JPH0849444A - 耐震壁 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 低降伏点鋼にせん断変形を集中させることに
よって低降伏点鋼の面外変形の発生を防止でき、かつ構
成も軽量，簡単にできる。 【構成】 主架構を構成する柱１および梁２により囲ま
れる壁面形成領域内に低降伏点鋼７を配置し、該低降伏
点鋼７の周囲に矩形の枠部材８を一体に設け、該枠部材
８の４隅部付近および上記主架構の４箇所間に、上記矩
形の略対角線方向に引張り力を導入した状態で各一のＰ
Ｃ鋼棒などの引張り専用部材１０を連結する。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】この発明は、構造物の耐震要素に
関し、特に、主架構内に低降伏点鋼を配置した耐震壁に
関する。

【０００２】

【従来の技術】従来の耐震壁として、図５に示すよう
に、低降伏点鋼を利用したものが知られている。これは
主架構を構成する柱１および梁２により囲まれる壁面形
成領域内に、鋼製ブレース３，４を、上記柱１および梁
２の交差部に溶接やボルト・ナット止めなどにより支持
するように配置し、かつこれらの各鋼製ブレース３，４
間に低降伏点鋼５を介在したものからなる。

【０００３】そして、かかる鋼製ブレース３，４間に低
降伏点鋼５を配置した耐震壁にあっては、地震発生時に
柱１および梁２が大きく振動または揺動し、鋼製ブレー
ス３，４を介して圧縮力が作用して、低降伏点鋼５が大
きく変形するに至る。従って、かかる低降伏点鋼５の変
形により、上記振動や揺動を吸収することができ、耐震
壁および構造物全体の破壊を免れることができる。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな地震などにもとづいて鋼製ブレース３，４に加わる
圧縮力は、上記低降伏点鋼５に作用するも、その圧縮力
がある大きさ以上になると、その低降伏点鋼５が面外変
形を起こし、構造物の破壊を大きなものにするという問
題点があった。

【０００５】また、かかる面外変形を防止するには、上
記鋼製ブレースとともに低降伏点鋼５の断面を大きくす
るなどの補強対策が必要になるという問題点があった。

【０００６】この発明は上記のような従来の問題点に着
目してなされたものであり、低降伏点鋼を主架構に対し
て引張り力を導入した鋼棒などの引張り専用部材により
支持することで、その低降伏点鋼にせん断変形を集中さ
せ、これによって低降伏点鋼の面外変形の発生を防止で
き、かつ構成も簡単な耐震壁を得ることを目的とする。

【０００７】

【課題を解決するための手段】この発明にかかる耐震壁
は、主架構を構成する柱および梁により囲まれる壁面形
成領域内に低降伏点鋼を配置し、該低降伏点鋼の周囲に
矩形の枠部材を一体に設け、該枠部材の４隅部付近およ
び上記柱および梁の４つの交差部付近間に、上記矩形の
略対角線方向に引張り力を導入した状態で各一の引張り
専用部材を連結したものである。

【０００８】

【作用】この発明における低降伏点鋼は、所定のせん断
力で降伏するものである場合には、このせん断力に見合
った引張り力を、その低降伏点鋼を支持する引張り専用
部材に予め加えておく。

【０００９】こうすることにより、その低降伏点鋼が降
伏する際に、低降伏点鋼の略同一対角線上にある一方の
２つの引張り専用部材は、例えば上記各引張り専用部材
ごとの引張り力の２倍の引張り力が作用し、他方の同一
対角線上にある他方の２つの引張り専用部材に作用する
引張り力は概ねＯとなる。

【００１０】このため、低降伏点鋼がさらに変形して
も、これに加わるせん断は略一定であり、しかも上記引
張り力の変化もなく、従来のような低降伏点鋼の面外変
形をなくする。

【００１１】

【実施例】以下に、この発明の一実施例を図について説
明する。図１はこの発明の耐震壁構造の要部を拡大して
示す正面図であり、これが柱１および梁２からなる主架
構の壁面形成領域内に設けられている。

【００１２】上記柱１および梁２の接続部（交差部）付
近であって、上下の各梁２の下面および上面には引張り
専用部材であるＰＣ鋼棒などの鋼棒を支持するための支
持金具６が溶接などにより取り付けられている。これら
の金具６は各鋼棒の一端を軸中心に回動可能に支持する
形状，構造となっている。

【００１３】一方、上記柱１および梁２間の壁面形成領
域内には、上記耐震壁の要部である矩形の低降伏点鋼７
が配置され、この低降伏点鋼７の外周（４周面）には、
この低降伏点鋼７の一部でなく全体にせん断力を負担さ
せるための、曲げ変形自在の縦方向枠部材を有する枠部
材８が一体に固着されている。

【００１４】また、この枠部材８の４つの角部（隅部）
付近には、それぞれ１つずつの金具９が取り付けられて
いる。この金具９は、上記各鋼棒の他端を軸中心に回動
可能に支持する形状，構造とされ、これらの金具９と上
記金具６との間には、予め引張り力を導入した引張り専
用部材としての鋼棒１０が１本ずつ取り付けられてい
る。

【００１５】図２および図３は上記金具６および鋼棒１
０の取り付け構造を詳細に示す。これによれば、金具６
には軸孔６ａが形成されて、これに４角リング６ｂの一
辺が回動自在に挿通されて支承されている。

【００１６】また、この４角リング６ｂの他の対向片に
は、上記鋼棒１０の一端に形成したねじ部１０ａを貫通
しており、その４角リング６ｂ内で、鋼棒１０に引張り
力を導入した状態にて、上記ねじ部１０ａにナット１０
ｂがねじ込まれている。

【００１７】次に上記のような耐震壁の挙動について、
図４（ａ）〜（ｃ）に示す動作原理に従って説明する。
まず、地震が発生しておらず、構造物が振動や揺動しな
い場合には、柱１および梁２とも、図４（ａ）に示すよ
うに、正規の状態にあって、低降伏点鋼の降伏せん断力
をＦとし、予めＰ＝Ｆ／２ｃｏｓθの引張力を各鋼棒内
に加えておく。各鋼棒１０は等しい引張り力を維持しな
がら低降伏点鋼７を支持している。従って、低降伏点鋼
７は変形せず、略矩形状態を維持している。

【００１８】いま、地震が発生し、柱１および梁２が図
４（ｂ）に示すようにし変形し、低降伏点鋼７が降伏し
はじめると鋼棒１０により支持された低降伏点鋼７のせ
ん断力Ｆは、上記鋼棒１０に予め導入した引張り力を
Ｐ、鋼棒１０のせん断方向に対する角度をθとすると、
Ｆ＝２Ｐｃｏｓθとなる。

【００１９】こうして、さらに低降伏点鋼７が図４
（ｃ）に示すように、変形して降伏が進行するときは、
各鋼棒１０のうち、矩形の枠部材８における一方の対角
線方向（引張り側）にある鋼棒１０には、各鋼棒１０に
掛かっていた引張り力の２倍（２Ｐ）の引張り力が掛か
り、他方の対角線方向（圧縮側）にある鋼材１０の引張
り力は０になる。

【００２０】また、低降伏点鋼７がさらに変形するよう
なことがあっても、せん断力Ｆは略一定で、上記各鋼棒
１０の引張り力には変化がなく、結果的に、各鋼棒１０
には圧縮力は加わらず、従来のような面外変形のおそれ
が全くなくなる。

【００２１】このように、ＰＣ鋼棒や鋼線などの引張り
専用部材に対しては圧縮力が作用せず、かつ面外変形が
生じることがないため、地震発生時にも安定した挙動が
期待でき、また、広範囲の荷重条件下で耐震壁の設計を
行うことができる。

【００２２】かくして、この発明では、従来のような面
外座屈に対処するための、支持部材や低降伏点鋼につい
ての面外変形に対する補強対策が必要でなくなり、構成
の簡素化，軽量化が図れるという効果が得られる。

【００２３】

【発明の効果】以上のように、この発明によれば、主架
構を構成する柱および梁により囲まれる壁面形成領域内
に低降伏点鋼を配置し、該低降伏点鋼の周囲に矩形の枠
部材を一体に設け、該枠部材の４隅部付近および上記主
架構の４箇所間に、上記矩形の略対角線方向に引張り力
を導入した状態で各一の引張り専用部材を連結するよう
に構成したので、地震などを受けて柱や梁の主架構が変
形した場合にも、低降伏点鋼にせん断変形を集中させて
も圧縮力を作用させず、これによって低降伏点鋼の面外
変形の発生を防止でき、かつ構成も簡単にできるという
効果が得られる。

【図面の簡単な説明】

【図１】この発明の一実施例による耐震壁の要素を示す
正面図である。

【図２】図１における耐震壁の支持用の金具を拡大して
示す正面図である。

【図３】図２に示す金具付近の側面図である。

【図４】この発明の耐震壁の挙動を示す挙動原理図であ
る。

【図５】従来の耐震壁の要素を示す正面図である。

【符号の説明】

１ 柱 ２ 梁 ７ 低降伏点鋼 ８ 枠部材 １０ 鋼棒（引張り専用部材）

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.⁶ 識別記号 庁内整理番号 ＦＩ 技術表示箇所 Ｆ１６Ｆ 15/02 Ｋ 9138−3Ｊ

Claims (1)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 主架構を構成する柱および梁により囲ま
   れる壁面形成領域内に配置された低降伏点鋼と、該低降
   伏点鋼の周囲に一体に設けられた矩形の枠部材と、該枠
   部材の４隅部付近および上記柱および梁の４つの交差部
   付近間に、上記矩形の略対角線方向に引張り力を導入し
   た状態で連結された各一の引張り専用部材とを備えた耐
   震壁。