JPH08338684A - 真空断熱材、真空断熱材用容器、真空断熱材の製造方法および冷蔵庫 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 断熱性能を損なうことなしに、製造時、運搬
時等などに、外的力による損傷を受けにくく品質が安定
する。 【構成】 積層膜と、この積層膜で形成される気密性容
器内にコア材を挿入し内部を減圧した後封止する真空断
熱材において、積層膜の少なくとも 1層が織物層を有す
る。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、真空断熱材、真空断熱
材用容器、真空断熱材の製造方法および真空断熱材を用
いた冷蔵庫に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来の冷蔵庫はプラスチック成型体から
なる内箱と金属板からなる外箱とを組み合わせてできる
空間部に発泡ポリウレタン断熱材を充填して断熱箱体と
していたが、近年断熱厚さを薄くして冷蔵庫内空間の確
保や、初期および経時的な断熱性能の向上を図るため、
気密性容器内にコア材を挿入し内部を減圧した後封止す
る真空断熱材が冷蔵庫に使用されるようになってきた。
一般的な真空断熱材は、例えば沈降シリカ、微粉末パー
ライト、連通ウレタンフォーム等のコア材を、金属箔と
プラスチックフィルム等を積層したラミネートフィルム
からなる高ガスバリア性を有する容器で全体を取り囲
み、内部を減圧した後、周縁部を熱融着により封止した
形状を有している。袋状タイプとトレータイプが知られ
ている。

【０００３】このような真空断熱材において、真空断熱
材としての性能を示す熱伝導率は、コア材内部の空隙の
気体の熱伝導、コア材を構成する物質間の接触熱伝導、
輻射伝達、対流に起因する熱伝導の 4要素の和で表わさ
れる。とくに気体の熱伝導率が支配的で、理論的にはコ
ア材を構成する物質間の空隙が小さいほど、ガスバリア
容器内圧力が低いほど熱伝導率が小さくなることが証明
されている。

【０００４】このように、真空断熱材の熱伝導率は内圧
によって決まるため、断熱性能を長期間維持するために
は、真空断熱材の内圧を一定値以下にする必要がある。
真空断熱材の内圧が上昇する要因の一つとして真空断熱
材外部からのガスリークがある。したがって、この外部
からのガスリークを抑えることが長期信頼性を確保する
には重要となる。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
真空断熱材用容器はプラスチックフィルムおよび金属箔
を主体とする 100μm 程度の積層膜で構成されているた
め取扱い時において傷がつきやすい。また、コア材コー
ナー部では積層膜が無理に折れ曲がった状態となるため
クラックが発生し易くなる。このため、傷やクラックの
部分から徐々にガスリークが生じたり、あるいはちょっ
とした衝撃によりクラック部分から瞬時にガスリークが
生じてしまう恐れがあるなど強度の面で問題がある。

【０００６】一方、プラスチックフィルムや金属箔の厚
さを厚くした場合、強度の面では改善されるものの、厚
くした分熱伝導率の値が大きくなる、つまり断熱性能が
低下するという問題がある。

【０００７】また、真空断熱材製造工程において、真空
排気工程において排気経路が確保できないため、初期内
圧を低くすることができなくなり、初期断熱性能を向上
させることができないという問題がある。

【０００８】本発明は、このような課題に対処するため
になされたもので、断熱性能を損なうことなしに、製造
時、運搬時等などに、外的力による損傷を受けにくく品
質の安定した真空断熱材および真空断熱材用容器、その
製造方法、ならびにこのような真空断熱材をもちいた冷
蔵庫を提供することを目的とする。

【０００９】

【課題を解決するための手段】請求項１の発明は、積層
膜で形成される気密性容器内にコア材を挿入し内部を減
圧した後封止する真空断熱材において、積層膜の少なく
とも 1層が織物層を有することを特徴とする。

【００１０】請求項２の発明は、容器内部にコア材を挿
入し減圧した後封止する真空断熱材に用いる真空断熱材
用容器において、容器の少なくとも 1層が織物層を有す
る気密性の積層膜から構成されることを特徴とする。

【００１１】請求項３の発明は、真空断熱材の製造方法
において、織物で構成される容器内にコア材を挿入する
工程と、前述の容器を気密性容器に挿入し、内部を減圧
した後封止する工程とからなることを特徴とする。

【００１２】請求項４の発明は、外箱に断熱材を配設し
てなる冷蔵庫において、断熱材の少なくとも一部は、少
なくとも 1層が織物層を有する積層膜で形成される気密
性容器内にコア材を挿入し内部を減圧した後封止する真
空断熱材であることを特徴とする。

【００１３】請求項１ないし４の発明において、織物と
は、縦方向、横方向の 2本の糸、あるいは繊維、フィル
ム等が原則として直交しており、その交錯した所で一定
の規則に従って上下に交差している組織が繰り返されて
いるものをいう。糸、あるいは繊維、フィルム等として
は、引っ張り、引き裂き強度が強く、熱伝導率が小さ
く、また減圧下でもガス発生が極力少ないものが望まし
い。ポリエチレン（ＰＥ）、ポリプロピレン（ＰＰ）、
ナイロン等の有機高分子物質、または、アルミナ繊維等
の無機物質のいずれも使用することができる。

【００１４】請求項１、２および４の発明において、少
なくとも 1層が織物層を有する気密性容器は、プラスチ
ックフィルム、金属箔などの高ガスバリア性箔等の積層
膜において少なくとも一層を織物層にした積層膜で構成
される。織物層と他の層とを融着、あるいは接着するこ
とで多層構造とする方法で、金属箔の内側、外側のいず
れの層に位置しても良い。金属箔の内側の層（熱融着
層）に位置する場合は、ガスバリア性という面からポリ
エチレン、ポリプロピレン等の熱融着性樹脂フィルムの
クロスにすることが望ましい。

【００１５】請求項３の発明は、あらかじめ織物で構成
された袋にいれられたコア材をプラスチックフィルム、
金属箔などの高ガスバリア性箔等の積層構造をもつガス
バリア容器に入れ、内部を減圧した後封止する方法であ
る。この場合の織物はとくに通気性のものが望ましく、
不織布でも良い。また、袋の形状をしたものに限らず、
コア材を覆うような形態であれば良い。さらに、その袋
にコア材と同時にガス吸着剤を入れることができる。

【００１６】

【作用】請求項１、２および４の発明において、気密性
容器を構成する積層膜の少なくとも 1層を織物層とする
ことで、気密性容器は、それ自体の強度が増し、外力に
対してより安定となる。また、コーナー部の無理な折れ
曲がりが緩和されることでクラックの発生を抑えること
ができる。

【００１７】請求項３の発明において、コア材を織物で
構成された袋にいれた後、 3辺をシールしたガスバリア
容器に挿入することで、上記作用の他に、減圧工程時の
排気経路が確保される。

【００１８】

【実施例】

実施例１ 実施例１の概要を図１に示す。気密性容器は外側からポ
リエチレンテレフタレートフィルム１、ナイロン製のク
ロス（織物）２、厚さ約 6μm のアルミ箔３、ポリプロ
ピレンフィルム４の 4層構造をもつラミネートフィルム
となっている。コア材６には連続気泡構造の硬質ウレタ
ンフォームを使用した。

【００１９】真空断熱材の作製方法はあらかじめ 3辺を
シールした気密性容器（ポリプロピレンフィルムがシー
ル層）にコア材６を挿入し、真空排気し、減圧状態下で
残りの 1辺をシールした。

【００２０】得られた真空断熱材の評価を熱伝導率測定
と振とう試験により行った。熱伝導率測定は初期値およ
び測定温度24℃で 6ヶ月間常温放置した後の値を測定し
た。振とう試験は図５に示す振とう試験装置を用いて測
定した。鉄製箱９にサンプル１０を立て掛け、振とう機
に接続されている台１１上にて10時間上下振動を加えた
とき破損したサンプルの割合で評価した。評価結果を表
１に示す。実施例１の真空断熱材は、比較例１と比較し
て、初期の断熱性能を損なうことなく損傷しにくい。ま
た、長期での断熱性能の変化も少ない。

【００２１】実施例２ 実施例２の概要を図２に示す。気密性容器は外側からポ
リエチレンテレフタレートフィルム１、厚さ約 6μmの
アルミ箔３、ポリプロピレン製クロス（織物）５、ポリ
プロピレンフィルム４の 4層構造をもつラミネートフィ
ルムとなっている。コア材６には連続気泡構造の硬質ウ
レタンフォームを使用した。

【００２２】真空断熱材の作製方法はおよび評価方法は
実施例１と同様に行ない得られた評価結果を表１に示
す。実施例２の真空断熱材は、比較例１と比較して、初
期の断熱性能を損なうことなく損傷しにくい。また、長
期での断熱性能の変化も少ない。

【００２３】実施例３ 実施例３の概要を図３に示す。外側からポリエチレンテ
レフタレートフィルム１、厚さ約 6μm のアルミ箔３、
ポリプロピレンフィルム４の 3層構造をもつ気密性容器
に、連続気泡構造の硬質ウレタンフォームを使用したコ
ア材６を充填したナイロン製不織布の袋７を挿入した構
造となっている。

【００２４】真空断熱材の作製方法は、コア材６を充填
したナイロン製不織布の袋７をあらかじめ 3辺をシール
した気密性容器（ポリプロピレンフィルムがシール層）
に挿入し、真空排気し、減圧状態下で残りの 1辺をシー
ルした。

【００２５】得られた真空断熱材の評価を実施例１と同
様に行ない結果を表１に示す。実施例３は、とくに初期
の断熱性能に優れ、また長期にわたって断熱性を損ねる
ことなく損傷しにくい。これは、実施例３の方法を用い
ることにより、真空排気性が向上したためである。さら
に、実施例３の方法はガス吸着剤８を袋７にいれること
により固定することができ、真空排気時にガス吸着剤が
容器内を動いたり、飛散することを防止することができ
る。

【００２６】比較例１ 比較例１の概要を図４に示す。気密性容器は、外側から
ポリエチレンテレフタレートフィルム１、厚さ約 6μm
のアルミ箔３、ポリプロピレンフィルム４の 3層構造を
もつ。コア材６には連続気泡構造の硬質ウレタンフォー
ムを使用した。真空断熱材の作製方法はおよび評価方法
は実施例１と同様に行ない得られた評価結果を表１に示
す。

【００２７】

【表１】 実施例４ 実施例１で得られた真空断熱材を外箱に配設してなる冷
蔵庫を組み立てた。得られた冷蔵庫につき、100 台を評
価したところ真空断熱材の破損が生じなかった。

【００２８】

【発明の効果】請求項１の真空断熱材は、少なくとも 1
層が織物層を有する積層膜から構成される気密性容器を
使用するので、断熱性能を損ねることなく、しかも軽量
であって外力に対して強く、取扱いにおいて損傷しにく
くなる。また、コーナー部の無理な折れ曲りが緩和され
るため、クラックの発生が削減され、瞬時の破損の抑
制、長期安定性の確保ができる。

【００２９】請求項２の真空断熱材用容器は、少なくと
も 1層が織物層を有する気密性の積層膜から構成される
ので、外力に対して強く、取扱いにおいて損傷しにくく
なる。その結果、長期の断熱性能に優れた真空断熱材が
得られる。

【００３０】請求項３の真空断熱材の製造方法は、コア
材を織物構成された袋にいれることで、上記作用の他
に、減圧時の排気の経路が確保されることから、真空排
気性が向上する。そのため初期内圧を低くすることがで
きることから優れた初期断熱性能が得られる。さらに、
ガス吸着剤を袋にいれることにより、真空排気時にガス
吸着剤が容器内を動いたり飛散することを防止できる。

【００３１】請求項４の冷蔵庫は、外力に対して強く、
取扱いにおいて損傷しにくい真空断熱材を使用するの
で、断熱効果を長期間維持することができ、耐久性が向
上する。

【図面の簡単な説明】

【図１】実施例１の概要を示す図である。

【図２】実施例２の概要を示す図である。

【図３】実施例３の概要を示す図である。

【図４】比較例１の概要を示す図である。

【図５】振とう試験の概要を示す図である。

【符号の説明】

１………ポリエチレンテレフタレートフィルム、２……
…ナイロン製クロス、３………アルミ箔、４………ポリ
プロピレンフィルム、５………ポリプロピレン製クロ
ス、６………コア材、７………ナイロン製不織布の袋、
８………ガス吸着剤、９………鉄製箱、１０………サン
プル、１１………振とう機に接続されている台。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 竹島 久美子 神奈川県横浜市磯子区新杉田町８番地 株 式会社東芝住空間システム技術研究所内

Claims (4)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 積層膜と、この積層膜で形成される気密
   性容器内にコア材を挿入し内部を減圧した後封止する真
   空断熱材において、 前記積層膜は、少なくとも 1層が織物層を有することを
   特徴とする真空断熱材。
2. 【請求項２】 容器内部にコア材を挿入し減圧した後封
   止する真空断熱材に用いる真空断熱材用容器において、 前記容器は、少なくとも 1層が織物層を有する気密性の
   積層膜から構成されることを特徴とする真空断熱材用容
   器。
3. 【請求項３】 織物で構成される容器内にコア材を挿入
   する工程と、前記容器を気密性容器に挿入し、内部を減
   圧した後封止する工程とからなることを特徴とする真空
   断熱材の製造方法。
4. 【請求項４】 外箱に断熱材を配設してなる冷蔵庫に
   おいて、前記断熱材の少なくとも一部は、少なくとも 1
   層が織物層を有する積層膜で形成される気密性容器内に
   コア材を挿入し内部を減圧した後封止する真空断熱材で
   あることを特徴とする冷蔵庫。