JPH0947284A - 動物細胞の培養方法 - Google Patents

動物細胞の培養方法

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JPH0947284A
JPH0947284A JP7222684A JP22268495A JPH0947284A JP H0947284 A JPH0947284 A JP H0947284A JP 7222684 A JP7222684 A JP 7222684A JP 22268495 A JP22268495 A JP 22268495A JP H0947284 A JPH0947284 A JP H0947284A
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hgf
culture
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cells
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JP7222684A
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Inventor
敦之 ▲土▼田
Atsushi Tsuchida
Yasushi Itakura
康史 板倉
Noriko Akimaru
憲子 秋丸
睦夫 ▲泰▼地
Mutsuo Taiji
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Original Assignee
Sumitomo Pharmaceuticals Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 生理活性物質等の生産性を高めることができ
る動物細胞の培養方法を提供する。 【解決手段】 本発明は、動物細胞の培養方法であっ
て、溶存酸素濃度を制御し且つ間歇的に培地交換を行い
ながら連続的に培養を行う方法である。本発明によれ
ば、培地中の老廃物の蓄積を防止でき、また培養液中の
目的物質濃度が高いので、目的物質の分離・精製を容易
に行うことができる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は動物細胞の培養方法
に関する。更に、詳しくは生理活性物質等の有用産物を
産生する動物細胞の培養方法及びそれを用いたHGF(H
epatocyte GrowthFactor)の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】動物細胞を培養することにより、生理活
性物質などの有用産物(例えば、インターフェロン、ホ
ルモン、モノクローナル抗体等)を生産することは従来
から広く行われている。特に、近年、遺伝子工学の進歩
に伴い、目的物質をコードする遺伝子を含む発現ベクタ
ーを導入した動物細胞を培養することにより、有用産物
を生産することが行われている。動物細胞の培養方法と
しては、培養毎に培地及び細胞を交換するバッチ法が行
われていた。しかし、バッチ法では制御可能なパラメー
ターはpH、温度及び溶存酸素濃度(DO)だけである
ため、栄養源の減少と老廃物(アンモニア、乳酸等)濃
度の上昇により、細胞のおかれる環境が常に変化するの
で、細胞増殖が完全に進まないうちに、物質生産が停止
してしまう問題があった。このような問題から、連続的
に培地を供給し且つ培養液を回収しながら培養を行う連
続灌流法が開発され、この方法によれば、栄養成分と老
廃物濃度の両方を新鮮培地による希釈速度を変えること
によりコントロールすることができる。従って、最も効
率のよい培養を営んでいる生体に近い条件に定常的に環
境を制御することができ、長期間連続的に培養を行うこ
とができるという利点がある。特に、キャリア(不溶性
微小担体)に細胞を付着させて培養する方法が開発され
た結果、上記の連続灌流法と組み合わせることにより、
連続的な高密度培養が可能となり、有用物質の生産性は
著しく向上した。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上述のように、連続灌
流法は多くの利点を有しているが、低い灌流比では目的
物質の高生産性を維持することは困難であり、また高い
灌流比では培地コストが高くなる問題がある。更に、培
養液中の目的物質濃度が低く、目的物質の分離・精製コ
ストが高くなる点でも問題があり、目的物質が安定性に
欠けるような物質の場合には、分離・精製中に分解など
が生じ、十分量の目的物質が得られないことがある。特
に、目的物質が高分子蛋白質性物質の場合、分離・精製
中に変性が生じ易く、比活性が著しく低下するおそれが
ある。本発明者等は、高分子蛋白質性物質であるHGF
を動物細胞の培養により生産する方法を検討してきた
が、連続灌流法では上記の問題からHGFの生産性を高
めることが困難であり、このような問題を解消し得る方
法を検討した結果、新たな培養方法を見出して本発明を
完成した。
【0004】なお、HGFは様々な薬理作用を示す生理
活性ペプチドであり、その薬理作用については、例え
ば、実験医学 Vol.10, No.3 (増刊)330-339 (1992)に
記載されている。HGFはその薬理作用から肝硬変治療
剤、腎疾患治療剤、上皮細胞増殖促進剤、抗ガン剤、ガ
ン療法用副作用防止剤、肺障害治療剤、胃・十二指腸損
傷治療剤、脳神経障害治療剤、免疫抑制副作用防止剤、
コラーゲン分解促進剤、軟骨障害治療剤、動脈疾患治療
剤、肺線維症治療剤、肝臓疾患治療剤、血液凝固異常治
療剤、血漿低蛋白治療剤、創傷治療剤、神経障害改善
薬、造血幹細胞増加剤、育毛促進剤等(特開平4-18028号
公報、特開平4-49246号公報、EP 492614号公報、特開平
6-25010号公報、WO 93/8821、特開平6-172207、特開平7
-89869号公報、特開平6-40934号公報、WO 94/2165、特
開平6-40935号公報、特開平6-56692号公報、特開平7-41
429号公報、WO 93/3061、特開平5-213721等)として有用
であることが知られている。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は前記課題を解決
するためになされたものであり、その要旨は、 有用産物を産生する動物細胞が付着したキャリアを用
いる動物細胞の培養方法であって、溶存酸素濃度を制御
し且つ間歇的に培地交換を行いながら連続的に培養する
ことを特徴とする動物細胞の培養方法; 動物細胞が付着性動物細胞である上記記載の動物細
胞の培養方法; 動物細胞が、CHO細胞である上記記載の培養方
法; CHO細胞が、HGFを発現し得る発現ベクターが導
入されたCHO細胞である上記記載の培養方法。 溶存酸素濃度を5〜7ppmに制御しながら培養する
上記〜の何れかに記載の培養方法; HGFを発現し得る発現ベクターが導入された動物細
胞を培養することによるHGFの製造方法であって、当
該細胞が付着したキャリアを用い、溶存酸素濃度を制御
し且つ間歇的に培地交換を行いながら連続的に培養し、
培養液からHGFを採取することを特徴とするHGFの
製造方法;に関する。
【0006】
【発明の実施の形態】本発明の培養方法において使用さ
れる動物細胞は、その培養により生理活性物質等の有用
産物を産生し得る動物細胞であれば特に限定されず、付
着性細胞及び浮遊性細胞の何れも包含される。付着性細
胞の例としては、例えば、CHO細胞、各種の線維芽細
胞、各種の腎細胞、各種の癌細胞、マクロファージなど
が例示され、また浮遊性細胞の例としては、例えば、ハ
イブリドーマ、ミエローマなどが例示される。本発明の
培養方法において、動物細胞はキャリアに付着させて培
養する。キャリアとしては、従来から慣用されている、
ゼラチン、コラーゲン、ガラス、セルロース、デキスト
ラン、ポリスチレン、ポリアクリルアミドなどを素材と
する多孔質性担体が例示され、当該担体は第3級アミノ
化、コラーゲンコート、ウレタンコートなどの表面処理
がされていてもよい。キャリアの具体的な例としては、
例えば、旭化成マイクロキャリア、カルチスフィア(Cul
tispher)、インフォーマトリックス(Informatrix)、ミ
クロスフィア(Microsphere)、シラン(Siran)、サイトセ
ル(Cytocell)、セル スノー(Cell Snow)などが例示され
る。
【0007】本発明の培養方法は、前記の動物細胞が付
着したキャリアを培地中で培養することからなり、その
際に、DOを制御し且つ間歇的に培地交換を行う。使用
される培地は、培養する細胞種に応じて適宜選択され
る。培地中のDOについて、DO値が低いと細胞の増殖
が低下し、またDO値が高いと活性酸素などが細胞毒に
なり細胞が死滅するおそれがあるので、細胞種、培地中
の細胞密度、栄養成分濃度などに応じて適宜選択される
が、一般に、DOとして、3〜10ppm程度、好まし
くは5〜8ppm程度に調整される。DOの制御は、常
法に準じ、DOセンサーによりDO値を測定し、所定の
DO値になるように、空気、酸素又はその混合物を、培
地中又は培地表面に供給することや培地中に配設された
酸素透過性チューブ(例えば、シリコーンチューブ等)又
は発泡装置(スパージャー)を介して培地に供給するこ
とにより行われる。
【0008】本発明においては、培地を間歇的に交換し
ながら培養を行う。培地の交換頻度は特に限定されず、
細胞種、培養条件、培養スケールなどにより適宜決定す
ることができるが、通常、1回/2日〜3回/1日程度
行われる。1回当りの培地交換量(灌流比)としては、
培養液の50〜97%程度、好ましくは60〜95%程
度、より好ましくは70〜90%程度を新たな培地と交
換する。交換量が50%未満では、培地中の老廃物の除
去が不十分であり、培養細胞の増殖が停止するおそれが
あり、また交換量が97%を超えても格別問題はない
が、培養細胞を損失するおそれがある。キャリアに動物
細胞を付着させて培養を行う場合、キャリアの濃度は、
0.5〜5g/L程度、好ましくは2〜4g/L程度に
調整され、細胞密度としては、1×106〜3×107ce
lls/ml程度が好ましい。また、3×106〜2×107ce
lls/ml程度の細胞密度において、DOを5〜7ppmに
制御しつつ培養するのが好ましい。
【0009】より具体的には、本発明の培養方法は、D
Oを制御しながら所定時間の培養を行った後、キャリア
を沈降させ、次いで培養液の50〜95%程度を回収
し、回収分に相当する新鮮培地を供給して培養を継続
し、この操作を繰り返すことに行われる。なお、培養液
のpH制御や温度制御、撹拌などは慣用の方法に準じて
行えばよい。
【0010】上記のように、本発明においては、間歇的
に培地交換が行われ、新鮮培地が供給される。従って、
培養液中に老廃物が蓄積されることによる培養細胞の増
殖停止を防止することができる。また、回収された培養
液中の目的物質の濃度は、連続灌流法に比べて高濃度で
あるから目的物質の分離・精製が容易になり、更に使用
される培地量も連続灌流法に比べて少なくてすむのでコ
ストの低減を図ることができる利点を有する。
【0011】本発明の方法は上記の特長を有しており、
培養液中の目的物質の分離・精製が容易であるから、生
理活性物質等の有用産物、高分子蛋白質性物質などを動
物細胞を用いて生産する場合に好適に利用される。生産
の例としては、天然の生理活性物質等を産生する細胞、
例えば、ナマルバ細胞の培養によるインターフェロンの
製造やハイブリドーマの培養によるモノクローナル抗体
の製造などに用いられる。特に、遺伝子工学的手法によ
り、目的物質をコードする遺伝子を含む発現ベクターを
導入した形質転換動物細胞を培養して目的物質を生産す
る方法に用いられる。例えば、サイトカイン、成長因子
等の目的物質をコードする遺伝子を含む発現ベクターを
CHO細胞、マウスC127細胞、ナマルバ細胞などに
導入した形質転換細胞を培養し、目的物質を得ることが
できる。本発明者等は、本発明の培養方法を用いること
により、HGFを効率的に生産できることを見出した。
本発明のHGFの製造方法はかかる知見に基づくもの
で、HGFを発現し得る発現ベクターが導入された動物
細胞(好ましくはCHO細胞)が付着したキャリアを用
い、溶存酸素濃度を制御し且つ間歇的に培地交換を行い
ながら連続的に培養し、培養液からHGFを採取するこ
とからなる。この方法で培養することにより、培養液中
のHGF濃度100mg/l以上、培養槽当りのHGF
産生量70〜80mg/l/日を達成できることが判明
した。
【0012】上記のHGFの製造方法において、HGF
を発現し得る発現ベクター及びそれが導入された形質転
換動物細胞の調製は、例えば、Nature, 342, 440, 198
9、特開平5−111383号公報、Biochem. Biophys.
Res. Commun., 163, 967, 1989などに記載の方法に準
じて行うことができる。動物細胞としては、CHO細
胞、マウスC127細胞、サルCOS細胞などが好適に
使用される。当該細胞は、前述のキャリアに付着させて
培養に使用され、好適には、0.5〜4g/L程度のマ
イクロキャリア(旭化成社製)を用い、細胞密度1×1
5〜1×106cells/ml程度付着させる。定常状態での
培養では細胞密度1×106〜3×107cells/ml程度に
て行われる。なお、HGFには、HGFと実質的に同効
である限り、そのアミノ酸配列の一部が欠失又は他のア
ミノ酸により置換されていたり、他のアミノ酸配列が一
部挿入されていたり、N末端及び/又はC末端に1又は
2以上のアミノ酸が結合していたり、或いは糖鎖が同様
に欠失又は置換されている物質も包含される。
【0013】本発明の方法によるHGFの生産におい
て、DOは5〜7ppm程度に維持しながら培養を行う
のが好ましい。DOが5ppm未満ではHGF産生量が
低下し、また7ppmを超えると細胞数が減少するおそ
れがある。また、培地の交換頻度としては、1回/2日
〜2回/1日程度、好ましくは1回/1日行われ、交換
量としては60〜95%程度、好ましくは70〜90%
程度とされる。使用される培地は、細胞種、育成状態な
どにより適宜選択することができ、例えば、CHO細胞
を使用する場合には、α−MEM、DMEMなどの培地
が用いられ、必要に応じて、血清、アミノ酸類、ビタミ
ン類、糖類、抗生物質、増殖促進剤などを添加してもよ
い。また、培養液からのHGFの採取は、塩析、ゲル濾
過、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティクロ
マトグラフィーなどの慣用の方法にて行うことができ
る。
【0014】
【発明の効果】本発明の培養方法によれば、間歇的に培
地交換が行われるので、培養液中への老廃物の蓄積を防
止でき、細胞を好適な環境下に培養することができ、ま
た培養液中の目的物質濃度が高いので目的物質の分離・
精製を容易に行え、更に培地使用量の低減を図ることが
できる。従って、本発明によれば、目的物質の生産性を
向上させることができ、またコストの低減を図ることが
できる。特に、動物細胞の培養による高分子蛋白質性物
質の生産に好適に使用される。また、本発明のHGFの
製造方法は、上記の培養方法を用いたHGFの製造方法
であり、培養液及び培養槽当たりのHGF産生量が高い
ので、HGFの生産性を著しく高めることができる。
【0015】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に
説明するが、本発明はこれらの実施例によりなんら限定
されるものではない。
【0016】実施例1高密度間歇培養法によるHGF産生CHO細胞株A、B
及びCの培養 (a)培養法 0.25Lのスピナーフラスコ(テクネ)において、0.1Lの
α-MEM改変培地(α-MEM培地に表1の成分を添加した培
地)、1g/Lの旭化成マイクロキャリア(旭化成)を用い
て撹拌培養を行った。培地には5%の牛血清、100nMのメ
トトレキサレート(和光純薬)、100U/Lのペニシリン
(ギブコ)、100mg/Lのストレプトマイシン(ギブコ)
を加えた。5アミノ酸欠失型のヒトHGF遺伝子により
形質転換されたCHO細胞株A、B及びCを、0.4×106
cells/mlの密度で播種し、0.07L(70%)の培地交換を毎日
行った。酸素供給の制御は、上面への通気における空気
と酸素の割合を細胞密度の上昇に応じて変えることによ
り行った。培養期間中の細胞密度及びHGF濃度を経時
的に測定した。その結果を図1に示す。なお、図1にお
いて、(A)は細胞株A、(B)は細胞株B、(C)は
細胞株Cを用いた場合を示す。
【0017】
【表1】
【0018】(b)結果 図1(A)、(B)及び(C)に示すように、全ての細胞株は
良好な増殖性を示し、細胞密度は5〜7×106cells/mlに
達した。図(A)において、HGF産生CHO細胞株A
のHGF産生性については、培養液中のHGF濃度は60
〜80mg/L、1日当たりのHGF産生量は40〜60mg/L/day
を保ち、連続灌流培養と比較して低い灌流比(0.7/日:
毎日70%の培地交換)で高HGF濃度の培養液を安定し
て得られることが明らかとなった。また、他のHGF産
生CHO細胞株B及びCについても安定したHGF産生
性を示し、この培養法がHGF産生CHO細胞株Aに特
異的に有効なものでは無いことが示された。
【0019】有効な培地成分が1日の間に枯渇している
ことも考えられたため、培地交換の頻度を上げるべく、
HGF産生CHO細胞株A及びBにおいて1日2回の培
地交換を試みたが、1日当たりの総HGF産生量に変化
は見られなかった。さらに、1日の間にどの様にHGF
が蓄積されるかを検討するため、HGF産生CHO細胞
株A及びBにおいて培養10日目から11日目の時点で経時
的にサンプリングを行い、HGF濃度、グルコース濃度
を測定した。その結果を図2に示す。その結果、HGF
産生は培地交換直後の3時間程度は若干良い傾向が見ら
れるが、その後はほぼ一定の速度で産生していることが
明らかとなった。また、興味深いことにHGF産生CH
O細胞株Bについては、グルコースが半日でかなり消費
されているにも関わらず、それ以後もHGFを産生して
いた。
【0020】本検討により、例えば1日1回の頻度で間
歇的に70%程度の培地交換を繰り返すことにより、高い
HGF産生性が保持できた。培地を一定の間隔で新鮮に
近い状態にすれば、次の培地交換までに、一時的に培地
の状態が悪くなったとしても細胞のHGF産生は阻害を
受けないことが示された。また、培地交換の頻度につい
ては1日2回(灌流比1.4/日)行ってもHGF産生性の向
上は見られず、1日1回(灌流比0.7/日)という低い灌
流比の培地交換で高HGF濃度の培養液を安定して得ら
れることが示された。
【0021】実施例2HGF産生CHO細胞株Aの高密度間歇培養法における
溶存酸素濃度の影響(1) (a)培養法 1Lのスピナーフラスコ(柴田科学)において、0.5Lのα
-MEM改変培地(α-MEM培地に表1の成分を添加した培
地)、2g/Lの旭化成マイクロキャリア(旭化成)を用い
て撹拌培養を行った。培地には5%の牛血清、100nMのメ
トトレキサレート(和光純薬)、100U/Lのペニシリン
(ギブコ)、100mg/Lのストレプトマイシン(ギブコ)
を加えた。5アミノ酸欠失型のヒトHGF遺伝子により
形質転換されたCHO細胞株Aを0.33×106cells/mlの
密度で播種し、0.4L(80%)の培地交換を毎日行った。溶
存酸素濃度の制御は培養開始当初3.0ppmで制御し、培養
12日目に5.0ppm、19日目に7.0ppmまで上げた後、25日目
に5.0ppmに戻し、40日まで培養を行った。但し、溶存酸
素濃度の実測値としては、設定値〜設定値を1ppm程
度上回る範囲となる。培養期間中の細胞密度及びHGF
濃度を経時的に測定した。その結果を図3に示す。
【0022】(b)結果 図3に示されるように、溶存酸素濃度を3.0ppmに維持し
たところ、HGF産生性は細胞密度の上昇に伴って低下
したため、5.0ppmに増加するとHGF産生性が劇的に改
善された。さらにHGF産生性を高めるため、溶存酸素
濃度を7.0ppmに変更したが、HGF産生性の改善は見ら
れなかった。そこで、5.0ppmに戻すと細胞数及びHGF
産生量の双方とも若干増加した。結果として、0.8/日
という低い灌流比で、細胞密度8×106cells/ml、培地中
のHGF濃度は100〜120mg/Lを維持でき、HGF産生性
も10〜14 mg/109cells/dayと今までの連続灌流培養に比
べてかなり高い値を維持した。
【0023】培養の初期、中期、後期において培養上清
中に分泌されたHGFを粗精製し、シアル酸含量を測定
した。シアル酸含量はHGF1mg当たり10-20μgとな
り、連続灌流培養法により製造したHGFと同程度の値
を示した。糖蛋白質においてはその糖鎖構造の違いが活
性に大きな影響を及ぼすことが多いことが知られてい
る。本実験により得られたHGFは、少なくともシアル
酸含量に関しては連続灌流培養法により製造したHGF
と同程度の値を示した。このことから、当培養法と連続
灌流培養法との培養法の違いによる糖鎖構造の変化はほ
とんど無いと考えられ、得られるHGFの比活性も大差
ないものであると推察された。
【0024】実施例3HGF産生CHO細胞株Aの高密度間歇培養法における
溶存酸素濃度の影響(2) (a)培養法 1Lのスピナーフラスコ(柴田科学)において、0.5Lのα
-MEM改変培地(α-MEM培地に表1の成分を添加した培
地)、3g/Lの旭化成マイクロキャリア(旭化成)を用い
て撹拌培養を行った。培地には5%の牛血清、100nMのメ
トトレキサレート(和光純薬)、100U/Lのペニシリン
(ギブコ)、100mg/Lのストレプトマイシン(ギブコ)
を加えた。5アミノ酸欠失型のヒトHGF遺伝子により
形質転換されたCHO細胞株Aを0.56×106cells/mlの
密度で播種し、0.35L(70%)の培地交換を毎日行った。溶
存酸素濃度の制御は培養開始当初3.0ppmで制御し、培養
3日目に4.0ppm、培養9日目に5.0ppm、13日目に6.0ppmま
で上げて27日目まで培養を行った。その間の細胞密度及
びHGF濃度を経時的に測定した。その結果を図4に示
す。
【0025】(b)結果 実施例2において培養初期に溶存酸素濃度を3.0ppmに保
つとHGF産生性は細胞密度の上昇に伴って低下した。
本実験では4.0ppmで維持したところ、HGF産生性はや
はり細胞密度の増加に伴い低下した。そこで5.0ppmに変
更するとHGF産生性は改善され、6.0ppmに上げること
で更に改善された。結果として、0.7/日という低い灌流
比で、細胞密度1.3×107cells/ml、培地中のHGF濃度
は120〜150 mg/Lに達し、実施例2における2g/Lのキャ
リア濃度での培養より高値を示した。
【0026】実施例2及び3における検討により、溶存
酸素濃度はキャリアを用いた動物細胞の培養において、
維持できる細胞数や導入遺伝子産物の産生性に大きく影
響を与えること明らかとなり、例えば5.0〜7.0ppmに制
御することにより良好な細胞密度、産生性を維持するこ
とが示された。
【0027】実施例4HGF産生CHO株Aの高密度間歇培養におけるキャリ
ア濃度、酸素供給量の影響 (a)培養法 実施例1と同様の培養装置、培地を用い、2g/L、1g/L、
0.5g/Lのマイクロキャリア濃度でHGF産生CHO株A
の高密度間歇培養を行った。HGF産生CHO株Aを0.
4×106cells/mlの密度で播種し、0.07L(70%)の培地交換
を毎日行った。また、酸素供給は実施例1と同様に上面
への通気における空気と酸素の割合を段階的に変更する
ことにより制御した。培養期間中における細胞密度及び
HGF濃度の経時的変化を図5に示す。図5において、
(A)はマイクロキャリア濃度2g/L、マイクロキャリア
濃度1g/L、マイクロキャリア濃度0.5g/Lの場合を示す。
【0028】(b)結果 培養に対する酸素の影響がどの程度有るのかを確かめる
ため、通気に占める酸素の割合を増加させずに20%に維
持したところ、図5(A)、(B)及び(C)に示すように細
胞の増殖については少なくとも5×106cells/ml程度まで
は目立った阻害は受けなかったが、HGF産生性につい
ては細胞密度の増加に伴って低下した。そこで、酸素の
割合を順次上げると、HGF産生性が回復した。よっ
て、HGF産生性は明らかに酸素に依存することが示さ
れた。また、酸素の割合を80%に上げた時点で0.5g/Lの
キャリア濃度で培養中の細胞が劇的に死滅したことから
過度にならない程度の酸素供給により至適溶存酸素濃度
を保つ事が重要であることが示唆された。また、2g/Lの
キャリア濃度において100mg/LのHGF濃度、70〜80mg/
L/dayのHGF産生量という値が維持され、1g/Lのキャ
リア濃度より良い結果を得ていることからさらに高濃度
のキャリア濃度の検討を行うため、それぞれ2g/Lのキャ
リアを添加し培養を継続した。その結果、細胞密度、H
GF濃度共に増加した。また、培地交換を2日に一度に
したところ、細胞密度及びHGF産生性の低下が観察さ
れ、培地交換の割合を45%にした場合も同様に細胞密度
の減少が見られた。
【0029】上記の実験から、少なくとも4g/Lまではキ
ャリア濃度を増加することがHGFの高産生につながる
ことが示された。また、培養途中にキャリアを添加する
ことにより細胞密度、HGF濃度が増加し、当培養法に
よりキャリアからキャリアへの細胞の移動が好適に行わ
れると考えられた。培地交換に関しては2日に1回より
高い頻度(例えば1日1回)、45%より多くの割合(例
えば70%)で行う方が好ましいことが示された。
【0030】参考例1DMEM改変培地を用いたHGF産生CHO細胞株Aの
高密度連続灌流培養における溶存酸素濃度の影響 (a)培養法 3台の1Lのスピナーフラスコ(柴田科学)において0.5L
のDMEM改変培地(但し、DMEM培地のアミノ酸量を増量し
たもの)、2g/Lの旭化成マイクロキャリア(旭化成)を
用いて撹拌培養を行った。培地には添加因子として5%の
牛血清、100nMのメトトレキサレート(和光純薬)、4.5
g/Lのグルコース(ナカライテスク)、100U/Lのペニシ
リン(ギブコ)、100mg/Lのストレプトマイシン(ギブ
コ)を加えた。5アミノ酸欠失型のヒトHGF遺伝子に
より形質転換されたCHO細胞株Aを0.18×106cells/m
lの密度で播種し、翌日より灌流を開始した。灌流比は
0.3/日から始め、最終的には3.0〜3.8/日で制御した
(図6(A)、(B)及び(C)参照)。培養当初は溶存酸素
濃度を5.0-7.0ppmに制御し、5日目より7.0ppm、2.5pp
m、0.5ppmの3条件により培養を行い、細胞密度及びH
GF濃度を測定し、溶存酸素濃度の高密度灌流培養に対
する影響を比較した。その結果を図6に示した。図中、
(A)は溶存酸素濃度7.0ppm、(B)は溶存酸素濃度2.
5ppm、(C)は溶存酸素濃度0.5ppmの場合を示す。
【0031】(b)結果 図6に示されるように、連続灌流培養法を用いた場合、
溶存酸素濃度の影響は見られず、次のような結果が得ら
れた。(1)最高到達細胞密度は、溶存酸素濃度に関係な
く約3×106cells/mlであった。(2)HGF産生性は、8mg
/109cells/day前後で一定しており、(3)培養液中のHG
F濃度も最大10mg/Lと低値であった。以上のように連続
灌流培養においては溶存酸素濃度の影響は見られず、細
胞増殖性、HGF産生性共に低く抑えられた。
【0032】参考例2α−MEM改変培地を用いたHGF産生CHO細胞株A
及びDの高密度連続灌流培養 (a)培養法 1Lのスピナーフラスコ(柴田科学)において0.5Lのα-M
EM改変培地(α-MEM培地に表1の成分を添加した培
地)、2g/Lの旭化成マイクロキャリア(旭化成)を用い
て撹拌培養を行った。培地には5%の牛血清、100nMのメ
トトレキサレート(和光純薬)、100U/Lのペニシリン
(ギブコ)、100mg/Lのストレプトマイシン(ギブコ)
を加えた。5アミノ酸欠失型のヒトHGF遺伝子により
形質転換されたCHO細胞株A及びDをそれぞれ0.31×
106cells/ml、0.64×106cells/mlの密度で播種し、翌日
より灌流を開始し、それぞれ灌流比1.15/日、1.3/日
で固定した。溶存酸素濃度はどちらも4.8〜5.2ppmに制
御し、培養開始後数日を経て血清濃度を5%から1%、さら
に数日を経て1%から0.1%へと低下させた。その結果を図
7及び図8に示す。なお、図7はHGF産生CHO細胞
株Dを用いた場合、図8はHGF産生CHO細胞株Aを
用いた場合である。
【0033】(b)結果 HGF産生CHO細胞株Dに関しては、図7に示すよう
に、細胞密度が1×107cells/mlまで上昇したが、HGF
産生性は細胞密度が上昇するにしたがって低下し、培地
中のHGF濃度は最大時で30 mg/Lであった。最終的に
HGF濃度は10mg/Lで定常状態に達した。HGF産生性
は培地中の血清濃度を下げても回復しなかった。一方、
HGF産生CHO細胞株Aに関しては、HGF産生CH
O細胞株Dの結果を受けて細胞あたりのHGF産生性が
低下しないうちに培地中の血清濃度を低下させた。その
結果、図8に示すように、培地中のHGF濃度の急激な
低下は防ぐことが出来たが、細胞密度は4×106cells/ml
までしか上昇せず、HGF濃度は最大40mg/Lを示した
後、漸減した。
【0034】文献的には細胞密度が上昇し、物質産生性
が低下した段階で血清濃度を低下させることによって、
物質産生性を回復(或いは増大)させ得るという趣旨の
論文が多く見られるが、当実験おいては細胞密度の高低
に関わらず、そのような現象は観察されなかった。
【0035】参考例3連続灌流培養の培養上清を用いたHGF産生CHO細胞
株の低密度培養 (a)培養法 HGF産生CHO細胞株の連続灌流培養におけるHGF
産生性の低下が培地状態の悪化に起因するものか確かめ
るため、参考例2に示したHGF産生CHO細胞株Dの
連続灌流培養における、HGF産生性が低下しつつある
時期(培養7〜8日目)の培養上清(以下、培養上清Aと
呼ぶ)を用いてHGF産生CHO細胞株Aの低密度の静
置培養を行った。HGF産生CHO細胞株AをT-フラス
コに1.0×105/mlの細胞密度で播種し、3日ごとに4継
代培養した。培地として、培養上清A、新鮮培地(α-M
EM改変培地)、培養上清Aと新鮮培地を等量混合した物
の3種類を用い、細胞密度、倍加時間及びHGF産生量
を測定した。その結果を表2に示す。
【0036】
【表2】
【0037】(b)結果 表2に示すように、新鮮培地での培養に対し、培養上清
Aでの培養では増殖性、HGF産生性ともに悪かった
が、新鮮培地による等倍希釈によって増殖性、HGF産
生性ともに顕著に改善された。このことにより、連続灌
流培養法でHGF産生性が低下する要因の一つが培地に
あることが示唆された。即ち、参考例1、2に示したよ
うな灌流比を抑えた状態の連続灌流培養法においては、
培地は良好な状態に維持されているのではなく、悪い平
衡状態が連続的に保たれると考えられた。今回のT-フラ
スコを用いた低密度培養による検討において、培養上清
Aを新鮮培地で等倍希釈することにより増殖性、HGF
産生性ともに劇的に改善されたことから、高密度培養に
おいても連続的に培地を供給するのではなく、間歇的に
半分あるいはそれ以上の培地が置き換わるような培地交
換を行うことで、灌流比を上げることなくHGF産生性
を維持できることが推察された。
【図面の簡単な説明】
【図1】HGF産生CHO細胞株の間歇培養における細
胞密度とHGF濃度の推移を示した図である。図中、
(A)は細胞株A、(B)は細胞株B、(C)細胞株Cを用い
た場合を示す。
【図2】HGF産生CHO細胞株A及びBの間歇培養に
おけるHGF濃度とグルコース濃度の経時的な変化を示
した図である。
【図3】2g/Lのキャリア濃度でのHGF産生CHO細胞
株Aの高密度間歇培養における溶存酸素濃度、細胞密度
とHGF濃度の推移を示した図である。
【図4】3g/Lのキャリア濃度でのHGF産生CHO細胞
株Aの高密度間歇培養における溶存酸素濃度、細胞密度
とHGF濃度の推移を示した図である。
【図5】キャリア濃度を変化させた、HGF産生CHO
細胞株Aの間歇培養における細胞密度とHGF濃度の推
移及び酸素通気量を示した図である。図中、(A)は2g
/L、(B)は1g/L、(C)は0.5g/Lのキャリア濃度の場
合を示す。
【図6】溶存酸素濃度を変化させた、HGF産生CHO
細胞株Aの高密度連続灌流培養における細胞密度とHG
F濃度の推移を示した図である。図中、(A)は溶存酸
素濃度7.0ppm、(B)は溶存酸素濃度2.5ppm、(C)は
溶存酸素濃度0.5ppmの場合を示す。
【図7】HGF産生CHO細胞株Dの高密度連続灌流培
養における細胞密度とHGF濃度の推移を示した図であ
る。
【図8】HGF産生CHO細胞株Aの高密度連続灌流培
養における細胞密度とHGF濃度の推移を示した図であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 ▲泰▼地 睦夫 大阪府大阪市此花区春日出中3丁目1番98 号 住友製薬株式会社内

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 有用産物を産生する動物細胞が付着
    したキャリアを用いる動物細胞の培養方法であって、溶
    存酸素濃度を制御し且つ間歇的に培地交換を行いながら
    連続的に培養することを特徴とする動物細胞の培養方
    法。
  2. 【請求項2】 動物細胞が付着性動物細胞である請
    求項1記載の動物細胞の培養方法。
  3. 【請求項3】 動物細胞が、CHO細胞(チャイニ
    ーズハムスター卵巣細胞)である請求項2記載の培養方
    法。
  4. 【請求項4】 CHO細胞が、HGFを発現し得る
    発現ベクターが導入されたCHO細胞である請求項3記
    載の培養方法。
  5. 【請求項5】 溶存酸素濃度を5〜7ppmに制御
    しながら培養する請求項1〜4の何れかに記載の培養方
    法。
  6. 【請求項6】 HGFを発現し得る発現ベクターが
    導入された動物細胞を培養することによるHGFの製造
    方法であって、当該細胞が付着したキャリアを用い、溶
    存酸素濃度を制御し且つ間歇的に培地交換を行いながら
    連続的に培養し、培養液からHGFを採取することを特
    徴とするHGFの製造方法。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2002010370A1 (fr) * 2000-07-31 2002-02-07 Takeda Chemical Industries, Ltd. Procede de production d'une proteine recombinee
WO2003064635A1 (fr) * 2002-01-29 2003-08-07 Japan Tissue Engineering Co., Ltd. Methode de construction de spheroides, spheroides et compositions contenant des spheroides
US8465971B2 (en) 2002-09-04 2013-06-18 Tokyo Iken Co., Ltd. Method for controlling biological function with mechanical vibration and device therefor
JP2018500041A (ja) * 2014-12-31 2018-01-11 エルジー・ケム・リミテッド 組換え糖タンパク質のグリコシル化の調節方法

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