JPH084495B2 - 接着性動物細胞の培養方法 - Google Patents

接着性動物細胞の培養方法

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JPH084495B2
JPH084495B2 JP63204733A JP20473388A JPH084495B2 JP H084495 B2 JPH084495 B2 JP H084495B2 JP 63204733 A JP63204733 A JP 63204733A JP 20473388 A JP20473388 A JP 20473388A JP H084495 B2 JPH084495 B2 JP H084495B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (a)産業上の利用分野 本発明は接着性動物細胞の培養方法に関するものであ
る。さらに詳しくは有用物質を産生する接着性動物細胞
を、細胞同志の凝集を抑えて浮遊細胞と同様の状態で培
養する方法に関するものである。
(b)従来技術 工業的規模による細胞大量培養は、例えばウイルス,
ワクチン,インターフェロンなど抗ウイルス剤、あるい
はホルモンなどの生物薬品の製造に必須である。これら
の生理活性物質の生産に用いられる動物細胞は接着性の
ものが多く、その効率的培養技術の開発は工業的に重要
な課題である。
従来、接着性細胞の大量培養方法及びそのための装置
としていくつかの提案がなされている。しかしその多く
は固体表面に細胞を接着させて増殖させるものであり、
スケールアップや操作性,長期安定性などに問題が残っ
ている。例えばファン・ウエツェル(Van Wezel)らに
よって開発されたマイクロキャリアー培養法はタンク培
養が可能な方法として有用であるが、長期間培養してい
ると細胞が担体からはがれ落ちるという問題がある。更
にUSP4,059,485号明細書には血清培地で接着性細胞の浮
遊培養を試みた例が記載されているが、細胞は大きな凝
集塊をつくってしまい内部の細胞の壊死という問題や長
期安定性がないという問題点が残っている。
(C)発明の目的 そこで、本発明者らは、接着性動物細胞を担体を用い
ることなく浮遊状態で長期間安定に培養することを目的
として研究を進めたところ、培養系中のカルシウムイオ
ン濃度を低く抑えることにより、細胞凝集が抑制される
ことを見出し本発明に到達した。
(d)発明の構成 すなわち、本発明は、接着性動物細胞を、実質的に無
血清の培地において、増殖,維持するに当って、少くと
も増殖時期および維持時期の一時期に培養系中のカルシ
ウムイオン濃度を0.3mM未満とすることを特徴とする接
着性動物細胞の培養方法である。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明において用いられる接着性動物細胞は、シャー
レを用いた血清培地での培養後、ピペッティングを行
い、生きたシングル・セル(single cell)に解離でき
ないタイプの細胞であり、天然の正常細胞のみならず、
非人為的あるいは遺伝子操作等の人為的手段により変性
された細胞であってもよい。また、本発明は特に有用な
生理活性物質を産生する接着性動物細胞の培養におい
て、生理活性物質を高い濃度で得る目的のために適して
いる。
具体的にはTblLu,BF2,CPA,CPAE,FBHE,MDBK,EBTr,BT,B
u,FT,BB,CRFK,AK−D,Fe2Lu,Fe3Tg,SL−29,WES,D−17,Do
Cl,MDCK,C12Th,A−72,Sp1K,Mpf,Folu,1CR2A,1CR134,FT,
GL1,1MR−33,GeLu,MLA144,Ch1Es,CAR,CGBQ,GF,GPC−16,
104Cl,JH4 Clone1,BHK−21,HaK,tk′ts13,AHL−1,Dede,
Don,FF,RPMI1846,DDT1MF2,CHO・Kl,B14FAF28−G3,NCTC4
206,R1610,E.Derm,SW−13,AV3,FL,WISH,CA46,Jiyoye,P3
HR−1,ST486,HS738Bl,HT− 1197,HT−1376,J82,RT4,SCa
BER,TCCSUP,T24,5637,RD−ES,1M−9,KG−1,KG−1a,A−1
72,HS683,H4,TE671,T98G,U−87MG,U−138MG,U−373MG,B
T,BT−474,BT−483,BT−549,Du4475,HBL−100,HS578Bs
t,HS578T,MCF7,MDA−MB−134−VI,MDA−MB−157,MDA−M
B−175−VII,MDA−MB−231,MDA−MB−330,MDA−MB−36
1,MDA−MB−415,MDA−MB−435S,MDA−MB−436,MDA−MB
−453,MDA−MB−468,SK−BR−1III,SK−BR−2III,SK−B
R−3,T−47D,ZR−75−1,ZR−75−30,CCD−14Br,CaSki,C
−4I,C−4II,C−33A,HeLa,HeLaS3,HeLa229,Hs602,HT−
3,ME−180,MS751,SiHa,Caco−2,CCD−18Co,CCD−33Co,C
CD−112CoN,COLO201,COLO205,COLO320DM,COLO320HSR,DL
D−1,HCMC,HCT−15,HCT116,HT−29,LoVo,LS174T,LS180,
SK−CO−1,SW48,SW403,SW480,SW620,SW948,SW1116,SW14
17,WiDr,clone1−5c−4,Hs729,D422T,HuTu80,Hs173We,A
N3CA,HEC−1−A,HEC−1−B,KLE,RL95−2,Y79,Hs913T,
HT−1080,FHs74,Int,HCT−8,HISM,Intestine407,A−49
8,A−704,ACHN,Caki−1,Caki−2,G−401,G−402,SK−NE
P−1,293,HEp−2,Changliver,CLCL,SK−HEP−1,WRL68,A
427,A549,Calu−1,Calu−3,Calu−6,CCD−8Lu,CCD−11L
u,CCD−13Lu,CCD−14Br,CCD−16Lu,CCD−18Lu,CCD−19L
u,CCD−25Lu,CCD−29Lu,CCD−32Lu,CCD−33Lu,CCD−34L
u,CCD−37Lu,CCD−39Lu,HEL29,HFL1,HLF−a,Hs738Lu,HS
888Lu,IMR−90,LL24,LL29,LL47,LL86,LL97A,L−132,MRC
−5,MRC−9,NCI−H69,NCI−H128,SK−LU−1,SK−MES−
1,WI−26,WI−26VA4,WI−38,WI−38VA13,subline2RA,WI
−1003,EB1,Raji,A−375,C32,C32TG,C−361,HS294T,HS6
95T,HT−144,Malme−3M,RPMI−7951,SK−MEL−1,SK−ME
L−2,SK−MEL−3,SK−MEL−5,SK−MEL−24,SK−MEL−2
8,SK−MEL−31,WM−115,WM266−4,KB,RPMI8226,SHM−D3
3,RPMI2650,IMR−32,SK−N−MC,SK−N−SH,Caov−3,C
aov−4,EB2,NIH:OVCAR−3,PA−1,SK−OV−3,HEPM,ASPC
−1,BxPC−3,Capan−1,Capan−2,HS766T,MIAPaCa−2,PA
NC−1,Detroit562,FaDu,BeWo,JAR,JEG−3,3A,3A−subE,
ARH−77,HS−Sultan,DU145,PC−3,SW837,SW1463,A−20
4,A−673,Esa−1,G−292,cloneA141B1,HOS,KHOS/NP,KHO
S−240S,KHOS−312H,MG−63,MNNG/HOS,RD,Saos−2,SK−
ES−1,SK−ES−2,SK−LMS−1,SK−UT−1,SK−UT−1B,U
−2−0S,Amdur II,A−431,BUD−8,CHP3,CHP4,Citrulli
nemia,Cri du Chat,C211,Dempsey,Detroit 510,Detroit
525,Detroit 529,Detroit 532,Detroit 539,Detroit 5
48,Detroit 551,Detroit 573,GS−109−V−8,GS−109
−IV−20,GS−109−V−21,GS−109−V−34,GS−109−
V−63,HG261,HS27,HS68,KD,Malme−3,WS1,HS746T,KATO
III,A253,Cates−1B,Tera−1,Tera−2,HS67,Scc−4,SCC
−9,SCC−15,SCC−25,AN3CA,HEC−1−A,HEC−1−B,SK
−UT−1,SK−UT−1B,SK−LMS−1,lgH−2,B95−8,MPK,Mi
Cl2,MvlLu,FHM,BS−C−1,COS−1,COS−7,CV−1,FRhK
−4、LLC−MK2,LLC−MK2,derivative,NCTCclone3526、
OMK,Vero,Vero C1008,Vero 76,DBS−FCL−1,DBS−FCL−
2,DBS−FRhL−2,DPSO114/74,4MBr−5,12MBr6,Aedes aeg
ypti,Aedes albopictus,Aedes albopictus,clone C6/3
6,TRA−171,Antheraea cells,adapted,Y−1,E,BC3H1,KL
N205,SCC−PSA1,L−M,L−M(TK-),NCTCclone929,NCTC
clone2472,NCTCclone2555,NCTC2071,BALB/3T3,cloneA3
1,BALB/3T12−3,C3H/MCA,clone15,C3H/MCA,clone16,C3
H/10T1/2,clone8,K−BALB,M−MSV−BALB/3T3,NCTC4093,
NIH/3T3,SC−1,SV−T2,3T3−L1,3T3−Swiss Albino,3T6
−Swiss Albino,BALB/B0.75,BAFA.1R.1,HDA.8,BALB/cAM
uLV,A.3R.1,BALB/cAMuLV,A.6R.1,BALB/cCL.7,BALB/c10C
r,MCAA.2R.1,BALB/3T3,clone A31,BLKCL4,BLKSVHD.2,A.
5R.1A.3R.1,C3H/10T1/2,clone8、STO,3T3−L1,XB−2,RA
G,TCMK−1,BNLCL.2,BNLSVA.8,BNL1MEA.7R.1,BNLINGA.2,
NCTNclone1469,NMu Li,LA−4,LL/2,MLg,CL−S1,C1271,M
MT060562,Mm5MT,NMuMG,P815,Clone−M−3,NB41A3,Neur
o−2a,At T−20,MOPC−31C,MPC−11,P3/NS1/1−Ag4−1,
CMT−93,BCL1Clone5B1b,CCRFS−180II,HSDM1C1,MBIII,S
arcoma 180,I−10,NULLI−SCC1,ESK−4,LLC−PK1A,LLC
−P K1,PK(15),PtK1,PtK2,SIRC,LLC−RK1,RK13,R9a
b,RAB−9,GH1,GH3,4/4R.M.−4,Jensen Sarcoma,RR1022,
XC,FR,LC−540,R2C,FRTL,6−23,CHSE−214,SCP,MDOK,Bg
e,A6,RTG−2,TH−1,sublineB,VH2,VSW,Hep3B,HepG2,UCD
−MLA−144,SflEp,PL1Ut,NBT−11,LLC−WRC256,C6,H9c2
(2−1),IA−XsSBR,IEC−6,IEC−18,KNRK,NRK−49F,
NRK−52E,BRL3A,Clone9、H4TG,H−4−II−E,H−4−II
−E−C3,McA−RH7777,McA−RH8994,MH1C1,N1−S1,N1S1
Fudr,L2,RFL−6,A7r5,A10,H9c2(2−1),L6,ARIP,AR
42J,NB41A3,Neuro−2a,At T−20,MOPC−31C,MPC−11,P3
/NS1/1−Ag4−1,CMT−93,BCL1clone5B1b,CCRFS−180II,
HSD M1C1,MBIII,Sarcoma 180,I−10,NULLI−SCC1,FSK−
4,LLC-PK1A,LLC-PK1,PK(15),PtK1,PtK2,SIRC,LLC−R
K1,RK13,R9ab,RAB−9またはそれらに遺伝子を導入した
トランスフォーマント等が挙げられ、中でもヒト胎児腎
細胞由来293株,BHK細胞,CHO細胞,COS細胞,ラットHepI
細胞,ラットHepII細胞,ヒト肺細胞,ヒト肝癌細胞,He
pG2細胞,マウス肝細胞,DUKX細胞,であることが好まし
い。トランスフォーマントの作り方としては、目的タン
パク質のアミノ酸配列をコードする塩基配列を持つDNA
を含む発現ベクターを宿主動物細胞にトランスフェクト
することによって行う。
接着性動物細胞にトランスフェクトする発現ベクター
としては、プロテインC(PC),活性型プロテインC
(APC),インターフェロン(IFN),インターロイキン
2(IL−2),腫瘍壊死因子(TNF),コロニー刺激因
子(CSF),エリスロポチエン(EPO),ティシュー・プ
ラスミノ−ゲンアクチベータ(TPA),成長ホルモン,
インシュリン,血液凝固第VIII因子,ウロキナーゼ(U
K),インターロイキン1(IL−1),インターロイキ
ン3(IL−3),リンホトキシン,免疫グロブリン,HBs
Ag,キモシン,EGF,TGF,β−エンドルフィン,カルシトニ
ン,ソマトスタチン,プロウロキナーゼ(pro−UK),
成長ホルモン放出因子(GRF),セルレイン,コレシト
キニン,カルシトニン,副腎皮質刺激ホルモン放出因
子,αネオエンドルフィン,ガストリン,下垂体性性腺
刺激ホルモン,グルカゴン,LH−RH,ナトリウム利尿ペプ
チド,オキシトシン,副甲状腺ホルモン,セクレチン,T
HR,バソプレシン,プロインシュリン,黄体形成ホルモ
ン,エンケファリン,エラスターゼ,血清アルブミン,
上皮細胞成長因子(EGF),神経成長因子(NGF),リポ
コルチン,ソマトメジン,インターロイキン4(IL−
4),インターロイキン(IL−5),B細胞分化因子(BC
DF),T細胞代替因子(TRF)2,スーパ−オキサイドディ
スムターゼ,レニン,アンジオジュニック・ファクタ
ー,チオール・プロテアーゼ・インヒビター(TPI),
α1−アンチトリプシン(AAT),コラゲナーゼ・インヒ
ビター,グルタチオン,プロテインA,ウロガストロン,
α−アミラーゼ,T4リソチーム,インターリューロン,
エグリン,カルディオナトリン,インシュリン様成長因
子,EBウイルス抗原性蛋白,ATLV抗原性ペプチド,ポリオ
ウイルス抗原性蛋白,A型肝炎ウイルス抗原性蛋白,HSV抗
原性蛋白,FMDV抗原性蛋白,ATLV抗原性蛋白,連鎖球菌の
M蛋白,ジフテリア毒素抗原性蛋白,アルカリホスファ
ターゼ,ペニシリナーゼ,T4リガーゼ,βラクタマー
ゼ,βブルカナーゼ,β−グルコシダーゼ,スタフィロ
キナーゼ,リパーゼ,ペニシリンGアシラーゼ,ストレ
プトキナーゼ,メタピロカテナーゼ,グルコアミラー
ゼ,プルラナーゼ,カテコール2,3−オキシゲナーゼ,
インターロイキン6(IL−6),インターロイキン(IL
−7),NKCF,Leukoregulin,MCF,ファセオリン,プレプ
ロ−1−マチン,プロキモシン,カルディオナトリン,
アンジオキンシンI,メタロチオネイン,マクロファージ
増殖因子α,リューモルフィン,アポリポプロテインE,
アポリポプロテインEA−1,β−アクチン,A型肝炎ウイル
ス抗原線蛋白,ポリオウイルス抗原性蛋白,水痘・帯状
疱疹ウイルス抗原性蛋白,メタピロカデカーゼ,オキシ
リダクターゼ,DNAリガーゼ,ダイズ貯蔵蛋白(グリシニ
ン),ヒルジン,セルレイン等をコードするDNAを,例
えばBPV,MMTV,バクティニアウィルム(Vaccinia Viru
s)等の如きベクターに,SV−40アーリープロモーター,
アデノウイルスMLP,RSVプロモーター等の如きプロモー
ターやセレクション・マーカーと共に挿入して得られる
発現ベクターが挙げられる。本発明で用いられる接着性
動物細胞としては上記の如き方法でトランスフェクトさ
れたプロテインC(PC)または活性型プロテインC(AP
C)を産生する細胞であることが好ましい。
本発明において用いられる培養法としては、培養槽内
から、連続的に、あるいは間歇的に一部の古い培養液を
細胞を含んだまま、あるいは細胞と分離して抜き出しつ
つ、それと見合う量の新しい培養液を供給して、長期間
培養条件を一定に制御しつつ細胞を培養する連続培養法
等が挙げられる。その中でも灌流培養法であることが好
ましい。灌流培養するに当って重要なことの1つは、培
養液中の生細胞と培養液とを効率よく分離し、古い培養
液を培養槽外へ取り出し、培養槽内の細胞の生育環境を
最適条件下に維持することである。また、ここで培養液
から分けられ、培養槽外へ取り出された古い培養液は、
膜による分離法、あるいは吸着による分離法などによ
り、その中に含まれる有用物質や生育阻害物質を分離・
除去した後、培養に必要な添加成分を新たに加えかつ、
カルシウムイオン濃度も所定濃度に調整することによ
り、新しい培養液として再使用することができる。
本発明において、増殖時期とは、生細胞密度を低い状
態から例えば5×106cells/ml以上の高い細胞密度に変
化させる時期であり、維持時期とは、生細胞密度を例え
ば5×106cells/ml以上に維持したまま生存させる時期
である。ここで増殖終了時および維持時期における細胞
密度は7×106〜5×107cells/mlであることが好まし
い。これら増殖時期と培養時期とは特に連続して行う必
要はなく、また培養槽も同一でなくてもよい。
本発明において培養系中のカルシウムイオン濃度は少
くとも増殖時期および維持時期の一時期に0.3mM未満と
するものである。該カルシウムイオン濃度は、好ましく
は0.001mM以上0.3mM未満、特に好ましくは0.002mM以上
0.3mM未満、更に好ましくは0.02mM以上0.3mM未満であ
る。
培養系中のカルシウムイオン濃度を上記の範囲とする
ことにより、培養系中に生じる細胞凝塊は1塊当りの平
均細胞数が1〜15個、好ましくは1〜10個程度となり、
細胞塊内部の細胞が壊死することなく長期的に安定に増
殖,培養することが可能となる。
また、本発明においては、増殖時期および維持時期の
少くとも一時期に所定の低カルシウムイオン濃度とする
ことが必要であり、その態様としては例えば下記の如く
種々の態様がある。
(i)増殖時期に低カルシウムイオン濃度の時期を有
し、維持時期は高カルシウムイオン濃度である場合 (ii)増殖時期および維持時期とも低カルシウムイオン
濃度である場合 (iii)増殖時期は高カルシウムイオン濃度であり、維
持時期は低カルシウムイオン濃度の時期を有する場合 (i)の場合についていえば、かかる濃度コントロー
ルを行う目的は、例えば接着力の強い細胞を用いる場合
に、増殖時期において細胞の凝集を強く抑制して有効に
細胞数を増やし、しかも、有用産物を生産させる維持時
期においては、有用産物の生産に最も適したカルシウム
イオン濃度まで高めて、生産を効率化することが目的で
ある。
従ってこの場合、増殖時期のカルシウムイオン濃度
は、0.3mM未満、好ましくは0.001mM以上0.3mM未満、特
に好ましくは0.002mM以上0.3mM未満、更に好ましくは0.
02mM以上0.3mM未満に制御し、一方、維持時期のカルシ
ウムイオン濃度は細胞の種類により異なるが、例えば0.
3mM以上、好ましくは0.5mM以上1mM以下に制御すること
が好ましい。
この場合、維持時期においても細胞分裂はおこるので
その際凝集が発生したり、また細胞分裂によるものでは
なくても細胞間の凝集が生じてくる場合もあるが、この
場合であっても、カルシウムイオン濃度は、基本的には
低目にコントロールされているため凝集の程度はあまり
強くなく、簡単な処理、例えば、低カルシウムイオン濃
度に一時もどすとか、少し強目の攪拌とかで凝集をこわ
すことが可能である。
かかる操作が有効な細胞としては、BHK細胞等が挙げ
られ、特にBHK細胞またはそれに遺伝子を導入したトラ
ンスフォーマントは、かかる操作の効果が如実に現われ
る。
(ii)の場合についていえば、増殖時期および維持時
期とも低カルシウムイオン濃度であり、本発明において
は最も好ましい態様である。すなわち、増殖時期,維持
時期ともに細胞の凝集を抑えることができ、かつ維持時
期においても生理活性物質を効率的に産生することがで
きる。該カルシウムイオン濃度は、0.3mM未満であり、
好ましくは0.001mM以上0.3mM未満、特に好ましくは0.00
2mM以上0.3mM未満、更に好ましくは0.02mM以上0.3mM未
満である。
かかる操作が有効な細胞としてはヒト胎児腎細胞由来
293株,CHO細胞等が挙げられ、特にヒト胎児腎細胞由来2
93株,CHO細胞またはそれに遺伝子を導入したトランスフ
ォーマントはかかる操作の効果が如実に現われる。
(iii)の場合についていえば、これは本来接着性の
低い細胞に適用しうる方法ということができるが、増殖
時期に高カルシウム濃度で増殖させ、凝集した細胞を何
らかの手段でバラバラにし、しかるのち、低カルシウム
イオン濃度で維持培養する方法である。
この場合、増殖時期に形成された凝集を解く方法とし
ては、培養系中のカルシウムイオン濃度を低くし、通常
の攪拌を行うことによって可逆的に解離させることもで
きる。また場合によっては、トリプシン,コラゲナーゼ
等の蛋白質分解酵素を用いて解離させることもできる。
かくして予め別途用意させた増殖細胞を低カルシウム
イオン濃度で維持培養するのは、維持培養時期は長期間
であるので、この時期に凝集がおこると凝塊の内部の細
胞が壊死してしまうからである。
以上のような理由から、本態様においては、増殖時期
と維持時期は、別々の時期に別々装置を用いて行うのが
好ましい。
上記増殖時期のカルシウムイオン濃度は0.3mM以上、
好ましは0.5mM以上2mM以下であり、一方、維持時期のカ
ルシウムイオン濃度は0.3mM未満、好ましくは0.001mM以
上0.3mM未満、特に好ましくは0.002mM以上0.3mM未満、
更に好ましくは0.02mM以上0.3mM未満である。
かかる操作を用いることができる細胞としては前記態
様(ii)で記載したヒト腎細胞由来293株,CHO細胞等が
挙げられ、特にヒト胎児腎細胞由来293株,CHO細胞また
はそれに遺伝子を導入したトランスフォーマントが好ま
しい。
本発明において用いられる実質的に無血清の培地と
は、本質的に血清等の生物由来のタンパク質を含有しな
い無血清培地からなるものであり、細胞の種類に応じて
高々3vol%迄の血清が添加されていてもよいことを意味
する。
かかる無血清培地としては、血清培養用の基礎培地と
して従来より知られていたものを利用することができ
る。
例えばRPMI−1640培地、イーグルベーサルメディウム
(BME)培地,ミニマムエッセンシャルメディウム(ME
M)培地,イスコフ氏培地,ハムF12培地,L−15培地,ウ
イリアムス氏培地,ウェイマウス氏培地,ダルベッコ変
法イーグル培地(DME)等が挙げられる。これらの基礎
培地中のカルシウムイオン濃度は通常0.3mM〜1.8mMに調
整されて市販されているので、本発明の低カルシウムイ
オン濃度培養に用いるには、カルシウムイオン濃度につ
いては、例えば0.0026mM等の低濃度に調整したものを用
意し、必要に応じてカルシウムイオンを添加して好まし
い濃度に調整して用いる。上記の基礎培地の組成は本来
血清を10%以上添加して使用するように調整されている
ものであるので、本発明の無血清培養に使用するために
は、その血清の代わりに種々の栄養分や増殖因子等を添
加する必要がある。
これらの低カルシウムイオン濃度に調整された無血清
培地には、必要に応じて高々3vol%迄の血清が加えられ
てもよい。これは、細胞の凝集を抑えるという観点から
は低いカルシウムイオン濃度での培養が十分な効果を発
揮するが、細胞の増殖,維持という観点からは、細胞の
種類によっては若干の血清を添加するのが好ましい場合
があるからである。血清の種類としては、ウシ胎児血清
(FCS),ウシ新生児血清(NBCS),ウシ血清(CS),
ウマ血清(HS)等が挙げられる。
このように血清が加えられる場合、血清中には通常、
いくらかのカルシウムイオンが含有されているので、こ
のことも考慮してカルシウムイオン濃度は調整されねば
ならない。
また、市販の無血清培地を利用せずとも、実質的に水
よりなる水性媒体中に種々の無機塩,ビタミン類,捕酵
素,ブドウ糖,アミノ酸,抗生物質などの通常細胞培養
に使用される添加成分を加え、更に、カルシウム塩とし
て塩化カルシウム,硝酸カルシウムのいずれか、あるい
は両者の混合物などを添加し、必要に応じて3vol%以下
の血清を加えることによって、本発明で用いられる低カ
ルシウムイオン濃度の培養液を調整することもできる。
本発明の培養方法において、培養液中の酸素濃度を一
定に維持するために、酸素を供給する方法としては、サ
スペンジョン液中へ酸素または酸素含有ガスを直接供給
してもよい。他の供給手段としては、例えば酸素キャリ
アーを用いる方法がある。酸素キャリアーとしては、水
と実質的に混合しないで酸素を溶解し得る液状の化合物
が使用され、その例としては、人工血液の素材として使
用されるような種々のフルオロカーボンが挙げられる。
かようなフルオロカーボンを酸素供給手段として使用す
る場合には、酸素を溶解させたフルオロカーボンをサス
ペンジョン液中の上部から液滴状または薄膜状で添加す
ればよい。また、酸素透過性のテフロンやシリコンのチ
ューブを培養槽内に取り付けることによる供給方法もあ
る。
以下、実施例を挙げて本発明を詳述する。
実施例1 1)培養装置 添付図に示す培養システムを使用した。培養槽は図の
ように外壁の内側に隔壁によって仕切られたセトリング
ゾーンが設けられ、その上部には培養液の排出口を有し
ており、正味培養容積は約180mlである。
2)培養液 RPMI1640培地,ハムF12培地及びダルベッコ変法イー
グル培地を2:1:1で混合したものにさらにブドウ糖,ア
ミノ酸等を加えたもの(以下eRDFと称する)からパント
テン酸カルシウム以外のカルシウム塩(塩化カルシウ
ム,硝酸カルシウム)を除いた組成のもの(以下low Ca
eRDFと称する)を基礎培地として用い、増殖因子とし
てインスリン,トランスフェリン,エタノールアミン,
亜セレン酸ナトリウム(ITES)を加えた。添加濃度はそ
れぞれ9μg/ml,10μg/ml,10μM,20nMである。
3)培養方法及び結果 あらかじめオートクレーブ滅菌した前記培養槽に正味
培養容積が約180mlになるように培養液を送入し、これ
にATCCから入手したヒト胎児腎細胞由来293株にヒトプ
ロテインCのアミノ酸配列をコードする遺伝子を特開昭
62−111690号公報記載の方法を用いて導入したプロテイ
ンC産生株293#3株を播種した。
培養槽には溶存酸素濃度が3ppmとなるように吹込ノズ
ル(B)を通して酸素ガスを自動的にコントロールしな
がら送入した。
培養槽中の培養液は37℃に保持した。培養槽中にはマ
リン型攪拌翼が取付けられており攪拌速度は40rpmとし
た。
播種後1日間は回分培養を行い、この後灌流を開始し
た。
すなわち、ポンプPを駆動し培養槽内で細胞と分離さ
れた培養液をライン(D)から抜き取り、その量と同じ
量の新培地をライン(A)から連続的に送入した。培地
置換率は実験結果に併記した。
培養結果を第1表に示す。
実施例2 培養液として実施例1で用いた培養液に塩化カルシウ
ムを0.01mM添加したものを用いた以外はすべて実施例1
と同様に行った。
培養結果を第2表に示す。
実施例3 培養液として実施例1で用いた培養に塩化カルシウム
を0.04mM添加したものを用いた以外はすべて実施例1と
同様に行った。
培養結果を第3表に示す。
実施例4 培養液として実施例1で用いた培養に塩化カルシウム
を0.1mM添加したものを用いた以外はすべて実施例1と
同様に行った。
培養結果を第4表に示す。
比較例1 基礎培地に通常のeRDF(Ca++濃度0.74mM)を用いた以
外はすべて実施例1と同様に行った。
培養結果を第5表に示す。
実施例5 細胞にATCCから入手したBHK株にヒトプロテインCの
アミノ酸配列をコードする遺伝子を導入したプロテイン
C産生株BHK229−10株を用いたこと、及び培養13日目ま
では実施例2で用いた培養液を、14日目以降は比較例1
で用いた培地を用いたこと以外はすべて実施例1と同様
に行った。
培養結果を第6表に示す。
比較例2 培養液に比較例1で用いたものを用いた以外はすべて
実施例5と同様に行った。
培養結果を第7表に示す。
(f)発明の効果 本発明方法によれば、接着性動物細胞を、それ自身を
浮遊させた状態において、細胞同志の過度の凝集を抑え
て、長期間安定に、かつ高密度で成育させることが可能
となった。
【図面の簡単な説明】
添付図面は、本発明の培養方法を実施するために適した
培養装置の概略図を示したものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特公 平7−28731(JP,B2) Journal of Cellvla r Physiology Vol.132 No.1(1987)P.81−89 Journal of Cellvla r Physiology Vol.132 No.2(1987)P.363−366 Journal of Investi gative Dermatology Vol.81No.1Supplement (1983)P.33S−40S

Claims (14)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】腎細胞由来接着性動物細胞を実質的に無血
    清の培地において、担体を用いることなく浮遊状態で培
    養するに当って、少くとも増殖時期および維持時期の一
    時期に培養系中のカルシウムイオン濃度を0.3mM未満と
    することを特徴とする接着性動物細胞の培養方法。
  2. 【請求項2】培養系中のカルシウムイオン濃度を0.001m
    M以上0.3mM未満とする請求項1記載の接着性動物細胞の
    培養方法。
  3. 【請求項3】培養系中のカルシウムイオン濃度を0.002m
    M以上0.3mM未満とする請求項1記載の接着性動物細胞の
    培養方法。
  4. 【請求項4】培養系中のカルシウムイオン濃度を増殖時
    期および維持時期ともに0.002mM以上0.3mM未満とする請
    求項1記載の接着性動物細胞の培養方法。
  5. 【請求項5】培養系中のカルシウムイオン濃度を増殖時
    期においては0.3mM以上とし、維持時期においては0.002
    mM以上0.3mM未満とする請求項1記載の接着性動物細胞
    の培養方法。
  6. 【請求項6】培養系中のカルシウムイオン濃度を増殖時
    期においては0.3mM以上とし、維持時期においては0.02m
    M以上0.3mM未満とする請求項1記載の接着性動物細胞の
    培養方法。
  7. 【請求項7】培養系中のカルシウムイオン濃度を増殖時
    期においては0.002mM以上0.3mM未満とし、維持時期にお
    いては0.3mM以上とする請求項1記載の接着性動物細胞
    の培養方法。
  8. 【請求項8】増殖終了時および維持時期における細胞密
    度が5×106〜5×107cells/mlである請求項1記載の接
    着性動物細胞の培養方法。
  9. 【請求項9】増殖および維持時期における細胞密度が1
    〜10cells/塊である請求項1記載の接着性動物細胞の培
    養方法。
  10. 【請求項10】腎細胞由来接着性動物細胞がヒト胎児腎
    細胞由来293株又はBHK細胞、またはそれらに遺伝子を導
    入したトランスフォーマントである請求項1記載の接着
    性動物細胞培養方法。
  11. 【請求項11】培養法が連続培養法である請求項1記載
    の接着性動物細胞の培養方法。
  12. 【請求項12】培養法が灌流培養法である請求項1記載
    の接着性動物細胞の培養方法。
  13. 【請求項13】接着性動物細胞が生理活性ポリペプチド
    を産生する細胞である請求項1記載の接着性動物細胞の
    培養方法。
  14. 【請求項14】接着性動物細胞がプロテインCまたは活
    性型プロテインCを産生する細胞である請求項1記載の
    接着性動物細胞の培養方法。
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