
得る。他のバインダー材料は、炭素、およびアルミナ、シリカ、チタニア、ジル
コニアのような金属酸化物およびそれらの金属酸化物の混合物を包含する。バイ
ンダーの組成は、特に重要ではないが、これらがアルキル化反応の操作を実質的
に妨害しないように気を付けるべきである。
触媒のアルミナをバインダー中に取り入れる好ましい方法は、水酸化アルミニ
ウム前駆体(例えばベーマイト)をバインダー前駆体と混合し、所望の形状を形
成し、そして、この水酸化アルミニウム前駆体が適切な転移相に転換し、かつ、
バインダー前駆体によるアルミナ粒子の結合が起こる温度でか焼することである
。具体的なこのか焼の上限温度は約1150℃である。約1000℃より低い温度が、好
ましい温度であり得る。アルキル化プロセス
本発明の触媒成分および同類の触媒組成物は、イソパラフィンとオレフィンと
の接触を包含するアルキル化プロセスでの使用に、特に適している。この触媒成
分は、ある種の量の遊離ルイス酸と組み合わせて用いるべきである。
特に、この触媒系(本発明の触媒成分を遊離ルイス酸と組み合わせたもの)は
、低温(-30℃のような低さ)でも、より高い温度(50℃付近)と同様に、アル
キル化反応において活性である。より低い温度(-5℃から15℃)が、生成される
アルキル化物のオクタン価が増大するので好ましく、そして、フィードストリー
ムが約1%を上回るイソブチレンを含む場合には、特に好ましい。より高い温度
ではまた、多量のポリマー性物質が生成する傾向もある。
このプロセスで用いる圧力は、大気圧と約750psigとの間であり得る。この範
囲内の、より高い圧力によって、生成物ス
トリームがアルキル化反応器から出た後、過剰量の反応物のフラッシングによる
回収が可能となる。このプロセスで使用する触媒の量は、多様な、異なる変数に
依存する。それでもやはり、重量毎時間空間速度(Weight Hourly Space Veloci
ty)(「WHSV」=オレフィン原料の重量/時間÷触媒の重量)は、効果的には、
0.1と120との間であり得、特に、0.5と30との間であり得る。イソパラフィンの
オレフィンに対する、全体でのモル比は約1:1と50:1との間であり得る。リ
サイクル反応器では、パラフィンのオレフィンに対する比は、実質的に高く、10
00:1を超え得る。好ましい範囲は、2:1から25:1の間であり、より好まし
くは3:1から15:1の間である。
触媒に導入する原料ストリームは、好ましくは、主として4個から10個の炭素
原子、そしてより好ましくは4個から6個の炭素原子を有するイソパラフィンで
ある。イソブタンが、高オクタン価のアルキル化物を形成する能力があるので最
も好ましい。オレフィンは、望ましくは3個から12個、および好ましくは3個か
ら5個の炭素原子を含む。すなわち、プロピレン、シス−およびトランス−ブテ
ン−2、ブテン−1、およびアミレン(類)である。好ましくは、オレフィンス
トリームは少量の(もしあるとすれば)イソブチレンしか含まない。同様に、原
料ストリームが、ブタジエンを少量しか含まないかあるいは全く含まず(好まし
くは、総オレフィン類の0.2モル%から0.3モル%よりも少ない)、かつ最小量(
例
えばオレフィン類を基準にして約2.5モル%より少ない)のイソプチレンしか含
まないとき、本発明の触媒で、このプロセスは高オクタン価のアルキル化物を形
成することに関し、より良好に稼働する。この触媒はブテン−1をアルキル化す
るけれども、最小量(例えば、約10モル%より少ない)のブテン−1で操作する
ことが好ましい。もちろん、もしこのプロセスを、高いオクタン価よりもむしろ
高い処理量で操作することが望まれるのであれば、より高いレベルのブテン−1
が許容される。低レベルのイソブチレンを含むフィードストックの非常に優れた
源は、メチル-t-ブチルエーテル(MTBE)を生成するプロセスからのラフィネー
トである。
フィードストックの水の含量は広い限度で変化し得るが、好ましくは低レベル
である。水含量は約200ppm(重量による)より低く、最も好ましくは約50ppm(
重量による)より低い。水の含量が高レベルだと、得られるアルキル化物のオク
タン価が低減し、腐食性の水和物またはルイス酸との反応生成物が形成する傾向
にある。アルキル化装置のフィードストックの大部分の源は、これらの原料に水
を取り込む傾向にあるので、1種またはそれ以上のフィードストックを乾燥して
、好ましい水含量を達成することが好ましい。
フィードストックは、エーテルおよびアルコールのような酸素含有物(oxygen
ate)を最小量しか含まないべきである。酸素含有物は、明らかに、この触媒系
の有効性を実質的に減じる。
本発明のプロセスは、上記の、転移アルミナ触媒化合物および触媒組成物の調
製を論じた部分で特定した、限定された遊離水の含量を有する触媒成分および触
媒組成物を用いて、イソブタンと低級オレフィンとのアルキル化プロセスを行う
ことにより、触媒の有効な寿命を増大することを包含する。
このアルキル化プロセスのすべてのバリエーションによる生成物は、典型的に
は、高度に分岐したアルカン類の複雑な混合物を含有する。例えば、アルカンと
してイソブタンを用い、そしてオレフィンとしてn−ブチレンを用いた場合、2,
2,3−;2,2,4−;2,3,3−;および2,3,4−トリメチルペンタン(TMP)の混合物
が得られ、しばしば、少量の、他の異性体またはポリマー性生成物が伴う。2,3,
4−TMP異性体は、上記の組のなかで最もオクタン価が低い異性体である。2,2,3
−および2,2,4−TMP異性体は、よりオクタン価が高い成分である。
種々のC8異性体の、計算した平均オクタン価(実験オクタン価(RON)およびモ
ーターオクタン価(Motor Octane Number)(MON)、(R+M)/2で表される)は
以下の通りである:
このプロセスは液相、気相、または液相と気相との混合相中で行われ得る。液
相の操作が好ましい。
本発明を、直接的な記載で開示してきた。以下に、本発明の種々の局面を示す
多数の実施例を見いだし得る。これらの実施例は、本発明の単なる例示であり、
本発明の範囲をいかなる意味でも限定するために用いるべきではない。
実施例
実施例1
触媒試験
本実施例は、多くのアルミナベース触媒のその場での(in situ)調製、およ
びモデル原料を使用したアルキル化反応におけるこの触媒の使用を示す。これを
触媒活性および選択性の評価のために用いる。
アルミナ試料を110℃で一晩乾燥し、容量が約500ccである準回分式反
応器に仕込んだ。反応器温度は、−5℃〜40℃の範囲にわたって制御可能であ
った。最初の媒処理のために、触媒を含有する反応器を不活性ガスでパージし、
約0℃まで冷却した。約275ccのイソブタンを反応器に添加した。簡単なガ
ス抜きを行った後、BF3を回分添加した。BF3添加後、アルミナがBF3を吸
着するか、あるいはBF3と反応するに従って、反応器温度は上昇し、圧力は典
型的には低下する。反応器内の圧力が低下しなくなるまで、さらにBF3を注入
する。BF3飽和平衡圧力は約40psigであ
った。BF3の液相濃度は約1.5%であった。アルミナは、この時点での温度
で吸着可能なすべてのBF3を吸着し、あるいは反応可能なすべてのBF3と反
応し、この時点で触媒は最も活性を有する状態であった。
パラフィンのオレフィンに対する比率が25になるまで、イソブタンとトラン
ス−2−ブテンとのモル比4/1の混合物を、3.5のWHSVで反応器に添加
した。
次いで、アルキル化生成物を反応容器から除去し、気−液クロマトグラフィー
を用いて分析した。
この実験結果を表1に示す。
これらの予備スクリーニングデータから明らかなように、転移(γおよびδ)
アルミナは、他の水酸化アルミニウム触媒を用いるよりも、顕著に高濃度のC8
をアルキル化生成物中に生成する。この結果は、触媒の比表面積とは相関しない
ようであった。
実施例2
触媒のスクリーニング
本実施例は、η−アルミナ(本発明の触媒の好ましい形態)のイソブタンとブ
チレンとのアルキル化物生成反応に関する性能を、各々、BF3と結合した他の
酸性酸化物の典型的な試料と比較する。
窒素雰囲気下、250℃で15時間、そして500℃で24時間、制御された
熱処理をバイヤライト(Versal B,LaRoche Chemical社製)に施し、η−アルミ
ナ試料を調製した。
酸化物の比較試料は、シリカ−アルミナ、合成モルデンフッ石ゼオライト、お
よびヒュームド(fumed)シリカであった。シリカ−アルミナ(Davison Chemica
l社製)は、86.5%のSiO2を含有し、392m2/gの表面積を有してい
た。このシリカ−アルミナは、これ以上の処理を行わずに使用した。
モルデンフッ石は、水素型ゼオライトであり、Toyo Sodaより入手した。この
モルデンフッ石は、Na−モルデンフッ石から調製し、イオン交換を行い、スチ
ーム処理を行い、そしてSi/Al比が28:1となるようにか焼した。
各試料を110℃で一晩乾燥し、実施例1に記載の準回分式反応器に仕込んだ
。試料を乾燥不活性ガスでパージし、約0℃まで冷却した。イソブタンを初期容
量が100ccになるまで反応器に加えた。30psigの平衡圧力が得られる
までBF3を撹拌しながら添加した。
イソブタンとt−2−ブテンの混合物を反応器に仕込んだ。反応完了時にアル
キル化物を取り除き、気−液クロマトグラフィーにより分析した。気−液クロマ
トグラフィーデータからHutsonおよびLoganの周知の相関(「アルキル(alky)
の収量および品質の評価」、Hydrocarbon Processing,1975年9月、107-108頁)
を用いて、RONを計算した。この実験の結果を以下の表2に示す。
明らかに、η−アルミナ触媒によれば、C8の収率が顕著に高く、収率全体お
よびRONが非常に良好であった。
実施例3
本実施例は、水またはメタノールを添加しても本発明のアルミナ触媒を用いた
イソブタンによるブテン−2のアルキル化においては目立った改善はなされない
ことを示す。事実、水およびメタノールは有害なようである。
3つの準回分式反応器を乾燥し、窒素でフラッシュした。
2.5gのγ−アルミナ(VGL,LaRoche社製)を、各ボトルに仕込んだ。このア
ルミナ試料は予め110℃で一晩乾燥させたものであった。1つの反応器に0.
278gの脱イオン水を滴下して添加した。0.988gのメタノールを別の反
応器に添加した。この添加量は触媒と水との当量の和の10%になるように計算
した。残りの反応器は対照反応器として使用した。イソブタン(246cc)を
各ボトルに添加し、圧力が30psigで一定になるまでBF3を(撹拌しなが
ら)添加した。イソブタンおよび2−ブテンのフィードストックを比率2:1、
速度1.6cc/分で連続的に添加した。反応を約75分間続けた後、反応器内
の液体試料を取り出し、気−液クロマトグラフィーにより分析した。各容器内の
オレフィンの転化率は99%を超えていた。他の反応条件および反応結果を表3
に示す。
ガソリンアルキル化物生成プロセスの操作において、水およびメタノールのい
ずれを用いても利点を生じないことが明らかである。生成したC8の総量は、本
発明のアルミナによる場合よりも小さかった;所望でないC12 +の量は、本発明
のアルミナによる場合の2〜4倍であった。収率は低く、そしておそらく最も重
要なことには、比較用生成物のオクタン価は顕著に低かった。
実施例4
本実施例は、種々のオレフィンフィードストックに対しての本発明の触媒(γ
−アルミナ、GL,LaRoche社製)の適合性を示す。以下の反応条件を一連の試験
に適用した:
温度 0℃
全圧 30psig
WHSV 4
準回分式反応器を各試験に用いた。
オレフィンフィードストックは、原料の所望のおよび所望でない組み合わせを
同定し得るように選択された混合物であった。この混合物を表4に示す:
生成物を気−液クロマトグラフィーにより分析した。それぞれのオクタン価を
表5に示す:
このデータから、イソブテンおよびプロピレンの供給濃度の増加により、本発明
のアルキル化プロセスが、C8含有量が低いアルキル化物を生成する方向にある
ことがわかる。図2に示すように、C3 =またはi−C4 =のいずれかの量が少なく
なってもアルキル化物の品質を害することはないが、非常に高いオクタン価を有
するアルキル化物が必要な場合には、一般に所望でない。
実施例5
本実施例は、高い空間速度および低いパラフィン/オレフィン原料比率の条件
下における、イソブタンとブテンとの反応においての高オクタン価の生成物を形
成する転移アルミナ/BF3触媒の性能を示す。
γ−アルミナ(VGL,LaRoche社製)を110℃で一晩乾燥し、実施例1に記載
の準連続式反応器ユニットに仕込んだ。触媒を乾燥不活性ガスでパージし、約0
℃まで冷却した。イソブタンを反応器に添加し、30psigの平衡圧力が得ら
れるまで、この系を撹拌しながらBF3に曝した。次いで、純粋なトランス−2
−ブテンを含有する原料を、激しく撹拌しながら60分かけて反応器にポンプ添
加した;反応中の一定時点(30分および60分)で試料を得た。結果を以下の
表6に示す。
実施例6
本実施例は、精製MTBEユニットで得られた原料に対する触媒系の用途を示
す。少量のブタジエンおよびイソブテンを含有する原料を、400cc/時間、
80℃、および350psigの圧力で、14平方cmH2と共に、市販の水素
異性体化触媒(Al2O3上の0.3%Pd)床に導入した。H2:ブタジエンの
モル比は6:1であった。このようにして処理された原料(ブタジエンを含有せ
ず0.52モル%のイソブテンを含有する)を適当量のイソブタンと混合した。
混合物は以下の表7に示すような、おおよその組成を有していた
:
この混合物は、イソパラフィンのオレフィンに対する比率が5.8:1であり
、イソブタン/オレフィン比が5.7:1であった。
次いでこの混合物を、各々が280ccの液体および5.04gの触媒を含有
する一対の連続式実験用反応器に仕込んだ。温度を0゜Fに維持した。反応器の
WHSVは4.3hr-1、およびLHSVは1.07hr-1であった。触媒はγ
−アルミナ(VGL,LaRoche社製)であり、少量のイソブタンと共に適量を反応器
に添加し、反応器のBF3を約40psigとし試験中この圧力を維持すること
により調製した。試験
は合計41時間行った。200ccのトリメチルペンタン中で触媒をすすぎ、空
気中で45分かけて150℃まで加熱して触媒に付着した反応生成物を揮発させ
、そして空気中で60分かけて触媒を600℃まで加熱して残りの炭化水素系物
質を酸化させることにより、試験中に4回触媒を再生した。触媒を反応器に戻す
際に、少量の触媒を再生触媒と共に反応器に添加し、触媒の適正量が反応器に存
在するようにした(第2サイクルにおいて0.41g、第3サイクルにおいて0
.97g、第4サイクルにおいて0.0g、そして第5サイクルにおいて0.4
7g)。約4.5リットル(3.2kg)のストリップされたC5+アルキル化物
を集めた。このアルキル化物は、約7.6重量%のC5-7、81.2重量%のC8
、4.4重量%のC9-11、および6.8重量%のC12を有していた。上述のHuts
on法を用いて、オクタン価を以下のように計算した:RON=96.6、MON
=93.3、および(R+M)/2=94.95。次いで、API法を用いて生
成物のエンジン試験を行い、オクタン価を測定した:RON=98.7、MON
=93.85。得られた(R+M)/2は96.28であった。Hutson法は、明
らかに本プロセスのRONオクタン価を低く見積っていた。
実施例7
本実施例は、いくつかのBF3/アルミナベースの触媒成分の調製を示す。1
つは本発明によるものであり、3つは比較
試料である。試料の各々を、モデル原料、イソブタンおよびブテンを用いたアル
キル化反応において試験した。
4つのγ−アルミナ試料(LaRoche-Versal GL)すべてを、CahnバランスでB
F3と混和した。Cahnバランスにより、アルミナがBF3と接触する温度の緊密な
制御が図られ、さらに処理中の重量増加を測定することが可能となる。4つの試
料を、それぞれ、25℃、150℃、250℃、および350℃でBF3により
処理した。各触媒成分の試料を取り出し、11B-MAS-NMRを用いて分析した。これ
らの分析結果を図に示す:図1Aは25℃で処理されたアルミナの結果を示す;
図1B、1Cおよび1Dは、それぞれ、150℃、250℃、および350℃で
処理されたアルミナの結果を示す。図1Aにおいて、−21.27ppm(ホウ
酸に関連する)付近にシャープな著しいピークが存在し、正方晶ホウ素成分の存
在が示唆される。他の3つのNMRチャートにはこのようなピークは存在しない
。その代わりに、データは実質的に三方晶のホウ素の存在を示唆する。
次いで、4つのγ−アルミナ(LaRoche-Versal GL)試料を、容積約500c
cの準回分式反応器に仕込んだ。反応器温度は、−5℃〜40℃の範囲にわたっ
て制御可能であった。最初の触媒処理のために、触媒を含有する反応器を不活性
ガスでパージし、約0℃まで冷却した。約275ccのイソブタンを反応器に添
加した。簡単なガス抜きを行った後、BF3を回分添加した。反応器内の圧力が
低下しなくなるまで、さら
にBF3を注入する。BF3飽和平衡圧力は約40psigであった。BF3の液
相濃度は約1.5%であった。
イソブタンとトランス−2−ブテンの混合物を反応器に仕込んだ。反応完了時
にアルキル化物を取り出し、気−液クロマトグラフィーにより分析した。気−液
クロマトグラフィーデータからHutsonおよびLoganの周知の相関(「アルキル(a
lky)の収量および品質の評価」、Hydrocarbon Processing,1975年9月、107-10
8頁)を用いてRONを計算した。この実験の結果を以下の表8および表9に示
す。
この結果から明らかなように、低温でBF3により処理された触媒成分は、ほ
とんどの実用上の観点(転化率、C8生成、アルキル化物収率、RON、MON
など)において他の物質よりも優れている。
実施例8
本実施例は、種々の触媒成分および組成物(転移アルミナ、BF3、および種
々の水含有量を含有する)をアルキル化プロセスに用いる場合の結果を比較する
。本実施例の目的は、触媒中に存在する水含有量の、得られるオクタン価および
C8含量に対する影響を比較することである。水成分は表面ヒドロキシル含有量
の形態で、あるいは「遊離」または表面に吸着された水の形態で存在する。
市販のアルミナ(LaRoche-V-GL-Versal-250、明らかにシュードベーマイト(p
seudo-boehmite)のか焼により得られたγ−アルミナ)を、入っていた缶からガ
ラス製蒸発皿に、大量に一括で移した。この蒸発皿を110℃の乾燥オーブン中
で放置した。
このアルミナは、LaRocheから入手した時点で完全にヒドロキシル化されてい
ると考えられる。ここで、「完全にヒドロキシル化された」とは、八面体アルミ
ニウムの各面が実質的に「−OH」基により末端封止されていることを意味する
。さらに、温度、相対湿度、および材料がどのような取り扱いを受けていたかに
依存して、いくつかの表面はH2O(または
上述の「遊離水」)に結合しているようである。
乾燥オーブンから取り出したアルミナ試料をフーリエ変換赤外スペクトル分析
(FTIR)により分析し、表面の水が(実質的な脱ヒドロキシル化をすること
なく)除去される温度を決定した。このFTIR分析は、乾燥ヘリウムパージの
下で連続的に温度を上昇させ、25℃、80℃、125℃、175℃および22
5℃で走査を行った。
図3に線Aで示す1640cm-1のH−O−H変角バンドの変化を追跡するこ
とにより、脱水が175℃と225℃との間で本質的に完了することが理解され
得る。温度上昇の結果として、わずかの脱ヒドロキシル化が起こり得るが、概算
によれば、200℃までの重量減少は、アルミナ試料表面に結合した水または表
面の「遊離」水の量にほとんど等しい。
次いで、アルミナ試料に水蒸気処理を施し、特定量の水をアルミナ表面に付与
した。この処理は、特定温度に保たれた蒸留水を有する閉鎖容器中にアルミナ試
料を入れることにより行った。液体水はアルミナと接して配置せず、容器中に吊
り下げ、選択された温度で蒸発平衡状態の水蒸気を含有する雰囲気を形成した。
アルミナと水蒸気の平衡状態を保ちながら、各試料を容器内に2時間ずつ保持し
た。処理温度はそれぞれ、0℃、18℃および30℃であった。これらの3つの
試料および乾燥オーブンから直接取り出した試料を微量天秤のボート上に載せ、
200℃までの重量減少を決定した。
さらに、各試料を微量天秤中で、実質的にヒドロキシル化
が完了する温度である1075℃まで加熱した。約200℃を超える温度では、
試料は重量減少し続けた。これはAl−OHの縮合により、H2O、Al+、およ
びO=を形成するためと考えられる。
これらの結果を以下の表10に示す。
上記で特定した温度処理および水蒸気処理を施したいくつかの触媒試料をアル
キル化反応に供し、生成物とそれぞれの水の含量との対応を調べた。
蒸発する水が触媒に付与(introduce)されないように注意を払った。7つの
触媒は、以下のものを含んでいた:18%のH2O、6%のH2O、3%のH2O
(すなわち、乾燥オーブンから取り出した後のもの)、完全に脱水され、2.1
ミリ当量Al−OH/g(200℃で前処理したもの)のもの。
アルキル化反応には、イソブタンおよび混合ブテン(I/O=6:1、ここで
ブテンは、トランス−2−ブテン=94%、1−ブテン=5%、およびイソブテ
ン=1%である)からなるモデル原料を用いた。新しく再生した3Aゼオライト
床を用いて原料を2度乾燥させ、原料の水の含量を10ppm未満にまで減少さ
せた。ベンダーから購入した市販のC4は、典型的には20〜40ppmの水を
含有している。BF3濃度を合計液体重量の約1.8重量%に保持した。反応圧
力は45psig、滞留時間は56分、触媒濃度は1.5%、および反応温度は
0℃であった。
結果を図4Aおよび図4Bに示す。完全にヒドロキシル化された触媒、および
3%遊離(または表面)水を有する触媒は、得られたアルキル化物における生成
C8%およびオクタン血の両方において明らかに優れている。
実施例9
本実施例は、水BF3/転移アルミナ触媒の触媒齢とアルキル化生成物中のC8
との相互関係を示す。
本実施例においては、実施例8で用いた転移アルミナベースの4つの触媒(γ
相アルミナ、LaRoche VGL)を実施例8で述べたようにして処理し、1〜1.5
%のH2O、3%のH2O、および7%のH2Oを含有するアルミナを得た(2バ
ッチ)。
反応器はHastelloyオートクレーブをCSTRモードで操作した。その際、原
料およびBF3を連続的に添加し、アルキル化生成物をイソブタンおよびBF3と
共に連続的に回収した。原料を3Aモレキュラーシーブおよび13Xモレキュラ
ーシーブ両方で処理し、水および他の不純物を取り除いた。
各触媒を以下の手順で操作するアルキル化プロセスに用いた。
アルミナを管に仕込み、アルミナ中に所望の水の含量を得るのに必要な温度で
湿潤窒素により前処理した。CSTR反応器の運転開始時に、イソブタンおよび
アルキル化物の平衡混合物を0℃まで冷却し、BF3でゲージ圧力が50ポンド
を示すまで与圧した。前処理したアルミナを、ポートを介して反応器に仕込んだ
。その際、アルミナを移送するために液体イソブタンを用いた。水素異性体化M
TBEラフィネートから得られたイソブテン/オレフィン(6:1)原料を導入
することにより反応を開始した。オレフィン組成は、ブテン−2が92.0%、
ブテン−1が4.8%、イソブテンが3.2%であった。
反応条件は、0℃、3%の触媒スラリー濃度および8.7〜9のWHSVであ
った。
反応途中に数回試料を取り出した。反応は明らかな不活性の兆候が観察される
まで続けた。
図5に示すように、3%H2Oを含有する触媒は、C8を生成する能力を、ずっ
と長時間あるいはずっと長い触媒齢の間維持した。品質の観点からは、触媒の水
分含量の最適化により、1.5%または7%H2Oを含有する触媒よりも約50
%長い期間にわたって、特定のC8含量を有するアルキル化物を生成した。
当業者が以下の請求の範囲に述べられるプロセスと均等なものを想定し得、そ
して、これらの均等なものは本発明の範囲および目的に包含されることが明確に
されるべきである。
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(31)優先権主張番号 08/041,577
(32)優先日 1993年4月1日
(33)優先権主張国 米国(US)
(81)指定国 EP(AT,BE,CH,DE,
DK,ES,FR,GB,GR,IE,IT,LU,M
C,NL,PT,SE),OA(BF,BJ,CF,CG
,CI,CM,GA,GN,ML,MR,NE,SN,
TD,TG),AT,AU,BB,BG,BR,CA,
CH,CZ,DE,DK,ES,FI,GB,HU,J
P,KP,KR,KZ,LK,LU,MG,MN,MW
,NL,NO,NZ,PL,PT,RO,RU,SD,
SE,SK,UA,VN
(72)発明者 サンダーソン,ウィリアム エイ.
アメリカ合衆国 カリフォルニア 94028,
ポートラ バレー,ダブリュー.フロレス
タ ウェイ 230