JPH08333961A - 対地震用扉枠 - Google Patents

Abstract

(57)【要約】 【目的】 地震発生時等の振動や衝撃により扉枠とドア
とが変形する問題を防止し、脱出時に支障なくドアを開
けることのできる対地震用扉枠を提供する。 【構成】 コンクリート内に支持されたアンカに固着さ
れる取付枠８と、閉鎖時の扉に対向するドア枠内側板３
ｂとで形成される空間を、モルタルなどを充填しない非
充填領域Ｅとし、ほぼ台形状に形成されてなる圧力消勢
部材１７を前記非充填領域に介設させて、地震などによ
る押圧力を消勢するようにした。

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、マンションやホテル等
の建物における玄関、部屋の出入口に設置される対地震
用扉枠に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】ビルディングの玄関や防火区域の出入口
等においては、扉を鋼鉄製の扉枠に取り付けるのが一般
的である。この種の扉枠は、左右の枠および上下の枠か
らなり、各枠の断面が略コ字状で、鋼板により一体形成
されている。この扉枠は、先端部が対向する外側板によ
り、内側板との間に空間を生じさせて、これをコンクリ
ートの充填領域としている。玄関ドアの場合は、通常、
ドアの開閉側である室外側と室内側とに段差を設けてあ
り、この段差部分がドアの閉鎖時に周縁の当接する当接
部となる。そして、扉枠の一側部に蝶番が、他側部に錠
前がそれぞれ取り付けられるようになっている。この玄
関ドアの扉枠は、支持するに際して予め躯体に埋設され
たアンカに断面が略コ字状の扉枠を溶接して接合する。
そして、この扉枠の裏側空間内にコンクリートを充填し
てから、扉枠周囲をコンクリートモルタルで仕上げる。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】ところで、上記従来の
扉枠は、外側板で囲まれた領域全体がコンクリートで固
められていることから、躯体と扉枠との間に空間や隙間
のない構造となっている。このため、ドアを閉めた状態
で地震により建物に衝撃が加えられたような場合、建物
が変形したりコンクリートに歪みが生じると、扉枠に直
接的な押圧力が加えられる。この押圧力で扉枠が変形し
たり歪むと、ドアの外周面との間に適正な間隙が保てな
くなる。すると、居住者が脱出しようとしてドアを開け
る操作をしてもドアを開けられないことがあり、早期に
避難ができないために二次災害を招く恐れがあった。本
発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、地震発生時
等の振動や衝撃により扉枠とドアとが変形する問題を防
止し、脱出時に支障なくドアを開けることのできる対地
震用扉枠を提供することを目的としている。

【０００４】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するた
め、本発明の対地震用扉枠は、コンクリート内に支持さ
れたアンカに固着される取付枠と、閉鎖時の扉に対向す
るドア枠内側板とで形成される空間を、モルタルなどを
充填しない非充填領域とし、断面略台形状に形成されて
なる圧力消勢部材を前記非充填領域に介設させて、地震
などによる押圧力を消勢するようにしている。また、コ
ンクリート内に支持されたアンカに固着される外側ドア
枠と、閉鎖時の扉に対向する内側ドア枠とで形成される
空間を、モルタルなどを充填しない非充填領域とし、こ
の非充填領域の長さ方向の数カ所に、断面略台形状に形
成されてなる圧力消勢部材と、断面略コ字状に形成され
てなる取付部材とを、ドアの広がり方向に連続させて介
設して、地震などによる押圧力を消勢するようにしてい
る。

【０００５】

【作用】上記対地震用扉枠においては、地震の発生時等
に強い振動や衝撃を受けて建物が変形したり、コンクリ
ートに歪が生じる等によりドア枠内側板に向けて押圧力
が加えられたとき、取付枠とドア枠内側板とで形成され
る空間がモルタルなどの非充填領域となっているので、
前記取付枠が変形して内側板側に膨出してもこの変形部
分が非充填領域で吸収される。また、前記の空間に圧力
消勢部材を介設してあるので、内側板に加わる押圧力が
消勢されるので扉開放にとって必要な間隙が確保され
る。

【０００６】

【実施例】以下、本発明の一実施例について、図を参照
しながら説明する。図１は本発明に係る対地震用扉枠を
示す横断面図、図２は同対地震用扉枠を示す縦断面図で
ある。この対地震用扉枠１は、地震発生時に支障なくド
ア２の開放を可能にするもので、主にマンションやホテ
ルにおける玄関、部屋の出入口等に設置され、コンクリ
ートの非充填領域Ｅを設けて圧力消勢部材１７を介設す
ることによって、左右と上下の枠４〜７からなるドア枠
３や、ドア２の変形を防止する構成となっている。ドア
２は、断面略コ字状で鉄からなる骨部材相互を接合して
矩形状のドア本体を形成するようになっている。このド
ア本体は、一側部２ｂが蝶番１３によりドア枠３の左枠
４に開閉自在に取り付けられ、他側部２ｃには図示しな
い鍵を設けている。この鍵は、ロック装置を備えた一般
普及型であって、ドア枠３の右枠５側に設けられた穴に
挿入される可動爪（図示省略）が出没自在に配設されて
いる。なお、この可動爪は、ドア２のノブに連動して作
動する。前述の通り、ドア枠３は、左右の枠４，５およ
び上下の枠６，７からなり、鋼板により形成されてい
る。これらの各枠４〜７は断面略コ字状で、各一端部４
ａ〜７ａと各他端部４ｂ〜７ｂとが対向する形状に成形
加工されている。

【０００７】この各枠４〜７は、一端部４ａ〜７ａおよ
び他端部４ｂ〜７ｂが取付枠８や鉄筋に溶接接合される
が、取付枠８とドア枠３の内側板３ｂとの間には、閉空
間が形成されている。本例では、右枠５および上枠６の
内側板３ｂと取付枠８の一側壁８ａとの間に間隙を設け
て、前後方向に延びる閉空間を形成することにより、こ
の閉空間をモルタルの非充填領域Ｅとしている。そし
て、右枠５と取付枠８とは、一端部５ａと他端部５ｂの
一部のみで溶着されて、地震などによる押圧力に応答し
た右枠５または取付枠８の変形を可能にしている。同様
に、上枠６と取付枠８とは、上枠６の一端部６ａと他端
部６ｂの一部のみ（例えば、長さ方向の両端）で溶接さ
れている。なお、図１の場合には、左枠４に間隙を設け
ないでモルタルＣの充填領域としているが、例えば図８
のように、左枠４にも右枠５と同様のモルタル非充填領
域Ｅを設けても良い。ドア枠３には、内側板３ｂに段差
状の当接部４ｃ〜７ｃを形成してある。この当接部４ｃ
〜７ｃは、ドア２の閉鎖時に周縁が当接して各室の空気
流通を遮断可能となっている。当接部４ｃ〜７ｃは、ド
ア２の周縁に対向する内周縁側を延出して凹状溝を形成
し、この凹状溝に合成ゴム材等からなる緩衝部材１２を
嵌着するようになっている。これにより、ドア２の閉鎖
時に周縁が緩衝部材１２に当接して衝撃が吸収されると
ともに、高気密性が保たれるものである。

【０００８】取付枠８の端部には、断面コ字状の連結部
９が接合されている。この連結部９には、断面Ｌ型部材
が溶着されるか、或いは切り起こし部９ａが設けられて
おり、図示の例では、切り起こし部９ａが躯体Ｃ1 から
突出した鋼鉄のアンカ１０に固着されている。アンカ１
０は、複数本を躯体Ｃ1 から突出させてあり、各先端側
に連結部９を溶接することによって取付枠８を躯体Ｃ1
に支持する。なお、下枠７には、現場でモルタルＣを詰
め込んでモルタルＣ２で埋設する。前記躯体Ｃ1 の表面
は、モルタルで覆われるとともに、取付枠８内にもモル
タルＣが充填される。また、モルタルＣ２とドア枠３と
の間隙には、仕上げのコーキングＣ３が施される。１６
は、Ｌ型金具１５によりドア枠３に取り付けられた化粧
部材である。

【０００９】前記圧力消勢部材１７は、ドア枠３にほぼ
等しい鉄板を用い、図３に示すように両端側をくの字状
に折り曲げて各先端１７ｂ，１７ｂは基部１７ａと平行
に形成している。この圧力消勢部材１７は、複数枚を前
記モルタルの非充填領域Ｅに介設するが、折り曲げ角度
および高さは、前記取付枠８の一側壁８ａと内側板３ｂ
との間隙に合わせて製作してある。この圧力消勢部材１
７は、各基部１７ａを取付枠８の内側面に溶接接合し、
各先端１７ｂ，１７ｂを内側板３ｂに当接しておく。こ
れにより、常態では複数枚の圧力消勢部材１７がモルタ
ルの非充填領域Ｅにおける補強材となるが、地震発生時
のような非常時においては躯体Ｃ1 やモルタルＣ２側か
ら扉枠３の一側壁３ｂに向けて加えられる押圧力を消勢
させる吸収材となる。しかして、上記対地震用扉枠１
は、地震の発生時等に強い振動や衝撃を受けて建物全体
が変形したり、コンクリートＣ1 ，モルタルＣ２，Ｃ等
に歪が生じることにより取付枠８側に押圧力が加えられ
ると、この取付枠８が変形して膨出する状態となる。こ
のとき、取付枠８に固着された圧力消勢部材１７も押圧
力を受けるが、各先端１７ｂ，１７ｂが内側板３ｂの表
面を摺動して広がる状態となる。これに伴って、押圧力
が消勢されてゆき、内側板３ｂに加わる押圧力が急速に
低下する。このため、内側板３ｂの変形が防止され、た
とえ変形しても小さい範囲に留められる。

【００１０】また、外側板３ａと内側板３ｂとの閉空間
がモルタルの非充填領域Ｅとなっており、外側板３ａが
変形して内側板３ｂ側に膨出してもこの変形部分は非充
填領域Ｅで吸収される。よって、内側板３ｂとドア２の
対向面には、ドア２の開閉に必要な間隙が確保される。
これにより、居住者が避難するに際してドア２を支障な
く開けることができ、室内Ｉから室外Ｏへの素早い脱出
が可能となる。なお、この圧力消勢部材は、図４に示す
如く前記圧力消勢部材１７よりも短い鉄板を用い、圧力
消勢部材１８の両端側の折り曲げ角度を大とし、先端１
８ｂ，１８ｂ側を短かくしてもよい。このような形状と
することにより、押圧力に対する抵抗の度合いを大にで
きることから、設置場所やドア枠３の大きさに合わせて
選択的に介設すればよい。以上、この発明の一実施例に
ついて説明したが、本発明は適宜に設計変更が可能であ
る。例えば、圧力消勢部材は、図５に示すように、取付
枠８の一側壁８ａに切り起こし片１９を複数形成し、各
切り起こし片１９の先端１９ａを内側板３ｂに当接する
ようにしてもよい。この場合は、切り起こしにより開口
部が生じるので、取付枠８内にモルタルＣを充填する際
に開口部を塞いでおく必要があるが、鉄板が不要となる
ので工事が簡略化される利点がある。また、ドア枠３の
形状も図１のものに限定される必要はなく、図６のよう
な一般ドア枠や、図７のような対震ドア枠に適用するこ
とができる。

【００１１】図９は、本発明の更に別の実施例を図示し
たものである。この実施例では、戸先側の右枠５０が外
側ドア枠５０ａと、内側ドア枠５０ｂとで構成されてお
り、外側ドア枠５０ａと内側ドア枠５０ｂとで形成され
る空間をモルタルなどの非充填領域Ｅとすると共に、上
下方向の数カ所に、取付部材２０と圧力消勢部材７を設
けている。なお、取付部材２０や圧力消勢部材７を収容
した右枠５０は、工場で完成された後、現場にてアンカ
１０などで固着される。この実施例の場合にも、モルタ
ルなどの非充填領域Ｅを設けるとともに、右枠５０内に
圧力消勢部材７を設けているので、地震などが生じても
ドア２の開閉に必要な間隙が必ず確保される。なお、外
側ドア枠５０ａや内側ドア枠５０ｂの形状は適宜に変更
可能であり、例えば、図１０に示すような対震ドア枠５
０ｂ’であっても良い。また、図９の戸先側に示す枠構
造は、吊元側の左枠４や上枠６にも適用できるので、図
９の構成の他にも、右枠及び上枠に非充填領域Ｅと圧力
消勢部材７を設ける場合と、左右縦枠及び上枠に非充填
領域Ｅと圧力消勢部材７を設ける場合の二態様が考えら
れる。

【００１２】

【発明の効果】以上説明したように本発明は、地震の発
生時等に強い振動や衝撃を受けて建物が変形したり、コ
ンクリートに歪が生じることによって取付枠に押圧力が
加えられても、モルタルの非充填領域で変形が吸収され
るとともに、圧力消勢部材により押圧力が消勢されるこ
とから、閉鎖扉の対向面となる内側板の変形が防止さ
れ、この内側板と扉との間に適当な間隙が確保される。
よって、この扉を支障なく開けることができ、室内から
室外への素早い脱出が可能となる効果がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明の一実施例に係る対地震用扉枠を示す横
断面図である。

【図２】同対地震用扉枠を示す縦断面図である。

【図３】圧力消勢部材を示す側面図である。

【図４】圧力消勢部材の変形例を示す側面図である。

【図５】圧力消勢部材の他の実施例を示す側面図であ
る。

【図６】一般ドア枠を図示したものである。

【図７】対震ドア枠を図示したものである。

【図８】図１の一部を変形した例を示す横断面図であ
る。

【図９】本発明の一実施例に係る対地震用扉枠を示す横
断面図である。

【図１０】図９の一部についての変形例を示す横断面図
である。

【符号の説明】

１ 対地震用扉枠 ２ 扉 ３ ドア枠 ３ｂ ドア枠内側板 ４ 左枠 ５ 右枠 ６ 上枠 ７ 下枠 ８ 取付枠 １０ アンカ １７ 圧力消勢部材 Ｃ１ コンクリート Ｃ，Ｃ２ モルタル Ｅ 非充填領域

Claims (5)

【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 コンクリート内に支持されたアンカに固
   着される取付枠と、閉鎖時の扉に対向するドア枠内側板
   とで形成される空間を、モルタルなどを充填しない非充
   填領域とし、断面略台形状に形成されてなる圧力消勢部
   材を前記非充填領域に介設させて、地震などによる押圧
   力を消勢するようにしたことを特徴とする対地震用扉
   枠。
2. 【請求項２】 コンクリート内に支持されたアンカに固
   着される外側ドア枠と、閉鎖時の扉に対向する内側ドア
   枠とで形成される空間を、モルタルなどを充填しない非
   充填領域とし、 この非充填領域の長さ方向の数カ所に、断面略台形状に
   形成されてなる圧力消勢部材と、断面略コ字状に形成さ
   れてなる取付部材とを、ドアの広がり方向に連続させて
   介設して、地震などによる押圧力を消勢するようにした
   ことを特徴とする対地震用扉枠。
3. 【請求項３】 前記非充填領域は、扉の戸先側のみ、扉
   の戸先側及び上側、または扉の両側及び上側のいずれか
   である請求項１又は請求項２に記載の対地震用扉枠。
4. 【請求項４】 圧力消勢部材は、ほぼ台形状に屈曲形成
   された鉄板からなり、台形上辺である基部を取付枠に固
   着させ、ドア枠内側板に対応して屈曲させた両端部をド
   ア枠内側板に当接させてなる請求項１又は請求項３項記
   載の対地震用扉枠。
5. 【請求項５】 圧力消勢部材は、取付枠に形成した切り
   起こし片であり、この切り起こし片の両端部をドア枠内
   側板に対応して屈曲させて当接してなる請求項１又は請
   求項３項記載の対地震用扉枠。