JPH0834607A - メソポーラスシリカおよびその製造方法 - Google Patents
メソポーラスシリカおよびその製造方法Info
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Abstract
が少なく、比表面積が大きなメソポーラスシリカとその
工業的な製造方法を提供する。 【構成】 (1) 活性シリカとカチオン系界面活性剤との
複合体を焼成して得られる多孔質組織のシリカであっ
て、平均細孔径が10〜100 オングストロームのメソポア
組織と、平均細孔径が100 〜2000オングストロームの網
目構造組織からなる二重多孔構造を備え、かつBET比
表面積が800m2/g 以上、Na含有量が0.1 重量%以下の
性状特性を有するメソポーラスシリカ。(2) 珪酸ソーダ
水溶液をカチオン交換樹脂と接触させて活性シリカを調
製する第1工程、活性シリカとカチオン系界面活性剤を
アルカリ性領域で混合反応させてシリカと界面活性剤の
複合体を生成する第2工程、前記複合体を焼成処理する
第3工程を順次に施すメソポーラスシリカの製造方法。
Description
分として有用な二重多孔構造組織を備えるメソポーラス
シリカと、活性シリカ原料を用いた前記メソポーラスシ
リカの製造方法に関する。
リカ多孔体の製造技術については、シリカ源の種類に応
じた次の二方法が知られている。第一の方法は、層状珪
酸塩を出発シリカ源とするもので、T.Yanagisawaらの報
文〔Bull.Chem.Soc.Jpn.,Vol.63,988 〜992(1990) 〕
に、層状の珪酸塩の一つであるカネマイト(NaHSi2O5 ・
3H2O) とアルキルトリメチルアンモニウム(以下「AT
MA」と記す。)の複合体を合成し、これを焼成して有
機物を除去することによりメソポーラスシリカを得る方
法が記載されている。また、第二の方法はアモルファス
シリカ粉末やアルカリシリケート水溶液を出発シリカ源
とするもので、J.S.Beckらの報文〔J.Am.Chem.Soc.,Vo
l.114,10834〜10843(1992) 〕に各種シリカ源からの合
成例が記載されている。その合成例としては、例えば沈
降性シリカとテトラメチルアンモニウムシリケート水溶
液の混合物をATMAと150℃で反応させて複合体と
する方法、あるいは珪酸ソーダを硫酸で中和して得られ
るシリカゲルをATMAと100℃で6日間反応させて
複合体とする方法などが示されている。特表平5−50
3499号公報にも各種シリカ源からメソポーラスシリ
カを合成する方法が開示されており、市販のシリカゾル
を水酸化ナトリウムの存在下でATMAと95℃で7〜
20日間反応させるか、150℃で2日間反応させる例
が示されている。
るカネマイトを調製する必要があるうえ、反応系に多量
のNaが存在するため、複合体の焼成時にNa成分がシ
リカ構造を破壊して多孔体の表面積を低下させる欠点が
ある。また、Naは触媒等の用途においては触媒毒とな
って触媒活性を減退させる原因となる。
カ粉末を原料とする場合には、100℃以上の加熱やオ
ートクレーブの使用が必要となるためエネルギーコスト
および設備費用が嵩むこと、テトラメチルアンモニウム
シリケートはアルカリ金属を含まないアルカリシリケー
ト水溶液であるため好ましい反応材料ではあるが、高価
であることと原料中のテトラメチルアンモニウムが全て
排水中に含まれるため水処理が必要となるなど、工業的
に有利な方法とは言えない。珪酸ソーダを硫酸で中和し
てシリカゲルを得る方法では、100℃で6日間という
長い熟成操作が必要となることや、反応系中にNaが多
量に存在するためシリカ多孔体の耐熱性が低下する等の
欠点がある。同様に特表平5−503499号公報に記
載されている合成法においても、反応に長時間を要し、
Na成分が多量に残存するうえ比表面積が比較的小さい
などの問題点がある。
カや市販のシリカゾルをシリカ源としてメソポーラスシ
リカを合成する従来技術では、多大の熱エネルギーと多
量のアルカリ剤の使用が必須の要件とされている。この
主因は、例えば市販のシリカゾルは一次粒子径が10nm
以上の緻密なシリカ重合体であって、比表面積300m2
/g以下、SiO2重合度10000個以上であるのに対
し、メソポーラスシリカは比表面積が800〜1400
m2/gと大きく、これから推定してメソポア骨格の壁の厚
さ方向には2〜4個のSiO2 が存在することになるか
ら、市販シリカゾルのSiO2 粒子からメソポア構造を
形成するには高温および高アルカリ下の条件を与えてシ
リカ粒子を一旦解体して分子の再配列させることが必要
となるためである。
アグリゲート粒子と考えることができるが、このような
凝集体粒子をシリカ源とする場合にはアグリゲート構造
を切断し、さらに断片状ゾル粒子からメソポーラスシリ
カの骨格配列に再構築しなければならない関係で、シリ
カゾルよりも一層大きな熱エネルギーが必要となる。こ
の再構築過程では、ゾル粒子の部分的溶解によって粒子
から外れたシリカ分子がメソポーラス骨格を形成する
が、溶解工程においては極めて限定された一定量のアル
カリ成分を存在させねばならない。この際、過剰のアル
カリ量は溶解シリカ状態で安定化し、骨格形成に寄与し
なくなるから、限定されたアルカリ度で反応を完結させ
るには長時間の処理と高温状態が必要となり、工業的に
はオートクレーブのような高温高圧装置を用いることに
なる。
高温・高アルカリの条件下で生成されたメソポーラスシ
リカは、六方晶系に基づく六角面をもつ数ミクロンの緻
密な結晶粒子である。この粒子構造は合成ゼオライトに
近似しており、シリカゲルや活性炭のような特定の結晶
外観を持たない多孔構造とは異質な性状となる。触媒分
野においては、多孔質触媒は細孔内への反応物質の拡散
が律速となり、細孔の入口と奥の方では反応物質の濃度
が相違して触媒表面の反応に寄与する度合が異なってく
る。このため、合成ゼオライトに近似する緻密な粒子構
造を有するメソポーラスシリカは、実質的に比表面積に
対して触媒反応に利用される表面が小さくなる現象が生
じ〔斯波忠夫他著「触媒化学概論」(共立全書)第52頁
以下〕、シリカゲルや活性炭に比べて触媒能が劣る難点
がある。
度の高いNaOHを使用すると、焼成後の最終製品に残
留して耐熱性を減退させる原因となる。このため、特表
平5−503499号公報の発明では、Na系アルカリ
に代えてTMA−OH(水酸化トリメチルアンモニウ
ム)やTPA−OH(水酸化テトラプロピルアンモニウ
ム)等の4級アンモニウムアルカリ成分を多量に使用し
ている。この種のアルカリ剤は大部分が回収可能なため
反応母液として再利用できる利点はあるものの、薬剤が
高価格であるうえ、沈澱洗浄水の浄化処理を要する点で
工業的に優れた製造手段とは言えない。更に、同公報に
は4級アンモニウムシリケートの使用例も多く示されて
おり、沈降性シリカやシリカゾルと混合して反応系とし
ている。ここで混合反応系とする理由は、4級アンモニ
ウムシリケート単独では解離した際に遊離する4級アン
モニア/シリカの比が大きくなり過ぎて過大のアルカリ
量がシリカを溶解状態で安定化させていまい、メソポア
の骨格形成に寄与しなくなるからである。このように、
4級アンモニウムシリケートは反応時間を短縮する機能
はあるが、単独でシリカ源とすることができず、反応に
当たっては依然として沈降性シリカやコロイダルシリカ
を基本原料とする必要がある。したがって、4級アンモ
ニウムシリートの製造工程を考慮した場合には、寧ろ工
程的に不利となる問題点がある。
み、多量のアルカリ剤を用いずに効率よくメソポーラス
シリカを得るための工業的手段について多角的に研究を
進めた結果、珪酸ソーダとカチオン交換樹脂を接触させ
て得られる活性シリカをシリカ源として選択すると、均
一細孔分布のメソポア組織が連続して網目構造組織を呈
する独特の二重多孔構造として形成され、低Na含有量
で高比表面積のメソポーラスシリカが効率よく製造でき
る事実を解明した。
もので、その目的とするところは、メソポアサイズの均
一な細孔分布を有するメソポア組織が連続的に連なって
網目構造組織を形成する独特の二重多孔構造を備え、N
a含有量が少なく、比表面積が大きなメソポーラスシリ
カと該メソポーラスシリカを効率よく得るための工業的
な製造方法を提供することにある。
めの本発明によるメソポーラスシリカは、活性シリカと
カチオン系界面活性剤に基づく複合体を焼成して得られ
る多孔質組織のシリカであって、平均細孔径が10〜1
00オングストロームのメソポア組織と、平均細孔径が
100〜2000オングストロームの網目構造組織から
なる二重多孔構造を備え、かつBET法による窒素吸着
比表面積が800m2/g以上、Na含有量が0.1重量%
以下の性状特性を有することを構成上の特徴とする。
細孔径が10〜100オングストローム範囲の均一細孔
分布をもつメソポア組織のSiO2 粒子骨格が三次元方
向に成長し、湾曲した棒状乃至柱状となって相互に部分
結合しながら連続的な網目状の組織を形成しており、該
網目構造組織が平均細孔径100〜2000オングスト
ロームのポアを均一に分布する多孔組織を呈する粒子単
位の形態を指し、巨視的には図2および図6に示される
軽石状の多孔質形態として捉えられるものである。した
がって、メソポアの組織部分は網目構造組織の骨格を形
成する一次的な粒子組織として構成されるものである。
メソポア組織と網目構造組織の平均細孔径の相対関係
は、製造条件によって適宜に調整可能であるが、吸着剤
や触媒成分として最も好適な組織形態はメソポア組織の
平均細孔径に対して網目構造組織の平均細孔径が数倍か
ら数十倍である。
窒素吸着比表面積が800m2/g以上、好ましくは100
0m2/g以上で、Na含有量が0.1重量%以下、好まし
くは0.01重量%以下の特性も本発明の重要な要件と
なる。これらの特性は、活性シリカとカチオン系界面活
性剤からなる複合体を焼成して得られる上記多孔組織の
シリカに付与することができ、窒素吸着比表面積800
m2/g以上の高比表面積が優れた吸着能や触媒能を、また
Na含有量0.1重量%以下の純度特性が高温下におけ
る十分な熱安定性を発揮するためにそれぞれ機能する。
ポア組織の平均細孔径、細孔径分布および比表面積など
の値は公知のBET法による窒素吸着等温線から求めた
ものであり、このうち平均細孔径は全細孔容積と比表面
積とから円筒モデルにより算出し、細孔径分布はDollim
ore-Heal法〔J.Appl.Chem.,14,108 〜(1964)〕を用いて
算出し、比表面積はBET多点法を相対圧P/P0=0.0
5〜0.20範囲で算出したものである。メソポア組織
を構成するSiO2 骨格の確認は、粉末X線回折パター
ンで低角度域の2θに現出する面間隔dに相当するピー
クを測定し、六方晶系と仮定して格子定数a0 =2d
100 /√3の計算式により求めた。
カを効率よく得るための本発明による製造方法は、珪酸
ソーダ水溶液をカチオン交換樹脂と接触させて活性シリ
カを調製する第1工程、ついで活性シリカとカチオン系
界面活性剤をアルカリ性領域で混合反応させてシリカと
カチオン系界面活性剤の複合体を生成させる第2工程、
前記複合体を焼成処理する第3工程を順次に施すことを
構成上の特徴とするものである。
シリカは、珪酸ソーダをH型カチオン交換体と接触させ
る第1工程で調製される。珪酸ソーダとしては、通常、
SiO2 /Na2 Oのモル比が2〜4のものが使用でき
るが、3号珪酸ソーダは比較的Naが少ないうえ、安価
であるため工業用として好適である。また、カチオン交
換樹脂としては、例えばスルホン化ポリスチレンジビニ
ルベンゼン系の強酸性カチオン交換樹脂(市販品;ロー
ム&ハース社製“アンバーライトIR−120B”)や
カルボキシル化ポリアクリル酸系の弱酸性カチオン交換
樹脂(市販品;ローム&ハース社製“アンバーライトI
RC−76)等が好ましく用いられる。
ンが実質的に全て除去された活性シリカが得られ、該活
性シリカは組成的に多くのシラノール基(Si-OH) と、珪
酸から一部縮合したシロキサン結合(Si-O-Si) をもつ珪
酸オリゴマー(多くの場合、重合度は11以下)を含
む。したがって、完全にヒールアップした安定なゾル粒
子とは異なり、シラノール基の多い不安定なゾル形態の
ものである。この活性シリカの性状は、粒子径が3nm以
下で、Sears法によるNaOHの吸着量測定では比表面
積2000m2/g以上の値を示し、シリカ中のNaOH含
有量は0.01重量%以下で、ゾルのpHは2〜5の酸
性を呈している。なお、この活性シリカには、不純物と
して珪酸ソーダ中に含まれているAl、Ti、Mg、C
a、Fe等が残存することが多い。
でカチオン系界面活性剤との複合体を形成するための第
2工程に移される。すなわち、活性シリカとカチオン系
界面活性剤をアルカリ性領域で混合反応させて両者の複
合体を生成させたのち分離、洗浄および乾燥処理して回
収する。
ンモニウム塩またはアルキルアミン塩等が挙げられる。
第4級アンモニウム塩は一般式〔Rn (CH3)4-n 〕+
〔X〕- (式中、Rは長鎖アルキル基、nは1〜3の整
数、XはハロゲンまたはOH基を表す)で示される第4
級アルキルトリメチルアンモニウム塩や第4級ジアルキ
ルジメチルアンモニウム塩であり、アルキルアミン塩は
一般式〔RNH3 〕+〔X〕- (式中、Rは長鎖アルキ
ル基、nは1〜3の整数、XはハロゲンまたはOH基を
表す)で示されるアルキルアミン塩である。多くの場
合、前記一般式における長鎖アルキル基Rの炭素数は8
〜24が好ましく、炭素数が25以上では不溶性で扱い
難い。また、アンモニウム塩の方がアミン塩より塩基度
が高いため反応性に優れている。とくに、置換数nが1
のアンモニウム塩がシリカの均一なメソポーラスを形成
するため好ましい。したがって、本発明の目的には一般
式〔R (CH3)3 N〕+ 〔X〕- ( 但し、式中Rは炭素
数8〜24のアルキル基、XはCl、BrまたはOH基
を表す) で示される第4級アルキルトリメチルアンモニ
ウムのハライドまたは水酸化物が好適に用いられる。
苛性ソーダ、珪酸ソーダ、アルミン酸ソーダ、アルキル
アンモニウム水酸化物、第4級アンモニウムシリケー
ト、有機アミン等が挙げられるが、とくに珪酸ソーダま
たはアルミン酸ソーダの使用が好ましい。なお、このう
ちアルカリ金属系のアルカリ剤を使用する場合には、N
a量をシリカの15重量%以下に抑える必要がある。多
くの場合、総アルカリ量は酸化物換算〔例えば、Na2O+
(ATMA)2O+(TMA)2O 〕でSiO2 1モルに対して0.0
5〜0.3モルであり、好ましくは0.1〜0.2モル
の範囲である。また、濃度的にはSiO2 1モルに対し
て水が50〜300モル、好ましくは100〜260モ
ルの範囲とする。この理由は、前記の範囲を外れると、
二重多孔構造のシリカ多孔体が得られ難くなるからであ
る。
応は、次のような方法で行うことができるが、活性シリ
カがゲル化せず、均一な複合体ミセルが生成できる方法
であれば、これらの方法に限定されるものでない。 (1) 活性シリカにアルカリ剤を添加してアルカリ性にし
たのち、カチオン系界面活性剤を混合して反応させる方
法。 (2) カチオン系界面活性剤を予めOH型アニオン交換樹
脂と接触させてアルカリ性のカチオン系界面活性剤に転
化させたのち、活性シリカと混合して反応させる方法。 (3) 活性シリカとカチオン系界面活性剤との混合物をO
H型アニオン交換樹脂と接触させてアルカリ性にして反
応させる方法。 (4) アルカリ水溶液中に活性シリカとカチオン系界面活
性剤を添加混合して反応させる方法。 (5) 活性シリカとカチオン系界面活性剤の混合物にアル
カリ剤を添加混合して反応させる方法。 なお、上記(2) および(3) の方法に用いられるOH型ア
ニオン交換樹脂としては、第4級アンモニウム化ポリス
チレンジビニルベンゼン系の強塩基性アニオン交換樹脂
(市販品;ローム&ハース社製“アンバーライトIRA
−410)が好ましく用いられる。
く複合体を生成するために好適なアルカリ性領域は、p
H8〜12の範囲である。このpH範囲において、水系
のシリカ分子は円滑に切断・重合され、均質な構造に再
構築される。しかし、pHが12を越えると、シリカの
溶解度が大きくなるため好ましくない。また、第2工程
の混合反応は、活性シリカが極めて高い反応性を有する
ため常温でも容易に進行するが、必要に応じて100℃
までの加温下で操作することもできる。しかし、オート
クレーブのような装置を用いて100℃以上の熱圧下で
水熱反応させる複雑な操作は不要である。混合反応の時
間は温度との関係で相違するが、熟成時間を含めて多く
の場合0.5〜3時間の範囲にある。例えば、75℃の
温度では約2時間以内で均一な複合体ミセルが形成され
る。
活性剤成分と順次に静電的に結合し接近したシリカ相互
間にもシラノール脱水に伴う重合を生じながら、連続し
た結合組織の前駆体が形成される。このようにして得ら
れた反応スラリーは、濾過水洗してCl等の余剰イオン
種を除去したのち、100〜120℃の温度で乾燥処理
して固体粉末状のシリカとカチオン系界面活性剤よりな
る複合体として回収する。
粉末から界面活性剤成分を除去するために焼成処理して
メソポーラスシリカを得る最終工程である。焼成温度は
界面活性剤成分が消失する温度以上、概ね500℃以上
の温度域である。より高い温度での焼成はシリカの構造
を安定させて機械的強度を向上させるために有効である
が、1200℃を越える温度域になると最早構造の安定
化に寄与しなくなる。焼成時間は処理温度との関係で適
宜に設定されるが、概ね10分から1時間程度である。
したがって、焼成温度600〜1200℃、焼成時間1
時間以内が好適な焼成条件となる。
径が10〜100オングストロームのメソポア組織と、
平均細孔径が100〜2000オングストロームの網目
構造組織からなる二重多孔構造を備え、かつ窒素吸着比
表面積が800m2/g以上で、Na含有量が0.1重量%
以下の性状特性を有するものであり、この独特の多孔質
組織はシリカ源として活性シリカを選択的に使用し、高
温高圧を適用せずにアルカリ量を少なくした条件下で合
成したシリカ前駆体を焼成する本発明のプロセスによっ
て初めて製造することが可能となる。
は、ミクロポアからマクロポアに至る幅広い細孔分布を
有しており、このうちマクロポアやセミマクロポアと呼
ばれる100オングストローム以上の連続細孔はミクロ
ン水準の一次粒子内部に通じるチャンネルとして吸着能
を高める重要な役割を担っている。このような組織内部
に形成される細孔チャンネルはメソポーラスシリカの性
能を決定づける大きな要因となるが、本発明の組織構造
では網目構造組織部分がメソポア組織に通ずるチャンネ
ルとして十分に機能する。
の数と溶解成分の析出速度は結晶の大きさや規則性に大
きく依存する。シリカの場合には、生成時のアルカリ量
も結晶形成に大きな影響を与える。例えば、シリカゲル
のように酸性条件で急速に析出したシリカは非晶質のゲ
ル状となるが、従来技術により高温・高アルカリ条件下
で合成されたメソポーラスシリカは結晶性の高いものと
なる。これに対し、本発明のメソポーラスシリカは低温
・低アルカリ条件で合成されるため結晶構造は未発達で
あり、相対的にはシリカゲルに近い性状を示す。ところ
が、シリカゲルと本発明のメソポーラスシリカとの大き
な相違は、シリカゲルの細孔径分布がミクロポアからマ
クロポアまで連続的な分布パターンを示すのに対し、本
発明のメソポーラスシリカは独特の二重多孔構造を有す
るためにメソポア域に均質な細孔の存在を示す分布と1
00〜2000オングストローム範囲に細孔部分とがそ
れぞれ独立した分布のある2山ピークのパターンとして
現出する点である。
作用および2山ピークの細孔径分布が高水準の窒素吸着
比表面積と相俟って、優れた吸着能ならびに触媒能を発
揮する。また、Na含有量が極めて少ないため触媒成分
や触媒担体とした際に触媒性能の経時的劣化が少なく、
耐熱安定性もよい。このため、苛酷な温度および雰囲気
を伴う条件下の使用状態においても常に卓越した性能が
保証される。
程から第3工程を順次に施すことにより、高温高圧の条
件を適用する必要なしに上記のメソポーラスシリカを工
業的に製造することができる。特に第1工程で調製した
シリカ源としての活性シリカを少ないアルカリ量により
カチオン系界面活性剤と混合反応させる過程で均一な細
孔組織が形成され、複合体の熟成時にミセル表面でシリ
カ構造の再構築が行われて円滑にメソポーラスシリカの
前駆体となるから、これを焼成処理することにより効率
よく所望のメソポーラスシリカを製造することが可能と
なる。
明する。
水120kgで希釈し、予めH+ 型にしておいたカチオン
交換樹脂(“アンバーライトIR−120B”) を充填したカ
ラム中を通過させて活性シリカ125kgを回収した。こ
の活性シリカは、SiO2 濃度2.8%、pH3.1、
シリカ中のNa含有量は50ppm であった。一方、オク
タデシルトリメチルアンモニウムCl塩5.6kgとヘキ
サデシルトリメチルアンモニウムCl塩1.4kgを溶解
した水溶液(以下「混合ATMA」という)を作製し、
予めOH- 型にしておいたアニオン交換樹脂(“アンバ
ーライトIRA-410 ”) を充填したカラムを通過させてp
H13の混合ATMA−OH水溶液150kgを回収し
た。ついで、該混合ATMA−OH水溶液を撹拌しなが
ら、前記の活性シリカゾルを少しづつ加えて全量を混合
した。混合により液は白濁し、pHは10.2となっ
た。
たスラリーを、75℃の温度で3時間撹拌処理して混合
反応させ、放冷した。この際のpHは10.2であっ
た。次に、スラリーを濾過し、1リットルの水で洗浄
し、再度濾過処理したのち120℃の温度で乾燥した。
乾燥粉末をX線回折したところ、2θ=2.18度、
3.74度および4.20度にパターンのピークを示
し、シリカ・界面活性剤の複合体であることが確認され
た。
0分焼成処理して有機物成分を消失除去した。得られた
焼成物をX線回折した結果、2θ=2.34度にピーク
を示し、格子定数a0 が43.5オングストロームのメ
ソポーラス組織の骨格が残留していることが認められ
た。また、焼成物のBET法による窒素吸着比表面積は
1400m2/g、メソポア組織の平均細孔径は32オング
ストローム、網目構造組織の平均細孔径は300オング
ストローム、Na含有量は22ppm であった。
真、図2は網目構造組織を示したSEM写真である。こ
れら図から、メソポア組織は特に定まった形態を呈して
いないが、網目構造組織は明らかに軽石状の網目多孔構
造を呈しており、組織的に二重多孔構造として形成され
ていることが判明する。図3はメソポア組織の細孔分布
を、また図4は網目構造組織の細孔分布をそれぞれ図示
したものであり、それぞれ個別の分布パターンを示して
いることが認められる。
kgを水75kgで希釈し、実施例1と同様にカチオン交換
して105kgの活性シリカを回収した。この活性シリカ
は、SiO2 濃度4.3%、pH2.9、シリカ中のN
a含有量は50ppm であった。一方、4.0kgのオクタ
デシルトリメチルアンモニウムCl塩と1kgのヘキサデ
シルトリメチルアンモニウムCl塩を溶解した混合AT
MA水溶液55kgを実施例1と同様にしてアニオン交換
して80kgの混合ATMA−OH水溶液を回収した。つ
いで、該混合ATMA−OH水溶液を撹拌しながら、前
記の活性シリカを添加して全量を混合した。混合液は白
濁し、pHは8.8となった。この混合スラリーを撹拌
しながら、2.3kgのアルミン酸ソーダ(Na2O =3.7%、
Al2O3 =3.9%) を添加して、pHを10に調整した。
たスラリーを、95℃の温度で3時間撹拌処理して混合
反応させ、放冷した。スラリーを濾過、洗浄、リパルプ
し、スプレードライヤーで乾燥した。乾燥粉末をX線回
折したところ、2θ=1.82度、3.40度、3.5
8度および3.78度にパターンのピークを示し、シリ
カ・界面活性剤の複合体であることが確認された。
0分焼成処理して有機物成分を消失除去した。得られた
焼成物をX線回折した結果、2θ=2.06度にピーク
を示し、格子定数a0 が49.5オングストロームのメ
ソポーラス組織の骨格が残留していることが認められ
た。また、焼成物のBET法による窒素吸着比表面積は
950m2/g、メソポア組織の平均細孔径は32オングス
トローム、網目構造組織の平均細孔径は300オングス
トローム、Na含有量は32ppm であった。
真、図6は網目構造組織を示したSEM写真である。ま
た、図7はメソポア組織の細孔分布を、図8は網目構造
組織の細孔分布を示したものである。これらの図から、
本例で得られたメソポーラルシリカも実施例1と同様の
二重多孔構造を備えていることが認められる。
00g で希釈し、予めH+ 型にしておいたカチオン交換
樹脂(“アンバーライトIR−120B”) を充填したカラム
中を通過させて活性シリカ700g を回収した。この活
性シリカは、SiO2 の濃度3.5%、pH3.1で、
シリカ中のNa含有量は50ppm であった。ついで、回
収された活性シリカの水性ゾルにヘキサデシルトリメチ
ルアンモニウムCl塩(以下「HDTMA−Cl」とい
う)32g を投入し、1時間撹拌してHDTMA−Cl
を溶解させた。溶解液は白濁スラリー状となった。つい
で、予めOH- 型にしておいたアニオン交換樹脂 (“ア
ンバーライトIRA −410 ”) を充填したカラムにスラリ
ーの一部を通過させ、流出したスラリーを元の液に戻し
て全スラリーのpHを11.5に調整した。
たスラリーを、75℃の温度で2時間撹拌処理して混合
反応させ、放冷した。この際のpHは11.0であっ
た。次に、スラリーを濾過し、1リットルの水で洗浄し
てから120℃の温度で乾燥処理した。乾燥粉末をX線
回折したところ、2θ=2.26度と4.12度にパタ
ーンのピークを示し、シリカ・界面活性剤の複合体であ
ることが確認された。
0分焼成処理して有機物成分を消失除去した。得られた
焼成物をX線回折した結果、2θ=2.36度と4.4
6度にピークを示し、格子定数a0 が43オングストロ
ームのメソポーラス組織の骨格が残留していることが認
められた。焼成物のBET法による窒素吸着比表面積は
1300m2/g、メソポア組織の平均細孔径33オングス
トローム、網目構造組織の平均細孔径300オングスト
ローム、Na含有量は50ppm であり、1000℃加熱
後においても比表面積は低下しなかった。
2 ;3.5%、pH;3.1、シリカ中のNa含有量;50ppm) 7
00g に、3号珪酸ソーダ49g とHDTMA−Clの
50g を投入し、1時間撹拌してHDTMA−Clを溶
解させた。溶解液はpH10.5で、白濁スラリー状で
あった。このスラリーを、75℃の温度で2時間撹拌処
理して混合反応させ、放冷した。この際のpHは11.
0であった。次に、スラリーを濾過し、1リットルの水
で洗浄してから120℃の温度で乾燥処理した。乾燥粉
末をX線回折したところ、2θ=2.32度と4.16
度と4.54度にパターンのピークを示し、シリカ・界
面活性剤の複合体であることが確認された。
成処理した。得られた焼成物をX線回折した結果、2θ
=2.38度にピークを示し、格子定数a0 が43オン
グストロームのメソポーラス組織の骨格が残留している
ことが認められた。また、焼成物のBET法による窒素
吸着比表面積は1400m2/g、メソポア組織の平均細孔
径は33オングストローム、網目構造組織の平均細孔径
は200オングストローム、Na含有量は960ppm で
あり、800℃加熱後においても比表面積は低下しなか
った。
間撹拌してHDTMA−Clを溶解させた。ついで、予
めOH- 型にしておいたアニオン交換樹脂 (“アンバー
ライトIRA −410 ”) を充填したカラムに溶解スラリー
を通過させ、pH13のHDTMA−OH水溶液600
g を回収した。この水溶液を撹拌しておき、実施例1と
同一条件で調製した活性シリカ(SiO2;3.5 %、p
H;3.1、シリカ中のNa含有量;50ppm) 700g を少し
づつ加えて全量を混合した。混合液のpHは、10.2
であった。ついで、混合液を75℃の温度で2時間撹拌
処理して混合反応させ、放冷した。この際のpHは1
0.2であった。次に、スラリーを濾過し、1リットル
の水で洗浄してから120℃の温度で乾燥処理した。乾
燥粉末をX線回折したところ、2θ=2.16度、3.
78度および4.10度にパターンのピークを示し、シ
リカ・界面活性剤の複合体であることが確認された。
成処理した。得られた焼成物をX線回折した結果、2θ
=2.18度にピークを示し、格子定数a0 が47オン
グストロームのメソポーラス組織の骨格が残留している
ことが認められた。また、焼成物のBET法による窒素
吸着比表面積は1500m2/g、メソポア組織の平均細孔
径は32オングストローム、Na含有量は4ppm であ
り、1000℃加熱後においても比表面積は低下しなか
った。
液(濃度;4.3% 、pH;13 )2214g を40℃に加温
し、撹拌しながら実施例1と同一条件で調製した20℃
の活性シリカ(SiO2 ;3.46 %、pH;2.9、シリカ中
のNa含有量;50ppm) 2017g を30分間で添加し
た。添加後の反応系はスラリー状であり、pHは9.
0、温度は30℃であった。ついで、この状態のまま1
時間撹拌を続けたのち、1/3を取り出し、濾過、水洗
してから120℃の温度で乾燥処理した(試料A)。残
りの2/3量を室温(15〜25℃)で60時間撹拌を
継続したのち、その半量を分取して濾過、水洗し、12
0℃の温度で乾燥処理した(試料B)。更に、残りの半
量をpH9.0のまま95℃で3時間撹拌したのち放冷
し、濾過、水洗および乾燥した(試料C)。
で焼成処理した。得られた焼成物をX線回折した結果、
いずれも2θ=1.96度付近にピークを示し、シリカ
・界面活性剤の複合体であることが確認された。また、
各試料の焼成物の物性を測定したところ、表1の結果が
得られ、常温、常圧の条件下においても二重多孔質シリ
カが得られた。
という)のBr 塩48g を水に溶解して800g の水溶
液を調製し、実施例1と同一操作によりpH13のDD
TMA−OH水溶液(濃度5%)960g を回収した。
ついで、この水溶液を撹拌しながら、実施例1と同一条
件で調製した活性シリカ(SiO2 ;3.56 %) 822g
を徐々に添加した。添加後の反応系はスラリー状であ
り、pHは8.5であった。引き続き1N−NaOH水
溶液を添加してpHを10.0に調整したのち、90℃
で3時間加熱し、放冷した。この反応スラリー(pH;1
0.4)を濾過、水洗してから100℃の温度で乾燥処理し
た。得られた乾燥粉末をX線回折したところ、2θ=
2.66度、4.10度、4.56度および5.10度
にパターンのピークを示し、シリカ・界面活性剤の複合
体であることが確認された。
成処理し、得られた焼成物をX線回折した結果、2θ=
2.56度にピークを示し、格子定数a0 が40オング
ストロームのメソポーラス組織の骨格が形成されている
ことが認められた。また、焼成物のBET法による窒素
吸着比表面積は1080m2/g、メソポア組織の平均細孔
径は25オングストローム、網目構造組織の平均細孔径
は800オングストローム、Na含有量は15ppm であ
り、1000℃加熱後においても比表面積が低下しない
良好な耐熱性を示した。
14〜18、平均炭素数17)をもつジアルキルジメチ
ルアンモニウム(以下「DADMA」という)のCl塩
48g をイソプロピルアルコール16g 、エタノール2
00g および水536g に60℃に加温して溶解したの
ち、実施例1と同一操作によりカチオン交換してpH1
3のDADMA−OH水溶液(エタノールを含む)96
0g を調製した。この水溶液538g を80℃に加熱し
て撹拌をしながら、実施例1と同一条件で調製した20
℃の活性シリカ(SiO2 ;3.65 %) 411g を徐々に
添加した。添加後の反応系はスラリー状であり、pHは
8.0であった。引き続き1N−NaOH水溶液を添加
してpHを10.0に調整したのち、90℃で3時間加
熱し、放冷した。この反応スラリー(pH;10.7 )を濾
過、水洗してから110℃の温度で乾燥処理した。得ら
れた乾燥粉末をX線回折したところ、2θ=1.64
度、2.20度、4.24度、4.52度および4.8
8度にパターンのピークを示し、シリカ・界面活性剤の
複合体であることが確認された。
成処理し、得られた焼成物をX線回折した結果、パター
ンには明瞭なピークは認められなかったが、2θ=1.
7度から2.6度付近まで僅かな強度の高まりを示し
た。また、焼成物のBET法による窒素吸着比表面積は
1030m2/g、メソポア組織の平均細孔径は32オング
ストローム、網目構造組織の平均細孔径は300オング
ストローム、Na含有量は20ppm であり、900℃加
熱後においても比表面積が低下しない良好な耐熱性を示
した。
径が10〜100オングストロームのメソポア組織と、
平均細孔径が100〜2000オングストロームの網目
構造組織からなる独特の二重多孔構造を備え、かつ窒素
吸着比表面積が800m2/g以上で、Na含有量が0.1
重量%以下の優れた吸着性能ならびに耐熱安定性を具備
するメソポーラスシリカが提供される。したがって、高
熱や悪環境など苛酷な条件下で使用される吸着剤または
触媒成分等の用途分野に対して特に有用性が期待され
る。また、本発明に係る製造方法に従えば、シリカ源と
して活性シリカを選択的に使用することにより、高温高
圧を適用せずにアルカリ量を少なくした条件下で合成し
たシリカ前駆体を焼成する簡易なプロセスによって上記
のメソポーラスシリカを効率よく製造することが可能と
なるから、従来技術に比べて工業的に著しく優れた製造
技術である。
組織の粒子構造を示したSEM写真(拡大倍率5000
倍)である。
組織の粒子構造を示したSEM写真(拡大倍率1000
00倍)である。
組織の細孔径分布を示したグラフである。
組織の細孔分布を示した棒グラフである。
組織の粒子構造を示したSEM写真(拡大倍率5000
倍)である。
組織の粒子構造を示したSEM写真(拡大倍率1000
00倍)である。
組織の細孔径分布を示したグラフである。
組織の細孔分布を示した棒グラフである。
Claims (5)
- 【請求項1】 活性シリカとカチオン系界面活性剤に基
づく複合体を焼成して得られる多孔質組織のシリカであ
って、平均細孔径が10〜100オングストロームのメ
ソポア組織と、平均細孔径が100〜2000オングス
トロームの網目構造組織からなる二重多孔構造を備え、
かつBET法による窒素吸着比表面積が800m2/g以
上、Na含有量が0.1重量%以下の性状特性を有する
ことを特徴とするメソポーラスシリカ。 - 【請求項2】 BET法による窒素吸着比表面積が10
00m2/g以上で、Na含有量が0.01重量%以下であ
る請求項1記載のメソポーラスシリカ。 - 【請求項3】 珪酸ソーダ水溶液をカチオン交換樹脂と
接触させて活性シリカを調製する第1工程、ついで活性
シリカとカチオン系界面活性剤をアルカリ性領域で混合
反応させてシリカとカチオン系界面活性剤の複合体を生
成させる第2工程、前記複合体を焼成処理する第3工程
を順次に施すことを特徴とするメソポーラスシリカの製
造方法。 - 【請求項4】 第2工程で使用するカチオン系界面活性
剤が、一般式〔R (CH3)3 N〕+ 〔X〕- ( 但し、式
中Rは炭素数8〜24のアルキル基、XはCl、Brま
たはOH基を表す) で示される第4級アルキルトリメチ
ルアンモニウムのハライドまたは水酸化物である請求項
3記載のメソポーラスシリカの製造方法。 - 【請求項5】 第2工程におけるpH調整に、珪酸ソー
ダまたはアルミン酸ソーダの水溶液を用いる請求項3又
は4記載のメソポーラスシリカの製造方法。
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