JPH083689A - 軸受用鋼および軸受部材 - Google Patents

軸受用鋼および軸受部材

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JPH083689A
JPH083689A JP13185994A JP13185994A JPH083689A JP H083689 A JPH083689 A JP H083689A JP 13185994 A JP13185994 A JP 13185994A JP 13185994 A JP13185994 A JP 13185994A JP H083689 A JPH083689 A JP H083689A
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聡 安本
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俊幸 星野
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明博 松崎
Kenichi Amano
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 加工性ならびに転動疲労寿命特性が SUJ2よ
りも優れた軸受用鋼および軸受部材を提供する。しか
も、コストの上昇および生産性の低下を伴うことなく達
成する。 【構成】C:0.70超〜0.85wt%, Si:0.50wt%未満,M
n:1.5 〜 3.0wt%, Al:0.07wt%以下,O:0.0030
wt%以下, N:0.0015〜 0.020wt%を含有し、残部
がFeおよび不可避的不純物からなる成分の鋼を、熱処理
により、体積比にして5%以下の残留炭化物と10〜30%
の残留オーステナイトを含む針状マルテンサイト組織と
する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ころ軸受あるいは玉軸
受といった転がり軸受の要素部材として用いられる軸受
部材およびこの軸受部材の素材である軸受用鋼に関し、
とくに加工性および転動疲労寿命特性の有利な改善技術
について提案する。
【0002】
【従来の技術】自動車ならびに産業機械等で用いられる
転がり軸受鋼としては、従来、高炭素クロム軸受鋼( 代
表鋼種JIS :SUJ 2)が最も多く使用されてきた。この S
UJ 2は、浸炭焼入れや高周波焼入れによらなくても、浸
漬焼入れによって、転がり軸受として必要な強度を得る
ことが可能であるため、安定した品質の軸受部材が製造
できるという利点があった。しかし、SUJ 2 は鋼中に高
価な合金元素であるCrを1.30wt%以上も含有しているの
で、コストの上昇を招くほか、このCrと鋼中に含まれる
0.95wt%以上のCとにより、鋳造時に、巨大な Fe,Cr系
共晶炭化物を生成する。そして、この状態の鋼素材をそ
のまま軸受部材へ加工し、焼入れ・焼もどし処理を施し
た場合には、この炭化物は、軸受部材の中に残留して、
転動疲労寿命特性を劣化させることになる。したがっ
て、このような成分からなる従来の鋼では、消散のため
の拡散焼なましの熱処理を施すことが必要となってく
る。しかるに、この拡散焼なましは、高温、長時間処理
を必要とすることから、素材製造コストの上昇、生産性
の低下を招くといった問題があった。それに加え、得ら
れた素材が非常に硬質であるため、転がり軸受部材へ加
工するためには、球状化焼なましが不可欠であり、この
ため、前記焼きなましにおけると同様に、製造コストの
上昇、生産性の低下を招くという問題があった。しか
も、このような熱処理を講じても、なお転動疲労寿命特
性は十分ではなく改善の余地が残されていた。
【0003】そこで、 SUJ2における上記のごとき欠点
を解消しようとする試みが、特開平2-54739 号公報に提
案されている。すなわち、特開平2-54739 号公報に開示
の技術は、Cを0.45〜0.70wt%に低減することによっ
て、拡散焼なましの省略を可能とし、さらに、加工性の
向上を通じて球状化焼なましの省略をも可能とするもの
である。しかしながら、この従来技術は、確かに、加工
性の向上を図り、製造コストの上昇、生産性の低下は抑
制しうるものではあるが、転動疲労寿命特性は従来の S
UJ2と同程度に止まっており、転動疲労寿命特性のさら
なる改良が必要であるという問題が残っていた。さら
に、この技術は、焼入れ性あるいは転動疲労寿命の維持
のために、高価な合金元素であるCrの添加が必須である
という問題もあった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の主たる目的
は、加工性(冷間鍛造性など)ならびに転動疲労寿命特
性が SUJ2よりも優れた軸受用鋼および軸受部材を提供
することにある。本発明の他の目的は、これらの特性改
善をコストの上昇および生産性の低下を伴うことなく達
成する技術を提案することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】発明者らは、上記の課題
を解決するために、軸受用鋼から所望形状の軸受部材に
加工するために必要な加工性と、加工した前記部材を焼
入れ、焼もどしの処理を施した後の軸受部材に必要な転
動疲労寿命特性とに及ぼす合金元素、析出物、金属組織
等の影響について詳細に研究した結果、下記の事実を見
い出した。 1)焼入れ、焼もどし処理後に残留する炭化物は転動疲
労寿命特性に悪影響を及ぼすので、その量はできる限り
少なくしたほうがよい。そのためには、Crに代表される
炭化物安定化元素の含有量を低減すること、望ましくは
添加しないことがよい。 2)加工性改善のためにとった、CならびにCr量の低減
処置による焼入れ性の低下は、Mnにより補うことが可能
である。また、Siの低減も加工性改善に効果的である。 3)焼入れ、焼もどし処理後に残留するオーステナイト
いわゆる残留オーステナイト(以下、単に「残留γ」と
略記する)は、硬質な非金属介在物の位置におけるはく
離の発生を抑制するので、転動疲労寿命を向上させる。
さらに、残留γは、軸受の潤滑油中に混入している研磨
粉やバリ、あるいは摩耗粉(以下、これらを総称して単
に「ゴミ」と略記する)が引き起こす転動疲労寿命低下
の抑制にも有効に作用する。 4)焼入れ、焼もどし処理後の残留γが過多にならない
限り、転がり軸受として必要な強度(具体的にはHRC 58
以上)を得ることが可能であり、さらに、使用時に実用
上問題になるような寸法変化は起こらない。このよう
な、小さな寸法変化はMn量を多量添加したときに形成さ
れる安定な残留γによるものである。
【0006】上述した知見にもとづいて、発明者らは、
この発明に想到したのである。すなわち、この発明は、
以下に列挙するような要旨構成を有するものである。 (1) C:0.70超〜0.85wt%, Si:0.50wt%未満,Mn:
1.5 〜 3.0wt%, Al:0.07wt%以下,O:0.0030wt
%以下, N:0.0015〜 0.020wt%を含有し、残部が
Feおよび不可避的不純物からなることを特徴とする軸受
用鋼。
【0007】(2) C:0.70超〜0.85wt%, Si:0.50wt
%未満,Mn:1.5 〜 3.0wt%, Al:0.07wt%以下,
O:0.0030wt%以下, N:0.0015〜 0.020wt%を含
み、さらにCr:1.3 wt%未満, Ni:1.5 wt%以
下,Mo:1.2 wt%以下, Cu:1.0 wt%以下,B:0.
012 wt%以下のうちから選ばれるいずれか1種または2
種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からな
ることを特徴とする軸受用鋼。
【0008】(3) ただし、上記基本成分(C, Si, Mn,
Al, O, N)に対しさらに、選択的に添加される任意添
加成分( Cr, Ni, Mo, Cu,B)については、上記(2) の
組成の範囲内において、次のような組合わせで添加する
ことが推奨される。 1.3 wt%未満Cr−( Ni, Mo, Cu, Bのいずれか1種
以上) 1.5 wt%以下Ni−( Mo, Cu, Bのいずれか1種以
上) 1.2 wt%以下Mo−( Cu, Bのいずれか1種以上) 1.0 wt%以下Cu−B 0.012 wt%以下B
【0009】(4) C:0.70超〜0.85wt%, Si:0.50wt
%未満,Mn:1.5 〜 3.0wt%, Al:0.07wt%以下,
O:0.0030wt%以下, N:0.0015〜 0.020wt%を含
有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成
を有し、かつ、体積比にして5%以下の残留炭化物と10
〜30%の残留オーステナイトを含む針状マルテンサイト
組織を有することを特徴とする軸受部材。
【0010】(5) C:0.70超〜0.85wt%, Si:0.50wt
%未満,Mn:1.5 〜 3.0wt%, Al:0.07wt%以下,
O:0.0030wt%以下, N:0.0015〜 0.020wt%を含
み、さらにCr:1.3 wt%未満, Ni:1.5 wt%以
下,Mo:1.2 wt%以下, Cu:1.0 wt%以下,B:0.
012 wt%以下のうちから選ばれるいずれか1種または2
種以上を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からな
る成分組成を有し、かつ、体積比にして5%以下の残留
炭化物と10〜30%の残留オーステナイトを含む針状マル
テンサイト組織を有することを特徴とする軸受部材。
【0011】(6) ただし、上記基本成分(C, Si, Mn,
Al, O, N)に対しさらに、選択的に添加される任意添
加成分( Cr, Ni, Mo, Cu,B)については、上記(2) の
組成の範囲内において、次のような組合わせで添加する
ことが推奨される。 1.3 wt%未満Cr−( Ni, Mo, Cu, Bのいずれか1種
以上) 1.5 wt%以下Ni−( Mo, Cu, Bのいずれか1種以
上) 1.2 wt%以下Mo−( Cu, Bのいずれか1種以上) 1.0 wt%以下Cu−B 0.012 wt%以下B
【0012】
【作用】以下に、この発明の化学組成、残留炭化物量お
よび残留γ量を上記の範囲に限定した理由について説明
する。
【0013】C: 0.70 超〜0.85wt%;Cは、基地に固
溶してマルテンサイトの強化に有効に作用する元素であ
り、焼入れ、焼もどし後の強度確保とそれによる転動疲
労寿命を向上させるために含有させる。その含有量が0.
70wt%以下ではこうした効果が得られない。一方、0.85
wt%超では鋳造時に巨大な炭化物を生成し、転動疲労寿
命を低下させるほか、この炭化物を消散させるためには
長時間の拡散焼鈍が必要となりコストの上昇と生産性の
低下を招く。したがって、Cの含有量は 0.70 超〜0.85
wt%、好ましくは0.70超〜0.80wt%する。
【0014】Si:0.50wt%未満;Siは、鋼の溶製時の脱
酸剤として用いられる他、基地に固溶して焼入れ、焼も
どし後の硬さを高めて転動疲労寿命を向上させる元素と
して有効である。しかし、過度に添加すると加工性を劣
化させる。このため、Siは、0.50wt%未満、好ましくは
0.35wt%以下、より好ましくは0.20wt%以下の範囲で添
加する。
【0015】Mn:1.5 〜 3.0wt%;Mnは、鋼の溶製時に
脱酸材として作用するほか、焼入れ性を向上させること
により基地マルテンサイトの硬さを高め、転動疲労寿命
の向上に有効に寄与する。また、オーステナイトの安定
化にも寄与する。しかし、過度に添加すると被削性を劣
化させる。したがって、Mnの添加量は、1.5 〜 3.0wt
%、好ましくは1.5 wt%〜2.0 wt%とする。
【0016】Al:0.07wt%以下;Alは、鋼の溶製時の脱
酸剤として用いられると同時に、鋼中Nと結合して結晶
粒を微細化して鋼の靱性向上に寄与する。しかし、添加
量が多すぎると、Oと結合して硬質な非金属介在物を生
成し、転動疲労寿命を劣化させる。したがって、Alは、
0.07wt%以下、好ましくは0.005 wt%〜0.05wt%の範囲
で添加する。
【0017】O:0.0030wt%以下;Oは、硬質な非金属
介在物を形成して、転動疲労寿命の低下を招くことか
ら、可能な限り低いことが望ましい。しかし、0.0030wt
%以下、好ましくは0.0020wt%以下の含有量であれば許
容できる。
【0018】N:0.0015〜 0.020wt%;Nは、炭窒化物
形成元素と結合して結晶粒を微細化し、靱性を向上させ
る。しかし、添加量が多すぎると、被削性および鍛造性
を劣化させる。よって、Nは、0.0015〜 0.020wt%、好
ましくは0.0020〜 0.010wt%の範囲で添加する。
【0019】以上、基本成分(C, Si, Mn, Al, Sb,
O, N)の限定理由についてそれぞれ説明したが、本発
明ではさらに、以下に述べるNi, Mo, Cu, Bのうちから
選ばれるいずれか1種または2種以上を選択的に添加す
ることができる。
【0020】Cr:1.3 wt%未満;Crは、焼入れ性の増大
により焼入れ、焼もどし後の硬さを高めて転動疲労寿命
を向上させる効果を有する。しかし、添加量が多すぎる
と、安定炭化物の析出により耐摩耗性を向上させるもの
の、鋼の硬さを低下させ、転動疲労寿命を低下させるこ
とになる。よって、Crの添加量は、1.3 wt%未満、好ま
しくは0.05〜0.5wt%の範囲とする。
【0021】Ni:1.5 wt%以下;Niは、焼入れ性の増大
により焼入れ、焼もどし後の硬さを高めて転動疲労寿命
を向上させる効果を有する。しかし、添加量が多すぎる
と残留γの生成量が過多となり、鋼材の硬さを低下さ
せ、却って転動疲労寿命を低下させることになる。よっ
て、Niの添加量は、1.5 wt%以下、好ましくは0.1 〜1.
0 wt%の範囲とする。
【0022】Mo:1.2 wt%以下;Moは、焼入れ性の増大
により焼入れ、焼もどし後の硬さを高めて転動疲労寿命
を向上させる効果を有する。しかし、添加量が多すぎる
と、安定炭化物の析出により、耐摩耗性を向上させるも
のの、鋼の硬さを低下させて、転動疲労寿命を低下させ
ることになる。よって、Moの添加量は、1.2 wt%以下、
好ましくは0.05〜0.5 wt%の範囲とする。
【0023】Cu:1.0 wt%以下;Cuは、焼入れ性の増大
により焼入れ、焼もどし後の硬さを高めて転動疲労寿命
を向上させる効果を有する。しかし、添加量が多すぎる
と、鋼の鍛造性を低下させる。よって、Cuの添加量は、
1.0 wt%以下、好ましくは0.05〜0.5 wt%の範囲とす
る。
【0024】B:0.012 wt%以下;Bは、焼入れ性の増
大により焼入れ、焼もどし後の硬さを高めて転動疲労寿
命を向上させる効果を有する。しかし、添加量が多すぎ
ると、鋳造時に割れの発生を引き起こし、生産性の低下
を招く恐れがある。よって、Bの添加量は、0.012wt%
以下、好ましくは0.001 〜0.008 wt%の範囲とする。
【0025】また、本発明においては、被削性を改善す
るために、S, Pb, Ca, Bi,REM等を添加しても、上述し
た本発明の目的である加工性と転動疲労寿命特性を阻害
することはなく、容易に被削性を改善することができる
ので、必要に応じて添加してもよい。
【0026】なお、Pは、鋼の靱性ならびに転動疲労寿
命を低下させることから可能なかぎり低いことが望まし
く、好ましくは0.025 wt%以下、より好ましくは 0.015
wt%以下にするのがよい。また、Sは、Mnと結合してMn
Sを形成し、被削性を向上させる元素である。しかし、
多量に含有させると転動疲労寿命を低下させることか
ら、好ましくは0.025 wt%以下、より好ましくは 0.015
wt%以下に抑えるのがよい。さらに、Tiは、Nと結合し
て硬質な非金属介在物を生成し、転動疲労寿命を劣化さ
せることから、少ないことが望ましい。よって、好まし
くは0.005 wt%以下、より好ましくは 0.003wt%以下に
抑えるのがよい。
【0027】本発明では、上述した化学組成を有する軸
受用鋼から、加工後、焼入れ、焼もどしの熱処理を施し
て得られる軸受部材の転動疲労寿命特性に対し、熱処理
後の析出物および組織が重要である。まず、軸受部材が
転動疲労寿命を維持するために必要な硬さは、HRC 58以
上、好ましくはHRC 60である。この硬さを達成するため
には、基地組織を針状マルテンサイト組織にすることが
必要である。そのうえで、残留炭化物量と残留γ量を前
記の範囲に制御することが必要である。以下にその限定
理由を述べる。
【0028】残留炭化物量:5%以下(体積比);焼入
れ、焼もどし後の鋼中における残留炭化の量が増える
と、転動疲労寿命特性を劣化させることから、でぎる限
り少ないことが望ましく、とくにその量が体積比にして
5%を超えると転動疲労寿命への悪影響の度合いが大き
くなる。よって、残留炭化物量は、体積比にして5%以
下、好ましくは2%以下とする必要がある。
【0029】残留γ量:10〜30%(体積比);残留γ
は、清浄環境ならびにゴミ環境での転動疲労寿命特性を
向上させる。一方、多すぎると十分な硬さ(具体的には
HRC 58以上)が得られず、転動疲労寿命を低下させるこ
とになるとともに、軸受として使用する時の寸法変化が
大ぎくなる。よって、残留γの量は、体積比にして10〜
30%、好ましくは15〜25%とする必要がある。
【0030】上述したような化学組成の鋼から、残留炭
化物量および残留γ量を満足する軸受部材を製造するた
めには、焼入れ、焼もどしの熱処理に際して、適正な焼
入れ温度の選定を行えばよい。焼入れ温度は通常 830〜
860 ℃の温度範囲で行えばよいが、Cr,Mo といった炭化
物形成傾向が強い元素を多量に複合添加することによ
り、基地中のCの減少による硬さの低下、残留γ量の低
下が懸念される場合には、850 〜980 ℃の温度範囲で、
また、MnとNiを複合添加することにより、残留γ量が過
剰になる恐れがある場合には、800 〜850 の温度範囲で
行うことが望ましい。
【0031】
【実施例】表1の化学組成を有する鋼を溶製してから鋳
造した。ここで、鋼No.1は SUJ 2に、また鋼 No.2 は特
開平2-54739 号公報に開示の鋼に相当する成分である。
これらの鋼のうち、鋼No.1は1240℃で30h の拡散焼なま
しを施した後に、他の鋼は1100℃で1hの加熱後に、65mm
φの棒鋼に圧延した。この棒鋼のD/4 部から、12mmφ×
22mmの円筒状試験片(硬さ測定、組織調査用)、鍛造試
験片ならびに転動疲労寿命試験片を切削加工により採取
した。なお、鋼 No.8 の一部は、棒鋼を球状化焼なまし
後に各試験片を採取した。鍛造性は、10mmφ×15mmの鍛
造試験片を用い、完全拘束、室温の条件で、50%〜80%
の圧縮率を付与したときの鍛造割れの発生率、さらに50
%の圧縮率おいて割れが発生しなかった試験片の変形抵
抗を、従来材であるSUJ 2(鋼No.1) の値を1としての対
比で評価した。転動疲労寿命特性は、表2に示す温度か
ら油焼入れ後( 鋼No.7の一部は15kHzで高周波焼入れ後)
、180 ℃でlhの焼もどしを行い、次いでラツピング
研磨により12mmφ× 22mm の試験片とし、この試験片を
用いて、ラジアル型転動疲労試験機によりヘルツ最大接
触応力:600kgf/mm2、繰り返し応力数:46500 cpm 、潤
滑油:#68タービン飛沫油使用環境下で試験を行い求め
た。その試験結果は、ワイブル分布に従うものとして確
率紙上にプロットして求め、従来材であるSUJ 2(鋼No.
1) のB10値(10%累積破損確率) を1としての対比で
評価した。硬さ測定および組織調査は、12mmφ× 22mm
の円筒状試験片を、上記転動疲労試験片と同様に、熱処
理および加工を施した後、表面の硬さならびにX線回折
により残留γを測定した。また、11mm高さの位置で高さ
方向に垂直に切断し、その断面をピクラールにて腐食
し、表面直下での残留炭化物の面積率を画像解析により
測定し、体積率を求めた。上記の評価結果を、表2にま
とめて示す。なお、発明材の組織は残留γおよび残留炭
化物のほかは、主として針状マルテンサイト組織であっ
た。
【0032】
【表1】
【0033】
【表2】
【0034】表2において、C量が本発明範囲より低い
試験No.4は、変形抵抗が0.7 ( SUJの0.7 倍) であり、
さらに鍛造割れは70%まで発生せず、鍛造性は優れてい
る。しかし、焼入れ、焼もどし後の硬さが HRC 55 と低
く、さらに残留γが4%と低いことから、転動疲労寿命
は0.4 ( SUJ の0.4 倍) と劣る。C量が本発明範囲より
高い試験No.5ならびにSiおよびN量が高い試験No.6は、
転動疲労寿命が5.0 あるいは6.1 と優れている。しか
し、変形抵抗が1.2 あるいは1.4 と若干高く、鍛造割れ
の発生する圧縮率も、試験材No.5では、60%と従来材に
比べて改善がみられないことから、鍛造性が改善された
とは言い難い。Mnが高い試験No.3あるいはAlおよびOが
高い試験No.7では、変形抵抗が0.8 と低い。ここで、残
留γが 7%と低い試験材No.3は転動疲労寿命が 1.2、試
験No.7では o.8と劣ることから、転動疲労寿命の改善に
は至っていない。これに対し、本発明材( 試験No.8〜2
4) は、変形抵抗が0.6 〜0.9 と低く、なかでも鍛造試
験前に球状化焼なましを行った試験材No.11 では0.6 ま
で改善される。また、鍛造割れが発生する圧縮率は、ほ
とんどの発明材が 70 %に向上しており、一部のもので
60%と従来材と同じであるが、その発生率は試験No.1あ
るいはNo.2に比べて低い。さらに、転動疲労寿命は、3.
8 〜8.9 と優れており、なかでも高周波焼入れを行った
場合は通常の浸漬焼入れに比ペてB10 寿命が高い。さら
に、Cr, Mo, Ni, Cu およびBのうちから選ばれる 1種
あるいは 2種以上の添加は、必要に応じて熱処理条件を
調整し、残留炭化物量および残留γ量を適正に制御する
ことにより、転動疲労寿命を向上させることから、その
使用目的に応じて自由な組み合せを行うことが可能であ
ることがわかる。すなわち、試験No.23 およびNo.24 で
明らかなように、試験No.1と同一の温度で焼入れした場
合では、転動疲労寿命は1.3 であるが、焼入れ温度を高
めることにより転動疲労寿命は8.9 と飛躍的に向上して
いることがわかる。
【0035】
【発明の効果】本発明によれば、冷間鍛造性などの加工
性ならびに転動疲労寿命が SUJ2よりも優れた軸受用鋼
ならびに軸受部材がえられる。また、本発明によれは、
球状化焼なましが不要となることから、生産性向上およ
びコストの低減へ大きく寄与する。また、Cを低減した
ことによって、拡散焼なましが不要となるので、また、
Crが低減できるので、大幅な素材コストの低減が達成さ
れる。これにより、加工段階で各部の圧縮率が異なる複
雑かつ強加工を受ける転動体部品への適用も可能であ
る。さらに、Cr ,Ni, Mo, CuおよびBの添加による焼入
れ性の増大、焼入れ焼もどし後の硬さの上昇ならびに転
動疲労寿命の向上が可能であることから、ハブ等の自動
車部品の高強度化および長寿命化に有効であるととも
に、産業機械等の大型ベアリングヘの適用も可能であ
る。
フロントページの続き (72)発明者 松崎 明博 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社技術研究本部内 (72)発明者 天野 虔一 千葉県千葉市中央区川崎町1番地 川崎製 鉄株式会社技術研究本部内

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】C:0.70超〜0.85wt%, Si:0.50wt%未
    満,Mn:1.5 〜 3.0wt%, Al:0.07wt%以下,O:0.
    0030wt%以下, N:0.0015〜 0.020wt%を含有し、
    残部がFeおよび不可避的不純物からなることを特徴とす
    る軸受用鋼。
  2. 【請求項2】C:0.70超〜0.85wt%, Si:0.50wt%未
    満,Mn:1.5 〜 3.0wt%, Al:0.07wt%以下,O:0.
    0030wt%以下, N:0.0015〜 0.020wt%を含み、さ
    らにCr:1.3 wt%未満, Ni:1.5 wt%以下,Mo:
    1.2 wt%以下, Cu:1.0 wt%以下,B:0.012 wt
    %以下のうちから選ばれるいずれか1種または2種以上
    を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなること
    を特徴とする軸受用鋼。
  3. 【請求項3】C:0.70超〜0.85wt%, Si:0.50wt%未
    満,Mn:1.5 〜 3.0wt%, Al:0.07wt%以下,O:0.
    0030wt%以下, N:0.0015〜 0.020wt%を含有し、
    残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有
    し、かつ、体積比にして5%以下の残留炭化物と10〜30
    %の残留オーステナイトを含む針状マルテンサイト組織
    を有することを特徴とする軸受部材。
  4. 【請求項4】C:0.70超〜0.85wt%, Si:0.50wt%未
    満,Mn:1.5 〜 3.0wt%, Al:0.07wt%以下,O:0.
    0030wt%以下, N:0.0015〜 0.020wt%を含み、さ
    らにCr:1.3 wt%未満, Ni:1.5 wt%以下,Mo:
    1.2 wt%以下, Cu:1.0 wt%以下,B:0.012 wt
    %以下のうちから選ばれるいずれか1種または2種以上
    を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分
    組成を有し、かつ、体積比にして5%以下の残留炭化物
    と10〜30%の残留オーステナイトを含む針状マルテンサ
    イト組織を有することを特徴とする軸受部材。
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