JPH08333214A - 抗ウイルス・菌剤 - Google Patents

抗ウイルス・菌剤

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JPH08333214A
JPH08333214A JP7168219A JP16821995A JPH08333214A JP H08333214 A JPH08333214 A JP H08333214A JP 7168219 A JP7168219 A JP 7168219A JP 16821995 A JP16821995 A JP 16821995A JP H08333214 A JPH08333214 A JP H08333214A
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JP
Japan
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antiviral
polysaccharide
agent
antimicrobial
rhamnose
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JP7168219A
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English (en)
Inventor
Yoichi Oiso
大磯洋一
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Tayca Corp
Original Assignee
Tayca Corp
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 構成糖が、D−グルクロン酸、L−ラムノー
ス、D−ガラクトースおよびD−グルコースの4種から
なり、その構成モル比が、D−グルクロン酸:L−ラム
ノース:D−ガラクトース:D−グルコース=0.8〜
1.2:2.4〜3.6:0.8〜1.2:0.8〜
1.2である多糖類の抗菌性金属塩を有効成分とする抗
ウイルス・菌剤。 【効果】 安全性並びに生分解生がより高い微生物産生
多糖類の抗菌性金属塩より成る抗ウイルス・菌剤が提供
される。該抗ウイルス・菌剤は、これらの性質を具備す
ることにより、特に、医薬品分野における抗ヘルペスウ
イルスホミニス(HVH)剤、抗ヒトサイトメガロウイ
ルス(HCMV)剤、抗白癬剤、抗歯垢剤、創傷、火傷
時の微生物感染予防・治療剤など、化粧品分野における
抗フケ剤、にきび予防・治療剤、防腐剤など、農業、林
業における病害防除剤などとして優れた効果を示す。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、特定多糖類を有効成分
とする抗ウイルス・菌剤に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、銀、銅、亜鉛、錫、水銀、
鉛、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、ヒ素、アンチ
モン、ビスマス、バリウム、カドミウム、クロムなど
が、抗菌性金属として知られており、種々の形態で抗菌
剤などとして使用されている。
【0003】具体的な例としては、抗ウイルス活性を有
するヘパリン亜鉛塩(特公昭62−25126号公
報)、同じく抗ウイルス活性を有するデキストラン硫酸
亜鉛塩(特公昭63−48849号公報)、病原菌に対
する抗菌活性を有するヒアルロン酸重金属塩(特表昭6
3−502670号公報)などが挙げられる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述の
抗菌性金属イオンを対イオンとする化合物には、アニオ
ン部分、あるいは、生産経路に次に示した問題を抱えて
いる。 (1) ヘパリンは抗凝血活性を有しており、患部が出
血している場合などには使用することができない。 (2) ヒアルロン酸は生産性の有利さから、動物由来
のものから微生物由来のものへと移行してきたが、ヒア
ルロン酸を生産する微生物は何れも連鎖球菌で、人間や
家畜に寄生し、病原性を持つものが多く、医薬品、化粧
品、食品分野などの高い安全性が求められる分野での使
用は、慎重に成らざるをえない。
【0005】従って、医薬品分野においても使用が制限
されることなく、また、生産径路上においても何ら安全
性に問題のない、抗菌性金属イオンを対イオンとするこ
とができる物質が求められている。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の目的は、優れた
抗ウイルス・菌性能と人体に対する安全性を有する新規
な抗ウイルス・菌剤を提供することにある。本発明者ら
は、前記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、病原性
細菌ではないクレブシエラ属の微生物が生産する、安全
性の高い多糖類が、抗菌性金属イオンを対イオンとして
含有させることが可能であり、優れた抗ウイルス・菌性
をするが抗凝血性を示さないことを見出し、本発明に到
達したものである。
【0007】すなわち本発明は、構成糖が、D−グルク
ロン酸、L−ラムノース、D−ガラクトースおよびD−
グルコースの4種からなり、その構成モル比が、D−グ
ルクロン酸:L−ラムノース:D−ガラクトース:D−
グルコース=0.8〜1.2:2.4〜3.6:0.8
〜1.2:0.8〜1.2である多糖類の抗菌性金属塩
を有効成分とすることを特徴とする抗ウイルス・菌剤で
ある。
【0008】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の
抗ウイルス・菌剤として用いられる多糖類は、上述の特
徴の他に、以下のような特性を有しているのが好まし
い。 (1)分子量:ゲルろ過クロマトグラフィーを用いて測
定した分子量が、約1×103 〜10×106 である。
【0009】(2)多糖類の種類:酸性ヘテロ多糖類。
【0010】(3)性状:白色繊維状(凍結乾燥物)
【0011】(4)溶解性:水、希酸、希アルカリに対
して可溶、メタノール、エタノール、アセトンに対して
は不溶。
【0012】(5)赤外吸収スペクトル:3400cm
-1付近、1620cm-1付近、1100cm-1付近、1
250cm-1付近、2950cm-1付近のそれぞれに赤
外吸収のピークが認められる。
【0013】(6)呈色反応:フェノール硫酸法、カル
バゾール硫酸法、およびm−フェニルフェノール法のい
ずれも陽性。
【0014】本発明で使用される多糖類は、好ましく
は、各構成糖残基の結合様式とその構成モル比が下記の
通りである。 Rha1:L−ラムノースの結合様式が(1→結合 Rha2:L−ラムノースの結合様式が(1→2)結合 GlcUA:D−グルクロン酸の結合様式が(1→3)
および(1→4)結合 Gal:D−ガラクトースの結合様式が(1→3)結合 Glc:D−グルコースの結合様式が(1→2)結合
と略記すると、 Rha1:Rha2:GlcUA:Gal:Glc=
0.8〜1.2:1.6〜2.4:0.8〜1.2:
0.8〜1.2:0.8〜1.2。
【0015】本発明で使用される多糖類の分子量、構成
糖の種類、構成比、結合様式などは、各種クロマトグラ
フィー分析、メチル化分析、スミス分解や比旋光度の測
定などにより特定が可能である。具体的には、以下のよ
うな特定方法が例示される。
【0016】分子量の測定:たとえば、旭化成社製「A
sahipak GFA−7MF」をカラムとするGP
Cモードの高速液体クロマトグラフィーを使用し、0.
1M硝酸ナトリウム水溶液を移動相とし、分子量既知の
プルランを標準サンプルとして作成した分子量−保持時
間標準曲線を使用して測定する。
【0017】構成糖およびその構成比:上記多糖類、お
よび上記多糖類のウロン酸残基におけるカルボキシル基
を還元した多糖類に対し、2Mトリフルオロ酢酸(TF
A)を使用して、100℃、6時間の条件下に酸加水分
解を行って、アルジトールアセテートに誘導する。得ら
れた各誘導体について、ECNSS−Mコートカラム
(和光純薬社製、「Gaschrom Q」)を使用し
てガスクロマトグラフィー分析を行う。本発明で使用す
る多糖類を用いた場合には、結果として、L−ラムノー
ス、D−ガラクトースおよびD−グルコースによって得
られる化合物と同一の化合物が検出されるが、さらに、
上記還元多糖類との比較により、本発明で使用する多糖
類の構成糖は、D−グルクロン酸、L−ラムノース、D
−ガラクトースおよびD−グルコースであると判定で
き、その構成モル比も決定することができる。
【0018】本発明で使用する多糖類は、微生物とし
て、たとえば、特願平7−93100号記載のクレブシ
エラ・オキシトカTNM3株(通商産業省工業技術院生
命工学工業技術研究所において、受託番号「FERM
BP−4669」として、平成6年5月18日から国際
寄託され保管されている)またはその変異株、あるい
は、カーボハイドレイト・リサーチ(Carbohyd
rate Research)第157巻、第13〜2
5頁(1986年)に記載されているクレブシエラK1
9株による微生物培養により、その培養物から採取され
る。上記変異株は、紫外線、X線等の放射線、または、
エチルメタンスルホン酸(EMS)、N−メチル−N’
−ニトロ−N−ニトロソグアニジン(MNNG)などの
化学的突然変異誘発物質のような公知の突然変異誘発手
段により発生させることができる。上記多糖類の生産性
の有無は菌株の培養液を分析することにより容易に判別
できる。
【0019】以下、本発明で使用する多糖類の製造方法
について、クレブシエラ・オキシトカTNM3株を使用
した場合を基に説明する。
【0020】上記菌株により得られる多糖類は、酸性ヘ
テロ多糖であり、次の式で表される構造の主要繰り返し
単位を有する。
【0021】
【化1】
【0022】本発明で用いる多糖類を製造する場合の、
微生物を培養するための培地としては、クレブシエラ
(Klebsiella)に属する微生物が生育でき、
上記多糖類を生産する炭素源、窒素源、無機塩類及び微
量栄養源を適量含有するものであれば、特に制限されな
い。
【0023】そして、炭素源としては、グルコース、ラ
クトース、マルトース、キシロース、マンニット、サッ
カロース、ラムノース、アラビノース、トレハロース、
ラフィノースなどが使用される。
【0024】窒素源としては、硝酸塩、アンモニウム
塩、尿素などの合成化合物、ポリペプトン、コーンステ
ィープリカー、酵母エキス、肉エキス、脱脂大豆抽出
物、ペプチド、アミノ酸などの天然有機物が使用され
る。
【0025】無機塩類としては、リン酸塩、カリウム
塩、硫酸塩、マグネシウム塩などが使用される。培地に
は、必要に応じ、鉄塩、カルシウム塩、マンガン塩など
を添加することができる。また、微量栄養源としては、
酵母エキス、各種ビタミン類などが使用される。
【0026】培地の状態は、固体でも液体でも構わな
い。液体培地を使用する場合には、静置培養でもよい
が、振盪培養、通気撹拌培養の方がより高収量に本発明
で用いる多糖類を得ることができる。培養時のpHは、
微生物が生育でき、上記多糖類を生産し得るpHであれ
ば特に制限されないが、通常は4〜8のpHが適切であ
る。培養温度についても、特に制限されないが、通常は
20〜35℃が適切である。培養時間は、本発明で用い
る多糖類の生産が最大に達する期間が選ばれるが、通常
は1〜7日が適切である。
【0027】上記の培養方法で得られた培養物から、本
発明で用いる多糖類を採取する方法としては、従来公知
の方法を採用することができる。たとえば、まず、遠心
分離やろ過などにより、培養物から菌体を除去した後、
得られた培養液にメタノール、エタノール、イソプロパ
ノール、アセトンなどの有機溶媒を加えて沈殿を生じさ
せる。次いで、沈殿物を水に溶解させた後、水に対して
透析を行ない、通風乾燥、熱風乾燥、噴霧乾燥、ドラム
乾燥、減圧乾燥、凍結乾燥などの方法により、透析内液
を乾燥して多糖類を回収する。
【0028】上記の採取方法の他に、限外ろ過により、
上記培養液から多糖類以外の成分を除去し、得られた濃
縮液を上述の乾燥工程に供する方法を採用してもよい。
さらに、必要に応じ、通常の多糖類の精製法に従って精
製することにより、高純度精製品を得ることもできる。
精製法としては、イオン交換、ゲルろ過、アフィニティ
ー等の各種のカラムクロマトグラフィー、4級アンモニ
ウム塩による沈殿や塩析、有機溶媒による沈殿などが採
用される。
【0029】上記で製造される多糖類の重合度は、製造
時の培地組成、採取法などの条件を調節することによっ
て変化させることができる。また、トリフルオロ酢酸
(TFA)、ギ酸、塩酸などを使用し、かつ、条件を調
節することにより、採取品や精製品を加水分解すること
ができる。さらに、具体的な方法として、加圧下での加
温や、超音波処理などを行って重合度を変化させても、
好適な結果が得られる。従って、上記多糖類の分子量
は、約1×103 〜10×106 の範囲で自由に調節す
ることが可能である。
【0030】そして、上述した微生物培養により、その
培養物から採取される本発明で用いる多糖類は、酸性ヘ
テロ多糖類であり、その構成糖は、D−グルクロン酸、
L−ラムノース、D−ガラクトースおよびD−グルコー
スの4種からなり、その構成モル比は、D−グルクロン
酸:L−ラムノース:D−ガラクトース:D−グルコー
ス=0.8〜1.2:2.4〜3.6:0.8〜1.
2:0.8〜1.2の範囲にある。
【0031】このようにして得られる、本発明で用いる
多糖類は、抗菌性の金属と組み合わせることにより抗ウ
イルス・菌活性を示すが、抗凝血性は示さない。また、
本発明で用いる多糖類は抗菌性金属塩にしても水溶性で
あるので、種々の抗菌性金属を担持して各分野で使用さ
れている抗菌性ゼオライトや、抗フケ剤として知られて
いる2−メルカプトピリジン−N−オキシド亜鉛塩(Z
pt)などの水不溶性抗菌剤のように、溶液中で使用す
る際に分散剤などの添加を必要としない。
【0032】本発明の抗ウイルス・菌剤の具体的な用途
としては、従来から抗菌性金属によって抗ウイルス・菌
作用を受けることが知られているウイルス、微生物の増
殖を阻害することに基づく用途を挙げることができ、医
薬品分野における抗ヘルぺスウイルスホミニス(HV
H)剤、抗ヒトサイトメガロウイルス(HCMV)剤、
抗白癬剤、抗歯垢剤、創傷、火傷時の微生物感染予防・
治療剤など、化粧品分野における抗フケ剤、にきび予防
/治療剤防腐剤など、農業、林業分野における病害防除
剤などとしての用途が可能である。
【0033】
【実施例】本発明を実施例によりさらに詳細に説明する
が、本発明は、その要旨を越えない限り、以下の実施例
に限定されるものではない。
【0034】製造例1 500ml容の坂口フラスコに、表1に示す組成の培地
を100ml入れ、121℃で20分間湿熱滅菌後、表
1に示す組成の培地を用いて試験管で2日間液体振盪培
養していたクレブシエラ・オキシトカ(Klebsie
lla oxytoca)TNM3株(FERM BP
−4669)を、一白金耳分植菌し、振幅数毎分110
ストローク、28℃で1日間レシプロ振盪培養を行っ
た。
【0035】
【表1】培地組成(重量%) グルコース 2.0 ポリペプトン 0.1 リン酸一水素カリウム 0.15 硫酸マグネシウム・7水和物 0.05 ビタミンB1 0.0005 ビオチン 0.000006 パントテン酸カルシウム 0.001 ニコチンアミド 0.0005 pH 6.5
【0036】
【表2】培地組成(重量%) グルコース 4 ポリペプトン 0.2 リン酸−水素カリウム 0.15 硫酸マグネシウム・7水和物 0.01 ビタミンB1 0.0005 ビオチン 0.000006 パントテン酸カルシウム 0.001 ニコチンアミド 0.0005
【0037】表2に示す組成の培地8リットルを入れて
上記と同様の滅菌を行った15リットル容のジャーファ
ーメンターに、得られた培養液400mlを接種し、温
度28℃、通気量5リットル/minの条件下で、5M
水酸化ナトリウム水溶液を用いて系中のpHを7に保ち
ながら、95時間通気撹拌培養を行った。なお、回転数
は、培養24時間目までは200rpm、それ以降33
時間目までは400rpm、それ以降95時間までは7
00rpmとした。
【0038】得られた培養物のpHを10%硫酸で4.
5に調整し、121℃で60分間湿熱滅菌後、遠心分離
により菌体を除去した。得られた培養上清分について、
残留培地成分などの多糖類以外の成分が除去されるま
で、クロスフロー方式の限外ろ過を繰り返した。限外ろ
過には、東ソー社製、限外ろ過システム「UF−LMS
II」(分画分子量:3×106 )を使用した。限外ろ過
膜を透過しなかった濃縮液を凍結乾燥し、培地1リット
ル当たり、約21gの単一な多糖類を得た。なお、多糖
類の単一性の確認は、GPCモードの高速液体クロマト
グラフィーを使用して行った。
【0039】旭化成社製「Asahipak GFA−
7MF」をカラムとし、0.1 Mの硝酸ナトリウム水溶液
を移動相とした高速液体クロマトグラフィーを使用し、
上記の多糖類の分子量を測定した結果、多糖類のクロマ
トグラフのピークトップの保持時間は、分子量既知のプ
ルランを標準サンプルとして作成した分子量−保持時間
標準曲線において、分子量約1.5 ×106 に相当する値
を示した。
【0040】また、上記の多糖類、およびグルクロン酸
残基のカルボキシル基を還元した多糖類について、各構
成糖まで加水分解を行い、アルジトールアセテートに誘
導した後、ガスクロマトグラフィー分析を行った。あら
かじめ作成した検量線と各構成糖のピーク面積とから各
構成糖のモル比を求めたところ、D−グルクロン酸:L
−ラムノース:D−ガラクトース:D−グルコース=
1:3:1:1であった。
【0041】製造例2 製造例1で得られた多糖類の1%(w/v)水溶液,5
00mlに、CuCl2 ・2H2 O,2gをかきまぜな
がら添加した。限外ろ過による脱塩後、凍結乾燥を行
い、ウロン酸残基の対イオンが銅イオンである多糖類を
得た。
【0042】製造例3 製造例1で得られた多糖類の1%(w/v)水溶液、5
00mlにZnSO4・7H2 O,3gをかきまぜなが
ら添加した。限外ろ過による脱塩後、凍結乾燥すること
によって、ウロン酸残基の対イオンが亜鉛イオンである
多糖類を得た。
【0043】製造例4 製造例1で得られた多糖類の1%(w/v)水溶液,5
00mlに、AgNO3 ,2gをかきまぜながら添加し
た。限外ろ過による脱塩後、凍結乾燥することによっ
て、ウロン酸残基の対イオンが銀イオンである多糖類を
得た。
【0044】安全性データ 本件発明で用いる多糖類の安全性データを測定したとこ
ろ、次の結果が得られた。 急性経口毒性(ラット、LD50): >5000mg/
kg(実際上無害) 皮膚1次刺激性(Draize法):1次刺激指数
0.2(弱い刺激物)
【0045】上記の結果より本件多糖類は、急性経口毒
性が実際上無害であり、1次刺激指数が表3から明らか
なように、ほぼ、無刺激物に近いレベルの刺激性を示す
程度であって安全性の高い物質である。
【0046】
【表3】 皮膚刺激性評価 1次刺激指数(PII) 無刺激物 0 弱い刺激物 0<PII≦2 中程度の刺激物 2<PII≦5 強い刺激物 5<
【0047】なお、比較対象のため、食器洗い用洗剤の
原料としても使用されているラウリル硫酸ナトリウム
(和光純薬社製)の4%水溶液について皮膚1次刺激試
験を同様に実施したところ、1次刺激指数は4.0(中
程度の刺激物)であった。
【0048】実施例1 (抗菌性評価) 製造例2、3、4で得た多糖類のウロン酸残基をCu、
Zn,Ag型に置換したものを、普通寒天培地へ含有量
が2%(w/v)となるように添加した。表4に示す組
成の培地50mlを、121℃で20分間湿熱滅菌後、
2枚のシャーレ(直径90mm×高さ10mm)に25
mlずつ入れた。実験室内で上記シャーレを2時間開放
放置した後、インキュベーター内で37℃、72時間放
置した時のコロニー数を調べた。
【0049】比較のため、各製造例で得た多糖類そのも
の(ウロン酸残基の対イオンを抗菌性金属イオンに置換
していない多糖類)およびプルラン(林原社製)につい
ても同様な操作を行った。結果を表5に示す。
【0050】
【表4】培地組成(重量%) 肉エキス 0.3 ポリペプトン 1.0 NaCl 0.5 寒天 1.5 pH 7.0
【0051】
【表5】 製造例1で得た多糖類の 2枚のシャーレの グルクロン酸残基を コロニー数の合計 Cu型に置換したもの 3 Zn型に置換したもの 2 Ag型に置換したもの 1 製造例1で得た多糖類 73 プルラン 68
【0052】上記の結果から、多糖類中のグルクロン酸
残基をCu、Zn,Ag型にすることによって、本発明
の抗ウイルス・菌剤は、プルランには認められない抗ウ
イルス・菌性を持つようになることが明らかである。
【0053】実施例2 (細菌に対する抗菌性評価) 細菌であるBacillus subtilis,St
aphylococcus aureus,Esche
richia coli、酵母であるSaccharo
myces cerevisiae,Candida
utitis、に対する抗菌性を以下に述べる方法で調
べた。
【0054】表6に示す組成の培地、100mlを12
1℃で20分間、湿熱滅菌後、シャーレ(直径90mm
×高さ10mm)に20mlずつ流し込み、約40℃に
保っておいて、液体培養していた抗菌性評価に用いる細
菌の培養液、0.5mlを培地に均一に添加した。
【0055】
【表6】培地組成(重量%) 肉エキス 0.3 ペプトン 1.0 塩化ナトリウム 0.5 寒天 1.5 pH 7
【0056】1時間後、製造例2〜4で得られた抗菌性
金属イオンを対イオンとした多糖類の2%(w/v)水
溶液中に浸したペーパーディスク(直径8mm)を各細
菌を添加(植菌)した培地上において、37℃で48時
間培養後の阻止円の直径計を調べた。また、比較のた
め、製造例1で得た多糖類そのもの(ウロン酸残基の対
イオンを抗菌性金属イオンに置換していない多糖類)と
プルラン(林原社製)についても同様に処理した。結果
を表7に示す。
【0057】
【表7】 阻止円の直径(mm) B.subtilis S.aureus E.coli S.cerevisiae Cu型 11 10 11 9 Zn型 12 11 12 12 Ag型 14 11 13 13 製造例1で 得た多糖類 0 0 0 0 プルラン 0 0 0 0
【0058】上記の結果から明らかな通り、本発明で用
いる多糖類は構成糖であるウロン酸残基の対イオンを抗
菌性金属イオンにすることにより、細菌や酵母に対して
抗菌性を持つようになることがわかる。これに対して、
プルランでは、その構造から明らかなように、本質的に
抗菌性金属イオンを置換することが出来ないため、同様
の効果は発現しえない。
【0059】実施例3 (多糖類の血液抗凝固性測定) 多糖類の血液抗凝固性を活性化部分トロンボプラスチン
時間(APTT)を測定することにより調べた。3.8
%クエン酸ナトリウム液、0.5mlに正常人より採血
した血液、4.5mlを加える。3300rpmで10
分間遠心分離して、血漿を採取する。血漿、0.1ml
にセライト浮遊液(セライト、0.7gを生理食塩水、
100mlに浮遊させたもの)、0.1mlを加え、1
分間振る。これにケファリン浮遊液、0.1mlを加
え、37℃で6分間保った後、0.025M塩化カルシ
ウム液、0.1mlを吹き込み、凝固するまでの時間を
測定したところ、約45秒であった。次に製造例で得ら
れた多糖類、0.05mgを含む3.8%クエン酸ナト
ルイム液、0.5mlを用いて上記と同じ操作を行なっ
たところ、凝固時間は約45秒であったが、ヘパリンナ
トリウムを用いて本発明で用いる多糖類と同じ処理をし
たが、凝固時間は約250秒であった。上述の結果から
明らかなように、ヘパリンナトリウムでは血液抗凝固性
が認められたが、本発明で用いる多糖類には血液抗凝固
性は認められなかった。
【0060】実施例4 (多糖類生産性微生物の安全
性) 製造例1と同様にして得た培養終了後の培養液の一部
(800ml)を凍結乾燥し、得られた凍結乾燥物に蒸
留水30mlを加えて均一に分散した試料を、マウス
(6週令、雌)に1日1回、1ml分を合計6回経口投
与したが、投与終了後、一ヵ月経っても何ら異常は認め
られなかった。なお、投与した菌体量は合計で約380
mgであった。
【0061】実施例5 (多糖類生産性微生物の安全
性) 製造例1における培養終了後の培養液、10mlをマウ
ス(6週令、雌)の頭部以外のところに、ほぼ、均一に
塗布したが、一ヵ月後、何ら異常は認められなかった。
【0062】実施例6(抗ウイルス性の評価) 本発明で使用する多糖類の抗ヒトサイトメガロウイルス
(HCMV)性を次の方法で評価した。
【0063】製造例4で得られた多糖類をMEM(2%
牛胎仔血清を含む、以下2%MEMと表す)培地に、濃
度が120μg/mlになるように溶解したものとHC
MV、2×103 pfu/mlとを等量混合し、時々、
かきまぜながら、室温で1時間インキュベートした。イ
ンキュベート終了後の液、0.5mlをヒト胎児肺細胞
(HEL,10−14代)1×104 cellに感染さ
せ、CO2 インキュベーターで37℃、72時間培養し
た。
【0064】72時間インキュベート後、抗ウイルス活
性を「Microtrak」キット(Syva社製)を
用いた蛍光抗体染色法により行なった。この方法では、
蛍光染色される細胞が少ないほど、抗ウイルス活性は高
いと評価されるが、蛍光顕微鏡の一視野中の蛍光染色陽
性細胞数を測定したところ、コントロールでは約30で
あったのに対して、本発明で用いる多糖類をHCMVに
作用させた場合では6であった。
【0065】実施例7(抗菌性化粧料の調製) 表8に示す処方によりクリームを調製した。すなわち、
(1)〜(7)、(11)を加熱溶解し、70℃に保つ
(油相)。(8)〜(10)を(12)に加熱溶解した
ものに、かきまぜながら油相を加える。ホモミキサー処
理した後、急冷してクリームを得た。
【0066】
【表8】 重量% (1)ワセリン 8.0 (2)ラノリン 2.0 (3)スクワラン 20.0 (4)セタノール 5.0 (5)モノステアリン酸グリセロール 2.0 (6)ポリオキシエチレンモノラウリン酸ソルビタン(20EO) 2.0 (7)パラオキシ安息香酸エチル 0.2 (8)製造例2で得られた多糖類 0.5 (9)グリセロール(86%) 5.0 (10)1、3−ブチレングリコール 5.0 (11)香料 0.1 (12)精製水 50.2
【0067】実施例8(抗菌性化粧料の調製) 実施例6において、製造例2で得られた本発明で使用す
る多糖類の代わりに製造例3で得られた本発明で使用す
る多糖類を用いて、実施例7と同じ方法でクリームを調
製した。
【0068】実施例9(抗菌性化粧料の調製) 実施例6において、製造例2で得られた本発明で使用す
る多糖類の代わりに製造例4で得られた本発明で使用す
る多糖類を用いて、実施例7と同じ方法でクリームを調
製した。
【0069】実施例10(抗ウイルス製剤の調製) カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、200gと
ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、50
gとをグリセリン、1000g、蒸留水、6.5Lに均
一に混合する。そこに、製造例3で得られた本発明の多
糖類、200gとポリオキシエチレンモノオレエート、
10gとを溶解した水溶液、2Lを添加し、よくかきま
ぜた後、蒸留水を加えて全量を10Lにした。得られた
ゲル様物をチューブに詰めて、抗ウイルス製剤を調製し
た。
【0070】実施例11(抗ウイルス製剤の調製) 実施例9において、製造例3で得られた本発明で使用す
る多糖類の代わりに製造例4で得られた本発明で使用す
る多糖類を用いて、実施例10と同じ方法で抗ウイルス
製剤を調製した。
【0071】上記各実施例の結果から、多糖類中のグル
クロン酸残基をCu、Zn,Ag型にすることによっ
て、本発明の抗ウイルス・菌剤は、プルランには認めら
れない抗ウイルス・菌性を持つようになることが明らか
である。
【0072】
【発明の効果】以上説明した通り、本発明によれば従来
の抗ウイルス・菌剤にはない、優れた性質を持つ多糖類
を成分とする新規な抗ウイルス・菌剤を提供することが
できる。本発明の抗ウイルス・菌剤は医薬品分野におけ
る抗ヘルペスウイルスホミニス(HVH)剤、抗ヒトサ
イトメガロウイルス(HCMV)剤、抗白癬剤、抗歯垢
剤、創傷、火傷時の微生物感染予防・治療剤など、化粧
品分野における抗フケ剤、にきび予防・治療剤、防腐剤
など、農業、林業分野における病害防除剤などに優れた
効果がある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 A01N 59/20 A01N 59/20 Z 63/02 63/02 D A61K 31/725 ADY A61K 31/725 ADY ADZ ADZ

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 構成糖がD−グルクロン酸、L−ラムノ
    ース、D−ガラクトースおよびD−グルコースの4種か
    らなり、その構成モル比が、D−グルクロン酸:L−ラ
    ムノース:D−ガラクトース:D−グルコース=0.8
    〜1.2 :2.4〜3.6 :0.8〜1.2 :0.8〜
    1.2である多糖類の抗菌性金属塩を有効成分とする抗
    ウイルス・菌剤。
  2. 【請求項2】 多糖類の各構成糖残基の結合様式とその
    構成モル比が下記の通りである請求項1に記載の抗ウイ
    ルス・菌剤。 Rha1:L−ラムノースの結合様式が(1→結合 Rha2:L−ラムノースの結合様式が(1→2)結合 GlcUA:D−グルクロン酸の結合様式が(1→3)
    および(1→4)結合 Gal:D−ガラクトースの結合様式が(1→3)結合 Glc:D−グルコースの結合様式が(1→2)結合
    と略記すると、 Rha1:Rha2:GlcUA:Gal:Glc=
    0.8〜1.2:1.6〜2.4:0.8〜1.2:
    0.8〜1.2:0.8〜1.2。
  3. 【請求項3】 抗菌性金属が、銅、亜鉛、銀からなる群
    のうちの少なくとも1種以上である請求項1または2に
    記載の抗ウイルス・菌剤。
  4. 【請求項4】 ゲルろ過クロマトグラフィーを用いて測
    定した多糖類の分子量が、約1×103 〜10×106
    である請求項1〜3のいずれか1項に記載の抗ウイルス
    ・菌剤。
  5. 【請求項5】 請求項1〜4のいずれか1項に記載の抗
    ウイルス・菌剤を含有する抗ウイルス・菌剤組成物。
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