JPH07258007A - 糖類誘導体を有効成分とする植物病害防除剤 - Google Patents

糖類誘導体を有効成分とする植物病害防除剤

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JPH07258007A
JPH07258007A JP5232094A JP5232094A JPH07258007A JP H07258007 A JPH07258007 A JP H07258007A JP 5232094 A JP5232094 A JP 5232094A JP 5232094 A JP5232094 A JP 5232094A JP H07258007 A JPH07258007 A JP H07258007A
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JP
Japan
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group
monosaccharide
substituted
plant disease
controlling agent
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JP5232094A
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English (en)
Inventor
Toshiro Kato
敏朗 加藤
Tomonori Shiraishi
友紀 白石
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【構成】 置換又は非置換のアミノ基、アシル基及びリ
ン酸基からなる群から選ばれる1つ以上を有する単糖又
はオリゴ糖を有効成分として含有する植物病害防除剤。 【効果】 植物病原菌の感染作用を阻害することによっ
て植物病害の発生を防除する作用を有する。有効成分と
して用いる化合物は、動植物、微生物の複合糖質、糖蛋
白質、糖脂質等の構成成分として広く自然界に存在する
糖誘導体であり、環境中での生分解性の点は問題となら
ず、散布時の農薬中毒や環境中での残留農薬等の従来の
問題点を克服している。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、農作物への病原菌の感
染を阻害することによって作物病害を防除する植物病害
防除剤に関する。
【0002】
【従来の技術】植物病原菌は、農作物の減収や収穫物の
品質低下等の被害を生じるため、農業生産上、最大の課
題の一つである。近代的な農産物生産においては、多量
の肥料を施し、広大な面積を単一の農作物の品種によっ
て栽培するために、病害発生時の減収や品質低下等の被
害は特に大きい。このような被害を回避するために、近
代的な農業においては、病害防除剤の使用は必須の技術
となっている。
【0003】従来の病害防除剤は殺菌作用を有する薬剤
が主流であり、病害の原因微生物を駆除するのみなら
ず、他の非病原微生物をも非特異的に駆除してしまうた
めに、環境に対して多大な悪影響を与えていることが指
摘されている。更に、殺菌剤は人体に対しても少なから
ず悪影響を与えていることも指摘されている。また、従
来の病害防除剤は環境中で生分解を受けにくい化学物質
が主流であり、人体に対する衛生上及び環境汚染に対す
る配慮から、生分解を受け易いより安全な農薬が望まれ
ているのが現状である。
【0004】このような従来の病害防除剤の問題点を解
消するためには、植物の病気の感染から発症に至る過程
を解明し、その原理に基づいて、病因微生物を殺すこと
なく、植物への感染・発症を特異的に阻害する病害防除
剤の開発が考えられる。植物は様々な微生物の攻撃から
身を守るために能動的に抵抗反応を示すことが知られて
おり、この抵抗反応を活性化する原理に基づいた病害防
除剤も開発されている(プロベナゾール剤、オリゼメー
ト(商標)。CA[27605-76-1]) 。
【0005】また、エンドウ褐紋病菌Mycosphaerella p
inodesは、感染に際して、宿主であるエンドウPisum sa
tivum L.の抵抗反応を誘導する物質とともに抑制する物
質を分泌している(Oku et al., Naturwissenschaften
64(1977)p.643)。エンドウ褐紋病菌胞子の発芽培養液か
ら、エンドウの抵抗反応を抑制する活性物質2種類の化
学構造が決定され、両者は共通の化学構造を有する糖ペ
プチドであった(Shiraishi et al., Plant and Cell P
hysiology 33(1992)p.663-667)。当該糖ペプチドは、エ
ンドウの抵抗反応を誘導する物質の存在下でも、エンド
ウの抵抗反応を抑制して菌の感染・発症を可能にし、こ
のため、エンドウ褐紋病菌の病原性を決定する因子であ
ることが明らかにされつつある(Shiraishi et al., "M
olecularStrategies of Pathogens and Host Plant"(19
91)p.151-162, Springer-Verlag, New York) 。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、植物病原菌
の感染作用を阻害することによって植物病害の発生を防
除する作用を有し、かつ環境中で生分解を受け易く安全
な植物病害防除剤を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】植物病原菌の感染や植物
の能動的な抵抗反応の発動等の原理に基づいた、より効
果的で安全な植物病害防除剤を開発するため、エンドウ
褐紋病菌が産生する、エンドウの抵抗反応を抑制する糖
ペプチドについて研究を進めた。その結果、置換又は非
置換のアミノ基、アシル基及びリン酸基からなる群から
選ばれる1つ以上を有する単糖又はオリゴ糖が当該糖ペ
プチドの作用を阻害し、更に、病原菌の感染をも阻害す
ることが判明し、本発明を完成するに至った。
【0008】即ち、本発明は、置換又は非置換のアミノ
基、アシル基及びリン酸基からなる群から選ばれる1つ
以上を有する単糖又はオリゴ糖を有効成分として含有す
る植物病害防除剤である。本発明の植物病害防除剤の有
効成分としては、置換又は非置換のアミノ基、アシル基
及びリン酸基からなる群から選ばれる1つ以上を有する
単糖、又は該単糖を少なくとも1つ構成糖として含むオ
リゴ糖であれば、特に制限はない。
【0009】前記単糖及びオリゴ糖におけるアミノ基
は、単糖分子内に存するいずれか位置の水酸基に、複数
個あってもよいが、化合物の安全性、水への溶解性、入
手の簡便性等から2位の炭素原子上の水酸基が置換され
ているものが好ましい。前記置換又は非置換のアミノ基
を有する単糖としては、例えば、単糖のアルコール性水
酸基をアミノ基で置換した狭義のアミノ糖、例えばガラ
クトサミン、グルコサミン、マンノサミン、ノイラミン
酸、ムラミン酸等の他、糖のヘミアセタール水酸基をア
ミノ基で置換したグリコシルアミン、例えばグルコシミ
ン、ガラクトシミン、ジグルコシミン、ジガラクトシミ
ン、アラビノシミン、リボシミン、キシロシミン;オサ
ミン、例えばフルクトサミンが挙げられる。
【0010】前記アミノ基を有する単糖のアミノ基は、
ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基等の炭素数1
〜6の脂肪族アシル基、ベンゾイル基等の芳香族アシル
基、メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基
等の適当な置換基で置換されていてもよい。置換された
アミノ基を有する単糖としては、好ましくはアミノ基が
アシル基で置換されているアミノ糖、更に好ましくはN
−アセチルガラクトサミン、N−アセチルグルコサミ
ン、N−アセチルマンノサミン、N−アセチルノイラミ
ン酸、N−アセチルムラミン酸が挙げられる。
【0011】また、前記単糖は、水酸基の1つ以上がリ
ン酸基、前記アシル基、前記アルキル基等の適当な置換
基で置換されていてもよい。前記アミノ基を有する単糖
であって、更に水酸基の1つ以上がリン酸基で置換され
た単糖としては、例えばグルコサミン−6−リン酸、N
−アセチルグルコサミン−6−リン酸が挙げられる。
【0012】本発明において、前記アシル基及び/又は
リン酸基を有する単糖は、置換又は非置換のアミノ基を
有しなくてもよく、置換又は非置換のアミノ基を有さ
ず、前記アシル基を有する単糖としては、例えばペンタ
−O−アセチルガラクトース、ペンタ−O−アセチルグ
ルコースが挙げられ、置換又は非置換のアミノ基を有さ
ず、リン酸基を有する単糖としては、例えばガラクトー
ス−1−リン酸、グルコース−1−リン酸、グルコース
−6−リン酸が挙げられる。
【0013】本発明において、オリゴ糖とは、水溶性で
あればその構成単糖の数は特に制限はないが、通常、構
成単糖の数が2〜10の糖をいい、好ましくは構成単糖
の数が2〜7の糖が挙げられる。本発明に用いるオリゴ
糖は、前述した置換又は非置換のアミノ基、アシル基及
びリン酸基からなる群から選ばれる1つ以上を有する単
糖を少なくとも1つ構成糖として含むものであれば特に
制限はなく、前記置換基を有しない単糖を構成糖として
含んでもよく、また前述した置換又は非置換のアミノ
基、アシル基及びリン酸基からなる群から選ばれる1つ
以上を有する単糖の2種以上を構成糖として含んでいて
もよい。
【0014】本発明の植物病害防除剤は、前記単糖及び
前記オリゴ糖の2種以上を有効成分として含有してもよ
い。本発明に用いる単糖及びオリゴ糖は公知の方法によ
り製造することができ、また市販品を用いることもでき
る。本発明に用いる単糖及び/又はオリゴ糖の合成法と
しては、例えば、(1)適当な多糖を化学的に加水分解
する方法、(2)適当な多糖を酵素的に加水分解する方
法、(3)単糖を化学的に修飾する方法、あるいは
(4)単糖を酵素的に修飾する方法等が挙げられる。
(1)の方法の例としては、キチンを酸で加水分解すれ
ば、キトオリゴ糖、N−アセチルグルコサミン等が得ら
れ、また、キチン、キトオリゴ糖、N−アセチルグルコ
サミンをアルカリで加水分解すれば、脱アセチル化され
て各々キトサン、キトオリゴ糖、グルコサミンが得られ
る。(2)の方法の例としては、キチンをキチナーゼ処
理すれば、N−アセチルグルコサミンが得られる。
【0015】本発明に用いる単糖及びオリゴ糖は、飽和
濃度以下の水溶液、好ましくは0.02〜5%(w/v) の水溶
液として植物病原菌胞子とともに植物体に施用した場合
に、(1)病原菌によって抑制される植物の抵抗反応を
回復させる効果、(2)病原菌の感染を有意に低下させ
る効果が認められる。また、本発明に用いる単糖及びオ
リゴ糖のうち、グルコサミン、ガラクトサミン、マンノ
サミン等のアミノ糖は、飽和濃度以下の水溶液、好まし
くは0.02〜5%(w/v) の水溶液として植物病原菌胞子に
施用した場合に、(3)病原菌胞子の発芽を阻害する効
果が認められる。
【0016】本発明に用いる単糖及びオリゴ糖は、動植
物、微生物の複合糖質、糖蛋白質、糖脂質等の構成成分
として広く自然界に存在する糖誘導体であり、環境中で
の生分解性の点は問題とならない。本発明の植物病害防
除剤は、通常、有効成分である前記単糖及び/又はオリ
ゴ糖に、溶剤、増量剤、担体、添加剤等を混合して製造
される。使用に当たっての剤型としては、粉剤、粒剤、
水和剤、水溶剤等が挙げられる。
【0017】本発明の植物病害防除剤に使用しうる固体
の増量剤、担体としては、例えばタルク、粘土、軽石、
シリカ、合成ケイ酸カルシウム又はマグネシウム、珪藻
土、石英、粉末コルク、トリポリ、穀粉等が挙げられ
る。また、溶剤としては、例えば水、メタノール、アセ
トン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。本発明の
植物病害防除剤に使用しうる界面活性剤としては、オク
チルフェニルポリオキシエタノール、ポリオキシエチレ
ンドデシルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタン脂
肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエ
ーテル等が挙げられる。
【0018】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
るが、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されるもの
ではない。なお、以下の実施例で用いている化合物は表
1に示す通りである。
【0019】
【表1】
【0020】以下の実施例においては、シグマ社製の市
販品を用いた。なお、実施例において用いた化合物1か
ら6のシグマ社製品コードは各々A2795, A8625, A11
26,G0264, G4875, M4500であり、また比較例1から
3のシグマ社製品コードは各々G0625, G8270, M4625
である。 (実施例1)微生物の感染に対する植物の抵抗反応を強
化する効果について、エンドウを例に、表1に示した化
合物1に関して実験した。
【0021】植物の抵抗反応は、微生物の感染によって
蓄積が誘導される抗菌性物質、いわゆるファイトアレキ
シンをもって評価できる。即ち、ファイトアレキシンの
蓄積量が多いと植物の抵抗反応が強いといえる。エンド
ウについては、ファイトアレキシンの1種であるピサチ
ンをもって評価できる(Masuda et al., Annals ofthe
Phytopathological Society of Japan 49(1983) p.558-
560)。
【0022】エンドウ褐紋病菌OMP1株(Mycosphaer
ella pinodes (Berk. et Blox.) Vestergren, strain O
MP1; ATCC42741, IFO30342) は、感染に際して、宿主で
あるエンドウの抵抗反応を誘導する物質とともに抑制す
る物質を分泌している(Okuet al., Naturwissenschaft
en 64(1977)p.643)。両物質はエンドウ褐紋病菌胞子の
発芽培養液から分離できる。即ち、胞子発芽培養液を遠
心分離して菌体を除去した遠心上清を排除限界1万Daの
限外ろ過で分画すると、エンドウの抵抗反応を誘導する
物質は高分子量画分に、抑制する物質は低分子量画分に
それぞれ分画される (Shiraishi et al., Annals of th
e Phytopathological Society of Japan44(1978) p.659
-665)。以下、前者を誘導画分、後者を抑制画分とい
う。
【0023】エンドウのファイトアレキシンであるピサ
チンの蓄積に対する当該化合物の効果は、Masudaらの方
法 (Masuda et al., Annals of the Phytopathological
Society of Japan 49(1983) p.558-560) に準拠して評
価した。即ち、エンドウ品種ミドリウスイ(Pisum sati
vum L. cv. Midoriusui)種子を発芽させ、暗所、22℃恒
温の条件下で7から10日間栽培した芽生えの上胚軸を切
り取った。0から 0.5%(w/v) 濃度の化合物1とエンド
ウ胞子発芽培養液より調製した誘導画分 500μg/ml(グ
ルコース換算値)及び抑制画分50μg/ml(ウシ血清アル
ブミン換算値)とを混合した水溶液にエンドウ上胚軸の
切片を浸漬し、22℃恒温の条件下で18時間静置した。そ
の後に、蓄積したピサチンを熱エタノールで抽出した。
熱エタノール抽出物は、減圧乾固した。n−ヘキサン:
テトラヒドロフラン:酢酸を容積比 176:24:1で混合
した溶媒50μl に乾燥物を溶解させ、Lichrosorb S1100
を担体とした逆相カラム(φ4.6 ×1250mm)を用いた高
速液体クロマトグラフィーを前記溶媒で実施し、波長30
9nm の吸光度を計測して、ピサチン濃度を定量した。比
較例として、エンドウ胞子発芽培養液より調製した誘導
画分 500μg/ml(グルコース換算値)単独、あるいは抑
制画分50μg/ml(ウシ血清アルブミン換算値)との混合
液についても同様の実験を実施した。
【0024】図1は各種の実験区におけるピサチン蓄積
量を示したグラフである。誘導画分単独処理区において
顕著な蓄積が認められたが、誘導画分・抑制画分混合処
理区においては6割程度低下した。このことは褐紋病菌
胞子発芽培養液より調製した抑制画分はエンドウの抵抗
反応を抑制することを示しており、この作用によって病
原菌は植物への感染に成功していることが考えられる。
一方、化合物1を同時に施用すると添加濃度に依存して
ピサチン蓄積量が顕著に回復することが判明した。この
ことは化合物1が抑制画分の作用を競合的に阻害するこ
とを示しており、化合物1は、病原菌に対する植物の抵
抗反応を正常に戻すことによって菌の感染を阻止する効
果を有していることが明らかとなった。
【0025】植物は微生物の感染を認識して能動的な抵
抗反応を引き起こしているが、病原菌はこの抵抗反応を
抑制することで植物への感染に成功しているものと考え
られている(Oku, Proceedings of Japan Academy 56(Se
ries B)(1980) p.367-371)。本発明における化合物1、
即ちGalNAcは、抑制画分の作用を相殺することによっ
て、植物に正常な抵抗反応を呼び戻す作用を有してい
る。よって、本発明における化合物1は、植物病害防除
剤として極めて有効であることは明らかである。
【0026】(実施例2)健全な植物体に対する本発明
における化合物の影響について、エンドウを例に、表1
に示した化合物1に関して実験した。植物は、微生物の
感染を認識して能動的な抵抗反応を引き起こしている。
その一つにファイトアレキシンの生合成が挙げられる。
ファイトアレキシンそのものは植物体にとっても、生育
阻害等、少なからず悪影響をもたらしており、植物が菌
と対峙したときにのみ産生されることが望まれる。従っ
て、植物病害防除剤単独では植物の抵抗反応を引き起こ
さないことが必要である。
【0027】エンドウのファイトアレキシンであるピサ
チンの蓄積に対する当該化合物の効果は、実施例1と同
様に、Masudaらの方法(Masuda et al., Annals of the
Phytopathological Society of Japan 49(1983) p.558
-560) に準拠して評価した。なお、 0.5%(w/v) 濃度の
化合物1単独処理区を本実施例とした。また、比較例と
して、化合物1を含まない無添加区とエンドウ褐紋病菌
胞子発芽培養液より調製したエンドウの抵抗反応の誘導
画分 500μg/ml(グルコース換算値)単独処理区につい
ても同様の実験を実施した。
【0028】図2は各種の実験区におけるピサチン蓄積
量を示したグラフである。化合物1単独処理区において
は無添加区と同様に顕著なピサチン蓄積が認められな
い。誘導画分単独処理区において認められた顕著な蓄積
と比較しても化合物1単独での植物への影響はないこと
は明らかである。よって、本発明における化合物1は、
単独では顕著な影響が認められず、実施例1に示した植
物病害防除剤としての効果は病原菌の感染の場面におい
てのみ有効であることは明らかである。
【0029】(実施例3)病原微生物の感染を阻害する
効果について、エンドウ褐紋病菌及び宿主エンドウを例
に、表1に示した化合物1から6及び比較例1から3に
関して実験した。病原菌の感染力は、接種した病原菌胞
子のうちの感染に成功した胞子の数をもって評価でき
る。病害防除の効果は、感染率を低下させる効果として
判定できる。
【0030】エンドウ褐紋病菌の胞子と表1に示した化
合物とを混合した溶液をエンドウ成葉に滴下接種し、所
定時間後に接種部位を光学顕微鏡にて観察して、発芽し
た褐紋病菌胞子数とエンドウ組織へ侵入した褐紋病菌胞
子数とを計測し、侵入胞子数と発芽胞子数との比(侵入
胞子数/発芽胞子数)を感染率として評価した。エンド
ウ褐紋病菌OMP1株(Mycosphaerella pinodes (Ber
k. et Blox.) Vestergren, strain OMP1; ATCC42741, I
FO30342) をV8寒天培地にて22℃で4から7日間培養
して形成された胞子を回収して、1ml当たり50万から 1
00万胞子となるように滅菌水に懸濁したものを以下胞子
懸濁液という。
【0031】表1に示した化合物を濃度 0.2%(w/v) と
なるように添加した液を以下供試液という。エンドウ品
種ミドリウスイ(Pisum sativum L. cv. Midoriusui)を
バーミキュライトに播種し、明所、22℃の条件下で生育
させたエンドウ成葉に、種々の供試液5μl を滴下し20
分間静置後、供試液を滴下した部位に胞子懸濁液5μl
を更に滴下した。処理葉を22℃恒温条件下で15時間静置
させ、メタノールで脱色し、接種部位を光学顕微鏡で観
察して、エンドウ組織への侵入胞子の数と発芽胞子の数
とを計測し、両者の比(侵入胞子数/発芽胞子数)を感
染率として評価し、更に無添加区で観測された感染率を
1とした場合の相対感染率を算出した。
【0032】図3は供試試料の種類ごとに相対感染率を
示したグラフである。比較例1、2、3で処理した場
合、2割から3割の感染率の上昇が認められたことか
ら、これらの単糖は菌の感染を促進してしまう。一方、
実施例の化合物1、2、3で処理した場合、2割から5
割の感染率の低下が認められたことから、これらN−ア
セチル化糖は菌の感染を阻害する効果がある。更に、実
施例の化合物4、5、6で処理した場合、全く感染しな
かったことから、これらのアミノ糖は菌の感染を完全に
阻害する効果がある。よって、本発明における化合物1
から6は、植物病害防除剤として極めて有効であること
は明らかである。
【0033】(実施例4)本発明における化合物の濃度
による病原微生物の感染を阻害する効果について、エン
ドウ褐紋病菌及び宿主エンドウを例に、表1に示した化
合物1、2及び比較例1、2に関して実験した。病原菌
の感染力は、接種した病原菌胞子のうちの感染に成功し
た胞子の数をもって評価できる。病害防除の効果は、感
染率を低下させる効果として判定できる。
【0034】エンドウ褐紋病菌の胞子と表1に示した化
合物とを混合した溶液をエンドウ成葉に滴下接種し、所
定時間後に接種部位を光学顕微鏡にて観察して、発芽し
た褐紋病菌胞子数とエンドウ組織へ侵入した褐紋病菌胞
子数とを計測し、侵入胞子数と発芽胞子数との比(侵入
胞子数/発芽胞子数)を感染率として評価した。実施例
3で述べた方法でエンドウ褐紋病菌の胞子懸濁液を調製
した。
【0035】胞子懸濁液に終濃度0から 2.5%(w/v) と
なるように、表1に示した化合物を添加した液を以下供
試液という。エンドウ品種ミドリウスイ(Pisum sativu
m L. cv. Midoriusui)をバーミキュライトに播種し、明
所、22℃の条件下で生育させたエンドウ成葉に、種々の
供試液10μl を滴下接種した後、22℃恒温条件下で24時
間静置させ、メタノールで脱色し、接種部位を光学顕微
鏡で観察して、エンドウ組織への侵入胞子の数と発芽胞
子の数とを計測し、両者の比(侵入胞子数/発芽胞子
数)を感染率として評価した。
【0036】図4は供試試料の種類、処理濃度ごとに感
染率を示したグラフである。供試試料を含まない無添加
区における感染率は約80%であり、比較例1及び比較例
2については、処理した濃度に関係なく、約80%のほぼ
一定の感染率であることから、これらの比較例の化合物
には褐紋病菌の感染を阻害する効果が認められない。
【0037】特筆すべきは、化合物1及び化合物2にお
いては、処理した濃度が高まるにつれ、褐紋病菌の感染
率が顕著に低下した。 2.5%処理では、化合物1につい
ては30%低下し、化合物2については50%も低下した。
このことから、化合物1、即ちGalNAc、及び化合物2、
即ちGlcNAcが病原菌の感染を阻害する作用を有してお
り、よって、植物病害防除剤として極めて有効であるこ
とは明らかである。
【0038】(実施例5)病原微生物の胞子の発芽に対
する影響について、エンドウ褐紋病菌を例に、表1に示
した化合物1から6及び比較例1から3に関して実験し
た。病原菌胞子の発芽は、供試液中に胞子を懸濁し、所
定時間培養後の発芽胞子の数をもって評価できる。病原
菌胞子の発芽を阻害する効果を有している化合物は植物
病害防除剤となりえる。
【0039】実施例3で述べた方法でエンドウ褐紋病菌
の胞子懸濁液を調製した。表1に示した化合物を濃度
0.2%(w/v) となるように添加した液と胞子懸濁液を等
容量で混合し、スライドグラスに滴下し、22℃の恒温湿
潤条件下で15時間培養した。培養後、光学顕微鏡にて観
察し、発芽胞子数と全胞子数とを計数し、両者の比を胞
子発芽率として評価した。
【0040】図5は供試試料の種類ごとに胞子発芽率を
示したグラフである。病原菌胞子のみで処理した無添加
区においては、全胞子中の25%が発芽した。比較例1、
2、3で処理した場合、70%以上に発芽率が増加したこ
とから、これらの単糖は菌の発芽を促進してしまう。ま
た、実施例の化合物1、2、3で処理した場合、40%以
上に発芽率が増加したことより、これらのN−アセチル
化糖は菌の発芽を促進する効果があるが、実施例3から
分かるように感染率は下がることから、これらのN−ア
セチル化糖は菌の生育には影響せずに感染を阻害する。
一方、実施例の化合物4、5、6で処理した場合、無添
加に比べて発芽率が低下したことから、これらのアミノ
糖は菌の発芽を阻害する効果がある。よって、本発明に
おける化合物1から6のアミノ糖は、植物病害防除剤と
して極めて有効であることは明らかである。
【0041】(実施例6) 水和剤 アミノ糖20%、カオリン75%及び高級アルキル硫酸ナト
リウム5%を均一に混合粉砕して水和剤とした。 (実施例7) 粉 剤 アミノ糖1%、タルクと炭酸カルシウムの1:1混合物
97%及び無水ケイ酸2%を均一に混合粉砕して粉剤とし
た。
【0042】(実施例8) 粒 剤 アミノ糖2%、ベントナイト微粉末48%、タルク48%及
びリグニンスルホン酸ナトリウム2%を均一に混合粉砕
し水を加えて練り合わせた後、造粒乾燥して粒剤とし
た。
【0043】
【発明の効果】本発明によれば、植物病原菌の感染作用
を阻害することによって植物病害の発生を防除する作用
を有する植物病害防除剤を提供することができる。本発
明の植物病害防除剤に有効成分として用いる化合物は、
動植物、微生物の複合糖質、糖蛋白質、糖脂質等の構成
成分として広く自然界に存在する糖誘導体であり、環境
中での生分解性の点は問題とならず、散布時の農薬中毒
や環境中での残留農薬等の従来の問題点を克服してい
る。
【0044】従来の病害防除剤においては、糖を主要成
分とする化合物は例が無く、本発明は既知の当該化合物
の極めて新規な用途を考案している。
【図面の簡単な説明】
【図1】各種の実験区におけるピサチン蓄積量を示す図
である。
【図2】健全植物に対する影響を示す図である。
【図3】供試試料の種類ごとに相対感染率を示す図であ
る。
【図4】供試試料の種類、処理濃度ごとに感染率を示す
図である。
【図5】供試試料の種類ごとに胞子発芽率を示す図であ
る。

Claims (6)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 置換又は非置換のアミノ基、アシル基及
    びリン酸基からなる群から選ばれる1つ以上を有する単
    糖又はオリゴ糖を有効成分として含有する植物病害防除
    剤。
  2. 【請求項2】 置換又は非置換のアミノ基を有する単糖
    がアミノ糖である請求項1記載の植物病害防除剤。
  3. 【請求項3】 アミノ糖がガラクトサミン、グルコサミ
    ン、マンノサミン、ノイラミン酸、ムラミン酸及びグル
    コサミン−6−リン酸からなる群から選ばれる少なくと
    も1種である請求項2記載の植物病害防除剤。
  4. 【請求項4】 置換又は非置換のアミノ基を有する単糖
    が、アミノ基がアシル基で置換されているアミノ糖であ
    る請求項1記載の植物病害防除剤。
  5. 【請求項5】 アミノ基がアシル基で置換されているア
    ミノ糖がN−アセチルガラクトサミン、N−アセチルグ
    ルコサミン、N−アセチルマンノサミン、N−アセチル
    ノイラミン酸、N−アセチルムラミン酸及びN−アセチ
    ルグルコサミン−6−リン酸からなる群から選ばれる少
    なくとも1種である請求項4記載の植物病害防除剤。
  6. 【請求項6】 置換又は非置換のアミノ基、アシル基及
    びリン酸基からなる群から選ばれる1つ以上を有するオ
    リゴ糖が置換又は非置換のアミノ基、アシル基及びリン
    酸基からなる群から選ばれる1つ以上を有する単糖を少
    なくとも1つ構成糖として含むオリゴ糖である請求項1
    記載の植物病害防除剤。
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